(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】開閉装置設置構造及び該開閉装置設置構造の矯正方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/58 20060101AFI20230824BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
E06B9/58 A
E06B9/17 T
(21)【出願番号】P 2019203142
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】本庄 俊章
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛史
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060093(JP,A)
【文献】特開2005-200891(JP,A)
【文献】特開2005-282108(JP,A)
【文献】実開昭48-044630(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/58
E06B 9/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体の幅方向の端部側を上下方向へ案内するガイドレールとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた
複数の止着具により見込み方向側の被装着部に止着するようにした開閉装置設置構造に
おける矯正方法であって、
前記ガイドレールに、上下方向に間隔を置いた三以上の止着具挿通孔を設け、前記三以上の止着具挿通孔のうち、中央側の一部の止着具挿通孔を前記止着具を挿通しない状態に保持するとともに、前記一部の止着具挿通孔の上下両側の止着具挿通孔にそれぞれ前記止着具を挿通して該止着具を前記被装着部に止着し、
前記被装着部の開口部側への移動に伴って、前記ガイドレールにおける前記一部の止着具挿通孔寄り部分に開口部側への撓みを生じた場合に、前記ガイドレールにおける前記一部の止着具挿通孔に対応する部分を反開口部側へ押圧して前記撓みを矯正する工程と、この後に、前記ガイドレールの前記一部の止着具挿通孔に止着具を挿通してこの止着具を前記被装着部に止着する工程とを含むことを特徴とする開閉装置設置構造の矯正方法。
【請求項2】
上下方向に間隔を置いた前記止着具挿通孔が三つであり、中央側の前記一部の止着具挿通孔が一つであることを特徴とする請求項1記載の開閉装置設置構造の矯正方法。
【請求項3】
前記止着具挿通孔が丸孔状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置設置構造の矯正方法。
【請求項4】
前記一部の止着具挿通孔に挿通される前記止着具が螺合される雌ネジ孔を、前記被装着部に予め設けるようにしたことを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の開閉装置設置構造の矯正方法。
【請求項5】
前記一部の止着具挿通孔に挿通される前記止着具が螺合される雌ネジ孔を、設置現場で設けるようにしたことを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の開閉装置設置構造の矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体をガイドレールにより案内して開閉動作させる開閉装置設置構造及び該開閉装置設置構造の矯正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、この開閉体の見付方向の端部側を上下方向へ案内する両側のガイドレールと、開閉体を上方側で収納する収納ケースとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた複数本の螺子により見込み方向側の窓装置の縦枠に止着するようにした窓用のシャッター装置がある。
このような窓用シャッター装置では、開閉体表面の下端側における開閉体幅方向の両端側の露出部分であって、ガイドレールの近傍となる位置に、戸当りと呼称される部品が止着されている。この戸当りは、開閉体が開放動作した際に、上方の収納ケースの開口縁に当接して、開閉体が収納ケース内に引き込まれないようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のシャッター装置では、前記窓装置が固定された建物等が経年変化や地震等に影響で若干変形すると、その変形に追従するようにして、前記窓装置に止着された両側のガイドレールが撓む。詳細に説明すれば、両側のガイドレールの各々は、その高さ方向の中央寄りの部分を、開口部側(言い換えれば他方のガイドレール側)へ寄せるようにして、正面視略弓形に撓む。
このため、開閉体が上下方向へ開閉動作した際に、開閉体表面の上記戸当りが、ガイドレールに擦れたり当接したりして、開閉動作に支障をきたすおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一例は、上記課題の少なくとも一部を解決すうために、以下の構成を具備するものである。
上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体の幅方向の端部側を上下方向へ案内するガイドレールとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた複数の止着具により見込み方向側の被装着部に止着するようにした開閉装置設置構造における矯正方法であって、前記ガイドレールに、上下方向に間隔を置いた三以上の止着具挿通孔を設け、前記三以上の止着具挿通孔のうち、中央側の一部の止着具挿通孔を前記止着具を挿通しない状態に保持するとともに、前記一部の止着具挿通孔の上下両側の止着具挿通孔にそれぞれ前記止着具を挿通して該止着具を前記被装着部に止着し、前記被装着部の開口部側への移動に伴って、前記ガイドレールにおける前記一部の止着具挿通孔寄り部分に開口部側への撓みを生じた場合に、前記ガイドレールにおける前記一部の止着具挿通孔に対応する部分を反開口部側へ押圧して前記撓みを矯正する工程と、この後に、前記ガイドレールの前記一部の止着具挿通孔に止着具を挿通してこの止着具を前記被装着部に止着する工程とを含むことを特徴とする開閉装置設置構造の矯正方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、ガイドレールの変形を矯正して、開閉動作をスムーズにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る開閉装置設置構造の一例を示す正面図である。
【
図2】同開閉装置設置構造を示す要部横断面図である。
【
図3】同開閉装置設置構造を模式的に示しており、(a1)は正面図、(a2)は上下中央部の横断面図である。
【
図4】同開閉装置設置構造を模式的に示しており、(b1)はガイドレール及び被装着部が撓んだ状態の正面図、(b2)は同状態の上下方向中央部の横断面図、(c1)はガイドレールを復元した状態の正面図、(c2)は同状態の上下方向中央部の横断面図である。
【
図5】本発明に係る開閉装置設置構造の他例を模式的に示しており、(a1)は正面図、(a2)は上下中央部の横断面図、(b1)はガイドレール及び被装着部が撓んだ状態の正面図、(b2)は同状態の上下方向中央部の横断面図である。
【
図6】同他例を模式的に示しており、(c1)は、ガイドレールを復元した状態の正面図、(c2)は同状態の上下方向中央部の横断面図、(d1)は復元したガイドレールの上下方向中央部を止着した状態の正面図、(d2)は同状態の上下方向中央部の横断面図である。
【
図7】本発明に係る開閉装置設置構造の他例を模式的に示しており、(a1)は正面図、(a2)は上下中央部の横断面図、(b1)はガイドレール及び被装着部が撓んだ状態の正面図、(b2)は同状態の上下方向中央部の横断面図である。
【
図8】同他例を模式的に示しており、(c1)はガイドレールを復元した状態の正面図、(c2)は同状態の上下方向中央部の横断面図、(d1)は復元したガイドレールの上下方向中央寄りを止着した状態の正面図、(d2)は同状態の上下方向中央部の横断面図である。
【
図9】本発明に係る開閉装置設置構造を模式的に示しており、(a1)は正面図、(a2)は上下中央部の横断面図である。
【
図10】同開閉装置設置構造を模式的に示しており、(b1)はガイドレール及び被装着部が撓んだ状態の正面図、(b2)は同状態の上下方向中央部の横断面図、(c1)はガイドレールを復元した状態の正面図、(c2)は同状態の上下方向中央部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体の幅方向の端部側を上下方向へ案内するガイドレールとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた三以上の止着具により見込み方向側の被装着部に止着するようにした開閉装置設置構造において、前記ガイドレールには、前記三以上の止着具にそれぞれ対応して三以上の止着具挿通孔が設けられ、前記ガイドレールは、前記被装着部に対し、予め設定された撓み想定量以上の開口部側への移動が可能なように係合し、前記三以上の止着具挿通孔のうち、少なくとも上下方向の中央寄りの止着具挿通孔は、前記撓み想定量を含むように、見付方向の寸法が設定され、前記中央寄りの止着具挿通孔に挿通される止着具は、前記中央寄りの止着具挿通孔における反開口部寄りに配置され、前記ガイドレールと前記被装着部とを固定している(
図1~
図4参照)。
この構成によれば、例えば経年変化に起因する変形等により、被装着部が開口部側へ移動し、この変形に伴ってガイドレールの上下方向の中央寄りが開口部側へ撓んだ場合に、前記中央寄りの止着具の止着状態を一旦弛緩して、ガイドレールの撓みを矯正し、前記中央寄りの止着具を止着し直せば、ガイドレールの撓みを矯正することができる。
【0009】
第2の特徴として、上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体の幅方向の端部側を上下方向へ案内するガイドレールとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた三以上の止着具により見込み方向側の被装着部に止着するようにした開閉装置設置構造において、
前記被装着部には、前記三以上の止着具にそれぞれ対応して三以上の止着具挿通孔が設けられ、
前記ガイドレールは、前記被装着部に対し、予め設定された撓み想定量以上の開口部側への移動が可能なように係合し、
前記三以上の止着具挿通孔のうち、少なくとも上下方向の中央寄りの止着具挿通孔は、前記撓み想定量を含むように、見付方向の寸法が設定され、
前記中央寄りの止着具挿通孔に挿通される止着具は、前記中央寄りの止着具挿通孔における開口部寄りに配置され、前記ガイドレールと前記被装着部とを固定している(
図9~
図10参照)。
【0010】
第3の特徴として、前記三以上の止着具挿通孔は、全て、前記撓み想定量を含むように、見付方向の寸法が設定され、前記三以上の前記止着具は、全て、対応する前記止着具挿通孔における見付け方向の一方寄りに挿通されて、前記被装着部に対し止着している(
図3参照)。
【0011】
第4の特徴として、前記撓み想定量を含むように見付方向の寸法が設定された前記止着具挿通孔は、見付方向へ長尺な長孔である(
図3~
図4参照)。
【0012】
第5の特徴は、前記被装着部の開口部側への移動に伴って前記ガイドレールの上下方向の中央寄りが開口部側へ撓んだ場合に、前記中央寄りの止着具を一旦弛緩又は離脱して前記ガイドレールの撓みを矯正する工程と、この後に、前記中央寄りの止着具を止着し直す工程とを含む(
図3~
図4参照)。
【0013】
第6の特徴は、上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体の幅方向の端部側を上下方向へ案内するガイドレールとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた複数の止着具により見込み方向側の被装着部に止着するようにした開閉装置設置構造における矯正方法であって、前記被装着部の開口部側への移動に伴って、前記ガイドレールにおける二つの前記止着具の間に開口部側への撓みを生じた場合に、前記ガイドレールにおける前記二つの止着具の間を反開口部側へ押圧して前記撓みを矯正する工程と、この後に、前記ガイドレールにおける前記二つの止着具の間を前記被装着部に止着固定する工程とを含む(
図1~
図8参照)。
【0014】
第7の特徴は、上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体の幅方向の端部側を上下方向へ案内するガイドレールとを備え、前記ガイドレールを、上下方向に間隔を置いた複数の止着具により見込み方向側の被装着部に止着するようにした開閉装置設置構造における矯正方法であって、前記ガイドレールに、上下方向に間隔を置いた三以上の止着具挿通孔を設け、前記三以上の止着具挿通孔のうち、中央側の一部の止着具挿通孔を前記止着具を挿通しない状態に保持するとともに、前記一部の止着具挿通孔の上下両側の止着具挿通孔にそれぞれ前記止着具を挿通して該止着具を前記被装着部に止着し、前記被装着部の開口部側への移動に伴って、前記ガイドレールにおける前記一部の止着具挿通孔寄り部分に開口部側への撓みを生じた場合に、前記ガイドレールにおける前記一部の止着具挿通孔に対応する部分を反開口部側へ押圧して前記撓みを矯正する工程と、この後に、前記ガイドレールの前記一部の止着具挿通孔に止着具を挿通してこの止着具を前記被装着部に止着する工程とを含む(
図5及び
図6参照)。
【0015】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の開閉体の厚さ方向を意味し、この「開閉体厚さ方向」と「見込み方向」は同方向である。
また、「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、開閉体の厚さ方向ではない方向を意味し、「開閉体幅方向」と「見付け方向」は同方向である。
また、「開閉体開閉方向」とは、開閉体が空間を仕切ったり開放したりするためにスライドする方向を意味する。
また、以下の説明では、開閉体厚さ方向において、屋外側を前、屋内側を後と表現する場合がある。
【0016】
図1は、本実施の形態の開閉装置の設置構造及び矯正方法が適用される開閉装置の一例を示す。
この開閉装置Aは、上下方向へスライドして開口部を開閉する開閉体10と、開閉体10の幅方向の両端部側をそれぞれ上下方向へ案内するガイドレール20,20と、開閉体10をその開放方向側で収納する収納部30と、全閉状態の開閉体10の閉鎖方向端部に対向する下枠40とを具備して、窓用シャッター装置を構成している(
図1参照)。この開閉装置Aは、建物等の構造物の窓サッシSに止着される(
図2参照)。
窓サッシSは、構造物の矩形状の開口部に嵌りあう正面視矩形枠状に構成され、屋外側に臨む見付け面を、開閉装置Aを装着するための被装着部s1にしており、比較的長尺な止着具(ネジ等)によって構造物の壁面等に止着固定される。
なお、被装着部s1の他例としては、開閉装置Aの設置対象である躯体壁や、柱、その他の不動の部材とすることが可能である。
【0017】
開閉体10は、横方向へ長尺なスラット11aを、上下に隣接するスラット11a,11a間で回動するように複数連接することで、開閉体本体11を構成し、この開閉体本体11の下側の端部に、下枠40に当接させるための座板部材12(水切り又は幅木と呼称される場合もある。)を、開閉体幅方向にわたって接続している。
この開閉体10の幅方向の端部はガイドレール20内に挿入され、該端部には、必要に応じて、ガイドレール20内から抜けないように係合する抜止め部材(図示せず)が設けられる。
【0018】
座板部材12表面の幅方向の一端側と他端側には、それぞれ、ガイドレール20に近接して戸厚方向へ突出するように、全開ストッパ13が設けられる。
この全開ストッパ13は、開閉体10の全開時に収納部30の収納ケース31下端の開口31aの縁に当接して、開閉体10の下端が収納部30内に引き込まれないようにする。この全開ストッパ13は、戸当りと呼称される場合がある。
【0019】
ガイドレール20は、開閉体10を開閉方向へ案内する部材であり、収納部30と下枠40との間にわたって略鉛直状に設けられる。
詳細に説明すれば、このガイドレール20は、
図2に横断面形状を示すように、開閉体10の幅方向の端部を凹状に囲んで上下方向へ案内するガイド本体部21と、このガイド本体部21の後方側に接続された止着柱部22とから構成される。
これらガイド本体部21と止着柱部22は、図示例によれば、一端側の止着具(ネジやボルト等)と、他端側の凹凸状の嵌合により接続される。なお、これらガイド本体部21と止着柱部22は、予め一体に形成された部材とすることも可能である。
【0020】
止着柱部22は、
図2に示す一例によれば、ガイド本体部21側を開口するとともに窓サッシS側に略平板状の止着部22aを有する横断面凹状に形成され、上下方向へわたって長尺状に連続している。止着部22aには、上下方向に間隔を置いて三以上の止着具挿通孔22a1が設けられる(
図3(a1)参照)。
【0021】
また、この止着柱部22には、被装着部s1との対向面に、見付け方向に間隔を置いた複数のリブ22bが設けられる。
各リブ22bは、横断面凸曲面状の突端部を有し、上下方向へわたって連続している。
【0022】
これら複数のリブ22bによれば、ガイドレール20の被装着部s1に対する接触を、複数の線接触にし、これら部材間の平行度及び滑り性を向上することができる。
このため、開閉装置A全体の組立精度を向上できる上、後述するガイドレール20の撓み矯正の際に、その作業性を向上することができる。
【0023】
そして、止着柱部22は、被装着部s1に対し、予め設定された撓み想定量x(
図1参照)以上の開口部側(
図2によれば左側)への移動が可能なように係合している。
【0024】
詳細に説明すれば、対向する止着部22aと被装着部s1には、凹凸状に嵌り合う箇所がなく、被装着部s1が略平坦状の面により形成されている。
ガイドレール20における止着柱部22の止着部22aは、三以上(図示例によれば三つ)の止着具挿通孔22a1にそれぞれ挿通される三以上の止着具23,23aによって、見込み方向側の被装着部s1に止着されている(
図3(b1)参照)。
【0025】
各止着具23,23aは、被装着部s1に螺合し締め付けられることで止着固定されるネジ(ビス)である。符号23aは、上下方向において両側の止着具23,23の間に位置する止着具を示す。
なお、各止着具23,23aは、止着部22aと被装着部s1に挿通されて、これら二部材を止着固定するものであればよく、他例としては、ボルトとナットや、リベット等とすることも可能である。
【0026】
三以上の止着具挿通孔22a1は、全て、撓み想定量xを含むように見付方向の寸法が設定される。各止着具挿通孔22a1は、図示例によれば、見付方向へ長尺な長孔である。この長孔は、一方の半円部の中心から他方の半円部の中心までの距離が、撓み想定量x以上になるように設定される。
【0027】
ここで、撓み想定量x(
図1参照)は、実験的に得たデータ、あるいは現場調査により得たデータ等に基づいて設定され、本実施の形態の好ましい一例では、5~8mm程度に設定される。
【0028】
そして、三以上の止着具23,23aは、全て、対応する止着具挿通孔22a1における反開口部寄り(
図3によれば右寄り)に挿通されて、被装着部s1に対し弛緩可能に螺合している。なお、被装着部s1側の雌ネジ孔は、予め工場等で穿設されたものでもよいし、設置現場等で穿設されたものであってもよい。
【0029】
収納部30は、収納ケース31内に、開閉体10をその開方方向側で巻き取ったり繰り出したりする巻取軸(図示せず)や、この巻取軸を電動で回転させる開閉機、制御回路等を収納している。
【0030】
収納ケース31は、横長箱状に形成され(
図1参照)、その下端部に、開閉体10を繰出したり引き込んだりする横長の開口31aを有する。
【0031】
また、下枠40は、左右のガイドレール20,20の下端部間にわたって設けられた長尺状の部材であり、全閉時の開閉体10の閉鎖方向端部を受ける。
【0032】
次に、上記構成の開閉装置Aが長期使用による経年変化や地震等に起因して変形した場合に、その開閉装置Aを矯正する方法について説明する。
【0033】
この矯正方法は、建物等の構造物側の変形等に起因し、被装着部s1が開口部側へ移動するのに伴って、ガイドレール20の止着部22aにおける上下二つの止着具23の間の中央寄りが開口部側へ移動するように撓んだ場合に、前記中央寄りの止着具23aを一旦弛緩して止着部22aを含むガイドレール20の撓みを矯正する工程と、この後に、前記中央寄りの止着具23aを締め直す工程とを含む。
【0034】
詳細に説明すれば、通常状態においては、
図1に実線で示すように、左右のガイドレールは、並行かつそれぞれが直線状に保持される。
しかし、経年変化や地震等により構造物側が変形した場合、同
図1に二点鎖線で示すように、左右のガイドレール20,20は、それぞれ、開口部側へ弓状に変形する場合がある。
【0035】
そこで、このような場合には、先ず、上下に三つ並ぶ止着具23,23aのうち、中央寄りの止着具23aを緩める。この際、必要に応じて、上下両側の止着具23,23も緩めてもよい。
【0036】
次に、止着柱部22を含むガイドレール20における上下方向の中央側を反開口部側(
図4の右側)へ押して、ガイドレール20の撓みを矯正する。この作業により、中央側の止着具23aは、止着具挿通孔22a1内の開口部寄りに位置する(
図4(c1,c2)参照)。
【0037】
そして、この後、中央側の止着具23aを締め直して固定する。
【0038】
よって、
図4(c1)に示すように、窓サッシSの被装着部s1が弓状に撓んだまま、止着部22aを含むガイドレール20を、上下方向へわたる直線状に矯正することができる。
ひいては、開閉体10を開閉動作した際に、全開ストッパ13がガイドレール20に干渉するようなことを防ぐことができる。
【0039】
なお、上記実施態様によれば、三以上の止着具挿通孔22a1を全て同様の長孔にしたが、他例としては、上下方向の中央寄りの止着具挿通孔22a1のみ、見付け方向の寸法を撓み想定量x以上にした孔(例えば長孔等)にし、他の止着具挿通孔22a1,22a1は、見付け方向の寸法が撓み想定量xよりも小さい孔(例えば丸孔等)にしてもよい。
【0040】
さらに、他例として、上下方向の中央寄りの止着具挿通孔22a1は、見付け方向の寸法を撓み想定量x以上にすれば、図示例のような横方向の長孔でなく、斜め方向の長孔や、径の比較的大きい丸孔、四角形等の多角形孔、その他の形状の孔とすることが可能である。
【0041】
さらに、他例としては、上下方向の中央寄りの止着具挿通孔22a1を上記した比較的径の大きい孔にするとともに、止着具23の頭部と止着部22aの間にワッシャ(平座金)を設けて、このワッシャに止着具23の頭部が係止されるようにしてもよい。
【0042】
<第二の実施態様>
次に、本発明に係る開閉装置の設置構造及び矯正方法について、
図5~
図6に示す他の実施態様を説明する。
【0043】
この矯正方法の場合、開閉装置設置構造は、先に説明した開閉装置設置構造に対し、長孔状の止着具挿通孔22a1を丸孔状の止着具挿通孔22a2に置換し、中央側の止着具23aを省いた構成にする。
詳細に説明すれば、この矯正方法が適用される開閉装置設置構造では、
図5(a1)に示すように、ガイドレール20における止着部22aに、上下方向に間隔を置いた三以上(図示例によれば三つ)の丸孔状の止着具挿通孔22a2が設けられる。そして、これら三以上の止着具挿通孔22a2のうち、中央側の一部(図示例によれば一つ)の止着具挿通孔22a2を、止着具23aを挿通しない状態に保持するとともに、前記一部の止着具挿通孔22a2の上下両側の止着具挿通孔22a2,22a2に、それぞれ止着具23,23を挿通して、各止着具23を被装着部s1に螺合し締め付けて止着固定する。
【0044】
上記構成(
図5(a1,a2)参照)を初期状態として、被装着部s1の開口部側への移動に伴って、止着部22aを含むガイドレール20が中央側の一部の止着具挿通孔22a2寄りの部分に、開口部側への弓状の撓みを生じた場合(
図5(b1)参照)には、先ず、止着部22aにおける上下方向の中央側の一部の止着具挿通孔22a2に対応する部分を、反開口部側(図示の右側)へ押圧して前記撓みを矯正する(
図6(c1,c2)参照)。
【0045】
この後、止着部22aの上下方向中央側の止着具挿通孔22a2に止着具23aを挿通して、この止着具23aを被装着部s1に螺合し締め付け止着固定する。
止着具23aが螺合される被装着部s1側の雌ネジ孔は、予め工場等で穿設されていてもよいし、設置現場等で新たに穿設されたものであってもよい。
【0046】
よって、この第二の実施態様においても、窓サッシS側が弓形の変形状態のまま、止着部22aを含むガイドレール20を、上下方向へわたる直線状に矯正することができ、ひいては、開閉体10を開閉動作した際に、全開ストッパ13がガイドレール20に干渉するのを防ぐことができる。
【0047】
<第三の実施態様>
次に、本発明に係る開閉装置の設置構造及び矯正方法について、
図7~
図8に示す他の実施態様を説明する。
【0048】
この矯正方法の場合、開閉装置設置構造は、上記第二の実施態様の開閉装置設置構造と同様に、ガイドレール20の止着部22aには、三以上(図示例によれば三つ)の丸孔状の止着具挿通孔22a2が設けられる。そして、三以上の止着具挿通孔22a2には、その中央側に止着具23aが挿通され、上下両側に止着具23,23が挿通され、各止着具23a,23,23は、それぞれ、被装着部s1に螺合し締め付けられて止着固定される(
図7(a1,a2)参照))。
【0049】
そして、この矯正方法は、被装着部s1の開口部側への弓状の撓みによる移動に伴って、ガイドレール20における止着部22aの上端側と下端側の二つの止着具23,23の間に、開口部側(
図7によれば左側)への撓みを生じた場合に、上端側と下端側の二つの止着具23,23の間(図示例によれば止着具23aに対応する箇所)を反開口部側へ押圧して前記撓みを矯正する矯正工程(
図8(c1)参照)と、この後に、止着部22aにおける上端側と下端側の止着具23,23の間を、被装着部s1に止着固定する止着工程(
図8(d1)参照)とを含む。
【0050】
前記矯正工程では、先ず、ガイドレール20の止着部22aにおける上下方向中央側の一部(図示例によれば一つ)の止着具23aが緩められ取り除かれる(
図8(c1,c2)参照)。
そして、ガイドレール20において止着具23aが取り除かれた止着具挿通孔22a2に対応する部分を、反開口部側へ押圧して、ガイドレール20の撓みを矯正する(
図8(c1,c2)参照)。
【0051】
次に、前記止着工程では、止着具23aにおける前記一部の止着具挿通孔22a2の近傍(図示例によれば上下両側)に、新たな止着具挿通孔22a2’,22a2’を穿設し、さらに、被装着部s1の対応箇所にそれぞれ雌ネジ孔を設ける。
なお、新たな止着具挿通孔22a2’,22a2’は、他例としては、単数又は三以上にしてもよいし、横幅方向に複数設けてもよい。
【0052】
そして、新たな止着具挿通孔22a2’,22a2’に、それぞれ、止着具23,止着具23を挿通し、各止着具23を被装着部s1側の雌ネジ孔に螺合し締め付け止着固定する。
【0053】
この後、中央側の前記一部の止着具挿通孔22a2をシーリング材等の被覆材により埋める(
図8(d1,d2)参照)。
【0054】
よって、この第三の実施態様においても、窓サッシS側の弓状の変形を残したまま、止着部22aを含むガイドレール20を、上下方向へわたる直線状に矯正することができ、ひいては、開閉体10を開閉動作した際に、全開ストッパ13がガイドレール20に干渉するのを防ぐことができる。
<第四の実施態様>
【0055】
次に、本発明に係る開閉装置の設置構造及び矯正方法について、
図9~
図10に示す他の実施態様を説明する。
この実施態様では、ガイドレール側の止着部22aを止着部22a’に置換し、窓サッシ側の被装着部s1を被装着部s1’に置換し、止着具23,23aを、止着具23’,23a’と止着補助具23bに置換したものである。
【0056】
止着部22a’は、止着具23’,23a’を挿通するための孔として、長孔状の上記止着具挿通孔22a1に替えて、丸孔状の貫通孔22a3を有する。
【0057】
また、被装着部s1’には、三組以上(図示例によれば三組)の止着具23’,23a’及び止着補助具23bに対応して、三以上の止着具挿通孔s1aが設けられる。
これら三以上の止着具挿通孔s1aのうち、少なくとも上下方向の中央寄り(図示例によれば全部)の止着具挿通孔s1aは、撓み想定量xを含むように、見付方向の寸法が設定される。
【0058】
止着具23’,23a’と止着補助具23bは、例えば、ボルトと該ボルトに締め付けられたナットである。
なお、この止着具23’,23a’及び止着補助具23bは、止着部22a’と被装着部s1’に挿通されて、これら二部材を止着固定するものであればよく、例えば、リベット等を用いることも可能である。
ここで、前記リベットには、先端側を塑性変形させて拡径する態様や、先端側に円筒状の補助部材を接続する態様等を含む。
【0059】
前記三以上の止着具23’,23a’及び止着補助具23bのうち、上下方向の中央寄りの貫通孔22a3及び止着具挿通孔s1aに挿通される止着具23a’及び止着補助具23bは、
図9に示すように、止着具挿通孔s1aにおける開口部寄りに配置され締め付けられて、前記ガイドレールと前記被装着部とを固定している。
【0060】
上記構成(
図9(a1)(a2)参照)を初期状態として、被装着部s1’の開口部側への移動に伴って、止着部22a’を含むガイドレール20が、上下方向の中央寄り部分に、開口部側への弓状の撓みを生じた場合(
図10(b1)参照)には、先ず、止着具23a’及び止着補助具23bを緩め(リベットの場合は外し)、上下方向の中央寄りの貫通孔22a3に対応する部分を、反開口部側(図示の右側)へ押圧して前記撓みを矯正する(
図10(c1)(c2)参照)。
【0061】
この後、止着具23a’及び止着補助具23bを締め付けて(止着具23a’等をリベットとした場合には再止着して)、ガイドレール20の止着部22a’を被装着部s1’に固定する。
【0062】
よって、この第四の実施態様においても、止着部22a’を含むガイドレール20を、上下方向へわたる直線状に矯正することができ、ひいては、開閉体10を開閉動作した際に、全開ストッパ13がガイドレール20に干渉するのを防ぐことができる。
【0063】
なお、上記実施態様によれば、止着部22a(又は22a’)と、被装着部s1(又はs1’)とのうち、何れか一方に、止着具23(又は23a)を挿通するための長孔状の止着具挿通孔22a1(22a2,22a2’又はs1a)を設けたが、他例としては、双方に長孔を設け、これら長孔に挿通される止着具23(又は23a)を、ボルトとナット(あるいはリベット等)により構成することも可能である。
【0064】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、止着部22aと被装着部s1が凹凸状に嵌り合わない構成にして、ガイドレール20が被装着部s1に対し撓み想定量x以上開口部側へ移動するようにしたが、他例としては、止着部22aと被装着部s1が、開口部幅方向の撓み想定量x以上の遊びを有する状態で凹凸状に嵌り合った態様とすることも可能である。
【0065】
本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10:開閉体
20:ガイドレール
21:ガイド本体部
22:止着柱部
22a,22a’:止着部
22a1,22a2,22a2’,s1a:止着具挿通孔
23,23a:止着具
A:開閉装置
S:窓サッシ
s1,s1’:被装着部
x:撓み想定量