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特許7336397ポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物、塗料組成物及び塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物、塗料組成物及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20230824BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20230824BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230824BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20230824BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230824BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20230824BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/79 020
C08G18/08 019
C08G18/80
C08G18/48 033
C08G18/72 020
C09D175/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020014069
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2020147740
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2019044216
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】田中 瑛子
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 美紗
(72)【発明者】
【氏名】片川 洋徳
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-325353(JP,A)
【文献】特開2001-302969(JP,A)
【文献】特開2016-141783(JP,A)
【文献】特開2017-048270(JP,A)
【文献】特開2017-187748(JP,A)
【文献】特開2016-089034(JP,A)
【文献】特開平10-176028(JP,A)
【文献】特開平04-050277(JP,A)
【文献】特開2016-113523(JP,A)
【文献】特開2017-095533(JP,A)
【文献】特開2015-203104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、
数平均分子量が400以上5000以下であり、且つ、水酸基平均数が3以上以下であるポリオールと、
から得られるポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物であって、
以下の条件(1)~()を満たす、ポリイソシアネート組成物。
(1)前記ポリオールから誘導される構造単位の含有量がポリイソシアネート組成物の総質量に対して22質量%以上80質量%以下である;
(2)イソシアネート平均官能基数が3.5以上20以下である;
(3)重量平均分子量/数平均分子量が3.5以上15以下である
(4)前記ポリオールがポリカプロラクトンポリオール又はポリエーテルポリオールである
【請求項2】
前記ポリオールの数平均分子量が500超5000以下である、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
イソシアヌレート基を有する、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記脂環族ジイソシアネートから誘導される構造単位に対する前記脂肪族ジイソシアネートから誘導される構造単位の質量比が50/50以上95/5以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートの一部又は全部が、親水性化合物から誘導される構造単位を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記親水性化合物から誘導される構造単位が、ノニオン性親水性基及びアニオン性親水性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を含む、請求項5に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の一部又は全部がブロック剤で封鎖されて構成されている、ブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記ブロック剤が、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及び活性メチレン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項7に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
前記ブロック剤が、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及び活性メチレン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項7又は8に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項10】
前記ブロック剤が活性メチレン系化合物である、請求項7~9のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項11】
前記ブロック剤が下記一般式(I)で示される化合物を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物、又は請求項7~11のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む、塗料組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の塗料組成物を硬化させてなる、塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、ブロックポリイソシアネート組成物、塗料組成物及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを硬化剤とするウレタン塗料は、耐久性及び耐薬品性に優れる塗膜を形成し、その需要は年々増している。硬化剤であるポリイソシアネートが有するイソシアネート基は、主剤として多用されるポリオールの水酸基と常温で反応するため、それらを含む塗料は各種被塗物に塗装され、適用範囲も広い。このような塗料は、近年、省エネルギー及び生産性向上の観点から、塗膜形成までの時間の短縮、並びに、低温での硬化性の向上が切望されている。
【0003】
それらの要望を満足させるために、脂肪族ジイソシアネートとモノアルコールとポリオールとから誘導されたポリイソシアネートが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のポリイソシアネートは、主剤との相溶性及び主剤との反応による硬化性、並びに下地隠蔽性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-203104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等に記載のポリイソシアネートでは、塗膜としたときの密着性及び低温硬化性に改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、塗膜としたときの密着性及び低温硬化性に優れるポリイソシアネート組成物、並びに、該ポリイソシアネート組成物を用いたブロックポリイソシアネート組成物、塗料組成物及び塗膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係るポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、数平均分子量が400以上5000以下であり、且つ、水酸基平均数が3以上8以下であるポリオールと、から得られるポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物であって、以下の条件(1)~(3)を満たす。
(1)前記ポリオールから誘導される構造単位の含有量がポリイソシアネート組成物の総質量に対して22質量%以上80質量%以下である;
(2)イソシアネート平均官能基数が3.5以上20以下である;
(3)重量平均分子量/数平均分子量が3.5以上15以下である
【0008】
前記ポリオールの数平均分子量が500超5000以下であってもよい。
上記第1態様に係るポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート基を有してもよい。
前記脂環族ジイソシアネートから誘導される構造単位に対する前記脂肪族ジイソシアネートから誘導される構造単位の質量比が50/50以上95/5以下であってもよい。
前記ポリイソシアネートの一部又は全部が、親水性化合物から誘導される構造単位を有してもよい。
前記親水性化合物から誘導される構造単位が、ノニオン性親水性基及びアニオン性親水性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を含んでもよい。
【0009】
本発明の第2態様に係るブロックポリイソシアネート組成物は、上記第1態様に係るポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の一部又は全部がブロック剤で封鎖されて構成されている。
前記ブロック剤が、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及び活性メチレン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。
前記ブロック剤が、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及び活性メチレン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。
前記ブロック剤が活性メチレン系化合物であってもよい。
前記ブロック剤が下記一般式(I)で示される化合物を含んでもよい。
【0010】
【化1】
【0011】
(一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
【0012】
本発明の第3態様に係る塗料組成物は、上記第1態様に係るポリイソシアネート組成物、又は上記第2態様に係るブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む。
【0013】
本発明の第4態様に係る塗膜は、上記第3態様に係る塗料組成物を硬化させてなる。
【発明の効果】
【0014】
上記態様のポリイソシアネート組成物によれば、塗膜としたときの密着性及び低温硬化性に優れるポリイソシアネート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
【0016】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
【0017】
≪ポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のジイソシアネートと、数平均分子量が400以上5000以下であり、且つ、水酸基平均数が3以上8以下であるポリオールと、から得られるポリイソシアネートを含む。
【0018】
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、以下の条件(1)~(3)を満たす。
(1)前記ポリオールから誘導される構造単位の含有量がポリイソシアネート組成物の総質量に対して22質量%以上80質量%以下である;
(2)イソシアネート平均官能基数が3.5以上20以下である;
(3)重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が3.5以上15以下である
【0019】
条件(1)について、ポリオールから誘導される構造単位の含有量(以下、「PO含有量」と略記する場合がある)は、ポリイソシアネート組成物の総質量に対して22質量%以上80質量%以下であり、22質量%以上75質量%以下が好ましく、30質量%以上75質量%以下がより好ましく、35質量%以上75質量%以下がさらに好ましい。
PO含有量が上記範囲内であることで、塗膜としたときの被塗物に対する密着性及び低温硬化性をより向上させることができる。
PO含有量は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0020】
条件(2)について、イソシアネート平均官能基数は3.5以上20以下であり、4.0以上15以下が好ましく、4.5以上10以下がより好ましく、5.0以上9.0以下がさらに好ましい。
イソシアネート平均官能基数が上記範囲内であることで、主剤が有する水酸基との反応性をより良好なものとすることができる。
イソシアネート平均官能基数は、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0021】
条件(3)について、Mw/Mnは3.5以上15以下であり、3.5以上12以下が好ましく、3.5以上11以下がより好ましく、4.0以上11以下がさらに好ましい。
Mw/Mnが上記範囲内であることで、塗膜としたときの被塗物に対する密着性及び低温硬化性をより向上させることができる。
ポリイソシアネート組成物のMw/Mnは、ゲルパーミエ―ションクロマトグラフ(GPC)測定によりMw及びMnを測定した後、得られたMw及びMnを用いて算出することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法を用いて、算出することができる。
【0022】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、フレキシビリティが高い構造となり、主剤と混合した際により架橋構造を形成しやすいため、塗膜としたときの低温硬化性に優れる。また、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、Tgが低下し、粘着性が向上しているため、塗膜としたときの被塗物に対する密着性が良好である。
【0023】
次いで、本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれる各構成成分について以下に詳細を説明する。
【0024】
<ポリイソシアネート>
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、ジイソシアネート及びポリオールの反応物である。
【0025】
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を含むことができる。中でも、耐候性が優れることから、イソシアヌレート基を含むことが好ましい。
【0026】
一般に、「アロファネート基」とは、アルコールの水酸基とイソシアネート基とを反応させてなる官能基であり、下記式(VII)で示される基である。
一般に、「ウレトジオン基」とは、2つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(VIII)で示される基である。
一般に、「イミノオキサジアジンジオン基」とは、3つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(IX)で示される基である。
一般に、「イソシアヌレート基」とは、3つのイソシアネート基を反応させてなる官能基であり、下記式(X)で示される基である。
一般に、「ウレタン基」とは、1つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させてなる官能基であり、下記式(XI)で表される基である。
一般に、「ビウレット基」とは、3つのイソシアネート基とビウレット化剤とを反応させてなる官能基であり、下記式(XII)で表される基である。
【0027】
【化2】
【0028】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、アロファネート基に対するウレタン基のモル比(ウレタン基/アロファネート基)は、以上2/8以下が好ましく、0/10以上1/9以下がより好ましい。ウレタン基/アロファネート基が上記範囲内であることで、塗膜としたときの低温硬化性をより向上することができる。
【0029】
ウレタン基/アロファネート基は、例えば以下の方法を用いて算出することができる。
Bruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いて、以下に示す条件にて、13C-NMRを測定する。
【0030】
(測定条件)
13C-NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製)
Cryo Probe
CPDUL
600S3-C/H-D-05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
【0031】
次いで、得られた測定結果から、以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除し、その値から各官能基のモル量を求める。次いで、求められたウレタン基のモル量をアロファネート基のモル量で除することで、ウレタン基/アロファネート基を算出することができる。
【0032】
アロファネート基:154ppm付近の積分値÷1
ウレタン基:156.5ppm付近の積分値÷1-アロファネート基の積分値
【0033】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネート3分子からなる、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート(以下、「イソシアヌレート3量体」と称する場合がある)を含むことが好ましい。該イソシアヌレート3量体の含有量は、ポリイソシアネート組成物に含まれる固形分量に対して、8%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、12%以上が更に好ましい。
【0034】
イソシアヌレート3量体の含有量は、例えば以下の方法を用いて算出することができる。
ポリイソシアネート組成物をGPC測定する。次いで、得られた測定結果から、ポリイソシアネート組成物全体の面積に対する、イソシアヌレート3量体の面積の比を求め、これをポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート3量体の含有量とすることができる。
【0035】
[ジイソシアネート]
本実施形態のポリイソシアネート組成物に用いられる脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましく、具体的には、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等が挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートを1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、工業的入手のしやすさから、HDIが好ましい。
【0036】
本実施形態のポリイソシアネート組成物に用いられる脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8以上30以下のものが好ましく、具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等が挙げられる。これら脂環族ジイソシアネートを1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、耐候性及び工業的入手のしやすさから、IPDIが好ましい。
【0037】
本実施形態のポリイソシアネート組成物では、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれかを単独で用いてもよく、或いはそれらを組み合わせて用いてもよいが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いることが好ましく、HDI及びIPDIを用いることが特に好ましい。脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを用いることで、塗膜としたときの強靭性及び弾性をより向上させることができる。
【0038】
本実施形態のポリイソシアネート組成物において、脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比は、50/50以上95/5以下が好ましく、60/40以上90/10以下がより好ましく、70/30以上80/20以下がさらに好ましい。
脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの可とう性が低下することをより効果的に抑制することができる。一方で、上記上限値以下であることで、塗膜としたときの硬度をより向上させることができる。
脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比は、以下の方法を用いて算出することができる。まず、反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中の脂肪族ジイソシアネート濃度及び脂環族ジイソシアネート濃度とから、未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量を算出する。次いで、仕込んだ脂肪族ジイソシアネートの質量及び脂環族ジイソシアネートの質量から、上記算出した未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量をそれぞれ差し引いた後、得られた差をそれぞれ脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量、脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量とする。次いで、脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量を脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量で除することで、脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比が得られる。
具体的には、後述する実施例に記載の方法を用いて算出することができる。
【0039】
[ポリオール]
ポリオールとしては、数平均分子量400以上5000以下のポリオールであり、且つ、水酸基平均数が3以上8以下である。
【0040】
ポリオールの数平均分子量は、400以上5000以下であり、500超5000以下が好ましく、550以上4500以下がより好ましく、850以上4000以下がさらに好ましく、1260以上4000以下がより一層好ましく、1500以上4000以下がさらにより一層好ましく、1700以上4000以下が特に好ましく、2000以上4000以下が最も好ましい。
ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、フレキシビリティが高い構造となり、主剤と混合した際により架橋構造を形成しやすいため、塗膜としたときの低温硬化性に優れる。また、ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、本実施形態のポリイソシアネート組成物は、Tgが低下し、粘着性が向上しているため、塗膜としたときの被塗物に対する密着性が良好である。また、ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、本実施形態のポリイソシアネート組成物を用いた塗膜において、高架橋度であるが、柔軟性が維持されるため、界面での被着体との間に水が浸入しにくく、耐水密着性が良好となると推定される。
【0041】
本実施形態のポリイソシアネート組成物に用いられるポリオールの水酸基平均数は、3以上8以下であり、3以上6以下が好ましく、3以上5以下がより好ましく、3又は4がさらに好ましい。
【0042】
ポリオールとして具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0043】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0044】
ポリエステルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の成分を混合し、約160℃以上220℃以下程度で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0045】
上述の製造方法で得られたポリエステルポリオールは、得られる塗膜の耐候性及び耐黄変性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られる化合物等を用いて変性させることが好ましい。
【0046】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、例えば、以下の(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得ることができる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、強塩基性触媒、複合金属シアン化合物錯体等が挙げられる。強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる、複合金属シアン化合物錯体としては、例えば、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して、いわゆるポリマーポリオール類を得る方法。
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等;
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;
(vi)スタキオース等の四糖類
【0047】
中でも、ポリオールとしては、ポリエステルポリオールが好ましく、ε-カプロラクトンを低分子量のポリオールを用いて開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオールがより好ましい。
【0048】
<ポリイソシアネート組成物の物性>
(イソシアネート基含有量)
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基含有量は、5質量%以上20質量%以下が好ましく、6質量%以上19質量%以下がより好ましく、8質量%以上17質量%以下がさらに好ましい。
イソシアネート基含有量は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0049】
(数平均分子量)
ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、1000以上5000以下が好ましく、1200以上4800以下がより好ましく、1500以上4600以下がさらに好ましい。数平均分子量が上記下限値以上であることで、塗膜の柔軟性が低下することをより効果的に抑制することができ、一方で、数平均分子量が上記上限値以下であることで、塗膜の平滑性が低下することをより効果的に抑制することができる。
ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0050】
(重量平均分子量)
ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量は、4000以上50000以下が好ましく、4500以上49000以下がより好ましく、5000以上48500以下がさらに好ましい。
ポリイソシアネート組成物の重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0051】
<親水性化合物>
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、その一部又は全部が親水性化合物から誘導される構造単位を有してもよい。
すなわち、本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、その一部又は全部が親水性ポリイソシアネートであってもよい。
【0052】
親水性化合物は、1つのイソシアネート基と反応するために、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
【0053】
親水性基としては、ノニオン性親水性基、カチオン性親水性基、アニオン性親水性基が挙げられる。これら親水性基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、親水性基としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点で、ノニオン性親水性基が好ましく、得られる塗膜の硬度の低下を抑制する観点で、アニオン性親水性基が好ましい。
【0054】
(ノニオン性親水性基を有する親水性化合物)
ノニオン性親水性基を有する親水性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらノニオン性親水基を有する親水性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上20以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
中でも、ノニオン性親水性基を有する親水性化合物としては、少ない使用量でポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールが好ましい。
【0055】
ポリイソシアネートに付加されるノニオン性親水性基の量(以下、「ノニオン性親水性基の含有量」と称する場合がある)の下限値は、ポリイソシアネート組成物の水分散安定性の観点から、ポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、4質量%がさらに好ましく、4.5質量%が特に好ましい。
また、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、得られる塗膜の耐水性の観点から、ポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、8質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、ポリイソシアネート組成物の不揮発分の質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましく、4質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、4.5質量%以上8質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性親水性基の含有量が上記範囲内であることにより、ポリイソシアネート組成物がより水に分散し、得られる塗膜の耐水性が向上する傾向にある。
【0056】
(カチオン性親水性基を有する親水性化合物)
カチオン性親水性基を有する親水性化合物として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
【0057】
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
【0058】
カチオン性親水性基を有する親水性化合物とポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0059】
ポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシル基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0060】
(アニオン性親水性基を有する親水性化合物)
アニオン性親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン性親水性基を有する親水性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0061】
ポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種類単独又は2種類以上を併用することができる。
【0062】
<ブロック剤>
本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の一部又は全部がブロック剤で封鎖されて構成されていてもよい。すなわち、本実施形態のポリイソシアネート組成物はブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物とすることができる。
【0063】
ブロック剤としては、例えば、(1)アルコール系化合物、(2)アルキルフェノール系化合物、(3)フェノール系化合物、(4)活性メチレン系化合物、(5)メルカプタン系化合物、(6)酸アミド系化合物、(7)酸イミド系化合物、(8)イミダゾール系化合物、(9)尿素系化合物、(10)オキシム系化合物、(11)アミン系化合物、(12)イミド系化合物、(13)重亜硫酸塩、(14)ピラゾール系化合物、(15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
【0064】
(1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトカシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
(2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
(3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
(4)活性メチレン系化合物。
(5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
(6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
(7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
(8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール等。
(9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
(10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
(11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
(12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
(13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
(14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
(15)トリアゾール系化合物:3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等。
【0065】
中でも、ブロック剤としては、オキシム系化合物、ピラゾール系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及び活性メチレン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物及び活性メチレン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、活性メチレン系化合物であることがさらに好ましい。これらブロック剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
活性メチレン系化合物としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、下記一般式(I)で示される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)等が挙げられる。中でも、化合物(I)が好ましい。
【0067】
【化3】
【0068】
(一般式(I)中、R11は、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。)
【0069】
[化合物(I)]
(R11
(1)R11:アルキル基
11が置換基を有しないアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。置換基を有しないアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0070】
また、R11が置換基を有するアルキル基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチル基、ヒドロキシアミノエチル基、ヒドロキシアミノプロピル基等が挙げられる。
【0071】
(2)R11:アミノ基
11が置換基を有するアミノ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアルキル基である。
置換基としてヒドロキシ基を有するアミノ基としては、ヒドロキシアミノ基(-NH-OH)が挙げられる。
置換基としてアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、2、6-ジメチルピペリジル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンアミノ基、ヒドロキシエチレンアミノ基、ヒドロキシプロピレンアミノ基、ヒドロキシブチレンアミノ基等が挙げられる。
2つの置換基が互いに連結して環を形成しているアミノ基としては、例えば、エチレンイミノ基、アザシクロブチル基、ピロリジル基、ピペリジル基、2、6-ジメチルピペリジル基、ヘキサメチレンイミノ基等が挙げられる。
【0072】
(3)R11:アリール基
11が置換基を有しないアリール基である場合、該アリール基としては、炭素数は5以上30以下であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましく、6以上14以下であることがさらに好ましい。前記アリール基として具体的には、例えば、単環式芳香族炭化水素基、2環式芳香族炭化水素基、3環式芳香族炭化水素基、4環式芳香族炭化水素基、5環式芳香族炭化水素基、6環式芳香族炭化水素基、7環式芳香族炭化水素基等が挙げられる。
単環式芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
2環式芳香族炭化水素基としては、例えば、インダニル基、インデニル基、ペンタレニル基、アズレニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基等が挙げられる。
3環式芳香族炭化水素基としては、例えば、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
4環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基等が挙げられる。
5環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ペリレニル基、ピセニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。
6環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフトビレニル基等が挙げられる。
7環式芳香族炭化水素基としては、例えば、コロネニル基等が挙げられる。
【0073】
11が置換基を有するアリール基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアリール基としては、例えば、フェノール基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アニリン基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アミノフェノール基(ヒドロキシアニリン基)等が挙げられる。
【0074】
(4)R11:アルコキシ基
11が置換基を有しないアルコキシ基である場合、該アルコキシ基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。前記アルコキシ基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、n-ヘキトキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキトキシ基、3-メチルヘキトキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、2,4-ジメチルペントキシ基、3,3-ジメチルペントキシ基、3-エチルペントキシ基、2,2,3-トリメチルブトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、2-エチルヘキトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基等が挙げられる。
【0075】
11が置換基を有するアルコキシ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンオキシ基、ヒドロキシエチレンオキシ基、ヒドロキシプロピレンオキシ基、ヒドロキシブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、アミノメチレンオキシ基、アミノエチレンオキシ基、アミノプロピレンオキシ基、アミノブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノエチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノプロピリジンオキシ基等が挙げられる。
【0076】
(R12、R13及びR14
一般式(I)中、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはない。
上記アルキル基、上記アミノ基、上記アリール基及び上記アルコキシ基としては、上記「R11」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基であり、且つ、R12、R13及びR14のうち2つ以上が水素原子であることはないことが好ましい。
【0077】
化合物(I)において、工業的入手の容易さ、及び、低温での硬化性が優れることから、R11がアルコキシ基であり、R12が水素原子又はアルキル基であり、且つ、R13及びR14がアルキル基であることが好ましい。
【0078】
また、化合物(I)がtert-ブチルエステル構造又はtert-ペンチルエステル構造を有することにより、塗膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れ、また、sec-ブチルエステル構造又はiso-プロピルエステル構造を有することにより、塗料組成物としたときの貯蔵安定性(水分散安定性及び粘度安定性)、並びに、塗膜としたときの低温硬化性及び硬度保持性に優れる傾向にある。
【0079】
化合物(I)として好ましいものとして具体的には、例えば、アセト酢酸イソプロピル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸tert-ブチルエチル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。
中でも、得られる塗膜の更なる低温硬化性の点から、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル又はマロン酸tert-ブチルエチルが好ましく、塗膜としたときの被塗物に対する密着性の観点から、マロン酸ジ-sec-ブチル又はマロン酸ジイソプロピルがより好ましい。
【0080】
[結合構造]
ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートのイソシアネート基と化合物(I)とが反応して形成された結合構造として、例えば、下記一般式(II)で示されるメタンテトラカルボニル構造、下記一般式(III)で示されるメタントリカルボニル構造のエノール体、下記一般式(IV)で示されるメタントリカルボニル構造のエノール体、及び、下記一般式(V)で示されるメタントリカルボニル構造のケト体等を有するものが好ましい。
【0081】
【化4】
【0082】
(一般式(II)中、R21、R22、R23及びR24はそれぞれ上記R11、R12、R13及びR14と同じである。
一般式(III)中、R31、R32、R33及びR34はそれぞれ上記R11、R12、R13及びR14と同じである。
一般式(IV)中、R41、R42、R43及びR44はそれぞれ上記R11、R12、R13及びR14と同じである。
一般式(V)中、R51、R52、R53及びR54はそれぞれ上記R11、R12、R13及びR14と同じである。)
【0083】
ポリイソシアネートに化合物(I)が結合した結合構造のモル総量に対する上記一般式(II)で示されるメタンテトラカルボニル構造の含有量が0.5モル%以上10モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上8モル%以下であることがより好ましく、0.5モル%以上6モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以上5モル%以下であることが特に好ましく、2モル%以上4モル%以下であることが非常に好ましく、2.7モル%以上3.6モル%以下であることが最も好ましい。
メタンテトラカルボニル構造の含有量が上記下限値以上であることにより、塗膜としたときの低温硬化性がより向上させることができる。一方、メタンテトラカルボニル構造の含有量が上記上限値以下であることにより、塗料組成物としたときの貯蔵安定性(粘度安定性)及び塗膜としたときの硬度保持性をより向上させることができる。
【0084】
メタンテトラカルボニル構造の含有量は、以下に示す方法を用いて算出する。
具体的には、BrukerBiospin社製「Avance600」(商品名)を用いた、H-NMRの測定により、メタンテトラカルボニル構造、メタントリカルボニル構造のケト体及びメタントリカルボニル構造のエノール体の合計モル量に対するメタンテトラカルボニル構造のモル量の比(メタンテトラカルボニル構造/(メタンテトラカルボニル構造+メタントリカルボニル構造のケト体+メタントリカルボニル構造のエノール体))を求め、これをメタンテトラカルボニル構造の含有量とする。測定条件は以下のとおりである。
【0085】
(測定条件)
装置:BrukerBiospin社製「Avance600」(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:256回
試料濃度:5.0質量%
ケミカルシフト基準:テトラメチルシランを0ppmとする。
【0086】
また、以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除し、その値から各構造のモル量を求める。
上記一般式(II)で示されるメタンテトラカルボニル構造のNHプロトン:8.0ppm付近、積分値÷2
上記一般式(III)で示されるメタントリカルボニル構造のエノール体及び上記一般式(IV)で示されるメタントリカルボニル構造のエノール体のNHプロトン:9.8ppm付近、積分値÷1
上記一般式(V)で示されるメタントリカルボニル構造のケト体のNHプロトン:7.3ppm付近の積分値÷1
【0087】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、ブロック化されたイソシアヌレート3量体を含むことが好ましい。なお、ここでいう「ブロック化されたイソシアヌレート3量体」とは、イソシアヌレート3量体中のイソシアネート基の少なくとも一部(好ましくは、全部)がブロック剤でブロック化されているものを意味する。
ブロック化されたイソシアヌレート3量体の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分量に対して、10質量%以上が好ましく、12質量%以上50質量%以下がより好ましく、15質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。ブロック化されたイソシアヌレート3量体の含有量が上記範囲内であることで、得られた塗膜の耐熱性がより優れる傾向にある。
【0088】
ブロック化されたイソシアヌレート3量体の含有量は、例えば以下の方法を用いて算出することができる。
ブロックポリイソシアネート組成物をGPC測定する。次いで、得られた測定結果から、ブロックポリイソシアネート組成物全体の面積に対する、ブロック化されたイソシアヌレート3量体の面積の比を求め、これをブロックポリイソシアネート組成物中のブロック化されたイソシアヌレート3量体の含有量とすることができる。
【0089】
<その他添加剤>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、特に限定されないが、活性水素基含有化合物、親水性を向上させる添加剤、溶剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0090】
[活性水素基含有化合物]
本実施形態のポリイソシアネート組成物がブロックポリイソシアネート組成物である場合に、活性水素基含有化合物を含むことで低温硬化性及び貯蔵安定性を両立させ、共に向上させることができる。
【0091】
活性水素基含有化合物に含まれる活性水素基としては、水酸基又はアミノ基であることが好ましい。
すなわち、活性水素基含有化合物としては、例えば、モノアルコール類、ジアルコール類又はアミン類であることが好ましい。これらモノアルコール類、ジアルコール類及びアミン類は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0092】
(モノアルコール類)
前記モノアルコール類としては、例えば、(1)脂肪族アルコール類、(2)モノ(又はオリゴ)エチレングリコールモノアルキルエーテル類、(3)モノ(又はオリゴ) プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、(4)モノ(又はオリゴ)エチレングリコールモノエステル類、(5)モノ(又はオリゴ)プロピレングリコールモノエステル類等が挙げられる。これらモノアルコール類を、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
(1)脂肪族アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、2-ブタノール、2-エチル1-ブタノール、イソアミルアルコール、n-ペンタノール、イソペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、及び、これらの異性体アルコール等が挙げられる。
(2)モノ(又はオリゴ)エチレングリコールモノアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル類、テトラエチレングリコールモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
(3)モノ(又はオリゴ) プロピレングリコールモノアルキルエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、テトラプロピレングリコールモノアルキルエーテル類等が挙げられる。
(4)モノ(又はオリゴ)エチレングリコールモノエステル類としては、例えば、エチレングリコールモノエステル類、ジエチレングリコールモノエステル類、トリエチレングリコールモノエステル類、テトラエチレングリコールモノエステル類等が挙げられる。
(5)モノ(又はオリゴ)プロピレングリコールモノエステル類としては、例えば、プロピレングリコールモノエステル類、ジプロピレングリコールモノエステル類、トリプロピレングリコールモノエステル類、テトラプロピレングリコールモノエステル類等が挙げられる。
【0093】
(ジアルコール類)
前記ジアルコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン等が挙げられる。これらジアルコール類を、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0094】
(アミン類)
前記アミン類としては、例えば、(1)一級アミン、(2)直鎖状二級アミン、(3)分岐鎖状二級アミン、(4)不飽和二重結合含有二級アミン、(5)非対称二級アミン、(6)芳香族置換基を有する二級アミン等が挙げられる。これらアミン類を、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
(1)一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン等が挙げられる。
(2)直鎖状二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミン等が挙げられる。
(3)分岐鎖状二級アミンとしては、例えば、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-ブチルアミン)、ジ(tert-ブチル)アミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2-メチルシクロヘキシル)アミン等が挙げられる。
(4)不飽和二重結合含有二級アミンとしては、例えば、ジアリルアミン等が挙げられる。
(5)非対称二級アミンとしては、例えば、メチルエチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、メチルtert-ブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、エチルtert-ブチルアミン、N-エチルヘキシルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-エチルイソアミルアミン、N-エチルラウリルアミン、N-エチルステアリルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-tert-ブチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
(6)芳香族置換基を有する二級アミンとしては、例えば、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-シクロヘキシルアニリン、3-(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチルエステル等が挙げられる。
【0095】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記に示した活性水素基含有化合物のうち1種類を単独で含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0096】
中でも、活性水素基含有化合物としては、低温硬化性と貯蔵安定性とを両立させながら、より向上させることができることから、モノアルコール類であることが好ましく、2級モノアルコール類であることがより好ましく、2-プロパノール又はイソブタノールであることがさらに好ましい。
【0097】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、活性水素基含有化合物のモル含有量は、任意に選択できるが、ブロックポリイソシアネート組成物中のブロック化されたイソシアネート基のモル総量に対して10モル%以上1000モル%以下が好ましく、50モル%以上950モル%以下がより好ましく、50モル%以上800モル%以下がさらに好ましい。
【0098】
(親水性を向上させる添加剤)
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、親水性を向上させる添加剤を添加することで、より水分散安定性を向上することができる。このような添加剤としては、例えば、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物、両性化合物等が挙げられる。
【0099】
ノニオン系化合物として、具体的には、例えば、エーテル型化合物、エステル型化合物、アルカノールアミド型化合物等が挙げられる。エーテル型化合物として、具体的には、例えば、炭素数10以上18以下の高級アルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、アルキルフェノールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリプロピレンアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、多価アルコールの脂肪酸エステルにエチレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。エステル型化合物として、具体的には、例えば、グリセリン、ソルビタン等の高級アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。アルカノールアミド型化合物として、具体的には、例えば、脂肪酸とジエタノールアミンとの反応物等が挙げられる。
カチオン系化合物として、具体的には、例えば、第4級アンモニウム塩型化合物、アルキルアミン塩型化合物等が挙げられる。
アニオン系化合物として、具体的には、例えば、脂肪酸塩型化合物、アルキル硫酸エステル化合物、アルキルベンゼンスルホン酸塩型化合物、スルホコハク酸塩型化合物、アルキルリン酸塩型化合物等が挙げられる。
両性化合物として、具体的には、例えば、アルキルベタイン型化合物、脂肪酸アミドプロピルベタイン型化合物が挙げられる。
【0100】
(溶剤)
前記溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0101】
<(ブロック)ポリイソシアネート組成物の製造方法>
本実施形態のポリイソシアネート組成物は例えば、以下の製造方法により得られる。まず、ジイソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とを反応させる。
【0102】
ポリオールの水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は3/1以上30/1以下が好ましく、10/1以上20/1以下がより好ましい。NCO/OHが上記下限値以上であることで、得られるポリイソシアネート組成物の粘度が上昇しすぎることを効果的に抑制することができる。一方、NCO/OHが上記上限値以下であることで、得られるポリイソシアネート組成物の生産性が低下することを効果的に抑制することができる。
【0103】
反応温度は、50℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより効率的に進み、一方、上記上限値以下であることで、得られるポリイソシアネート組成物の着色等の好ましくない副反応をより効果的に抑制することができる。反応時間は、0.5時間以上5時間以下の範囲が好ましい。
【0104】
ジイソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基との反応後、又は、反応と同時に、イソシアヌレート化反応を行うことが好ましい。イソシアヌレート化反応を行うことで、塗膜としたときの硬度をより向上させることができる。イソシアヌレート化の反応温度は50℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより効率的に進み、一方、上記上限値以下であることで、得られるポリイソシアネート組成物の着色等の好ましくない副反応をより効果的に抑制することができる。
【0105】
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
(5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
(6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
(7)マンニッヒ塩基類。
(8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
(9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
【0106】
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
【0107】
これらの反応を終了させるために、前記触媒を失活させる。触媒を中和し、失活させる場合には、リン酸、酸性リン酸エステル等の酸性物質を添加し、或いは、熱分解、化学分解により失活することもできる。
ポリイソシアネート組成物の収率(得られたポリイソシアネート組成物の質量/仕込み
原料の合計質量×100)は10質量%以上85質量%以下が好ましく、30質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0108】
反応終了後、未反応ジイソシアネートモノマーは薄膜蒸発缶、抽出等により除去されることが好ましい。得られたポリイソシアネート組成物中の未反応ジイソシアネート濃度は3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。未反応ジイソシアネート濃度が上記上限値以下であることで、ポリイソシアネート組成物の硬化性をより良好に保つことができる。
【0109】
ブロックポリイソシアネート組成物を製造する場合には、例えば、上記製造方法で得られたポリイソシアネート組成物と上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
なお、ブロック剤は、上記化合物(I)のうち1種類を単独で用いてもよく、上記化合物(I)及び上述したその他のブロック剤からなる群から選択される2種類以上を併用してもよい。
ブロック剤の添加量は、通常は、イソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上200モル%以下であってよく、100モル%以上150モル%以下であることが好ましい。
【0110】
また、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する不揮発分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、30質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
【0111】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、3級アミン系化合物及びナトリウム等のアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
触媒の添加量は、ブロック化反応の温度等により変動するが、通常は、ポリイソシアネート100質量部に対して0.05質量部以上1.5質量部以下であってよく、0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0112】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上70℃以下で行うことがより好ましい。ブロック反応の温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
ブロック化反応後には、酸性化合物等の添加で中和処理してもよい。
前記酸性化合物としては、無機酸を用いてもよく、有機酸を用いてもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等が挙げられる。有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0113】
また、親水性化合物とブロック剤とを用いてブロックポリイソシアネート組成物を製造する場合には、例えば、上記製造方法で得られたポリイソシアネート組成物と上記親水性化合物と上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基と親水性化合物との反応、及び、ポリイソシアネート組成物とブロック剤との反応を同時に行うこともでき、又は、あらかじめどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を行うこともできる。中でも、イソシアネート基と親水性化合物との反応を先に行い、親水性化合物により変性されたポリイソシアネート組成物(以下、「変性ポリイソシアネート組成物」と称する場合がある)を得た後、得られた変性ポリイソシアネート組成物とブロック剤との反応を行うことが好ましい。
【0114】
ポリイソシアネート組成物と親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0115】
ポリイソシアネート組成物と親水性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0116】
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネート組成物と反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性、及び、塗膜としたときの硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
【0117】
変性ポリイソシアネート組成物とブロック剤とのブロック化反応は、上述のブロック化反応として記載された方法を用いることができる。
【0118】
<ブロックポリイソシアネート組成物の物性>
[不揮発分]
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、不揮発分は、特に制限されないが、ブロックポリイソシアネート組成物の取り扱いの観点から、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
なお、不揮発分は、後述の実施例に示す方法を用いて算出することができる。
具体的には、まず、アルミ皿を精秤する。次いで、アルミ皿上に約1g乗せた状態でブロックポリイソシアネート組成物を精秤する(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート組成物を均一厚さに調整する。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート組成物を105℃のオーブンで1時間保持する。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート組成物を精秤する(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート組成物の固形分量を算出することができる。
【0119】
ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分(質量%) = W2/W1×100
【0120】
[有効NCO含有率]
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物において、有効NCO含有率は、特に制限されないが、ブロックポリイソシアネート組成物の保存安定性がより良好となることから、1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上9質量%以下であることがさらに好ましい。
有効NCO含有率は、下記式を用いて算出することができる。
【0121】
有効NCO含有率(質量%)
=[(ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分(質量%))×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×(ポリイソシアネートのNCO含有率(質量%))}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
【0122】
≪塗料組成物≫
本実施形態の塗料組成物は、上述のポリイソシアネート組成物又は上述のブロックポリイソシアネート組成物と、多価ヒドロキシ化合物とを含む。
本実施形態の塗料組成物は、上述のブロックポリイソシアネート組成物を含む場合、硬化剤成分と主剤成分とを含む一液型塗料組成物とすることができる。
本実施形態の塗料組成物を用いることで、密着性及び低温硬化性に優れた塗膜を得られる。
本実施形態の塗料組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0123】
<多価ヒドロキシ化合物>
本明細書において、「多価ヒドロキシ化合物」とは、一分子中に少なくとも2個のヒドロキシ基(水酸基)を有する化合物を意味し、「ポリオール」とも呼ばれる。
前記多価ヒドロキシ化合物として具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、エポキシ樹脂類、含フッ素ポリオール類、アクリルポリオール類等が挙げられる。
中でも、多価ヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール類、含フッ素ポリオール類又はアクリルポリオール類であることが好ましい。
【0124】
[脂肪族炭化水素ポリオール類]
前記脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
【0125】
[ポリエーテルポリオール類]
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
【0126】
[ポリエステルポリオール類]
前記ポリエステルポリオール類としては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類。
(2)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトン類。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0127】
[エポキシ樹脂類]
前記エポキシ樹脂類としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂類等が挙げられる。
【0128】
[含フッ素ポリオール類]
前記含フッ素ポリオール類としては、例えば、参考文献1(特開昭57-34107号公報)、参考文献2(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0129】
[アクリルポリオール類]
前記アクリルポリオール類は、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得られる。
【0130】
前記一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
【0131】
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等。
【0132】
また、参考文献3(特開平1-261409号公報)及び参考文献4(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール類等が挙げられる。
【0133】
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0134】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
【0135】
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0136】
[多価ヒドロキシ化合物の水酸基価及び酸価]
本実施形態の塗料組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましい。
多価ヒドロキシ化合物の水酸基が上記下限値以上であることにより、ポリイソシアネートとの反応によるウレタンの架橋密度をより増やし、ウレタン結合の機能をより発揮しやすくなる。一方、多価ヒドロキシ化合物の水酸基が上記上限値以下であることにより、架橋密度が増えすぎず、塗膜の機械的物性がより良好となる。
【0137】
[NCO/OH]
本実施形態の塗料組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基に対する(ブロック)ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、必要とする塗膜物性により決定されるが、通常、0.1以上22.5以下である。
【0138】
<その他添加剤>
本実施形態の塗料組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
また、上述の活性水素基含有化合物を、上述のブロックポリイソシアネート組成物に添加するだけでなく、本実施形態の塗料組成物にも添加してもよい。
【0139】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0140】
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0141】
前記溶剤としては、上述のポリイソシアネート組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0142】
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0143】
<塗料組成物の製造方法>
本実施形態の塗料組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにも使用可能である。
水系ベースの塗料組成物(水系塗料組成物)を製造する場合には、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上述の(ブロック)ポリイソシアネート組成物又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの塗料組成物(水系塗料組成物)を得ることができる。
【0144】
溶剤ベースの塗料組成物を製造する場合には、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上述の(ブロック)ポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの塗料組成物を得ることができる。
【0145】
≪塗膜≫
本実施形態の塗膜は、上述の塗料組成物を硬化させてなる。
本実施形態の塗膜は、上述の塗料組成物を、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、60℃以上160℃以下で数分から数時間程度保って硬化させることで得られる。
本実施形態の塗膜は、被塗物に対する密着性及び低温硬化性が良好である。被塗物としては、特別な限定はなく、例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材を成形してなる成形品等が挙げられる。また、これら成形品の形状は特に限定されず、例えば、フィルム、シート、ボード等の厚みが小さいものであってもよく、円柱、立体構造物等の厚みの大きいものであってもよい。また、チューブ等の中空のものであってもよい。
【実施例
【0146】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0147】
なお、実施例及び比較例中の「部」は質量基準である。また、実施例及び比較例中の「%」は「質量%」である。
【0148】
<試験項目>
実施例及び比較例で得られたポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0149】
[物性1]
(収率)
収率は次式から算出した。
【0150】
収率(%) = 得られたポリイソシアネート組成物の質量/仕込み原料の合計質量×100
【0151】
[物性2]
(HDI/IPDI)
ポリイソシアネート組成物中のIPDIに由来する構造単位に対するHDIに由来する構造単位の質量比(HDI/IPDI)は、以下の方法を用いて算出した。まず、反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中のHDI濃度及びIPDI濃度とから、未反応HDI質量及び未反応IPDI質量を算出した。仕込んだHDI質量及びIPDI質量から、上記算出した未反応HDI質量及び未反応IPDI質量をそれぞれ差し引いた後、得られた差をそれぞれHDIに由来する構造単位の質量、IPDIに由来する構造単位の質量とした。次いで、HDIに由来する構造単位の質量をIPDIに由来する構造単位の質量で除することで、HDI/IPDIを得た。
【0152】
[物性3]
(ポリオールから誘導される構造単位の含有量)
ポリオールから誘導される構造単位の含有量(以下、「PO含有量」と略記する場合がある)は、以下の方法を用いて算出した。
【0153】
PO含有量(質量%)
= 仕込みPO質量/得られたポリイソシアネート組成物の質量×100
【0154】
[物性4]
(ポリイソシアネート組成物の分子量)
ポリイソシアネート組成物を試料として、その数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を以下に示す測定条件にてGPC測定を行い、ポリスチレン基準の分子量として求めた。
【0155】
(測定条件)
装置:HLC-8320GPC(TOSOH)
カラム:TSKgelSuperH2500×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH4000×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH5000×1本(TOSOH)
TSKgelSuperH6000×1本(TOSOH)
キャリアー:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/分
試料濃度:1.0質量%
注入量:20μL
温度:40℃
検出方法:示差屈折計
【0156】
[物性5]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
フラスコにポリイソシアネート組成物1g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、ポリイソシアネート組成物を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、同様の操作をポリイソシアネートなしで行い、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネート組成物のイソシアネート基(NCO)含有率を算出した。
【0157】
NCO含有率[質量%] = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0158】
[物性6]
(イソシアネート平均官能基数(平均NCO数))
ポリイソシアネート組成物を試料として、下記式によりイソシアネート平均官能基数(平均NCO数)を求めた。
【0159】
平均イソシアネート(NCO)数 = (Mn×NCO含有率×0.01)/42
【0160】
[評価1]
(塗膜の密着性)
アクリルポリオール(Allnex社製 Setalux1767(商品名)、樹脂分水酸基価150mgKOH/g 、樹脂分65%)と、各ポリイソシアネート組成物とを、水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が1.0となるように配合し、さらに酢酸ブチルを配合して、固形分40質量%になるように調製し、塗料組成物を得た。
【0161】
次いで、得られた塗料組成物をABS板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃30分間加熱乾燥し、硬化塗膜を得た。得られた塗膜に、隙間間隔2mmのカッタ-ガイドを用いて、塗膜を貫通する100個のマス目状の切り傷をつけた。その後、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番:24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって塗膜に完全に密着させた。その後、180°の剥離角度で急激にセロハン粘着テープを塗膜から引き剥がす作業を行った後、剥離面を観察し、剥離したマス目を数えた。密着性の評価基準は以下のとおりとした。
【0162】
(評価基準)
◎:剥がれたマス目の数が0
〇:剥がれたマス目の数が1以上20以下
△:剥がれたマス目の数が21以上40以下
×:剥がれたマス目の数が41以上
【0163】
[評価2]
(塗膜の低温硬化性)
「評価1」と同様の方法を用いて、各塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物をポリプロピレン板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、60℃5分間加熱乾燥し、23℃RH50%の条件下で3日間乾燥させ、硬化塗膜を得た。得られた塗膜のゲル分率の測定を行い、以下の評価基準に従って、低温硬化性を評価した。なお、ゲル分率は、塗膜をアセトン中に23℃、24時間浸漬し、未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。
【0164】
(評価基準)
◎:ゲル分率が90質量%以上
○:ゲル分率が85質量%以上90量%未満
△:ゲル分率が80質量%以上85量%未満
×:ゲル分率が80質量%未満
【0165】
[評価3]
(塗膜の耐水密着性)
「評価1」と同様の方法を用いて、各塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物をABS板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃30分間加熱乾燥し、硬化塗膜を得た。得られた塗膜を50℃の温水に30日間浸漬し、表面の水分をふき取った。次いで、隙間間隔2mmのカッタ-ガイドを用いて、塗膜を貫通する100個のマス目状の切り傷をつけた。その後、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番:24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって塗膜に完全に密着させた。その後、45°の剥離角度で急激にセロハン粘着テープを塗膜から引き剥がす作業を行った後、剥離面を観察し、剥離したマス目を数えた。密着性の評価基準は以下のとおりとした。
【0166】
(評価基準)
◎:剥がれたマス目の数が0
〇:剥がれたマス目の数が1以上20以下、又は、マス目の端部の浮きが見られた
△:剥がれたマス目の数が21以上40以下
×:剥がれたマス目の数が41以上
【0167】
<ポリイソシアネート組成物の製造>
[原料]
(ポリオール)
TMP:トリメチロールプロパン
PLC303:PLACCEL303(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:3、数平均分子量310)
PLC305:PLACCEL305(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:3、数平均分子量550)
PLC308:PLACCEL308(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:3、数平均分子量850)
PLC312:PLACCEL312(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:3、数平均分子量1250)
PLC320:PLACCEL320(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:3、数平均分子量2000)
PLC410:PLACCEL410(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:4、数平均分子量1030)
P3403:PLACCELP3403(商品名)(ダイセル株式会社製、平均OH数:3、数平均分子量4000)
【0168】
[実施例1]ポリイソシアネート組成物P-a1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:600質量部、及び、PLC305:79質量部の半分量を仕込み、撹拌下反応器内温度80℃で30分させた後、残り半分量のPLC305を添加し、更に1時間ウレタン化反応を行った。反応器内温度を70℃とし、これにテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを加え、収率が53%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、ポリイソシアネート組成物P-a1を得た。
【0169】
[実施例2~9]ポリイソシアネート組成物P-a2~P-a9の製造
表1及び2に示す配合比で、実施例1と同様の装置及び方法を用いて、各ポリイソシアネート組成物を製造した。
【0170】
[比較例1~2]ポリイソシアネート組成物P-b1~P-b2の製造
実施例1と同様の装置を用いて、表1及び2に示す配合比で原料を全て仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後、実施例1と同様の方法を用いて、各ポリイソシアネート組成物を製造した。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
表1から、ポリイソシアネート組成物P-a1~P-a7(実施例1~7)では、ポリイソシアネート組成物P-b1(比較例1)よりも、塗膜としたときの被塗物に対する密着性及び低温硬化性が優れていた。
表2から、HDIに由来する構造単位及びIPDIに由来する構造単位を含むポリイソシアネート組成物においても同様に、ポリイソシアネート組成物P-a8~P-a9(実施例8~9)は、ポリイソシアネート組成物P-b2(比較例2)よりも、塗膜としたときの被塗物に対する密着性及び低温硬化性が優れていた。
また、ポリイソシアネート組成物P-a1~P-a7(実施例1~7)において、ポリオールの数平均分子量の増加に伴い、塗膜としたときの被塗物に対する密着性、低温硬化性及び耐水密着性がより向上する傾向が見られた。
【0174】
<試験項目>
実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0175】
[物性7]不揮発分
ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分は、次のように求めた。まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に約1g乗せた状態で、実施例及び比較例で製造されたブロックポリイソシアネート組成物を精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート組成物を均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート組成物を105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート組成物を精秤した(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分を算出した。
【0176】
不揮発分(質量%) = W2/W1×100
【0177】
[物性8]有効イソシアネート基(NCO)含有率
実施例及び比較例で製造されたブロックポリイソシアネート組成物の有効イソシアネート基(NCO)含有率は、次のように求めた。なお、ここでいう「有効イソシアネート基(NCO)含有率」とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物中に存在する架橋反応に関与しうるブロックイソシアネート基量を定量化したものであって、イソシアネート基の質量%で表したものである。有効NCO含有率は、下記式により算出した。下記式において、「ポリイソシアネート組成物のNCO含有率」及び「ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分」は、それぞれ上述の物性5及び物性7で算出された値を用いた。なお、試料が溶剤等で希釈されている場合は、希釈された状態での値を算出した。
【0178】
有効NCO含有率(質量%)
=[(ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分(質量%)×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネート組成物の質量)×(ポリイソシアネート組成物のNCO含有率(質量%)}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
【0179】
[物性9]親水性基の含有量
ブロックポリイソシアネート組成物の不揮発分の質量に対する、使用した親水性基を有する化合物の質量の比を求め、これをブロックポリイソシアネート組成物中の親水性基の含有量とした。
【0180】
[評価4]塗膜の低温硬化性
アクリルディスパージョン(Allnex社製 SETAQUA6515(商品名)、樹脂分濃度45%、水酸基濃度3.3%(樹脂基準))と、各ブロックポリイソシアネート組成物とを、水酸基のモル量に対するイソシアネート基のモル量の比(イソシアネート基/水酸基)が1.0となるように配合した。次いで、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルの質量に対する水の質量の比(水/ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)が90/10の混合液を、固形分35質量%になるように混合物に添加し、各塗料組成物を得た。
【0181】
次いで、得られた塗料組成物をポリプロピレン板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃30分加熱乾燥し、硬化塗膜を得た。得られた塗膜のゲル分率を測定し、塗膜の低温硬化性を評価した。ゲル分率が80%未満の塗膜は硬化が不十分であるとみなし、続く密着性の評価は実施しなかった。
【0182】
[評価5]塗膜の密着性
「評価3」と同様の方法を用いて、各塗料組成物を調製した。次いで、得られた塗料組成物をABS板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、80℃30分加熱乾燥し、硬化塗膜を得た。得られた塗膜に、隙間間隔2mmのカッタ-ガイドを用いて、塗膜を貫通する100個のマス目状の切り傷をつけた。その後、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番:24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって塗膜に完全に密着させた。その後、180°の剥離角度で急激にセロハン粘着テープを塗膜から引き剥がす作業を行った後、剥離面を観察し、剥離したマス目を数えた。密着性の評価基準は以下のとおりとした。
【0183】
(評価基準)
◎:剥がれたマス目の数が0
〇:剥がれたマス目の数が1以上10以下
△:剥がれたマス目の数が11以上20以下
×:剥がれたマス目の数が21以上
【0184】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造>
[原料]
(親水性化合物)
H-1:ポリエチレンオキサイド(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG-081」、数平均分子量:690)
H-2:ヒドロキシピバリン酸(Hydroxypivalic acid;HPA)(分子量:119)
【0185】
(ブロック剤)
B-1:マロン酸ジイソプロピル
B-2:マロン酸ジ-tert-ブチル
B-3:2-エチルイミダゾール
B-4:アセト酢酸エチル
【0186】
[実施例10]ブロックポリイソシアネート組成物BL-a1の製造
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、実施例5で得られたP-5:100g、MPG-081(親水性化合物H-1):9g、及び、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(Dipropylene Glycol Dimethyl Ether;DPDM):101gの半分量を仕込み、120℃に加熱撹拌しながら2時間保持した。次いで、反応液を室温まで冷却し、マロン酸ジイソプロピル(ブロック剤B-1):50g、及び、残り半分量のDPDMを仕込み、さらに、ナトリウムメチラート(28質量%)含有メタノール溶液を樹脂に対してナトリウムが800ppmとなる量を室温で添加し、40℃で4時間ブロック反応させて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a1を得た。
【0187】
[実施例11~14]ブロックポリイソシアネート組成物BL-a2~BL-a5の製造
表3に記載の配合とした以外は、実施例10と同様の方法を用いて、各ブロックポリイソシアネート組成物を製造した。
【0188】
[実施例15]ブロックポリイソシアネート組成物BL-a6の製造
表3に記載の配合を、実施例10と同様の装置に仕込み、120℃に加熱撹拌しながら2時間保持した。次いで、反応液を室温まで冷却し、2-エチルイミダゾール(ブロック剤B-3):31g、及び、残り半分量のDPDMを仕込み、100℃で4時間ブロック反応させて、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a6を得た。
【0189】
[比較例3~5]ブロックポリイソシアネート組成物BL-b1~BL-b3の製造
表4に記載の配合とした以外は、実施例10と同様の方法を用いて、各ブロックポリイソシアネート組成物を製造した。
【0190】
【表3】
【0191】
【表4】
【0192】
表3及び表4から、ブロックポリイソシアネート組成物BL-a1~BL-a6(実施例10~15)では、ゲル分率が80%以上であり、塗膜としたときの被塗物に対する密着性が良好であったのに対して、ブロックポリイソシアネート組成物BL-b1~BL-b3(比較例3~5)ではゲル分率が80%未満であった。
また、異なる種類のポリイソシアネート組成物を配合したブロックポリイソシアネート組成物BL-a1~Bl-a3の比較から、ポリイソシアネート組成物P-a5及びP-a9を用いたブロックポリイソシアネート組成物BL-a1及びBL-a3(実施例10及び実施例12)では、塗膜としたときの被塗物に対する密着性が特に優れていた。
また、異なる種類のブロック剤を配合したブロックポリイソシアネート組成物BL-a2、BL-a4及びBL-a6(実施例11、実施例13及び実施例15)の比較から、ブロック剤としてB-1(マロン酸ジイソプロピル)を用いたブロックポリイソシアネート組成物BL-a2では、塗膜としたときの低温硬化性が低下する傾向が見られ、一方で、被塗物に対する密着性がより優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本実施形態のポリイソシアネート組成物によれば、塗膜としたときの密着性及び低温硬化性に優れるポリイソシアネート組成物を提供することができる。