(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】複合ドレッサ
(51)【国際特許分類】
B24B 53/12 20060101AFI20230824BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20230824BHJP
B24B 53/14 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
B24B53/12 Z
B24B53/00 C
B24B53/14
(21)【出願番号】P 2021201668
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2021-12-13
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506398139
【氏名又は名称】中國砂輪企業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 泰甲
(72)【発明者】
【氏名】張 紘睿
(72)【発明者】
【氏名】何 嘉哲
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-006216(JP,A)
【文献】特開2001-252870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 - 53/14
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレッシング面を含む複合ドレッサであって、前記ドレッシング面は、第1のドレッシング領域および第2のドレッシング領域を含み、前記第1のドレッシング領域の材料は、金属銅、金属アルミニウム、ステンレス鋼、軟鋼、またはそれらの任意の組み合わせを含み、前記第2のドレッシング領域の材料は、中炭素鋼、高炭素鋼、銑鉄、モリブデン金属、またはそれらの任意の組み合わせを含む複合ドレッサ
であって、超研削砥石が前記複合ドレッサの前記ドレッシング面によって研削された後、前記第1のドレッシング領域から生成される切り屑は、前記第2のドレッシング領域から生成される切り屑よりも長い、複合ドレッサ。
【請求項2】
前記第1のドレッシング領域は、複数の個別の第1のドレッシングサブ領域を含み、前記第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域を含む、請求項1に記載の複合ドレッサ。
【請求項3】
前記ドレッシング面における前記第1のドレッシング領域の総面積と前記第2のドレッシング領域の総面積との比が、100:1~1:100である、請求項1または2に記載の複合ドレッサ。
【請求項4】
前記ドレッシング面が、第3のドレッシング領域をさらに含み、前記第3のドレッシング領域が、基材および複数の砥粒を含み、基材の材料が、銅-錫合金、ニッケル金属、セラミック材料、または樹脂を含み、砥粒の材料が、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、またはダイヤモンドを含む、請求項1に記載の複合ドレッサ。
【請求項5】
前記第3のドレッシング領域は、複数の個別の第3のドレッシングサブ領域を含む、請求項4に記載の複合ドレッサ。
【請求項6】
前記第1のドレッシング領域は、複数の個別の第1のドレッシングサブ領域を含み、前記第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域を含む、請求項4または5に記載の複合ドレッサ。
【請求項7】
前記ドレッシング面における前記第1のドレッシング領域の総面積と前記第2のドレッシング領域の総面積との合計と、前記第3のドレッシング領域の総面積との比が、100:1~2:1である、請求項4~6のいずれか一項に記載の複合ドレッサ。
【請求項8】
前記第1のドレッシング領域の材料が金属銅であり、前記第2のドレッシング領域の材料が中炭素鋼である、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合ドレッサ。
【請求項9】
前記第1のドレッシング領域から生成される
前記切り屑は、100μm~5mmの長さを有し、前記第2のドレッシング領域から生成される
前記切り屑は、10μm~2mmの長さを
有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合ドレッサ。
【請求項10】
前記複合ドレッサは、多面体の形状を有し、前記ドレッシング面は、前記多面体の上面である、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ドレッサ。
【請求項11】
前記複合ドレッサが円筒の形状を有し、前記ドレッシング面が前記円筒の曲面である、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ドレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削工具に関し、より具体的には、超研削砥石をコンディショニングするためのドレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
研削工具は、一般に、様々な種類またはサイズの砥粒を固定的に結合する基材によって作られており、工作物の研削、切削、および研磨などの処理に広く適用されている。精密機械産業の発展に伴い、あらゆる構成要素は、精密さおよび生産速度の向上が必要となっており、それに必要な材料もまた、より硬く、より耐摩耗性となっているが、これらは加工が困難である。従って、従来の研削砥石(ホイール)では、高精度且つ高生産速度の要求を満たす加工品質を得ることを保証できない。砥粒としてより硬度の高いダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素(CBN)を用いた超研削砥石は、高精度製造プロセスで硬質加工材料を研削するのにより適している。
【0003】
しかしながら、所定の期間にわたって超研削砥石で研削した後、超研削砥石の研削作用が減少する可能性がある。例えば、砥粒がその鋭さを失い(目つぶれ)、またこぼれ落ち(目こぼれ)、生成される切り屑が研削砥石の表面をブロック(目つまり)する可能性や、研削砥石の形状が歪む可能性があり、これらの現象は従来の研削砥石と同じである。処理中に超研削砥石を良好な研削状態に維持するために、当業者は、超研削砥石を処理時間内にドレッシング(目たて)しなければならない。研削砥石へのドレッシング処理は、あらゆる種類の研削砥石が、その研削能力をうまくかつ安定的に発揮するための鍵となる要素である。
【0004】
伝統的な研削砥石では、一般的なダイヤモンドドレッサにより要求されるドレッシング結果を容易に満足することができるが、超研削砥石では、砥粒として高硬度のダイヤモンドまたはCBNを使用しているので、超研削砥石をドレッシングするために一般的なダイヤモンドドレッサを用いた場合、硬いものと硬いものとがぶつかり合って相互に研磨する形で超研削砥石の砥粒を研磨することになる。このようなドレッシング方法は、ドレッサの劣化を早め、その結果、不十分なドレッシング効率及び無駄な作業時間を生じさせる。更に、超研削砥石及び/又はドレッサに傷をつけるリスクを増加させ、それらの摩耗速度を増加させることにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-022269号公報
【文献】特開平8-323618号公報
【文献】特開2005-81443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のドレッサには技術的な欠点があることに鑑み、なされたもので、その目的は、研削砥石のドレッシングに時間がかかり、かつ、効果的にドレッシングすることが容易ではないという既存の問題を解決できるドレッサを提供することである。本発明のドレッサは、特に超研削砥石に適しており、ドレッシング効率を向上でき、長寿命化できる。
【0007】
本発明の別の目的は、容易に入手できる原料を用いて簡単な方法で製造することができ、ドレッサの仕様を制限することも、ドレッサが動くための複雑な装置の装備も必要のないドレッサを提供することである。したがって、本発明のドレッサは、製造コストを低減することができ、それによって、商業製品の開発可能性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、ドレッシング面を有する複合ドレッサであって、ドレッシング面が第1のドレッシング領域および第2のドレッシング領域を含む複合ドレッサを提供する。ここで、第1のドレッシング領域の材料は、金属銅 (Cu)、金属アルミニウム (Al)、ステンレス鋼、軟鋼、またはそれらの任意の組み合わせを含み、第2のドレッシング領域の材料は、中炭素鋼、高炭素鋼、銑鉄、モリブデン金属(Mo)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0009】
複合ドレッサのドレッシング面にそれぞれ特定の材料を有する第1および第2のドレッシング領域を含めることによって、複合ドレッサは、ドレッシング処理中に工作物(超研削砥石など)に異なる長さの切り屑を生成することができる。生成された長さの異なる切り屑は、混合されて同じ領域で働き、工作物の表面に同時に作用する。その結果、複合ドレッサは、砥粒を囲む結合剤を効果的に除去することができ、砥粒がほとんど損傷を受けずに、砥粒の鋭い角を工作物表面から適切に突出させることができる。さらに、異なるタイプの切り屑が相互干渉することで、切り屑によって工作物表面がブロックされるという問題(目詰まり)を緩和することができる。さらに、第1および第2のドレッシング領域は、工作物中の砥粒ではなく結合剤だけを除去するので、砥粒が固いものとぶつかり合う状態(ヘッドオン状態)での研磨は起こらない。したがって、複合ドレッサおよび工作物の耐用年数を延ばすことができる。さらに、複合ドレッサは、工作物が同心補正されるように工作物の形状を調整することができる。また、複合ドレッサは、種々の研削手法に対応して幾何学的構造を変えることができるため、ドレッサのいくつかの特定の仕様に限定することができ、作業のための複雑な装置を備える必要がないので、研削プロセスの全体的な経済的利益を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、複合ドレッサのドレッシング面と工作物表面(研削砥石表面など)との相対運動中に脱落するドレッシング面の材料の部分によって、切り屑が生成し、ドレッシング面は工作物表面上の砥粒に接触する。切り屑の長さは、ドレッサの材料、ドレッシングされる工作物の材料、ドレッシング方法、および加工条件などのいくつかの要因によって影響を受ける可能性があり、その中でドレッサの材料が最も重要である。
【0011】
本発明によれば、第1のドレッシング領域の材料として、比較的柔らかい延性材料を採用する。これにより、ドレッシング処理中に第1のドレッシング領域から生成される切り屑は、連続的であり、比較的均一であり、長さが比較的長い。一方、第2のドレッシング領域の材料としては、比較的硬い脆性材料を採用するので、ドレッシング処理中に第2のドレッシング領域から生成される切り屑は、針状、顆粒状、またはフレーク状の形状を有し、比較的短い長さを有する。ドレッシング条件を異ならせた場合、第1のドレッシング領域から生成される切り屑は、100μm (マイクロメートル)~5mm (ミリメートル)の長さを有することができ、第2のドレッシング領域から生成される切り屑は、10μm~2mmの長さを有することができる。同じドレッシング条件下では、第1のドレッシング領域から生成された切り屑は、第2のドレッシング領域から生成された切り屑よりも長い。本明細書では、ドレッシング工程後に生成された切り屑を光学顕微鏡または電子顕微鏡で収集・観察し、その切り屑の長さを市販の画像処理ソフトウェアで解析し、切り屑の画像から求めている。
【0012】
本発明では、ステンレス鋼は、鉄(Fe)に加えてクロム(Cr)及びニッケル(Ni)を更に含む鉄合金を指すことができる。ステンレス鋼は、上記元素の他に、必要に応じて、Mo、タングステン(W)、チタン(Ti)、Cu、Al、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)等の他の元素を含んでいてもよい。ただし、これらに限定されるものではない。いくつかの実施態様において、ステンレス鋼は、12wt%(重量パーセント)から30wt%の範囲のCrを含む。いくつかの実施態様において、ステンレス鋼は、8wt%から11wt%の範囲のNiを含む。例えば、ステンレスは、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、またはフェライト系ステンレス鋼であってもよいが、これらに限定されない。
【0013】
本発明では、軟鋼(ソフトスチールとも呼ばれる)は、0.02wt%以上0.25wt%以下の炭素含有量を有する炭素鋼を指すことができる。軟鋼は、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、Cu、Cr、コバルト(Co)、Mo、Ni、ニオブ(Nb)、Ti、W、バナジウム(V)またはジルコニウム(Zr)などの他の元素を含んでもよいが、これらに限定されない。また、軟鋼において、Mnの含有量は1.65wt%以下であり、Siの含有量は0.60wt%以下であり、Cuの含有量は0.60wt%以下である。
【0014】
本発明では、中炭素鋼は、0.25wt%より大きく、0.6wt%以下の炭素含有量を有する炭素鋼を指すことができる。中炭素鋼は、Mn、Si、Cu、Cr、Co、Mo、Ni、Nb、Ti、W、VまたはZrなどの他の元素を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0015】
本発明では、高炭素鋼は、0.6wt%より大きく、2.0wt%以下の炭素含有量を有する炭素鋼を指すことができる。高炭素鋼はまた、Mn、Si、Cu、Cr、Co、Mo、Ni、Nb、Ti、W、VまたはZrなどの他の元素を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0016】
本発明では、銑鉄は、2wt%より大きく、6.67wt%以下の炭素含有量を有する鉄-炭素合金を指すことができる。また、銑鉄は、Mn、Si、P、Sなどの他の元素を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
好ましくは、第1のドレッシング領域は、単一の金属または単一の合金から構成されてもよい。例えば、第1のドレッシング領域は金属銅から構成されてもよく、第1のドレッシング領域は金属アルミニウムから構成されてもよく、または第1のドレッシング領域はステンレス鋼から構成されてもよい。より好ましくは、第1のドレッシング領域の材料は金属銅である。
【0018】
好ましくは、第2のドレッシング領域は、単一の金属または単一の合金から構成されてもよい。例えば、第2のドレッシング領域は、中炭素鋼から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、高炭素鋼から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、銑鉄から構成されてもよく、または第2のドレッシング領域は、モリブデン金属から構成されてもよい。より好ましくは、第2のドレッシング領域の材料は中炭素鋼である。
【0019】
本発明によれば、第1のドレッシング領域は、1つの第1のドレッシングサブ領域または複数の個別の(独立した)第1のドレッシングサブ領域を含むことができる。また、第2のドレッシング領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域または複数の個別の第2のドレッシングサブ領域を含むことができる。例えば、第1の実施形態では、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、1つの第1のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。第2の実施形態では、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、複数の個別の第1のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。第3の実施形態では、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、1つの第1のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。あるいは、第4の実施形態では、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、複数の個別の第1のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。
【0020】
一態様では、ドレッシング面は、第1のドレッシング領域および第2のドレッシング領域からなってもよい。例えば、上述の第3の実施形態の場合、第1のドレッシング領域が1つの第1のドレッシングサブ領域(「A1領域」と呼ぶ)と第2のドレッシング領域が2つの個別の第2のドレッシングサブ領域(「B1領域とB2領域」と呼ぶ)のみを有する場合、第1のドレッシングサブ領域と第2のドレッシングサブ領域は交互に配置され、すなわち、ドレッシング面上にB1領域、A1領域、B2領域が順次配置される。上述の第4の実施形態の場合、第1のドレッシング領域が2つの第1のドレッシングサブ領域(「A1領域とA2領域」と呼ぶ)と第2のドレッシング領域が2つの個別の第2のドレッシングサブ領域(「B1領域とB2領域」と呼ぶ)を有する場合、第1のドレッシングサブ領域と第2のドレッシングサブ領域は交互に配置される。すなわち、ドレッシング面上にA1領域、B1領域、A2領域、B2領域が順次配置される。または、第1のドレッシング領域が2つの第1のドレッシングサブ領域(「A1領域とA2領域」と呼ばれる)と、第2のドレッシング領域が3つの個別の第2のドレッシングサブ領域(「B1領域、B2領域およびB3領域」と呼ばれる)を有し、第1のドレッシングサブ領域および第2のドレッシングサブ領域は、交互に配置される。すなわち、ドレッシング面上にB1領域、A1領域、B2領域、A2領域、およびB3領域が順次配置される。
【0021】
好ましくは、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域の総面積と第2のドレッシング領域の総面積との比は、100:1~1:100であってもよい。より好ましくは、ドレッシング面において、第2のドレッシング領域の総面積に対する第1のドレッシング領域の総面積の比は、10:1~1:10とすることができる。さらにより好ましくは、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域の総面積と第2のドレッシング領域の総面積との比は、1:1~1:10であってもよい。なお、第1のドレッシング領域の合計面積は、第1のドレッシング領域が2つ以上の第1のドレッシングサブ領域を含む場合に、第1のドレッシングサブ領域の各面積の合計を指す。例えば、第1のドレッシング領域が2つの第1のドレッシングサブ領域から構成される場合、第1のドレッシング領域の総面積は、A1領域とA2領域の面積の合計を意味する。同様に、第2のドレッシング領域の総面積は、第2のドレッシング領域が2つ以上の第2のドレッシングサブ領域を含む場合、第2のドレッシングサブ領域の各面積の合計を指す。例えば、第2のドレッシング領域が3つの第2のドレッシングサブ領域から構成される場合、第2のドレッシング領域の総面積は、B1領域、B2領域、およびB3領域の面積の合計を意味する。
【0022】
工作物の結合剤をさらに除去すると同時に砥粒の形状を微調整するために、好ましくは、ドレッシング面は、第3のドレッシング領域をさらに含んでもよい。第3のドレッシング領域は、基材および複数の砥粒を含み、基材の材料は、銅-錫合金、ニッケル金属、セラミック材料、またはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、およびポリイミド樹脂(PI樹脂)などの樹脂を含むことができ、砥粒の材料は、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、CBN、またはダイヤモンドを含むことができる。砥粒が第3のドレッシング領域に含まれることにより、第3のドレッシング面(領域)の砥粒は、工作物の砥粒と接触し、ドレッシング処理中に研磨効果をもたらし、工作物の砥粒の鋭さを回復することができる。
【0023】
本発明において、ダイヤモンドは、天然ダイヤモンド、人工ダイヤモンド、または多結晶ダイヤモンド(PCD)であってもよいが、これらに限定されない。
【0024】
好ましくは、第3のドレッシング領域において、砥粒の平均粒径は、10μm~500μmの範囲とすることができる。ただし、これに限定されない。
【0025】
本発明において、第3のドレッシング領域は、1つの第3のドレッシングサブ領域または複数の個々の第3のドレッシングサブ領域を含むことができる。例えば、第1の実施形態の場合、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、1つの第1のドレッシングサブ領域から構成され、第2のドレッシング領域が1つの第2のドレッシングサブ領域から構成され、第3のドレッシング領域は、1つの第3のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。第2の実施形態の場合、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、複数の個々の第1のドレッシングサブ領域から構成され、第2のドレッシング領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域から構成され、第3のドレッシング領域は、1つの第3のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。第3の実施形態の場合、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、1つの第1のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第3のドレッシング領域は、1つの第3のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。第4の実施形態の場合、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、複数の個別の第1のドレッシングサブ領域から構成され、第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域から構成され、第3のドレッシング領域は、1つの第3のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。あるいは、第5の実施形態では、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域は、複数の個別の第1のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第2のドレッシング領域は、複数の個別の第2のドレッシングサブ領域から構成されてもよく、第3のドレッシング領域は、複数の個別の第3のドレッシングサブ領域から構成されてもよい。
【0026】
一例として、ドレッシング面は、第1のドレッシング領域、第2のドレッシング領域、および第3のドレッシング領域からなってもよい。例えば、第3の実施形態の場合では、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域が1つの第1のドレッシングサブ領域(「A1領域」と呼ぶ)のみを有し、第2のドレッシング領域は、2つの個別の第2のドレッシングサブ領域(「B1領域およびB2領域」と呼ぶ)を有し、第3のドレッシング領域は、1つの第3のドレッシングサブ領域(「C1領域」と呼ぶ)のみを有するとき、第1のドレッシングサブ領域、第2のドレッシングサブ領域、および第3のドレッシングサブ領域は、同じサブ領域が互いに隣接して配置されることがないように交互に配置される。すなわち、ドレッシング面のサブ領域は、B1領域、A1領域、C1領域、およびB2領域の順に、またはB1領域、A1領域、B2領域、およびC1領域の順に、またはA1領域、B1領域、C1領域、およびB2領域の順に配置することができる。ただし、第1、第2、および第3のドレッシングサブ領域の配置は、これに限定されない。
【0027】
第4の実施形態の場合、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域が2つの第1のドレッシングサブ領域(「A1領域およびA2領域」と呼ぶ)を有し、第2のドレッシング領域が2つの個別の第2のドレッシングサブ領域(「B1領域およびB2領域」と呼ぶ)を有し、第3のドレッシング領域が1つの第3のドレッシングサブ領域(「C1領域」と呼ぶ)のみを有するとき、第1のドレッシングサブ領域、第2のドレッシングサブ領域、および第3のドレッシングサブ領域は、同じサブ領域が互いに隣接して配置されることがないように交互に配置される。すなわち、ドレッシング面のサブ領域は、B1領域、A1領域、C1領域、A2領域、B2領域の順序で、またはA1領域、B1領域、C1領域、A2領域、およびB2領域の順序で配置することができる。但し、第1、第2、および第3のドレッシングサブ領域の配置は、これに限定されない。あるいは、第1のドレッシング領域が2つの第1のドレッシングサブ領域(「A1領域およびA2領域」と呼ぶ)を有し、第2のドレッシング領域が4つの個別の第2のドレッシングサブ領域(「B1領域、B2領域、B3領域およびB4領域」と呼ぶ)を有し、第3のドレッシング領域が1つの第3のドレッシングサブ領域(「C1領域」と呼ぶ)のみを有する場合、第1のドレッシングサブ領域、第2のドレッシングサブ領域、および第3のドレッシングサブ領域は、同じサブ領域が互いに隣接して配置されることがないように交互に配置される。すなわち、ドレッシング面のサブ領域は、B1領域、A1領域、B2領域、C1領域、B3領域、A2領域、およびB4領域の順に配置することができる。但し、第1、第2、および第3のドレッシングサブ領域の配置は、これに限定されない。
【0028】
好ましくは、ドレッシング面において、第1のドレッシング領域の総面積および第2のドレッシング領域の総面積の合計面積と、第3のドレッシング領域の総面積との比は、100:1~2:1とすることができる。
【0029】
前述した、第1のドレッシング領域の総面積対第2のドレッシング領域の総面積の比率範囲において、あるいは第3のドレッシング領域の総面積に対する第1および第2のドレッシング領域の総面積の比率範囲において、第1のドレッシングサブ領域、第2のドレッシングサブ領域、および第3のドレッシングサブ領域のそれぞれの領域サイズは、互いに同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第1のドレッシングサブ領域のそれぞれ、第2のドレッシングサブ領域のそれぞれ、および/または第3のドレッシングサブ領域のそれぞれは、同じ領域サイズを有し、平行に配置される。あるいは、いくつかの実施形態では、すべての第1のドレッシングサブ領域は、同じ領域サイズを有し、すべての第2のドレッシングサブ領域は、同じ領域サイズを有するが、一つの第1のドレッシングサブ領域と一つの第2のドレッシングサブ領域とは面積サイズは異なる。
【0030】
本発明において、複合ドレッサの幾何学的構造は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、複合ドレッサは、多面体の形状を有してもよく、ドレッシング面は、多面体の上面または多面体の側面であってもよい。好ましくは、複合ドレッサの形状は、直方体とすることができ、ドレッシング面は、直方体の上面とすることができる。これにより、加工物のドレッシングを容易にすることができる。
【0031】
一実施形態では、第1のドレッシングサブ領域の各々、第2のドレッシングサブ領域の各々、および/または第3のドレッシングサブ領域の各々は、ドレッシング面に垂直な方向に沿ってドレッシング面から複合ドレッサの反対側の表面まで延在して、小さな直方体を形成し、小さな直方体の全ては、同じ形状を有し、平行に並んで接続している。
【0032】
別の実施形態では、複数の第2のドレッシングサブ領域は、それぞれ、ドレッシング面に垂直な方向に沿ってドレッシング面から複合ドレッサの反対側の端部まで延在して、2つ以上の小さな直方体を形成し、それらの小さな直方体の側面の一部(例えば、小さな直方体の側面の端部の正方形の部分)が側面方向にさらに横方向に延在して、隣接する小さな直方体と連結している。これにより、複合ドレッサを側面から見た図(ドレッシング面に垂直な側面)では、第2のドレッシングサブ領域が延在することによって形成されるゾーンは、U字形のゾーン(ドレッシング領域に第2のドレッシングサブ領域が2つだけある場合)または櫛形のゾーン(ドレッシング領域に2つ以上の第2のドレッシングサブ領域がある場合)となる。
【0033】
さらに、第1のドレッシングサブ領域の各々および/または第3のドレッシングサブ領域の各々は、ドレッシング面に垂直な方向に沿って延在し、第2のドレッシングサブ領域が延在することによって形成されたゾーン間の間隔を埋める小さな直方体を形成する。それにより、直方体の形状の複合ドレッサが形成される。
【0034】
複合ドレッサが比較的大きなサイズを有する場合、例えば、長さが20mm~300mmの範囲、幅が20mm~200mmの範囲、高さが10mm~150mmの範囲の場合、複合ドレッサは、工作物を直接ドレッシングするために使用することができる。一方、複合ドレッサが比較的小さいサイズを有する場合、例えば、長さが5mm~30mmの範囲、幅が5mm~30mmの範囲、高さが5mm~20mmの範囲の場合、複合ドレッサは、インプリドレッサの前方溝にクランプして用いてもよい。
【0035】
別の実施形態では、複合ドレッサは、円筒の形状を有してもよく、ドレッシング面は、円筒の曲面であってもよい。いくつかの実施形態では、第1のドレッシングサブ領域の各々、第2のドレッシングサブ領域の各々、および/または第3のドレッシングサブ領域の各々は、円筒状の複合ドレッサの中心軸に向かって延在し、ディスクの形状を形成するものであってもよい。各ドレッシングサブ領域の幅は、各ディスクの厚さである。これらのディスクは、同じ形状の側面を有し、これらのディスクは、それらの形状の側面によって互いに接続される。さらに、複合ドレッサは、ロッドと組み合わされてドレッシング工具を形成することができ、ロッドは複合ドレッサの中心軸に配置される。円筒状の複合ドレッサは、ロッドによって貫通されてもよく、または円筒状の複合ドレッサは、ロッドの一端にセットされてもよい。
【0036】
本発明の他の目的、利点、および新規な特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】超研削砥石をドレッシングする実施例1の複合ドレッサを示す概略図
【
図2】実施例1、参考例1および参考例2における超研削砥石の直径のばらつきとドレッシング時間との関係を示す関係図
【
図3A】ドレッシング工程前の超研削砥石を示す概略図
【
図3B】参考例1のドレッサを用いたドレッシング処理後の超研削砥石を示す概略図である。
【
図3C】参考例2のドレッサを用いたドレッシング処理後の超研削砥石を示す概略図
【
図3D】実施例1のドレッサを用いたドレッシング処理後の超研削砥石を示す概略図
【実施例】
【0038】
以下、本発明の利点及び効果を当業者が容易に理解することができる実施例を説明する。ただし本明細書に記載された実施例の説明は、例示のみを目的とした好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明を実施または適用するために、様々な修正および変形を行うことができる。
【0039】
<実施例1:複合ドレッサ>
図1を参照すると、複合ドレッサ10は、超研削砥石20をドレッシングするために使用されたドレッシング面11を備えている。ドレッシング面11は、第1のドレッシング領域111および第2のドレッシング領域112からなり、第1のドレッシング領域111は、2つの第1のドレッシングサブ領域1111からなり、第2のドレッシングサブ領域は、3つの第2のドレッシングサブ領域1121からなっている。第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121は、交互に配置され、すなわち、ドレッシング面11において、ドレッシングサブ領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第1のドレッシングサブ領域1111、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第1のドレッシングサブ領域1111、および1つの第2のドレッシングサブ領域1121の順に配列されている。2つの第1のドレッシングサブ領域1111は、互いに直接接続されず、独立してセットされ、同様に、3つの第2のドレッシングサブ領域1121は、互いに直接接続されず、独立してセットされている。
【0040】
第1のドレッシング領域111の材料は銅金属であり、第2のドレッシング領域112の材料は、炭素含有量が0.45wt%の中炭素鋼である。
【0041】
複合ドレッサ10は、直方体の形状を有し、直方体の上面がドレッシング面11である。第1のドレッシングサブ領域1111の各々および第2のドレッシングサブ領域1121の各々は、ドレッシング面11に垂直な方向に沿ってドレッシング面11から複合ドレッサ10の反対側の表面まで延在し、小さな直方体を形成しており、これら小さな直方体は、全て同じ形状を有し、並列に接続されている。
【0042】
また、ドレッシング面11において、第1のドレッシングサブ領域1111の長さは、15mm、幅は50mmであり、第1のドレッシングサブ領域1111の面積は750mm2である。また、第2のドレッシングサブ領域1121の長さは15mm、幅50mmであり、第2のドレッシングサブ領域1121のそれぞれの面積は750mm2である。つまり、ドレッシング面11は、長さ75mm、幅50mmであり、第1のドレッシングサブ領域1111と第2のドレッシングサブ領域1121とは、それぞれ同じ面積サイズである。したがって、ドレッシング面における第1のドレッシング領域111の総面積と第2のドレッシング領域112の総面積との比は、2:3である。
【0043】
<参考例1:ドレッサ>
参考例1のドレッサは、実施例1の複合ドレッサと同じ大きさの形状を有している。すなわち、参考例1のドレッサは、長さ75mm、幅50mmのドレッシング面を有している。ただし、参考例1のドレッサは、金属銅のみで構成されている。
【0044】
<参考例2:ドレッサ>
参考例2のドレッサも、実施例1の複合ドレッサと同じ大きさの形状を有している。すなわち、参考例2のドレッサは、長さ75mm、幅50mmのドレッシング面を有している。ただし、参考例2のドレッサは、中炭素鋼のみで作製されている。
【0045】
<解析1:超研削砥石をドレッシングするドレッサのドレッシング効率>
実施例1の複合ドレッサ、参考例1のドレッサ及び参考例2のドレッサを用いて、同種の超研削砥石を同一ドレッシング工程で順次ドレッシングし、その後、ドレッシング期間における各記録時点及びそれに対応する超研削砥石の直径のばらつきを記録し、
図2に示すような関係図を導出した。
【0046】
ドレッサの長さ方向をX軸、ドレッサの幅方向をY軸と定義した。さらに、一回送り量をドレッサがZ軸に沿って一回移動した距離と定義し、横方向の移動量(横行量)をドレッサがY軸に沿って一回移動した距離と定義した。さらに、重要な試験条件を以下のように記録した。
1.砥石の仕様:1A1の形状の仕様B120Q75BWのダイヤモンド/CBNホイール(KINIK Companyから入手可能な);
2. 研削方式:平面研削;
3. 砥石回転速度: 10m/s;
4. ドレッサの移動速度: 10m/min;
5. 単送量:0.03 mm;
6. 横行量: 1mm
【0047】
<解析2:切り屑の平均長さ>
実施例1の複合ドレッサおよび参考例1、2のドレッサをそれぞれ5分間のドレッシング工程に使用した後、実施例1の複合ドレッサおよび参考例1、2のドレッサから生成した切り屑をそれぞれ回収し、光学顕微鏡を用い、適宜の倍率で当該切り屑の写真を観察、撮影した。続いて、市販の画像記録および処理ソフトウェア(MotiConnect)を使用して、切り屑の写真を分析し、切り屑の長さを得た。分析結果を記録した。結果は以下のようになった。
【0048】
実施例1の複合ドレッサから生成した切り屑の長さは、200μm~3mmであり、これは、概ね2つの群に分類することができ、一方の群は、0.8mm~3mmの比較的長い長さを有し、他方の群は、200μm~600μmの比較的短い長さを有していした。
【0049】
参考例1のドレッサから生成した切り屑の長さは1mm~5mmであり、平均長さは3mmであった。
【0050】
参考例2のドレッサから生成した切り屑の長さは200μm~600μmであり、平均長さは400μmであった。
【0051】
<複合ドレッサの特性に関する考察>
図2及び
図3A~3Dを参照する。
図3Aは、ドレッシング工程前の超研削砥石20を示したものであり、超研削砥石20は、ドレッシング201前の作業面と、複数の砥粒21とを有しており、砥粒は、超研削砥石20のドレッシング201の前には作業面からわずかに突出していた。
【0052】
参考例1及び2のドレッサと、実施例1の複合ドレッサとをそれぞれ一定時間(30分)のドレッシング工程に使用した後の、3つの超研削砥石20をそれぞれ
図3B~3Dに示した。
【0053】
超研削砥石20のドレッシング201前の作業面と、
図3B~
図3Dのドレッシング201'後の各作業面との距離とを比較すると、
図3Dの距離hは、
図3Bの距離hよりも明らかに大きい。
図3Cについては、超研削砥石20のドレッシング201'後の作業面とドレッシング201前の作業面とはほぼ同じであり、それは
図2からも分かり、距離hは記されていない。要するに、ドレッシング効率の解析では、実施例1の複合ドレッサが最も優れ、参考例1のドレッサがその次、参考例2のドレッサが最も劣っていた。
【0054】
また、参考例1のドレッサは、ドレッシング工程の初期段階では、許容可能な程度のドレッシング効率を有していたが、ドレッシング工程が進むにつれて、超研削砥石の直径のばらつきの増え方が明らかに減少した。参考例1のドレッサは、超研削砥石に対するドレッシング処理の後期段階でドレッシング効率が低下し、全体的としてのドレッシング効率が不十分であることを示した。その理由は、参考例1のドレッサは、
図3Bに示すように、長い切り屑12を生じ、この長い切り屑12が、超研削砥石20のドレッシング201'後に、ワーク面上に連続的に蓄積し、また、互いに絡み合い、その結果、超研削砥石20のドレッシング201'後に、ワーク面を目詰まりさせることになったと考えられ、これにより、参考例1のドレッサのドレッシング効率が阻害されたものである。
【0055】
また、参考例2のドレッサは、
図2に示すように、ドレッシング効率が最も低かった。その理由は、
図3Cに示すように、参考例2のドレッサから生成された短い切り屑13は、超研削砥石20のドレッシング201′後の作業面に深く差し込んで、超研削砥石20の結合剤を掘り出すことができず、また、参考例2のドレッサから生じた短い切り屑13は飛散しやすく、有効なドレッシング機能を発揮できなかったためであると考えられる。
【0056】
さらに、
図2から、実施例1の複合ドレッサは、高いドレッシング効率を維持し、ドレッシング処理全体を通して、ドレッシング持続時間にほとんど影響されなかったことが分かる。これは、実施例1の複合ドレッサが、第2のドレッシング領域に接続する第1のドレッシング領域を有し、両者が交互に配置されたためと考えられる。
図3Dに示すように、第1のドレッシング領域からは長い切り屑12が生成し、第2のドレッシング領域からは短い切り屑13が生成することができ、複合材料ドレッサから製造された長い切り屑12と短い切り屑13の両方が、ドレッシング処理中に同時に超研削砥石20の同じ領域に作用することができた。長い切り屑12は、砥粒21を取り囲む結合剤を効果的に除去することができ、その結果、砥粒21は、超研削砥石20のドレッシング201'の後に作業面から再び突出することができた。また、短い切り屑13は、長い切り屑12が絡み合うのを防ぐことができ、それにより、長い切り屑12が超研削砥石20のドレッシング201'の後に作業面が目詰まりするのを防止することができた。その結果、実施例1の複合ドレッサは、最も高いドレッシング効率を有していた。
【0057】
さらに、
図2を参照すると、同じドレッシング深さを達成するまでの時間については、例えば、15μmの研削砥石の直径のばらつきに到達するために、実施例1の複合ドレッサは、ドレッシングに5分未満しかかからなかったが、参考例1のドレッサは、ドレッシングに約15分を要した。これは、本発明の複合ドレッサが実際にドレッシング効率を改善することを示しており、本発明の複合ドレッサは、必要とされるドレッシング時間を3分の1未満にまで短縮することできた。したがって、複合ドレッサの寿命も延ばすことができた。
【0058】
前述の実施例1に加えて、本発明の複合ドレッサは、特許請求の範囲に係る発明の効果に影響を及ぼすことなく、種々の要請に応じて、以下の実施例2~4および6のような異なる形状または異なるサイズを採用してもよい。あるいは、本発明の複合ドレッサのドレッシング面は、実施例5のように、少なくとも1つの第3のドレッシング領域を含んでもよい。但し、それらに限定されるものではない。
【0059】
<実施例2:複合ドレッサ>
実施例2の複合ドレッサ10の形状を図示した
図4を参照すると、実施例2の複合ドレッサ10は、実施例1の複合ドレッサ10と同じ組成を有するものとし、実施例1の複合ドレッサ10の構造と同様とした。両者の主な相違は、第1のドレッシング領域111及び第2のドレッシング領域112から延在することによって形成された幾何学的形状である。この幾何学的形状は、複合ドレッサ10の反対側の端部に向かってドレッシング面11に垂直な方向に沿って形成されている。
【0060】
実施例2の複合ドレッサ10は、超研削砥石をドレッシングするために使用されるドレッシング面11を有している。ドレッシング面11は、第1のドレッシング領域111および第2のドレッシング領域112からなり、第1のドレッシング領域111は、2つの第1のドレッシングサブ領域1111からなり、第2のドレッシング領域112は、3つの第2のドレッシングサブ領域1121からなっている。第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121は、交互に配置され、すなわち、ドレッシング面11において、ドレッシングサブ領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第1のドレッシングサブ領域1111、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第1のドレッシングサブ領域1111、および1つの第2のドレッシングサブ領域1121の順に配列されている。2つの第1のドレッシングサブ領域1111は、互いに直接接続することなく独立して設置され、同様に、3つの第2のドレッシングサブ領域1121は、互いに直接接続することなく独立して設置されている。
【0061】
複合ドレッサ10は、直方体の形状を有し、ドレッシング面11は、直方体の上面である。3つの第2のドレッシングサブ領域1121は、それぞれ、ドレッシング面11から複合ドレッサ10の反対側の端部にドレッシング面11に垂直な方向に沿って延在して、3つの小さな立方形を形成しており、これらの小さな立方形は互いに平行である。これらの小さな立方形は、さらにその側面の一部から側方に延在し、隣接する小さな立方形と連結している。すなわち、第2のドレッシングサブ領域1121から延びることによって形成されるゾーンは、複合ドレッサ10の側面から見たとき反時計回りに回転した文字「E」のように見える櫛形ゾーンを示している。
【0062】
さらに、2つの第1のドレッシングサブ領域1111は、ドレッシング面11に垂直な方向に沿ってそれぞれ延在し、第2のドレッシングサブ領域1121から延在することによって形成されるゾーン間の間隔を満たす小さな直方体を形成している。
【0063】
ドレッシング面11において、第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121の各々は、同じ幅を有し、したがって、第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121はそれぞれ同じ面積サイズを有している。
【0064】
<実施例3:複合ドレッサ>
実施例3の複合ドレッサ10は、実施例1の複合ドレッサ10と同じ組成を有し、実施例1の複合ドレッサ10の同様の構造とした。両者の主な違いは、複合ドレッサのサイズである。
【0065】
図5を参照すると、複合ドレッサ10は、長さ12mm、幅8mmのドレッシング面11を有している。複合ドレッサ10は、ペン状インプリドレッサ30の前溝31にクランプされる。複合ドレッサ10で研削砥石をドレッシングするときに、交互に配置されたドレッシング領域(すなわち、第1のドレッシング領域および第2のドレッシング領域)を研削砥石が擦ることで、本発明の効果を達成することができる。
【0066】
<実施例4:複合ドレッサ>
図6を参照すると、実施例4の複合ドレッサ10は、実施例1の複合ドレッサ10と同じ組成を有し、両者共に、ドレッシング面11における第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121配列順序は同じである。両者の主な違いは、実施例4の複合ドレッサ10の形状を円筒としたことであり、従って、ドレッシング面11は円筒の曲面である。
【0067】
第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121は、それぞれ、円筒状の複合ドレッサ10の中心軸に向かって延在されて、同じ厚さの中空ディスクの形状を形成している。第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121のそれぞれの幅は、中空ディスクの厚さであり、第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121からそれぞれ延在することによって形成される中空ディスクは、同じサイズの環状の中空側面を有している。これらの中空ディスクは、同じ形状の側面を有し、それらの形状の側面同士が互いに接続されている。また、ドレッシング面11において、第1のドレッシングサブ領域1111及び第2のドレッシングサブ領域1121は、それぞれ25mmの幅を有しており、第1のドレッシングサブ領域1111及び第2のドレッシングサブ領域1121は、それぞれ同じ面積を有している。
【0068】
また、ロッド40を複合ドレッサ10の中心軸に配置し、ロッド40が円筒状の複合ドレッサ10を貫通することで、ドレッシング装置を形成している。他の実施形態では、ロッド40を貫通させるのではなく、複合ドレッサ10をロッド40の一端にセットしてもよい。
【0069】
<実施例5:複合ドレッサ>
図7を参照すると、実施例5の複合ドレッサ10は、実施例2の複合ドレッサ10と形状が類似しているが、実施例5および実施例2の複合ドレッサ10の主な違いは、実施例5のドレッシング面11では、第2のドレッシング領域112が4つの第2のドレッシングサブ領域1121から構成され、さらに第3のドレッシング領域113を有することである。
【0070】
実施例5の複合ドレッサ10は、ドレッシング面11を有している。ドレッシング面11は、第1のドレッシング領域111、第2のドレッシング領域112、および第3のドレッシング領域113からなり、第1のドレッシング領域111は、2つの第1のドレッシングサブ領域1111からなり、第2のドレッシング領域112は、4つの第2のドレッシングサブ領域1121からなり、第3のドレッシング領域113は、1つの第3のドレッシングサブ領域1131からなっている。第1のドレッシングサブ領域1111、第2のドレッシングサブ領域1121、および第3のドレッシングサブ領域は、順番に配置されている。すなわち、ドレッシング面11において、ドレッシングサブ領域は、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第1のドレッシングサブ領域1111、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第3のドレッシングサブ領域1131、1つの第2のドレッシングサブ領域1121、1つの第1のドレッシングサブ領域1111、および1つの第2のドレッシングサブ領域1121の順に配列されている。
【0071】
2つの第1のドレッシングサブ領域1111の材料は銅金属とした。第2のドレッシングサブ領域1121の材料は、2wt%の炭素含有量を有する銑鉄とした。第3のドレッシング領域113は、基材および複数の砥粒を含み、基材の材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、銅-錫合金、ニッケル金属、および/またはセラミック材料であってもよく、砥粒の材料は、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、またはダイヤモンドであってもよい。
【0072】
複合ドレッサ10は、直方体の形状を有し、ドレッシング面11は、直方体の上面である。4つの第2のドレッシングサブ領域1121は、それぞれ、ドレッシング面11から複合ドレッサ10の反対側の端部にドレッシング面11に垂直な方向に沿って延在して、互いに平行な4つの小さな立方形を形成し、これらの小さな立方形の側面の一部から側方にさらに延在し、隣接する小さな立方形を連結している。すなわち、第2のドレッシングサブ領域1121から延びることによって形成されるゾーンは、複合ドレッサ10の側面から見たとき櫛形のゾーンを示す。さらに、2つの第1のドレッシングサブ領域1111および1つの第3のドレッシングサブ領域1131は、それぞれ、ドレッシング面11に垂直な方向に沿って延在し、第2のドレッシングサブ領域1121から延在することによって形成されるゾーン間の長方形の間隔を満たす小さな直方体を形成している。
【0073】
ドレッシング面11には、第1のドレッシングサブ領域1111、第2のドレッシングサブ領域1121および第3のドレッシングサブ領域1131がそれぞれ平行に配置されている。第1のドレッシングサブ領域1111、第2のドレッシングサブ領域1121、および第3のドレッシングサブ領域1131は同じ幅を有しているので、第1のドレッシングサブ領域1111、第2のドレッシングサブ領域1121、および第3のドレッシングサブ領域1131のそれぞれの面積も同じである。したがって、ドレッシング面11において、第1のドレッシング領域111の総面積と第2のドレッシング領域112の総面積との比は1:2であり、第1のドレッシング領域111の総面積と第2のドレッシング領域112の総面積との合計と、第3のドレッシング領域113の総面積との比は6:1である。
【0074】
<実施例6:複合ドレッサ>
図8を参照すると、複合ドレッサ10は、ドレッシング面11を備えており、ドレッシング面11は、第1のドレッシング領域111および第2のドレッシング領域112からなり、第1のドレッシング領域111は、16の第1のドレッシングサブ領域1111からなり、第2のドレッシング領域112は、16の第2のドレッシングサブ領域1121からなっている。ドレッシング面11には、第1のドレッシングサブ領域1111と第2のドレッシングサブ領域1121とが交互に配置され、市松模様が形成されている。
【0075】
第1のドレッシングサブ領域1111の材料は銅金属とした。第2のドレッシングサブ領域1121の材料は、0.45wt%の炭素含有量を有する中炭素鋼とした。
【0076】
複合ドレッサ10は、直方体の形状を有し、ドレッシング面11は、直方体の上面である。第1のドレッシングサブ領域1111の各々および第2のドレッシングサブ領域1121の各々は、ドレッシング面11に垂直な方向に沿ってドレッシング面11から複合ドレッサ10のその反対側の表面まで延在し、小さな直方体を形成し、これら小さな直方体の全ては、同じ形状を有し、側面と側面とが連結されている。
【0077】
また、ドレッシング面11において、ドレッシング面11の長さは80mm、幅は40mmであり、第1のドレッシングサブ領域1111の長さは10mm、幅は10mmであり、第1のドレッシングサブ領域1111の面積は100 mm2である。一方、第2のドレッシングサブ領域1121も、それぞれ、長さ10mmおよび幅10mmを有し、したがって、第2のドレッシングサブ領域1121の各々の面積も100mm2である。すなわち、第1のドレッシングサブ領域1111および第2のドレッシングサブ領域1121は、それぞれ同じ面積を有している。したがって、ドレッシング面における第1のドレッシング領域111の総面積と第2のドレッシング領域112の総面積との比は、1:1である。
【0078】
前述の説明において、本発明の構造および特徴の詳細とともに、本発明の多くの特徴および利点を記載してきたが、本開示は、例示的なものにすぎない。詳細において、特に、添付の特許請求の範囲を記述する用語の広範な一般的意味が包含する範囲で、本開示の原理内の部品の形状、サイズ、および配置の事項において、変更がなされてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10:複合ドレッサ
11:ドレッシング面
12:長い切り屑
13:短い切り屑
20:超研削砥石
30:ペン状インプリドレッサ
111:第1のドレッシング領域
112:第2のドレッシング領域
1111:第1のドレッシングサブ領域
1121:第2のドレッシングサブ領域