(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20230824BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20230824BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230824BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20230824BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20230824BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21Y115:10
F21W103:10
F21W103:55
(21)【出願番号】P 2019181822
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】堀川 彰仁
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-075331(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0033441(US,A1)
【文献】特開2014-026047(JP,A)
【文献】特開2010-251073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21S 43/14
F21Y 115/10
F21W 103/10
F21W 103/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、入射された前記光源の光を出射面から出射して所要領域の光照射を行う照射レンズを備える車両用ランプであって、前記出射面には光を出射する光出射領域と光を出射しない無光領域が存在しており、前記光出射領域は補償領域を備えており、
この補償領域の出射面には光拡散素子が存在しておらず、この補償領域から出射される光により前記所要領域には前記無光領域による光照射が行われない無光照射領域が存在しないことを特徴とする車両用ランプ。
【請求項2】
前記補償領域の出射面は、当該補償領域から出射される光が前記光出射領域から出射された光が照射されない領域を照射する形状に構成される請求項1に記載の車両用ランプ。
【請求項3】
前記照射レンズは、光源からの光を複数の光束として出射させる複数の光出射領域が形成され、これら複数の光出射領域の間に前記無光領域が存在する請求項1叉は2に記載の車両用ランプ。
【請求項4】
前記補償領域は前記光出射領域の少なくとも一部に設けられる請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項5】
前記補償領域は、前記光出射領域のうち前記無光領域に近い側の領域に存在する請求項4に記載の車両用ランプ。
【請求項6】
前記補償領域は前記光出射領域のほぼ全領域にわたって構成される請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項7】
前記照射レンズは前記光源の光が入射される光入射部を備えており、前記光入射部は、入射光を屈折して前記出射面に向ける主入射部と、入射光を屈折しかつ全反射して前記出射面に向ける副入射部を備え、前記出射面は、前記主入射部からの光を多く受けて出射する凸面の主光出射面と、前記副入射部からの光を多く受けて出射する凹面の副光出射面を備える
請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用ランプ。
【請求項8】
前記副入射部は前記主入射部を挟んだ両側に対をなして設けられ、前記副光出射面は前記対をなす副入射部にそれぞれ対向するように前記主光出射面の両側に対をなして設けられる請求項
7に記載の車両用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に用いるランプに関し、特に配光特性に優れた見栄えの良い車両用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の補助ランプや標識ランプとして、LED(発光ダイオード)等の光源と、この光源で発光した光を収束あるいは発散させて所要の配光で照射する光学レンズやライトガイド等の光学系とで構成された簡易構成のランプが提案されている。特許文献1には、LEDと導光体(ライトガイド)とを備えて構成され、LEDの光を導光体に設けた入射面に入射させ、導光体の内部を導光させた上で当該導光体に設けた出射面から出射させる構成のランプユニットが提案されている。
【0003】
特許文献1の技術では、LEDの光を入射する入射面の構成は、第1入射面、第2入射面、全反射面を備えた構成とされている。第1入射面はLED発光中心に対向される凸レンズ状に形成され、LEDの光を平行光にして導光体に入射させる。また、第2入射面は第1入射面を囲む円錐状に形成され、全反射面はこの外周に沿った回転放物面の一部で構成されている。第2入射面はLEDの光を外周方向に向けて屈折して導光体に入射させ、全反射面は屈折された光を平行光にする。これらの平行光はそれぞれ導光体の出射面から出射される
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、LEDの光を入射面において平行光にして導光体に入射させ、かつ導光体を導光させて出射面から出射させるので、出射面における出射光の分布を均一化する上では有効である。しかし、詳細については後述するが、第1入射面と第2入射面が境界部において急峻な角度で交わっているので、この境界部に入射される光を平行光にして入射させることができない。
【0006】
そのため、この境界部に対応する領域では光は導光されず、あるいは導光される光量が低減される。さらには、この境界部に対応する出射面の領域から光が出射されなくなり、あるいは光量が低減される。これにより出射面において明るさのむらが生じ、ランプの見栄えが低下するとともに、好適な配光を得ることが難しくなる。
【0007】
特許文献1では、出射面に光拡散素子を配設して出射光を拡散しているので明るさのむらを抑制ないし解消することは可能と思われる。しかし、この構成では、ランプを観察したときに、出射面に形成した光拡散素子が露見されることになり、出射面でのクリア感(透明感)を強調した見栄えの良いランプを構成することができない。
【0008】
本発明の目的は、配光特性を改善するとともに、見栄えを改善した車両用ランプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光源と、入射された光源の光を出射面から出射して所要領域の光照射を行う照射レンズを備える車両用ランプであり、出射面には光を出射する光出射領域と光を出射しない無光領域が存在しており、光出射領域は補償領域を備えており、この補償領域の出射面には光拡散素子が存在しておらず、この補償領域から出射される光により所要領域には無光領域による光照射が行われない無光照射領域が存在しない。
【0010】
すなわち、本発明の車両用ランプは、照射レンズの出射面は、補償領域から出射される光が光出射領域から出射された光が照射されない領域を照射する形状に構成されている。また、補償領域は光出射領域の少なくとも一部に設けられる。この場合には、補償領域は、光出射領域のうち無光領域に近い側の領域に形成されることが好ましい。あるいは、補償領域は光出射領域のほぼ全領域にわたって形成されてもよい。
【0011】
また、本発明は、例えば、照射レンズは光源の光が入射される光入射部を備えており、この光入射部は、入射光を屈折して出射面に向ける主入射部と、入射光を屈折しかつ全反射して出射面に向ける副入射部を備え、出射面は、主入射部からの光を多く受けて出射する凸面の主光出射面と、副入射部からの光を多く受けて出射する凹面の副光出射面を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照射レンズの出射面に光拡散素子が形成されなくても、無光照射領域のない好適な光照射が実現できる。これにより、配光特性を改善するとともに、見栄えを改善した車両用ランプが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用したヘッドランプを備える自動車の一部の正面図。
【
図4】(a)
図2のa-a線に沿って展開した断面図、(b)
図2のb-b線に沿った断面図。
【
図5】光出射面、無光出射面、補償出射面を説明する模式図。
【
図6】光照射領域と無光照射領域を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の車両用ランプを適用した自動車CARの一部の正面図であり、自動車の車体前部に配設された左側のヘッドランプHLを備えており、このヘッドランプHLのランプハウジング100内に、ディタイムランニングランプ(以下、DRL)1と、ロービームランプ2と、ハイビームランプ3が内装されている。このDRL1は、その点灯形態、特に点灯時の光度(明るさ)を制御することによりクリアランスランプとしても機能されるよう構成されている。ロービームランプ2とハイビームランプ3は本発明との関連が少ないので、ここでは説明は省略する。
【0015】
図2は前記DRL1を斜め前方向から見た概念構成を示す外観斜視図である。このDRL1は、光源4と、この光源4で発光された光を導光して前記ヘッドランプHLの前方に向けて光を出射する光学系5とで構成されている。この光学系5は、ここでは透光性の部材、例えば透明な樹脂で形成された照射レンズとして構成されている。これら光源4と照射レンズ5は、図示を省略するケースに一体的に内装されてユニット化されてDRL1が構成されている。あるいは、光源4と照射レンズ5がそれぞれ個別に前記ランプハウジング100内に配設されてDRL1として構成されてもよい。
【0016】
前記光源4は白色光を発光するLED41を備えており、このLED41の発光面が上方に向けられた状態、すなわち発光面が前記照射レンズ5に向けられた状態で例えば仮想線で示す回路基板42に搭載されている。この回路基板42には給電回路が構成されており、この給電回路によりLED41が発光され、発光した光を照射レンズ5に入射させる。
【0017】
前記照射レンズ5は、DRL1の光出射方向を前方向としたときに、前面側から見てやや横長の長方形に近い形状をした透明樹脂ブロックとして構成されており、下面には前記LED41の光を入射する光入射部51を備えている。また、この照射レンズ5の後面側の領域には、入射された光を前方に向けて反射する光反射部52を備えている。さらに、この照射レンズ5の前面は、前記光反射部52で反射された光を出射してDRL1の発光面として機能する光出射部53として構成されている。
【0018】
図3は光入射部51を下方から見た概略斜視図である。この光入射部51は、前記LED41の発光面の中心に対向するように前記照射レンズ5の下面の中央に位置された主入射部511と、この主入射部511の両側に位置された線対称形状をした一対の副入射部512を備えている。そして、前記LED41が発光したときの光は、これら主入射部511と副入射部512を通して照射レンズ5に入射される。
【0019】
図4(a)は
図2のa-a線に沿って水平方向かつ鉛直方向に切断かつ展開した断面図、
図4(b)は
図2のb-b線に沿って鉛直方向に切断した断面図である。この
図4(a),(b)を併せて参照すると、前記光入射部51の主入射部511は凸レンズを構成する球面で形成されており、そのレンズ光軸Lx上の焦点F1が前記LED41の発光面に位置されている。これにより、主入射部511に入射されたLED41の光はほぼ平行光に収束される。
【0020】
両側の前記副入射部512は、それぞれ逆円錐面の一部で構成された内面512iと、回転放物面の一部で構成された外面512oを備えている。LED41の光は両副入射部512の内面512iに入射されて屈折される。屈折された光は外面512oで内面反射される。この内面512iでの光屈折によりLED41の虚像が形成され、前記外面512oはこのLED41の虚像を焦点F2とする回転放物面の一部で形成される。これにより、副入射部512に入射されたLED41の光は前記主入射部511により収束された光と同様にほぼ平行光に収束される。
【0021】
前記光反射部52は、照射レンズ5の後面を傾斜させて内面反射を行う反射面として構成されている。この反射面は前記入射部51の直上に位置され、前記主入射部51の鉛直方向に向けられた前記レンズ光軸Lxに対して前方に45度の角度で傾斜されている。これにより、光反射部52は、光入射部51において平行光に収束されたLED41の光を90度の角度で反射して前記光出射面53に向ける。なお、この光反射部52の傾斜角度は必ずしも45度の角度でなくてもよく、光入射部51から入射された光を光出射部53に向けてほぼ水平方向に反射する構成であればよい。
【0022】
前記光出射部53は平滑面で曲面に形成された出射面として構成されている。以下、光出射部53を出射面53と称することもある。この出射面53はその中心を通って前後方向に延長されるレンズ光軸Lx(前記レンズ光軸Lxが光反射部52において屈曲されて出射面53を通るように延長された光軸)を中心線とした左右方向に対称な凸状の非球面で形成されている。この非球面からなる出射面53の詳細は後述するが、その大略の形状は、レンズ光軸Lxを中心とする中央領域の曲率が最も大きく、この中央領域の周囲の中帯領域に向けて曲率が徐々に小さくされ、周辺領域では曲率がほぼ零の円錐面に近い形状とされている。
【0023】
前記出射面53には、光を発散ないしは拡散させるための光学素子、例えば微細なシリンドリカル面(円柱面)、微細な球面、シボ等の光学素子(以下、拡散素子)は形成されていない。このように、出射面53が平滑面で形成されることにより、ヘッドランプHLの前方からDRL1を観察したときに、DRL1の非点灯時には、その前面、すなわち出射面53のクリア感が強調され、見栄えの良いDRLが得られる。
【0024】
この照射レンズ5を備えるDRLでは、
図4(a),(b)にLED41から入射された光の光路を示しているように、入射された光は光入射部51の主入射部511と副入射部512によりそれぞれ平行光とされる。主入射部511から入射された光(以下、主光Lm)は出射面53の対応する領域の面(以下、主光出射面53m)から出射され、副入射部512から入射された光(以下、副光光Ls)は出射面53の対応する領域の面(以下、副出射面53s)から出射される。この主光出射面53mはレンズ光軸Lxを含む出射面53のほぼ中央領域であり、副光出射面53sは出射面53の中帯領域から周辺領域である。
【0025】
ここで、光入射部51において、主入射部511と副入射部512との境界部、すなわち主入射部511を囲む円弧状の部位は、両入射部511,512の表面が急峻な角度で交わっている。そのため、この境界部に入射される光は平行光として入射されなくなり、
図4(a)に示したように、主光Lmと副光Lsとの間に光が導光されない領域が生じている。この領域について
図5を参照して説明する。
【0026】
図5は照射レンズ5における主光Lmと副光Lsの導光及び出射状態を示し、光が存在する領域を点描した模式図である。入射部511,512の境界部において主光Lmと副光Lsの間に光が導光されない領域Lnが生じてしまう。この領域を無光領域Lnと称し、これに対応する出射面53の領域を無光出射面53nと称する。光入射部51は、主入射部511とこれを挟む副入射部512が左右方向に配置されているので、このような無光領域Lnと、これによる生じる無光出射面53nはレンズ光軸Lxを挟む左右の両側において生じる。
【0027】
このように、照射レンズ5の出射面53を照射レンズ光軸Lx方向から見たときに、当該出射面53から光が出射される主光出射面53mと副光出射面53sを併せた領域が光出射領域となり、光が出射されない無光出射面53nが無光領域となる。ここで、無光領域は全く光が出射されない領域に限られるものではなく、光出射領域と無光領域の相対的な光出射量に基づいて設定されてもよい。例えば、光出射光量の相対比を求め、この相対比が所定のしきい値よりも小さい場合に無光領域として設定されるようにしてもよい。
【0028】
照射レンズ5は出射面53から主光Lmと副光Lsを出射して投影を行うことにより、
図5の上部に示したように、主光Lmによる光照射領域(以下、主光照射領域)Amと、副光Lsによる光照射領域(以下、副光照射領域)Asの光照射を行うが、前記した無光領域Lnが存在することにより、この照明領域内に光が照射されない無光照射領域Anが生じてしまう。なお、
図5の最上部の図は光照射領域全体の光度分布図である。
【0029】
すなわち、
図6に概略斜視図を示すように、DRL1の主光照射領域Amと副光照射領域Asの間に、レンズ光軸Lxを挟んだ左右両側に円弧状をした無光照射領域Anが生じてしまう。DRL1はレンズ光軸Lxを基準として水平方向の左右に20度ないし25度の角度範囲の所要領域を照射する配光が要求されているが、この照射領域内に無光照射領域Anが生じることにより、好適なDRLの配光ができなくなる。
【0030】
そこで無光照射領域Anが生じないような補償を行うために、前記照射レンズ5の出射面53はその一部に補償領域として、補償出射面53aが形成されている。
図5に示すように、この補償出射面53aは、前記照射レンズ5の出射面53のうち主光出射面53mの一部、特に主光出射面53mのうちレンズ光軸Lxと反対側の両側の縁部に沿った円弧帯状の領域に形成され、主光Lmの一部の補償光Laが出射されるようになっている。すなわち、この補償出射面53aは、
図2に鎖線で示すようにレンズ光軸Lxを挟む左右にそれぞれ円弧帯状に形成されている。
【0031】
この補償出射面53aは特異な面形状に形成されている。この面形状について説明すると、
図5に補償光Laのうちの補償光La1,La2の光路を示すように、補償出射面53aの外径縁p1から出射される補償光La1は無光照射領域Anの外径縁よりも内径側に照射され、補償出射面53aの内径縁p2から出射される補償光La2は無光照射領域Anの内径縁よりも外径側に照射されるように形成されている。
【0032】
これにより、補償光Laは補償出射面53aから出射されて無光照射領域Anに照射される。すなわち、補償出射面53aの曲面形状により、補償出射面53aを含む主出射面53mから出射される補償光Laは左右方向に拡張されて無光照射領域Anを含む領域を照射するようになる。これにより、
図5の上部に示した光度分布が破線のように補償され、無光照射領域が生じることが防止される。
【0033】
このように、照射レンズ5の出射面53の面形状を適切に設計、形成することにより、当該出射面53から出射される主光Lmと副光Lsにより照射される所要の照射領域には、無光領域Lnによる無光照射領域Anが生じることがないので、好適な配光が得られる。例えば、DRLに要求される左右方向に20度ないし25度の所定の照射領域内に無光照射領域が生じることがない好適な配光特性のDRLが得られる。
【0034】
また、このDRL1は照射レンズ5の出射面53に光拡散素子が形成されていなくても無光照射領域が生じることがないので、出射面53は平滑面として構成される。したがって、DRL1の非点灯時には出射面53の外観としてクリア感のある見栄えが得られる。DRL1の点灯時には、照射領域には無光照射領域Anが存在しないので、照射領域内のいずれの方向からDRL1を観察しても明るく点灯している状態が視認される見栄えとなる。
【0035】
なお、照射レンズ5の出射面53のうち、前記無光領域Lnに対応する無光出射面53nからは実質的に光が出射されることがないので、この無光出射面53nの形状は適宜である。例えば、補償出射面53aと副出射面53sを緩やかに連結する面形状の連結面として構成される。この連結面の構成は特に限定されないが、出射面を観察したときの均一なクリア感を損なうことがないように、急峻な凹凸のない滑らかな面とすることが好ましい。
【0036】
前記補償出射面53aの形状を設計する場合には、シミュレーションによる設計が採用できる。例えば、
図7にその一例を示すように、補償出射面53aから出射される主光Lmのうち、最も外径側位置p1から出射される主光線Li1を作図する。また、この位置p1から無光照射領域Anの外側縁に向けて屈折されて出射される補償光線La1を作図する。なお、光線Lo1は、主光出射面53mが補償されていないときに屈折されて出射される光線である。このように、補償光線La1は光線Lo1よりも屈折角が大きくなるように作図される。
【0037】
次いで、主光線Li1と補償光線La1との屈折角θx1を求める。そして、この屈折角θx1と、照射レンズ5の屈折率nとから、スネルの法則を満たす入射角θi1を算出する。この算出は例えば
図7の式(1)~(4)に示す通りである。なお、計算を簡略化するために、sinθ≒θの近似を行っている。そして、得られた入射角θi1から、主光線Li1がこの入射角θi1で入射されることになる屈折面として、式(5)のように、主光線Li1に対して角度θf1で傾斜される補償面f1を算出する。この補償面f1が位置p1における出射面となる。
【0038】
一方、補償出射面53aの最も内径側位置p2から出射される主光線Li2を描く。また、この位置p2から、無光照射領域Anの内側縁から若干だけ副光照射領域Asに入った位置に向けて出射される補償光線La2を描く。そして、主光線Li2と補償光線La2との屈折角θx2を求める。その上で、前記と同様に
図7の式(1)~(5)から、主光線Li2が入射角θi2で出射面に入射される屈折面を算出する。算出された屈折面は、主光線Li2に対して角度θf2で傾斜される補償面f2であり、これが位置p2における出射面となる。
【0039】
このような補償面の算出を補償出射面53aの位置p1~p2の間の複数の箇所で行うことにより、各位置における補償面が算出できる。その上で、算出された複数の補償面を連結し、連結した面を滑らかな曲面にする。これにより、前記した無光照射領域Anを照射することが可能な補償出射面53aが形成できる。この場合、位置p1~p2の間の複数の位置をレンズ光軸Lxの延長方向に沿って多少変位させてより滑らかな連結面を得るようにしてもよい。
【0040】
以上の説明は照射レンズの主光出射面53mに補償出射面53aを備えた例であるが、前記副光出射面53sの一部に補償出射面53aが形成されてもよい。例えば、副光出射面53sのうちレンズ光軸Lxに近い側の縁部に沿った円弧帯状の領域に補償出射面が形成されてもよい。
【0041】
因みに、このようにして形成される出射面53においては、主光出射面53mは凸面形状に形成され、この両側の副光出射面53sは凹面形状に形成される。そして、この凸面形状の主光出射面53mと凹面形状の副光出射面53sは、無光領域53nにおいて滑らかな曲面で連結される。出射面53がこのように形成されると、前記実施形態における補償出射面53aは、自動的に凸面形状の主光出射面53mあるいは凹面形状の副光出射面53sの一部として形成されることになる。
【0042】
図示は省略するが、副光出射面53sに補償出射面53aが形成されたときには、補償出射面53aから出射される副光は、補償される前よりもレンズ光軸Lxに対する角度がより小さな角度で出射され、光補償出射面53aから出射される副光がレンズ光軸Lxの側に拡張されて無光照射領域Anを照射するようになり、無光照射領域が解消される。
【0043】
なお、
図5に示したように、副光照射領域Asの光度は主光照射領域Amの光度よりも低いので、補償出射面53aを副光出射面53sに形成すると、副光照射領域Asの光度がさらに低下することが考えられる。したがって、補償出射面53aはより光度の高い主光出射面53mの一部に形成することが好ましい。
【0044】
また、補償出射面53aが主光出射面53mの全領域に存在しているものとして補償出射面53aの設計を行うようにしてもよい。すなわち、補償出射面53aを主光出射面53mの一部に形成した実施形態では、補償出射面53aの領域の補償光が発散されるため、この領域における光度低下が生じ易い。補償出射面53aが主光出射面53Mの全領域に存在しているものとして補償出射面53aを形成することより、主光の全体が補償光として主光出射面53mの全領域、すなわち補償出射面にわたって発散されることになり、部分的な光度低下が防止できる。
【0045】
本発明においては、主入射部から入射された光の多くは主光出射面から出射されるが、当該入射された光の一部は副光出射面から出射される構成となっていてもよい。また、副入射部から入射された光の多くは副光出射面から出射されるが、当該入射された光の一部は主光出射面から出射される構成となっていてもよい。
【0046】
実施形態のDRLは、照射レンズの一部に光反射部を備えているが、光入射部から入射された主光や副光を反射させることなくそのまま光出射部の出射面から出射させる構成の照射レンズについても本発明を適用することができる。
【0047】
また、光入射部の構成は実施形態に記載の構成に限られるものではなく、光源の光が光入射部によって分離された複数の光束状態として照射レンズに入射させる光入射部であれば本発明が適用される。例えば、実施形態では1つの光束から主光と2つの光束からなる副光が照射レンズの光出射部から出射される形態を説明したが、これら主光と副光の区別がない複数の光束からなる光が光出射部から出射される照射レンズを備えるランプであれば、本発明を適用することができる。
【0048】
本発明にかかる光源は、発光素子としてLEDに代えて、LD(レーザーダイオード)素子や有機EL素子を採用してもよい。また、バルブ(電球)を光源としてもよい。
【0049】
本発明における車両用ランプは、実施形態に示したDRLに限られるものではなく、種々の補助灯や標識灯として機能するランプに適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 DRL(本発明にかかる車両用ランプ)
2 ロービームランプ
3 ハイビームランプ
4 光源
5 照射レンズ
41 LED
51 光入射部
52 光反射部
53 光出射部(出射面)
53m 主光出射面(光出射領域)
53s 副光出射面(光出射領域)
53n 無光出射面(無光領域)
53a 補償出射面(補償領域)
511 主入射部
512 副入射部
Lx レンズ光軸