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特許7336487固体電解質センサの使用方法及び固体電解質センサ
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  • 特許-固体電解質センサの使用方法及び固体電解質センサ 図1
  • 特許-固体電解質センサの使用方法及び固体電解質センサ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】固体電解質センサの使用方法及び固体電解質センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
G01N27/409 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021106623
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023004737
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】常吉 孝治
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-043061(JP,A)
【文献】実開昭62-062959(JP,U)
【文献】実開昭50-065493(JP,U)
【文献】特開昭50-043994(JP,A)
【文献】特開昭55-001595(JP,A)
【文献】特開昭58-132653(JP,A)
【文献】特開2009-133713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質で形成されたセンサ素子、該センサ素子の表面に設けられた第一電極、該第一電極が接している第一空間と区画されている第二空間において前記センサ素子の表面に設けられた第二電極、前記第一電極に接続された第一リード線、及び、前記第二電極に接続された第二リード線を備える固体電解質センサの使用方法であって、
前記第一空間の雰囲気を測定雰囲気とし、
記第一リード線、及び、前記第二リード線のうち、少なくとも前記第一リード線として、ジルコニアを含有する白金で形成された線材であるジルコニア含有白金線を使用し、
前記センサ素子におけるイオン伝導に伴い前記第一電極と前記第二電極との間に生じる起電力を、前記第一リード線と前記第二リード線を介して測定するものであり、
前記第一電極に沿わせた前記第一リード線の上から前記センサ素子に純金属の白金線を巻き付けた状態で使用す
ことを特徴とする固体電解質センサの使用方法。
【請求項2】
前記第一リード線が通された白金メッシュを前記第一電極にあてがうことにより前記第一リード線前記第一電極に沿わせ、前記白金メッシュに通された前記第一リード線の上から前記センサ素子に前記白金線を巻き付けた状態で使用す
ことを特徴とする請求項1に記載の固体電解質センサの使用方法。
【請求項3】
固体電解質で形成されたセンサ素子、該センサ素子の表面に設けられた第一電極、該第一電極が接している第一空間と区画されている第二空間において前記センサ素子の表面に設けられた第二電極、前記第一電極に接続された第一リード線、及び、前記第二電極に接続された第二リード線を備え、前記センサ素子におけるイオン伝導に伴い前記第一電極と前記第二電極との間に生じる起電力を、前記第一リード線及び前記第二リード線を介して測定するための固体電解質センサであって、
前記第一リード線及び前記第二リード線のうち、少なくとも前記第一リード線は、ジルコニアを含有する白金で形成された線材であるジルコニア含有白金線であり、
前記第一電極に沿わせた前記第一リード線の上から前記センサ素子に純金属の白金線が巻き付けられている
ことを特徴とする固体電解質センサ。
【請求項4】
前記第一リード線が通された白金メッシュが前記第一電極にあてがわれることにより前記第一リード線が前記第一電極に沿わせてあり、前記白金メッシュに通された前記第一リード線の上から前記センサ素子に前記白金線が巻き付けられている
ことを特徴とする請求項に記載の固体電解質センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質センサの使用方法、及び、該使用方法により使用される固体電解質センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体電解質(イオン伝導性セラミックス)をセンサ素子に使用して、水素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、水蒸気などのガス濃度を検出する固体電解質センサが種々提案されており、本出願人も過去に複数の提案を行っている。これらの固体電解質センサは、同一イオンの濃度差により固体電解質に電位差が生じる濃淡電池の原理を使用したものであり、センサ素子を挟んだ二つの空間で検出対象のガスの濃度が異なる場合に、センサ素子に生じる起電力を測定する。二つの空間のうち、第一の空間において検出対象ガスの濃度が既知であれば、ネルンストの式により、測定された起電力とセンサ素子の温度から、第二の空間におけるガス濃度を知ることができる。或いは、第一の空間のガス濃度を一定とした状態で、第二の空間におけるガス濃度を変化させて起電力を測定して予め相関関係を調べておくことにより、ガス濃度が未知の場合の起電力の測定値から、第二の空間のガス濃度を知ることができる。
【0003】
イオン伝導により生じる起電力の測定に際しては、センサ素子において二つの空間の一方に接している表面に電極を設けると共に、他方の空間に接している表面にも電極を設け、双方の電極それぞれをリード線で電位計に接続している。一般的には、電極として白金電極が使用され、リード線としては白金線が使用されている。
【0004】
ところが、測定雰囲気が工業炉内など高温の雰囲気であると、リード線として使用している白金線が断線してしまうことがあった。リード線が断線してしまうと、当然ながら起電力の測定ができないため、工業炉などから固体電解質センサを取り外して修理を行う必要がある。それゆえ、固体電解質センサにおける他の部分が正常であっても、リード線の断線のみで起電力を正常に測定できる耐用期間が短くなってしまう。
【0005】
そこで、本出願人は、少なくとも測定雰囲気側のリード線として、ジルコニアを含有する白金で形成された線材であるジルコニア含有白金線を使用することを提案している(特許文献1参照)。ジルコニアを含有する白金は、高温下でのクリープ破断強度が高いことから、従来、ガラス溶解用の炉や坩堝、ガラス繊維製造用のブッシング等に使用されてきた材料であるが、このような高温構造材に使用されてきたジルコニアを含有する白金を、線材(ジルコニア含有白金線)とすることにより、高温下でも断線し難いリード線とすることができる。また、ジルコニア含有白金線をリード線としても、リード線が白金線であった従来の固体電解質センサと同様に、イオン伝導に伴い発生する起電力を、問題なく検出することができる。
【0006】
ところが、ジルコニア含有白金線であるリード線は、密着性高く電極に接続することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-43061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、少なくとも測定雰囲気側のリード線としてジルコニア含有白金線を使用するに当たり、ジルコニア含有白金線を密着性高く電極に接続することができる固体電解質センサの使用方法、及び、該使用方法により使用される固体電解質センサの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる固体電解質センサの使用方法(以下、単に「使用方法」と称することがある)は、
「固体電解質で形成されたセンサ素子、該センサ素子の表面に設けられた第一電極、該第一電極が接している第一空間と区画されている第二空間において前記センサ素子の表面に設けられた第二電極、前記第一電極に接続された第一リード線、及び、前記第二電極に接続された第二リード線を備える固体電解質センサの使用方法であって、
前記第一空間の雰囲気を測定雰囲気とし、
記第一リード線、及び、前記第二リード線のうち、少なくとも前記第一リード線として、ジルコニアを含有する白金で形成された線材であるジルコニア含有白金線を使用し、
前記センサ素子におけるイオン伝導に伴い前記第一電極と前記第二電極との間に生じる起電力を、前記第一リード線と前記第二リード線を介して測定するものであり、
前記第一電極に沿わせた前記第一リード線の上から前記センサ素子に純金属の白金線を巻き付けた状態で使用する」ものである。
【0010】
本使用方法では、センサ素子によって区画されている二つの空間(第一空間、第二空間)のうち、第一空間の雰囲気を測定雰囲気とし、第一空間で第一電極に接続される第一リード線として、ジルコニアを含有する白金で形成された線材であるジルコニア含有白金線を使用する。ジルコニア含有白金線は、従前よりリード線として多用されてきた純金属の白金線に比べ、高温下でのクリープ破断強度が高いため、測定雰囲気が高温であっても破断しにくい。また、高温下でセンサを構成する部材が熱膨張するとリード線に大きな引張力がかかるが、これが高温下でのリード線の破断の主要な要因の一つであると考えられる。これに対し、ジルコニア含有白金線は高温下での引張強度が高いため、大きな引張力が作用した状態であっても破断しにくい。従って、測定雰囲気が高温の雰囲気であっても、リード線の断線が抑制された長い耐用期間で、検出対象ガスの第一空間及び第二空間における濃度差に応じたイオン伝導に伴い、センサ素子に発生する起電力を測定することができる。
【0011】
ところが、ジルコニア含有白金線はセンサ素子の形状に密着するように曲げたり、巻き付けたり、撚り合わせることが難しい。これは、セラミックスであるジルコニアを含有させることにより、金属特有の展延性が低下し、脆性材料であるセラミックスの性質が現れていることによると考えられる。そこで、本発明では、測定雰囲気側の電極である第一電極に、ジルコニア含有白金線である第一リード線を沿わせた上から、純金属の白金線をセンサ素子に巻き付けている。純金属の白金線は展延性に優れるため、センサ素子に緊密に巻き付けることができ、第一リード線を第一電極に押し付けて密着させることができる。つまり、単独では第一電極に密着させることが難しいジルコニア含有白金線である第一リード線を、密着性高く第一電極に接続することができる。
【0012】
なお、ジルコニアは電気絶縁性のセラミックスであるため、ジルコニア含有白金線と純金属の白金線とを接触させた場合、電気的な接触としては白金線同士の接触と同じであり、第一電極と第二電極との間に生じる起電力の測定に影響を及ぼすことはない。
【0013】
本発明にかかる固体電解質センサの使用方法は、上記構成に加え、
「前記第一リード線が通された白金メッシュを前記第一電極にあてがうことにより前記第一リード線前記第一電極に沿わせ、前記白金メッシュに通された前記第一リード線の上から前記センサ素子に前記白金線を巻き付けた状態で使用する」ものとすることができる。
【0014】
本構成では、第一リード線を白金メッシュの目に通した上で白金メッシュを第一電極にあてがい、その上からセンサ素子に純金属の白金線を巻き付けている。これにより、第一リード線と通電している白金メッシュが第一電極に接触し、この状態がセンサ素子に巻き付けられた白金線によってしっかりと保持される。第一電極と第一リード線との電気的な接続に、白金メッシュを介した接続が加わることとなり、白金メッシュでは構成する白金線の交点が電気的な接点であって多数が存在するため、電気的な接続がより確実で良好なものとなる。また、白金メッシュに第一リード線を通しているため、白金メッシュがずれて第一電極から外れることが抑制される。
【0015】
次に、本発明にかかる固体電解質センサは、
「固体電解質で形成されたセンサ素子、該センサ素子の表面に設けられた第一電極、該第一電極が接している第一空間と区画されている第二空間において前記センサ素子の表面に設けられた第二電極、前記第一電極に接続された第一リード線、及び、前記第二電極に接続された第二リード線を備え、前記センサ素子におけるイオン伝導に伴い前記第一電極と前記第二電極との間に生じる起電力を、前記第一リード線及び前記第二リード線を介して測定するための固体電解質センサであって、
前記第一リード線及び前記第二リード線のうち、少なくとも前記第一リード線は、ジルコニアを含有する白金で形成された線材であるジルコニア含有白金線であり、
前記第一電極に沿わせた前記第一リード線の上から前記センサ素子に純金属の白金線が巻き付けられている」ものである。
【0016】
また、本発明にかかる固体電解質センサは、上記構成に加え、
「前記第一リード線が通された白金メッシュが前記第一電極にあてがわれることにより前記第一リード線が前記第一電極に沿わせてあり、前記白金メッシュに通された前記第一リード線の上から前記センサ素子に前記白金線が巻き付けられている」ものとすることができる。
【0017】
これらは、上記の使用方法により使用される固体電解質センサの構成である。第一空間の雰囲気を測定雰囲気とすることにより、上記の作用効果が発揮される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、少なくとも測定雰囲気側のリード線としてジルコニア含有白金線を使用するに当たり、ジルコニア含有白金線を密着性高く電極に接続することができる固体電解質センサの使用方法、及び、該使用方法により使用される固体電解質センサを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は本発明の第一実施形態である固体電解質センサの要部側面図であり、図1(b)は図1(a)と同じ部分の縦断面図である。
図2図2(a)は本発明の第二実施形態である固体電解質センサの要部側面図であり、図2(b)は図2(a)と同じ部分の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態である固体電解質センサの使用方法、及び、この使用方法により使用される固体電解質センサ1,2について、図面を用いて説明する。
【0021】
第一実施形態の固体電解質センサ1は、固体電解質で形成されたセンサ素子10によって、第一空間S1と第二空間S2とが区画されているものであるが、図1(a)及び図1(b)に示すように、センサ素子10をホルダ30に保持させることにより二つの空間が区画されている。具体的には、筒状のホルダ30の一端に、封止材39を介してセンサ素子10が固定されることにより、ホルダ30とセンサ素子10とを合わせた形状として有底筒状が形成され、二つの空間が区画されている。ホルダ30は、アルミナセラミックスやムライトセラミックスなど、電気絶縁性と耐熱性を有する材料で形成されている。
【0022】
なお、ここではセンサ素子10の形状が有底筒状であり、ホルダ30の内部で開口している場合を例示している
【0023】
固定電解質センサ1では、有底筒状の内部空間と外部空間のうち、どちらを測定雰囲気である第一空間S1としても良いが、ここでは有底筒状の外部空間を第一空間S1としている。工業炉の炉壁に孔部を設け、その孔部に固定電解質センサを挿し込んで炉内の雰囲気におけるガス濃度を測定する際は、このように有底筒状の外部空間が第一空間S1となる。
【0024】
そして、センサ素子10において第一空間S1側の表面に第一電極21が設けられると共に、第二空間S2側の表面に第二電極22が設けられる。そして、第一電極21には第一リード線41が接続されると共に、第二電極22には第二リード線42が接続される。第一リード線41及び第二リード線42を電位計(図示を省略)に接続することにより、第一電極21と第二電極22との間に生じた起電力が検出される。
【0025】
なお、第一電極21及び第二電極22としては、白金電極を使用している。白金電極は、電極用白金ペーストをセンサ素子10の表面に塗布し、焼き付けることにより形成された多孔質被膜である。
【0026】
また、第二空間S2には、センサ素子10の温度を検出するための熱電対51が挿入されており、熱電対51の各素線と第二リード線42とは、電気絶縁性のロッド50に軸方向に貫設された複数の孔部の一つにそれぞれ挿通されている。更に、第二空間S2には、基準ガスを導入するための導入パイプ60が挿入されている。基準ガスは検出対象ガスの濃度が既知のガスであるが、基準ガスとして大気が用いられる場合もある。その場合は、導入パイプを挿入することなく、第二空間S2を大気に開放させる構成としてもよい。
【0027】
本実施形態では、第二リード線42として純金属である白金線(直径0.3mm)を使用する一方、第一リード線41としてジルコニア含有白金線(直径0.3mm)を使用している。ジルコニア含有白金線は、0.4質量%のジルコニア(二酸化ジルコニウム)を分散させた白金を、線材としたものである。なお、ジルコニア含有白金線におけるジルコニアの含有率は、少なくとも0.3質量%~0.5質量%の範囲であれば、電気伝導性に支障がなく、望ましい。
【0028】
第一リード線41は、第一電極21が形成されている部分を通るようにセンサ素子10の先端の表面に沿わせた後、ホルダ30におけるセンサ素子10側の端部まで引き延ばし、ホルダ30の他方の端部に向かってホルダ30の表面に沿わせた上で、電位計に接続されている。
【0029】
そして、第一リード線41を第一電極21に沿わせている部分で、白金線45(直径0.3mm)がセンサ素子10に複数回、周回するように巻き付けられ、白金線45の両端部が撚り合わされている。純金属である白金線45は展延性に優れているため、センサ素子10に緊密にしっかりと巻き付けることができ、両端部を撚り合わせることによって、しっかりと巻き付けられた状態を保持することができる。ジルコニア含有白金線は変形しにくいため、第一リード線41を第一電極21に沿わせただけでは、両者の間に隙間が生じやすく互いの接触が不十分になりやすいところ、第一リード線41の上から白金線45をセンサ素子10にしっかりと巻き付けているため、第一リード線41と第一電極21との電気的な接続が良好なものとなる。
【0030】
なお、ジルコニア含有白金線は、純金属である白金線に比べて展延性が低いため、第一電極21が形成されている部分で第一リード線41自体をセンサ素子10に巻き付けようとしても、緊密に巻き付けることはできず、巻き付けた後で両端部を撚り合わせようとしても、ねじった時に切れてしまう。これは、セラミックスであるジルコニアを白金に含有させていることにより、脆性的な性質が現れているためと考えられた。
【0031】
上記構成の固体電解質センサ1を、実際に工業炉に設置し、温度600℃の測定雰囲気におけるガス濃度の検出に使用したところ、長期間にわたり第一リード線41が断線することなく使用できることが確認された。
【0032】
また、本実施形態の固体電解質センサ1を使用し、第二空間S2に基準ガスを導入する一方で、検出対象ガスの濃度を段階的に異ならせたガスを第一空間S1に供給し、そのときの起電力を測定した。また、比較のために、第一リード線41として純金属の白金線を使用したことを除き、固体電解質センサ1と同一である固体電解質センサについて、同様に第二空間S2に基準ガスを導入する一方で、検出対象ガスの濃度を段階的に異ならせたガスを第一空間S1に供給したときの起電力を測定した。
【0033】
その結果は、特許文献1で報告した結果と同様であり、第一リード線としてジルコニア含有白金線を使用しても、第一リード線として白金線を使用した場合と同じく、測定された起電力の値はネルンストの式を用いて算出された理論値とよく一致し、固体電解質におけるイオン伝導に伴う起電力を、問題なく測定できることが確認された。
【0034】
次に、第二実施形態の固体電解質センサ2について、図2(a)及び図2(b)を用いて説明する。固体電解質センサ2が第一実施形態の固体電解質センサ1と相違する点は、第一リード線41を第一電極21に電気的に接続するに当たり、白金メッシュ47を使用している点である。具体的には、白金メッシュ47の目に第一リード線41を通し、白金メッシュ47を第一電極21にあてがった状態で、第一リード線41及び白金メッシュ47の上から、白金線45をセンサ素子10に複数回、周回するように巻き付ける。白金線45の両端は、固体電解質センサ1と同様に撚り合わせる。ジルコニア含有白金線である第一リード線41は曲がりにくいが、白金メッシュ47をたわませることにより、メッシュの目に第一リード線41を通すことができる。
【0035】
白金メッシュ47としては、メッシュを構成する白金線が細くたわみ易いものが望ましく、電気的接点となる白金線の交点の数が多くなるように目の数が多いものが望ましい。例えば、メッシュを構成する白金線の直径が0.076mmで、80メッシュの白金メッシュを使用することができる。
【0036】
固体電解質センサ2では、第一リード線41と通電している白金メッシュ47が第一電極21に接触している状態が、センサ素子10に巻き付けられた白金線45によってしっかりと保持される。第一電極21と第一リード線41との電気的な接続に、白金メッシュ47を介した接続が加わることとなり、白金メッシュ47を構成する白金線の交点が電気的な接点であって多数が存在するため、電気的な接続がより確実で良好なものとなる。また、白金メッシュ47に第一リード線41を通しているため、白金メッシュ47がずれて第一電極21から外れることが抑制される。
【0037】
以上のように、本実施形態の固体電解質センサ1,2によれば、測定雰囲気である第一空間S1に配される第一リード線41をジルコニア含有白金線とすることにより、測定雰囲気が高温であってもリード線が断線することを抑制し、イオン伝導に伴い固体電解質に生じる起電力を、長期間にわたり正常に測定することができる。そして、ジルコニア含有白金線は展延性が低く、第一リード線41自体はセンサ素子10に巻き付けたり端部を撚り合わせたりすることが困難であり、第一リード線41を第一電極21に沿わせただけでは、両者の間に隙間が生じやすく互いの接触が不十分になりやすいところ、第一リード線41の上から白金線45を巻き付けることにより、電気的な接続を良好なものとすることができる。
【0038】
固体電解質センサ2では、更に白金メッシュ47を介して第一リード線41と第一電極21とを電気的に接続しているため、電気的な接点が多数となり、電気的な接続がより確実で良好なものとなる。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記の実施形態では、第一リード線41及び第二リード線42のうち、測定雰囲気である第一空間S1に配される第一リード線41のみをジルコニア含有白金線とし、第二リード線42は純金属の白金線とする場合を例示したが、第二リード線42もジルコニア含有白金線とすることができる。
【0041】
固体電解質センサ1は、有底筒状のセンサ素子10をホルダ30の内部で開口する向きでホルダ30に固定した例であったが、有底筒状のセンサ素子10はホルダ30の外部で開口する向きとしてもよい。また、筒状のホルダの一端に固定されるセンサ素子の形状は有底筒状に限定されず、柱状やディスク状とすることができる。
【0042】
更に、筒状のホルダの中途に、封止材を介してセンサ素子を固定することによっても、二つの空間が区画される。この場合、ホルダとセンサ素子とを合わせた形状として、有底筒状の部分を二つ有することとなるため、内部空間及び外部空間を区別する概念が生じないが、一方を第一空間S1とし他方を第二空間S2とする。ホルダの中途に固定されるセンサ素子の形状は、柱状、ディスク状、有底筒状とすることができる。
【0043】
また、上記では、ホルダとセンサ素子とを合わせた形状を有底筒状とすることによって二つの空間を区画する場合を例示したが、ホルダを使用することなくセンサ素子自体の形状を有底筒状とすることにより、センサ素子のみによって二つの空間が区画されている固体電解質センサとすることもできる。
【0044】
加えて、固体電解質センサ1,2において、センサ素子10に巻き付けられた白金線45が埋設されるように白金ペーストを塗布した後、800℃~1000℃の温度で熱処理してもよい。これにより、固体電解質センサ1では、第一リード線41、白金線45、及び第一電極21が、固化した白金ペーストで一体化するため、第一リード線41と第一電極21との電気的な接続がより良好なものとなる。また、固体電解質センサ2では、第一リード線41、白金線45、白金メッシュ47、及び第一電極21が、固化した白金ペーストで一体化するため、第一リード線41と第一電極21との電気的な接続がより良好なものとなる。白金ペーストとしては、電極形成用の白金ペーストを使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 固体電解質センサ
2 固体電解質センサ
10 センサ素子
21 第一電極
22 第二電極
30 ホルダ
41 第一リード線
42 第二リード線
45 白金線
47 白金メッシュ
S1 第一空間
S2 第二空間
図1
図2