(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】用量カウント機構を有する薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20230824BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20230824BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/20 500
A61M5/20 510
A61M5/315 550X
A61M5/31 520
(21)【出願番号】P 2020550069
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019057261
(87)【国際公開番号】W WO2019180214
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン, ニコライ ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクス, クラウス
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/201586(WO,A1)
【文献】特表2015-521511(JP,A)
【文献】特表2015-511847(JP,A)
【文献】特表2005-514120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の
回数の用量排出
動作を行う薬剤送達装置(10)であって、前記薬剤送達装置(10)が、
-軸に沿って延在し、用量排出機構を収容するハウジング(11)と、
-前記用量排出機構と動作可能に連結され、かつ各用量排出
動作の間に、前記ハウジング(11)に対する既定の運動を受けて、用量を排出することを可能にするように構成された往復要素(14)であって、前記既定の運動が、第1の位置から第2の位置への第1の軸方向の変位、続いて前記第2の位置から前記第1の位置への第2の軸方向の変位を含む、往復要素(14)と、
-前記ハウジング(11)に対して前記第1の軸方向に移動可能なカウンター要素(16)と、
-前記第1の軸方向の運動を阻止し、かつ前記カウンター要素(16)に対する前記往復要素(14)の前記第2の軸方向の運動を可能にするように構成された第1の一方向性ラチェット機構と、
-前記第1の軸方向の運動を可能にし、かつ前記ハウジング(11)に対する前記カウンター要素(16)の前記第2の軸方向の運動を阻止するように構成された第2の一方向性ラチェット機構と、を備える、薬剤送達装置(10)。
【請求項2】
前記ハウジング(11)に対して軸方向および回転方向に固定された基部部材(15)をさらに備え、前記第1の一方向性ラチェット機構が、前記往復要素(14)および前記カウンター要素(16)のうちの一方の上にある第1の軸方向の待歯(14t)と、前記往復要素(14)および前記カウンター要素(16)のうちのもう一方の上にある歯止め部材(16h)と、を備え、前記第2の一方向性ラチェット機構が、前記カウンター要素(16)および前記基部部材(15)のうちの一方の上にある第2の軸方向の待歯(15t)と、前記カウンター要素(16)および前記基部部材(15)のうちのもう一方の上にある歯止め部材(16f)と、を含む、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記カウンター要素(16)が、前記所定の
回数の用量排出
動作に対応するいくつかの工程の中で、使用前位置から内容量終了位置まで前記ハウジング(11)に対する前記第1の軸方向の運動を受け、かつ前記内容量終了位置に到達することに応答して、前記基部部材(15)との軸方向の相互係止係合に入り、それによって、前記ハウジング(11)に対する前記第1の軸方向のさらなる運動を阻止するように構成されている、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記ハウジング(11)の軸方向延在部に配置された薬剤貯蔵部ホルダー(30)をさらに備え、前記用量排出機構が、前記往復要素(14)を付勢力に対して前記第1の軸方向に変位させるように、前記薬剤貯蔵部ホルダー(30)の遠位端部分から動作可能な起動構造(7、12、13)を備える、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記薬剤貯蔵部ホルダー(30)が、前記遠位端部分で針モジュール(40)を受容し、かつ前記針モジュール(40)の軸方向に移動可能な部分と前記起動構造(7、12、13)との動作可能な連結を提供するように構成された受容手段(31、32)を備える、請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記針モジュール(40)の前記軸方向に移動可能な部分が、皮膚挿入可能な前方針(43)を選択的に被覆したり、露出させるように適合された針シールド(45)であり、受容した針モジュール(40)の前記針シールド(45)が、前記皮膚挿入可能な前方針(43)の露出に応答して、前記往復要素(14)を前記第1の軸方向に変位させるように構成されている、請求項5に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記ハウジング(11)に対する装填部材(20)の遠位の運動に応答して、前記薬剤送達装置から送達される用量を調製するように構成された用量調製構造(5、13、15、17、20)と、前記薬剤貯蔵部ホルダー(30)のための保護キャップ(60)と、をさらに備え、前記保護キャップ(60)が、前記薬剤貯蔵部ホルダー(30)を被覆しているときに、前記用量調製構造(5、13、15、17、20)と動作可能に連結され、かつカートリッジホルダー(30)から取り外されることに応答して、前記ハウジング(11)に対して遠位に前記装填部材(20)を移動させるように構成されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記用量排出機構が、ねじりばね部材(5)によって動力供給され、前記用量調製構造(5、13、15、17、20)が、前記ねじりばね部材(5)を緊張させるためのばね緊張機構を備え、かつ前記ハウジング(11)に対する前記装填部材(20)の遠位の運動を、前記ハウジング(11)に対するばね緊張部材(17)の回転に変換するように構成されており、前記カウンター要素(16)が、前記ハウジング(11)に対して回転方向に固定され、かつ前記内容量終了位置に到達することに応答して、前記ばね緊張部材(17)との回転方向の相互係止係合に入り、それによって、前記ハウジング(11)に対する前記装填部材(20)の遠位の運動を阻止するように構成されている、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、薬剤送達装置に関し、より具体的には、残用量表示手段を有する固定用量送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を自己投与する人々のために、薬剤が充填されたバイアル、針付きシリンジ、およびアルコールスワブを含むキットを使用することが慣例となっている。一部の疾患領域内および一部の国では、かかるキットは、ペン型注入装置にますます置き換えられている。ペン型注入装置は、ユーザーが、特定の用量をある貯蔵部(バイアル)から別の貯蔵部(シリンジ)へと最初に手動で移送する必要なしに、予め充填された薬剤貯蔵部からの服用された注入を実施することを可能にするという点で、特に便利である。
【0003】
主に、2つのタイプのペン型注入装置が利用できる。耐久性のある注入装置は、使用前に装置の中へと装填し、かつ使い果たした後に交換することができる、予め充填された薬剤カートリッジから1回以上の用量の薬剤を送達できる。また、使い捨て注入装置は、予め充填された非交換式の薬剤カートリッジから薬剤の1回以上の用量を送達することができる。これらのタイプのペン型注入装置の各々は、例えば、薬剤カートリッジから一回の用量のみを送達するように適合されたシングルショット装置、薬剤カートリッジから複数の用量を送達できるマルチショット装置、ユーザーが注入に必要な力を提供する手動装置、注入の機会に解放可能な組み込みエネルギー源を有する自動装置、所定の用量の薬剤を送達するように適合された固定用量装置、ユーザーが設定可能な様々な用量の薬剤の送達を提供する可変用量装置などのような様々なサブタイプで実現されるか、または原理として実現され得る。
【0004】
ラベルは、耐久性のある注入装置が、複数の薬剤カートリッジが使い果たされおよび交換される相当な期間にわたって使用することを意図しており、一方で、使い捨て注入装置が、その専用薬剤カートリッジが使い果たされるまで使用することが意図されており、その後、注入装置全体が廃棄されることを提案する。
【0005】
マルチショット装置は、固定用量タイプまたは可変用量タイプであり得、そのような装置の薬剤排出機構は機械的であり、すなわち、手動装置またはばね駆動装置のように、ピストンロッドの運動が機械的に制御される、または電気的であり、すなわち、電気モーター駆動装置のように、ピストンロッドの運動が電子的に制御される。
【0006】
マルチショット装置は、理想的には、ユーザーが用量排出行為を実施するが、期待される用量が薬剤貯蔵部内の残用量を超えているため、期待される全用量を受容しないという潜在的に危険な状況を阻止するための内容量終了表示を備える必要がある。かかる内容量終了表示により、装置構造の複雑さおよびコストが増える傾向がある。
【0007】
WO01/19434(Novo Nordisk A/S)は、種々のタイプの注入装置で使用するための、かかる内容量終了表示機構の実施例を開示しており、内容量終了表示は、それぞれの装置の構成要素間の相対的な回転運動によって得られる。しかしながら、これらの解決策は、すべてのタイプのマルチショット装置にとって魅力的ではない。
【発明の概要】
【0008】
先行技術の少なくとも1つの欠点を除去するかもしくは減少させること、または先行技術の解決策に対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
特に、本発明の目的は、単純かつコスト効率の高い内容量終了表示手段を有するマルチショット薬剤送達装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、マルチショット送達装置の固定用量タイプによって排出される用量の数および/または注入用にまだ利用可能な用量の数を追跡し続けるための単純かつ信頼性のあるカウント機構を提供することである。
【0011】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
【0012】
本発明の原理を具現化する薬剤送達装置は、所定の回数の用量排出動作を行うように構成されていて、用量排出機構を収容するハウジングと、各用量排出動作の間に、ハウジングに対する既定の運動を受けて、用量を排出するように構成された起動手段であって、既定の運動が、第1の位置から第2の位置へ、そして第1の位置に戻る変位を含む、起動手段と、起動手段と動作可能に連結され、かつ起動手段が既定の運動を受けることに応答して、状態を変化させるように構成されたカウント手段と、を備える。
【0013】
それによって、起動手段が用量排出動作に関連して変位した場合およびその場合にのみ、カウント手段が状態を変化させるときに、薬剤送達装置によって排出された用量の回数を追跡し続ける単純な方法が提供される。例えば、カウント手段が電子トランスデューサーを含む場合、このトランスデューサーは、実施された用量排出動作の累積回数などの、薬剤送達装置の使用に関する状態を視覚的に表すように構成された電子ディスプレイと動作可能に連結することができる。
【0014】
機械的な変形例では、カウント手段は、例えば、第1の位置から第2の位置への起動手段の変位に応答して、ハウジングに対してカウント順方向に移動し、かつ第2の位置から第1の位置への起動手段の変位に応答して、静止したままになるように構成され得る。かかる移動パターンは、起動手段とカウント手段との間で作用する第1の一方向性ラチェット機構、ならびにカウント手段とハウジング、またはハウジングに対して固定された構成要素との間で作用する第2の一方向性ラチェット機構の組み合わせによって実現することができ、第1の一方向性ラチェット機構は、カウント手段に対する起動手段のカウント順方向への運動を阻止し、第2の一方向性ラチェット機構は、ハウジングに対するカウント手段の、カウント順方向とは反対の方向への運動を阻止する。
【0015】
薬剤送達装置は、カウント手段および起動手段と動作可能に連結され、かつカウント手段が所定の回数の用量排出動作に対応して複数回数、状態を変化させたことに応答して起動されるように構成されている、内容量終了表示をさらに備え得る。
【0016】
内容量終了表示手段の起動は、所定の回数の用量排出動作が行われたという合図をユーザーに提供し、薬剤送達装置を廃棄する必要があることを示す。この合図は、例えば、電子ディスプレイ上の表示などの電子的なものであっても、機械的なものであってもよい。
【0017】
内容量終了表示手段は、ロックアウト手段を含むことができ、ロックアウト手段は、カウント手段および起動手段と動作可能に連結され、カウント手段が所定の回数の用量排出動作に対応して複数回数、状態を変化させた場合、これに応答してロックがかかり、第1の位置から第2の位置への起動手段の変位を阻止するように構成されている。
【0018】
第1の位置から第2の位置への起動手段の変位は、用量排出動作の開始の必要条件であるため、カウント手段が上記複数回数、状態を変化させ、かつロックアウト手段が有効であると、用量排出動作を開始することはできない。したがって、所定の回数の用量排出行為が実施された後で、薬剤送達装置を用いてさらなる用量排出行為を実行するいずれの試みもうまくいかないことが保証される。
【0019】
薬剤送達装置は、例えば、電子的に監視、制御、もしくは駆動され得るか、または電子構成要素を含まない純粋な機械装置であってもよい。
【0020】
本発明の1つの態様では、請求項1に記載の薬剤送達装置が提供される。
【0021】
すなわち、所定の回数の用量排出動作を実行するための薬剤送達装置が提供される。例えば、薬剤注入装置、薬剤輸液装置、薬剤吸入装置などであり得る薬剤送達装置は、軸に沿って延在し、用量排出機構を収容するハウジングと、用量排出機構と動作可能に連結され、かつ各用量排出行為の間に、ハウジングに対する既定の運動を受けて、用量を排出することを可能にするように構成された往復要素の形態の起動手段と、を備える。起動手段の既定の運動は、第1の位置から第2の位置への第1の軸方向の変位、続いて第2の位置から第1の位置への、第1の軸方向とは反対の第2の軸方向の変位を含む。薬剤送達装置は、ハウジングに対して第1の軸方向に移動可能なカウンター要素の形態のカウント手段と、第1の軸方向への運動を阻止しながら、カウンター要素に対する往復要素の第2の軸方向への運動を可能にする第1の一方向性ラチェット機構と、第1の軸方向への運動を可能にしながら、ハウジングに対するカウンター要素の第2の軸方向への運動を阻止する第2の一方向性ラチェット機構と、をさらに備える。
【0022】
したがって、用量排出動作ごとに、カウンター要素は、第1の位置から第2の位置への往復要素の変位の間に、往復要素によって第1の軸方向に従属制御され、第2の位置から第1の位置に戻るまでの往復要素の次の変位の間に、往復要素を部分的に通過している。それによって、カウンター要素は、用量排出動作が実行されるとき、すなわち、用量排出動作ごとに、第1の軸方向に沿って漸増的にゆっくり進み、カウンター要素は、ハウジングに対する漸増変位を受け、かかる漸増変位の数は、用量排出動作の回数に対応する。
【0023】
したがって、ハウジングに対するカウンター要素の位置は、薬剤送達装置が現在実行中の用量排出動作の回数を示し、それに応じて、利用可能な用量排出動作の回数は、所定の回数の用量排出動作から現在実行中の用量排出動作の回数を引いたものとして導き出される。薬剤送達装置が、薬剤送達装置上でのまたはそれによる1つ以上の活動を監視するための電子機器をさらに備える場合、かかる電子機器は、用量排出動作を登録するため、ならびに現在実行中の用量排出動作の回数、および潜在的には利用可能な用量排出動作の回数をカウントし続けるための手段を備え得る。電子機器は、この情報の少なくとも一部を提示するためのディスプレイをさらに備え得る。薬剤送達装置が純粋な機械装置である場合、ハウジングは、カウンター要素の位置の目視検査を可能にする窓を備え得る。追加的に、等級付けスケールを配置して、例えば、カウンター要素の漸増変位の数の読み取りを提供することができる。
【0024】
薬剤送達装置は、ハウジングに対して軸方向および回転方向に固定されている基部部材をさらに備え得る。第1の一方向性ラチェット機構は、往復要素およびカウンター要素のうちの一方の上にある第1の軸方向の待歯と、往復要素およびカウンター要素のうちのもう一方の上にある歯止めと、を備えることができ、第2の一方向性ラチェット機構は、カウンター要素および基部部材のうちの一方の上にある第2の軸方向の待歯と、カウンター要素および基部部材のうちのもう一方の上にある歯止め部材と、を備えることができる。
【0025】
カウンター要素は、所定の数の用量排出動作に対応するいくつかの工程の中で、第1の用量排出動作の前にとっていた使用前位置から内容量終了位置まで、ハウジングに対する第1の軸方向への運動を受けるように構成され得る。内容量終了位置に到達すると、カウンター要素は、基部部材との軸方向の相互係止係合に入り、ハウジングに対する第1の軸方向へのさらなる運動を阻止するようになり得る。これは、第1の位置から第2の位置への往復要素のさらなる移動を機械的にブロックし、それによって、さらなる用量排出動作の開始を阻止し、新しい薬剤送達装置が必要であることをユーザーに合図する。
【0026】
薬剤送達装置は、ハウジングの軸方向延在部に配置された薬剤貯蔵部ホルダーをさらに備えることができ、用量排出機構は、往復要素を付勢力に対して第1の軸方向に変位させるように、薬剤貯蔵部ホルダーの遠位端部分から動作可能な起動構造を備え得る。それによって、薬剤送達装置の遠位端から用量排出機構を起動することが可能となる。
【0027】
薬剤貯蔵部ホルダーは、遠位端部分で針モジュールを受容し、かつ針モジュールの軸方向に移動可能な部分と起動構造との動作可能な連結を提供するための受容手段を備え得る。針モジュールは、皮膚挿入可能な前方針を搬送し、1つ以上の薬剤貯蔵部への流体接続を確立するための手段を有する針ハブを収納する針基部を備え得る。針基部は、その軸方向延在部における薬剤貯蔵部ホルダーへの取り付けのために適合され得、針モジュールの軸方向に移動可能な部分は、前方針が被覆される第1のシールド位置と、前方針が周囲に曝露される第2のシールド位置との間で針に対して軸方向に移動可能な針シールドを備え得る。
【0028】
針シールドは、皮膚挿入可能な前方針が露出されるのに応答して、すなわち、第1のシールド位置から第2のシールド位置へと移動するときに、往復要素を第1の軸方向に変位させるように構成され得る。これは、針シールドによってトリガーされる用量排出機構を提供し、かつそれによって、ユーザーが皮膚に対して針シールドを留置し、薬剤送達装置を皮膚に向かって押して用量排出動作を実行するだけでよい単純な使用パターンを提供する。
【0029】
薬剤送達装置は、ハウジングに対する装填部材の遠位の運動に応答して、薬剤送達装置から送達される用量を調製するように構成された用量調製構造と、薬剤貯蔵部ホルダーのための保護キャップと、をさらに備えることができ、保護キャップは、薬剤貯蔵部ホルダーを被覆しているときに、用量調製構造と動作可能に連結され、かつカートリッジホルダーから取り外されることに応答して、ハウジングに対して遠位に装填部材を移動させるように構成されている。それによって、自動用量調製動作が薬剤送達装置に組み込まれ、それにより、保護キャップを薬剤貯蔵部ホルダーから取り外すだけで、ある用量の薬剤を排出するための薬剤送達装置の準備が整う。用量排出動作を実行することができるように、ユーザーによるさらなる調製工程は必要ない。
【0030】
用量排出機構は、ねじりばね部材によって動力供給することができ、用量調製構造は、ねじりばね部材を緊張させるためのばね緊張機構を備え得る。したがって、用量調製構造は、ハウジングに対する装填部材の遠位の運動を、ハウジングに対するばね緊張部材の回転に変換するように構成され得る。ばね緊張機構は、ねじりばね部材を緊張状態で保持するための保持構造を備えることができ、保持機構は、用量排出機構の起動時に、ある用量を薬剤送達装置から排出させるのに十分なエネルギーを貯蔵する。
【0031】
カウンター要素は、内容量終了位置に到達することに応答して、ばね緊張部材との回転方向の相互係止係合に入るように構成され得る。それによって、ばね緊張部材がハウジングに対して回転することが阻止されるため、ハウジングに対する装填部材の遠位の運動は阻止される。その結果、保護キャップと装填部材との間の特定の係合インターフェースに応じて、保護キャップは、薬剤貯蔵部ホルダーに密着されるか、または薬剤貯蔵部ホルダーからの取り外しがより困難で、薬剤送達装置からさらなる用量を利用できないという明確な合図をユーザーに提供するであろう。
【0032】
本明細書で使用される場合、「遠位」および「近位」という用語は、薬剤送達装置に沿った位置または方向を示し、「遠位」は薬剤出口端を指し、また「近位」は薬剤出口端の反対側の端を指す。
【0033】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または、特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態であるわけでもそれらに含まれるわけでもないことを、表明する。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されていない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
【0034】
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図したものであり、別段の特許請求がされていない限り、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、本明細書中のいずれの言語または言い回しも、特許請求されていないいずれかの要素が本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
【0035】
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による用量カウント機構の作業原理を例示している。
【
図2】
図2は、2つの異なる状態における、用量カウント機構を採用した例示的な薬剤送達装置の長手方向断面図を示している。
【
図3】
図3は、初期の使用前状態での薬剤送達装置の近位部分の2つの異なる長手方向断面図を示している。
【
図4】
図4は、薬剤送達装置からの第1の用量送達の開始時の、
図3と同様の断面図を示している。
【
図5】
図5は、第1の用量の送達および皮膚からの薬剤送達装置の除去後の、
図3と同様の断面図を示している。
【
図6】
図6は、薬剤送達装置によって提供された最後の用量の送達後の、
図3と同様の断面図を示している。
【
図7】
図7は、薬剤送達装置内の用量カウント機構の構成要素の内容量終了位置の上面斜視図である。
【0037】
図面において、同様の構造は、主として同様の参照番号で識別される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下において、「上向き」および「下向き」ならびに「左」および「右」などの相対的表現が使用される場合、これらは、添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を示すものではない。図示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成および相対的寸法は例示的な目的のみを果たすことを意図している。
【0039】
図1a~dは、使用期間の開始から終了までの異なる状態で3つの相互作用する構成要素の側面図を通して、本発明の実施形態による薬剤送達装置の用量カウント機構の原理を例示している。
【0040】
第1の構成要素1は、長手方向軸に沿って延在しており、遠位歯1.1から近位歯1.5まで軸方向に延在する第1の歯列を備える。この特定の歯列は、遠位歯1.1と近位歯1.5との間に配置された第2の歯1.2、第3の歯1.3、および第4の歯1.4を有し、すなわち、合計5つの歯からなる。
【0041】
第2の構成要素2は、第1の構成要素1の外部に配置され、一対の半径方向に対向するアーム2.1を備え、各アーム2.1は、半径方向に撓み可能であり、右に向かって延在し、フック2.2で終了する。第2の構成要素2は、左に向かって延在する半径方向に撓み可能な脚部2.3をさらに備える。脚部2.3は、足部2.4で終了し、これは、
図1aでは遠位歯1.1上に置かれている。これは、用量カウント機構の初期状態を構成する。薬剤送達装置の文脈において、遠位歯1.1は第2の構成要素2を最初に把持することを専用とするため、足部2.4が移動し得る第1の歯列の残りの歯の数は4つであり、ひいては、ユーザーに提供される用量の総数は4つである。これについては、以下でさらに詳細に説明する。
【0042】
第1の歯列の5つの歯は、均一に形状決めされており、各々は、直立した横断方向の右歯面および傾斜した左歯面を有し、足部2.4は、対応する直立した横断方向の左歯面および傾斜した右歯面を有する。それによって、第1の歯列および脚部2.3は一緒になって、第1の一方向性ラチェット機構を構成し、第1の一方向性ラチェット機構は、第1の構成要素1に対する第2の構成要素2の右への移動を可能にするが、第1の構成要素1に対する第2の構成要素2の左への移動を制限する。
【0043】
第3の構成要素3は、第1の構成要素1の外部に配置されており、2つの平行な第2の歯列を備え、各々は、遠位歯3.1から近位歯3.5まで軸方向に延在する。各第2の歯列については、第1の構成要素1の第1の歯列と同様に、第2の歯3.2、第3の歯3.3、および第4の歯3.4が遠位歯3.1と近位歯3.5との間に配置されている。2つのフック2.2は、2つの第2の歯列と同期して相互作用するように適合されている。しかしながら、以下では、フック2.2のうちの1つと第2の歯列のうちの1つとの間の相互作用のみが説明される。
【0044】
第2の歯列の5つの歯は、均一に形状決めされており、各々は、直立した横断方向の右歯面および傾斜した左歯面を有し、フック2.2は、対応する直立した横断方向の左歯面および傾斜した右歯面を有する。それによって、第2の歯列およびアーム2.1は一緒になって、第2の一方向性ラチェット機構を構成し、第2の一方向性ラチェット機構は、第2の構成要素2に対する第3の構成要素3の左への移動を可能にするが、第2の構成要素2に対する第3の構成要素3の右への移動を制限する。
【0045】
用量カウント機構の初期状態では、
図1aに示されるように、フック2.2は遠位歯3.1に係合する。第3の構成要素3は、第1の構成要素1に対して往復運動を実施するように構成されている。一回の用量送達行為の過程において、第3の構成要素3は、一度前後に移動する。これは、ある用量の薬剤が排出されるごとに、第3の構成要素3が第1の構成要素1に対して開始位置から中間位置へ、そして開始位置へと戻って移動したことを意味する。
図1a~1cは、かかる用量排出の間に伴われる相対的な移動を例示しており、第3の構成要素3は、
図1bでは、開始位置から中間位置まで右に移動し、
図1cでは、中間位置から開始位置へと戻って左に移動している。
【0046】
第3の構成要素3が開始位置から中間位置まで移動する間、第2の歯列の遠位歯3.1は、フック2.2に力を加え、結果として第2の構成要素2を右に従属制御する。それによって、足部2.4は、第1の歯列の第2の歯1.2の傾斜した左歯面に沿って摺動し、第1の歯列の第2の歯1.2を通過する。中間位置から開始位置に戻る第3の構成要素3の後続の移動の間に、足部2.4は、第1の歯列の第2の歯1.2の横断方向の右歯面に対して置かれ、第1の構成要素1に対する第2の構成要素2の左への移動を阻止し、これにより、第2の歯列の第2の歯3.2をフック2.2の傾斜した右歯面に沿って摺動させ、フック2.2を通過する。
【0047】
第1の用量排出行為に続き、それに伴って、第2の構成要素2は、第1の構成要素1に沿って、第1の歯列の遠位歯1.1の横断方向の右歯面と第1の歯列の第2の歯1.2の横断方向の右歯面との間の距離に対応する距離だけ漸増的に変位している。特に、第2の構成要素2は、第3の構成要素3に沿って同じ距離だけ漸増的に変位している。
【0048】
ここで、足部2.4が第1の歯列の第2の歯1.2上に置かれ、フック2.2が第2の歯列の第2の歯3.2と係合している状態(
図1c)で、上述と同様の様式で、次の用量送達行為により、足部2.4が第1の歯列の第3の歯1.3を通過し、フック2.2が第2の歯列の第3の歯3.3を通過することを可能にする。
【0049】
第2の用量排出行為に続き、それに伴って、足部2.4が第1の歯列の第3の歯1.3の横断方向の右歯面上に置かれ、フック2.2が第2の歯列の第3の歯3.3の横断方向右歯面と係合する。この移動パターンは、最後の用量が排出されるまで継続され、その時点では、足部2.4が第1の歯列の近位歯1.5の横断方向の右歯面上に置かれ、フック2.2が第2の歯列の近位歯3.5の横断方向の右歯面と係合する。本実施例では、これは、薬剤送達装置から排出可能な4つの用量に対応する。
【0050】
図2aは、上述のタイプの用量カウント機構を採用した固定用量注入装置10の長手方向断面図である。注入装置10は、長手方向軸に沿って延在するハウジング11と、その軸方向延在部にあるカートリッジホルダー30と、を備える。カートリッジホルダー30は、第1の物質を把持する第1のカートリッジ35(
図2b参照)と、第2の物質を把持する第2のカートリッジ(不可視)とを収容する。
【0051】
針モジュール40は、カートリッジホルダー30の遠位端に取り付けられている。それは、カートリッジホルダー30のカラー部分に係合する針基部41と、前方針43および2つの後方針(不可視)を把持する針ハブ42と、を備える。前方針43は、マニホールド構成で後方針の各々と流体接続され、各後方針は、カートリッジホルダー30内の2つのカートリッジのうちの1つへの流体アクセスを有する。したがって、注入装置10は、2つの物質を1つの単一送達部位に送達することができる。
【0052】
針モジュール40は、針基部41に対して軸方向に移動可能であり、前方針43の先端部分43tの通過のための遠位開口部46を有する、針シールド45をさらに備える。針シールド45に対して軸方向に固定されたアクティベーターアーム44は、カートリッジホルダー30内に延在し、
図2aでは、軸方向に移動可能な前方アクティベーター12との相互作用のために調製されている。注入装置10上の針モジュール40の初期状態では、前方針43は針シールド45内に安全に収容されている。
【0053】
楕円形断面の長手方向側壁18を有し、端部壁19によって近位で閉鎖されているハウジング11は、用量設定機構、および以下で説明される注入機構を収容する。2つのカートリッジの各々は、カートリッジ壁、遠位貫通可能自己密閉隔壁、および近位ピストンを備え、近位ピストンは、ハウジング11に対するピストンロッド(それぞれ第1のピストンロッド53、第2のピストンロッド54、
図3a参照)の遠位前進運動によってカートリッジ壁に沿って摺動可能である。ピストンロッド53、54の運動は、駆動ばね5によって動力供給され、駆動ばね5は、ばね基部15に回転方向に固定された近位ばね端部と、ばねインターフェース17iでばねクラッチ17に回転方向に固定された遠位ばね端部と、を有する。ばね基部15は、ばね基部カラー15cを介してハウジング11に固定されている。
【0054】
ばねクラッチ17は、ハウジング11に対して回転方向に配置された中空構造であり、遠位外側表面上に非自己係止ねじ山17tが設けられている。非自己係止ねじ山17tは、遠位ねじ山端部から近位ねじ山端部まで、ばねクラッチ17の全長のほぼ半分に軸方向に延在し、ローダーナット20nとの相互作用のために構成されており、ローダー20の一部を形成する。ローダー20は、カートリッジホルダー30のための保護キャップ60に対するスナップインターフェース20sを有する細長いローダー脚部20lをさらに備える(
図8参照)。ローダー20は、軸方向に移動可能であるが、ハウジング11に対して回転することが阻止されており、ひいては、ローダーナット20nと非自己係止ねじ山17tとの間のねじ山接続部は、ローダー20の軸方向の運動がばねクラッチ17の回転を引き起こすこと(逆もまた同様)を保証する。
【0055】
保護キャップ60は、ローダー脚部20lのスナップインターフェース20sに係合し、かつカートリッジホルダー30から取り外されるときにローダー20を遠位方向に軸方向に引っ張るように構成されている。したがって、かかるキャップ取り外し行為により、ばねクラッチ17を回転させ、かつそれによって、駆動ばね5の角度ひずみを引き起こす。ローダーナット20nが、ローダー20の軸方向の移動の間に、非自己係止ねじ山17tの遠位ねじ山端部に到達すると、カートリッジホルダー30の幾何学的形状(不可視)により、ローダー脚部20lの半径方向内向きの屈曲が可能になり、保護キャップ60の係脱につながる。
【0056】
後方アクティベーター13は、ばねクラッチ17を通って長手方向に延在し、ばねクラッチ17はハウジング11に対して軸方向に固定されているが、後方アクティベーター13は注入装置10の使用中の軸方向の往復運動のために適合されている。後方アクティベーター13は、傾斜アーム7と接触する遠位端と、戻り部材14とインターフェース接続する近位端と、を有する。戻り部材14は、戻りばね6によって遠位方向に付勢される。近位端において、後方アクティベーター13は、一対の直径方向に対向する歯止め13pを備え、各歯止め13pは、ハウジング11に対して後方アクティベーター13の(近位端から見て)反時計回りの回転を制限するラチェットインターフェース内のばね基部カラー15cとの相互作用のために構成されている。後方アクティベーター13およびばねクラッチ17はそれぞれ、後方アクティベーター13の外部表面部分上の相互作用スプラインを介して、ばねクラッチ17の内部表面部分と回転方向に相互係止する。
【0057】
以下でさらに説明されるように、内容量終了リング16は、ばね基部15の外部に配置され、ばね基部15に沿った段階的な軸方向の移動のために構成されている。内容量終了リング16は、一対の直径方向に対向する、軸方向に延在する係止アーム16lを備え、その目的は以下の文脈から明らかになる。
【0058】
図2aでは、ローダーナット20nは、カートリッジホルダー30から軸方向に取り外された状態で保護キャップ60がハウジング11に対して軸方向にローダー20を引っ張っている上述の状況に対応する、非自己係止ねじ山17tの遠位ねじ山端部に位置決めされており、それによって、ばねクラッチ17が駆動ばね5を緊張させるように回転している。後方アクティベーター13に回転方向に係止されたばねクラッチ17は、この角度位置では、ばね基部カラー15cと歯止め13pとの間のラチェット係合によって係止されている。したがって、回転エネルギーが駆動ばね5に貯蔵され、注入装置は、それぞれの所定の用量の物質を2つのカートリッジ内に送達するための準備が整っている。したがって、実際には、用量設定行為は、保護キャップ60をカートリッジホルダー30から取り外すことによって実施される。本発明の代替的な実施形態では、保護キャップ60は、ローダー20と係合するように構成されておらず、ユーザーは別個の行為でローダー脚部20lを引っ張ることによって駆動ばね5を手動で緊張させる。
【0059】
図2bは、針シールド45がユーザーの皮膚に対して留置されている状態の注入装置10を示しており、ハウジング11は、針シールド45が針基部41に対して近位に移動することにより、先端部分43tが開口部46を通って突出することを引き起こすように、皮膚に向かって押されている。針シールド45の移動によりさらに、アクティベーターアーム44の当接部分44aが前方アクティベーター12をカートリッジホルダー30に対して近位に押し込むことを引き起こし、それによって、前方アクティベーター12の近位指12fが、支点8を中心として枢動する傾斜アーム7を起動し、前方アクティベーター12の近位変位の1/3に等しい、後方アクティベーター13の近位変位を引き起こす。
【0060】
後方アクティベーター13の近位移動により、戻り部材14が、戻りばね6の付勢に対して端部壁19に向かって押し込まれ、歯止め13pが、ばね基部カラー15cとの係合から解かれ、それによって、緊張した駆動ばね5を解放する。近位ばね端部がハウジング11に対して固定されているため、貯蔵された回転エネルギーの解放は、遠位ばね端部、ひいては、ばねクラッチ17および後方アクティベーター13が長手方向軸を中心として回転することを引き起こす。以下で説明されるように、この回転により、2つの物質の所定の用量が注入装置10から送達される。
【0061】
その後、ユーザーが先端部分43tを皮膚から引き抜くと、戻りばね6は、傾斜アーム7、アクティベーターアーム44、および針シールド45を介して、戻り部材14、後方アクティベーター13、前方アクティベーター12を含むシステム全体を、ハウジング11に対して遠位に戻し、それによって、先端部分43tが針シールド45内に再び置かれる。注入装置10を用いた用量排出行為が完了するたびに、上述の構成要素は、記載されるそれぞれの移動を受けている。しかしながら、本発明の代替的な実施形態では、戻りばね6によって達成される構成要素の自動戻りは、例えば、端部壁19内の押し込みボタンにより、先端部分43tが皮膚から引き抜かれた後に、ユーザーが上記構成要素を手動で押し戻すことができる手動戻り機構と置き換えられ得ることを留意されたい。
【0062】
図3は、注入装置10の近位部分を2つの異なる長手方向断面図で描いており、
図3aは、特に、後方アクティベーター13のいずれかの側にある第1のピストンロッド53および第2のピストンロッド54の配置、ならびに戻し部材14と内容量終了リング16との間の係合を示している。第1のピストンロッド53は、第1のナット部材51に螺合し、第1のピストンロッド53とは異なるピッチを有する第2のピストンロッド54は、第2のナット部材52に螺合する。
図3bは、特に、ばね基部15と内容量終了リング16との間の係合を示している。
【0063】
原則として、ばね基部15は
図1の第1の構成要素1に対応し、内容量終了リング16は第2の構成要素2に対応し、戻り部材14は第3の構成要素3に対応する。したがって、用量排出行為中のこれらの3つの構成要素間の相互作用は、注入装置10の用量カウント機構を提供する。内容量終了リング16は、
図3aに見られる、軸方向の戻り部材の待歯14tの最遠位歯14.1と最初に係合するフック16hを備える近位アームと、
図3bに見られる、軸方向のばね基部の待歯15tの最遠位歯15.1上に最初に置かれている遠位足部16fと、を有する。
図3の戻り部材14の軸方向位置は、
図2aの軸方向位置に対応し、これは、ハウジング11に対する内容量終了リング16の軸方向位置と組み合わせて、注入装置10が、最初の用量の排出がまだ開始されていない状態にあることを意味する。
【0064】
図4~6は、近位部分の同様の断面図を通して、様々な後続の状態における注入装置10を描いている。
図4は、
図2bのものと同様の状態の注入装置10を示しており、先端部分43tが開口部46を通って延在し、注入機構がトリガーされている。特に、
図3aにより、後方アクティベーター13が近位に変位しており、それに伴って、歯止め13pがばね基部カラー15cから係脱されていることがわかる。この近位変位によって、後方アクティベーター13のスプラインセクション13sが中央クラッチ58とのスプライン係合に摺動する。中央クラッチ58は、それぞれのはめば歯車インターフェースを介して、第1のピストンロッドドライバ55および第2のピストンロッドドライバ56と回転方向に連結されている。
【0065】
第1のピストンロッドドライバ55は第1のピストンロッド53に回転方向に係止され、第2のピストンロッドドライバ56は第2のピストンロッド54に回転方向に係止される。したがって、歯止め13pがばね基部カラー15cから係脱されて駆動ばね5を解放した結果として後方アクティベーター13が回転すると、中央クラッチ58が後方のアクティベーター13と共に強制的に回転する。したがって、これにより、第1のピストンロッドドライバ55および第2のピストンロッドドライバ56の両方の回転が引き起こされ、それによって、第1のピストンロッド53が第1のナット部材51を通って遠位方向に螺旋状に前進し、第2のピストンロッド54が第2のナット部材52を通って遠位方向に螺旋状に前進する。
【0066】
第1のピストンロッド53の前進は、第1のカートリッジ35内のピストンの軸方向の前進、ひいては、前方針43を通した第1の物質の第1の所定の用量の排出をもたらす。同様に、第2のピストンロッド54の前進は、第2のカートリッジ内のピストンの軸方向の前進、ひいては、前方針43を通した第2の物質の第2の所定の用量の排出をもたらす。第1の所定の用量のサイズは、駆動ばね5が弛緩中のばねクラッチ17の全角変位ならびに第1のピストンロッド53のピッチによって決定され、第2の所定の用量のサイズは、駆動ばね5が弛緩中のばねクラッチ17の全角変位ならびに第2のピストンロッド54のピッチによって決定される。駆動ばね5が弛緩中のばねクラッチ17の全角変位は、ローダーナット20nが非自己係止ねじ山17tを遠位ねじ山端部から近位ねじ山端部まで進むときに、ばねクラッチ17によって示される角変位である。
【0067】
また、後方アクティベーター13の近位変位によって、戻り部材14が端部壁19に向かって促されており、フック16hと最遠位歯14.1との間の係合により、内容量終了リング16を従属制御している。内容量終了リング16の変位の間に、足部16fは、
図4bに示されるように、
図1bに関連して上述したものと同様の様式で、軸方向のばね基部の待歯15tの第2の歯15.2を通過している。
【0068】
図5は、先端部分43tをユーザーの皮膚から回収した後に、戻り部材14および後方アクティベーター13が、戻りばね6によって、ハウジング11内の初期の軸方向位置まで戻されている状態の注入装置10を示している。戻り部材14の遠位の運動は、フック16hが軸方向の戻し部材の待歯14tの第2の歯14.2を通過し、足部16fが軸方向のばね基部の待歯15tの第2の歯15.2に対して置かれることを引き起こす。したがって、注入装置10を用いた第1の用量排出行為は、最遠位歯15.1から第2の歯15.2までのばね基部15に沿った、最遠位歯14.1から第2の歯14.2までの戻し部材14に対する内容量終了リング16の漸増的な近位変位につながる。
【0069】
用量排出行為のたびに、内容量終了リング16が、ばね基部15および戻り部材14に対してかかる漸増変位を受け、それに伴って、足部16fおよびフック16hの即時のそれぞれの位置を、注入装置10から排出された用量の数および/またはまだ排出されていない用量の数の決定に使用することができる。例えば、ばね基部の待歯15tおよび/または戻り部材の待歯14tをハウジング11内の窓(図示せず)を通して見ることができる。
【0070】
内容量終了リング16は、足部16fが軸方向のばね基部の待歯15tの最近位歯15.5上に置かれ、フック16hが軸方向の戻り部材の待歯14tの最近位歯14.5と係合するまで、1つの歯から次の歯までばね基部15を這い上がる。この状況が
図6に描かれており、
図6aは、フック16hの位置を示し、
図6bは、注入装置10を用いた第4の用量排出行為に続いて、前方針43を皮膚から回収した後の足部16fの位置を示している。
【0071】
図6bから見ることができるように、注入装置10のこの状態では、内容量終了リング16は、ばね基部カラー15c上の停止面15sによって、ばね基部15に対するさらなる近位の移動からブロックされる。最近位歯14.5とフック16hとの間の係合により、戻り部材14がハウジング11に対して近位変位することが阻止されるため、前方アクティベーター12の近位変位によって後方アクティベーター13を持ち上げようとするいずれの試みもうまくいかない。したがって、カートリッジホルダー30に取り付けられた新しい(または同じ)針モジュール40の針シールド45を押下して先端部分43tを曝露することはできず、これは、さらなる用量が注入装置10から入手できないことをユーザーに示す内容量終了合図を提供する。
【0072】
上に示されるように、用量排出行為が完了すると、ローダーナット20nは非自己係止ねじ山17tの近位ねじ山端部に位置決めされる。保護キャップ60は、2つのカートリッジを保護するために、用量排出行為の間でカートリッジホルダー30上に装着されるように適合されている。カートリッジホルダー30への装着中、保護キャップ60は、次の用量排出行為の準備をするために、後で保護キャップ60をカートリッジホルダー30から取り外すときに、ローダーナット20nを押し付けて非自己係合ねじ山17tを遠位ねじ山端部まで進ませ、それによって、ばねクラッチ17の結果として生じる回転によって駆動ばね5を緊張させるように、ローダー脚部20lに再係合する。
【0073】
注入装置10には追加の内容量終了表示が設けられており、これは、保護キャップ60を取り外すときに既に新しい装置が必要であるということをユーザーに合図する。
図7は、ハウジング11内の選択された構成要素の斜視上面図であり、考えられる最後の用量排出後の当該構成要素のそれぞれの相対的な位置を示している。図は、ばね基部カラー15cの横断方向のカラー底部15b、ならびにばね基部15に対する後方アクティベーター13の反時計回りの回転を制限する歯止め13pのための支持部を構築する異なる厚さの一対の内部アーク15aを明らかにする。歯止め13pは、後方アクティベーター13の半径方向に拡大した端部部分であるアクティベーター頭部13hの一部を形成する。
【0074】
内容量終了リング16は、一対の近位に延在するロックアーム16lを備え、それらの各々は、軸方向のばね基部の待歯15tの最近位歯15.5への足部16fの漸増移動の間に、カラー底部15b内の専用の穴を通って、アクティベーター頭部13hの周囲の陥凹13rへと通過する。これは、ばね基部15に対する後方アクティベーター13の時計回りの回転も効果的に制限し、結果として、ばねクラッチ17がハウジング11に対して回転方向に係止される。ばねクラッチ17は回転することができないため、ローダーナット20nは非自己係止ねじ山17tを進むことができない。これは、ローダー脚部20lがハウジング11に対して軸方向に係止されることを意味する。したがって、ユーザーが保護キャップ60を引きはがそうとすると、ローダー20は軸方向の取り外し運動に対する抵抗を提供する。
【0075】
スナップインターフェース20sの正確な構造に応じて、保護キャップ60がカートリッジホルダー30上に密着されるか、またはキャップ/ローダーインターフェースの一部を屈曲させて、保護キャップ60とハウジング11との間の軸方向の分離力が十分に大きいときに、保護キャップ60をローダー脚部20lから係脱することができるであろう。いずれの場合でも、ユーザーは、以前よりも保護キャップ60の取り外しに対する著しく大きな抵抗を経験するであろう。
【0076】
したがって、推奨されるように、ユーザーが用量排出を終えるごとに針モジュール40を通常変更するユーザーである場合、保護キャップ60の取り外し障害物が注入装置10の内容量終了状態の合図を提供し、それにより、針シールドの閉塞の確認が不要になるため、ユーザーは新しい針モジュールの取り付けを控えることができる。
【0077】
図8は、保護キャップ60がカートリッジホルダー30から取り外された状態の薬剤送達装置10の斜視図である。針モジュール40を受容および解放可能に保持するためにカートリッジホルダー30のいずれかの側に突出部31が提供されており、上述の前部アクティベーター12との動作可能な接続のために、オリフィス32がカートリッジホルダー30の内部へのアクティベーターアーム44のアクセスを提供する。