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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】注入同期式レーザシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20230824BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/23
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020540808
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 GB2019050247
(87)【国際公開番号】W WO2019150097
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】1801533.9
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514010047
【氏名又は名称】エム スクエアード レーザーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M SQUARED LASERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,ガレス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,グレアム ピーター アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,スティーヴン
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0145801(US,A1)
【文献】特開平11-317567(JP,A)
【文献】特開平05-259561(JP,A)
【文献】米国特許第04635246(US,A)
【文献】米国特許第05379309(US,A)
【文献】米国特許第05027360(US,A)
【文献】米国特許第07187492(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 -3/02
H01S 3/04 -3/0959
H01S 3/10 -3/102
H01S 3/105-3/131
H01S 3/136-3/213
H01S 3/23 -5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入同期式レーザシステム(1、25)において、
周波数(f)を有する連続波出力場(4)を生成するマスタレーザ(2)と、
前記連続波出力場(4)から、第1の周波数(f)を有する第1のシード光場(6)及び第2の周波数(f)を有する第2のシード光場(7)を生成するのに利用される1つ又は複数の光学変調器(5、5a、5d)と、
を備え、
前記第1のシード光場(6)は、前記第1の周波数(f)において1つ又は複数の固体レーザ(8a-c)を注入同期する入力を提供し、前記1つ又は複数の固体レーザ(8a-c)が前記第1の周波数(f)で前記注入同期式レーザシステム(1、25)のための1つ又は複数の連続波出力場(12a-c)を生成し、前記第2のシード光場(7)は、前記第2の周波数(f)において1つ又は複数の固体レーザ(8d-f)を注入同期する入力を提供し、前記1つ又は複数の固体レーザ(8d-f)が前記第2の周波数(f)で前記注入同期式レーザシステム(1、25)のための1つ又は複数の連続波出力場(12d-f)を生成し、
注入同期式レーザシステム(1、25)が、さらに、
第1の位相同期制御ループ(27a)であって、1以上の前記光学変調器(5、5a)に第1のフィードバック信号(29a)を提供して、第1の固体レーザ(8a)において前記第1の周波数(f)で生成された前記連続波出力場(12a)を前記連続波出力場(4)と位相同期させる第1の位相同期制御ループ(27a)と、
第2の位相同期制御ループ(27b)であって、1以上の前記光学変調器(5、5d)に第2のフィードバック信号(29b)を提供して、第2の固体レーザ(8d)において前記第2の周波数(f)で生成された前記連続波出力場(12d)を前記連続波出力場(4)と位相同期させる第2の位相同期制御ループ(27b)と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の注入同期式レーザシステム(25)において、前記注入同期式レーザシステム(25)は、前記連続波出力場(4)から周波数(f)を有するN個のシード光場を生成するのに利用されるN個の光学変調器を備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記第1の周波数(f)は、前記連続波出力場(4)の前記周波数(f)に、前記1つ又は複数の光学変調器(5、5a)によって導入される変調周波数(Δf)を加えたものに等しい、および/または、前記第2の周波数(f)は、前記連続波出力場(4)の前記周波数(f)から、前記1つ又は複数の光学変調器(5、5d)によって導入される変調周波数(Δf)を差し引いたものに等しいことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記1つ又は複数の光学変調器(5、5a、5d)によって導入される変調周波数(Δf)は、0.1GHz~40GHzであることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記第1のシード光場(6)は、前記第1のシード光場(6)により注入同期される前記1つ又は複数の固体レーザ(8a、8b、8c)とモード整合する、および/または、前記第2のシード光場(7)は、前記第2のシード光場(7)により注入同期される前記1つ又は複数の固体レーザ(8d、8e、8f)とモード整合することを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記注入同期式レーザシステム(1、25)は、1つ又は複数の周波数同期制御ループ(13、19)を更に備えて、前記固体レーザ(8a-c)の1つ又は複数を前記第1のシード場(6)に周波数同期する、および/または、1つ又は複数の周波数同期制御ループ(13、19)を更に備えて、前記固体レーザ(8d-8f)の1つ又は複数を前記第2のシード場(7)に周波数同期することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記第1の位相同期制御ループ(27a)は、前記第1の固体レーザ(8a)及び前記連続波出力場(4)の結合出力場(12a)から生成される第1の光学ビート信号(32a)から第1の電気ビート信号(33a)を生成するように構成された第1の検出器(34a)を備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記第2の位相同期制御ループ(27b)は、前記第2の固体レーザ(8d)及び前記連続波出力場(4)の結合出力場(12d)から生成される第2の光学ビート信号(32b)から、第2の電気ビート信号(33b)を生成するように構成された第2の検出器(34b)を備えることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の注入同期式レーザシステム(1、25)において、前記注入同期式レーザシステム(1、25)は、前記マスタレーザ(2)と前記1つ又は複数の固体レーザ(8)との間に配置される1つ又は複数の光学アイソレータ(100)を更に備える、および/または、前記出力場、前記1つ又は複数の固体レーザ(8)、及び又は前記連続波出力場(4)の成分の1つ又は複数を周波数2逓倍するように構成された1つ又は複数の周波数2逓倍ステージを更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
2つ以上の固体レーザ(8a-f)を注入同期する方法において、
周波数(f)を有する連続波出力場(4)を生成するステップと、
1つ又は複数の光学変調器(5、5a、5d)を利用して、前記連続波出力場(4)を光学的に変調するステップであって、それにより、第1の周波数(f)を有する第1のシード光場(6)及び第2の周波数(f)を有する第2のシード光場(7)を生成する、光学的に変調するステップと、
前記第1のシード光場(6)を利用するステップであって、それにより、前記第1の周波数(f)において1つ又は複数の固体レーザ(8a-c)を注入同期する、前記第1のシード光場を利用するステップと、
1つ又は複数の前記固体レーザ(8a-c)を利用して、前記第1の周波数(f)で1つ又は複数の連続波出力場(12a-c)を生成するステップと、
前記第2のシード光場(7)を利用するステップであって、それにより、前記第2の周波数(f)において1つ又は複数の固体レーザ(8d-f)を注入同期する、前記第2のシード光場を利用するステップと、
1つ又は複数の前記固体レーザ(8d-f)を利用して、前記第2の周波数(f)で1つ又は複数の連続波出力場(12d-f)を生成するステップと、
第1の位相同期制御ループ(27a)を利用するステップであって、1以上の前記光学変調器(5、5a)に第1のフィードバック信号(29a)を提供して、第1の固体レーザ(8a)において前記第1の周波数(f)で生成された前記連続波出力場(12a)を前記連続波出力場(4)と位相同期させる、第1の位相同期制御ループ(27a)を利用するステップと、
第2の位相同期制御ループ(27b)を利用するステップであって、1以上の前記光学変調器(5、5d)に第2のフィードバック信号(29b)を提供して、第2の固体レーザ(8d)において前記第2の周波数(f)で生成された前記連続波出力場(12d)を前記連続波出力場(4)と位相同期させる、第2の位相同期制御ループ(27b)を利用するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の2つ以上の固体レーザ(8a-f)を注入同期する方法が、
前記第1のシード光場(6)を前記第1のシード光場(6)により注入同期された前記1つ又は複数の固体レーザ(8a-c)とモード整合するステップ、および/または、
前記第2のシード光場(7)を前記第2のシード光場(7)により注入同期された前記1つ又は複数の固体レーザ(8d-e)とモード整合するステップ、を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の2つ以上の固体レーザ(8a-f)を注入同期する方法が、
前記固体レーザ(8a-c)の1つ又は複数を前記第1のシード光場(6)に周波数同期するステップ、および/または、
前記固体レーザ(8d-f)の1つ又は複数を前記第2のシード光場(7)に周波数同期するステップ、を更に含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10~12の何れか1項に記載の2つ以上の固体レーザ(8a-f)を注入同期する方法において、前記第1のフィードバック信号(29a)を生成するステップは、前記固体レーザ(8a)の1つ及び前記連続波出力場(4)の結合出力場(12a)から第1の光学ビート信号(32a)を生成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の2つ以上の固体レーザ(8a-f)を注入同期する方法において、前記第2のフィードバック信号(29b)を生成するステップは、前記固体レーザ(8d)の1つ及び前記連続波出力場(4)の前記結合出力場(12d)から第2の光学ビート信号(32b)を生成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10~14何れか1項に記載の2つ以上の固体レーザ(8a-f)を注入同期する方法が、
前記1つ又は複数の固体レーザ(8a-f)から前記連続波出力場(4)を光学的に分離するステップ、および/または、
前記出力場(12a-f)、前記1つ又は複数の固体レーザ(8a-f)、及び又は前記連続波出力場(4)の成分の1つ又は複数を周波数2逓倍するステップ、を更に含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザの技術分野に関し、特に連続波(CW)注入同期式レーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
位相同期式レーザシステムは、2つの光場を能動的に位相整合する既知の技法である。しかしながら、これらのシステムは、高周波数で高度の位相コヒーレンスを提供することができず、その理由は、そのような周波数が、能動的位相制御が実現可能又は容易に達成される周波数範囲を超えているためである。位相同期式レーザシステムはまた、「サーボバンプ」、すなわち、能動的制御システムの周波数範囲をわずかに超えた位相ノイズの増幅の影響も受ける。
【0003】
2つの光場を位相整合する代替の技法は、注入同期に基づくものである。注入同期技法は主に連続波単一周波数レーザ源に適用される。望ましい周波数属性を有する低電力レーザ(マスタレーザ)を利用することにより、普通ならスペクトル属性がそれ程よくないより高電力のレーザ(スレーブレーザ)にその周波数を課すことが達成される。高電力レーザは機械的ばらつきの影響をより受けやすい傾向があり、ノイズが非常に低いポンプ源を利用することができず、温度の影響を大きく受けることから、低ノイズ性能又は単一周波数動作だけでも高電力レーザでは達成がはるかに困難であるため、注入同期は必要とされる。
【0004】
注入同期は、マスタレーザの出力をスレーブレーザのキャビティに注入することにより達成される。マスタレーザの周波数がスレーブレーザの軸モード周波数の1つに近づくにつれて、マスタレーザからの光は再生的により高い強度に増幅され、最終的には、スレーブレーザの元々の自走モードが失われるような程度までスレーブレーザの利得を飽和させる。この同期範囲内で、スレーブレーザの出力はマスタレーザの出力の位相に位相同期される。注入同期は、電力効率を下げ、所望の高電力レベルに耐えることができないことが多いエタロン又は他のキャビティ内要素を使用しない高電力レーザの単一周波数動作という利点を提供する。
【0005】
米国特許第5,027,360号明細書には、マスタレーザ及びスレーブレーザを備え、マスタレーザ及びスレーブレーザは両方とも連続波出力を有する固体状態レーザである高電力注入同期式レーザシステムが開示されている。開示されたシステムでは、スレーブレーザは、マスタレーザの少なくとも10倍の出力電力を有する。システムは、注入同期状況の維持に利用されるサーボループ制御システムを更に備える。これは、スレーブレーザキャビティ内の変動を表す誤差信号を生成し、この誤差信号を利用して、同期状況を維持するようにスレーブレーザキャビティの長さを調整することにより達成される。
【0006】
周波数変調レーザ及びモード同期式レーザも、2つ以上のスレーブレーザを同時に注入同期するマスタレーザとして利用されてきた。例えば、米国特許第4,635,246号明細書及び同第5,379,309号明細書を参照のこと。これらのシステムでは、異なる光学モードのモード同期式マスタレーザが、独立したレーザ発振器の注入同期に利用される。その結果、
f=f±nΔf (1)
の動作周波数において共振する2つ以上のスレーブレーザの注入同期が達成され、式中、
はマスタレーザの中心動作周波数であり、
nは整数であり、
Δfは、マスタレーザの隣接モード間の周波数差である。マスタレーザのモードの位相変動は高度に相関するため、2つ以上のスレーブレーザの出力の位相変動も同様に高度に相関する。
【0007】
上述した注入同期技法では、マスタレーザの出力と高度に整合した位相を有するスレーブレーザの出力になるが、実際には、この位相整合は完全ではない。スレーブレーザの追従が不完全であることは、特に低周波数においてまだ幾らかの残留位相ノイズがあることを意味する。加えて、注入同期式システムでの光場の伝送中、位相ノイズが導入される恐れがある。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の実施形態の目的は、当技術分野で既知の注入同期式レーザシステムの上記欠点をなくすか、又は少なくとも軽減することである。
【0009】
本発明の実施形態の更なる目的は、連続波マスタレーザが、2つ以上のスレーブレーザの同時注入同期に利用される注入同期式レーザシステムを提供することである。
【0010】
本発明の実施形態の更なる目的は、当技術分野で既知の注入同期式レーザシステムと比較した場合、位相ノイズの低下を示す注入同期式レーザシステムを提供することである。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、注入同期式レーザシステムであって、
周波数(f)を有する連続波出力場を生成するマスタレーザと、
連続波出力場から、第1の周波数(f)を有する第1のシード光場及び第2の周波数(f)を有する第2のシード光場を生成するのに利用される1つ又は複数の光学変調器と、
を備え、
第1のシード光場は、第1の周波数(f)において1つ又は複数の光学増幅器を注入同期する入力を提供し、1つ又は複数の光学増幅器が第1の周波数(f )で注入同期式レーザシステムのための1つ又は複数の連続波出力場を生成し、
第2のシード光場は、第2の周波数(f)において1つ又は複数の光学増幅器を注入同期する入力を提供し、1つ又は複数の光学増幅器が第2の周波数(f )で注入同期式レーザシステムのための1つ又は複数の連続波出力場を生成し、
注入同期式レーザシステムが、さらに、
第1の位相同期制御ループであって、1以上の光学変調器に第1のフィードバック信号を提供して、第1の光学増幅器において第1の周波数(f )で生成された連続波出力場を前記連続波出力場と位相同期させる第1の位相同期制御ループと、
第2の位相同期制御ループであって、1以上の光学変調器に第2のフィードバック信号を提供して、第2の光学増幅器において第2の周波数(f )で生成された連続波出力場を前記連続波出力場と位相同期させる第1の位相同期制御ループと、を備えるシステムが提供される。
【0012】
第1のシード光場及び第2のシード光場はマスタレーザの連続波出力場から生成されるため、1つ又は複数の光学増幅器の出力場も、互い及び連続波出力場との高い位相コヒーレンスを示す。この構成はまた、マスタレーザにより導入されるいかなるノイズも、第1及び第2のシード光場により注入同期される1つ又は複数の光学増幅器にとって共通することを保証する。
【0013】
任意選択的に、注入同期式レーザシステムは、連続波出力場から周波数(f)を有するN個のシード光場を生成するのに利用されるN個の光学変調器を備える。
【0014】
第1の周波数(f)は、好ましくは、連続波出力場の周波数(f)に、1つ又は複数の光学変調器により導入される変調周波数(Δf)を加えたものに等しい。好ましくは、第2の周波数(f)は、連続波出力場の周波数(f)から、1つ又は複数の光学変調器により導入される変調周波数(Δf)を差し引いたものに等しい。正及び負の周波数シフトの使用は、出力場、第1の光シード場により注入同期される1つ又は複数の光学増幅器に第1の周波数シフトを付与し、出力場、第2の光シード場により注入同期される1つ又は複数の光学増幅器に第2の周波数シフトを付与することにより、Δf+Δfの相対周波数オフセットを達成することができることを意味する。
【0015】
好ましくは、1つ又は複数の光学変調器によって導入される変調周波数(Δf)は0.1GHz~40GHzである。好ましくは、1つ又は複数の光学変調器によって導入される変調周波数(Δf)は約6GHzである。
【0016】
好ましくは、1つ又は複数の光学変調器は、電気光学変調器(EOM)を含む。代替的には、1つ又は複数の光学変調器は、音響光学変調器(AOM)を含む。
【0017】
好ましくは、第1のシード光場は、第1のシード光場により注入同期される1つ又は複数の光学増幅器とモード整合する。同様にして、第2のシード光場が、第2のシード光場により注入同期される1つ又は複数の光学増幅器とモード整合することが好ましい。
【0018】
最も好ましくは、注入同期式レーザシステムは、1つ又は複数の周波数同期制御ループを更に備えて、光学増幅器の1つ又は複数を第1のシード場に周波数同期する。
【0019】
最も好ましくは、注入同期式レーザシステムは、1つ又は複数の周波数同期制御ループを更に備えて、光学増幅器の1つ又は複数を第2のシード場に周波数同期する。
【0021】
最も好ましくは、第1の位相同期制御ループは、第1の光学増幅器及び連続波出力場の結合出力場から生成される第1の光学ビート信号から第1の電気ビート信号を生成するように構成された第1の検出器を備える。
【0022】
第1の位相同期制御ループは、第1の電気ビート信号の周波数に等しい周波数を有する第1の基準信号を生成するのに利用される基準発振器を更に備え得る。
【0023】
最も好ましくは、第1の位相同期制御ループは、第1の電気ビート信号及び第1の基準信号から第1の誤差信号を生成するのに利用される第1の周波数混合器を更に備える。
【0024】
好ましくは、第1の位相同期制御ループは、制御信号が第1の誤差信号から生成される第1の電圧制御発振器を更に備える。好ましくは、第1の電圧制御発振器からの出力信号は、第1の光学変調器のフィードバック信号を提供する。任意選択的に、第1の位相同期制御ループは、第1の電圧制御発振器と第1の光学変調器との間に配置される第1の周波数シンセサイザを更に備える。
【0025】
代替的には、第1の位相同期制御ループは、制御信号が第1の誤差信号から生成される第1の電圧制御位相シフタを更に備える。好ましくは、第1の電圧制御位相シフタの入力信号は、第1の固定周波数発振器により生成される。任意選択的に、第1の位相同期制御ループは、第1の電圧制御位相シフタと第1の光学変調器との間に配置される第1の周波数シンセサイザを更に備える。代替的には、第1の位相同期制御ループは、第1の固定周波数発振器と第1の電圧制御位相シフタとの間に配置される第1の周波数シンセサイザを更に備える。
【0026】
更なる代替では、第1の位相同期制御ループは、第1の周波数fを有する第1の基準信号を生成するのに利用される第1の基準発振器を更に備える。第1の位相同期制御ループは、第2の周波数fを有する第2の基準信号を生成するのに利用される第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)を更に備える。最も好ましくは、第1の周波数fは、第1の電気ビート信号の周波数から第2の周波数fを差し引いたものに等しい。
【0027】
最も好ましくは、第1の位相同期制御ループは、第1の電気ビート信号及び第1の基準信号fから第1の中間周波数信号を生成するのに利用される第1の周波数混合器を更に備える。
【0028】
最も好ましくは、第1の位相同期制御ループは、第1の中間周波数信号及び第2の基準信号fから誤差信号を生成するのに利用される第2の周波数混合器を更に備える。
【0029】
好ましくは、第1の位相同期制御ループは、制御信号が第1の誤差信号から生成される第1の電圧制御発振器を更に備える。
【0030】
好ましくは、第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)は、出力信号を生成するのに更に利用される。
【0031】
最も好ましくは、第1の位相同期制御ループは、第1の電圧制御発振器からの出力信号及び第1のDDSの出力信号から、1つ又は複数の光学変調器の1つへのフィードバック信号を生成するのに利用される第3の周波数混合器を更に備える。
【0033】
最も好ましくは、第2の位相同期制御ループは、第2の光学増幅器及び連続波出力場の結合出力場から生成される第2の光学ビート信号から、第2の電気ビート信号を生成するように構成された第2の検出器を備える。
【0034】
好ましくは、基準発振器は、第2の電気ビート信号の周波数に等しい周波数を有する第2の基準信号を生成するのに利用される。
【0035】
最も好ましくは、第2の位相同期制御ループは、第2の電気ビート信号及び第2の基準信号から第2の誤差信号を生成するのに利用される第2の周波数混合器を更に備える。
【0036】
好ましくは、第2の位相同期制御ループは、駆動信号が第2の誤差信号から生成される第2の電圧制御発振器を更に備える。好ましくは、第2の電圧制御発振器からの出力信号は、第2の光学変調器のフィードバック信号を提供する。任意選択的に、第2の位相同期制御ループは、第2の電圧制御発振器と第2の光学変調器との間に配置される第2の周波数シンセサイザを更に備える。
【0037】
代替的には、第2の位相同期制御ループは、制御信号が第2の誤差信号から生成される第2の電圧制御位相シフタを更に備える。好ましくは、第2の電圧制御位相シフタの入力信号は、第2の固定周波数発振器により生成される。任意選択的に、第2の位相同期制御ループは、第2の電圧制御位相シフタと第2の光学変調器との間に配置される第2の周波数シンセサイザを更に備える。代替的には、第2の位相同期制御ループは、第2の固定周波数発振器と第2の電圧制御位相シフタとの間に配置される第2の周波数シンセサイザを更に備える。
【0038】
更なる代替では、第2の位相同期制御ループは、第3の周波数fを有する第3の基準信号を生成するのに利用される第2の基準発振器を更に備える。第2の位相同期制御ループは、第4の周波数fを有する第4の基準信号を生成するのに利用される第2のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)を更に備える。最も好ましくは、第3の周波数fは、第2の電気ビート信号の周波数から第4の周波数fを差し引いたものに等しい。
【0039】
最も好ましくは、第2の位相同期制御ループは、第2の電気ビート信号及び第3の基準信号fから第2の中間周波数信号を生成するのに利用される第4の周波数混合器を更に備える。
【0040】
最も好ましくは、第2の位相同期制御ループは、第2の中間周波数信号及び第4の基準信号fから第2の誤差信号を生成するのに利用される第5の周波数混合器を更に備える。
【0041】
好ましくは、第2の位相同期制御ループは、制御信号が第2の誤差信号から生成される第2の電圧制御発振器を更に備える。
【0042】
好ましくは、第2のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)は、出力信号を生成するのに更に利用される。
【0043】
最も好ましくは、第2の位相同期制御ループは、第2の電圧制御発振器からの出力信号及び第2のDDSの出力信号から、1つ又は複数の光学変調器の1つへのフィードバック信号を生成するのに利用される第6の周波数混合器を更に備える。
【0044】
好ましくは、注入同期式レーザシステムは、マスタレーザと1つ又は複数の光学増幅器との間に配置される1つ又は複数の光学アイソレータを更に備える。
【0045】
任意選択的に、注入同期式レーザシステムは、出力場、1つ又は複数の光学増幅器、及び又は連続波出力場の成分の1つ又は複数を周波数2逓倍するように構成された1つ又は複数の周波数2逓倍ステージを更に備える。この実施形態では、第1の光学ビート信号及び又は第2の光学ビート信号が1つ又は複数の周波数2逓倍ステージ後に生成されることが好ましい。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法であって、
-周波数(f)を有する連続波出力場を生成するステップと、
1つ又は複数の光学変調器を利用して、連続波出力場を光学的に変調するステップであって、それにより、第1の周波数(f)を有する第1のシード光場及び第2の周波数(f)を有する第2のシード光場を生成する、光学的に変調するステップと、
-第1のシード光場を利用するステップであって、それにより、第1の周波数(f)において1つ又は複数の光学増幅器を注入同期する、第1のシード光場を利用するステップと、
-1つ又は複数の光学増幅器を利用して、第1の周波数(f )で1つ又は複数の連続波出力場を生成するステップと、
-第2のシード光場を利用するステップであって、それにより、第2の周波数(f)において1つ又は複数の光学増幅器を注入同期する、第2のシード光場を利用するステップと、
-1つ又は複数の光学増幅器を利用して、第2の周波数(f )で1つ又は複数の連続波出力場を生成するステップと、
-第1の位相同期制御ループを利用するステップであって、1以上の光学変調器に第1のフィードバック信号を提供して、第1の光学増幅器において第1の周波数(f )で生成された連続波出力場を前記連続波出力場と位相同期させる、第1の位相同期制御ループを利用するステップと、
-第2の位相同期制御ループを利用するステップであって、1以上の光学変調器に第2のフィードバック信号を提供して、第2の光学増幅器において第2の周波数(f )で生成された連続波出力場を前記連続波出力場と位相同期させる、第2の位相同期制御ループを利用するステップと、
を含む方法が提供される。
【0047】
好ましくは、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法は、第1のシード光場を第1のシード場により注入同期された1つ又は複数の光学増幅器とモード整合するステップを更に含む。同様にして、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法は、第2のシード光場を第2のシード場により注入同期された1つ又は複数の光学増幅器とモード整合するステップを更に含む。
【0048】
最も好ましくは、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法は、光学増幅器の1つ又は複数を第1のシード場に周波数同期するステップを更に含む。
【0049】
最も好ましくは、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法は、光学増幅器の1つ又は複数を第2のシード場に周波数同期するステップを更に含む。
【0051】
最も好ましくは、第1のフィードバック信号を生成するステップは、光学増幅器の1つ及び連続波出力場の結合出力場から第1の光学ビート信号を生成するステップを含む。
【0052】
第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第1の光学ビート信号から第1の電気ビート信号を生成するステップを更に含む。
【0053】
第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第1の電気ビート信号の周波数に等しい周波数を有する第1の基準信号を生成するステップを更に含む。
【0054】
好ましくは、第1のフィードバック信号を生成するステップは、第1の電気ビート信号及び第1の基準信号から第1の誤差信号を生成するステップを更に含む。
【0055】
好ましくは、第1のフィードバック信号を生成するステップは、第1の誤差信号を利用して、第1の電圧制御発振器の制御信号を生成するステップを更に含む。好ましくは、第1の電圧制御発振器からの出力信号は、光学変調器の第1のフィードバック信号を提供する。任意選択的に、第1のフィードバック信号の周波数は、光学変調器に達する前、逓倍される。
【0056】
代替的には、第1のフィードバック信号を生成するステップは、第1の誤差信号を利用して、第1の電圧制御位相シフタの制御信号を生成するステップを更に含む。最も好ましくは、第1の固定発振器は、第1の電圧制御位相シフタの入力信号を提供する。好ましくは、第1の電圧制御位相シフタからの出力信号は、光学変調器のフィードバック信号を提供する。任意選択的に、フィードバック信号の周波数は、光学変調器に達する前、逓倍される。代替的には、入力信号の周波数は、第1の電圧制御位相シフタに達する前、逓倍される。
【0057】
更なる代替では、第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、周波数fを有する第1の基準信号を生成するステップを更に含む。
【0058】
第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、周波数fを有する第2の基準信号を生成するステップを更に含む。最も好ましくは、第1の周波数fは、第1の電気ビート信号の周波数から第2の周波数fを差し引いたものに等しい。
【0059】
第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第1の電気ビート信号及び第1の基準信号fから第1の中間周波数信号を生成するステップを更に含む。
【0060】
最も好ましくは、第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第1の中間周波数信号及び第2の基準信号fから誤差信号を生成するステップを更に含む。
【0061】
好ましくは、第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第1の誤差信号から第1の電圧制御発振器の制御信号を生成するステップを更に含む。
【0062】
最も好ましくは、第1のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第1の電圧制御発振器からの出力信号と第1のDDSからの出力信号とを周波数混合するステップを更に含む。
【0064】
最も好ましくは、第2のフィードバック信号を生成するステップは、光学増幅器の1つ及び連続波出力場の結合出力場から第2の光学ビート信号を生成するステップを含む。
【0065】
第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第2の光学ビート信号から第2の電気ビート信号を生成するステップを更に含む。
【0066】
第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第2の電気ビート信号の周波数に等しい周波数を有する第2の基準信号を生成するステップを更に含む。
【0067】
好ましくは、第2のフィードバック信号を生成するステップは、第2の電気ビート信号及び第2の基準信号から第2の誤差信号を生成するステップを更に含む。
【0068】
好ましくは、第2のフィードバック信号を生成するステップは、第2の誤差信号を利用して、第2の電圧制御発振器の制御信号を生成するステップを更に含む。好ましくは、第2の電圧制御発振器からの出力信号は、光学変調器の第2のフィードバック信号を提供する。任意選択的に、第2のフィードバック信号の周波数は、光学変調器に達する前、逓倍される。
【0069】
代替的には、第2のフィードバック信号を生成するステップは、第2の誤差信号を利用して、第2の電圧制御位相シフタの制御信号を生成するステップを更に含む。最も好ましくは、第2の固定発振器は、第2の電圧制御位相シフタの入力信号を提供する。好ましくは、第2の電圧制御位相シフタからの出力信号は、光学変調器のフィードバック信号を提供する。任意選択的に、フィードバック信号の周波数は、光学変調器に達する前、逓倍される。代替的には、入力信号の周波数は、第2の電圧制御位相シフタに達する前、逓倍される。
【0070】
更なる代替では、第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、周波数fを有する第3の基準信号を生成するステップを更に含む。
【0071】
第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、周波数fを有する第4の基準信号を生成するステップを更に含む。最も好ましくは、第3の周波数fは、第2の電気ビート信号の周波数から第4の周波数fを差し引いたものに等しい。
【0072】
第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第2の電気ビート信号及び第3の基準信号fから第2の中間周波数信号を生成するステップを更に含む。
【0073】
最も好ましくは、第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第2の中間周波数信号及び第4の基準信号fから誤差信号を生成するステップを更に含む。
【0074】
好ましくは、第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第2の誤差信号から第2の電圧制御発振器の制御信号を生成するステップを更に含む。
【0075】
最も好ましくは、第2のフィードバック信号を生成するステップは、好ましくは、第2の電圧制御発振器からの出力信号と第2のDDSからの出力信号とを周波数混合するステップを更に含む。
【0076】
好ましくは、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法は、1つ又は複数の光学増幅器から連続波出力場を光学的に分離するステップを更に含む。
【0077】
好ましくは、2つ以上の光学増幅器を注入同期する方法は、出力場、1つ又は複数の光学増幅器、及び又は連続波出力場の成分の1つ又は複数を周波数2逓倍するステップを更に含む。この実施形態では、1つ又は複数の光学増幅器の出力場及び又は連続波出力場の成分の1つ又は複数を周波数2逓倍した後、第1の光学ビート信号及び又は第2の光学ビート信号を生成することが好ましい。
【0078】
本発明の第2の態様の実施形態は、本発明の第1の態様の好ましい又は任意選択的な特徴を実施する特徴を含み得、又は逆も同様である。
【0079】
本発明の第3の態様によれば、注入同期式レーザシステムであって、周波数(f)を有する連続波出力場を生成するマスタレーザと、連続波出力場から、第1の周波数(f)を有する第1のシード光場を生成するのに利用される第1の光学変調器とを備え、第1のシード光場は、第1の周波数(f)において第1の光学増幅器を注入同期する入力を提供し、
注入同期式レーザシステムは、第1の光学増幅器の出力場を連続波出力場に位相同期できるようにするフィードバック信号を第1の光学変調器に提供する第1の位相同期制御ループを更に備える、システムが提供される。
【0080】
好ましくは、注入同期式レーザシステムは、第2の周波数(f)を有する第2のシード光場を連続波出力場から生成するのに利用される第2の光学変調器を更に備える。第2のシード光場は、第2の光学増幅器を第2の周波数(f)に注入同期する入力を提供し得る。この実施形態では、注入同期式レーザシステムは、第2の光学増幅器の出力場を連続波出力場に位相同期できるようにするフィードバック信号を第2の光学変調器に提供する第2の位相同期制御ループを更に備え得る。
【0081】
好ましくは、第1のシード光場は、第1のシード光場により注入同期される第1の光学増幅器とモード整合される。同様にして、第2のシード光場が第2のシード光場により注入同期される第2の光学増幅器とモード整合されることが好ましい。
【0082】
最も好ましくは、注入同期式レーザシステムは、第1の光学増幅器の共振状況を第1のシード光場に周波数同期する1つ又は複数の周波数同期制御ループを更に備える。
【0083】
最も好ましくは、注入同期式レーザシステムは、第2の光学増幅器の共振状況を第2のシード光場に周波数同期する1つ又は複数の周波数同期制御ループを更に備える。
【0084】
本発明の第3の態様の実施形態は、本発明の第1又は第2の態様の好ましい又は任意選択的な特徴を実施する特徴を備え得、又は逆も同様である。
【0085】
本発明の第4の態様によれば、光学増幅器を注入同期する方法であって、
-周波数(f)を有する連続波出力場を生成するステップと、
-連続波出力場を光学的に変調するステップであって、それにより、第1の周波数(f)を有する第1のシード光場を生成する、光学的に変調するステップと、
-第1のシード光場を利用するステップであって、それにより、第1の光学増幅器を第1の周波数(f)に注入同期する、利用するステップと、
-第1の光学変調器のフィードバック信号を生成するステップであって、それにより、第1の光学増幅器の出力場を連続波出力場に位相同期する、フィードバック信号を生成するステップと、
を含む方法が提供される。
【0086】
本発明の第4の態様の実施形態は、本発明の第1~第3の態様の好ましい又は任意選択的な特徴を実施する特徴を備え得、又は逆も同様である。
【0087】
本発明の第5の態様によれば、注入同期式レーザシステムであって、周波数(f)を有する連続波出力場を生成するマスタレーザと、連続波出力場から、周波数(f)を有する1つ又は複数のシード光場を生成するのに利用される1つ又は複数の光学変調器とを備え、1つ又は複数のシード光場は、1つ又は複数の光学増幅器を周波数(f)に注入同期する入力を提供し、
注入同期式レーザシステムは、1つ又は複数の光学増幅器の出力場を連続波出力場に位相同期できるようにする1つ又は複数のフィードバック信号を1つ又は複数の光学変調器に提供する1つ又は複数の位相同期制御ループを更に備える、システムが提供される。
【0088】
本発明の第5の態様の実施形態は、本発明の第1~第4の態様の好ましい又は任意選択的な特徴を実施する特徴を備え得、又は逆も同様である。
【0089】
本発明の第6の態様によれば、1つ又は複数の光学増幅器を注入同期する方法であって、 -周波数(f)を有する連続波出力場を生成するステップと、
-連続波出力場を光学的に変調するステップであって、それにより、第1の周波数(f)を有する1つ又は複数のシード光場を生成する、光学的に変調するステップと、
-1つ又は複数のシード光場を利用するステップであって、それにより、1つ又は複数の光学増幅器を1つ又は複数の周波数(f)に注入同期する、利用するステップと、
-1つ又は複数の光学変調器のフィードバック信号を生成するステップであって、それにより、1つ又は複数の光学増幅器の出力場を連続波出力場に位相同期する、フィードバック信号を生成するステップと、
を含む方法が提供される。
【0090】
本発明の第6の態様の実施形態は、本発明の第1~第5の態様の好ましい又は任意選択的な特徴を実施する特徴を備え得、又は逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
これより、図面を参照して単なる例として本発明の種々の実施形態について説明する。
【0092】
図1図1は、本発明の実施形態による注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
図2図2は、(a)図1の注入同期式レーザシステム内で利用される光学増幅器及び(b)図1の注入同期式レーザシステム内で利用される代替の光学増幅器の概略図を提示する。
図3図3は、本発明の代替の実施形態による注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
図4図4は、位相同期を含む注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
図5図5は、代替の位相同期を備える注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
図6図6は、第2の代替の位相同期を備える注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
図7図7は、周波数チャープを用いる位相同期を備える注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下の説明では、同様の部分は明細書及び図面全体を通して同じ参照符号で記される。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の実施形態の細部及び特徴をよりよく示すために、特定の部分の割合は誇張されている。
【0094】
注入同期式レーザシステムの詳細について図1を参照してこれより説明する。特に、図1は、参照符号1で全体的に示される本発明の第1の実施形態による注入同期式レーザシステムの概略図を提示する。
【0095】
注入同期式レーザシステム1は、システム1内のマスタ(又はシード)レーザとして利用される第1のTi:サファイアレーザ2を備えることを見て取ることができる。マスタTi:サファイアレーザ2は、専用連続波ダイオードポンプ式固体状態(DPSS)レーザ源3により532nmにおいて光学的にポンピングされて、連続波出力場4を生成する。本出願人のプロプライエタリなSolsTiS(登録商標)レーザはマスタレーザ2として使用されるTi:サファイアレーザの適した例であり、一方、ポンプレーザ3は市販のダイオードポンプ式固体状態(DPSS)レーザを含み得る。
【0096】
ポンプレーザ3は、マスタTi:サファイアレーザ2に最高で18ワットのポンプ電力を提供する能力を有する。ここで説明されている実施形態では、ポンプレーザ3は、マスタTi:サファイアレーザ2に約6Wのポンプ電力を提供して、780nmにおいて約1Wの電力において調整可能な連続波出力場4(700nm~1000nmで調整可能)を提供するように構成される。この構成を用いる場合、生成される調整可能な連続波出力場4は、単一の横モード及び縦モードとして単一周波数(f)で動作し、低位相ノイズを示す。
【0097】
次に、連続波出力場4は光学変調器5に向けられる。光学変調器5の機能は、連続波出力場4から第1のシード光場6及び第2のシード光場7を生成することである。第1のシード光場6は、
=f+Δf (2)
の周波数を有し、一方、第2のシード光場7は、
=f-Δf (2)
の周波数を有し、式中、fはマスタTi:サファイアレーザ2の動作周波数であり、Δfは光学変調器5により誘発される周波数シフトである。
【0098】
光学変調器5は、1つ又は複数の音響光学変調器(AOM)を含み得る。正シフトした第1のシード光場6及び負シフトした第2のシード光場7は、好ましくは、2つの独立したAOMデバイスにより生成される。しかしながら、代替の実施形態では、光学変調器5は、Δf周波数シフトした第1のシード光場6及び第2のシード光場7を生成するのに利用される1つのAOMを含み得、Δf周波数シフトの符号は、連続波出力場4がAOMに入射する角度に依存する。
【0099】
更なる代替の実施形態では、光学変調器5は、位相変調に準備された電気光学変調器(EOM)を含み得る。EOMは自由空間型EOM又は導波路型EOMの何れかであり得る。この実施形態では、光学変調器5は効果的に、正負の変調周波数において連続波出力場4に側波帯を適用し、第1のシード光場6及び第2のシード光場7として利用されるのはこれらの側波帯である。
【0100】
上述したAOM及びEOMは、光学変調器5が0.1GHz~40GHzの周波数シフトΔfを連続波出力場4に誘発できるようにする。約6GHzの周波数シフトΔfの場合、生成される第1のシード光場6及び第2のシード光場7は通常、約100mWの電力を示す。本出願人により開発された代替の注入同期式レーザシステムは、約0.08GHz、約1.6GHz、約2.4GHz、及び約4.0GHzの周波数シフトΔfを利用した。
【0101】
次に、第1のシード光場6は、注入同期式レーザシステム1の第1の分岐9内に配置された3つの光学増幅器8a、8b、及び8c(スレーブレーザ)に入力される。同様にして、第2のシード光場7は、注入同期式レーザシステム1の第2の分岐10内に配置された3つの光学増幅器8d、8e、及び8f(スレーブレーザ)に入力される。
【0102】
図2(a)は、注入同期式レーザシステム1内で利用される光学増幅器8の概略図を提示する。各光学増幅器8は、専用連続波DPSSレーザ源11により532nmで光学的にポンピングされて、連続波出力場12を生成するTi:サファイアレーザを含む。本出願人のプロプライエタリなSolsTiS(登録商標)レーザはここでも、光学増幅器8(スレーブレーザ)としての使用に適したTi:サファイアレーザの適した例である。ここで説明される実施形態では、ポンプレーザ11は、スレーブTi:サファイアレーザ8に約18Wのポンプ電力を提供するように構成される。
【0103】
3つの光学増幅器8a、8b、及び8c(スレーブレーザ)のキャビティは、第1のシード光場6の周波数(f)、すなわちf+Δfで共振するように構成され、一方、3つの光学増幅器8d、8e、及び8f(スレーブレーザ)のキャビティは、第2のシード光場7の周波数(f)、すなわちf-Δfで共振するように構成される。好ましくは、第1のシード光場6は、3つの光学増幅器8a、8b、及び8cのキャビティとモード整合される。同様にして、第2のシード光場7が3つの光学増幅器8d、8e、及び8fのキャビティとモード整合されることが好ましい。
【0104】
マスタTi:サファイアレーザ2の連続波出力場4の一部は各光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8f(スレーブレーザ)に入力されるため、これは、関連する光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、又は8f(スレーブレーザ)内の「シード」として動作する。この「シード」は、それぞれの第1のシード光場6又は第2のシード光場7と同じ周波数で光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、又は8f(スレーブレーザ)内で誘導放出を生じさせる。
【0105】
したがって、光学増幅器8a、8b、及び8cの出力場12a、12b、及び12cは、第1のシード光場6を増幅したものであり、約7.5Wの電力を有し、第1のシード光場6と高い位相コヒーレンスを示し、すなわち、周波数差は、波形の1サイクルよりも十分に小さい程度まで同相である。同様に、光学増幅器8d、8e、及び8fの出力場12d、12d、及び12fは、ここでも約10Wの電力を有し、第2のシード光場7と高位相コヒーレンスを示し、すなわち、周波数差は波形の1サイクルよりも十分に小さい程度まで同相である、第2のシード光場7を増幅したものである。
【0106】
光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、又は8fは全て共振デバイスであり、先に説明したように、注入同期は、シード場6及び7が各光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、又は8fのキャビティと共振する場合、生じるため、注入同期式レーザシステム1の安定した動作にとって、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、又は8fの共振状況を各シード場6及び7に周波数同期することが有益である。
【0107】
図2(a)に提示される実施形態では、ヘンシュ-クイヨー(Hansch-Couillaud)法に基づく好ましい周波数同期制御ループ13を利用して、所望の周波数同期を達成する。この技法は最初、Optics Communication Volume 35,Issue 3,pages 441 to 444(1980)に記載され、光学増幅器8のTi:サファイア結晶14がブリュースターカット結晶であることを利用する。その結果、共振周波数の2つの直交偏光成分において非対称性を示す。出力場12の成分15は、偏光分析器16に向けられ、次に分散形共振を検出し、分散形共振は、圧電マウントキャビティミラー18を介して電子周波数安定化に向けて電子回路17を同期することにより生成される誤差信号を提供することができる。
【0108】
図2(b)に提示される代替の実施形態では、パウンド-ドレバー-ホール(Pound-Drever-Hall)法に基づく周波数同期制御ループ19を利用して、所望の周波数同期を達成する。この技法はApplied Physics.B,Volume 31,Pages 97 to 105(1983)に記載され、米国特許第5,027,360号明細書内で利用される技法でもある。この技法では、周波数変調器20が周波数変調をシード場6及び7に適用し、フォトダイオード22により出力場12の成分21内で検出される。この周波数変調信号は次に、周波数混合器23により復調されて、誤差信号を生成する。次に、周波数同期電子回路24が、圧電マウントキャビティミラー18を介して電子周波数安定化のための補正信号を提供する。
【0109】
注入同期が達成される前、単方向動作を矯正するいかなる内部要素も含まない光学増幅器8が双方向動作し、出力電力の半分はマスタレーザ2に向けられることが理解されよう。このため、マスタレーザ2と関連する光学増幅器8との間に光学アイソレータ100を利用することが必要である。好ましくは、光学アイソレータ100は-50dB未満の光学分離を提供することが可能である。
【0110】
光学増幅器8の上述した周波数同期技法がそれ自体ではシード場6及び7と出力場12a、12b、12c、12d、12e、及び12fとの間に位相コヒーレンスを提供しないことに留意されたい。その代わり、位相コヒーレンスは、光学増幅器8内の増幅プロセスの直接的な結果である。周波数同期技法は単に、光学増幅器8の共振の周波数がそれぞれのシード場6及び7の周波数と一致したままであることを保証する。
【0111】
第1のシード光場6及び第2のシード光場7がマスタTi:サファイアレーザ2の連続波出力場4から生成されるため、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fの出力場12a、12b、12c、12d、12e、及び12fも互い及び連続波出力場4と高位相コヒーレンスを示すことが理解されよう。
【0112】
ここで説明される注入同期式レーザシステム1の更なる利点は、光学変調器5内で正及び負の周波数シフトを生成するのに1つの周波数源であるマスタTi:サファイアレーザ2を利用することにより、マスタTi:サファイアレーザ2により導入されるいかなるノイズも、注入同期式レーザシステム1の第1の分岐9及び第2の分岐10の両方に共通であることを保証することである。
【0113】
正及び負の周波数シフトの使用は、半分の周波数シフト+Δfを第1のシード光場6に付与し、残り半分の-Δfを第2のシード光場7に付与することにより、2Δfという第1の分岐9の出力場12a、12b、及び12cと第2の分岐10の出力場12d、12d、及び12fとの間の相対周波数オフセットを達成することができることを意味する。大きな周波数シフト2Δfを1つの光場に付与することは、大きな技術的問題を呈する恐れがあるため、これは有利である。
【0114】
図1の実施形態は、光学変調器5により第1のシード光場6及び第2のシード光場7に同じ大きさの周波数シフトが付与されることが提示されるが、これが必ずしも該当する必要はない。代わりに、第1のシード光場6と第2のシード光場7との間の全体周波数オフセット2Δfが維持される限り、異なる大きさのオフセットを第1のシード光場6及び第2のシード光場7に付与し得る。
【0115】
注入同期式レーザシステム1の第1の分岐9及び第2の分岐10内に配置される光学増幅器8の数もまた、ここで説明される実施形態から可変であり得、すなわち、第1の分岐9に1~N個の光学増幅器8があり得、第2の分岐10に1~M個の光学増幅器8があり得ることが理解されよう。代替の実施形態では、注入同期式レーザシステム1の第1の分岐9及び第2の分岐10内に配置される光学増幅器8の数は等しくなくてもよく、すなわち、N≠Mであり得る。
【0116】
図3を参照して、本発明の代替の実施形態による注入同期式レーザシステム25の概略図についてこれより考察する。
【0117】
注入同期式レーザシステム25はここでも、システム25内のマスタ(又はシード)レーザとして利用される、すなわち、専用連続波ダイオードポンプ式固体状態(DPSS)レーザ源3により光学的にポンピングされて、連続波出力場4を生成する第1のTi:サファイアレーザ2を備えることを見て取ることができる。
【0118】
連続波出力場4はここでも、第1のシード光場6及び第2のシード光場7に分割される。第1のシード光場6の一部はここでも、注入同期式レーザシステム25の第1の分岐9内に配置された光学増幅器8a、8b、及び8cのそれぞれに入力される。同様に、第2のシード光場7の一部はここでも、注入同期式レーザシステム25の第2の分岐10内に配置された光学増幅器8d、8e、及び8fのそれぞれに入力される。ここでも、注入同期式レーザシステム25の安定した動作にとって、上述したのと同様に、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、又は8fの共振状況をそれぞれのシード場6及び7に周波数同期することが有利である。
【0119】
図3の注入同期式レーザシステム25は、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fが、独立した所定の周波数シフトΔfを光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fに付与するのに利用される専用光学変調器5a、5b、5c、5d、5e、及び5fを有するという点で図1の注入同期式レーザシステム1と異なり、ここで、Δfは何れの符号も有することができる。図3の注入同期式レーザシステム25の光学変調器5a、5b、5c、5d、5e、及び5fがEOMであることが好ましい。また、光学変調器5a、5b、5c、5d、5e、及び5fが、基準発振器により導入されるいかなるノイズも注入同期式レーザシステム25の光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fのそれぞれに共通するように、共通の基準発振器を共有することも好ましい。
【0120】
ここで説明される実施形態では、周波数シフト+Δf、+Δf、及び+Δfが、注入同期式レーザシステム25の第1の分岐9内に配置された光学増幅器8a、8b、及び8cのそれぞれに注入される第1のシード光場6の一部に誘導される。同様にして、周波数シフト-Δf、-Δf、及び-Δfが、注入同期式レーザシステム25の第2の分岐10内に配置された光学増幅器8d、8e、及び8fのそれぞれに注入される第2のシード光場7の一部に誘導される。
【0121】
しかしながら、光学増幅器8a、8b、及び8cに注入される第1のシード光場6の一部に誘導される周波数シフト及び光学増幅器8d、8e、及び8fに注入される第2のシード光場7の一部に誘導される周波数シフトが、各光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fが全て異なる周波数で共振するように、ここで説明される実施形態と異なり得ることが理解されよう。
【0122】
注入同期式レーザシステム25は、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fのそれぞれに異なる位相シフトを利用する手段を提供し、したがって、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8f内の不要な共振を回避できるようにする。当業者に理解されるように、複数の周波数が変調連続波出力場4(搬送波及び側波帯)内に存在する。光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fのキャビティは、一定間隔の周波数で共振する。したがって、特定の変調周波数では、2つ以上の周波数の共振での不要な一致があり、すなわち、搬送波及び側波帯が両方とも光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fのキャビティと共振し得る。しかしながら、側波帯が光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fの各キャビティと共振することだけが望まれる。上記様式で第1のシード光場6及び第2のシード光場7に付与される周波数シフトを変更することにより、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8f間で同じ周波数オフセットを維持しながら、これらの一致を回避することができる。例えば、第1のシード光場6への周波数シフトは、一致を回避するために増大し得、一方、第2のシード光場7への周波数シフトは同量だけ低減され、それにより、これらの光場間で同じ全体オフセット2Δfを維持する。
【0123】
また、光学増幅器8a、8b、8c、8d、8e、及び8fのそれぞれに異なる位相シフトを利用可能なことにより、これより更に詳細に後述するように、新規の位相同期及び周波数チャープ技法を組み込むことが可能になる。
【0124】
位相同期注入同期式レーザシステム
図4は、光学増幅器8a及び8bのそれぞれに関連する位相同期制御ループ27a及び27bを備える注入同期式レーザシステム26の概略図を提示する。
【0125】
注入同期式レーザシステム26はここでも、システム26内のマスタ(又はシード)レーザとして利用される、すなわち、専用連続波ダイオードポンプ式固体状態(DPSS)レーザ源3により光学的にポンピングされて、連続波出力場4を生成する第1のTi:サファイアレーザ2を備えることを見て取ることができる。
【0126】
連続波出力場4はここでも、第1のシード光場6及び第2のシード光場7に分割される。第1のシード光場6は、注入同期式レーザシステム26の第1の分岐9内に配置された光学増幅器8aに入力されて、第1の出力場12aを生成する。同様に、第2のシード光場7は、注入同期式レーザシステム26の第2の分岐10内に配置された光学増幅器8bに入力されて、第2の出力場12bを生成する。この実施形態では、連続波出力場4の一部が注入同期式レーザシステム26からのシフトされていない第3の光学出力28にも提供されることに留意されたい。
【0127】
ここで説明される実施形態では、周波数シフト+Δfが、専用光学変調器5aの存在に起因して、光学増幅器8aに注入される第1のシード光場6に誘導される。同様にして、周波数シフト-Δfが、専用光学変調器5bの存在に起因して光学増幅器8bに注入される第1のシード光場6に誘導される。
【0128】
ここでも、注入同期式レーザシステム26の安定した動作にとって、上述したのと同様に、光学増幅器8a及び8bの共振状況を各シード場6及び7に周波数同期することが有利である。
【0129】
位相同期制御ループ27aが利用されて、光学増幅器8aのフィードバック信号29aを提供する。第1の出力場12aの一部と連続波出力場4とを結合して、第1の出力場12aと連続波出力場4との間の周波数差Δfにおいて第1の光学ビート信号32aを生成するように構成された3つのビームスプリッタ30及びミラー31を備えることを見て取ることができる。次に、第1の光学ビート信号32aは、第1の高速光検出器34aにより第1の電気ビート信号33aに変換される。位相同期制御ループ27bは、周波数Δfを有する第1の基準信号36aを生成するのに利用される基準発振器35を更に備える。第1の電気ビート信号33a及び第1の基準信号36aは次に、位相同期制御ループ27b内に配置される第1の周波数混合器37aに供給される。第1の周波数混合器37aは、第1の電気ビート信号33a及び第1の基準信号36aをダウンミックスして第1の誤差信号38aを提供するのに利用され、第1の誤差信号38aは、位相同期電子回路39aにより変換されて、第1の電圧制御発振器(VCO)41aの制御信号40aを提供する。次に、VCO41aからの出力信号42aは第1の周波数シンセサイザ43aを通過し、第1の周波数シンセサイザ43aは、VCO41からの出力信号42aを逓倍して、所望のフィードバック信号29aを生成するように構成される。
【0130】
電気ビート信号33aは、注入同期が行われた後に残っている第1のシード光場6と光学増幅器8aとの間の残留位相ノイズについての情報を含む。電気ビート信号33aはまた、第1の出力場12a及び第3の出力場28ビームパス内に導入される位相ノイズについての情報も含む。位相同期制御ループ27aは、この情報を使用して、第1のシード光場6と光学増幅器8aの出力場12aとの間の周波数オフセットΔfを位相同期し、したがって、第1の出力場12a内の位相ノイズを更に抑制するとともに、注入同期式レーザシステム26内の光場4及び6の伝送中、導入されるいかなる追加ノイズも除去する。
【0131】
図4から見て取ることができるように、第2の位相同期制御ループ27bは同様に、第2のシード光場7と光学増幅器8bの出力場12bとの間に周波数オフセットΔfを位相同期して、第2の出力場12b内の位相ノイズを更に抑制するとともに、注入同期式レーザシステム26内の光場4及び7の伝送中、導入されるいかなる追加ノイズも除去するのに利用される。
【0132】
図4の注入同期式レーザシステム26の位相同期メカニズムは、VCO41へのフィードバック提供に基づく。位相同期メカニズムが電圧制御位相シフタ46へのフィードバック提供に基づく注入同期式レーザシステム44及び45について図5及び図6を参照してこれより考察する。
【0133】
これらの実施形態では、第1の誤差信号38aは、図4の注入同期式レーザシステム26を参照して上述したのと同様に生成される。しかしながら、第1の誤差信号38aは、第1の電圧制御位相シフタ46aの制御信号40aを生成するのに利用される。第1の電圧制御位相シフタ46aにはまた、第1の固定周波数発振器48aにより生成された入力信号47aも提供される。
【0134】
図5の注入同期式レーザシステム44では、第1の電圧制御位相シフタ46aからの出力信号49aは次に、第1の周波数シンセサイザ43aを通過し、第1の周波数シンセサイザ43aは、第1の電圧制御位相シフタ46aからの出力信号49aを逓倍して、所望のフィードバック信号29aを生成するように構成される。
【0135】
図6の注入同期式レーザシステム45は、周波数シンセサイザ43の位置のみが図5内に提示されるものと異なる。特に、注入同期式レーザシステム45内で、周波数シンセサイザ43は、注入同期式レーザシステム44の場合と同様に第1の電圧制御位相シフタ46からの出力信号49の代わりに、電圧制御位相シフタ46への入力信号47を逓倍するように構成される。したがって、図5の注入同期式レーザシステム44は低周波数(約100MHz)電圧制御位相シフタ46との併用に適し、一方、図6の注入同期式レーザシステム45はマイクロ波電圧制御位相シフタ46との併用に適する。
【0136】
注入同期式レーザシステム26、44、及び45では、光場12の位相がマスタレーザ2の連続波出力場4に相対して位相変動する場合、フィードバック信号29は、相対位相におけるこれらの変動を自動的に補償するよう光学変調器5により導入される周波数オフセットΔfを変更するように動作する。これには、注入同期式レーザシステム26、44、及び45の出力場間の位相コヒーレンスを更に増大させるという効果がある。
【0137】
上述した注入同期式レーザシステム26、44、及び45の更なる利点は、注入同期及び位相同期への結合効果の結果である。注入同期は、純粋に能動的に制御されるシステムにより張り合うことができない高周波数への高度の位相コヒーレンスを保証する。追加の位相同期は、注入同期から残り得るか、又はシステムからの伝送において導入され得る、特に低周波数における相対位相ノイズを更に「クリーンアップ」する手段を提供する。
【0138】
光学ビート信号32が生成される場所が、マスタレーザ2及び光学増幅器8の近くに配置される必要がないことに留意されたい。代替の実施形態では、光学ビート信号32が生成される場所は、マスタレーザ2及び光学増幅器8からリモートであり得、例えば、記載される注入同期式レーザシステム26、44、及び45により生成された光場が利用されることが意図される場所であり得る。
【0139】
周波数チャープを用いる位相同期
上述した注入同期式レーザシステム26、44、及び45は、マスタレーザ2により生成される連続波出力場4と光学増幅器8により生成される出力場12との間の周波数オフセットΔfをチャープする手段、すなわち、一定の周波数変化を連続波出力場4と出力場12との間に同じ時間期間にわたり付与する手段を提供するように構成し得る。そのような注入同期式レーザシステム50の概略図を図7に提示する。
【0140】
注入同期式レーザシステム50は、図4を参照して先に提示したものと同様である。理解を容易にすることのみを目的として、今回、第1の分岐9が提示されている。図7の注入同期式レーザシステム50と図4に提示されるものとの主な違いは、注入同期式レーザシステム50が、光学変調器5のフィードバック信号29を生成するソースとして、1つのVCO41ではなく複合発振器51を利用することである。
【0141】
複合発振器51は、VCO41及びダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)52から形成される。この実施形態では、第1の周波数混合器37aが利用されて、通常GHz領域における周波数fで動作する基準発振器35により生成される第1の基準信号36aと電気ビート信号33をダウンミックスして、周波数fを有する中間信号53を生成する。次に、第2の周波数混合器37bが利用されて、通常10MHz~100MHz領域における周波数fで動作するDDS 52により生成される第2の基準信号54と中間信号53をダウンミックスして、誤差信号38を提供し、誤差信号38は、位相同期電子回路39により変換されて、VCO41の制御信号40を提供する。第3の周波数混合器37cが利用されて、VCO41からの出力信号42をDDS 52により生成される出力信号55と結合して、所望のフィードバック信号29を生成する。
【0142】
複合発振器51には、低ノイズを示すとともに、通常、数GHzのオーダである第1の基準信号36aの周波数前後を機敏に動くという利点がある。DDS 52を利用して第2の基準出力信号55(通常、MHzのオーダ)を生成することは、DDS 52を利用して、周波数チャープを出力信号55に適用する手段を提供する。当業者には理解されるように、そのような周波数チャープが出力信号55に適用される場合、対応するチャープは第3の周波数混合器37cの周波数混合プロセスに適用されて、チャープが光学増幅器8と第1のシード場6との間の周波数オフセットΔfに適用されることになる。同期される第1のシード場6が注入される光学増幅器8はこのチャープに従い、連続波出力場4、ひいては出力場28に対して出力場12の周波数をチャープさせる。
【0143】
図7は、連続波出力場4に位相同期された出力場12を有する、マスタレーザ2により注入同期される1つの光学増幅器8を提示する。このシステムが、複数の光学増幅器8がマスタレーザ2に注入同期及び位相同期される上述したシステムに拡張可能なことが理解されよう。
【0144】
図7に提示される実施形態では、DDS 52は、複合発振器51の第2の基準信号54のソース及び第3の周波数混合器37cの出力信号55のソースとして利用される。独立したDDSがこれらの2つの信号のソースとして等しく利用可能なことが理解されよう。
【0145】
図7の実施形態はまた、fで動作しているVCOであるものとして基準発振器35を示している。この基準発振器は、はるかに低い周波数で動作し、次に周波数シンセサイザによりfに逓倍されるVCOを等しく含み得る。
【0146】
周波数チャープ機能を用いた位相同期の上述した技法について、電圧制御発振器(VCO)41に基づく上記システムを参照して説明した。しかしながら、代替の実施形態では、この技法が、フィードバックが固定周波数発振器48により供給される電圧制御位相シフタ46へのものであるシステムに等しく適用可能なことが当業者には理解されよう。
【0147】
上述した注入同期式レーザシステムは、2つ以上の光学増幅器(スレーブレーザ)を同時に注入同期する単一連続波単一マスタレーザを提供し、したがって、互い及びマスタレーザ自体の出力との高い位相コヒーレンスを示す複数の出力場を生成する。
【0148】
1つ又は複数の周波数2逓倍ステージを注入同期式レーザシステム1、26、44、及び45内に組み込んで、システムの動作周波数を上げ得ることが当業者には理解されよう。これらの周波数2逓倍ステージは外部に、すなわち、出力場12及び28の1つ又は複数内に配置することができる。周波数2逓倍ステージが出力場12及び28内に配置される場合、光検出器34へのピックオフは、周波数2逓倍ステージ前又は後の何れであってもよく、すなわち基本光又第2高調波光を使用するものであってよい。後者の構成の利点は、位相同期27制御ループ27がまた、周波数2逓倍ステージにより又は周波数2逓倍ステージからの伝送において導入されるいかなる位相変動も補正することである。
【0149】
単一光学変調器内での正及び負の周波数シフトの生成に単一周波数マスタレーザを利用することにはまた、マスタレーザにより導入されるいかなるノイズも注入同期式レーザシステムの全てのスレーブレーザの出力に共通することを保証するという利点もある。正及び負の周波数シフトの使用はまた、周波数シフトの半分+Δfを第1の組の光学増幅器に付与し、残り半分-Δfを第2の組の光学増幅器に付与することにより、2Δfの出力場間の相対周波数オフセットを達成することができることも意味する。これは、大きな周波数シフト2Δfを単一光場に付与することは大きな技術的問題を呈する恐れがあるため、有利である。
【0150】
注入同期式レーザシステムはまた、異なる大きさのオフセットを第1及び第2の組の光学増幅器に誘導する手段も提供する。この制御の増大により、光学増幅器の出力間に同じ全体周波数オフセットを維持しながら、光学増幅器のキャビティ内の問題のある同時発生する光学共振を回避することができる。
【0151】
幾つかの位相同期注入同期式レーザシステムも開示されている。これらのシステムには、当技術分野で既知のシステムと比較して出力場間の位相コヒーレンスが上がるという利点がある。加えて、位相同期注入同期式レーザシステムはまた、光学増幅器の出力場の周波数へのチャープをマスタレーザの連続波出力場に相対して導入できるようにもする。
【0152】
複数の光学増幅器を注入同期する方法及びシステムが開示される。マスタレーザは、連続波出力場の生成に利用される。次に、光学変調器は、連続波出力場から第1及び第2のシード光場を生成する。第1及び第2のシード光場は、任意選択的に異なる動作周波数に1つ又は複数の光学増幅器を注入同期する入力を提供する。第1及び第2のシード光場は連続波出力場から生成されるため、光学増幅器の出力場は、互い及び連続波出力場と高い位相コヒーレンスを示す。第1及び第2の光場の利用により、大きな周波数シフトを1つの光場に誘導する必要性が下がる。注入同期式レーザシステムの出力を位相同期する技法はまた、システム内の位相ノイズの更なる低減も提供する。
【0153】
本明細書全体を通して、状況により別段のことが要求される場合を除き、「備える」若しくは「含む」という用語又は「備えた」、「備えている」、「含んだ」、若しくは「含んでいる」等の変形は、記載された完全体又は完全体の群の包含を暗示するが、いかなる他の完全体又は完全体の群の除外も暗示しないことが理解される。
【0154】
更に、説明におけるいかなる従来技術の参照も、その従来技術が共通の一般知識の一部をなすことの指示として解釈されるべきではない。
【0155】
本発明の上記説明は、例示及び説明を目的として提示されており、網羅的である、すなわち、開示された厳密な形態に本発明を限定する意図はない。説明された実施形態は、本発明の原理及び本発明の実際用途を最良に説明し、それにより、当業者が意図される特定の用途に適するよう本発明を種々の実施形態で種々の変更を行って最良に利用できるようにするために選ばれ説明された。したがって、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱せずに、更なる変更又は改善も組み込まれ得る。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6
図7