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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】圧電センサ及び圧電センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20230824BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20230824BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20230824BHJP
   H10N 30/085 20230101ALI20230824BHJP
【FI】
G01L1/16 C
G01L1/16 A
H10N30/30
H10N30/857
H10N30/085
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019167727
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043171
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-346717(JP,A)
【文献】特開2015-118032(JP,A)
【文献】特開2015-186910(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002604(WO,A1)
【文献】特開2017-120850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0179370(US,A1)
【文献】特開2018-207092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
H10N 30/30
H10N 30/857
H10N 30/085
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面の所定領域に、第1方向に平行して延びる複数の応力付与溝が形成される応力付与層と、
前記応力付与層に積層され、光学活性高分子を含む高分子圧電材料により形成された圧電層と、
を備え、
前記応力付与層に対して前記圧電層の反対側に配置されるテンプレート層をさらに備え、
前記応力付与層は、電極層であり、
前記テンプレート層は、第1次溝が形成され、
前記電極層には、前記第1次溝に対応して窪む第2次溝が形成され、
前記第2次溝は前記応力付与溝であり、前記第2次溝は前記圧電層に接している
圧電センサ。
【請求項2】
一面の所定領域に、第1方向に平行して延びる複数の応力付与溝が形成される応力付与層と、
前記応力付与層に積層され、光学活性高分子を含む高分子圧電材料により形成された圧電層と、
を備え、
前記応力付与層に対して前記圧電層の反対側に配置される電極層をさらに備え、
前記応力付与層は、テンプレート層であり、
前記テンプレート層は、前記第1方向に平行して延びる第1次溝が形成され
前記第1次溝は前記応力付与溝であり、前記第1次溝は前記圧電層に接している
圧電センサ。
【請求項3】
前記圧電センサは、平面視で矩形に形成される複数の領域を有し、
前記第1方向は、前記領域の各辺に45度傾斜している
請求項1又は請求項2に記載の圧電センサ。
【請求項4】
前記応力付与層は、平面視で矩形に形成される複数の領域を有し、前記第1方向に平行して延びる複数の応力付与溝を有する第1領域と、前記第1方向とは異なる方向に平行して延びる複数の応力付与溝を有する第2領域とを有している
請求項1又は請求項2に記載の圧電センサ。
【請求項5】
前記圧電層は、複数の前記領域は、互いに離隔している
請求項3又は請求項4に記載の圧電センサ。
【請求項6】
応力付与層と、
前記応力付与層に積層され、光学活性高分子を含む高分子圧電材料により形成された圧電層と、
を備える圧電センサの製造方法であって、
前記応力付与層に複数の応力付与溝を形成する応力付与溝形成工程と、
前記応力付与層の前記応力付与溝に接するように、塗布、蒸着、又は重合により前記圧電層を形成する圧電層形成工程と、を含む圧電センサの製造方法。
【請求項7】
前記応力付与層は、電極層であり、
前記圧電センサは、前記応力付与層に対し前記圧電層の反対側に配置されるテンプレート層を備え、
前記テンプレート層を形成するテンプレート層形成工程と、
前記テンプレート層をラビング処理し、第1次溝を形成する第1次溝形成工程と、
前記テンプレート層に前記電極層を形成しつつ、前記電極層に前記第1次溝に対応して窪む第2次溝を形成する第2次溝形成工程と、
を含み、
前記第2次溝は前記応力付与溝であり、前記第2次溝形成工程は応力付与溝形成工程である
請求項6に記載の圧電センサの製造方法。
【請求項8】
前記圧電センサは、前記応力付与層に対し前記圧電層の反対側に配置される電極層を備え、
前記電極層にテンプレート層を形成するテンプレート形成工程と、
前記テンプレート層をラビング処理し、第1次溝を形成する第1次溝形成工程と、
を含み、
前記第1次溝は前記応力付与溝であり、前記第1次溝形成工程は応力付与溝形成工程である
請求項6に記載の圧電センサの製造方法。
【請求項9】
前記応力付与層は、電極層であり、
前記電極層を形成する電極層形成工程と、
前記電極層に第1次溝を形成する第1次溝形成工程を含み、
前記第1次溝は前記応力付与溝であり、前記第1次溝形成工程は応力付与溝形成工程である
請求項6に記載の圧電センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電センサ及び圧電センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料として、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride)などの高分子圧電材料が知られている。これらの高分子圧電材料は、延伸処理により高分子鎖が延伸し、その後にポーリングを行うことで圧電性が発現する。また近年では、ポリ乳酸やポリペプチドなど、光学活性を有する光学活性高分子が圧電材料として利用されている。この光学活性高分子によれば、一軸延伸処理を行うことで圧電性が発現する。さらに、下記特許文献1には、光学活性高分子で製造された圧電シートを備えた圧電センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/194690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、接着剤を用いて圧電シートを基材に貼り付けている。よって、圧電シートを貼り付ける作業が要求され、圧電センサの製造が煩雑化した。また、従来技術によれば、光学活性高分子により形成された大面積のシートを延伸処理することが困難であった。
【0005】
本発明は、圧電層(圧電シート)の大面積化が可能であり、かつ、圧電層(圧電シート)の貼り付け作業が不要な圧電センサ及び圧電センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る圧電センサは、一面の所定領域に、第1方向に平行して延びる複数の応力付与溝が形成される応力付与層と、前記応力付与層に積層され、光学活性高分子を含む高分子圧電材料により形成された圧電層と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る圧電センサの製造方法は、応力付与層と、前記応力付与層に積層され、光学活性高分子を含む高分子圧電材料により形成された圧電層と、を備える圧電センサの製造方法であって、応力付与溝を形成する応力付与溝形成工程と、前記応力付与層に、塗布、蒸着、又は重合により前記圧電層を形成する圧電層形成工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。
図2図2は、実施形態1に係る圧電センサのテンプレート層のみを抽出し、圧電層側からテンプレート層の第2面を見た視た平面図である。
図3図3は、実施形態1に係る圧電センサの製造方法の一例を説明するための説明図である。
図4図4は、変形例1に係る圧電センサのテンプレート層のみを抽出し、圧電層側からテンプレート層の第2面を見た視た平面図である。
図5図5は、本実施形態に係る表示部の配列を表す回路図である。
図6図6は、実施形態2に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。
図7図7は、実施形態2に係る圧電センサの製造方法の一例を説明するための説明図である。
図8図8は、実施形態3に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。
図9図9は、実施形態3に係る圧電センサの製造方法の一例を説明するための説明図である。
図10図10は、実施形態4に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。
図11図11は、実施形態4の回路構成を説明するための回路図である。
図12図12は、変形例4に圧電センサにおいて圧電層を切った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の圧電センサを実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示の発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。図2は、実施形態1に係る圧電センサのテンプレート層のみを抽出し、圧電層側からテンプレート層の第2面を見た視た平面図である。実施形態1に係る圧電センサ1は、基板2と、テンプレート層3と、第1電極層4と、圧電層5と、第2電極層6と、保護層7と、を備える。圧電センサ1は、基板2、テンプレート層3、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6、及び保護層7の順で積層された積層構造体である。なお、説明の都合上、基板2、テンプレート層3、第1電極層4、圧電層5、第2電極層6、及び保護層7が積層されている方向を積層方向という。また、圧電層5から視て基板2が配置された方向を第1方向A1とし、圧電層5から視て保護層7が配置された方向を第2方向A2という。
【0011】
また、圧電センサ1に加えられた力を測定するため、圧電センサ1の第1電極層4と第2電極層6とに、制御部8が接続している。圧電センサ1は、積層方向から視て矩形状に形成されている(図2参照)。よって、圧電センサ1は、一対の長辺1a、1aと、一対の短辺1b、1bと、を備える。
【0012】
図1に示すように、基板2及び保護層7は、柔軟性を有する樹脂により形成されている。テンプレート層3は、ポリイミド等の樹脂で形成された層であり、溝を形成し易い材料で形成されている。テンプレート層3は、第1電極層(応力付与層)4に対して圧電層5の反対側に配置されている。テンプレート層3は、第2方向A2の第2面3aを有している。テンプレート層3の第2面3aは、第1電極層4と対向している。テンプレート層3の第2面3aには、第1方向A1に窪む第1次溝9が形成されている。図2に示すように、第1次溝9は、テンプレート層3の第2面(一面)3aの一定領域に形成される溝である。本実施形態においては、第1次溝9は、テンプレート層3の第2面3aの全面に形成されている。第1次溝9は、直線状に延びている。第1次溝9は、後述するラビング処理により形成されている。各第1次溝9は、等間隔で配置され、第1方向に平行に並んでいる。言い換えると、第1次溝9は、圧電センサ1の長辺1a、1aとが成す角度θ1が45度となるように延びている。つまり、第1次溝9は、圧電センサ1の長辺1a、1a及び短辺1b、1bの各辺に45度傾斜している。なお、第1次溝9の幅については製造方法で説明する。
【0013】
図1に示すように、第1電極層4及び第2電極層6は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などにより形成された透明電極、若しくは例えば銅(Cu)等を用いた金属電極である。第1電極層4は、光学活性高分子が一軸方向に延びるように応力を付与する応力付与層であり、テンプレート層3の第2面3aに積層されている。第1電極層4は、積層方向の厚みが均一となるように形成され、テンプレート層3の第2面3aに沿った形状となっている。このため、第1電極層4の第2面4a上であって第1次溝9と積層方向に重なる部位には、第1方向A1に窪む第2次溝10が複数形成されている。また、第1電極4の第2面4aにおいて第2次溝10が形成される所定領域は、第1次溝9がテンプレート層3の第2面3aの全面に形成されているため、第1電極4の第2面4aにおいても全面に第2次溝10が形成されている。
【0014】
圧電層5は、第1電極層層(応力付与層)4に積層され、光学活性高分子を含有する高分子圧電材料により形成された層である。光学活性高分子は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子である。光学活性高分子としては、例えば、セルロース誘導体、ポリエーテル、ポリペプチド、ポリエステル等を挙げることができる。上記セルロース誘導体としては、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、シアノエチル化ヒドロセルロース(CEHC)等が挙げられる。ポリエーテルとしては、ポリ-D-プロピレンオキシド(PPO)が挙げられる。ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(γ-メチル-L-グルタメート)(PMLG)、ポリ(γ-ベンジル-L-グルタメート)(PBLG)、ポリロイシン(PLeu)、ポリ(ロイシン-co-γ-ベンジル-L-グルタメート)等が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリ-β-ヒドロキシブチレート、ポリ乳酸(PLA)が挙げられる。
【0015】
圧電層5は、第2次溝10が形成された層に接している。つまり、圧電層5は、第1電極層4の第2面4a上で形成されており、高分子圧電材料に含まれる光学活性高分子が第2次溝10に沿って延びる。このため、圧電層5には、光学活性高分子が規則正しく並んだ結晶部分が生成されており、圧電性が発現している。以上から、実施形態1において、第2次溝10が応力付与溝となっている。
【0016】
圧電層5は、光学活性高分子が延びる方向に沿って折り曲げたり、若しくは光学活性高分子の延びる方向と直交する方向に沿って折り曲げたりした場合には、分極しない。一方で、圧電層5は、光学活性高分子の延びる方向と45度に傾斜する傾斜線に沿って折り曲げた場合には、分極する。具体的には、光学活性高分子の延びる方向は、第1次溝9と同じ方向であり、圧電センサ1の長辺1aに対し45度となっている。よって、本実施形態においては、圧電センサ1の長辺1a、1a同士が近づくように、若しくは短辺1b、1b同士が近づくように圧電センサ1をU字状に折り曲げた場合、圧電層5が分極する。一方で、圧電センサ1の対角同士が近づくように圧電センサ1をU字状に折り曲げても圧電層5は分極しない。以上から、圧電層5を備える圧電センサ1は、折り曲げを検出する折り曲げセンサであり、圧電層5が上記したように折り曲げられた場合、圧電層5が分極して第1電極層4と第2電極層6との間に溜まる静電容量が増加する。
【0017】
制御部8は、第1電極層4と第2電極層6との間の静電容量を検出し、圧電層5の折り曲げの有無を判断する。具体的に、第1電極層4に基準となる基準電圧を印加するとともに、第2電極層6から電圧値を検出し、第1電極層4と第2電極層6との間の静電容量を検出する。そして、圧電層5の折り曲げにより静電容量が増加すると、第2電極層6から検出される電圧値が大きくなり、圧電層5の折り曲げを検出できる。
【0018】
図3は、実施形態1に係る圧電センサの製造方法の一例を説明するための説明図である。次に圧電センサ1の生産方法について説明する。
【0019】
圧電センサ1の製造方法は、基板2を準備する準備工程(ST1)と、基板2にテンプレート層3を形成するテンプレート層形成工程(ST2)と、第1次溝9を形成する第1次溝形成工程(ST3)と、テンプレート層3に第1電極層4を形成する第2次溝形成工程(ST4)と、第1電極層4に圧電層5を形成する圧電層形成工程(ST5)と、圧電層5に第2電極層6を形成する第2電極形成工程(ST6)と、保護層7を形成する保護層形成工程(ST7)と、を含む。
【0020】
準備工程(ST1)は、所定形状に形成された基板2を準備する工程であり、テンプレート層形成工程(ST2)と同じ製法で形成したり、若しくは予め製造されたものを用意したりしてもよい。テンプレート層形成工程(ST2)は、溶液法や蒸着法により、基板2上にテンプレート層3を形成する工程である。ここで、基板2及びテンプレート層3は、平板状であり、テンプレート層3の第2面3aは平面となっている。
【0021】
実施形態1の第1次溝形成工程(ST3)は、ナイロンなどの布が巻かれたローラー19を一定圧力で押し込みながら回転させることにより、第1次溝9を形成している。ここで、第1次溝9の幅及び深さは、第1次溝9に対応して形成される第2次溝10が、光学活性高分子が延びるように応力を付与することができる程度の幅や深さとなるように形成する。
【0022】
第2次溝形成工程(ST4)は、蒸着法によりテンプレート層3の第2面3aに第1電極4を形成しつつ、第1電極4の第2面4aに第2次溝10を形成する工程である。第2次溝形成工程(ST4)においては、第1電極層4の第2面4aに、第1次溝9に対応して窪む複数の第2次溝10が光学活性高分子を延ばす応力付与溝として機能するように、第2次溝10の溝幅や深さを調整する必要がある。
【0023】
圧電層形成工程(ST5)は、溶液法、蒸着法、重合により、第1電極層4の第2面4aに圧電層5を形成する工程である。溶液法の具体例としては、例えば、スピンコート又はインクジェットにより高分子圧電材料の溶液を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。蒸着法のうち物理蒸着(PVD)法の具体例としては、例えば、スパッタ法等を挙げることができる。また、化学蒸着(CVD)法としては、例えば、ミストCVD法及びレーザーCVD法等を挙げることができる。これよれば、応力付与溝である第2次溝10内の光学活性高分子は溝方向に沿って延び、圧電性が発現する。なお、圧電層5の第2面5aは平面とする。
【0024】
第2電極形成工程(ST6)及び保護層形成工程(ST7)は、第2電極層6と保護層7を形成するための工程であり、溶液法や蒸着法などが挙げられるが、本開示においては特に限定されない。
【0025】
以上、実施形態1の圧電センサ1は、圧電層5の下地層として、応力付与溝(第2次溝10)を有する第1電極層(応力付与層)5を備えており、光学活性高分子が延びて発電性を発現するようになっている。よって、大面積化した圧電層5を容易に製造できる。また、圧電層(圧電シート)5を貼り付ける、という作業が回避され、圧電センサ1の生産効率が向上する。
【0026】
つぎに、実施形態1の変形例及び他の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0027】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る圧電センサのテンプレート層のみを抽出し、第2方向からテンプレート層の第2面を見た視た平面図である。変形例1の圧電センサ1Aは、テンプレート層3の第2面3aに形成された第1次溝9Aが曲線状となっている点において、実施形態1の圧電センサ1と異なる。第1次溝9Aは、平面視で波形状となっている。これによれば、第1電極層4に形成される第2次溝(応力付与溝)10も波形状となる。そして、光活性高分子が延びる方向と圧電センサ1の長辺1a、1aとが成す角度θ1(図2参照)は、45度以外の角度も含まれるようになる。よって、圧電センサ1の長辺1a、1a同士が近づくように、若しくは短辺1b、1b同士が近づくように折り曲げられた場合以外にも圧電層5が分極する。以上、変形例1によれば、圧電センサ1の折り曲げを検知できる範囲が増える。
【0028】
(変形例2)
図5は、変形例2に係る圧電センサのテンプレート層のみを抽出し、圧電層からテンプレート層の第2面を見た視た平面図である。変形例2の圧電センサ1Bは、テンプレート層3の第2面3aに形成された溝が第1次溝9Bとなっている点で、実施形態1の圧電センサ1と異なる。第1次溝9Bは、傾斜溝13と平行溝14とを有している。傾斜溝13は、第1方向に平行して延びる複数の応力付与溝である。平行溝14は、第1方向とは異なる方向に平行して延びる複数の応力付与溝である。具体的に、傾斜溝13は、圧電センサ1の長辺1a、1aと交わる角度θ1(図2参照)が45度となっている。平行溝14は、圧電センサ1の長辺1a、1aと交わる角度θ1(図2参照)が0度であり、長辺1a、1aと平行である。このため、第2次溝(応力付与溝)10は、延びる方向が45度異なる2種類の溝を有している。また、テンプレート層3の第2面3aは、マトリックス状に分割されており、平面視で矩形に形成される複数の領域15を有している。その分割された各領域15内において、傾斜溝13又は平行溝14が複数形成されている。
【0029】
以上、変形例2の応力付与層は、複数の領域15を有し、第1方向に平行して延びる複数の応力付与溝(傾斜溝13)を有する第1領域15と、第1方向とは異なる方向に平行して延びる複数の応力付与溝(平行溝14)を有する第2領域15とを有している。このため、光活性高分子の延びる方向は、圧電センサ1の長辺1a、1aとの交差する角度θ1(図2参照)が45度以外の場合も含まれる。よって、圧電センサ1の対角同士を近づけるように折り曲げた場合も検出でき、圧電センサ1の折り曲げを検知できる範囲が増える。
【0030】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。図7は、実施形態2に係る圧電センサの製造方法の一例を説明するための説明図である。実施形態2に係る圧電センサ1Cは、基板2と、第1電極層4Cと、テンプレート層3Cと、圧電層5と、第2電極層6と、保護層7と、を備える。よって、実施形態2に係る圧電センサ1Cは、第1電極層4Cとテンプレート層3Cとの積層順が入れ替わっている点で、実施形態1の圧電センサ1と異なる。以下、第1電極層4Cとテンプレート層3Cの詳細について説明する。
【0031】
第1電極層4Cは、平坦化されている。テンプレート層3Cの第2面3aは、ラビング処理され、第1次溝9が形成されている。そして、テンプレート層3Cの第2面3aに圧電層5が形成されている。よって、高分子圧電材料に含まれる光学活性高分子が第1次溝9に沿って延びる。つまり、実施形態2においては、第1次溝9が応力付与溝となっている。
【0032】
図7に示すように、圧電センサ1Cの製造方法は、基板2を準備する準備工程(ST11)と、基板2に第1電極層4Cを形成する第1電極層形成工程(ST12)と、第1電極層4Cにテンプレート層3Cを形成するテンプレート層形成工程と(ST13)と、ラビング処理によりテンプレート層3の第2面3aに第1次溝9を形成する第1次溝形成工程(ST14)と、テンプレート層3Cに圧電層5を形成する圧電層形成工程(ST15)と、圧電層5に第2電極層6を形成する第2電極形成工程(ST16)と、保護層7を形成する保護層形成工程(ST17)と、を含む。以上から、テンプレート層3Cを形成する前に、第1電極層4Cを形成するため、第1電極層4Cには、第2次溝10が形成されず、平板状となっている。また、第1次溝形成工程(ST14)において、テンプレート層3Cに形成する第1次溝9は、光学活性高分子を延ばす応力付与溝である。つまり、実施形態1では、第1次溝9を形成することで第2次溝10を形成し、この第2次溝10により光学活性高分子が延びているが、実施形態2では、第1次溝9によって直接、光学活性高分子が延びるようになっている。よって、実施形態2の第1次溝9の溝や深さは、実施形態1の第1次溝9と異なる。
【0033】
以上、実施形態2の圧電センサ1Cは、圧電層5の下地層として、応力付与溝(第1次溝9)を有するテンプレート層(応力付与層)3Cを備えており、光学活性高分子が延び、発電性を発現する。よって、大面積化した圧電層5を容易に製造できる。また、圧電層(圧電シート)5を貼り付ける、という作業が回避され、圧電センサ1の生産効率が向上する。
【0034】
(実施形態3)
図8は、実施形態3に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。図9は、実施形態3に係る圧電センサの製造方法の一例を説明するための説明図である。実施形態3に係る圧電センサ1Dは、基板2と、第1電極層4Dと、圧電層5と、第2電極層6と、保護層7と、を備える。よって、実施形態3に係る圧電センサ1Dは、テンプレート層3を備えていない点で、実施形態1の圧電センサ1と異なる。
【0035】
第1電極層4Dは、基板2上に形成されている。第1電極層4Dの第2面4aには、第1次溝9が形成されている。そして、第1電極層4Dの第2面4aに圧電層5が形成されている。よって、第1電極層4Dの第1次溝9により、高分子圧電材料に含まれる光学活性高分子が延びる。つまり、実施形態3においては、第1次溝9が応力付与溝となっている。
【0036】
図9に示すように、圧電センサ1Dの製造方法は、基板2を準備する準備工程(ST21)と、基板2に第1電極層4Dを形成する第1電極層形成工程(ST22)と、第1電極層4Dの第2面4aに第1次溝9を形成する第1次溝形成工程(ST23)と、第1電極層4に圧電層5を形成する圧電層形成工程(ST24)と、圧電層5に第2電極層6を形成する第2電極形成工程(ST25)と、保護層7を形成する保護層形成工程(ST26)とを含む。第1次溝形成工程(ST23)においては、第1電極層4Dの第2面4aに図示しないレーザーを照射し、第1次溝9を形成する。この第1次溝9は、光学活性高分子を延びるように、適宜幅や深さを調整する。
【0037】
以上、実施形態3の圧電センサ1Dは、圧電層5の下地層として、応力付与溝(第1次溝9)を有する第1電極層(応力付与層)4Dを備えており、光学活性高分子が延び、発電性を発現する。よって、大面積化した圧電層5を容易に製造できる。また、圧電層(圧電シート)5を接着する、という作業が回避され、圧電センサ1の生産効率が向上する。
【0038】
(実施形態4)
図10は、実施形態4に係る圧電センサの断面構造を表す断面図である。図11は、実施形態4の回路構成を説明するための回路図である。図10図11に示すように、圧電センサ1Eは、アクティブマトリックスタイプのセンサである。圧電センサ1Eは、基板2と、基板2上に形成された半導体層20と、半導体層20上に形成された複数の駆動電極Tx(第1電極層4E)と、駆動電極Tx上に形成されたテンプレート層3Eと、テンプレート層3E上に形成された圧電層5Eと、圧電層5Eの上に形成された複数の検出電極Rx(第2電極層6E)と、保護層7と、を備える。
【0039】
半導体層20には、スイッチング素子であるトランジスタTrが設けられている。トランジスタTrは、半導体21、絶縁膜22、ゲート電極23の順で積層されたトップゲートタイプである。図11に示すように、半導体層20には、制御部8(図1参照)からの信号を供給する信号線26と、トランジスタTrを駆動する走査線27が積層されている。走査線27は、トランジスタTrのゲートとして作用する。信号線26は、トランジスタTrのドレイン電極24に信号を供給する。トランジスタTrのソース電極25は、駆動電極Tx(第1電極層4)に接続している。
【0040】
以上、実施形態4によれば、駆動電極Tx(第1電極層4E)と検出電極Rx(第2電極層6E)とが交差する交差領域S(図11の破線S参照)ごとに圧電層5が折り曲げられたか否かを検出することが可能となる。
【0041】
(変形例3)
図12は、変形例4に圧電センサにおいて圧電層を切った断面図である。変形例4に係る圧電センサ1Fは、圧電層5Fが全面に形成されていない点で、実施形態4に係る圧電センサ1Eと異なる。以下、詳細を説明する。
【0042】
図12に示すように、圧電層5Fは、積層方向から視て矩形状に形成されている。または、圧電層5Fは、複数の領域に分割されて互いに離隔している。詳細には、圧電層5Fが形成されている領域は、圧電センサ1の長辺1aが延在する長辺方向と、短辺1bが延在する短辺方向とに、間隔を空けながら複数設けられている。なお、駆動電極Tx(第1電極層4E)と検出電極Rx(第2電極層6E)とは、圧電層5Fが設けられた位置で交差している(図12の矢印S参照)。このため、各圧電層5Fの間には、圧電層5Fが設けられていない四角形状の空白領域30が形成されている。
【0043】
以上、変形例3に係る圧電センサ1によれば、空白領域30が形成されており、この空白領域30に圧電層5Fとは異なるセンサ材料を設けることができる。ここで、異なるセンサ材料としては、温度を測定するものや、光を検知できるものが挙げられる。具体的に、温度を測定する材料としては、導電微粒子やカーボンナノチューブを分散させた高分子や、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。また、光を検知するための材料としては、有機太陽電池、ペロブスカイト太陽電池で使用される材料、例えばP3HT/C60が挙げられる。若しくは、入光により抵抗値が下がるフタロシアニンなどの有機光導電体であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F 圧電センサ
2 基板
3、3C、3E テンプレート層
4、4C、4D、4E 第1電極層
5、5E、5F 圧電層
6、6E 第2電極層
7 保護層
8 制御部
9、9A、9B 第1次溝
10 第2次溝
13 傾斜溝
14 平行溝
20 半導体層
30 空白領域
S 交差領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12