(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】シート体の検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20230824BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/892 B
G01N21/89 T
(21)【出願番号】P 2019147596
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】込谷 太一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勲
(72)【発明者】
【氏名】杉本 洋己
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-012423(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159352(WO,A1)
【文献】特開2016-125817(JP,A)
【文献】特開2002-062122(JP,A)
【文献】特開2004-296309(JP,A)
【文献】特開昭60-110194(JP,A)
【文献】特開2015-225041(JP,A)
【文献】特開2013-246106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体の欠陥を検査する検査装置であって、
透過光を利用し、前記シート体の表面に付着した異物、傷および前記シート体の内部に存在するボイドの少なくとも1つの欠陥を検出する第1検出
工程と、前記シート体の内部での屈折光を利用し、前記シート体の表面の微細な線状の汚れ、付着物、引っ掻き傷およびしわの少なくとも1つである微細欠陥を検出する第2検出
工程と、反射光を利用し、前記シート体のけずれおよび縁部の欠けの少なくとも1つの欠陥を検出する第3検出
工程とを実行するように構成された検出装置と、
該検出
装置に対して前記シート体を搬送する搬送装置と、
前記検出装置を制御する制御装置と、を備え
、
前記検出装置は、前記シート体の表面を撮影するカメラと、前記シート体の表面に向けて、前記カメラの光軸に対して傾斜した方向に投光するように構成された第1の照明装置と、前記シート体の裏面に向けて、前記カメラの光軸と平行な方向に投光するように構成された第2の照明装置と、前記第2の照明装置を移動させる移動機構とを含み、
前記制御装置は、
前記移動機構を制御して前記カメラに正対する第1の位置に前記第2の照明装置を移動させてから、前記第2の照明装置のみを点灯して前記第1検出工程を実行させ、
前記移動機構を制御して前記カメラに正対しない第2の位置に前記第2の照明装置を移動させてから、前記第2の照明装置のみを点灯して前記第2検出工程を実行させ、
前記第1の照明装置のみを点灯して前記第3検出工程を実行させる、
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記搬送装置は、矩形状のシート体を保持して搬送する搬送ステージを含み、該搬送ステージは、前記矩形状のシート体の四隅を突き当てて保持する保持部を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート体の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシート体の検査装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。同文献には、連続的に搬送されるシート状物(シート体)に対して、光を照射し、シート体からの透過光または反射光を投影し、当該投影像を撮像し、当該撮像された画像データからシート状物に存在する欠点(欠陥)を検出する検査系が記載されている。そして同文献において検出対象となる欠陥は、シート体の搬送方向と同一方向に延びる凹凸状の形状のものを指し、例えばスジやキズなどのシート状物の表面に存在するものであることが記載されている。
【0003】
一方、シート体の検査を精度高く行うためには、検査系に対してシート体を精度高く搬送する搬送系が適用されることが強く望ましい。そのために、特許文献2には、配線板やリプレグ等の基材(シート体)を搬送する際に、位置精度良く搬送し、且つシート体に過大な荷重がかかることを防ぐことができる構成が開示されている。具体的には、並列に設けられたレールのそれぞれにクランプ部を取り付け、これをレールに沿って直動させる機構が開示されている。そして、クランプ部にはレールに沿ったシート体の側端部を挟持するクランプ体が設けられ、シート体の一側端部を挟持するクランプ体はシート体の搬送方向と直交する方向に遊動自在な状態とし、シート体の他側端部を挟持するクランプ体はシート体の搬送方向と直交する方向へは移動しないような状態とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/134958号
【文献】特開2005-15147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、主としてシート体の表面に現れる欠陥を検出対象としている。しかし実際には、シート体には様々な種類があり、現れる欠陥のも様々なものがある。また、特許文献2では、レールに沿ったシート体の両側端部をクランプ体に挟持させる動作、即ちシート体をセットする動作が煩雑となることなどが考えられる。
【0006】
よって本発明は、広範なシート体に対して汎用性の高い検査を実施できるようにすることを目的とする。
【0007】
また、本発明は、広範なシート体のセット動作を容易且つ正確に行うことができ、さらに精度の高い搬送を行うことができるようにすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明は、シート体の欠陥を検査する検査装置であって、
透過光を利用し、前記シート体の表面に付着した異物、傷および前記シート体の内部に存在するボイドの少なくとも1つの欠陥を検出する第1検出手段、前記シート体の内部での屈折光を利用し、前記シート体の表面の微細な線状の汚れ、付着物、引っ掻き傷およびしわの少なくとも1つである微細欠陥を検出する第2検出手段、および、反射光を利用し、前記シート体のけずれおよび縁部の欠けの少なくとも1つの欠陥を検出する第3検出手段を含む検出装置と、
該検出手段に対して前記シート体を搬送する搬送装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記搬送装置は、矩形状のシート体を保持して搬送する搬送ステージを含み、該搬送ステージは、前記矩形状のシート体の四隅を突き当てて保持する保持部を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広範なシート体に対して汎用性の高い検査を実施できるようになる。また、本発明によれば、広範なシート体のセット動作を容易且つ正確に行うことができ、さらに精度の高い搬送を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシート体の検査装置を示す模式図である。
【
図2】
図1の検査装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図2の制御系による検査処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の処理手順において第1検査工程で実施される検出動作を説明するための模式図である。
【
図5】(a)および(b)は、
図3の処理手順において第2検査工程で実施される検出動作を説明するための模式図である。
【
図6】
図3の処理手順において第3検査工程で実施される検出動作を説明するための模式図である。
【
図7】検査装置の構成要素である搬送装置に用いられるシート体の搬送ステージの構成例を示す斜視図である。
【
図8】
図7のVIII方向から見た搬送ステージを示す側面図である。
【
図9】
図7の搬送ステージに配置されるシート体の保持部の移動態様を説明するための斜視図である。
【
図10】保持部の構造の一例を示す分解斜視図である。
【
図11】(a)から(c)は、
図10の保持部によるシート体の保持態様を説明するための説明図である。
【
図12】保持部の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0013】
なお、本発明の対象となるシート体には、プラスチック、ガラス、炭素繊維、金属、紙、不織布、ゴムまたはその他の材料を基材として構成されたものが含まれる。本発明は、例えばタッチパネル、液晶パネル、プリプレグなど剛性のあるシート体のほか、フレキシブルプリント基板などの薄く且つ柔軟性のあるシート体などの検査にも適用が可能である。また、本発明によって検査される欠陥種には、異物、傷、汚れ、汚点、黒点、ムラ、しわ、ストリーク、気泡、欠け、打痕、ピンホール、凹凸などが含まれる。
【0014】
(検査装置の概要)
図1は、本発明の一実施形態に係るシート体の検査装置を示す模式図である。本実施形態に係る検査装置は、大別して、検出装置100、搬送装置200および制御装置300で構成されている。なお、以下ではとして、平面視にて矩形状のタッチパネル形態のシート体を検査対象とする場合を例示する。
【0015】
検出装置100は、シート体1の欠陥検出のための装置であって、搬送面の上方にカメラ102および反射系の照明装置104を有し、搬送面の下方に透過系の照明装置112を有する。本実施形態では、カメラ102は搬送面に対して光軸が垂直方向となるように固定して配置され、照明装置104はカメラ102の光軸に対して傾斜した方向に投光してシート体1に照射するように固定して配置されている。照明装置112は、移動機構114によって支持され、図の左右方向に移動した位置に設定可能である。移動機構114としては、例えば、照明装置112を搭載するキャリッジ、キャリッジをガイドするためのガイド、照明装置112を移動させるための駆動源であるDCサーボモータ、およびその駆動力をキャリッジに伝達する伝動機構などを備えることができる。また、照明装置112の移動位置、すなわちカメラ102と正対する位置および非対向の位置(以下、それぞれ第1検査位置および第2検査位置ともいう)を管理するためのセンサ116Mおよび116Rを設けることができる。しかし駆動源としてパルスモータが使用される場合には、これらのセンサは必須ではない。
【0016】
搬送装置200は、詳しくは後述するが、
図1に直交する方向(シート体1の搬送方向に直交する方向)に所定の距離を置いて並置された一対のリニアモータと、シート体1を支持し、リニアモータの駆動に応じて図中FおよびBで示す搬送方向に移動可能な搬送ステージと、を有する搬送機構210を含む。後述するように、搬送ステージは矩形状のシート体1のF方向の端部(前端部)にある2つの角部を突き当てて固定する2つの保持部と、B方向の端部(後端部)にある2つの角部を突き当てて固定する2つの保持部と、を有しており、搬送ステージに対して前者は固定され、後者は可動なものとなっている。
図1はシート体1のセット時ないしF方向への搬送開始時の状態を示しており、この状態において搬送方向の寸法によらずシート体1の前端部の位置は不変であるが、後端部の位置はシート体1の搬送方向の寸法に応じて変化し得る。
【0017】
また、搬送装置200には、シート体1の搬送位置および搬送開始/終了のタイミングを認識するために利用されるセンサ232S、232Lおよび232Eが配置されている。センサ232Lはセットされたシート体1の前端部に対応した位置に配置される一方、センサ232Sは、後述する搬送ステージの検査開始前(搬送開始前)の後端部に対応した位置(原点)に配置される。センサ232Eは、シート体1をF方向に搬送しつつ行われる検査が終了し、検出装置100から離れたシート体1の後端部を認識する位置に配置される。
【0018】
図2は、制御部300を含む検査装置の制御系の構成例を示すブロック図である。制御装置300は、制御ユニット302、入力インターフェース304、出力インターフェース306、設定部308、表示部310および外部記憶装置312を含む。
【0019】
制御ユニット302は、検査装置の各部を統合的に制御するとともにデータ管理を行う。具体的には、
図3について後述する処理手順を実行するCPUあるいはASIC、当該処理手順に対応したプログラムその他の固定データを格納したROM、処理の過程でデータの一時保存などに利用されるRAM、所要のデータを装置の電源オフ時にも保存するためなどに利用されるEEPROM、およびカメラ102にて撮影された画像を処理する基板等を有して構成される。なお、制御ユニット302はパーソナルコンピュータの形態であってもよい。
【0020】
入力インターフェース304には、カメラ102、
図1に示したセンサ116M,116Rを含む検査装置系のセンサ類116、および、同じくセンサ232S,232L,232Bを含む搬送装置系のセンサ類232が接続される。これらのセンサ類には、何らかの異常が生じたときにこれを検知して非常停止を行うためのセンサが含まれ得る。また、入力インターフェース304には、一対のリニアモータ242R,242Lのそれぞれに対応して設けられ、シート体1の搬送速度を検出するリニアスケール244R,244Lが接続される。
【0021】
出力インターフェース306には、透過系の照明装置112と、と、反射系の照明装置104とが接続される。また、出力インターフェース306には、アンプ等を含む不図示のモータドライバを介して、移動機構114および一対のリニアモータ242R,242Lが接続される。後述する搬送ステージは一対のリニアモータ242R,242Lによって搬送される。しかしリニアモータの特性のばらつきや、加わる荷重のばらつきによっては、一定の電力で駆動しても搬送速度に差が生じることがある。そこで本実施形態では、リニアスケール244R,244Lによって搬送速度を常時監視し、速度差を補償して(例えば、相対的に搬送速度が低速となるリニアモータに対して駆動電力を増加させる)、姿勢の崩れのない搬送を可能とする。
【0022】
設定部308は、ユーザが検査装置に対し所要の設定を行ったり、検査の開始を指示したりするために利用されるキー,スイッチその他の入力手段を有する。表示部310は、検査装置の状態や、シート体1の検査過程検査結果などを表示するディスプレイの形態を有する。外部記憶装置312は、例えば検査対象のシート体1に対応づけて、欠陥の有無や、欠陥の位置などを示すマッピングデータを記憶するために利用することができる。
【0023】
(検査処理)
本実施形態に係る検査処理は、シート体1を搬送装置200により搬送し、検出装置100を通過させることで行われ、次の3つの検査工程が実施される。すなわち、
・透過光を利用し、シート体1の表面に付着した異物,傷、およびシート体1の内部に存在するボイド(気孔)などの少なくとも1つの欠陥を検出する第1検査工程、
・シート体1の内部での屈折光を利用し、シート体1の表面の微細な線状の汚れや付着物、引っ掻き傷およびしわなどの少なくとも1つ、すなわちシート体表面に対し高さあるいは深さがないために透過光や反射光では検出しきれない欠陥(以下、微細欠陥)を検出する第2検査工程、および
・反射光を利用し、シート体1のけずれや縁部の欠けなどの少なくとも1つの欠陥を検出する第3検査工程、
図3は本実施形態に係る検査処理手順の一例を示すフローチャート、
図4、
図5および
図6は、それぞれ、第1、第2および第3検査工程における検査の態様を示す模式図であり、これらの図を用いて本実施形態の検査処理を説明する。
【0024】
図3の手順がスタートすると、ステップS1にて、ユーザは
図1に示す位置にシート体1をセットする。ここで、センサ232Sが搬送開始前の搬送ステージの後端部を検出し、且つセンサ232Lがシート体1の前端部を検出している状態となると、ステップS3にてセットが完了したと判定され、さらにステップS5にて検査開始の指示が入力されたことが確認されると、第1検査工程が実施される(ステップS7)。
【0025】
第1検査工程では、
図4に示すように、シート体1をF方向に搬送するとともに、カメラ102に正対する位置(第1検査位置)にある照明装置112を点灯し、シート体1を介した透過光をカメラ102で受光して、シート体1の搬送方向長全体にわたり異物,傷,ボイドなどの欠陥の有無を検出する。制御装置300では、これらの欠陥の有無を認識し、欠陥がある場合にはその位置のマッピングを行う。
【0026】
シート体1が検出装置100を通過し、その後端部がセンサ232Eによって検出されると、F方向へのシート体1の搬送を停止し、第1検査工程は終了となる。次に、ステップS9にて移動機構114を駆動し、照明装置112を、カメラ102に正対する位置から非対向の位置(
図1中、正対位置よりF方向下流側にある第2検査位置)へと移動し、第2検査工程を開始する(ステップS11)。
【0027】
第2検査工程では、
図5(a)に示すように、シート体1をB方向に搬送するとともに、カメラ102に非対向位置に設定された照明装置112を点灯し、シート体1の内部の屈折光を利用して微細欠陥の有無を検出する。微細欠陥に光が直接照射されると、照射光は微細欠陥をそのまま透過してしまい、照明装置112が第1検査位置にある場合にはその検出が困難となる。しかし照明装置112が第2検査位置にある場合、シート体1に光が照射されると、
図5(b)に示すように、入射した光の一部はシート体1をそのまま透過するが、シート体1と外部との界面で全反射され、シート体1の内部を屈折しながら進行する光も存在する。その進行過程で微細欠陥Wに突き当たると屈折光の乱反射が生じ、そこから一部の光はカメラへと向かう。つまり、照明装置112がカメラ102に非対向の位置にあれば、他の位置から来る屈折光によって微細欠陥をいわば浮かび上がらせることで、その検出が可能となる。このように、照明装置112をカメラ102に対して非対向の位置に設定してシート体1をB方向に搬送することで、シート体1の搬送方向長全体にわたり微細欠陥の有無を検出する。制御装置300では、微細欠陥の有無を認識し、微細欠陥がある場合にはその位置のマッピングを行う。
【0028】
シート体1が検出装置100を通過すると、B方向に搬送されるときの搬送ステージの先端部およびシート体の後端部がセンサ232Sおよび232Lによって検出される
図1の状態となる。そこでB方向へのシート体1の搬送を停止し、第2検査工程は終了となる。次に、ステップS13にて移動機構114を駆動し、照明装置112をカメラ102に正対する位置(第1検査位置)へと移動し、第3検査工程を開始する(ステップS15)。
【0029】
第3検査工程では、
図6に示すように、シート体1を再びF方向に搬送するとともに、カメラ102の光軸に対して傾斜した方向に投光してシート体1に照射する照明装置104を点灯し、シート体1からの反射光をカメラ102で受光して、シート体1の搬送方向長全体にわたり、シート体1のけずれや縁部の欠けなどの欠陥の有無を検出する。この際、照明装置104が斜めに投光することで、それらの欠陥がある場合には影が作られるので、検出がし易くなる。制御装置300では、これらの欠陥の有無を認識し、欠陥がある場合にはその位置のマッピングを行う。
【0030】
以上の検査工程が終了すると、ステップS17にてシート体1を取り外し位置に搬送し、ステップS19にてユーザが取り外しを行う。なお、取り外し位置は
図1に示す位置でもよいし、検出装置100を挟んで反対側の位置であってもよい。その後、ユーザは後述の保持部によって検出の死角となっていた矩形状のシート体1の4つの角部(四隅)を目視検査し(ステップS21)、検査処理が終了となる。
【0031】
(検査処理の変形例)
以上の検査処理では、検出装置100に対してシート体1を1.5往復させれば、第1~第3検査工程によって様々な欠陥の検査が可能となる。しかし往復搬送を行わず、一方向のみへの移動によって検出処理を行うようにすることもできる。
【0032】
また、第1~第3検査工程はこの順番で実施されることを必須とするものではない。例えば、第3、第2、第1検査工程の順序で実施されるようにしてもよい。あるいは、照明装置112の移動位置(第2検査位置)を
図5とは反対側のB方向に偏倚した位置とすれば、第2、第3(または第1)、第1(または第3)検査工程の順序で実施することも可能である。
【0033】
いずれにしても、上記検査処理手法はシート体の種類を選ばずに対応可能なものである。透明もしくは半透明の素材でなるものであれば、上記第1~第3検査工程をすべて実施することができる。また、欠陥の種類によっては各照明装置の角度や移動距離を変化させ、検査工程数を増やすことも可能である。例えば反射系の照明装置104にモータを接続し、可動または回動可能としてもよい。
【0034】
シート体の製造者において多種のシート体(実施形態に係る矩形状のものに限らない)が検査対象となり得ることを考慮すれば、様々な欠陥の検査を行い得るように構成することは検査装置の汎用性を向上する上で好ましいものである。シート体の種類によって不要な検査工程があれば、その検査工程をスキップするようにしてもよい。例えばシート体が非光透過性のものである場合には、反射光のみを用いたけずれや縁部の欠けなどの欠陥検査が行われるようにしてもよく、さらに照明の色を変えることで微細欠陥の検出が可能となるのであれば、別の照明装置を付加するか、あるいは調色可能な照明装置を用いることもできる。
【0035】
また、上述のように、制御装置300において検査結果をマッピングしておくことは好ましい。例えば欠陥の現われる位置に規則性があれば、製造工程の改善等に資することができるからである。さらに、印刷装置を付加し、欠陥部分にマーキングするようにすれば(欠陥の種類に応じて異なるマーキングを行うものでもよい)、ユーザ(検査者)は一目瞭然に欠陥の有無とその発生位置とを認識することができる。
【0036】
加えて、シート体の搬送速度は一定である必要はなく、シート体の種類や欠陥の種類、あるいは検査処理の内容に応じて可変としてもよい。
【0037】
(搬送装置)
図7は、搬送機構210に用いられるシート体の搬送ステージの構成例を示す斜視図、
図8は、
図7のVIII方向から搬送ステージを見た側面図、
図9は、搬送ステージに配置されるシート体の保持部の移動態様を説明するための斜視図である。なお、これらの図においてFおよびB方向(F-B方向)は
図1におけるFおよびB方向(シート体1の搬送方向)に一致しており、RおよびL方向(R-L方向は)はF-B方向に直交する方向として定義される。
【0038】
搬送ステージ250は矩形状に形成されたフレーム構造を有し、F方向の前縁側に位置してR-L方向に延在する前縁側フレーム要素252Fと、後縁側に位置してR-L方向に延在する後縁側フレーム要素252Bと、それらをつなぐようにF-B方向に延在する側縁側フレーム要素252R,252Lと、を有する。
【0039】
図8に示すように、リニアモータ242R,242Lは、固定子部材246R,246Lと、可動子部材248R,248Lとから構成される。固定子部材246R,246Lは、略U字形状の横断面を有して搬送ステージの可動範囲にわたって延在する。可動子部材248R,248Lは、側縁側フレーム要素252R,252Lの下面から突出するようにして取り付けられ、固定子部材246R,246Lの溝に適切なクリアランスをもって嵌め合わされるとともに、断面略U字形状を呈する固定子部材246R,246Lの2つの上端面によって摺動可能に支持される。固定子部材246R,246Lの溝形状および可動子部材248R,248Lの外観形状は、可動子部材248R,248Lの浮き上がりが生じず、且つガタツキのない摺動が可能となるように適切に定められている。
【0040】
前縁側フレーム要素252F上にはR-L方向に延在するガイド254Fが設けられ、一対の保持部270Fr,270Flを支持している。一対の保持部270Fr,270Flは、ロックレバー272Fr,272Flを操作することによってガイド254Fに対してR-L方向に摺動可能な状態または固定状態となる。ロックレバー272Fr,272Flは、例えばユーザが操作力を加えることで、ガイド254Fに対し当接/離脱が可能なアーム部を有したものとすることができ、任意の位置に保持部270Fr,270Flを設定することができる。
【0041】
しかしこれに限らず、ロックレバー272Fr,272Flおよびガイド254Fの構造は適宜の形態とすることが可能である。例えば、シート体の寸法の種類が定まっているのであれば、ロックレバー272Fr,272Flにばね付勢されるロッドを設ける一方、ガイド254Fにはシート体の寸法の種類に応じた位置に係合穴を設け、保持部270Fr,270Flを所望の位置に移動させて両者を適宜係合させることで保持部270Fr,270Flの位置設定を行うようにしてもよい。また、係合穴に対応する位置に寸法に応じた表示が付されていてもよい。これらのことは、以下に述べるロックレバー等についても同様である。
【0042】
側縁側フレーム要素252R,252Lの上にはガイド254R,254Lが設けられ、それらのガイド254Rおよび254L間に、可動フレーム要素256が架け渡された状態で支持されている。可動フレーム要素256は、ロックレバー258R,258Lを操作することによって、ガイド254Rおよび254Lに対してF-B方向に摺動可能な状態または固定状態となる。また、可動フレーム要素256にはR-L方向に延在するガイド254Bが設けられ、一対の保持部270Br,270Blを支持している。一対の保持部270Br,270Blは、ロックレバー272Br,272Blを操作することによってガイド254Bに対してR-L方向に摺動可能な状態または固定状態となる。
【0043】
シート体1には種々の寸法のものが存在する。したがって、
図9に示すように、寸法に合わせて保持部270Fr,270FlのR-L方向の位置、可動フレーム要素256ひいては保持部270Br,270BlのF-B方向の位置、および保持部270Br,270BlのR-L方向の位置を調整することで、シート体1の四隅を保持部270Fr,270Fl;270Br,270Blにて保持した状態とすることができる。本実施形態の搬送ステージ250は、例えば5~32インチのタッチパネルに対応した構造を有するものとしている。
【0044】
図10は、保持部の構造の一例を示す分解斜視図である。なお同図は保持部270Flに対応したものを示しているが、構造は他の保持部についても同様である。
【0045】
保持部270Flは、概して、ガイド254Fに沿って摺動可能な摺動ブロック282と、これに固定して搭載される保持ブロック284とを有している。摺動ブロック282には例えば2つのダボ282a,282bが立設され、これらは保持ブロック284の対応位置に設けた284a,284bに挿入される。また、摺動ブロック282に設けたねじ穴282cには、保持ブロック284の対応位置に設けた穴を通してねじ286が螺着される。これらによって保持ブロック284はガタツキのない状態で摺動ブロック282に固定される。
【0046】
保持ブロック284は、平面視にて矩形状のシート体1の角に隣り合う2辺の部分を突き当てる突き当て面283a,283bと、シート体1の底面の角部近傍の部分を載置する載置面283cとを有する。したがって、保持部270Fr,270Fl;270Br,270Blの位置を調整しつつシート体1をこれらの保持部にセットすることによって、シート体1は、突き当て面283a,283bにより平面方向の変位が阻止されつつ、底面の角部近傍が載置面283cに載置された状態となり、四隅がしっかりと保持されることになる。
【0047】
図11(a)~(c)は、はシート体1の保持態様を説明するための説明図である。同図(a)および(b)は、それぞれ、シート体1の保持状態を示す斜視図およびその一部(保持部270Fl近傍の部分)の拡大図である。シート体1の隅部に付属物が存在していない場合には、突き当て面283a,283bにシート体1の角に隣り合う2辺の部分を突き当てた状態で保持しても問題はない。
【0048】
しかしシート体1によっては、隅部近傍の1辺に電極配線が配置されていることもある。この場合、突き当て面283a,283bにシート体1の角に隣り合う2辺の部分を突き当てた状態とすると、電極配線が直角に屈曲し、これを損傷することが考えられる。この場合には、同図(c)に示すように、電極配線1aが配された1辺の部分は突き当て面(図示の例では保持部270Blの突き当て面283a)に突き当てず、他の1辺の部分のみを突き当て面(図示の例では保持部270Blの突き当て面283b)に突き当てるようにして保持を行い、電極配線1aを緩やかに湾曲させて負荷を与えないようにすればよい。この場合でも、他の3つの保持部(保持部270Fr,270Fl,270Br)でそれぞれ2辺の部分の突き当てが行われていれば、7箇所で突き当てが行われるので、シート体1の保持性能に与える影響は実質的にないといい得る。
【0049】
(実施形態に係る搬送ステージの優位性)
上述した実施形態に係る搬送ステージは、特許文献2に開示された技術、つまり並列に設けられたレールのそれぞれにクランプ部を取り付け、シート体の一側端部を挟持するクランプ体を設けた構成よりも次の諸点で有利である。
【0050】
すなわち、上述の搬送ステージでは、4つの保持部の位置を調整しつつシート体1の四隅を突き当て面に突き当てることでシート体の固定保持が行われるので、シート体のセット動作が容易且つ正確なものとなる。また、シート体をクランプしない(挟まない)ので、シート体に与える負荷が少ない。さらに、シート体を片持ち状態のクランプ部の自由端側に設けたクランプ体により保持するものではないので、搬送時の加減速に起因した揺らぎの影響を実質的に受けることがない。加えて、シート体の被保持部分には目視検査が行われるが、側端部に被保持部分があるよりも、四隅に被保持部分があるほうが目視検査の位置を把握し易く、またシート体を持ち替えたり、被保持部分を探したりするという煩雑さを排除できる。
【0051】
(搬送ステージの変形例)
上述した実施形態に係る搬送ステージは、随所に述べた変形例だけでなく、次のように変形することも可能である。
【0052】
例えば、上述した実施形態では4つの保持部270Fr,270Fl;270Br,270BlのすべてをR-L方向に移動可能なものとした。これは、任意の搬送方向の軸線を基準として搬送を行える上で有利である。しかし一方のガイド、例えばガイド254Lを基準としてシート体を保持するのであれば、保持部270Fl,270BlはR-L方向に関して固定されていてもよい。また、例えばR-L方向の中心線を基準として搬送を行うのであれば、一方の保持部(270Fr,270Br)を一方向に所定量移動させたとき、これに追従して他方の保持部(270Fl270Bl)が逆方向に同じ量だけ移動するようなリンク機構が付加されてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態意では可動フレーム要素を後縁側ステージ要素252Bの側に設けたが、前縁側ステージ要素252Fの側に設けてもよい。
【0054】
さらに、シート体1には種々の厚みのものが存在し、被写界深度以上にシート体の厚みが変わることもある。この場合、カメラ102に昇降機構を付加することでも対応可能であるが、検査は通常、同じ厚みの数十枚あるいは数百枚のシート体を単位として行われると考えられるので、上面からの深さD(
図10参照)が異なる保持部ないし保持ブロックを用意し、適宜交換してシート体の厚みの変化に対応したほうがコスト面で有利である。
【0055】
また、検査対象となるシート体には、剛性の高いものだけでなく、薄く且つ柔軟性の高いものも存在する。この場合、
図12に示すように、保持ブロック284の側面から載置面283cに至る吸引孔290を形成し、当該側面上の開口に吸引チューブを接続するとともに、載置面283上の開口290a(図示の礼では2つの開口)から吸引力を作用させることで、固定保持を行うことができる。また、吸引力が適切に作用するように、開口290aに関連してシート体1との密着性を高める部材(Oリングなど)を設けてもよい。
【0056】
加えて、上述した搬送装置200は、先述した検出処理を行う検出装置100に限らず、様々な検出装置にも好ましく適用が可能である。しかし複数の検査処理を経るために検出装置に対し複数回の搬送(上例では1.5回の往復)が行われることや、シート体の種類や欠陥の種類、あるいは検査処理の内容に応じて搬送速度が可変とされることを考慮すれば、どのような条件であってもシート体をしっかりと保持できる上述の搬送装置の検出装置に対するマッチング性は高く、その適用は特に好ましいものといい得る。
【符号の説明】
【0057】
1 シート体
100 検出装置
102 カメラ
104、112 照明装置
114 移動機構
200 搬送装置
210 搬送機構
242R、242L リニアモータ
250 搬送ステージ
252F、252B、252R、252L フレーム要素
254F、254B、254R、254L ガイド
256 可動フレーム要素
258R、258L、272Fr、272Fl、272Br、272Bl ロックレバー
270Fr、270Fl、270Br、270Bl 保持部
283a、283b 突き当て面
283c 載置面
284 保持ブロック
290 吸引孔
300 制御装置
302 制御ユニット