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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ハンドルカバー
(51)【国際特許分類】
   B62B 9/20 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
B62B9/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019176629
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021054128
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】末田 佳代
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-054417(JP,A)
【文献】特開2007-083896(JP,A)
【文献】特開2017-144856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 7/00- 9/28
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベビーカーのハンドルフレームに取り付けられるハンドルカバーにおいて、
前記ハンドルフレームは、操作部および前記操作部の両側に位置するグリップ部とを備えるハンドル部と、前記ハンドル部の両側から延びて前記ベビーカーに回動支持される回動支持部とを備え、
前記ハンドルカバーは、前記グリップ部を把持する操作者の手の甲側を覆う帯状の第1カバー半体と、前記操作者の掌側を覆う帯状の第2カバー半体とを備え、
前記第1カバー半体と前記第2カバー半体との境界は、長辺よって構成された折曲部であり、
前記ハンドルカバーが取り付けられた状態では、前記折曲部が折曲されることによって、前記ハンドル部が2つのカバー半体によって挟まれ、かつ、前記ハンドル部に対する前記折曲部の反対側に操作者の手が挿入される挿入開口部が開口するように構成され、
さらに、前記長辺の中間に前記操作部を露出させるための操作用開口部と、
前記第1カバー半体の短辺と前記第2カバー半体の短辺とを前記ハンドルカバーが取り付けられた状態で相対するように結合する結合部と、
前記操作用開口部の位置に舌片と、を備え、
前記舌片は、一端部が前記第1カバー半体および前記第2カバー半体の何れか一方のカバー半体に固定される固定端部で、前記固定端部と反対側の他端部が自由端部であり、
さらに、前記自由端部および他方のカバー半体とを結合する結合部をさらに備える
ハンドルカバー。
【請求項2】
ベビーカーのハンドルフレームに取り付けられるハンドルカバーにおいて、
前記ハンドルフレームは、操作部および前記操作部の両側に位置するグリップ部とを備えるハンドル部と、前記ハンドル部の両側から延びて前記ベビーカーに回動支持される回動支持部とを備え、
前記ハンドルカバーは、前記グリップ部を把持する操作者の手の甲側を覆う帯状の第1カバー半体と、前記操作者の掌側を覆う帯状の第2カバー半体とを備え、
前記第1カバー半体と前記第2カバー半体との境界は、長辺よって構成された折曲部であり、
前記ハンドルカバーが取り付けられた状態では、前記折曲部が折曲されることによって、前記ハンドル部が2つのカバー半体によって挟まれ、かつ、前記ハンドル部に対する前記折曲部の反対側に操作者の手が挿入される挿入開口部が開口するように構成され、
さらに、前記長辺の中間に前記操作部を露出させるための操作用開口部と、
前記第1カバー半体の短辺と前記第2カバー半体の短辺とを前記ハンドルカバーが取り付けられた状態で相対するように結合する結合部と、を備え、
前記第1カバー半体および前記第2カバー半体において、前記長辺の中間で各カバー半体の内側に向けて窪む凹部が前記操作用開口部を構成し、前記長辺が前記凹部の両端部に向かって下る傾斜辺である
ハンドルカバー。
【請求項3】
前記第1カバー半体および前記第2カバー半体は、前記ハンドル部に加え、前記ハンドル部の両側の回動支持部の一部も挟み込むように構成される
請求項1または2に記載のハンドルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベビーカーのハンドルフレームに取り付けられるハンドルカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、ベビーカーには、操作者の防寒対策として、ハンドルフレームにハンドルカバーが取り付けられることがある。ベビーカーのハンドルフレームは、U字形状を有しており、ベビーカーの幅方向に延びるハンドル部と、ハンドル部の両側から延びベビーカー本体に回動支持される回動支持部とで構成されている。そして、ハンドル部には、操作部として、ベビーカーを折り畳みするための開閉レバーおよび開閉レバーのロック部材が設けられ、その両側にグリップ部が設けられている。
【0003】
このハンドルカバーは、ハンドル部を挟み込むように取り付けられ、折曲部とは反対側の操作用開口部から操作者が手を挿入し、ハンドル部のグリップ部を把持できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-54417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などのハンドルカバーは、ハンドル部に取り付けられると、グリップ部に加えて、開閉レバーおよび開閉レバーのロック部材も覆ってしまう。したがって、ベビーカーの折り畳み作業を行うには、一度、ハンドルカバーをハンドル部から取り外す必要がある。すなわち、上述したハンドルカバーの取付は、寒さを防ぐことを可能にする一方で、ベビーカーの折り畳み作業を行いづらくしている。
【0006】
本発明は、ベビーカーの操作性低下を抑制可能としたハンドルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決するハンドルカバーは、ベビーカーのハンドルフレームに取り付けられるハンドルカバーにおいて、前記ハンドルフレームは、操作部および前記操作部の両側に位置するグリップ部とを備えるハンドル部と、前記ハンドル部の両側から延びて前記ベビーカーに回動支持される回動支持部とを備えている。前記ハンドルカバーは、前記グリップ部を把持する操作者の手の甲側を覆う帯状の第1カバー半体と、前記操作者の掌側を覆う帯状の第2カバー半体とを備える。前記第1カバー半体と前記第2カバー半体との境界は、長辺によって構成された折曲部であり、前記ハンドルカバーが取り付けられた状態では、前記折曲部が折曲されることによって、前記ハンドル部が2つのカバー半体によって挟まれ、かつ、前記ハンドル部に対する前記折曲部の反対側に操作者の手が挿入される挿入開口部が開口するように構成される。さらに、ハンドルカバーは、前記長辺の中間に前記操作部を露出させるための操作用開口部と、前記第1カバー半体の短辺と前記第2カバー半体の短辺とを前記ハンドルカバーが取り付けられた状態で相対するように結合する結合部とを備える。
【0008】
上記構成によれば、操作用開口部から操作部が露出しているので、ハンドルフレームにハンドルカバーが取り付けられたままの状態で、ベビーカーの折り畳み操作を行うことができる。これにより、ハンドルカバーをハンドルフレームに取り付けても、ベビーカーの操作性が低下することを抑えることができる。
【0009】
上記ハンドルカバーにおいて、前記操作用開口部の位置に舌片をさらに備え、前記舌片は、一端部が前記第1カバー半体および前記第2カバー半体の何れか一方のカバー半体に固定される固定端部で、前記固定端部と反対側の他端部が自由端部であり、さらに、前記自由端部および他方のカバー半体とを結合する結合部をさらに備える構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、舌片によって、ハンドルカバーの内側空間とハンドル部の操作部とが仕切られる。したがって、ハンドルカバーの内側空間から操作部の方向に手指を出しにくくなり、誤操作を抑制できる。
【0011】
上記ハンドルカバーにおいて、前記第1カバー半体および前記第2カバー半体は、前記ハンドル部に加え、前記ハンドル部の両側の回動支持部の一部も挟み込むように構成されるようにしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ハンドルカバーは、ハンドル部だけでなく回動支持部のハンドル部に近い部分も被覆することで、当該部分で支持される。したがって、ハンドルカバーは、ハンドル部から垂れ下がりにくくなる。したがって、操作者が手をハンドルカバーの内側空間に入れ易い状態を維持できる。
【0013】
上記ハンドルカバーにおいて、前記第1カバー半体および前記第2カバー半体において、前記長辺の中間で各カバー半体の内側に向けて窪む凹部が前記操作用開口部を構成し、前記長辺が前記凹部の両端部に向かって下る傾斜辺であるようにしてもよい。
【0014】
上記構成によれば、折曲部を構成する辺を、操作用開口部を構成する凹部を除いて結合すると、挿入開口部側は、弛むことになる。これにより、挿入開口部は、膨らんで開口した状態が維持される。したがって、操作者は手をハンドルカバーの内側空間に入れ易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ベビーカーの操作性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハンドルカバーが取り付けられたベビーカーの斜視図。
図2】ハンドルカバーを表側から見た平面図。
図3】第1カバー半体と第2カバー半体とが分離された状態の平面図。
図4】ハンドルカバーに操作者が手を挿入していない状態を示す斜視図。
図5】ハンドル部と舌片との関係を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1図5を参照して、ベビーカーのハンドルカバーについて説明する。
まず、ハンドルカバーの説明に先立って、ベビーカーの構成を説明する。図1は、乳幼児などを乗せて使用するための一人乗りの折り畳み式のベビーカー1であり、展開状態において、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で使用する。図1に示すベビーカー1の状態は、ハンドルがベビーカー後方に位置し、後方からベビーカー1を操作する背面押しの状態を示している。以下の説明では、背面押しの状態を基準にして、進行方向を「前方」と定義し、進行方向に対して反対方向を後方(背面)と定義し、さらに進行方向に対して左右方向を左右(幅)方向と定義し、進行方向に対して上下方向を上下と定義する。
【0018】
図1に示すように、このベビーカー1は、一対の前脚フレーム11、一対の後脚フレーム12、乳幼児などを寝かせた姿勢や座らせた姿勢で乗車させる乗車部13、アームレスト14、ハンドルフレーム16などを備えている。各前脚フレーム11は、直線的な形状を有しており、その下端部には、キャスター付きの前輪11aが配置されている。各後脚フレーム12は、L字形状を有しており、その下端部には、キャスター付きの後輪12aが配置されている。一対の前脚フレーム11において、上端部は、アームレスト14が回動可能に支持されている。一対の後脚フレーム12もまた、上端部は、アームレスト14が回動可能に支持されている。一対の前脚フレーム11は、左右方向に横断する前ステー24によって連結されており、前ステー24には、着座している乳幼児等が足を掛けるステップ25が配置されている。
【0019】
アームレスト14の先端部には、フロントガード15が着脱可能に取り付けられる。アームレスト14の外側には、ベビーカー1を押して操作するハンドルフレーム16が配置されている。ハンドルフレーム16は、全体がU字形状を有しており、回動支持部16aと、ハンドル部16bとを備えている。回動支持部16aは、ベビーカー1の幅方向において、最も外側に位置している。ハンドル部16bは、直線形状のフレームではなく、湾曲した形状のフレームで構成されている。
【0020】
ハンドルフレーム16の中でベビーカー1の幅方向に延びるハンドル部16bは、中央部に、操作部として、操作者によって操作される開閉ロックレバー17や開閉ロックレバー17のロック部材17aを備えている。ロック部材17aは、ハンドル部16bを構成するフレームに沿ってスライドするスライド部材であり、第1位置のとき、開閉ロックレバー17のロック解除動作をロックし、第2位置のとき、ロック解除動作のロックを解除する。ハンドル部16bは、開閉ロックレバー17およびロック部材17aが延在方向の中央部に位置し、その両側が操作者によって把持されるグリップ部17bとなっている。また、ハンドル部16bにおいて、開閉ロックレバー17は、操作者がグリップ部17bを把持するような動作で回動操作できるように、操作者とは反対側の面に配置される。また、ハンドル部16bにおいて、ロック部材17aは、操作者がスライド操作し易くするため操作者側の面に配置されている。
【0021】
ハンドルフレーム16の縦に延びる回動支持部16aは、後脚フレーム12などと連携するフレームに、回動軸などで構成された回動支点部18によって回動可能に支持されている。ハンドルフレーム16は、ベビーカー1の後方である背面押し位置とベビーカー1の前方である対面押し位置の2つの位置の間を、回動支点部18を中心に回動する(矢印D1方向および反矢印D1方向)。ハンドルフレーム16の回動支持部16aには、ハンドルフレーム16を背面押し位置および対面押し位置にロックする切替操作部材19を備えている。ベビーカー1は、後脚フレーム12、アームレスト14などと連携するフレームに後方ロック部20を備えている。後方ロック部20は、切替操作部材19が係合することでハンドルフレーム16を背面押し位置にロックする。また、前脚フレーム11は、ハンドルフレーム16の切替操作部材19が係合する前方ロック部21を備えている。前方ロック部21は、ハンドルフレーム16を対面押し位置にロックする。
【0022】
乗車部13は、座板部材や背当てフレームによって乗車している乳幼児に対する振動を緩和するクッション部13aなどが設けられている。乗車部13の上部には、幌22が配置されている。背当てフレームの部分は、背もたれを構成する部分である。
【0023】
ハンドルフレーム16の主としてハンドル部16bに被せられるハンドルカバー30は、図2に示すように、第1カバー半体31と、第2カバー半体32とを備えている。第1カバー半体31は、操作者が手でハンドル部16bを把持したとき、手の甲側に位置し、第2カバー半体32は、掌側に位置する。第1カバー半体31および第2カバー半体32は、長手方向がハンドル部16bより若干長い横長の帯状形状を有している。すなわち、第1カバー半体31および第2カバー半体32の長手方向の寸法は、ベビーカー1の幅方向の要素であるハンドル部16bだけでなく、ハンドル部16bに対して交差する縦方向の要素である回動支持部16aのハンドル部16bに近い部分も被覆可能な長さを有している。また、第1カバー半体31および第2カバー半体32の各々は、表地、中綿、裏地を縫い合わせて構成されている。表地は、フリースなどの少なくとも肌触りおよび保温性に優れた生地が好ましい。
【0024】
第1カバー半体31の相対する長辺のうち一方の長辺31aは、第2カバー半体32の相対する長辺のうち一方の長辺32aとの連結部であって、第1カバー半体31および第2カバー半体32を折曲する際の折曲部33となる。折曲部33を構成する長辺31a,32aとは反対側の長辺31b,32bは、操作者の手が挿入される挿入開口部35を構成する(図1参照)。
【0025】
第1カバー半体31および第2カバー半体32には、長手方向に延びる折曲部33の中央部を跨いで操作用開口部34を備えている。操作用開口部34は、折曲部33に対して交差する方向を長軸とした楕円形状を有した貫通孔である。折曲部33の内側にハンドル部16bを沿わせるように第1カバー半体31および第2カバー半体32で挟み込んだとき、操作用開口部34からは、ハンドル部16bの開閉ロックレバー17およびロック部材17aが露出される。
【0026】
第1カバー半体31および第2カバー半体32において、折曲部33を構成する長辺31a,32aから延びる短辺31c,32cを結合する第1結合部を備えている。第1結合部は、例えばスナップで構成されており、各短辺31c,32cに2カ所設けられている。具体的には、第1結合部は、第1カバー半体31に第1雌具36aが設けられ、第2カバー半体32に第1雌具36aと対をなす第1雄具36bが設けられている。第1結合部は、第2カバー半体32に雌具36aを設け、第1カバー半体31に雄具36bを設けても同様な作用効果を得ることができる。
【0027】
第1カバー半体31および第2カバー半体32において、操作用開口部34の長軸方向の各端部と挿入開口部35を構成する長辺31b,32bとの間には、第2結合部を備えている。第2結合部は、例えばスナップで構成されており、当該位置に1カ所設けられている。具体的には、第2結合部は、第1カバー半体31に第2雌具37aが設けられ、第2カバー半体32に第2雌具37aと対をなす第2雄具37bが設けられている。第1カバー半体31および第2カバー半体32の間の空間は、操作者の手が挿入される空間であって、第2雌具37aと第2雄具37bとが結合されることで、当該空間を、右手用空間と左手用空間の2つに区画する。なお、第2結合部は、第2カバー半体32に雌具37aを設け、第1カバー半体31に雄具37bを設けるようにしても同様な作用効果を得ることができる。
【0028】
第2カバー半体32において、操作用開口部34の長軸方向の端部には、舌片38を備えている。舌片38は、例えば操作用開口部34の長軸の半分以上、長軸方向の長さ以下の長さを有している。舌片38は、長手方向の一端部が第2カバー半体32に対する固定端部であって、反対側の先端部が自由端部である。固定端部は、第2カバー半体32を構成する表地と裏地との間に挟まれて縫着される。自由端部および第2カバー半体32は、第3結合部で結合される。
【0029】
第3結合部は、例えばスナップで構成されており、当該位置に1カ所設けられている。第3結合部は、自由端部に第3雌具39aが設けられ、第1カバー半体31における操作用開口部34の長軸方向の端部の近くに、第3雌具39aと対をなす第3雄具39bが設けられている。第3雄具39bは、具体的には操作用開口部34の長軸方向の端部と挿入開口部35を構成する長辺31bとの間に設けられる。また、第3雄具39bは、第2雌具37aよりも操作用開口部34の長軸方向の端部の近くに設けられている。第3結合部は、第1カバー半体31における操作用開口部34の長軸方向の端部の近くに、雌具39aを設け、自由端部に雄具39bを設けても同様な作用効果を得ることができる。
【0030】
図3は、第1カバー半体31および第2カバー半体32を結合する前の部品図である。
第1カバー半体31および第2カバー半体32において、折曲部33を構成する長辺31a,32aの中間位置には、操作用開口部34を構成する凹部34a,34bを備えている。凹部34a,34bは、長辺31a,32aから内方に窪むように構成されている。また、長辺31a,32aは、両端から特定位置である操作用開口部34を構成する凹部34a,34bの両端部に向かって下る傾斜辺で構成されている。特に、凹部34a,34bの両側部分34xでは、急な傾斜辺で構成されている。また、挿入開口部35を構成する長辺31b,32bは、中央部から両端部に向かって下る傾斜辺で構成されている。すなわち、第1カバー半体31および第2カバー半体32は、全体が大きく開いたV字形状を有している。第1カバー半体31および第2カバー半体32は、折曲部33を構成する長辺31a,32aを、操作用開口部34を構成する凹部34a,34bを除いて縫い合わせ連結する。すると、折曲部33となる部分は、直線的となり、一方で、折曲部33と反対側の長辺31b,32b側は、弛むことになる。そして、操作用開口部34の部分では、凹部34a,34bの両側部分34xが急な傾斜辺で構成されていることで、周辺よりも大きな弛みが構成されることになる。
【0031】
以上のように構成されたハンドルカバー30は、次のようにハンドル部16bに取り付けられる。
具体的には、図4に示すように、ハンドル部16bと幌22または乗車部13の一部である背もたれとの間の空間に第2カバー半体32を挿入し、折曲部33の内側にハンドル部16bを沿わせるようにし、第1カバー半体31および第2カバー半体32でハンドル部16bを挟み込む。そして、第1カバー半体31および第2カバー半体32は、短辺31c,32cが第1結合部を構成する第1雌具36aおよび第1雄具36bを結合する。そして、操作用開口部34を2つに区画するため、第2結合部を構成する第2雌具37aおよび第2雄具37bを結合する。
【0032】
そして、図5に示すように、舌片38の自由端を操作用開口部34の縁部とハンドル部16bとの間を通し、第3結合部を構成する第3雌具39aおよび第3雄具39bを結合する。操作用開口部34からは、開閉ロックレバー17およびロック部材17aが露出される。このように取り付けられたハンドルカバー30は、ハンドル部16bだけでなく回動支持部16aのハンドル部16bに近い部分も被覆する。したがって、ハンドルカバー30は、回動支持部16aのハンドル部16bに近い部分で支持され、全体が垂れ下がらず、挿入開口部35が操作者の方向を向いた状態が維持される。また、挿入開口部35側の長辺31b,32b側は、第2雌具37aおよび第2雄具37bが結合されることで、当該結合位置を挟んで右側と左側が膨らみ開口するように撓む。
【0033】
操作者は、右側の開口には、右手を挿入し、左側の開口からは左手を挿入し、ハンドル部16bのグリップ部17bを把持する。折曲部33の内側とハンドル部16bとの間には、直線的な折曲部33に対してハンドル部16bが湾曲しており、その形状の差異によって指を挿入できる程度の空間33aが形成されている。そして、空間33aは、グリップ部17bに対応した位置に設けられ、特に、長辺31a,31bにおいて、凹部34a,34bの両側部分34xが急な傾斜辺で構成されていることで、より大きな空間となる。これにより、空間33aには、グリップ部17bを把持する際に、指を挿入し易くなる。一方で、操作用開口部34の部分は、舌片38が存在することで、指をロック部材17aおよび開閉ロックレバー17の方向に延ばしにくくなる。
【0034】
ベビーカー1を折り畳むとき、操作者は、挿入開口部35から手を外に出す。そして、ハンドルカバー30を取り付けられたままの状態で、操作用開口部34から露出されたロック部材17aをスライドしてロックを解除し、次いで、開閉ロックレバー17を回動する。これにより、ベビーカー1を折り畳むことができる。
【0035】
以上のようなベビーカー1のハンドルカバー30によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)操作用開口部34からロック部材17aおよび開閉ロックレバー17が露出しているので、ハンドルフレーム16にハンドルカバー30が取り付けられたままの状態で、ベビーカー1の折り畳み操作を行うことができる。これにより、ハンドルカバー30をハンドルフレーム16に取り付けても、ベビーカー1の操作性が低下することを抑えることができる。
【0036】
(2)第2結合部によって挿入開口部35が2つに区画されることで、操作者が手をハンドルカバー30の内側空間に入れ易くなる。また、ハンドルカバー30の内側空間において温まった空気が外部に逃げにくくなる。
【0037】
(3)舌片38によって、ハンドルカバー30の内側空間とロック部材17aおよび開閉ロックレバー17とが仕切られる。したがって、ハンドルカバー30の内側空間からロック部材17aおよび開閉ロックレバー17の方向に手指を延ばしにくくなり、誤操作を抑制できる。
【0038】
(4)ハンドルカバー30は、ハンドル部16bだけでなく回動支持部16aのハンドル部16bに近い部分も被覆することで、当該部分で支持され、全体が垂れ下がりにくくなる。したがって、操作者が手をハンドルカバー30の内側空間に入れ易い。
【0039】
(5)第1カバー半体31および第2カバー半体32において、折曲部33を構成する長辺31a,32aは、両端部から操作用開口部34を構成する凹部34a,34bの両端部に向かって下る傾斜辺である。長辺31a,32aを、操作用開口部34を構成する凹部34a,34bを除いて縫い合わせ連結すると、挿入開口部35側の長辺31b,32b側は、弛むことになる。これにより、第2結合部によって2つに区画された挿入開口部35の各開口部は、膨らんで開口した状態が維持される。したがって、操作者は手をハンドルカバー30の内側空間に入れ易くなる。
【0040】
(6)折曲部33の内側とハンドル部16bとの間には、空間33aが形成されるので、操作者は、指を円滑に当該空間33aに指先を挿入しグリップ部17bを把持することができる。
【0041】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・折曲部33を構成する長辺31a,32aは、両端部から操作用開口部34を構成する凹部34a,34bの両端部に亘って傾斜していなくてもよい。この場合、例えば、挿入開口部35は、ステッチなどを設けることによって、挿入開口部35が膨らみやすく構成してもよい。
【0042】
・長辺31a,32aにおいて、凹部34a,34bに対して一方の領域だけが傾斜辺で構成されていてもよい。空間33aの大きさは、傾斜の程度や形状を変更することで、適宜調整することができる。
【0043】
・ハンドルカバー30は、ハンドル部16bおよび回動支持部16aのハンドル部16bに近い部分を挟み込むのではなく、ハンドル部16bだけを挟み込む構成としてもよい。この場合、ハンドルカバー30を留め具などハンドルフレームに連結して、ハンドルカバー30が垂れ下がりにくくしてもよい。
【0044】
・ハンドルカバー30は、舌片38を省略してもよい。この場合、操作用開口部34の長軸方向の相対する端部を例えばスナップなどで結合するようにしてもよい。
・挿入開口部35を2つに区画する第2結合部(第2雌具37aおよび第2雄具37b)は省略してもよい。
【0045】
・第1結合部、第2結合部、および、第3結合部は、マグネットスナップ、面ファスナなどであってもよい。さらに、一方にボタンを設けて他方にボタン穴を設けてボタン掛けとしてもよい。
【0046】
・第1カバー半体31および第2カバー半体32の各々の層構成は、表地、中綿、裏地に限定されるものはないし、また、各層に使用する生地も特に限定されるものではない。
・第1カバー半体31および第2カバー半体32は、縫製以外の方法で結合されていてもよい。
【0047】
・ベビーカー1の構成は、図1に示したものに限定されるものではない。
上記実施形態、及び、その変形例によれば、さらに、以下の技術的思想が導き出される。
【0048】
(付記1)
ベビーカーのハンドルフレームに取り付けられるハンドルカバーにおいて、
前記ハンドルフレームは、操作部および前記操作部の両側に位置するグリップ部とを備えるハンドル部と、前記ハンドル部の両側から延びて前記ベビーカーに回動支持される回動支持部とを備え、
前記ハンドルカバーは、前記グリップ部を把持する操作者の手の甲側を覆う帯状の第1カバー半体と、前記操作者の掌側を覆う帯状の第2カバー半体とを備え、
前記第1カバー半体と前記第2カバー半体との境界は、長辺によって構成された折曲部であり、前記ハンドル部が2つのカバー半体によって挟まれた状態で、前記第1カバー半体の短辺と前記第2カバー半体の短辺とが相対するように結合され、
前記第1カバー半体および前記第2カバー半体において、前記折曲部を構成する長辺が、両端部からその中間位置に向かって下る傾斜辺で構成され、当該長辺と反対側の長辺が、操作者の手が挿入される挿入開口部を構成する
ハンドルカバー。
【0049】
上記構成によれば、折曲部を構成する側の長辺は、両端から中間位置に向かって下る傾斜辺で構成されている。当該長辺で構成される折曲部は、縫着などによって結合されることで直線的となり、一方で、折曲部と反対側の長辺側、すなわち操作者の手が挿入される挿入開口部側は弛む。これにより、ハンドルカバーは、ハンドル部を挟み込むようにして第1カバー半体の短辺と前記第2カバー半体の短辺とが結合されると、折曲部とグリップ部との間には空間が形成される。空間には、操作者の指が挿入され、これにより、グリップ部が把持される。空間がグリップ部の奥となる折曲部とグリップ部との間に形成されることで、操作者は、指を空間に挿入し易くなり、グリップ部を握り易くなる。したがって、ハンドルカバーは、ハンドルフレームに取り付けても、ベビーカーの操作性が低下することを抑えることができる。
【0050】
なお、付記1の場合、操作用開口部は省略してもよい。この場合、空間があることで、中で手が自由に動きやすいことから、ハンドルカバーを取り付けたまま操作部を操作することができる。また、特定位置は、長辺の中の中央位置(1カ所)であってもよいし、長辺の所定長さを有した中央領域の両端(2カ所)であってもよい。さらに、特定位置は、長辺の中の中央位置から若干一方の端部の方向にずれていてもよい。
【0051】
(付記2)
前記折曲部を構成する側の長辺において、端部から当該端部よりも中間位置に近い特定位置から前記中間位置までの傾斜辺が前記端部から前記特定位置までの傾斜辺よりも急な傾斜辺で構成されている
付記1に記載のハンドルカバー。
【0052】
上記構成によれば、中間位置の周辺領域において、一層空間を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ベビーカー、11…前脚フレーム、11a…前輪、12…後脚フレーム、12a…後輪、13…乗車部、13a…クッション部、14…アームレスト、15…フロントガード、16…ハンドルフレーム、16a…回動支持部、16b…ハンドル部、17…開閉ロックレバー、17a…ロック部材、17b…グリップ部、18…回動支点部、19…切替操作部材、20…後方ロック部、21…前方ロック部、22…幌、24…前ステー、25…ステップ、30…ハンドルカバー、31…第1カバー半体、31a…長辺、31b…長辺、31c…短辺、32…第2カバー半体、32a…長辺、32b…長辺、32c…短辺、33…折曲部、33a…空間、34…操作用開口部、34a…凹部、34b…凹部、34x…両側部分、35…挿入開口部、36a…第1雌具、36b…第1雄具、37a…第2雌具、37b…第2雄具、38…舌片、39a…第3雌具、39b…第3雄具。
図1
図2
図3
図4
図5