IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/671 20230101AFI20230824BHJP
   H04N 25/77 20230101ALI20230824BHJP
【FI】
H04N25/671
H04N25/77
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019204946
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021078056
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 忠義
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-10054(JP,A)
【文献】特開2002-330348(JP,A)
【文献】特開2011-091487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 - 5/33
23/11
23/20 -23/30
25/00
25/20 -25/61
25/615-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域に光電変換素子を含む複数の検出素子が配置されたセンサ部と、
前記検出素子に複数の駆動信号を供給する駆動回路と、
前記検出素子から出力される検出信号を処理する検出回路と、
を備え、
前記検出素子は、
前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を出力するソースフォロワトランジスタと、
前記ソースフォロワトランジスタの出力信号を読み出し、前記検出信号を出力する読出トランジスタと、
前記光電変換素子のカソードに基準電位を供給または遮断する第1リセットトランジスタと、
前記光電変換素子のアノードと、前記ソースフォロワトランジスタと前記読出トランジスタとの接続点との間を電気的に接続または切断する第2リセットトランジスタと、
前記光電変換素子のアノードに前記基準電位を供給または遮断するキャンセルトランジスタと、
を備え、
リセット期間において、前記光電変換素子のカソードに印加される電位の初期値として、前記基準電位に対し、少なくとも前記ソースフォロワトランジスタのしきい値電圧を重畳した電位が設定される、
検出装置。
【請求項2】
前記光電変換素子の容量は、ソースフォロワトランジスタの入出力間の電位差により充電され、
前記リセット期間において、前記初期値として、前記基準電位に対し、前記光電変換素子の両端間電圧を重畳した電位が設定される、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記リセット期間において、前記ソースフォロワトランジスタの入出力間の電位差により前記光電変換素子の容量を充電した後に、前記基準電位に対して前記光電変換素子の両端間電圧を重畳した電位を前記ソースフォロワトランジスタの入力に印加する、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
検出領域に光電変換素子を含む複数の検出素子が配置されたセンサ部と、
前記検出素子に複数の駆動信号を供給する駆動回路と、
前記検出素子から出力される検出信号を処理する検出回路と、
を備え、
前記検出素子は、
前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を出力するソースフォロワトランジスタと、
前記ソースフォロワトランジスタの出力信号を読み出し、前記検出信号を出力する読出トランジスタと、
前記光電変換素子のカソードに基準電位を供給または遮断する第1リセットトランジスタと、
前記光電変換素子のアノードと前記読出トランジスタの出力との間を電気的に接続または切断する第2リセットトランジスタと、
前記光電変換素子のアノードに前記基準電位を供給または遮断するキャンセルトランジスタと、
を備え、
リセット期間において、前記光電変換素子のカソードに印加される電位の初期値として、前記基準電位に対し、前記ソースフォロワトランジスタのしきい値電圧、及び、前記読出トランジスタのオン抵抗に起因する電圧降下を重畳した電位が設定される、
検出装置。
【請求項5】
前記光電変換素子の容量は、ソースフォロワトランジスタの入力と前記読出トランジスタの出力との間の電位差により充電され、
前記リセット期間において、前記初期値として、前記基準電位に対し、前記光電変換素子の両端間電圧を重畳した電位が設定される、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記リセット期間において、前記ソースフォロワトランジスタの入力と前記読出トランジスタの出力との間の電位差により前記光電変換素子の容量を充電した後に、前記基準電位に対して前記光電変換素子の両端間電圧を重畳した電位を前記ソースフォロワトランジスタの入力に印加する、
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
複数の前記駆動信号は、
前記読出トランジスタを制御する読出制御信号と、
前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタを制御するリセット制御信号と、
前記キャンセルトランジスタを制御するキャンセル制御信号と、
を含み、
前記読出トランジスタに前記読出制御信号を供給する読出制御走査線と、
前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタに前記リセット制御信号を供給するリセット制御走査線と、
前記キャンセルトランジスタに前記キャンセル制御信号を供給するキャンセル制御走査線と、
を備える、
請求項1から6の何れか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記駆動回路は、
前記リセット期間において、前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタをオン制御した後に、前記読出トランジスタをオン制御し、さらに、前記第1リセットトランジスタ及び前記第2リセットトランジスタをオフ制御、前記キャンセルトランジスタをオン制御した後に、前記読出トランジスタをオフ制御し、
前記リセット期間に続く蓄積期間を経た後に前記読出トランジスタをオン制御して読出期間を開始する、
請求項1から7の何れか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検出用の光電変換素子としてPIN(Positive Intrinsic Negative Diode)型のフォトダイオードを用いた光電変換装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような光電変換装置は、光電変換部で光電変換された入力情報に基づく電荷を外部容量へ転送し、当該外部容量にて信号電圧に変換する。
【0003】
特許文献1には、光電変換部で発生した信号電荷をゲートで受ける電界効果トランジスタを有し、当該電界効果トランジスタによって信号電荷に応じた信号電圧を信号線に読み出すソースフォロワ回路を画素ごとに設けている。これにより高速の信号読み出しが可能となるが、電界効果トランジスタのオフセット電位のバラツキが、固定パターンノイズとして現れるという問題がある。このため、ソースフォロア回路が持つしきい値電圧分のオフセット値のバラツキを補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-10054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献では、ソースフォロワ回路の読出用トランジスタのしきい値電圧でキャパシタをプリチャージし、当該キャパシタを介して基準電位を与えることで、蓄積ノードの電位を基準電位からキャパシタの両端間電圧だけシフトした電位にしている。しかしながら、読出用トランジスタやリセットトランジスタの寄生容量がキャパシタの両端間電圧に与える影響については考慮されていない。このため、検出値のバラツキが生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、検出値のバラツキを抑制することができる検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る検出装置は、検出領域に光電変換素子を含む複数の検出素子が配置されたセンサ部と、前記検出素子に複数の駆動信号を供給する駆動回路と、前記検出素子から出力される検出信号を処理する検出回路と、を備え、前記検出素子は、前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を出力するソースフォロワトランジスタと、前記ソースフォロワトランジスタの出力信号を読み出し、前記検出信号を出力する読出トランジスタと、前記光電変換素子のカソードに基準電位を供給または遮断する第1リセットトランジスタと、前記光電変換素子のアノードと、前記ソースフォロワトランジスタと前記読出トランジスタとの接続点との間を電気的に接続または切断する第2リセットトランジスタと、前記光電変換素子のアノードに前記基準電位を供給または遮断するキャンセルトランジスタと、を備え、リセット期間において、前記光電変換素子のカソードに印加される電位の初期値として、前記基準電位に対し、少なくとも前記ソースフォロワトランジスタのしきい値電圧を重畳した電位が設定される。
【0008】
本発明の一態様に係る検出装置は、検出領域に光電変換素子を含む複数の検出素子が配置されたセンサ部と、前記検出素子に複数の駆動信号を供給する駆動回路と、前記検出素子から出力される検出信号を処理する検出回路と、を備え、前記検出素子は、前記光電変換素子で発生した電荷に応じた信号を出力するソースフォロワトランジスタと、前記ソースフォロワトランジスタの出力信号を読み出し、前記検出信号を出力する読出トランジスタと、前記光電変換素子のカソードに基準電位を供給または遮断する第1リセットトランジスタと、前記光電変換素子のアノードと前記読出トランジスタの出力との間を電気的に接続または切断する第2リセットトランジスタと、前記光電変換素子のアノードに前記基準電位を供給または遮断するキャンセルトランジスタと、を備え、リセット期間において、前記光電変換素子のカソードに印加される電位の初期値として、前記基準電位に対し、前記ソースフォロワトランジスタのしきい値電圧、及び、前記読出トランジスタのオン抵抗に起因する電圧降下を重畳した電位が設定される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、実施形態に係る検出装置を有する照明装置付き検出機器の概略断面構成を示す断面図である。
図1B図1Bは、変形例に係る照明装置付き検出機器の概略断面構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、比較例に係る検出素子を示す回路図である。
図5図5は、比較例に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。
図6A図6Aは、図5に示す期間t0-t1における検出素子の等価回路を示す図である。
図6B図6Bは、図5に示す期間t1-t2における検出素子の等価回路を示す図である。
図6C図6Cは、図5に示す期間t2’-t3における検出素子の等価回路を示す図である。
図6D図6Dは、図5に示す期間t3-t4における検出素子の等価回路を示す図である。
図6E図6Eは、図5に示す期間t4-t5における検出素子の等価回路を示す図である。
図7図7は、実施形態1に係る検出素子を示す回路図である。
図8A図8Aは、実施形態1に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。
図8B図8Bは、実施形態1に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。
図9A図9Aは、図8A及び図8Bに示す期間t0-t0’における検出素子の等価回路を示す図である。
図9B図9Bは、図8A及び図8Bに示す期間t0’-t1における検出素子の等価回路を示す図である。
図9C図9Cは、図8A及び図8Bに示す期間t1-t2における検出素子の等価回路を示す図である。
図9D図9Dは、図8A及び図8Bに示す期間t2’-t3における検出素子の等価回路を示す図である。
図9E図9Eは、図8A及び図8Bに示す期間t3-t4における検出素子の等価回路を示す図である。
図9F図9Fは、図8A及び図8Bに示す期間t4-t5における検出素子の等価回路を示す図である。
図10図10は、実施形態2に係る検出素子を示す回路図である。
図11図11は、実施形態2に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。
図12A図12Aは、図11に示す期間t0-t0’における検出素子の等価回路を示す図である。
図12B図12Bは、図11に示す期間t0’-t1における検出素子の等価回路を示す図である。
図12C図12Cは、図11に示す期間t1-t2における検出素子の等価回路を示す図である。
図12D図12Dは、図11に示す期間t2’-t3における検出素子の等価回路を示す図である。
図12E図12Eは、図11に示す期間t3-t4における検出素子の等価回路を示す図である。
図12F図12Fは、図11に示す期間t4-t5における検出素子の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
図1Aは、実施形態に係る検出装置を有する照明装置付き検出機器の概略断面構成を示す断面図である。図1Aに示すように、照明装置付き検出機器120は、検出装置1と、照明装置121と、カバーガラス122とを有する。検出装置1の表面に垂直な方向において、照明装置121、検出装置1、カバーガラス122の順に積層されている。
【0013】
照明装置121は、光を照射する光照射面121aを有し、光照射面121aから検出装置1に向けて光L1を照射する。照明装置121は、バックライトである。照明装置121は、例えば、検出領域AAに対応する位置に設けられた導光板と、導光板の一方端又は両端に並ぶ複数の光源とを有する、いわゆるサイドライト型のバックライトであってもよい。光源として、例えば、所定の色の光を発する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode))が用いられる。また、照明装置121は、検出領域AAの直下に設けられた光源(例えば、LED)を有する、いわゆる直下型のバックライトであっても良い。また、照明装置121は、バックライトに限定されず、検出装置1の側方や上方に設けられていてもよく、指Fgの側方や上方から光L1を照射してもよい。
【0014】
検出装置1は、照明装置121の光照射面121aと対向して設けられる。照明装置121から照射された光L1は、検出装置1及びカバーガラス122を透過する。検出装置1は、カバーガラス122と空気との界面で反射した光L2を検出することで、検出対象(図1Aに示す例では、指Fgの表面の凹凸(例えば、指紋))を検出できる。照明装置121からの光L1の色は、検出対象に応じて異ならせてもよい。
【0015】
カバーガラス122は、検出装置1及び照明装置121を保護するための部材であり、検出装置1及び照明装置121を覆っている。カバーガラス122は、例えばガラス基板である。なお、カバーガラス122はガラス基板に限定されず、樹脂基板等であってもよい。また、カバーガラス122が設けられていなくてもよい。この場合、検出装置1の表面に保護層が設けられ、検出対象(ここでは、指Fg)は検出装置1の保護層に接する。
【0016】
照明装置付き検出機器120は、照明装置121に換えて表示パネルが設けられていてもよい。表示パネルは、例えば、有機ELディスプレイパネル(OLED:Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED)であってもよい。或いは、表示パネルは、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や、表示素子として電気泳動素子を用いた電気泳動型表示パネル(EPD:Electrophoretic Display)であってもよい。
【0017】
図1Bは、変形例に係る照明装置付き検出機器の概略断面構成を示す断面図である。図1Bに示すように、照明装置付き検出機器120は、検出装置1の表面に垂直な方向において、検出装置1、照明装置121、カバーガラス122の順に積層されている。本変形例においても、照明装置121として、有機ELディスプレイパネル等の表示パネルを採用することができる。
【0018】
照明装置121から照射された光L1は、カバーガラス122を透過した後、指Fgで反射する。指Fgで反射した光L2は、カバーガラス122を透過し、さらに、照明装置121を透過する。検出装置1は、照明装置121を透過した光L2を受光することで、指紋検出等、生体に関する情報を検出することができる。
【0019】
図2は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。図2に示すように、検出装置1は、基板21と、センサ部10と、走査線駆動回路15と、信号線選択回路16と、検出回路48と、制御回路102と、電源回路103と、を有する。
【0020】
基板21には、配線基板110を介して制御基板101が電気的に接続される。配線基板110は、例えば、フレキシブルプリント基板やリジット基板である。配線基板110には、検出回路48が設けられている。制御基板101には、制御回路102及び電源回路103が設けられている。制御回路102は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路102は、センサ部10、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ部10の検出動作を制御する。電源回路103は、電源電位Vsf、リセット電位Vrst、基準電位VCOM(図4参照)等の電圧信号をセンサ部10、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16に供給する。
【0021】
基板21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ部10が有する複数の検出素子3と重なる領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外側の領域であり、検出素子3と重ならない領域である。すなわち、周辺領域GAは、検出領域AAの外周と基板21の端部との間の領域である。走査線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。
【0022】
センサ部10の複数の検出素子3は、それぞれ、光電変換素子30を有する光センサである。光電変換素子30は、フォトダイオードであり、それぞれに照射される光に応じた電気信号を出力する。より具体的には、光電変換素子30は、PIN(Positive Intrinsic Negative)フォトダイオードである。検出素子3は、検出領域AAにマトリクス状に配列される。複数の検出素子3が有する光電変換素子30は、走査線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号(例えば、リセット制御信号RST、読出制御信号RD)に従って検出を行う。複数の光電変換素子30は、それぞれに照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。検出装置1は、複数の光電変換素子30からの検出信号Vdetに基づいて生体に関する情報を検出する。
【0023】
走査線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。具体的には、走査線駆動回路15は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線選択回路16は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられ、センサ部10と検出回路48との間に設けられる。
【0024】
なお、第1方向Dxは、基板21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。また、第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、基板21の法線方向である。
【0025】
図3は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、検出装置1は、さらに検出制御回路11と検出部40と、を有する。検出制御回路11の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれてもよい。また、検出部40のうち、検出回路48以外の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれてもよい。
【0026】
検出制御回路11は、走査線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御回路11は、スタート信号STV、クロック信号CK等の各種制御信号を走査線駆動回路15に供給する。また、検出制御回路11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。
【0027】
走査線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線(読出制御走査線GLrd、リセット制御走査線GLrst、キャンセル制御走査線GLcan(図4参照))を駆動する回路である。走査線駆動回路15は、複数のゲート線を順次又は同時に選択し、選択されたゲート線にゲート駆動信号(例えば、リセット制御信号RST、読出制御信号RD、キャンセル制御信号CAN)を供給する。これにより、走査線駆動回路15は、ゲート線に接続された複数の光電変換素子30を選択する。
【0028】
信号線選択回路16は、複数の出力信号線SL(図4参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御回路11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された出力信号線SLと検出回路48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、光電変換素子30の検出信号Vdetを検出部40に出力する。なお、信号線選択回路16は無くてもよい。この場合、出力信号線SLは、検出回路48と直接接続されてもよい。
【0029】
検出部40は、検出回路48と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、記憶回路46と、検出タイミング制御回路47と、を備える。検出タイミング制御回路47は、検出制御回路11から供給される制御信号に基づいて、検出回路48と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、が同期して動作するように制御する。
【0030】
検出回路48は、例えばアナログフロントエンド回路(AFE、Analog Front End)である。検出回路48は、少なくとも検出信号増幅回路42及びA/D変換回路43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅回路42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換回路43は、検出信号増幅回路42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0031】
信号処理回路44は、検出回路48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理回路44は、指Fgが検出面に接触又は近接した場合に、検出回路48からの信号に基づいて指Fgや掌の表面の凹凸を検出できる。また、信号処理回路44は、検出回路48からの信号に基づいて生体に関する情報を検出してもよい。生体に関する情報は、例えば、指Fgや掌の血管像、脈波、脈拍、血中酸素飽和度等である。
【0032】
記憶回路46は、信号処理回路44で演算された信号を一時的に保存する。記憶回路46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0033】
座標抽出回路45は、信号処理回路44において指Fgの接触又は近接が検出されたときに、指Fg等の表面の凹凸の検出座標を求める論理回路である。また、座標抽出回路45は、指Fgや掌の血管の検出座標を求める論理回路である。座標抽出回路45は、センサ部10の各検出素子3から出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指Fg等の表面の凹凸の形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出回路45は、検出座標を算出せずにセンサ出力Voとして検出信号Vdetを出力してもよい。
【0034】
(比較例)
ここで、比較例に係る検出素子の回路構成例及び動作例について説明する。図4は、比較例に係る検出素子を示す回路図である。図4に示すように、比較例に係る検出素子は、光電変換素子30、容量素子Cc、第1リセットトランジスタMrst1、第2リセットトランジスタMrst2、キャンセルトランジスタMcan、読出トランジスタMrd、及びソースフォロワトランジスタMsfを有する。また、検出素子には、検出駆動線としてリセット制御走査線GLrst、読出制御走査線GLrd、及びキャンセル制御走査線GLcanが設けられ、信号読出用の配線として出力信号線SLが設けられている。
【0035】
出力信号線SLには、読出トランジスタMrdにバイアス電流Ibを流すための定電流源が接続されている。これにより、検出素子3によって出力信号線SLに印加される検出信号Vdetを検出可能となる。この定電流源は、検出回路48内に設けられていても良いし、基板21内に設けられていても良い。
【0036】
なお、図4では1つの検出素子を示しているが、リセット制御走査線GLrst、読出制御走査線GLrd、キャンセル制御走査線GLcan、及び出力信号線SLは、複数の検出素子に接続される。具体的には、リセット制御走査線GLrst、読出制御走査線GLrd、及びキャンセル制御走査線GLcanは、第1方向Dx(図2参照)に延在し、第1方向Dxに配列された複数の検出素子と接続される。また、出力信号線SLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の検出素子に接続される。
【0037】
第1リセットトランジスタMrst1、第2リセットトランジスタMrst2、キャンセルトランジスタMcan、読出トランジスタMrd、及びソースフォロワトランジスタMsfは、1つの光電変換素子30に対応して設けられる。検出素子が有する複数のトランジスタは、それぞれn型TFT(Thin Film Transistor)で構成される。ただし、これに限定されず、各トランジスタは、それぞれp型TFTで構成されてもよい。
【0038】
光電変換素子30のアノードには、基準電位VCOMが印加される。光電変換素子30のカソードは、ノードN1に接続される。ノードN1は、第1リセットトランジスタMrst1のソース又はドレインの一方、及びソースフォロワトランジスタMsfのゲートに接続される。光電変換素子30に光が照射された場合、光電変換素子30の容量Cdに電荷が蓄積される。
【0039】
第1リセットトランジスタMrst1のゲートは、リセット制御走査線GLrstに接続される。第1リセットトランジスタMrst1のソース又はドレインの他方には、リセット電位Vrstが供給される。
【0040】
ソースフォロワトランジスタMsfは、電源電位Vsfが供給される端子と読出トランジスタMrd(ノードN2)との間に接続される。ソースフォロワトランジスタMsfのゲートは、ノードN1に接続される。光電変換素子30の容量Cdに蓄積された電荷は、電圧信号としてソースフォロワトランジスタMsfのゲートに供給される。これにより、ソースフォロワトランジスタMsfは、光電変換素子30で発生した電荷に応じた電圧信号を読出トランジスタMrdに出力する。
【0041】
読出トランジスタMrdは、ソースフォロワトランジスタMsfのソース(ノードN2)と出力信号線SLとの間に接続される。読出トランジスタMrdのゲートは、読出制御走査線GLrdに接続される。読出トランジスタMrdが読出制御信号RDに応答してオンになると、ソースフォロワトランジスタMsfから出力される信号、すなわち、光電変換素子30で発生した信号(電荷)に応じた電圧信号が、検出信号Vdetとして出力信号線SLに出力される。
【0042】
第2リセットトランジスタMrst2のゲートは、リセット制御走査線GLrstに接続される。第2リセットトランジスタMrst2のソース又はドレインの一方は、ソースフォロワトランジスタMsfのソースと読出トランジスタMrdとの接続点(ノードN2)に接続される。
【0043】
第2リセットトランジスタMrst2のソース又はドレインの他方は、キャンセルトランジスタMcanのソース又はドレインの一方(ノードN3)に接続される。キャンセルトランジスタMcanのゲートは、キャンセル制御走査線GLcanに接続される。キャンセルトランジスタMcanのソース又はドレインの他方には、リセット電位Vrstが供給される。
【0044】
ノードN1とノードN3との間には、容量素子Ccが接続される。
【0045】
なお、第1リセットトランジスタMrst1及びソースフォロワトランジスタMsfは、それぞれ、いわゆる寄生容量を有している。図4において、Crstは第1リセットトランジスタMrst1の寄生容量を示し、CsfはソースフォロワトランジスタMsf寄生容量を示している。なお、その他のトランジスタについても寄生容量を有しているが、本実施形態では、第2リセットトランジスタMrst2、キャンセルトランジスタMcan、及び読出トランジスタMrdの寄生容量については説明を省略する。
【0046】
図5は、比較例に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。図6Aは、図5に示す期間t0-t1における検出素子の等価回路を示す図である。図6Bは、図5に示す期間t1-t2における検出素子の等価回路を示す図である。図6Cは、図5に示す期間t2’-t3における検出素子の等価回路を示す図である。図6Dは、図5に示す期間t3-t4における検出素子の等価回路を示す図である。図6Eは、図5に示す期間t4-t5における検出素子の等価回路を示す図である。
【0047】
検出素子は、リセット期間Prst、蓄積期間Pch及び読出期間Pdetの順に検出を実行する。リセット期間Prstは、光電変換素子30に照射された光に応じた検出信号Vdetの電圧変動分の基準値となるVdet1をセットする期間である。
【0048】
図4に示す比較例の構成において、時刻t0に、リセット制御走査線GLrstに供給されるリセット制御信号RSTをハイ(高レベル電圧)とすると、リセット期間Prstが開始する。リセット期間Prstにおいて、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2がオン(導通状態)となる。これにより、ノードN1の電位VN1は、下記(1)式に示されるように、リセット電位Vrstとなる(図6A参照)。
【0049】
VN1=Vrst・・・(1)
【0050】
時刻t1に、読出制御走査線GLrdに供給される読出制御信号RDをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、読出トランジスタMrdがオン(導通状態)となる。このとき、ノードN2の電位VN2(ノードN3の電位VN3)は、下記(2)式に示される(図6B参照)。なお、下記(2)式において、Vthsfは、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧である。
【0051】
VN2(=VN3)=Vrst-Vthsf・・・(2)
【0052】
このとき、ノードN1-N3間に設けられた容量素子Ccは、下記(3)式に示される電位差ΔVCc(Vthsf)により充電される(図6B参照)。
【0053】
ΔVCc=Vthsf・・・(3)
【0054】
また、このとき、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位Vdet1は、下記(4)式に示される(図6B参照)。下記(4)式において、Rrdは、読出トランジスタMrdのオン抵抗であり、Ibは、定電流源によって読出トランジスタMrdに流れるバイアス電流である。すなわち、下記(4)式の右辺の(Rrd×Ib)は、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下である。
【0055】
Vdet1=Vrst-Vthsf-Rrd×Ib・・・(4)
【0056】
時刻t2に、リセット制御信号RSTをロウ(低レベル電圧)とし、時刻t2’に、キャンセル制御信号CANをハイ(高レベル電圧)とすると、キャンセルトランジスタMcanがオン(導通状態)となり、ノードN3の電位VN3は、下記(5)式に示されるように、リセット電位Vrstとなる(図6C参照)。
【0057】
VN3=Vrst・・・(5)
【0058】
このとき、ノードN1の電位VN1は、下記(6)式に示されるように、ノードN3の電位VN3(=Vrst)に容量素子Ccの両端間電圧ΔVCc(=Vthsf×Eff)を重畳した電位が初期値として設定される(図6C参照)。
【0059】
VN1=VN3+ΔVCc
=Vrst+Vthsf×Eff・・・(6)
【0060】
ここで、上記(6)式の右辺の係数Effについて説明する。
【0061】
時刻t2’から時刻t3において、ノードN1とノードN2との間の電位差はソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfで与えられる。このとき、容量素子Ccの両端間電圧ΔVCcは、下記(7)式で表せる。また、上記(6)式における係数Effは、下記(8)式で表せる。
【0062】
ΔVCc=Vthsf×(Cc/(Cc+Crst+Csf+Cd))・・・(7)
【0063】
Eff=Cc/(Cc+Crst+Csf+Cd)・・・(8)
【0064】
これにより、ノードN2の電位VN2は、下記(9)式に示されるように、ノードN1の電位VN1(=Vrst+Vthsf×Eff)から、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfを差し引いた値(Vrst-Vthsf×(1-Eff))となり、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位Vdet1は、下記(10)式に示されるように、ノードN2の電位VN2(=Vrst+Rrd×Ib)から、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(=Rrd×Ib)を差し引いた値にセットされる。
【0065】
VN2=VN1-Vthsf
=(Vrst+Vthsf×Eff)-Vthsf
=Vrst-Vthsf×(1-Eff)・・・(9)
【0066】
Vdet1=VN2-Rrd×Ib
=Vrst-Vthsf×(1-Eff)-Rrd×Ib・・・(10)
【0067】
時刻t3に、読出制御信号RD及びキャンセル制御信号CANをロウ(低レベル電圧)とすると、リセット期間Prstが終了し、蓄積期間Pchが開始する。このとき、読出トランジスタMrd及びキャンセルトランジスタMcanがオフ(非導通状態)となり、ノードN2の電位VN2は、上記(9)式に示される(Vrst-Vthsf×(1-Eff))で一定となる(図6D参照)。また、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位はロウ(低レベル電圧)となる。ノードN1の電位VN1は、下記(11)式に示されるように、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下する(図6D参照)。
【0068】
VN1=Vrst+Vthsf×Eff-Vphoto・・・(11)
【0069】
時刻t4に、読出制御信号RDをハイ(高レベル電圧)とすると、読出トランジスタMrdがオン(導通状態)となり、蓄積期間Pchが終了し、読出期間Pdetが開始する。ノードN2の電位VN2は、下記(12)式に示されるように、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下する(図6E参照)。
【0070】
VN2=Vrst-Vthsf×(1-Eff)-Vphoto・・・(12)
【0071】
このとき、読出期間Pdetに出力される検出信号Vdetの電位Vdet2は、下記(13)式に示されるように、ノードN2の電位VN2(=Vrst-Vthsf×(1-Eff)-Vphoto)から、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(Rrd×Ib)を差し引いた値となる(図6E参照)。
【0072】
Vdet2=VN2-Rrd×Ib
=Vrst-Vthsf×(1-Eff)
-Rrd×Ib-Vphoto・・・(13)
【0073】
時刻t5に、読出制御信号RDをロウ(低レベル電圧)とすると、読出期間Pdetが終了する。
【0074】
検出部40は、読出期間Pdetが終了した時刻t5における検出信号Vdetの電位Vdet2を検出する。図5では、1つの検出素子の動作例を示しているが、走査線駆動回路15が、リセット制御走査線GLrst、読出制御走査線GLrd、キャンセル制御走査線GLcanを順次、時分割的に走査する。この手順を繰り返すことで、検出領域AA全体の検出素子で検出処理を行うことができる。
【0075】
上記(13)式において、上記(5)式に示す係数Effを1に近似することができれば、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfの項を「0」と見做せる。しかしながら、光電変換素子30を用いた構成では、検出性能を向上するために光電変換素子30の受光面積を大きくする必要がある。
【0076】
(実施形態1)
次に、実施形態1に係る検出装置1の回路構成例及び動作例について説明する。ここでは、比較例との相違点を中心に説明する。
【0077】
図7は、実施形態1に係る検出素子を示す回路図である。図7に示すように、実施形態1の構成では、ノードN1とノードN3との間に光電変換素子30が設けられている。光電変換素子30のアノードは、ノードN3に接続される。光電変換素子30のカソードは、ノードN1に接続される。光電変換素子30に光が照射された場合、光電変換素子30から出力された信号(電荷)は、光電変換素子30の容量Cdに蓄積される。
【0078】
第1リセットトランジスタMrst1のゲートは、リセット制御走査線GLrstに接続される。第1リセットトランジスタMrst1のソース又はドレインの他方には、基準電位VCOMが供給される。
【0079】
第2リセットトランジスタMrst2のソース又はドレインの他方は、キャンセルトランジスタMcanのソース又はドレインの一方(ノードN3)に接続される。キャンセルトランジスタMcanのゲートは、キャンセル制御走査線GLcanに接続される。キャンセルトランジスタMcanのソース又はドレインの他方には、基準電位VCOMが供給される。
【0080】
なお、第1リセットトランジスタMrst1及びソースフォロワトランジスタMsfは、上述した比較例と同様に、それぞれ、いわゆる寄生容量を有している。図7において、Crstは第1リセットトランジスタMrst1の寄生容量を示し、CsfはソースフォロワトランジスタMsf寄生容量を示している。なお、その他のトランジスタについても寄生容量を有しているが、ここでは、第2リセットトランジスタMrst2、キャンセルトランジスタMcan、及び読出トランジスタMrdの寄生容量については省略する。
【0081】
また、図7に示す例では、第1リセットトランジスタMrst1及び読出トランジスタMrdは、それぞれ、いわゆるシングルゲート構造であるが、これに限定されず、2つのトランジスタが直列に接続されて構成されたいわゆるダブルゲート構造でもよく、3つ以上のトランジスタが直列に接続されてもよい。また、1つの検出素子3の回路は、第1リセットトランジスタMrst1、第2リセットトランジスタMrst2、キャンセルトランジスタMcan、ソースフォロワトランジスタMsf、及び読出トランジスタMrdの5つのトランジスタを有する構成に限定されない。検出素子3は、6つ以上のトランジスタを有していてもよい。
【0082】
本実施形態では、上述した比較例の図4に示した容量素子Ccに代えて、光電変換素子30の容量Cdを用いる構成である。上述したように、光電変換素子30を用いた構成では、検出性能を向上するために光電変換素子30の受光面積を大きくする必要があるため、光電変換素子30の容量Cdは、第1リセットトランジスタMrst1の寄生容量Crst、及び、ソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Csfに対して十分に大きくすることができる。以下、図8A図8B、及び図9Aから図9Fを参照して、図7に示した本実施形態の構成による効果について、具体的に説明する。
【0083】
図8A及び図8Bは、実施形態1に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。図8Aは、第1リセットトランジスタMrst1の寄生容量Crst、及び、ソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Csfを無視しない場合のタイミング波形図を示し、図8Bは、第1リセットトランジスタMrst1の寄生容量Crst、及び、ソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Csfを無視した場合のタイミング波形図を示している。図9Aは、図8A及び図8Bに示す期間t0-t0’における検出素子の等価回路を示す図である。図9Bは、図8A及び図8Bに示す期間t0’-t1における検出素子の等価回路を示す図である。図9Cは、図8A及び図8Bに示す期間t1-t2における検出素子の等価回路を示す図である。図9Dは、図8A及び図8Bに示す期間t2’-t3における検出素子の等価回路を示す図である。図9Eは、図8A及び図8Bに示す期間t3-t4における検出素子の等価回路を示す図である。図9Fは、図8A及び図8Bに示す期間t4-t5における検出素子の等価回路を示す図である。
【0084】
ここでは、第1リセットトランジスタMrst1及びソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Crst及び寄生容量Csfを無視しない場合(図8A参照)について説明し、適宜、第1リセットトランジスタMrst1及びソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Crst及び寄生容量Csfを無視することが可能であること(図8B参照)について説明する。
【0085】
検出素子3は、リセット期間Prst、蓄積期間Pch及び読出期間Pdetの順に検出を実行する。電源回路103は、リセット期間Prst、蓄積期間Pch及び読出期間Pdetに亘って、基準電位VCOMを検出素子3に供給する。
【0086】
制御回路102は、時刻t0に、キャンセル制御走査線に供給されるキャンセル制御信号CANをロウ(低レベル電圧)とする(図9A参照)。これにより、キャンセルトランジスタMcanがオフ(非導通状態)なる。
【0087】
続いて、制御回路102は、時刻t0’に、リセット制御走査線GLrstに供給されるリセット制御信号RSTをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、リセット期間Prstが開始する。リセット期間Prstにおいて、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2がオン(導通状態)となる。これにより、ノードN1の電位VN1は、下記(14)式に示されるように、基準電位VCOMとなる(図9B参照)。
【0088】
VN1=VCOM・・・(14)
【0089】
制御回路102は、時刻t1に、読出制御走査線GLrdに供給される読出制御信号RDをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、読出トランジスタMrdがオン(導通状態)となる。このとき、ノードN2の電位VN2(ノードN3の電位VN3)は、下記(15)式に示される(図9C参照)。
【0090】
VN2(=VN3)=VCOM-Vthsf・・・(15)
【0091】
このとき、ノードN1-N3間に設けられた光電変換素子30の容量Cdは、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfにより充電される。このとき、光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCdは、下記(16)で表せる(図9C参照)。
【0092】
ΔVCd=Vthsf・・・(16)
【0093】
また、このとき、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位Vdet1は、下記(17)式に示される(図9C参照)。
【0094】
Vdet1=VCOM-Vthsf-Rrd×Ib・・・(17)
【0095】
制御回路102は、時刻t2に、リセット制御信号RSTをロウ(低レベル電圧)とし、時刻t2’に、キャンセル制御信号CANをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、キャンセルトランジスタMcanがオン(導通状態)となり、ノードN3の電位VN3は、下記(18)式に示されるように、基準電位VCOMとなる(図9D参照)。
【0096】
VN3=VCOM・・・(18)
【0097】
このとき、光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCdは、下記(19)で表せる。
【0098】
ΔVCd=Vthsf×(Cd/(Cd+Crst+Csf))・・・(19)
【0099】
ここで、上記(19)式における容量の項を、下記(20)式のように係数Effで表すと、上記(19)式は、下記(21)のように表せる(図9D参照)。
【0100】
Eff=Cd/(Cd+Crst+Csf)・・・(20)
【0101】
ΔVCd=Vthsf×Eff・・・(21)
【0102】
また、ノードN1の電位VN1は、下記(22)式に示されるように、ノードN3の電位VN3(=VCOM)に光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCd(=Vthsf×Eff)を重畳した電位が初期値として設定される(図9D参照)。
【0103】
VN1=VN3+ΔVCd
=VCOM+Vthsf×Eff・・・(22)
【0104】
ここで、第1リセットトランジスタMrst1及びソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Crst及び寄生容量Csfを無視すると、上記(20)式は、下記(23)式に変形できる。すなわち、本実施形態に係る図7の構成では、上記(21)式における係数Effを1に近似することができる。これにより、上記(21)式は、下記(24)に変形できる。
【0105】
Eff≒Cd/Cd=1・・・(23)
【0106】
ΔVCd≒Vthsf・・・(24)
【0107】
このため、上記(22)式は、下記(25)式に変形できる。
【0108】
VN1≒VCOM+Vthsf・・・(25)
【0109】
ノードN2の電位VN2は、下記(26)式に示されるように、ノードN1の電位VN1(=VCOM+Vthsf×Eff)から、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfを差し引いた値(VCOM-Vthsf×(1-Eff))となり、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位Vdet1は、下記(27)式に示されるように、ノードN2の電位VN2(=VCOM-Vthsf×(1-Eff))から、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(=Rrd×Ib)を差し引いた値にセットされる。
【0110】
VN2=VN1-Vthsf
=(VCOM+Vthsf×Eff)-Vthsf
=VCOM+Vthsf×(1-Eff)・・・(26)
【0111】
Vdet1=VN2-Rrd×Ib
=VCOM-Vthsf×(1-Eff)-Rrd×Ib・・・(27)
【0112】
係数Effを1に近似すると、図8Aに示すVthsf×(1-Eff)は0と見做せる(Vthsf×(1-Eff)≒0)。これにより、上記(26)式及び上記(27)式は、下記(28)式及び下記(29)式に変形できる。
【0113】
VN2≒VCOM・・・(28)
【0114】
Vdet1≒VCOM-Rrd×Ib・・・(29)
【0115】
制御回路102は、時刻t3に、読出制御信号RDをロウ(低レベル電圧)とする。これにより、リセット期間Prstが終了し、蓄積期間Pchが開始する。このとき、読出トランジスタMrdがオフ(非導通状態)となり、ノードN2の電位VN2は、上記(28)式に示される(VCOM-Vthsf×(1-Eff)(≒VCOM))で一定となる(図9E参照)。また、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位はロウ(低レベル電圧)となる。ノードN1の電位VN1は、下記(30)式に示されるように、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下する(図9E参照)。
【0116】
VN1=VCOM+Vthsf×Eff-Vphoto
(≒VCOM+Vthsf-Vphoto)・・・(30)
【0117】
制御回路102は、時刻t4に、読出制御信号RDをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、読出トランジスタMrdがオン(導通状態)となり、蓄積期間Pchが終了し、読出期間Pdetが開始する。ノードN2の電位VN2は、下記(31)式に示されるように、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下する(図9F参照)。
【0118】
VN2=VCOM-Vthsf×(1-Eff)-Vphoto
(≒VCOM-Vphoto)・・・(31)
【0119】
このとき、読出期間Pdetに出力される検出信号Vdetの電位Vdet2は、下記(32)式に示されるように、ノードN2の電位VN2(=VCOM-Vthsf×(1-Eff)-Vphoto(≒VCOM-Vphoto))から、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(Rrd×Ib)を差し引いた値となる(図9F参照)。
【0120】
Vdet2=VN2-Rrd×Ib
=VCOM-Vthsf×(1-Eff)-Rrd×Ib-Vphoto
(≒VCOM-Rrd×Ib-Vphoto)・・・(32)
【0121】
制御回路102は、時刻t5に、読出制御信号RDをロウ(低レベル電圧)とする。これにより、読出期間Pdetが終了する。
【0122】
検出部40は、読出期間Pdetが終了した時刻t5における検出信号Vdetの電位Vdet2を検出する。図8A及び図8Bでは、1つの検出素子3の動作例を示しているが、走査線駆動回路15が、リセット制御走査線GLrst、読出制御走査線GLrd、キャンセル制御走査線GLcanを順次、時分割的に走査する。この手順を繰り返すことで、検出領域AA全体の検出素子3で検出処理を行うことができる。
【0123】
このように、本実施形態では、光電変換素子30の容量Cdが、上述した比較例の図4に示した容量素子Ccに対して無視できない大きさである場合に有効である。このような場合、光電変換素子30の容量Cdは、第1リセットトランジスタMrst1及びソースフォロワトランジスタMsfの寄生容量Crst、寄生容量Csfに対して十分に大きい値となる。これにより、上記(21)式に示す係数Effを、上記(23)式に示すように、1に近似することができ、光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCdは、上記(24)式のように表せる。このため、上記(32)式におけるソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfの項を「0」と見做すことができ、下記(33)式が得られる。
【0124】
Vdet2=VCOM-Rrd×Ib-Vphoto・・・(33)
【0125】
これにより、図8に示す読出期間Pdetに出力される検出信号Vdetの電位Vdet2は、光電変換素子30に照射された光の検出精度の低下要因となる、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfをキャンセルすることができ、光電変換素子30に照射された光の検出精度を高めることができる。
【0126】
以上説明したように、実施形態1に係る検出装置1は、光電変換素子30のカソードに基準電位VCOMを供給または遮断する第1リセットトランジスタMrst1と、光電変換素子30のアノードと、ソースフォロワトランジスタMsfと読出トランジスタMrdとの接続点との間を電気的に接続または切断する第2リセットトランジスタMrst2と、光電変換素子30のアノードに基準電位VCOMを供給または遮断するキャンセルトランジスタMcanと、を備え、光電変換素子30のカソードに印加される電位の初期値として、基準電位VCOMに対し、少なくともソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfを重畳した電位(=VCOM+Vthsf)を設定する。
【0127】
上記構成において、リセット期間Prstにおいて、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2をオン制御した後に、読出トランジスタMrdをオン制御して、光電変換素子30の容量CdをソースフォロワトランジスタMsfの入出力間の電位差(=Vthsf)により充電し、さらに、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2をオフ制御、キャンセルトランジスタMcanをオン制御して、基準電位VCOMに光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧(=Vthsf)を重畳した電位(=VCOM+Vthsf)を、光電変換素子30のカソードに印加される電位の初期値として設定する。
【0128】
これにより、光電変換素子30に照射された光の検出精度の低下要因となる、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfをキャンセルすることができる。
【0129】
その後、読出トランジスタMrdをオフ制御し、リセット期間Prstに続く蓄積期間Pchを経た後に読出トランジスタMrdをオン制御して読出期間Pdetを開始する。
【0130】
これにより、蓄積期間Pchにおいて、光電変換素子30のカソードの電位は、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下した電位(=VCOM+Vthsf-Vphoto)となる。このとき、読出期間Pdetにおいて検出される検出信号Vdetの電位Vdet2は、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfがキャンセルされた電位(=VCOM-Rd×Ib-Vphoto)となる。
【0131】
本実施形態により、検出値のバラツキを抑制することができる検出装置を得ることができる。
【0132】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係る検出素子を示す回路図である。実施形態2に係る検出素子3aにおいて、第2リセットトランジスタMrst2のソース又はドレインの一方が、ソースフォロワトランジスタMsfのソースと読出トランジスタMrdとの接続点(ノードN2)ではなく、出力信号線SLに接続される点で、実施形態1において説明した検出素子3とは異なっている。なお、実施形態1と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態2の検出素子3aについて実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0133】
図11は、実施形態2に係る検出素子の動作例を示すタイミング波形図である。図12Aは、図11に示す期間t0-t0’における検出素子の等価回路を示す図である。図12Bは、図11に示す期間t0’-t1における検出素子の等価回路を示す図である。図12Cは、図11に示す期間t1-t2における検出素子の等価回路を示す図である。図12Dは、図11に示す期間t2’-t3における検出素子の等価回路を示す図である。図12Eは、図11に示す期間t3-t4における検出素子の等価回路を示す図である。図12Fは、図11に示す期間t4-t5における検出素子の等価回路を示す図である。
【0134】
検出素子3aは、実施形態1と同様に、リセット期間Prst、蓄積期間Pch及び読出期間Pdetの順に検出を実行する。電源回路103は、リセット期間Prst、蓄積期間Pch及び読出期間Pdetに亘って、基準電位VCOMを検出素子3に供給する。
【0135】
制御回路102は、時刻t0に、キャンセル制御走査線に供給されるキャンセル制御信号CANをロウ(低レベル電圧)とする(図12A参照)。これにより、キャンセルトランジスタMcanがオフ(非導通状態)なる。
【0136】
続いて、制御回路102は、時刻t0’に、リセット制御走査線GLrstに供給されるリセット制御信号RSTをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、リセット期間Prstが開始する。リセット期間Prstにおいて、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2がオン(導通状態)となる。これにより、ノードN1の電位VN1は、下記(34)式に示されるように、基準電位VCOMとなる(図12B参照)。
【0137】
VN1=VCOM・・・(34)
【0138】
制御回路102は、時刻t1に、読出制御走査線GLrdに供給される読出制御信号RDをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、読出トランジスタMrdがオン(導通状態)となる。このとき、ノードN2の電位VN2は、下記(35)式に示される(図12C参照)。
【0139】
VN2=VCOM-Vthsf・・・(35)
【0140】
このとき、ノードN1-N3間に設けられた光電変換素子30の容量Cdは、下記(36)式に示される電位差ΔVCd(Vthsf+Rd×Ib)により充電される(図12C参照)。
【0141】
ΔVCd=Vthsf+Rd×Ib・・・(36)
【0142】
また、このとき、ノードN3の電位VN3、すなわち、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位Vdet1は、下記(37)式に示される(図12C参照)。
【0143】
VN3=Vdet1=VCOM-Vthsf-Rrd×Ib・・・(37)
【0144】
制御回路102は、時刻t2に、リセット制御信号RSTをロウ(低レベル電圧)とし、時刻t2’に、キャンセル制御信号CANをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、キャンセルトランジスタMcanがオン(導通状態)となり、ノードN3の電位VN3は、下記(39)式に示されるように、基準電位VCOMとなる(図12D参照)。
【0145】
VN3=VCOM・・・(39)
【0146】
このとき、光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCdは、下記(40)で表せる。
【0147】
ΔVCd=(Vthsf+Rd×Ib)×(Cd/(Cd+Crst+Csf))・・・(40)
【0148】
ここで、上記(40)式における容量の項を、実施形態1と同様に上記(20)式のように係数Effで表すと、上記(40)式は、下記(41)のように表せる(図12D参照)。
【0149】
ΔVCd=Vthsf×Eff+Rd×Ib×Eff・・・(41)
【0150】
また、ノードN1の電位VN1は、下記(42)式に示されるように、ノードN3の電位VN3(=VCOM)に光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCd(=Vthsf×Eff+Rd×Ib×Eff)を重畳した電位が初期値として設定される(図12D参照)。
【0151】
VN1=VN3+ΔVCd
=VCOM+Vthsf×Eff+Rd×Ib×Eff・・・(42)
【0152】
本実施形態では、実施形態1と同様に、係数Effを1に近似することができる。このため、上記(41)式に示す光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧ΔVCdは、下記(43)式のように表せる(図12D参照)。
【0153】
ΔVCd≒Vthsf+Rd×Ib・・・(43)
【0154】
このため、上記(42)式は、下記(44)式に変形できる。
【0155】
VN1≒VCOM+Vthsf+Rd×Ib・・・(44)
【0156】
ノードN2の電位VN2は、下記(45)式に示されるように、ノードN1の電位VN1(=VCOM+Vthsf×Eff+Rd×Ib×Eff)から、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfを差し引いた値(VCOM-Vthsf×(1-Eff)+Rd×Ib×Eff)となり、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位Vdet1は、下記(46)式に示されるように、ノードN2の電位VN2(=VCOM-Vthsf×(1-Eff)+Rd×Ib×Eff)から、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(=Rrd×Ib)を差し引いた値にセットされる。
【0157】
VN2=VN1-Vthsf
=(VCOM+Vthsf×Eff+Rd×Ib×Eff)-Vthsf
=VCOM-Vthsf×(1-Eff)+Rd×Ib×Eff・・・(45)
【0158】
Vdet1=VN2-Rrd×Ib
=VCOM-Vthsf×(1-Eff)
-Rrd×Ib×(1-Eff)・・・(46)
【0159】
係数Effを1に近似すると、図11に示すVthsf×(1-Eff)、Vthsf×(1-Eff)+Rrd×(1-Eff)は0と見做せる(Vthsf×(1-Eff)≒0、Vthsf×(1-Eff)+Rrd×(1-Eff)≒0)。これにより、上記(45)式及び上記(46)式は、下記(47)式及び下記(48)式に変形できる。
【0160】
VN2≒VCOM+Rrd×Ib×Eff・・・(47)
【0161】
Vdet1≒VCOM・・・(48)
【0162】
制御回路102は、時刻t3に、読出制御信号RDをロウ(低レベル電圧)とする。これにより、リセット期間Prstが終了し、蓄積期間Pchが開始する。このとき、読出トランジスタMrdがオフ(非導通状態)となり、ノードN2の電位VN2は、上記(45)式に示される(VCOM-Vthsf×(1-Eff)+Rd×Ib×Eff(≒VCOM+Rrd×Ib×Eff))で一定となる(図12E参照)。また、出力信号線SLから出力される検出信号Vdetの電位はロウ(低レベル電圧)となる。ノードN1の電位VN1は、下記(49)式に示されるように、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下する(図12E参照)。
【0163】
VN1=VCOM+Vthsf×Eff+Rd×Ib×Eff-Vphoto
(≒VCOM+Vthsf+Rrd×Ib-Vphoto)・・・(49)
【0164】
制御回路102は、時刻t4に、読出制御信号RDをハイ(高レベル電圧)とする。これにより、読出トランジスタMrdがオン(導通状態)となり、蓄積期間Pchが終了し、読出期間Pdetが開始する。ノードN2の電位VN2は、下記(50)式に示されるように、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下する(図12F参照)。
【0165】
VN2=VCOM-Vthsf×(1-Eff)
+Rrd×Ib×Eff-Vphoto
(≒VCOM+Rrd×Ib-Vphoto)・・・(50)
【0166】
このとき、読出期間Pdetに出力される検出信号Vdetの電位Vdet2は、下記(51)式に示されるように、ノードN2の電位VN2(=VCOM-Vthsf×(1-Eff)+Rrd×Ib×Eff-Vphoto(≒VCOM+Rrd×Ib-Vphoto))から、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(Rrd×Ib)を差し引いた値となる(図12F参照)。
【0167】
Vdet2=VN2-Rrd×Ib
=VCOM-Vthsf×(1-Eff)
-Rrd×Ib×(1-Eff)-Vphoto
(≒VCOM-Vphoto)・・・(51)
【0168】
制御回路102は、時刻t5に、読出制御信号RDをロウ(低レベル電圧)とする。これにより、読出期間Pdetが終了する。
【0169】
検出部40は、読出期間Pdetが終了した時刻t5における検出信号Vdetの電位Vdet2を検出する。図11では、1つの検出素子3aの動作例を示しているが、走査線駆動回路15が、リセット制御走査線GLrst、読出制御走査線GLrd、キャンセル制御走査線GLcanを順次、時分割的に走査する。この手順を繰り返すことで、検出領域AA全体の検出素子3aで検出処理を行うことができる。
【0170】
実施形態2では、実施形態1と同様に、係数Effを1に近似することができる。このため、上記(51)式における、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsf、及び、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下(Rrd×Ib)の項を、それぞれ「0」と見做すことができ、下記(52)式が得られる。
【0171】
Vdet2=VCOM-Vphoto・・・(52)
【0172】
これにより、図11に示す読出期間Pdetに出力される検出信号Vdetの電位Vdet2は、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfに加え、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下Rrd×Ibをキャンセルすることができ、光電変換素子30に照射された光の検出精度を、実施形態1よりも高めることができる。
【0173】
以上説明したように、実施形態2に係る検出装置1は、光電変換素子30のカソードに基準電位VCOMを供給または遮断する第1リセットトランジスタMrst1と、光電変換素子30のアノードと読出トランジスタMrdの出力との間を電気的に接続または切断する第2リセットトランジスタMrst2と、光電変換素子30のアノードに基準電位VCOMを供給または遮断するキャンセルトランジスタMcanと、を備え、光電変換素子30のカソードに印加される電位の初期値として、基準電位VCOMに対し、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsf、及び、読出トランジスタのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下Rrd×Ibを重畳した電位(=VCOM+Vthsf+Rrd×Ib)を設定する。
【0174】
上記構成において、リセット期間Prstにおいて、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2をオン制御した後に、読出トランジスタMrdをオン制御して、光電変換素子30の容量Cdを基準電位VCOMと読出トランジスタMrdの出力電位(=VCOM-Vthsf-Rrd×Ib)との電位差(=Vthsf+Rrd×Ib)により充電し、さらに、第1リセットトランジスタMrst1及び第2リセットトランジスタMrst2をオフ制御、キャンセルトランジスタMcanをオン制御して、基準電位VCOMに光電変換素子30の容量Cdの両端間電圧(=Vthsf+Rrd×Ib)を重畳した電位(=VCOM+Vthsf+Rrd×Ib)を、光電変換素子30のカソードに印加される電位の初期値として設定する。
【0175】
これにより、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsfに加え、読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下Rrd×Ibをキャンセルすることができ、光電変換素子30に照射された光の検出精度を、実施形態1よりも高めることができる。
【0176】
その後、読出トランジスタMrdをオフ制御し、リセット期間Prstに続く蓄積期間Pchを経た後に読出トランジスタMrdをオン制御して読出期間Pdetを開始する。
【0177】
これにより、蓄積期間Pchにおいて、光電変換素子30のカソードの電位は、光電変換素子30に照射された光に応じた電圧変動分Vphotoだけ低下した電位(=VCOM+Vthsf+Rd×Ib-Vphoto)となる。このとき、蓄積期間Pchにおいて検出される検出信号Vdetの電位Vdet2は、ソースフォロワトランジスタMsfのしきい値電圧Vthsf及び読出トランジスタMrdのオン抵抗Rrdに起因する電圧降下Rrd×Ibがキャンセルされた電位(=VCOM-Vphoto)となる。
【0178】
本実施形態により、検出値のバラツキを抑制することができる検出装置を得ることができる。
【0179】
上述した実施形態は、各構成要素を適宜組み合わせることが可能である。また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0180】
1 検出装置
3,3a 検出素子
10 センサ部
15 走査線駆動回路
16 信号線選択回路
21 基板
30 光電変換素子
48 検出回路
AA 検出領域
CAN キャンセル制御信号
GA 周辺領域
Cc 容量素子
GLcan キャンセル制御走査線
GLrd 読出制御走査線
GLrst リセット制御走査線
SL 出力信号線
Vsf 電源電位
VCOM 基準電位
Vrst リセット電位
RST リセット制御信号
RD 読出制御信号
Mrst1 第1リセットトランジスタ
Mrst2 第2リセットトランジスタ
Mrd 読出トランジスタ
Msf ソースフォロワトランジスタ
Mcan キャンセルトランジスタ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F