(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
F02D 11/02 20060101AFI20230824BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
F02D11/02 R
F02D9/02 331E
(21)【出願番号】P 2019158463
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】篠原 広廉
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090065(JP,A)
【文献】特開2015-081564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 11/02
F02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のハンドルバーに取り付けられるケースと、前記ハンドルバーの軸方向に前記ケースから延設されるスロットルグリップと、第1の連動部材と、第1の付勢部材とを備え、前記スロットルグリップは、前記ハンドルバーの軸周りの初期位置からの一方向である正方向に回転し得、且つ前記ハンドルバーの軸周りの前記初期位置からの他方向である逆方向に回転し得、前記第1の連動部材は前記スロットルグリップの前記正方向の回転及び前記逆方向の回転に連動して回転し得、前記第1の付勢部材は、前記第1の連動部材が前記正方向に回転する際、前記第1の連動部材を前記初期位置へ向けて付勢し、前記スロットルグリップが前記正方向に回転する際、前記車両はスロットルコントロール機能を発揮し、前記スロットルグリップが前記逆方向に回転する際、前記車両はクルーズコントロール機能を非作動とするスロットルグリップ装置において、
前記スロットルグリップの前記逆方向の回転に連動して回転し得る第2の連動部材と、 前記第2の連動部材が前記逆方向に回転する際、前記第2の連動部材を前記初期位置へ向けて付勢する第2の付勢部材と、を備え、
前記第1の連動部材の回転軸と前記第2の連動部材の回転軸が同一線上に配置され、前記第2の連動部材は第1の連動部材の一部を格納
し、
前記第2の連動部材を内部へ収容するケースをさらに備え、
前記ケースは前記内部へ突出するストッパ部を有し、
前記第2の付勢部材は、前記第2の連動部材を前記正方向に付勢し、
前記第2の連動部材は、前記第2の付勢部材と係合する係止部と、前記ストッパ部と当接する突起とを有し、
前記突起は、前記係止部と前記第2の付勢部材の回転軸とを結んだ線に直交し、かつ前記回転軸を通る線に対して、前記係止部とは反対側に配置されることを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記第1の付勢部材はコイル状のねじりバネからなり、前記第1の付勢部材及び前記第2の付勢部材は前記ハンドルバーの軸方向に並んで配置されることを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記係止部と前記突起は、前記第2の連動部材の回転軸を挟ん
で対向することを特徴とする請求項
2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記スロットルグリップが前記正方向に回転する際、前記第2の連動部材は回転せず、前記第2の付勢部材は変形せず、前記第2の連動部材を前記正方向に付勢し続けることを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記スロットルグリップが前記逆方向に回転する際、前記第1の連動部材及び前記第2の連動部材はいずれも前記逆方向に回転し得ることを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記第2の付勢部材は、1カ所が切り欠かれて形成された開口を有するC字状のスプリングからなることを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項7】
前記スロットルグリップが前記逆方向に回転する際、前記C字状のスプリングは前記開口を狭められるように変形することを特徴とする請求項
6記載のスロットルグリップ装置。
【請求項8】
前記C字状のスプリングは、前記開口の両端から径方向又は前記ハンドルバーの軸方向に突出する係合部を有し、さらに、前記係合部を介して前記第2の連動部材を前記正方向に付勢し、
前記第2の連動部材の突起は径方向又は前記ハンドルバーの軸方向に突出し、前記突起は前記ストッパ部に当接して第2の連動部材の前記正方向の回転を阻止することを特徴とする請求項
6又は
7記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のハンドルバーに取付けられ、運転手のスロットル操作を受け付けるスロットルグリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のハンドルバーには、運転手のスロットル操作を受け付けるスロットルグリップ装置が取り付けられる。スロットルグリップ装置はスロットルグリップとケースを備え、スロットルグリップはハンドルバーの中心軸周りに回転可能に配置され、ケースはリアハウジングとフロントハウジングからなり、リアハウジングとフロントハウジングによってハンドルバーを挟み込む。
【0003】
ケースの内部には、スロットルグリップの回転に連動して回転するローター部材と、磁気センサ、例えば、ホール素子が配置されたセンサ基板とが配置される。ローター部材は磁石を有し、磁気センサはローター部材の回転によって変化する磁石の磁束密度を計測し、スロットルグリップの回転角をECU等へ電気信号として伝達する。
【0004】
スロットルグリップ装置では、ケースの内部にローター部材と係合するコイル状のねじりバネからなるリターンスプリングが配置され、リターンスプリングは、アクセルを開く方向(以下、「正方向」という。)へ回転操作されたスロットルグリップを初期位置へ向けてローター部材を介して付勢する。
【0005】
近年、ハンドルバーを備える車両にもクルーズコントロール機能が付加されるが、スロットルグリップを正方向とは逆の方向(以下、単に「逆方向」という。)へ回転操作することでクルーズコントロール機能を解除する機能が車両に付与されることがある。このような車両では、逆方向へ回転操作されたスロットルグリップを初期位置へ向けて付勢する他のスプリングが設けられる。他のスプリングとしては、ハンドルバーの軸方向(以下、単に「軸方向」という。)に関してリターンスプリングに隣接して配置されるコイル状のねじりバネからなる他のリターンスプリング(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の他のリターンスプリングが配置される場合、軸方向に関して2つのコイル状のねじりバネが並んで配置されるため、スロットルグリップ装置が軸方向に関して大型化するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、大型化を抑制することができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のスロットルグリップ装置は、車両のハンドルバーに取り付けられるケースと、前記ハンドルバーの軸方向に前記ケースから延設されるスロットルグリップと、第1の連動部材と、第1の付勢部材とを備え、前記スロットルグリップは、前記ハンドルバーの軸周りの初期位置からの一方向である正方向に回転し得、且つ前記ハンドルバーの軸周りの前記初期位置からの他方向である逆方向に回転し得、前記第1の連動部材は前記スロットルグリップの前記正方向の回転及び前記逆方向の回転に連動して回転し得、前記第1の付勢部材は、前記第1の連動部材が前記正方向に回転する際、前記第1の連動部材を前記初期位置へ向けて付勢し、前記スロットルグリップが前記正方向に回転する際、前記車両はスロットルコントロール機能を発揮し、前記スロットルグリップが前記逆方向に回転する際、前記車両はクルーズコントロール機能を非作動とするスロットルグリップ装置において、前記スロットルグリップの前記逆方向の回転に連動して回転し得る第2の連動部材と、前記第2の連動部材が前記逆方向に回転する際、前記第2の連動部材を前記初期位置へ向けて付勢する第2の付勢部材と、を備え、前記第1の連動部材の回転軸と前記第2の連動部材の回転軸が同一線上に配置され、前記第2の連動部材は第1の連動部材の一部を格納し、前記第2の連動部材を内部へ収容するケースをさらに備え、前記ケースは前記内部へ突出するストッパ部を有し、前記第2の付勢部材は、前記第2の連動部材を前記正方向に付勢し、前記第2の連動部材は、前記第2の付勢部材と係合する係止部と、前記ストッパ部と当接する突起とを有し、前記突起は、前記係止部と前記第2の付勢部材の回転軸とを結んだ線に直交し、かつ前記回転軸を通る線に対して、前記係止部とは反対側に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の連動部材の回転軸と第2の連動部材の回転軸は同一線上に配置されるが、第2の連動部材が第1の連動部材の一部を格納するため、第1の連動部材と第2の連動部材を同一線に並べて配置する必要を無くすことができ、スロットルグリップ装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスロットルグリップ装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のケースが収容する各部品をハンドルバーの軸方向に沿って展開した分解斜視図である。
【
図3】リング部材、リターンスプリング及びローター部材の配置関係を説明するための斜視図である。
【
図4】リング部材、Cスプリング及びローター部材の配置関係を説明するための斜視図である。
【
図5】リング部材、Cスプリング、リターンスプリング及びローター部材の配置関係を説明するための斜視図である。
【
図6】スロットルグリップ装置におけるローター部材、リング部材、Cスプリング及びインナーケースの配置状態を説明するための断面図である。
【
図7】スロットルグリップの回転時におけるリング部材やローター部材の位置関係を説明するための図である。
【
図8】スロットルグリップの回転時における操作感の発生について説明するための図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係るスロットルグリップ装置の変形例の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るスロットルグリップ装置10の外観を概略的に示す斜視図である。
図1において、スロットルグリップ装置10は、車両のハンドルバー23に取り付けられるケース11と、ハンドルバー23の軸方向(図中、一点鎖線で示す)に沿ってケース11から延設されるスロットルグリップ12とを備える。ケース11はリアハウジングとフロントハウジングからなり、リアハウジングとフロントハウジングによってハンドルバーを挟み込む。スロットルグリップ12はハンドルバーの中心軸周り(以下、単に「中心軸周り」という。)に回転可能に配置され、初期位置から運転手側へ回転される方向(一方向)である正方向に回転し得るとともに、初期位置から車両の進行側へ回転される方向(他方向)である逆方向に回転し得る。
【0014】
スロットルグリップ装置10は運転手のスロットル操作を受け付け、スロットルグリップ12が正方向に回転操作されると、車両はスロットルコントロール機能を発揮し、スロットルグリップ12が逆方向に回転操作されると、車両はクルーズコントロール機能を非作動とする。
【0015】
図2は、
図1のケース11が収容する各部品をハンドルバー23の軸方向に沿って展開した分解斜視図である。
【0016】
図2において、ケース11の内部には、ハンドルバー23の軸方向に沿い、車両の中心側から、センサホルダ13、センサ基板14、インナーケース15、リング部材16(第2の連動部材)、Cスプリング17(第2の付勢部材)、ベースワッシャ18、リターンスプリング19(第1の付勢部材)、ローター部材20(第1の連動部材)及びカバー21が配置され、インナーケース15へカバー21を複数のねじ22で取り付ける際、リング部材16~ローター部材20は、インナーケース15の内部へ収容される。センサ基板14はセンサホルダ13へ嵌合され、センサホルダ13はインナーケース15へ取り付けられる。
【0017】
リング部材16やローター部材20はそれぞれ中心軸周りに回転可能にインナーケース15の内部へ収容され、リング部材16は、スロットルグリップ12の逆方向の回転に連動して逆方向に回転し、ローター部材20は、スロットルグリップ12の正方向の回転に連動して正方向に回転するとともに、スロットルグリップ12の逆方向の回転に連動して逆方向に回転する。ここで、ローター部材20の回転軸とリング部材16の回転軸は同一線上に配置される。なお、リング部材16も、スロットルグリップ12の正方向の回転に連動して所定位置まで正方向に回転するが、所定位置に達した後は、スロットルグリップ12がさらに正方向へ回転しても、リング部材16は正方向へ回転しない。
【0018】
ローター部材20はマグネット(不図示)をセンサ基板14へ対向させるように保持し、センサ基板14の磁気センサ、例えば、ホール素子はローター部材20の回転に伴う磁束密度の変化を検知することにより、ローター部材20の回転角、すなわち、スロットルグリップ12の回転角を検出する。検出されたスロットルグリップ12の回転角は電気信号として車両のECU等へ送信され、該電気信号に基づいてスロットルコントロール機能が発揮される。
【0019】
例えば、ローター部材20が逆方向に回転した際、逆方向の回転に伴う磁束の変化等をセンサ基板14の磁気センサが検知し、その旨を電気信号として車両のECU等へ送信し、車両は該電気信号に基づいてクルーズコントロール機能を非作動とする。
【0020】
Cスプリング17は、円環状部材を1カ所切り欠いた開口17dを有するC字状のスプリングであり、開口17dの両端から径方向に突出する2つのフック17a,17b(係合部)を有する。なお、フック17aやフック17bはハンドルバー23の軸方向に突出してもよい。リターンスプリング19は、コイル状のねじりバネからなり、ねじりバネを構成する線材の両端はそれぞれ径方向に突出して2つのフック19a,19bを構成する。また、フック19aやフック19bもハンドルバー23の軸方向に突出してもよい。
【0021】
図3乃至
図5は、
図2におけるリング部材16、Cスプリング17、リターンスプリング19及びローター部材20の配置関係を説明するための斜視図である。なお、各図では、構成の理解を容易にするために、各部品を適宜省略している。
【0022】
図3及び
図4において、リング部材16及びローター部材20はいずれも略円筒状の部材からなり、ローター部材20の円筒部はリング部材16の円筒部よりも小径に構成され、リング部材16の円筒部はローター部材20の円筒部を同軸に収容する。また、リング部材16の円筒部にはCスプリング17及びリターンスプリング19がそれぞれ巻回するように取り付けられる。Cスプリング17及びリターンスプリング19の間にリング状のベースワッシャ18が介在し、Cスプリング17及びリターンスプリング19の干渉を防止する。
【0023】
図3に示すように、リターンスプリング19の一方のフック19aはリング部材16の係止部16aに係合するとともに、他方のフック19bはローター部材20の係止部20aに係合する。スロットルグリップ12が正方向に回転する際、ローター部材20は正方向に回転するが、リング部材16は初期位置から正方向へ回転しない。したがって、スロットルグリップ12が正方向に回転すると、リング部材16の係止部16aと係合するリターンスプリング19のフック19aが移動しないため、ローター部材20の係止部20aがフック19bを介してリターンスプリング19を捻る。これにより、リターンスプリング19に反力が生じ、リターンスプリング19は係止部20aを介してローター部材20を初期位置へ向けて付勢する。
【0024】
図4に示すように、Cスプリング17のフック17aはリング部材16の係止部16aに係合する。一方、Cスプリング17のフック17bはインナーケース15の係止部15aと係合する。スロットルグリップ12が逆方向に回転する際、リング部材16も逆方向に回転するが、インナーケース15は移動しない。したがって、Cスプリング17のフック17bは移動せず、フック17aのみが移動してフック17bに近付く。その結果、開口17dが閉じられるように変形されるため、Cスプリング17において開口17dを開くように反力が生じ、Cスプリング17は係止部16aを介してリング部材16を初期位置へ向けて付勢する。なお、
図5に示すように、リング部材16の係止部16aには、Cスプリング17のフック17aとリターンスプリング19のフック19aの両方が係止される。
【0025】
スロットルグリップ装置10によれば、ローター部材20の回転軸とリング部材16の回転軸は同一線上に配置されるが、リング部材16の円筒部がローター部材20の円筒部を同軸に収容するため、ローター部材20とリング部材16を同一線に並べて配置する必要を無くすことができ、スロットルグリップ装置の大型化を抑制することができる。
【0026】
また、スロットルグリップ装置10によれば、スロットルグリップ12の逆方向の回転に連動してリング部材16が逆方向に回転する際にリング部材16を初期位置へ向けて付勢するCスプリング17が、円環状部材を1カ所切り欠いた開口17dを有するC字状のスプリングからなるため、ハンドルバー23の軸方向に関して、Cスプリング17をリターンスプリング19と並べて配置してもさほどスペースを占めず、スロットルグリップ装置10の大型化を抑制することができる。また、Cスプリング17は、開口17dを開けば、容易にリング部材16の円筒部へ組み付けることができるため、スロットルグリップ装置10の生産性を向上させることができる。
【0027】
ところで、本実施の形態に係るスロットルグリップ装置10では、上述したように、スロットルグリップ12の回転角がセンサ基板14のホール素子によって検出されて電気信号として車両のECU等へ送信されるため、スロットルグリップの回転をスロットルバルブへ伝達するスロットルワイヤが廃止される。しかしながら、スロットルグリップを操作した際のスロットルワイヤの擦れ等による摩擦抵抗が運転手へ操作に対する手応え(操作感)を提供していたため、単純にスロットルワイヤを廃止しただけでは、運転手へ操作感を提供することができない。これに対応して、本実施の形態に係るスロットルグリップ装置10ではリング部材16やローター部材20を用いて摺動感を発生させて運転手へ操作感を提供する。
【0028】
図6は、スロットルグリップ装置10におけるローター部材20、リング部材16、Cスプリング17及びインナーケース15の配置状態を説明するための断面図である。
図6は、ローター部材20、リング部材16やCスプリング17がインナーケース15の内部へ収容された状態をハンドルバー23の軸方向に沿って車両の外側から眺めた場合に相当する。
【0029】
図6において、ローター部材20の円筒部とリング部材16の円筒部はインナーケース15の内側円筒部15bと同軸に配置され、ローター部材20の円筒部がインナーケース15の内側円筒部15bを格納し、リング部材16の円筒部がローター部材20の円筒部を格納する。また、リング部材16の円筒部にはCスプリング17が巻回するように取り付けられ、Cスプリング17のフック17aはリング部材16の係止部16aに係合する。一方、Cスプリング17のフック17bはインナーケース15の係止部15aと係合する。さらに、リング部材16は、円筒部の中心に関して係止部16aとほぼ対称な位置に当該円筒部から径方向に突出する突起16bを有する。すなわち、係止部16aと突起16bはリング部材16の回転軸を挟んで対向する。なお、突起16bはハンドルバー23の軸方向に突出してもよい。また、インナーケース15はリング部材16やCスプリング17に向けて突出するストッパ部15cを有する。
【0030】
スロットルグリップ12が正方向及び逆方向のいずれにも回転していない中立状態において、リング部材16の突起16bはインナーケース15のストッパ部15cと当接する(
図7(A))。したがって、中立状態のリング部材16は正方向へ回転しない。また、スロットルグリップ12が中立状態から逆方向に回転すると、リング部材16も逆方向に回転して係止部16aがインナーケース15の係止部15aへ向けて移動し、Cスプリング17の開口17dを閉じようとするが、このとき、リング部材16の突起16bはインナーケース15のストッパ部15cから離れるように移動する(
図7(B))。
【0031】
ところで、Cスプリング17は、リング部材16の円筒部への取り付けられる際、作業者によってフック17aとフック17bが指又は治具等で挟まれ、自然状態から開口17dを狭められる。本実施の形態では、中立状態においてCスプリング17が自然状態にまで復元しないように、Cスプリング17がリング部材16の円筒部に取り付けられる。したがって、中立状態においても、Cスプリング17は復元しようするため、Cスプリング17のフック17aは、係止部16aを介してリング部材16を正方向に付勢し続ける。なお、リング部材16が中立状態からそれ以上は正方向に回転しないため、Cスプリング17は、スロットルグリップ12が正方向に回転する間、一定の力でリング部材16を正方向に付勢し続ける。
【0032】
このとき、
図8に示すように、係止部16aにはフック17aから図中右下方に向けて押圧力24が作用する。この押圧力24はリング部材16に図中反時計回りのモーメントを生じさせ、該モーメントによって突起16bがストッパ部15cを図中左上方へ押圧し、突起16bには押圧力24の反作用として図中右下方に向けて反力25が作用する。
【0033】
ここで、係止部16a及び突起16bのいずれもリング部材16の一部であるため、押圧力24や反力25によってリング部材16は図中右下方に向けて移動しようとし、結果、ローター部材20に当接する。リング部材16は一本の梁とみなすことができるため、リング部材16における係止部16a及び突起16bの中間の部位に押圧力24と反力25の合力26が作用する。すなわち、合力26によってリング部材16がローター部材20に押し付けられる。
【0034】
このとき、さらにスロットルグリップ12を正方向に回転させると、突起16bがストッパ部15cへ当接しているため、リング部材16は正方向へ回転しない一方、ローター部材20は正方向へ回転する。すなわち、リング部材16が押し付けられたローター部材20は、リング部材16に対して摺動する。これにより、リング部材16とローター部材20の間に摩擦力が生じる。
【0035】
また、合力26によってリング部材16が押し付けられたローター部材20は、インナーケース15の内側円筒部15bに押し付けられるが、内側円筒部15bは回転しない。これにより、ローター部材20と内側円筒部15bの間にも摩擦力が生じる。そして、リング部材16とローター部材20の間の摩擦力やローター部材20と内側円筒部15bの間の摩擦力が、摺動感を発生させて運転手へ操作感を提供する。
【0036】
上述したように、合力26はリング部材16における係止部16a及び突起16bの中間の部位に作用するため、係止部16aや突起16bの位置を変更することにより、リング部材16において合力26が作用する位置を変更することができ、摩擦力が発生する位置を変更することができる。
【0037】
また、例えば、
図9(A)に示すように、押圧力24の作用点である係止部16aと反力25の作用点である突起16bをリング部材16の円筒部の中心Cに関して対称な位置、すなわち、中心Cを通る線L上に配置すると、押圧力24や反力25が分力されることなく合力26として重畳されるため、リング部材16とローター部材20の間の摩擦力やローター部材20と内側円筒部15bの間の摩擦力を最も大きくすることができる。したがって、運転手へ明確な操作感を提供する観点からは、係止部16aと突起16bをリング部材16の円筒部の中心Cに関して対称な位置、すなわち、リング部材16の回転軸を挟んで略対向する位置に配置することが好ましい。
【0038】
なお、合力26が作用する位置が変化すると合力26の作用方向も変化するために運転手へ提供される操作感が変化する。ここで、合力26が操作感を有効に提供し得るストッパ部15cと突起16bの接点の臨界位置は、
図9(B)に示す、係止部16aと中心(リング部材16の回転軸)Cを通る線Lと中心Cにおいて直交する線l上に存在する。なお、ストッパ部15cと突起16bの接点がフック17b側に存在する場合の当該接点の臨界位置を、
図9(B)において、ストッパ部15c’、突起16b’及び反力25’で示す。また、ストッパ部15cと突起16bの接点がフック17a側に存在する場合の当該接点の臨界位置を、
図9(B)において、ストッパ部15c’’、突起16b’’ 及び反力25’’で示す。すなわち、合力26が操作感を有効に提供し得ることを考慮した場合、突起16bやストッパ部15cは、係止部16aと中心(リング部材16の回転軸)Cを通る線Lと中心Cにおいて直交する線lよりも係止部16aに関して反対側(
図9(B)中の突起16b’から時計回りに突起16b’’まで至る範囲角θ内)に配置されるのが好ましい。
【0039】
上述したスロットルグリップ装置10によれば、摺動部材や摩擦板を設けることなく運転手へ操作感を提供することができ、部品点数を削減し、軽量化、小型化、低コストを同時に達成することができる。また、回転部材であるリング部材16とローター部材20が互いに押圧されるため、回転操作時のがたつきの発生を抑制することができ、スロットルグリップ12を操作する運転手へ上質な操作感を提供することができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 スロットルグリップ装置
11 ケース
12 スロットルグリップ
15c ストッパ部
16 リング部材
16a 係止部
16b 突起
17 Cスプリング
17a,17b,19a,19b フック
17d 開口17
19 リターンスプリング
20 ローター部材