(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】煙感知器および煙感知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/107 20060101AFI20230824BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230824BHJP
G01N 21/53 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
G08B17/107 C
G08B17/00 C
G01N21/53 B
(21)【出願番号】P 2019181060
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀規
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-026110(JP,A)
【文献】再公表特許第2005/048208(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0173638(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1882968(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの光の侵入を抑止し、粒子の侵入を許容する暗箱と、
暗箱内の検知領域に光を照射する発光部と、
暗箱内で発光部の照射光を直接入射しない位置から前記検知領域の散乱光を受光する受光部を有する複数の煙感知器を備えた煙感知システムであって、
前記煙感知器は、
前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな第一区間と、前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が小さく安定した第二区間とを識別し、
第一区間と第一区間の後に続く第二区間の組み合わせのセットを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が一定しない場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定するプロセッサを備える
ことを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記煙感知器のプロセッサは、
前記第一区間と第一区間の後に続く第二区間の組み合わせを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が低く一定の場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が、暗箱に侵入した埃以外の煙よりも大きな粒子であると判定する
ことを特徴とする請求項1記載の煙感知器。
【請求項3】
前記煙感知器のプロセッサは、
前記散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定した場合に、経年変化又は汚れに伴う感度補正量が低くてもメンテナンス候補とする
ことを特徴とする請求項1記載の煙感知器。
【請求項4】
外部からの光の侵入を抑止し、粒子の侵入を許容する暗箱と、
暗箱内の検知領域に光を照射する発光部と、
暗箱内で発光部の光を直接入射しない位置から前記検知領域の散乱光を受光する受光部を有する複数の煙感知器と、
複数の煙感知器の散乱光の受光結果を取得する受信機と、
を備えた煙感知システムであって、
前記各煙感知器は、
前記受光部で検出された散乱光の受光結果を受信機に通知し、
前記受信機は、各煙感知器の受光部で取得した散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな第一区間と、前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が小さく安定した第二区間とを識別し、
煙感知器毎に、第一区間と第一区間の後に続く第二区間の組み合わせのセットを複数抽出し、抽出したセットの中の複数の第二区間の安定した受光量の値が一定しない場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定するプロセッサを備える
ことを特徴とする煙感知システム。
【請求項5】
前記受信機のプロセッサは、
前記第一区間と第一区間に時系列に続く第二区間の組み合わせを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が低く一定の場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が、暗箱に侵入した埃以外の煙よりも大きな粒子であると判定する
ことを特徴とする請求項4記載の煙感知システム。
【請求項6】
前記受信機のプロセッサは、
散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃である場合に、経年変化又は汚れに伴う感度補正量が低くてもメンテナンス候補とする
ことを特徴とする請求項4記載の煙感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器に関し、特に煙感知器がどのような環境に設置されたとしても正しい計測を継続できるように、煙感知器の交換を含むメンテナンスを管理者等に適切に提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
煙感知器は、投光手段から投光された光が煙等の粒子により散乱する光散乱の量を計測し、その計測値が閾値以上になっているかを判断基準とした煙の感知を行う。
設置に関しては、光電式煙感知器は主に建物内に設置される機器であるが、建物内の設置場所は事務作業のスペースや物の動きが激しい作業エリア、水やお湯等を扱うエリア等で、様々な環境があり同じ環境条件に設置されるとは限らない。
よって、多様な環境に設置された煙感知器については、設置環境に合わせて正しい煙感知機能が提供できるようにメンテナンスを行うことが必要となる。
【0003】
メンテナンスとしては、煙感知器の交換,清掃等で、煙の感知が正常に行える状況を維持するための対応を指しており、交換,清掃等の対応以外であってもよい。
検知対象の煙は粒径が1μm以下と小さいため、粒径が煙に対して大きな蒸気や埃(粒径が10~100μm)に比べて気流が加わった際の気流に対する反応は鈍く煙濃度は急激に変動せず滞留時間が長い(
図4参照)。一方、粒径が煙に対して大きな蒸気や埃などは、気流に対する反応は鋭く濃度が急激に変動し滞留時間が短い。(
図5参照)
また、煙感知器は煙感知器の暗箱内に煙等の粒子が侵入し暗箱内に滞留することで光の散乱が生じ、その散乱光の光量の測定に影響することを利用して煙の発生を検出している。
【0004】
一方で感知器の暗箱内に煙以外の埃等の粒径が大きな成分が侵入し留まった場合に、気流がある時は気流により埃等の粒子が暗箱内を動き回り検出される散乱光の検知結果の値がばらつく(変動する)。また、気流が無くなると暗箱内に留まった埃の位置(滞留位置)が散乱光の測定に影響がある位置の場合には、散乱光の検出結果が火災と判断されるレベルで検出される場合も考えられ、煙検知器による誤報の要因となる。
埃の検知を考えた場合、既知の埃検知器の例として、検知器に強制的な気流を加え、粒子流路内の粒子による光の散乱光を受光する受光素子と、粒子流路内の気流速度を計測する流速センサと、受光素子から出力された電流を変換して得られた電圧信号を、流速センサにより計測された気流速度に基づいて補正することにより、粒子の粒子径を高精度で測定する技術が、例えば特許文献1にて開示されている。
【0005】
また、経年に伴う汚れによって、発光回路に設けられた発光ダイオードからの光の透過量の減衰と、受光回路に設けられたフォトダイオードの受光量の減衰とが生じること、検出部の感度の変化によるA / D 値の変動を相殺するための補正を行い、その補正後の値を用いることで、より正確に火災の発生を検出することができること (汚れ等の経年変化による感度変化に対応した補正) が、例えば特許文献2で提案されている。
他に、暗箱内に侵入した埃による誤報を抑止する手段として、散乱光の検知領域の異なる領域に光を照射する複数の発光部を設け、それぞれの発光部から異なるタイミングで光を照射する。そして、何れかの発光部を発光させた状態で受光部の出力が閾値を超え、且つ、別の発光部を発光させた状態での受光部の出力が閾値よりも小さい場合、煙以外の異物が前記煙感知室内に進入したと判断することが、例えば特許文献3で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-210189号公報
【文献】特開2018-136846号公報
【文献】特開2013-109751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
煙感知器に侵入し、散乱光の要因となった粒子が何かを識別する手法として、上記の特許文献1のように、強制的に気流を加える機構を煙感知器に加えて、煙感知器の暗箱の感知領域に侵入した粒子の粒子径を計測することで散乱光の原因となった粒子を求める機能を設けるのは、設置基準に基づいて大量に設置される煙感知器としてはコストやサイズの面からも現実的な解決策とはいえない。
【0008】
また、特許文献2のような煙検知器の汚れに伴う感度の補正は、経年の劣化や汚れに伴う緩やかに変化するものが対象で、急激な計測値の変動を想定した補正ではなく、粒子径の大きな埃や湯気を対象とした場合は、煙感知器に入り計測される散乱光の変動幅が大きい場合に、煙検出の発報レベルに達し煙感知と誤発報することを抑制できない。
【0009】
さらに、特許文献3のように煙以外の異物を検出するには、煙感知器に複数の発光部を設けることが必要で、設置基準に基づいて大量に設置される煙感知器としてはコストの面で高価なものになってしまう。
【0010】
本発明は上記のような課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、既存の構成に対して構成要素の追加をせず、計測された散乱光の原因となる事象を特定することにある。
また、特定した事象に基づく対応を提示することで、誤発報を抑止するよう管理者がメンテナンスを行えるようにすることにある。
また、計測された測定値の原因となる事象を特定し、特定した原因が煙感知器への埃の侵入である場合に、煙感知の誤発報を抑止するための閾値調整が行える煙感知器又は煙感知システムの提供をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の煙感知器は、外部からの光の侵入を抑止し粒子の侵入を許容する暗箱と、暗箱内の検知領域に光を照射する発光部と、暗箱内で発光部の照射光を直接入射しない位置から検知領域の散乱光を受光する受光部を有する複数の煙感知器を備える。煙感知器は、受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな第一区間と、前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が小さく安定した第二区間第とを識別する。そして、第一区間と第一区間に時系列に続く第二区間の組み合わせのセットを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が一定しない場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定するプロセッサを備える。
【0012】
また、この煙感知器のプロセッサは、第一区間と第一区間に時系列に続く第二の区間の組み合わせを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が低く一定の場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が、暗箱に侵入した埃以外の煙よりも大きな粒子であると判定する。
【0013】
また、この煙感知器のプロセッサは、散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃である場合に、経年変化又は汚れに伴う感度補正量が低くてもメンテナンス候補とする。
【0014】
さらに、本発明の煙感知システムは、外部からの光の侵入を抑止し、粒子の侵入を許容する暗箱と、暗箱内の検知領域に光を照射する発光部と、暗箱内で発光部の光を直接入射しない位置から検知領域の散乱光を受光する受光部を有する複数の煙感知器と、複数の煙感知器の散乱光の受光結果を取得する受信機を備える。各煙感知器は、受光部で検出された散乱光の受光結果を受信機に通知する。受信機は、各煙感知器の受光部で取得した散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな第一区間と、前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が小さく安定した第二区間第とを識別する。そして、煙感知器毎に、第一区間と第一区間に時系列に続く第二の区間の組み合わせのセットを複数抽出し、抽出したセットの中の複数の第二区間の安定した受光量の値が一定しない場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定するプロセッサを備える。
【0015】
また、この受信機のプロセッサは、前記第一区間と第一区間に時系列に並ぶ第二区間の組み合わせを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が低く一定の場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が、暗箱に侵入した埃以外の煙よりも大きな粒子であると判定する。
【0016】
また、この受信機のプロセッサは、散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃である場合に、経年変化又は汚れに伴う感度補正量が低くてもメンテナンス候補とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特別な構成の追加をせず、煙感知器で取得した散乱光の光量の時間方向の振る舞いと、散乱光の原因となる粒子径と気流の関係に基づいて、計測された散乱光の発生原因を特定できる。
また、特定した原因が暗箱に侵入した埃が原因であれば、埃が原因の誤発報の発生する可能性ありとして管理者に通知することで、早期のメンテナンス対応を行うことができる。
また、計測された散乱光の発生原因が埃と特定できた場合は、通常より早めのメンテナンス指示ができる誤発報を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一例としての光電式煙感知器の一実施形態の分解斜視図である。
【
図2】
図1の光電式煙感知器を構成する暗箱ケースを逆さにして内部構造の詳細を示す図である。
【
図3】
図1の光電式煙感知器を構成する暗箱基台の詳細を示す斜視図
【
図6】光電濃度値(散乱光量)の時系列変化を示す図である。
【
図7】光電濃度値(散乱光量)の時系列変化の詳細を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を適用した光電式煙感知システムで利用可能な光電式煙感知器についての構造について簡単に説明する。
まずは、光電式煙感知器の構造について、
図1乃至
図3を参照して簡単に説明する。
本実施形態の光電式煙感知器(以下、単に感知器と記す)10は、火災に伴い発生した煙を感知可能な煙感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。なお、以下の説明では、感知器10を建造物の天井面に設置した状態で上になる側を下側、下になる側を上側とする。
本実施形態の煙感知器10は、
図1に示すように、建造物の天井面に取り付けるための円板状の本体ベース11と、外形が略ドーム状をなし本体ベース11の上側全体を覆う本体ケース12とを備え、本体ベース11と本体ケース12とにより内部に収納空間を有する筐体が形成される。
【0020】
また、感知器10は、前記本体ベース11上に固定される回路基板13と、該回路基板13に搭載される高さの低い有底円筒状の暗箱基台14と、該暗箱基台14の内壁と係合する同じく円筒状の防虫網15と、該防虫網15を挟んで前記暗箱基台14と係合し暗箱を形成する有底円筒状の暗箱ケース16とを備え、これらの構成部材が、上記筐体内に収納され本体ベース11と本体ケース12とが結合されることで感知器が構成される。防虫網15は、小さな網目を有する円筒状に形成されている。
【0021】
本体ベース11は感知器10の下側筐体壁を構成するもので、本体ベース11の下面には、予め天井面に設置された取付基台(図示省略)と連結し、当該感知器10を天井面に固定するための係止片(図示省略)が設けられている。また、本体ベース11の周縁部には、
図1に示すように、本体ベース11に対して本体ケース12を位置決めするための凹部11aが所定個数(
図1では1個)設けられている。
【0022】
一方、本体ケース12の周縁部には、本体ベース11に設けられた凹部11aに対応する位置に、該凹部11aと嵌合可能な位置決め部12aが所定個数設けられ、凹部11aと位置決め部12aとを嵌合状態にさせることで、本体ケース12が本体ベース11に対して結合されるようになっている。
【0023】
さらに、本体ケース12には、その頭頂部中央に、暗箱の上部が突出可能な円形状の開口部が形成されるとともに、該開口部より突出した暗箱ケース16の円板状の蓋部61に接合され縁部に係合されるヘッドカバー21が設けられ、該ヘッドカバー21と本体ケース12の上壁内縁部との間に円周方向に沿って開口が形成され、該開口が外部の煙をケース内部に流入可能にする煙流入口22として機能するように構成されている。
【0024】
回路基板13は、上面および下面に検出回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)、警報音停止用のスイッチなどの電子部品(図示省略)が実装されるプリント基板により構成され、例えば図示しないボディプレートを介して本体ベース11の底上面に設けられているボス部11bに挿通されるネジによって本体ベース11に間接的に固定されるようになっている。
また、図示しないボディプレートには、回路基板13の載置部の他に、火災検出時に警報音を発するスピーカを固定するスピーカ載置部や電池を保持する電池収納部等が設けられている。
【0025】
回路基板13には、暗箱基台14の周壁近傍に下方へ向かって突出するように形成された係止部材としてのフック14aが係合可能な係合穴13a(2箇所)が形成されており、暗箱基台14のフック14aを係合穴13aに挿通させることで、回路基板13上に暗箱基台14が搭載され固定されるようになっている。
暗箱基台14は、
図3に示すように、円形を成す周壁の内側に、基台表面に形成された起立壁により構成され発光素子17を保持する収納部41と、同じく起立壁により構成され受光素子18を保持する収納部42とが設けられている。
【0026】
暗箱基台14の収納部42の内側部位には、受光素子18のリード端子18cを挿通する挿通孔14cが形成されている。また、図示しないが、暗箱基台14の収納部41の内側部位には発光素子17のリード端子を挿通する挿通孔が形成されており、これらの挿通孔に挿入され下方へ突出した脚部およびリード端子がプリント基板の所定位置に半田付けされることにより、発光素子17および受光素子18が回路基板13に電気的に接続されるように構成されている。
また、暗箱基台14上の収納部41と収納部42は、それらに収納される発光素子17受光素子18の光軸が一致しないように向きが設定されている。つまり、発光素子17から出射された光が直接受光素子18に入射しないように、各素子の光軸の角度が設定されている。
【0027】
さらに、発光素子17の収納部41のすきまから漏れた光が受光素子18に入射しないように、収納部41と収納部42との間には、遮光壁43が形成されている。収納部41および収納部42を構成する起立壁のうち最も外側の起立壁と、暗箱基台14の外周壁との間に、若干の隙間が生じるように収納部41および収納部42を構成する起立壁が形成され、該起立壁と暗箱基台14の外周壁との隙間に上記防虫網15が挿入可能に構成されている。
【0028】
暗箱ケース16は、
図2に示すように、ベースとなる円板状の蓋部61と、中央に煙検知空間を形成するように円周方向に沿って設けられた円環状のラビリンス構造体62とにより構成されている。ラビリンス構造体62は、断面形状がZ字形、Y字形、L字形等を有し蓋部61と一体に形成されタービンのフィンの配置に類似した形態で配置された複数の起立壁からなる遮光壁62aによって構成されている。また、ラビリンス構造体62には、前記発光素子17と受光素子18の収納部41および42と嵌合し、収納部41、42の外側を囲繞可能に形成された遮光壁を兼ねた収納壁63a,63bが設けられている。
【0029】
複数の遮光壁62aは、互いに端部が隙間をおいて重なるように配置、形成されることで、外部からの煙を通過させる整流フィンとして機能し、光は内部へ入らないように構成されている。また、外部からの光が遮光壁62aで反射を繰り返しながら内部に到達するのを抑制するため、表面が黒色でかつ反射率が低くなるような表面にされている。かかるラビリンス構造体62を有する暗箱ケース16が、ラビリンス構造体62の端面すなわち遮光壁62aの上端が暗箱基台14の底面に接合するように、上方より係合されることで煙検知空間を有する暗箱が構成される。
【0030】
そして、防虫網15がラビリンス構造体62の周囲を覆うように配置されるため、暗箱内に虫や埃が入り込むのを防止できるようになっている。なお、ラビリンス構造体62は、外部からの煙を効率よく暗箱ケース16内に流入させる等の観点から、略円環状としたが、これに限定されることはなく、例えば略角筒形状であっても良い。防虫網15も同様である。
【0031】
次に、煙感知器での検出対象である粒子が1μm以下(マイクロメートル)程度の煙の気流に対する特性について、
図4を参照して説明する。煙濃度が減光率で10%/mであり、風速vが20cm/sである試験箱の中に、煙感知器を投入してからの経過時間に対する煙検出部内に流入した煙濃度の変化を表している。このグラフでは、防虫網「径φ0.45mm,開口率75%」を設置した場合を実線で、防虫網「直径φ0.3mm,開口率75%」を設置した場合を点線で、それぞれの煙感知器での煙流入特性を表している。
図4から分かるように防虫網15を取り付けた煙感知器10の煙の流入特性は、煙濃度が滑らかに上昇して安定していることが分かる。これは、煙の粒子が1μm以下(マイクロメートル)程度と小さく気流に対して反応が鈍いことを表している。
【0032】
これに対して、粒子が10~100μm(マイクロメートル)程度と煙の粒子に対して粒子径が大きい湯気の粒子の気流に対する特性について、
図5を参照して説明する。無風状態で、水温98℃のウォーターバスの直上30cmに、煙感知器10を置いてからの経過時間に対する煙検出部内に流入した湯気の検出濃度の変化を表している。このグラフでは、防虫網「直径φ0.45mm,開口率75%」を設置した場合を点線で、防虫網「直径φ0.3mm,開口率75%」を設置した場合を実線で、それぞれの煙感知器での湯気の流入特性を表している。
図5から分かるように煙感知器で検出される湯気の濃度値が測定開始から大きく上下に変動して安定しないことが分かる。これは、湯気の粒子が10~100μm(マイクロメートル)程度と煙の粒子に対して粒子径が大きいため、気流の影響が大きく気流に対しての反応が鋭いことを表している。この湯気の気流への影響は、埃の粒子が10~100μm(マイクロメートル)程度であり、湯気の粒子径と同程度のサイズであることから、埃についても湯気と同様の気流に対する特性を持つ。
【0033】
気流がない場合は、煙及び湯気や埃が煙感知器に侵入しないこと、初期の状態から変化がないことを意味する。すなわち、煙感知器での散乱光の測定結果は、0ベースの値となる。煙感知器の設置から長期間経過している場合は、発光素子17と受光素子18の汚れ、または、デバイスの性能劣化などの理由で測定結果を所定量(一定量)の補正を行って検出性能を維持する対応を感度補正として行う。
以上でベースとなる煙感知器の構造及び、検出対象の煙等の粒子の大きさと気流の関係について説明した。以降、本発明における特徴的な内容について図を参照して詳細に説明する。
【0034】
本来煙感知器は、火災に伴い発生する煙を検出するものであるが、煙の検出方法が煙粒子による光の反射光(散乱光)の光量により煙濃度を判定するため、煙以外の粒子により光の散乱が生じる場合も散乱光(濃度値)が検出されることとなる。煙以外の粒子としては、湯気や埃等があり、煙感知器の暗箱内に侵入することで散乱光が生じ濃度値が検出されることになる。火災を検知するための煙検知のため、本来検出対象の煙以外の粒子によって生じた散乱光の光量が煙検出の発報レベルを超えた場合、煙検出の誤判断となり、誤発報をしてしまう。誤発報は、煙感知器を設置した施設全体への報知や消防署への自動火災通報など、取り消す対応も大変な対応となるためにできるだけ生じさせないことが望まれる。
【0035】
特に、埃については、煙感知器の暗箱には侵入の可能性のある虫や異物の侵入を防ぐために防虫網も設置されているために煙や湯気に比べ侵入しづらいが、一旦侵入してしまうと出て行きにくい。そして、暗箱内に埃が滞留した場合、何らかの気流が入る毎に舞い上がり、暗箱内を動き回ることで散乱光の原因となる。また、気流が無くなり暗箱内に埃が留まった場合も、留まった位置が散乱光の発生に影響する位置となることもあり、その場合、気流がない環境でも散乱光が検出されることとなる。
気流については、煙や湯気のような散乱光の原因となる粒子を含む気流とは別に、エアコンや扇風機、空調のような散乱光の原因となる粒子が主原因ではない気流が煙感知器に入る。よって、煙感知器から見れば、気流と検出対象の粒子の存在は必ずしも対応しない。
【0036】
図6は光電濃度値(散乱光量)の時系列変化を示す図である。縦軸は検出濃度値、横軸は時間を表している。
図6において、実線は煙感知器の設置「初期」の散乱光の測定結果の時間変化を表したものである。時間1~6までは気流がなく計測される散乱光量は略0であることを表している。時間7~20は何らかの気流がある時間帯で、気流に含まれる少量の粒子の影響で散乱光が少量計測されることを表している。時間21~24で気流が無くなり計測される散乱光量は略0になることを表している。
【0037】
点線のAパターン,Bパターン,Cパターンは、煙検知器を所定期間設置後の状態を表しており、発光手段及び又は受光手段の汚れ等の要因で気流がない時点で散乱光量が少量検出されている状態からの時間経過を表している。この点線のAパターン,Bパターン,Cパターンの場合に、煙感知器の暗箱に多くの埃が侵入し留まった場合、埃が気流に敏感に反応して暗箱内を移動(飛び回る)ことにより、一例ではあるが、時間7~20に一点鎖線で囲んだ範囲内で散乱光の値が大きく、また鋭く変動(変動幅大)する。ここまでは埃が暗箱内に侵入し滞留した場合を例に説明したが、湯気の気流が暗箱に入ってきている場合も粒子の大きさが同サイズのため、散乱光の計測値は同様の挙動を示す。
【0038】
ここで、計測された値が閾値に達すると、煙感知の発報レベルを超えたということで誤発報となる。
続いて、気流がある状態から気流が無くなった状態を時間21~24で表している。気流があるときには気流で暗箱内を移動していた埃が暗箱内に堆積した状態で安定し、計測される散乱光の変動幅が小さくなる(変動幅小)。しかし、この時間帯(時間21-24)で安定した散乱光の量の値が、点線のAパターン,Bパターン,Cパターンで表したそれぞれの場合で異なる。Aパターンの場合、気流が無くなり暗箱内の散乱光の計測に影響しない位置に埃が堆積した場合を表している。Bパターンの場合、気流が無くなり暗箱内の散乱光の計測に中程度影響する位置に埃が堆積した場合を表している。Cパターンの場合、気流が無くなり暗箱内の散乱光の計測に大きく影響する位置に埃が堆積した場合を表している。散乱光の原因が埃の場合、A~Cパターンで示したように埃の堆積位置に応じて安定する計測値が一定しない(に幅が生じる)。これが、湯気の場合だと暗箱内に散乱光の影響する形で粒子が堆積しないため、Aパターンのような低い値となり一定となる。
【0039】
以上から、時間7~20で気流がある時の散乱光の光量が暴れる(大きく変動する)原因となる粒子が、気流が無くなった時に光安定した散乱光の計測値がばらつく(複数回の結果の間でばらつく)か否かで判断できることを見出した。
そこで、煙感知器の散乱光の測定値が大きく変動している区間を気流のある第一区間とし、煙感知器の散乱光の測定値が安定している区間を気流の無い第二区間とし、第一区間と第一区間に時系列で続く第二区間の組み合わせをセットとして、その複数のセットを取得する。取得した複数のセットを構成する複数の第二区間の散乱光の安定した値がバラついているか(
図6の第二区間の値がAパターン,Bパターン,Cパターンのように安定する値が変化するか)、一定になっているか(
図6の第二区間の値がAパターンだけで変化がないか)を判定する。
【0040】
この複数の第二区間の散乱光が安定する値が一定せずばらついている(例えば、Aパターン,Bパターン,Cパターンの間で変化する)場合、複数の第二区間のセットになる複数の第一区間で計測される散乱光の光量が変動する主な原因が埃であると特定できる。
逆に、この複数の第二区間の散乱光が安定する値が低い値で一定になっている場合(例えばAパターンで一定する場合)、セットになる第一区間で計測される散乱光の光量が変動する主な原因として粒子が煙に比べ大きな湯気の気体であると特定できる。
【0041】
複数のセットの取得範囲は、例えば計測時間が連続する10日間を単位として複数のセットのデータを取得して、第一区間で計測される散乱光の光量が変動する主な原因の判定を行う。この10日間は一例であり、同じ条件で計測される散乱光の光量の変化が少ないと判断できる範囲であれば、10日に限定されるものではなく、任意に設定しても問題ない。この期間が長すぎ、同じ条件で計測される散乱光の光量の変化が大きい場合は第二区間の安定するはずの計測値に幅を生じる可能性があり、正しい判断ができないこととなる。
【0042】
セットとして複数取得した第一区間の散乱光の主な原因が埃である場合、煙感知器の暗箱内にとどまって、以後継続して散乱光の計測時に影響を及ぼす可能性が高い。また、埃が暗箱内にとどまる時間が長くなることで埃が結合し、散乱光の計測結果に大きく影響する(煙がない状態で散乱光の検知レベルが発報レベルに届いてしまう)可能性が高くなる。
よって、第一区間の散乱光の主な原因が埃である場合は、埃混入のためメンテナンス要として管理者に通知し、煙感知器の交換を含むメンテナンスを行うことで監視領域についての適切な煙監視を継続して行うことができる。
また、取得したセットの第一区間の散乱光の値(高い値)が閾値に近い場合、閾値を高めに調整する。この閾値調整により、埃または湯気による誤発報を抑止できる。
【0043】
以上の説明では、散乱光の測定値が大きく変動している区間を「気流のある第一区間」とし、煙感知器の散乱光の測定値が安定している区間を「気流の無い第二区間」として特定した。「気流のある第一区間」と「気流の無い第二区間」の他の特定方法として、ビルの空調管理で空調のON/OFFが時間で特定できる場合は、空調ONの時間帯を「気流のある第一区間」とし、空調OFFの時間帯を「気流の無い第二区間」として扱うことも可能である。さらに、図示は省略するが煙感知器の気流が侵入する開口部に微圧センサを複数方向に向けて設置することで、直接気流のある時間帯と気流の無い時間帯を特定し、「気流のある第一区間」と「気流の無い第二区間」として扱ってもよい。
【0044】
さらに、別の方法として煙感知器を含む領域の気流の有無を直接特定する方法として、煙感知器の周辺領域を別途設置した赤外線カメラで気流を撮影した画像に基づいて気流の有無を判断して、「気流のある第一区間」と「気流の無い第二区間」を特定してもよい。
以上の判定は、常時行ってもよいが、急激な環境条件の変化の可能性がなければ、例えば10日に1回など、所定期間毎のように定期的に判断を行っても効果が見込める。
【0045】
一例として、ホテルでの利用を想定した場合、利用客の部屋内での行動として埃が舞うような行動をした場合、煙感知器の暗箱に埃が入り易い状況が生じ、通常の利用をしている客室の煙感知器の暗箱の状態と差が出る。一律のメンテナンスを行うとすると、暗箱に埃の入りやすい利用客の行動が多かった客室の煙感知器では埃による誤検知の可能性が高くなる。そこで、煙検知器毎に気流がある状態での散乱光の値の挙動(第一区間)と、気流がない状態での散乱光の値の挙動(第二区間)を、複数回の計測値の結果から、気流がある際の散乱光の原因が埃の場合を特定し、特定した煙感知器だけを対象にメンテナンス対象として管理者に通知できる。管理者が、メンテナンス対象として特定された煙感知器を交換又は掃除等のメンテナンスを行うことで、誤発報を抑止した適切な煙監視が継続して提供できる。
【0046】
また、ホテルの客室で利用客が浴室のドアを開けて、浴室を利用したような場合には、湯気が客室内に入り、煙感知器にも湯気が侵入し散乱光の発生原因になるが、複数回の計測結果から原因が埃ではないと判断できるため、誤発報の抑止のために検出閾値を誤検出が抑止できる程度に調整することも可能となる。
【0047】
図7に、光電濃度値(散乱光量)の時系列変化の詳細を示す。
図において、縦軸は検出濃度(%/m)で、横軸は(時間)を示している。
まず、
図6と変わっている点は、一点鎖線で「煙」の検知特性を追加している点と、埃が暗箱内に侵入した際の検出濃度値の変化を具体的に示した点である。暗箱内気流発生とともに煙が侵入した場合、一点鎖線で示したように時間をかけて徐々に濃度値が増加し、暗箱内気流停止でゆっくりと濃度値が低下して行くことを表している。埃については、暗箱内気流発生とともに検出濃度値が大きく変動し、暗箱内気流停止後は短時間で安定することが示されている。ただし、埃については煙と違い暗箱内に粒子が堆積して残るため、パターンA,パターンB,パターンCで示されるように暗箱内の堆積位置に応じて安定する値が一定しない。実線は、理想的な煙も埃もない状態で、濃度値は低い値で一定の場合である。
【0048】
このような、濃度値が計測される場合は、
図6での説明と同様に「第一区間」と「第二区間」を特定し、第一区間と第二区間のセットを複数回分確認することで、第一区間での濃度値の変化が大きい場合の原因が特定できる。
図8は、一実施形態に係る火災感知器システムのシステム間を簡単に表した図である。
【0049】
図8のように火災受信機32に複数の煙感知器31が接続されるシステムで適用でき、各煙感知器31で散乱光に基づいた火災判定結果が火災受信機32に通知される。火災受信機32は処理した結果、火災を検知した場合は、警報を鳴らし、また消防に通報する。
上記の、散乱光の検出要因が埃であるか否かの判定も各煙感知器31で行い、その判定結果を火災受信機32に通知する。火災受信機32では、各煙感知器31からの判定結果に基づいて特定の煙感知器31のメンテナンスが必要な場合は、管理者に報知しメンテナンスを促すことで、埃を原因とした誤発報を抑止する。
【0050】
また、以上では散乱光の検出要因が埃であるか否かの判定を各煙感知器31で行う例を説明したが、散乱光の計測結果を火災受信機32に通知し、火災受信機32において煙感知器毎31に散乱光の検出要因が埃であるか否かの判定を行ってもよい。
さらに、煙検知器で計測される散乱光の検出要因が埃である場合は、気流がある時の散乱光の変動幅が時間経過とともに増加する可能性があるため、経年変化に伴う感度補正量が少なくてもメンテナンス対象として管理者に提示できる。この提示による対処を行うことで誤発報を抑止した煙感知機能を継続的に提供できる。
さらに、煙検知器で計測される散乱光の検出要因が湯気である場合は、湯気の計測値の変動幅に基づいて検知のための閾値を調整することで、湯気を原因とした誤発報を抑制できる。
【0051】
図9は、一実施形態に係る煙感知器のブロック図である。
煙感知器31は、煙を検出する検出部である発光回路312及び受光回路313と、煙感知器31の動作を制御するマイコン311とを備える。本一実施形態の煙感知器31は、さらに、EEPROM314と、感知器回線IF315とを備える。
【0052】
発光回路312及び受光回路313は、火災に基づく物理現象を検出する検出部を構成している。これ以降の説明では、発光回路312及び受光回路313を、検出部と総称する場合がある。発光回路313は発光ダイオード(LED)を備え、受光回路313は発光回路312の発光ダイオードが発した光を検出するフォトダイオードを備えている。発光回路312の発光ダイオード及び受光回路313のフォトダイオードは、煙感知器10の筐体内に区画形成された暗箱内のラビリンスに設置されている。発光ダイオードが発した光が、ラビリンス内に入った煙粒子によって散乱され、この散乱光をフォトダイオードが受光することで、煙が検出される。受光回路313は、フォトダイオードの出力を増幅するアンプを備えていてもよい。
【0053】
マイコン311は、MPU(マイクロプロセッサユニット)316と、メモリ317とを備えている。マイコン316は、発光回路312、受光回路313、EEPROM314、及び感知器回線IFのそれぞれが接続される複数の入出力ポートを備えており、この入出力ポートを介して各部との間で信号を入出力する。マイコン311は、受光回路313から出力されるアナログ値をデジタル値に変換するアナログデジタル変換器を有しており、受光回路313からの出力をデジタル値(A/D値)として取り込む。マイコン311に取り込まれたA/D値は、火災発生の検出及び検出部の感度の検出に用いられる。マイコン311は、取り込んだA/D値に対して種々の調整処理を施してもよい。例えば、検出部を構成する部品の個体差や設置環境等を要因とするA/D値の差異を吸収するための調整処理を施し、調整後のA/D値を用いて火災発生の検出及び感度の検出を行ってもよい。
【0054】
メモリ317は、本発明で説明した散乱光の検出要因が埃であるか否かの判定するためのプログラムや感度補正用のプログラムを保持するとともに、計測された散乱光の計測値が測定時間とともに一定期間記録される。期間は、記録容量に応じて設定される。
【0055】
マイコン311は、メモリ317に記憶されたプログラムをMPUが実行することによって、感度補正部318及び処理部319を含む煙感知器10が有する、上記で説明した処理を実行する。なお、本実施の形態では、マイコン311が感度補正部318及び処理部319の両機能を実現する例を説明するが、これらの機能を別のマイコンによって構成してもよいし、いずれか又は両方の機能を専用の電子回路で構成してもよい。
【0056】
EEPROM314は、書き換え可能な不揮発性メモリである。EEPROM14には、火災の検出に用いられる閾値及び検出部の感度の補正に用いられる閾値が、A/D値と対比されるデータとして格納されている。煙感知器10が製造される際に、検出部の感度が調整された状態でのこれらのデータが、EEPROM314に書き込まれる。
また、図示は省略するが、MPUで319の処理の内、散乱光の検出要因が埃であるか又は湯気であるかの判定を火災受信機に持たせ、火災受信機のプロセッサで散乱光の検出要因の判定処理を行う場合も基本的に変わりはない。
以下に、本発明に係る付記を記載する。
【付記1】
【0057】
外部からの光の侵入を抑止し、粒子の侵入を許容する暗箱と、
暗箱内の検知領域に光を照射する発光部と、
暗箱内で発光部の照射光を直接入射しない位置から前記検知領域の散乱光を受光する受光部を有する複数の煙感知器を備えた煙感知システムであって、
前記煙感知器は、
前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな第一区間と、前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が小さく安定した第二区間第とを識別し、
第一区間と第一区間の後に続く第二区間の組み合わせのセットを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が一定しない場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定するプロセッサを備える
ことを特徴とする煙感知器。
【付記2】
【0058】
前記煙感知器のプロセッサは、
前記第一区間と第一区間に時系列に続く第二区間の組み合わせを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が低く一定の場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が、暗箱に侵入した埃以外の煙よりも大きな粒子であると判定する
ことを特徴とする付記1記載の煙感知器。
【付記3】
【0059】
前記煙感知器のプロセッサは、
前記散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃である場合に、経年変化又は汚れに伴う感度補正量が低くてもメンテナンス候補とする
ことを特徴とする付記1記載の煙感知機。
【付記4】
【0060】
外部からの光の侵入を抑止し、粒子の侵入を許容する暗箱と、
暗箱内の検知領域に光を照射する発光部と、
暗箱内で発光部の光を直接入射しない位置から前記検知領域の散乱光を受光する受光部を有する複数の煙感知器と、
複数の煙感知器の散乱光の受光結果を取得する受信機と、
を備えた煙感知システムであって、
前記各煙感知器は、
前記受光部で検出された散乱光の受光結果を受信機に通知し、
前記受信機は、各煙感知器の受光部で取得した散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな第一区間と、前記受光部で検出された散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が小さく安定した第二区間第とを識別し、
煙感知器毎に、第一区間と第一区間の後に続く第二区間の組み合わせのセットを複数抽出し、抽出したセットの中の複数の第二区間の安定した受光量の値が一定しない場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃であると判定するプロセッサを備える
ことを特徴とする煙感知システム。
【付記5】
【0061】
前記受信機のプロセッサは、
前記第一区間と第一区間の後に続く第二区間の組み合わせを複数取得し、複数の第二区間の安定した受光量の値が低く一定の場合は、第一区間の散乱光の受光量の変動幅が大きな原因が、暗箱に侵入した埃以外の煙よりも大きな粒子であると判定する
ことを特徴とする付記4記載の煙感知システム。
【付記6】
【0062】
前記受信機のプロセッサは、
散乱光の受光量の変動傾向として変動幅が大きな原因が暗箱に侵入した埃である場合に、経年変化又は汚れに伴う感度補正量が低くてもメンテナンス候補とする
ことを特徴とする付記4記載の煙感知システム。
【付記7】
【0063】
複数のデータ取得範囲は、各受光部が取得する散乱光の平均値の変動幅が小さい範囲の連続した期間とする。
【付記8】
【0064】
上記処理を定期的に行う。
【付記9】
【0065】
気流のある時間と、気流のない時間が空調のon/offとして特定できる場合は、
特定した気流がある時間帯の測定値を第一区間とし、
特定した気流がない時間帯の測定値を第二区間とする。
【付記10】
【0066】
気流の有無を煙感知器の気流侵入経路に設置した微圧センサで特定する。
【符号の説明】
【0067】
10 煙感知器
14 暗箱基台
15 防虫網
16 暗箱ケース
31 煙感知器
32 火災受信機
311 マイコン
312 発光回路
313 受光回路
314 EEPROM
315 感知器回線IF
316 MPU
317 メモリ
318 感度補正部
319 処理部