IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノンマシナリー株式会社の特許一覧

特許7336294ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム
<図1>
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図1
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図2
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図3
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図4
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図5
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図6
  • 特許-ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230824BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H01L21/60 321Y
G01B11/02 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019137686
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021022637
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕行
(72)【発明者】
【氏名】和田 裕一
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098249(JP,A)
【文献】特許第3480325(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
G01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続面にボンディングされた複数のワイヤを検査するボンディングワイヤの検査装置であって、
ボンディングされたワイヤと相対的に接近及び離間して、焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得する撮像手段と、
ワイヤが撮像された画像において、検査対象となる全てのワイヤと交差するプロファイルラインを設定するプロファイルライン設定手段と、
前記接近又は離間方向であるワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った全領域での位置情報及び高さ情報からなる高さプロファイルを作成する高さプロファイル生成手段と、
前記高さプロファイルにおいて、プロファイルライン上における高さ情報の分布として許容される範囲であり、高さの最小値として許容される波形と、高さの最大値として許容される波形との間の領域を示す許容範囲を設定するプロファイル許容範囲設定手段と、
前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に、その位置において異常があると判定するプロファイル異常検出手段とを備えたことを特徴とするボンディングワイヤの検査装置。
【請求項2】
ボンディングされたワイヤを備えたワークに対して、プロファイルラインを位置決めするプロファイルライン位置決め手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のボンディングワイヤの検査装置。
【請求項3】
プロファイル許容範囲設定用データ格納部を備え、前記プロファイル許容範囲設定手段は、前記プロファイル許容範囲設定用データ格納部に格納されたデータに基づいて、最小値から最大値までを示す許容範囲を生成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボンディングワイヤの検査装置。
【請求項4】
前記プロファイル許容範囲設定手段に設定された最大値及び最小値は、任意に変更することが可能であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のボンディングワイヤの検査装置。
【請求項5】
前記プロファイルラインと、検査対象となるワイヤとの交差位置を、ワイヤの高さを検査する検査位置とすることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のボンディングワイヤの検査装置。
【請求項6】
前記プロファイルラインと、検査対象となるワイヤとの交差位置以外の位置を、ワイヤの高さを検査する検査位置とすることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のボンディングワイヤの検査装置。
【請求項7】
接続面にボンディングされた複数のワイヤを検査するボンディングワイヤの検査方法であって、
焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得し、
ワイヤが撮像された画像において、検査対象となる全てのワイヤと交差するプロファイルラインを設定し、
ワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った全領域での位置情報及び高さ情報からなる高さ情報となる高さプロファイルを作成し、
前記高さプロファイルにおいて、プロファイルライン上における高さ情報の分布として許容される範囲であり、高さの最小値として許容される波形と、高さの最大値として許容される波形との間の領域を示す許容範囲を設定し、
前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に、その位置において異常があると判定することを特徴とするボンディングワイヤの検査方法。
【請求項8】
ボンディングされたワイヤを備えたワークに対して、プロファイルラインを位置決めすることを特徴とする請求項7に記載のボンディングワイヤの検査方法。
【請求項9】
設定された最大値及び最小値は、任意に変更することが可能であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のボンディングワイヤの検査方法。
【請求項10】
接続面にボンディングされた複数のワイヤの検査を実行させるボンディングワイヤの検査プログラムであって、
焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得するステップと、
ワイヤが撮像された画像において、検査対象となる全てのワイヤと交差するプロファイルラインを設定するステップと、
ワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った全領域での位置情報及び高さ情報からなる高さ情報となる高さプロファイルを作成するステップと、
前記高さプロファイルにおいて、プロファイルライン上における高さ情報の分布として許容される範囲であり、高さの最小値として許容される波形と、高さの最大値として許容される波形との間の領域を示す許容範囲を設定するステップと、
前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に、その位置において異常があると判定するステップとを備えたことを特徴とするボンディングワイヤの検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングされたワイヤを検査するボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディングが施されている電子部品において、ボンディング状態の検査として特許文献1や特許文献2に示すような、ワイヤの外観検査を行う場合がある。具体的には、ワイヤを1本ずつ正確に認識し、例えば、ワイヤの形状やワイヤ同士の接触などを検査したり、ワイヤの高さを検査したりする。
【0003】
特許文献1に記載されているワイヤの認識方法は、ワイヤの高さ画像を使用して、ワイヤの一方の接続部(始点)の位置及びワイヤの他方の接続部(終点)の位置を認識して、それらの間のワイヤ領域をワイヤとして抽出するものである。特許文献2に記載されているワイヤの認識方法は、縦断面において、ワイヤの合焦度分布の表現がされた縦断面合焦度分布を形成し、縦断面合焦度分布に基づいて、合焦度の高い箇所を追跡することにより、1本のワイヤの軌跡を追跡するものである。このようにして、特許文献1及び特許文献2のものでは、抽出したワイヤの高さや曲がり等の計測を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-157720号公報
【文献】特開2017-92187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載されたワイヤの認識方法は、ワイヤの数が少ない場合には有効である。しかしながら、ワイヤ毎に始点及び終点を設定することになるため、ワイヤ数が多い場合には設定量が膨大なものとなる。これにより、ワイヤが例えば数百本と多い場合には、検査条件の設定や見直しに手間がかかり、生産性が落ちてしまう。また、ワイヤの軌跡を1本ずつ正確に認識する処理を行うため、検査処理が複雑で、処理時間がかかる。さらに、ワイヤが交差する場合には、高さ画像だけではワイヤが識別できない場合があり、ワイヤの軌跡を1本ずつ正確に識別するのが困難となり、検査の信頼性が落ちる場合がある。加えて、ワイヤ毎に検査結果が出力されるため、検査結果の検証や確認に手間がかかる場合がある。
【0006】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、検査の信頼性が高く、処理速度を向上させることができるボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボンディングワイヤの検査装置は、接続面にボンディングされたワイヤを検査するボンディングワイヤの検査装置であって、ボンディングされたワイヤと相対的に接近及び離間して、焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得する撮像手段と、ワイヤが撮像された画像において、検査対象となるワイヤと交差するプロファイルラインを設定するプロファイルライン設定手段と、前記接近又は離間方向であるワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った高さ情報となる高さプロファイルを作成する高さプロファイル生成手段と、前記高さプロファイルにおいて、高さの最小値又は最大値までを示す許容範囲を設定するプロファイル許容範囲設定手段と、前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に異常と判定するプロファイル異常検出手段とを備えたものである。
【0008】
本発明のボンディングワイヤの検査装置によれば、撮像手段により、焦点の合った画素位置が夫々異なる複数の画像が取得されるとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得することができる。これらの情報から、ワイヤの高さ方向において、高さ情報となる高さプロファイルを作成する。この場合、検査位置とは、ワイヤが撮像された画像において、ユーザが指定したプロファイルラインに沿った位置である。作成した高さプロファイルにおいて、前記検査位置の高さの最小値又は最大値までを示す許容範囲を設定し、高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れていれば、異常と判定するものである。
【0009】
前記構成において、ボンディングされたワイヤを備えたワークに対して、プロファイルラインを位置決めするプロファイルライン位置決め手段を備えていてもよい。これにより、ワークの回転等、ワークの画面上の位置がずれても、プロファイルラインはそれに追従して位置決めされるので、検査位置を一定のものとすることができる。
【0010】
前記構成において、プロファイル許容範囲設定用データ格納部を備え、前記プロファイル許容範囲設定手段は、前記プロファイル許容範囲設定用データ格納部に格納されたデータに基づいて、最小値から最大値までを示す許容範囲を生成するものであってもよい。これにより、ユーザの手間や手数を簡略化することができる。
【0011】
前記構成において、前記プロファイル許容範囲設定手段に設定された最大値及び最小値は、任意に変更することが可能である。これにより、実際のボンディング状況を正確に反映した許容範囲とすることができ、検査の信頼性を高いものとすることができる。
【0012】
前記構成において、前記プロファイルラインと、検査対象となるワイヤとの交差位置を、ワイヤの高さを検査する検査位置としてもよい。また、前記プロファイルラインと、検査対象となるワイヤとの交差位置以外の位置を、ワイヤの高さを検査する検査位置としてもよい。
【0013】
本発明のボンディングワイヤの検査方法は、接続面にボンディングされたワイヤを検査するボンディングワイヤの検査方法であって、焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得し、ワイヤが撮像された画像において、検査対象となるワイヤと交差するプロファイルラインを設定し、ワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った高さ情報となる高さプロファイルを作成し、前記高さプロファイルにおいて、高さの最小値又は最大値までを示す許容範囲を設定し、前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に異常と判定するものである。
【0014】
前記構成において、ボンディングされたワイヤを備えたワークに対して、プロファイルラインを位置決めするものであってもよい。
【0015】
前記構成において、設定された最大値及び最小値は、任意に変更することを可能としてもよい。
【0016】
本発明のボンディングワイヤの検査プログラムは、接続面にボンディングされたワイヤの検査を実行させるボンディングワイヤの検査プログラムであって、焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得するステップと、ワイヤが撮像された画像において、検査対象となるワイヤと交差するプロファイルラインを設定するステップと、ワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った高さ情報となる高さプロファイルを作成するステップと、前記高さプロファイルにおいて、高さの最小値又は最大値までを示す許容範囲を設定するステップと、前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に異常と判定するステップとを備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラムは、検査の信頼性が高く、処理速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のボンディングワイヤの検査装置を示すブロック図である。
図2】ワイヤ及び接続面を備えたワークの画像の一部を示す図である。
図3】(a)は高さプロファイルを示す図であり、(b)は最小値の波形を示す図であり、(c)は最大値の波形を示す図であり、(d)は許容範囲を示す図であり、(e)は高さプロファイルの一部と許容範囲を示した図である。
図4図2に示す画像において、他のプロファイルラインの設定を示す図である。
図5】ワイヤ及び接続面を備えた他のワークの画像の一部を示す図である。
図6】(a)はワイヤが交差している場合の高さプロファイルを示す図であり、(b)はワイヤが交差している他の場合の高さプロファイルを示す図である。
図7】本発明のボンディングワイヤの検査方法の手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1図7に基づいて説明する。
【0020】
本発明のボンディングワイヤの検査装置は、電子部品や回路基板の端子などのパターン部分にワイヤ先端部が接合(ボンディング)されている場合に、ボンディングされたワイヤが良好にボンディングされているか否かを検出(検査)するものである。ボンディングされたワイヤ及びその周辺の、ある部分において高さ情報が正常でないと、ワイヤが良好にボンディングされていない可能性が高い。そこで、本実施形態では、ボンディングワイヤの良否の検出として、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を検出することにより、ボンディングワイヤの良否を検出するものである。本実施形態では説明を簡単にするため、図2に示すように、7本のボンディングワイヤW1~W7を検出する場合について説明するが、実際は多数(例えば数百本かそれ以上)のボンディングワイヤを検出することができる。
【0021】
本発明のボンディングワイヤの検査装置は、図1に示すように撮像手段1と、図示省略のコンピュータに設けられる、メモリ10と、画像作成手段11と、プロファイルライン設定手段2と、プロファイルライン位置決め手段3と、高さプロファイル生成手段4と、プロファイル許容範囲設定手段5と、プロファイル異常検出手段6と、プロファイル許容範囲設定用データ格納部13とを備えている。また、コンピュータには図示省略の表示手段(モニタ)が接続されている。
【0022】
撮像手段1はCCDカメラ等からなり、撮像物体であるボンディングワイヤ(以下、単にワイヤという)及び接続面(ボンディング面)を含むワーク20の画像、及びワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得する。撮像手段1はz方向に(上下方向に)移動して、ワーク20と相対的に接近又は離間することができる。すなわち、撮像手段1は、撮像物体との距離を連続的に変化させて(カメラをz方向にスキャンさせて)、上下方向に焦点が異なる画像を複数枚取得する(焦点の合った画素位置が夫々異なる画像を取得する)。この場合、夫々の画像は、1枚の画像につき、いずれかの位置のみで焦点が合っている。すなわち、画像1枚につき、合焦度(焦点がどの程度合っているかを表す度合い)の高い画素位置が存在し、その画素位置は、夫々の画像毎で異なる。高さ情報とは、撮像と同時に各画素ごとにフォーカス度合が最大となった時点における撮像手段1とワーク20との相対距離情報であり、撮像手段1は高さ情報を記憶する。
【0023】
画像作成手段11は、撮像手段1により取得した焦点の異なる複数の画像データに基づいて、撮影範囲の全焦点画像や距離画像を作成するものである。本実施形態では、画像作成手段11は、画像データ及び高さ情報に基づいて、全焦点画像及び距離画像を作成する。全焦点画像とは、全てのピクセルにおいてフォーカスが合っている画像である。すなわち、撮像手段1により取得した、焦点の異なる画像の複数枚において、画像作成手段11は、局所領域ごとにフォーカスを評価し、フォーカスの合っている局所画像の組み合わせで再構成した全焦点画像を作成する。
【0024】
また、画像作成手段11は、撮像手段1により取得した高さ情報に基づいて、距離画像(図2図4参照)を作成する。距離画像とは、撮像手段1からの距離に応じて高さ情報が輝度により表現された画像(本実施形態ではグレースケール)であり、距離画像により撮像した物体の高さ情報を得ることができる。例えば、高位のもの(撮像手段1からの距離が近いもの)は淡色(グレースケールの場合は白色)で表現され、低位のもの(撮像手段1からの距離が遠いもの)は濃色(グレースケールの場合は黒色)で表現される。なお、図2図4は距離画像を示しており、実際の画像は白黒の濃淡のコントラストが生じたものとなっている。
【0025】
プロファイルライン設定手段2は、図2に示すようなプロファイルラインLを設定し、記憶するものである。プロファイルラインLとは、ワイヤが撮像された画像12(本実施形態では距離画像)において、検査対象となる全ての画像上のワイヤW1~W7と横断する方向のラインである。この場合、「横断」とは、プロファイルラインLが全ての画像上のワイヤW1~W7と交差していればよく、夫々の画像上のワイヤW1~W7とプロファイルラインLとの交差角度は問わない。本実施形態では、プロファイルラインLに沿った全領域が検査位置となる。
【0026】
プロファイルラインLは、ユーザが画像上(本実施形態では距離画像)で長さ、方向、数、軌跡等を自由に指定することができる。すなわち、ユーザが検査したいワイヤの位置を自由に指定することができ、プロファイルラインLを画像上自由に描くことができる。例えば、全てのワイヤW1~W7において、一端側から他端側までのほぼ中間位置での高さを検査したい場合は、図2に示すように、ユーザは、画像上のワイヤW1~W7の中間位置にプロファイルラインLが横断するような直線を指定する。
【0027】
また、全てのワイヤW1~W7の両端側付近での高さを検査したい場合は、図4(a)に示すように、ユーザは、画像上のワイヤW1~W7の一端側に第一のプロファイルラインL1が横断するような直線を指定し、さらに、画像上のワイヤW1~W7の他端側に第二のプロファイルラインL2が横断するような直線を指定する。このように、複数本のプロファイルラインL1、L2・・・を設けてもよい。さらには、図4(b)に示すように、ワイヤによって検査すべき場所が異なる場合は、プロファイルラインLの方向を変化させたり、図4(c)に示すように、曲線としたりしてもよい。このようにユーザは、プロファイルラインLの位置を自由に指定することができ、プロファイルライン設定手段2は指定されたプロファイルラインLの位置を記憶する。
【0028】
プロファイルライン位置決め手段3は、表示手段(画面)に表示された画像上のワークに対して、プロファイルラインLを位置決めするものである。すなわち、ワーク20には図示省略の位置決め用モデルが存在し、ワーク20におけるモデルの位置が予め記憶されている場合、プロファイルライン位置決め手段3は、モデルとプロファイルラインLとの相対的な位置関係を記憶する。これにより、例えば回転等により画面上のワーク20の位置がずれても、プロファイルライン位置決め手段3が、前記位置関係と同様になるように、プロファイルラインの位置を修正する。つまり、プロファイルライン位置決め手段3は、モデルがずれた位置に合わせてプロファイルラインをずらす。これにより、ワークの画面上の位置がずれても、プロファイルラインはそれに追従して位置決めされるので、検査位置を一定のものとすることができる。
【0029】
高さプロファイル生成手段4は、図3に示すような高さプロファイルを生成するものである。高さプロファイルとは、ワイヤの高さ方向(撮像手段1とワーク20との接近又は離間方向)において、プロファイルラインLに沿った全領域での高さ情報である。
【0030】
図2に示す箇所では、ワイヤの交差箇所が存在しないため、図3(a)では全てのワイヤW1~W7において高さ情報が現れているが、図5に示すように、ワイヤが交差している箇所(ワイヤW2の上にワイヤW1が重なっており、ワイヤW4の上にワイヤW3が重なっている)があると、図6(a)に示すように、下方のワイヤ(この場合ワイヤW2及びワイヤW4)については高さプロファイルでは高さ情報が存在しない。また、図示省略するが、ワイヤ同士が一部重なっている場合(例えば、ワイヤW2の一部にワイヤW1が重なっており、ワイヤW4の一部にワイヤW3が重なっている)には、図6(b)に示すように、下方のワイヤ(この場合ワイヤW2及びワイヤW4)については高さプロファイルでは高さ情報が、上方のワイヤと(この場合ワイヤW1及びワイヤW3)と重なり、小さい幅となって現れる。このように、高さプロファイルでは、ワイヤ同士の交差状況まで表現される。
【0031】
プロファイル許容範囲設定手段5は、高さプロファイルにおいて、高さの最小値(図3(b)参照)から最大値(図3(c)参照)までを示す許容範囲(図3(d)参照)を設定するものである。検査対象となるワークにおいて、プロファイルライン上における高さ情報の分布として許容される範囲があり、それを許容範囲(図3(d)におけるハッチング部分)としている。すなわち、プロファイルライン上において、高さの最小値として許容される波形が、例えば図3(b)のように設定される。また、プロファイルライン上において、高さの最大値として許容される波形が、例えば図3(c)のように設定される。そして、最大値の波形と最小値の波形との波形の間の領域が図3(d)に示す許容範囲となる。プロファイル許容範囲設定手段5は、このような許容範囲を記憶する。
【0032】
許容範囲の設定方法としては、ユーザが最小値の波形と最大値の波形を指定するものであってもよい。本実施形態では、プロファイル許容範囲設定用データ格納部13を備え、プロファイル許容範囲設定手段5は、プロファイル許容範囲設定用データ格納部13に格納されたデータに基づいて、最小値から最大値までを示す許容範囲を自動生成する。例えば、良品とするワークを複数集めて、そのデータから最大値と最小値との夫々のばらつきの範囲がプロファイル許容範囲設定用データ格納部13に格納されており、そのデータに基づいて、それに該当する範囲が許容範囲となるように、プロファイル許容範囲設定手段5が許容範囲を自動生成することができる。また、プロファイル許容範囲設定用データ格納部13には、不良品のデータが格納されて、それに該当しない範囲を許容範囲としてもよい。さらには、プロファイル許容範囲設定用データ格納部13に設計値が格納されており、プロファイル許容範囲設定手段5は、設計値を基準に任意の高さをプラスしたものを最大値の波形とし、任意の高さをマイナスしたものを最小値の波形と設定したりできる。
【0033】
プロファイル異常検出手段6は、高さプロファイルにおける高さ情報が許容範囲から外れている場合に、その位置において異常の可能性があると判定するものである。例えば、あるプロファイルライン上の位置において、高さプロファイルが図3(e)の実線に示すようなものであり、同じ位置において設定された許容範囲が図3(e)のハッチング部分であるとする。図3(e)に示すプロファイルラインを許容範囲に対応させた(重ね合わせた)場合、高さ情報h1では、最小値と最大値との間(つまり許容範囲)に入っているため、この位置での異常はないとする。一方、高さ情報h2では、最小値と最大値との間(許容範囲)から外れているため、何らかの異常があるとし、高さ情報h3では、本来高さがゼロであるべき位置に高さがゼロではなく、許容範囲から外れているといえるため、何らかの異常があるとする。これは、例えばワイヤが曲がっており、本来存在すべきではない位置でワイヤが存在しているような場合が考えられる。
【0034】
本実施形態のボンディングワイヤの検査装置は、接続面にボンディングされたワイヤの検査を実行させるボンディングワイヤの検査プログラムであって、焦点の異なるワイヤの画像を複数撮像するとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得するステップと、ワイヤが撮像された画像において、検査対象となるワイヤと交差するプロファイルラインを設定するステップと、ワイヤの高さ方向において、前記プロファイルラインに沿った高さ情報となる高さプロファイルを作成するステップと、前記高さプロファイルにおいて、高さの最小値a又は最大値までを示す許容範囲を設定するステップと、前記高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に異常と判定するステップとを備えている。
【0035】
本発明のボンディングワイヤの検査装置を使用したボンディングワイヤの検査方法を図7のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
撮像手段1は、ワーク20が撮影範囲となるようにして、上下方向に焦点の異なる実画像を複数枚取得する(ステップS1)。これにより、焦点の合った画素位置が夫々異なる複数の画像データがメモリ10に格納されるとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報がメモリ10に格納される。
【0037】
画像作成手段11は、撮像手段1により取得した焦点の異なる複数の画像データ及びワイヤの高さ情報に基づいて、撮影範囲の全焦点画像や距離画像を作成する(ステップS2)。
【0038】
ユーザは、画像作成手段11により作成された画像(本実施形態では距離画像を用いる)において、プロファイルラインLを指定する(ステップS3)。これにより、プロファイルライン設定手段2は、例えば図2(a)に示すようなプロファイルラインLを設定し、記憶する。
【0039】
高さプロファイル生成手段4は、高さプロファイルを生成する(ステップS4)。プロファイル許容範囲設定手段5は、高さプロファイルにおいて、高さの最小値から最大値までを示す許容範囲を設定する(ステップS5)。本実施形態では、許容範囲の設定方法として、プロファイル許容範囲設定用データ格納部13に良品の複数のデータが格納されており、そのデータに基づいて、それに該当する範囲が許容範囲となるように、プロファイル許容範囲設定手段5が許容範囲を自動生成する。
【0040】
プロファイル異常検出手段6は、高さプロファイルにおける高さ情報が許容範囲から外れている場合、その場所に異常の可能性があると判定する(ステップS6)。
【0041】
ユーザは、異常の可能性があるとして特定された位置について実際に検査を行う(ステップS7)。この場合、その位置に異常が見られた場合(ステップS8)には、本実施形態の検査装置(検査方法)は実際のボンディング状況を正確に反映したものであり、この検査を終了する場合(ステップS9)には終了する。一方、実際に検査を行った結果(ステップS7)、その位置に異常が見られなかった場合(ステップS8)には、ステップS5に戻って、最大値及び最小値を変更する。すなわち、許容範囲の再設定を行う。これにより、実際のボンディング状況を正確に反映した許容範囲とすることができ、検査の信頼性を高いものとすることができる。
【0042】
なお、ワークの検査を行っている間やワークの検査を行った後等、ワークの画面上の位置が最初の位置とずれても、プロファイルライン位置決め手段3は、画面上のワークに対して、プロファイルラインLを位置決めする。すなわち、プロファイルライン位置決め手段3は、予め記憶されたワークのモデルとプロファイルラインLとの相対的な位置関係に基づいて、記憶されている位置関係と同様になるように、プロファイルラインLの位置を修正する。つまり、プロファイルライン位置決め手段3は、モデルがずれた位置に合わせてプロファイルラインLをずらすため、プロファイルラインLはそれに追従して位置決めされ、検査位置を一定のものとすることができる。なお、この位置決めは全焦点画像を用いて行っても距離画像を用いて行ってもよい。
【0043】
本発明のボンディングワイヤの検査装置、ボンディングワイヤの検査方法、及びボンディングワイヤの検査プログラムは、撮像手段1により、焦点の合った画素位置が夫々異なる複数の画像が取得されるとともに、ワイヤがボンディングされた領域の高さ情報を取得することができる。これらの情報から、ワイヤの高さ方向において、高さ情報となる高さプロファイルを作成する。作成した高さプロファイルにおいて、高さの最小値から最大値までを示す許容範囲を設定し、高さプロファイルにおける高さ情報が前記許容範囲から外れている場合に異常と判定するものである。これにより、本発明のボンディングワイヤの検査装置及びボンディングワイヤの検査方法は、検査の信頼性が高く、処理速度を向上させることができる。
【0044】
なお、前記実施形態では、プロファイルライン上の全ての領域を検査位置としたが、画像上のワイヤW1~W7とプロファイルラインLとが交差する位置の夫々を、ワイヤの高さを検査する検査位置としてもよい。この場合、検査位置が点在することになる。また、画像上のワイヤW1~W7とプロファイルラインLとが交差する位置以外の位置を、ワイヤの高さを検査する検査位置としてもよい。この場合、検査位置は所定間隔毎に存在することになる。
【0045】
また、実施形態では、許容範囲の設定は、最小値の波形から最大値の波形までの間としたが、最小値の波形のみから許容範囲を設定してもよい。この場合、その位置において、高さ情報が最小値を下回ることがなければ異常がないとする。また、最大値の波形のみから許容範囲を設定してもよい。この場合、その位置において、高さ情報が最大値を上回ることがなければ異常がないとする。
【0046】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、撮像手段は、CCDカメラに限られず、CMOSカメラ等種々のものを採用することができる。撮影方向としては、撮像物体の上方に撮像手段が位置し、撮像手段が上下動するものであったが、撮像物体に対して水平方向に撮像手段が位置して、撮像手段が水平方向に移動してもよい。また、撮像手段を固定して、撮像物体側が撮像手段に対して接近・離間してもよい。
【0047】
画像作成手段は、距離画像のみを作成するものであってもよいし、全焦点画像のみを作成するものであってもよい。ワイヤが撮像された画像として実施形態では距離画像を使用したが、全焦点画像を使用するとともに、高さデータを用いて行ってもよい。プロファイルラインを複数設ける場合は、3本以上であってもよい。プロファイルラインは規則性を有さないラインでもよいし、曲がりがあるラインでもよい。プロファイルライン位置決め手段やプロファイル許容範囲設定用データ格納部は省略することができる。検査するワイヤの数は任意であって、少なくとも1本あればよく、多数(例えば100本以上)でもよい。
【符号の説明】
【0048】
1撮像手段
2画像作成手段
3プロファイルライン位置決め手段
4高さプロファイル生成手段
5プロファイル許容範囲設定手段
6プロファイル異常検出手段
12距離画像
13プロファイル許容範囲設定用データ格納部
20 ワーク
W ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7