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特許7336372改良地盤のサンプル取得システムおよびサンプル取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】改良地盤のサンプル取得システムおよびサンプル取得方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230824BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019219234
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088850
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500038891
【氏名又は名称】信幸建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】三枝 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】西田 浩太
(72)【発明者】
【氏名】藤山 映
(72)【発明者】
【氏名】小川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲広
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩二
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183591(JP,A)
【文献】特開2019-119998(JP,A)
【文献】特開2000-054778(JP,A)
【文献】特開昭54-154110(JP,A)
【文献】特公平05-001324(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地盤を撹拌する撹拌翼を備えた複数本のシャフトを隣接させて立設状態で上下移動させる地盤改良装置に用いる改良地盤のサンプル取得システムであって、
前記地盤改良装置を用いた地盤改良施工により前記対象地盤を改良した改良地盤のサンプルを取得するサンプラーと、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えて、前記サンプラーを構成する保持部が、複数本の前記シャフトのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方の待機位置に配置されていて、
前記サンプラーによる前記サンプルの取得工程を行う時に、前記把握データに基づいて前記制御部によって、前記保持部がそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御され、
前記待機位置の前記保持部を、前記地盤改良装置による前記対象地盤の改良範囲に向かって下方移動させた後に上方移動させることにより前記サンプルの取得工程が行われて、前記サンプルが前記保持部に収容される構成にして、
前記保持部は、下端が開口した筒状体とこの筒状体の内部空間に取付けられた返し部材とを有し、前記返し部材は上端開口よりも下端開口が拡径された筒状の部材であり、前記サンプルの取得工程では前記筒状体の下端開口から進入した前記サンプルが前記筒状体の内周面と前記返し部材の外周面との間に保持される構成にしたことを特徴とする改良地盤のサンプル取得システム。
【請求項2】
前記返し部材が上下方向に間隔をあけて複数配置されている請求項1に記載の改良地盤のサンプル取得システム
【請求項3】
対象地盤を撹拌する撹拌翼を備えた複数本のシャフトを隣接させて立設状態で上下移動させる地盤改良装置に用いる改良地盤のサンプル取得システムであって、
前記地盤改良装置を用いた地盤改良施工により前記対象地盤を改良した改良地盤のサンプルを取得するサンプラーと、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えて、前記サンプラーを構成する保持部が、複数本の前記シャフトのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方の待機位置に配置されていて、
前記サンプラーによる前記サンプルの取得工程を行う時に、前記把握データに基づいて前記制御部によって、前記保持部がそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御され、
前記待機位置の前記保持部を、前記地盤改良装置による前記対象地盤の改良範囲に向かって下方移動させた後に上方移動させることにより前記サンプルの取得工程が行われて、前記サンプルが前記保持部に収容される構成にして、
前記保持部は、下端開口を有するドーム状の採取部材とこの採取部材の下方に配置されて上端開口を有するドーム状の受け部材とを有し、前記下端開口と前記上端開口とが上下に間隔をあけて対向していて、前記サンプルの取得工程では前記下端開口から前記採取部材に進入した前記サンプルが下方に向かって移動して前記上端開口から前記受け部材に進入して前記受け部材に保持される構成にしたたことを特徴とする改良地盤のサンプル取得システム。
【請求項4】
それぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方に配置されて前記改良範囲を上下移動するガイドパイプが備わり、前記待機位置の前記保持部が前記ガイドパイプの下端開口から出没可能に前記ガイドパイプに収容される請求項1~3のいずれかに記載の改良地盤のサンプル取得システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の改良地盤のサンプル取得システムを用いて、前記対象地盤の前記地盤改良施工直後に前記サンプルを取得する改良地盤のサンプル取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良地盤のサンプル取得システムおよびサンプル取得方法に関し、さらに詳しくは、対象地盤と改良材とを撹拌混合した改良地盤のサンプルを、施工現場で作業工数の増加を抑制しつつ、迅速に取得することができる改良地盤のサンプル取得システムおよびサンプル取得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱土と改良材とを撹拌混合して固化させることにより、軟弱地盤を堅固な地盤に改良するCDM(CementDeepMixing)工法が知られている。CDM工法では、回転駆動される撹拌翼を備えた地盤改良装置が使用される(例えば、特許文献1参照)。この撹拌翼は、長いロッドに取り付けられて地盤中を上下移動する。施工工程としては、まず、撹拌翼を回転させつつ地盤中を下方移動させることにより、地盤を支持層の深さまで掘削する。その後、改良材を地盤中に供給しながら、撹拌翼を回転させつつ上方移動させる。これにより、改良材が地盤中に注入、混合されて地盤が改良される。
【0003】
施工した改良地盤の改良具合を確認するには、改良地盤にボーリング用のパイプを打ち込む等の作業を行って、改良地盤のサンプルを取得する必要がある。しかしながら、地盤改良施工の後に、別途、サンプル取得作業を行う場合は作業工数が増加し、また、施工終了時からサンプルを取得するまでに要する時間も長くなる。それ故、作業工数の増加を抑制しつつ、迅速に改良地盤のサンプルを取得するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-224645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、対象地盤と改良材とを撹拌混合した改良地盤のサンプルを、施工現場で作業工数の増加を抑制しつつ、迅速に取得することができる改良地盤のサンプル取得システムおよびサンプル取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の改良地盤のサンプル取得システムは、対象地盤を撹拌する撹拌翼を備えた複数本のシャフトを隣接させて立設状態で上下移動させる地盤改良装置に用いる改良地盤のサンプル取得システムであって、前記地盤改良装置を用いた地盤改良施工により前記対象地盤を改良した改良地盤のサンプルを取得するサンプラーと、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えて、前記サンプラーを構成する保持部が、複数本の前記シャフトのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方の待機位置に配置されていて、前記サンプラーによる前記サンプルの取得工程を行う時に、前記把握データに基づいて前記制御部によって、前記保持部がそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御され、前記待機位置の前記保持部を、前記地盤改良装置による前記対象地盤の改良範囲に向かって下方移動させた後に上方移動させることにより前記サンプルの取得工程が行われて、前記サンプルが前記保持部に収容される構成にして、前記保持部は、下端が開口した筒状体とこの筒状体の内部空間に取付けられた返し部材とを有し、前記返し部材は上端開口よりも下端開口が拡径された筒状の部材であり、前記サンプルの取得工程では前記筒状体の下端開口から進入した前記サンプルが前記筒状体の内周面と前記返し部材の外周面との間に保持される構成にしたことを特徴とする。
本発明の別の改良地盤のサンプル取得システムは、対象地盤を撹拌する撹拌翼を備えた複数本のシャフトを隣接させて立設状態で上下移動させる地盤改良装置に用いる改良地盤のサンプル取得システムであって、前記地盤改良装置を用いた地盤改良施工により前記対象地盤を改良した改良地盤のサンプルを取得するサンプラーと、前記撹拌翼の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部と、前記撹拌翼モニタ部による把握データが入力される制御部とを備えて、前記サンプラーを構成する保持部が、複数本の前記シャフトのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼よりも上方の待機位置に配置されていて、前記サンプラーによる前記サンプルの取得工程を行う時に、前記把握データに基づいて前記制御部によって、前記保持部がそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御され、前記待機位置の前記保持部を、前記地盤改良装置による前記対象地盤の改良範囲に向かって下方移動させた後に上方移動させることにより前記サンプルの取得工程が行われて、前記サンプルが前記保持部に収容される構成にして、前記保持部は、下端開口を有するドーム状の採取部材とこの採取部材の下方に配置されて上端開口を有するドーム状の受け部材とを有し、前記下端開口と前記上端開口とが上下に間隔をあけて対向していて、前記サンプルの取得工程では前記下端開口から前記採取部材に進入した前記サンプルが下方に向かって移動して前記上端開口から前記受け部材に進入して前記受け部材に保持される構成にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の改良地盤のサンプル取得方法は、上記の改良地盤のサンプル取得システムを用いて、前記対象地盤の前記地盤改良施工直後に前記サンプルを取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記地盤改良装置を用いて前記サンプラーによるサンプルの取得工程を行う時に、前記撹拌翼モニタ部による把握データを利用して、前記制御部によって、前記保持部がそれぞれの前記対象シャフトに備わるそれぞれの前記撹拌翼に干渉せずに下方移動できる移動領域を形成するように、少なくとも1本の前記対象シャフトの回転角度位置が制御される。そのため、前記保持部を円滑に、前記地盤改良装置による前記対象地盤の改良範囲に向かって下方移動させ、その後に上方移動させることができる。そして、前記保持部の前記改良範囲での下方移動および上方移動によって前記保持部に前記サンプルを収容できるので、施工現場で作業工数の増加を抑制しつつ、迅速に前記サンプルを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の改良地盤のサンプル取得システムを例示する説明図である。
図2図1の撹拌翼の近傍を側面視で例示する説明図である。
図3図2のA-A矢視図である。
図4】保持部の内部構造を縦断面視で例示する説明図である。
図5】保持部の変形例の内部構造を縦断面視で示す説明図である。
図6】ガイドパイプの先端部の構造を例示する組み立て図である。
図7】支持層の深さ位置の検出工程を例示する説明図である。
図8】対象地盤に改良材を吐出して混合する工程を例示する説明図である。
図9】対象シャフトの回転角度位置が制御された時のそれぞれの撹拌翼の平面視の位置を例示する説明図である。
図10】サンプルの取得工程を例示する説明図である。
図11】下方移動する保持部がカバー材を貫通している状態を例示する説明図である。
図12図11の保持部を上方移動させた状態を例示する説明図である。
図13】本発明の別の実施形態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の改良地盤のサンプル取得システムおよびサンプル取得方法を実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図3に例示する本発明の改良地盤のサンプル取得システム1(以下、取得システム1という)は、深層混合処理等の地盤改良施工を行う地盤改良装置7に対して適用される。そして、地盤改良装置7を用いた地盤改良施工によって改良された改良地盤RのサンプルSが、この取得システム1によって取得される。本発明の改良地盤のサンプル取得方法は、この取得システム1を用いてサンプルSを取得する。
【0012】
地盤改良装置7は、対象地盤Bを撹拌する撹拌翼9を備えた複数本のシャフト8A、8B、8C、8Dを有している。複数本のシャフト8A~8Dは互いが隣接して接合されていて、上下に延在するマスト8Mによって支持されている。これらのシャフト8A~8Dは、立設状態で櫓7aに沿って一体的に上下移動する。それぞれのシャフト8A~8Dは、それぞれのシャフト8A~8Dに取り付けられた駆動モータ8によって回転駆動される。これに伴い、それぞれのシャフト8A~8Dに取り付けられた撹拌翼9は、取り付けられたシャフト8A~8Dのシャフト軸芯を中心にして回転駆動される。
【0013】
それぞれのシャフト8A~8Dには、上下間隔をあけた複数位置に撹拌翼9が取り付けられている。1本のシャフト毎に複数の撹拌翼9がシャフト軸芯を中心にして周方向に間隔をあけて配置されている。この実施形態では、それぞれのシャフト8A~8Dに撹拌翼9が上下間隔をあけた三箇所に取り付けられていて、その一箇所毎に2枚の撹拌翼9が周方向に等間隔をあけて配置されている。即ち、1本のシャフト毎に6枚の撹拌翼9が取り付けられている。撹拌翼9は、それぞれのシャフト8A~8Dに上下間隔をあけた三箇所に限らず所望数の箇所に取り付けることができ、その一箇所毎に配置される撹拌翼9の数は2枚に限らず所望数にすることができる。また、その一箇所毎に配置される撹拌翼9の周方向の間隔も所望の間隔にすることができる。シャフト8A~8Dは4本に限らず、例えば、2本、4本、8本など所望の複数本にすることができる。
【0014】
隣接配置されたシャフト8A~8Dの撹拌翼9どうしは、それぞれのシャフトの軸芯を中心にした平面視の回転稼働範囲が重複している。撹拌翼9、シャフト8A~8Dおよび駆動モータ8は、ウインチ10によるワイヤの巻取りおよび繰出しによって一体的に昇降する。
【0015】
それぞれのシャフト8A~8Dでは、所定位置(この実施形態では最上位置および最下位置)の撹拌翼9には吐出口9aが設置されている。吐出口9aには、対象地盤B上に設置された供給タンクから地盤改良用の改良材Cが供給される。吐出口9aは撹拌翼9に直接形成することも、撹拌翼9に取り付けた改良材Cの供給管の一端開口を吐出口9aにすることもできる。改良材Cは公知のものが使用され、具体的にはセメントミルクを例示できる。
【0016】
取得システム1は、サンプラー2と、それぞれの撹拌翼9の平面視の位置を把握する撹拌翼モニタ部3と、撹拌翼モニタ部3による把握データが入力される制御部6とを備えている。この実施形態では、さらに、それぞれの撹拌翼9よりも上方に配置されるガイドパイプ4とガイドパイプ4の下端開口を塞ぐカバー材5と、ディスプレイ6aとが備わっている。
【0017】
図4に例示するようにサンプラー2は、保持部2Aと、保持部2Aの上端部に接続されたロッド2Cと、保持部進退機構2Dとを有している。この実施形態ではサンプラー2は、保持部2Aの下端から下方に突出する先端突起2Bを有している。
【0018】
保持部2Aは保持部進退機構2Dによって、改良地盤Rに貫入された後に引き上げられることで内部にサンプルSが収容される。保持部進退機構2Dには油圧シリンダなどが用いられる。この実施形態では、待機位置の保持部2Aは、後述するガイドパイプ4の下端開口4aから進退可能にガイドパイプ4に収容されている。
【0019】
この実施形態の保持部2Aは、筒状体2a1と、筒状体2a1の内部空間に取り付けられた返し部材2a2とを有している。筒状体2a1は下端が開口されていて、その下端開口から下方に延びる支軸2bに先端突起2Bが固定されている。この実施形態では、三角板状の4つの先端突起2Bが平面視で支軸2bに周方向に等間隔で固定されていて、支軸2bを中心にして放射状に突出している。
【0020】
返し部材2a2は、上端開口よりも下端開口が拡径された筒状の部材である。返し部材2a2は単数、または、上下方向に間隔をあけて複数配置することもでき、配置数は任意に設定できる。サンプルSは例えば破線で示すように、筒状体2a1から進入して、返し部材2a2と筒状体2a1との間に保持される。
【0021】
保持部2Aは、サンプルSを収容できる様々な構造を採用することができる。例えば、図5に示す構造の保持部2Aを用いることもできる。この保持部2Aは、下端開口を有するドーム状の採集部材2a3と上端開口を有するドーム状の受け部材2a4とを有している。採集部材2a3の下端開口は、受け部材2a4の上端開口よりも大径になっている。ロッド2Cの下端から下方に延在する支軸2bの先端に、三角板状の先端突起2Bが固定されている。
【0022】
保持部2Aは、ロッド2Cと先端突起2Bと間に形成されている。採集部材2a3と受け部材2a4とは上下間隔をあけて支軸2bに固定されて、採集部材2a3との下端開口と受け部材2a4の上端開口とが対向している。サンプルSは例えば破線で示すように、採集部材2a3の下端開口から進入した後で下方に向かって移動し、受け部材2a4の上端開口から進入して受け部材2a4に保持される。
【0023】
この保持部2Aの平面視の位置は、それぞれのシャフト8A~8Dのうちの少なくとも2本の対象シャフトに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内に設定される。図3に例示するようにこの実施形態では、保持部2Aの平面視の位置はシャフト8Aおよび8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内に設定され、シャフト8Cおよび8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲外に設定されている。したがって、この実施形態では、対象シャフトはシャフト8Aおよび8Bとなる。
【0024】
この実施形態では、保持部2Aはそれぞれシャフト8A~8Dのそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置されているが、保持部2Aは少なくとも対象シャフト(シャフト8Aおよび8B)に備わるそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置されていればよい。したがって例えば、保持部2Aの平面視の位置が、シャフト8A、8B、8Cおよび8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内に設定されている場合は、保持部2Aはそれぞれシャフト8A~8Dのそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置される。保持部2Aの平面視の位置が、シャフト8Cおよび8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲内、かつ、シャフト8Aおよび8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の回転稼働範囲外に設定されている場合は、保持部2Aは、少なくともシャフト8Cおよび8Dのそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置される。ガイドパイプ4も同様に、少なくとも対象シャフト(シャフト8Aおよび8B)に備わるそれぞれの撹拌翼9よりも上方の待機位置に配置されていればよい。
【0025】
撹拌翼モニタ部3としては例えば、それぞれのシャフト8A~8Dのシャフト軸芯を中心とした回転角度(回転角度位置)を検知する角度センサが用いられる。尚、この実施形態では、すべてのシャフト8A~8Dに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置を把握する構成になっているが、平面視の位置を把握する撹拌翼9は、対象シャフト(この実施形態ではシャフト8Aおよび8B)に備わるそれぞれの撹拌翼9だけでもよい。
【0026】
ガイドパイプ4は、マスト8Mに固定されていて、それぞれのシャフト8A~8Dに沿って延在している。ガイドパイプ4は、それぞれのシャフト8A~8Dと一体的に昇降する。
【0027】
図6に例示するようにガイドパイプ4の下端開口4aには、カバー材5が環状のフランジ部材4bなどによって着脱自在に取り付けられている。カバー材5としては例えば、保持部2Aとともに下方移動する先端突起2Bによって突き破られる樹脂膜またはゴム膜などが用いられる。
【0028】
制御部6とディスプレイ6aとは有線または無線で通信可能に接続されている。ディスプレイ6aには、制御部6に入力されたデータや制御部6により演算されたデータなどが表示される。
【0029】
制御部6には、撹拌翼モニタ部3により把握されたそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置を示す把握データが逐次、入力される。それぞれのシャフト8A~8Dの平面視の位置は既知であり、それぞれのシャフト8A~8Dにおけるそれぞれの撹拌翼9の取り付け位置、それぞれの撹拌翼9の平面視の大きさ・形状も既知である。保持部2Aの平面視の位置および平面視の大きさ・形状も既知である。これら既知のデータは制御部6に記憶されている。制御部6は、撹拌翼モニタ部3により検知された入力データと記憶されているデータとに基づいて、それぞれの撹拌翼9の平面視の位置を算出する。制御部6はこれらデータに基づいて様々な演算処理をする。
【0030】
次に、この取得システム1によって、改良地盤RのサンプルSを取得する手順の一例を説明する。
【0031】
図7に例示するように従来同様、ウインチ10のワイヤを繰り出してそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら下方移動させる。これにより、対象地盤Bをそれぞれの撹拌翼9によって撹拌して撹拌範囲Rm(二点鎖線の範囲)を形成する。この工程では、それぞれのシャフト8A~8D(それぞれの撹拌翼9)の回転駆動に要するトルクと、それぞれのシャフト8A~8Dを吊り下げているワイヤに作用する荷重を逐次検知する。これらの検知データに基づいて、シャフト8A~8Dの先端が強固な支持層B1に到達したか否かを推定する。
【0032】
上述のトルクが過大になった時、或いは、上述の荷重が過小になった時に、シャフト8A~8Dの先端が支持層B1に到達したと推定して、支持層B1の深さ位置を検出する。尚、支持層B1の深さ位置の推定は別の方法で行ってもよい。
【0033】
次いで、図8に例示するように、ウインチ10のワイヤを巻き取ってそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら上方移動させつつ、吐出口9aから改良材Cを吐出して撹拌範囲Rmに改良材Cを注入する。これにより、撹拌範囲Rmの土砂と改良材Cを撹拌混合する。
【0034】
尚、吐出口9aから改良材Cを吐出する前に、再度、ウインチ10のワイヤを巻き取ってそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら所定の位置まで上方移動させて対象地盤Bをそれぞれの撹拌翼9によってさらに撹拌してもよい。その後にそれぞれのシャフト8A~8Dを回転駆動しながら支持層B1の位置まで下方移動させるが、この下方移動の際に吐出口9aから改良材Cを吐出することもできる。
【0035】
改良材Cを吐出して撹拌範囲Rmの土砂と撹拌混合する工程を経て、軟弱な対象地盤Bが強固な改良地盤Rに改良される。この地盤改良施工直後に、サンプルの取得工程を実施する。それぞれのシャフト8A~8Dは、取得したい所望深さのサンプルSの位置に応じた深さで停止させる。この時に、撹拌翼モニタ部3により把握されている把握データに基づいて制御部6によって、対象シャフト8A、8Bの少なくとも1本の回転角度位置を制御して、それぞれのシャフト8A~8Dの回転駆動を停止する。
【0036】
詳述すると図9に例示するように、制御部6は、待機位置の保持部2Aがそれぞれの対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9に干渉せずに下方移動できる移動領域Zを形成するように、対象シャフト8A、または、対象シャフト8B、或いは、対象シャフト8Aおよび8Bの回転角度位置を制御して回転を停止した状態にする。対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置を、ディスプレイ6aに表示すると視覚的に把握できる。
【0037】
対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9の平面視の位置が、図3に例示する状態であると、待機位置にある保持部2Aは対象シャフト8A、8Bに備わる撹拌翼9に干渉して下方移動できない。そこで、本願発明では、対象となる撹拌翼9の平面視の位置を把握する。移動領域Zの平面視の面積が最大になるように、対象シャフト8A、8Bの少なくとも1本の回転角度位置を制御するとよい。
【0038】
次いで、図10に例示するように、待機位置の保持部2Aを、地盤改良装置7により改良された改良範囲Rに向かって下方移動させてサンプルの取得工程を行う。詳述すると、保持部進退機構2Dによってロッド2Cを下方に押圧することで保持部2Aを下方移動させる。下方移動する保持部2Aは、図11に例示するように先端突起2Bがカバー材5を突き破ることで、カバー材5を貫通してガイドパイプ4の下端開口4aから下方に突出する。これにより、カバー材5には貫通孔5aが形成される。さらに下方移動する保持部2Aは、改良範囲Rに挿入される。所望の深さ位置まで保持部2Aを下方移動させた後は、図12に例示するように、保持部進退機構2Dによってロッド2Cを介して保持部2Aを上方移動させてガイドパイプ4に収容する。
【0039】
この取得システム1によれば、対象シャフト8A、8Bの回転角度位置を制御することで移動領域Zが形成されているので、保持部2Aを円滑に改良範囲Rに向かって円滑に下方移動させることができる。また、この移動領域Zでは、保持部2Aが上方移動する際にも、対象シャフト8A、8Bに備わるそれぞれの撹拌翼9に干渉することがないので、保持部2Aは円滑に上方移動できる。
【0040】
改良範囲Rの中で、保持部2Aがこのように下方移動した後に上方移動することで、図4図5に例示するように、サンプルSを保持部2Aに収容することができる。そのため、施工現場では、あらためてサンプルSを取得するための専用の装置を用いた作業が不要になり、作業工数の増加を抑制しつつ、固結する前の改良地盤RのサンプルSを迅速に取得できる。
【0041】
また、この取得システム1によれば、地盤改良装置7に対して、少なくとも、サンプラー2と、撹拌翼モニタ部3と、撹拌翼モニタ部3による把握データが入力される制御部6とを備えればよい。サンプルの取得工程を実施する時には、撹拌翼モニタ部3による把握データを利用して、制御部6によって、上述した移動領域Zを形成するように、少なくともいずれかの対象シャフト8A、8Bの回転角度位置を制御すればよいので、地盤改良装置7に対して複雑な加工をする必要がない。既存の地盤改良装置7にも大きな困難無く適用することができる。
【0042】
保持部2Aの内部に収容したサンプルSは、地上に引き上げた後、様々な分析に用いる。例えば、固結していないサンプルSのカルシウム含有量を測定して、その測定結果に基づいて改良地盤Rの改良具合を評価する。または、サンプルSを一軸圧縮試験用の試験片として養生して、材齢1日~3日程度の早期強度を測定し、その測定結果に基づいて、改良地盤Rの改良具合を評価する。或いは、サンプルSの粒度分析に基づいて、改良地盤Rの改良具合を評価する。このようにして、改良地盤Rの改良具合をより早期に評価できるので、その後の改良施工に遅滞なくフィードバックするには有利になる。
【0043】
この実施形態では、ガイドパイプ4を備えているので、保持部2Aおよびロッド2Cが保護される。そのため、保持部2Aを破損させることなく、改良前の対象地盤Bや改良地盤Rの中で上下移動させ易くなっている。
【0044】
また、カバー材5を備えることで、改良前の対象地盤Bや改良地盤Rの中でガイドパイプ4を下方移動させる際に、保持部2Aに土砂が直接接触しないので、保持部2Aを保護するには益々有利になっている。さらに、ガイドパイプ4の内部に土砂が入り込まないので、保持部2Aがガイドパイプ4の中で詰まることが回避される。そのため、保持部2Aをガイドパイプ4から円滑に突出移動させることができる。
【0045】
カバー材5として樹脂膜またはゴム膜を使用することで、保持部2Aが貫通することで形成されるカバー材5の貫通孔5aと保持部2Aとの外周面とをカバー材5によってシールすることができる。これにより、カバー材5に貫通孔5aが形成された後も、改良地盤Rの中でガイドパイプ4を上下移動させても、ガイドパイプ4の内部に土砂が入り込むことを回避するには有利になる。
【0046】
上述した実施形態では対象地盤Bを陸上地盤にしているが、対象地盤Bを海や河川湖沼の水底地盤にすることもできる。この場合は、図13に例示するように、取得システム1および地盤改良装置7は、作業船11などに搭載される。改良地盤Rを形成する施工手順、サンプルの取得工程の先の実施形態と同様である。
【符号の説明】
【0047】
1 取得システム
2 サンプラー
2A 保持部
2a1 筒状体
2a2 返し部材
2a3 採集部材
2a4 受け部材
2B 先端突起
2b 支軸
2C ロッド
2D 保持部進退機構
3 撹拌翼モニタ部
4 ガイドパイプ
4a 下端開口
4b フランジ部材
5 カバー材
5a 貫通孔
6 制御部
6a ディスプレイ
7 地盤改良装置
7a 櫓(リーダ)
8 駆動モータ
8A、8B、8C、8D シャフト
8M マスト
9 撹拌翼
9a 吐出口
10 ウインチ
11 作業船
B 対象地盤
B1 支持層
R 改良範囲(改良地盤)
Rm 撹拌範囲
S 改良地盤のサンプル
C 改良材
Z 移動領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13