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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】架橋性オルガノシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20230824BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021507944
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2018072356
(87)【国際公開番号】W WO2020035152
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ、オステンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、ステップ
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508616(JP,A)
【文献】特開2015-101645(JP,A)
【文献】特開2011-246680(JP,A)
【文献】特開2014-084417(JP,A)
【文献】米国特許第02567110(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 77/00 - 77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)一般式(II)のシラノールのアルカリ金属塩および/またはその縮合物と、(ii)一般式(III)のクロロシランと、の反応生成物である脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン、ただし、成分(i)において、アルカリ金属:ケイ素の平均モル比が0.10~2.00であり、シリコネート成分(i)および/または式(III)のクロロシラン(ii)が、脂肪族炭素-炭素多重結合を有さない芳香族炭化水素基を少なくとも1個含み、
(B)2個のSi結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、ならびに
(C)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進する触媒
を含むヒドロシリル架橋性組成物。
(OH)3-pSi(OM) (II)
SiCl (III)
[式中、
Mは、アルカリ金属カチオンを表し、
RおよびRは、互いに独立して、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基を表し、
は、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する一価の炭化水素基を表し、
およびRは、互いに独立して、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族炭素-炭素多重結合を有さない芳香族炭化水素基を表し、
aは0または1であり、
bは0または1であり、ただし、a+b=1であり、
pは1、2または3であり、
rは0、1、2または3であり、
tは0、1または2であり、ただしr+t=2である。]
【請求項2】
成分(A)が、シリコネート成分(i)1モル当量当たり、クロロシラン(ii)1.0~20.0モル当量の反応生成物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オルガノポリシロキサン(A)が、平均で9~25個のケイ素原子を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
オルガノポリシロキサン(A)が、平均式(I)を有するものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
[R SiO3/2[R SiO1/2 (I)
[式(I)中、R、R、R、R、R、a、b、rおよびtは、上記で定義された通りであり、
mは、0.50以上0.70以下であり、
nは、0.30以上0.50以下であり、
ただし、式(I)において、和b+t≠0であり、和m+nが1である。]
【請求項5】
結合剤(B)が、式(IV)の単位を含む有機ケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
SiO(4-e-f-g)/2 (IV)
[式(IV)中、
は、同一であっても異なっていてもよく、一価または二価の、SiC結合した、必要に応じて置換された、脂肪族飽和炭化水素基を表し、
は、同一であっても異なっていてもよく、一価または二価の、SiC結合した、必要に応じて置換された、脂肪族飽和芳香族炭化水素基を表し、
eは、0、1、2または3であり、
fは、0、1または2であり、
gは、0、1または2であり、
ただし、e+f+g≦4であり、分子当たり2個のSi結合水素原子が存在する。]
【請求項6】
結合剤(B)は、二価の、SiC結合した、式(IV)の2つの単位を互いに連結する脂肪族飽和芳香族炭化水素基である基Rを、分子当たり少なくとも1個含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
(A)脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン、
(B)2個のSi結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、
(C)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進する触媒、
必要に応じて(E)さらなる構成要素、ならびに
必要に応じて(F)溶媒
を含む組成物であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記個々の成分を混合することにより、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項9】
必要に応じて有機溶媒(iii)中で、および必要に応じて補助塩基(iv)の存在下、成分(i)とクロロシラン(ii)とを反応させた直後に、成分(A)を、水性後処理し、脱揮し、続いて、任意の所望の順序で、有機ケイ素成分(B)および必要に応じて使用される成分(E)および(F)と混合し、続いて、必要に応じて成分(F)との混合物として成分(C)を加えることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を架橋することにより製造される成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル架橋性オルガノポリシロキサン組成物、その製造方法、およびその使用、ならびにそれから得られうる加硫物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族炭素-炭素多重結合を有する反応性単位を含むオルガノポリシロキサン樹脂は、ヒドロシリル化/付加反応によって、触媒(通常は白金含有触媒)の存在下で、2個の反応性SiH官能基を有する適切な結合剤(koppler)または少なくとも3個の反応性SiH官能基を有する架橋剤で架橋することができる。不飽和ポリエステル樹脂またはエポキシ樹脂などの有機系と比較した加硫オルガノポリシロキサン樹脂の利点は、高いUV耐性と高い耐熱性とを兼ね備えているという特徴である。さらに、オルガノポリシロキサン樹脂は誘電率が低く、化学薬品に対する安定性が良好である。これらの理由から、オルガノポリシロキサン樹脂は、例えば、電気または電子部品の製造用の埋込用樹脂として、特に高性能LED(=発光デバイス)などの光学半導体素子の製造に使用されており、また、巻線を固定するためや、ターン間の空洞を埋めるためなど、例えばトラクションモーターの絶縁材料として使用され、またコーティング材料として使用されている。強度または耐久性に対するより高い要求が必要とされる用途向けの付加架橋オルガノポリシロキサン樹脂組成物の活用可能性を拡大するために、繊維、強化フィラーまたは改質剤を使用することにより、機械的特性、強度または破壊靭性を最適化できる。しかしながら、オルガノポリシロキサン樹脂の加硫ネットワークは、一般的に有機系と比較してより脆く、これは、より低い延性、すなわちポリマーネットワークの低い流動特性に起因する可能性がある。該材料の低い流動特性とその結果としての比較的低い破壊靭性も、流量比の高い値によって圧縮試験曲線で確認できる。さらに、このような脆性材料は、通常、不均一なポリマーネットワークを示し、それに応じて、動的機械分析(DMA)のtanδ測定曲線において、半値全幅が比較的高く、ガラス転移温度(Tg)での減衰最大tanδmaxの高さが比較的低いことによって確認できる、好ましくない減衰特性を示す。対照的に、ガラス転移での狭く高いtanδピーク(=高減衰)は、分子量分布が狭い熱可塑性材料で一般的に観察される比較的均質なネットワークを示す。しかしながら、これは典型的な熱硬化性材料では通常観察されない。逆に、より有利な流動特性(すなわち、流量比の低い値)、そしてその結果、より高い破壊靭性を示すオルガノポリシロキサン樹脂の加硫ネットワークは、比較的低い強度、すなわち低い弾性率を示す傾向がある。
【0003】
国際公開第2016/001154号の実施例には、アルカリシリコネートまたはその縮合物を反応させることにより、芳香族基を有さない環状シロキサンを製造する簡単な方法が記載されている。
国際公開第2014/065432A1号には、ヒドロシリル架橋性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/001154号
【文献】国際公開第2014/065432A1号
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、強度が高く(すなわち弾性率が高く)、しかも、小さい値の流量比と高く狭い減衰最大tanδmaxとに現れる高い破壊靭性を有する加硫物を得ることができる架橋性組成物を提供することを目的としている。
【0006】
本発明は、
(A)(i)一般式(II)のシラノールのアルカリ金属塩(いわゆるアルカリ金属シリコネート)および/またはその縮合物と、(ii)一般式(III)のクロロシランと、の反応により製造される脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン、ただし、成分(i)において、アルカリ金属:ケイ素の平均モル比が0.10~2.00、好ましくは0.10~1.50、特に好ましくは0.40~1.00、とりわけ好ましくは0.50~0.90であり、シリコネート成分(i)および/または式(III)のクロロシラン(ii)が、脂肪族炭素-炭素多重結合を有さない芳香族炭化水素基を少なくとも1個含み、
(B)2個のSi結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、ならびに
(C)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進する触媒
を含むヒドロシリル架橋性組成物を提供する。
一般式:Ra1 b(OH)3-pSi(OM)p (II)
一般式:R7 r89 tSiCl (III)
[上記式中、
Mは、アルカリ金属カチオンを表し、
RおよびR7は、互いに独立して、同一であっても異なっていてもよく、アルキル基を表し、
8は、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族炭素-炭素多重結合を有する一価の炭化水素基を表し、
1およびR9は、互いに独立して、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族炭素-炭素多重結合を有さない芳香族炭化水素基を表し、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、ただし、a+b=1であり、
pは、1、2または3であり、好ましくは1または2、特に好ましくは1であり、
rは、0、1、2または3であり、好ましくは1または2であり、
tは、0、1または2であり、ただしr+t=2である。]
【0007】
本発明の文脈において、オルガノポリシロキサンという用語は、シロキサンポリマー、シロキサンオリゴマー、およびさらにシロキサン二量体を包含することを意図している。
【0008】
基RおよびR7は、好ましくはメチル、n-ブチル、n-オクチル、エチルヘキシル、2,2,4-トリメチルペンチルまたは2,4,4-トリメチルペンチルであり、特に好ましくはメチルである。
【0009】
基R8は、好ましくはビニルまたは2-プロペニルであり、特に好ましくはビニルである。
【0010】
基R1およびR9は、好ましくは互いに独立して、フェニル、o-,m-およびp-トリルまたはベンジルであり、特に好ましくはフェニルである。
【0011】
アルカリ金属カチオンMは、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムであり、特に好ましくはナトリウムまたはカリウムである。
【0012】
本発明において使用される成分(i)は、式(II)の純粋なシランもしくは式(II)のシランの縮合物、または式(II)のシランとその縮合物との混合物であってもよく、本発明において使用される成分(i)は、好ましくは、主として式(II)のシランの縮合物からなる。本発明において使用される成分(i)は、特に、90重量%超、好ましくは95重量%超、特に好ましくは99重量%超程度の、とりわけ好ましくは100重量%程度の、式(II)のシランの縮合物からなる。
【0013】
本発明において使用される成分(i)の例は、[PhSiO2/2(OM)]4、[PhSiO2/2(OM)]3、[Ph(OH)1.50SiO1/2(OM)0.502、[Ph(OH)1.35SiO1/2(OM)0.652、[Ph(OH)SiO1/2(OM)]2、Ph(OH)2.35Si(OM)0.65、[Me(OH)1.35SiO1/2(OM)0.652、[Me(OH)SiO1/2(OM)]2、Me(OH)2.3Si(OM)0.7、Me(OH)2.5Si(OM)0.5、[(Me(OH)SiO2/22(MeSiO2/2(OM))2]、[Me(OH)1.5SiO1/2(OM)0.52、[Me(OH)1.35SiO1/2(OM)0.652、Me(OH)1.80Si(OM)1.20、Me(OH)0.30SiO2/2(OM)0.70、[MeSiO2/2(OM)]4、[MeSiO2/2(OM)]3および[(Me(OH)O1/2(OM))0.58(Ph(OH)SiO1/2(OM))0.42]である。ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Mはナトリウムまたはカリウムであり、また、Wacker Chemie AG(ドイツ、ミュンヘン)の市販品SILRES(登録商標)BS Pulver Sを使用することができる。
【0014】
本発明において使用される成分(i)は、好ましくは、20℃および1013hPaで固体であり、該固体は、これらの条件下で好ましくは水溶性である。
【0015】
本発明において使用されるシリコネート成分(i)は、市販品であるか、または例えば国際公開第2013/041385号、国際公開第2013/075969号および2012/022544号に記載されているような、化学で一般的に使用される方法によって製造可能である。
【0016】
本発明において使用されるクロロシラン(ii)の例は、Me2ViSiCl、MeViPhSiCl、ViPh2SiCl、Me2BchSiClおよびMe2DcpSiClであり、Me2ViSiClが好ましく、ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Bchはビシクロヘプテニルであり、Dcpは3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデニルであり、Phはフェニルである。
【0017】
クロロシラン(ii)は、市販品であるか、または化学で一般的に使用される方法によって製造可能である。
【0018】
本発明において使用されるクロロシラン(ii)は、好ましくは、20℃および1013hPaで液体である。
【0019】
本発明において使用される成分(A)の製造は、シリコネート成分(i)1モル当量当たり、クロロシラン(ii)を望ましくは1.0~20.0モル当量、好ましくは1.0~10.0モル当量、特に好ましくは1.0~5.0モル当量、とりわけ好ましくは1.0~3.0モル当量使用する。
【0020】
本発明においてオルガノポリシロキサン(A)の製造は、好ましくは有機溶媒(iii)を使用する。
【0021】
必要に応じて使用される溶媒(iii)の例は、溶媒(F)について以下に記載される例であり、好ましくはエーテルまたは飽和炭化水素であり、特に好ましくはメチルtert-ブチルエーテル、ExxonMobil社の市販品ISOPAR(商標)E、またはn-ヘキサンである。
【0022】
本発明においてオルガノポリシロキサン(A)は、水を周囲の雰囲気からほとんど除外した状態で製造することが好ましく、それは、例えば、1013hPaにおいて0℃未満の露点を好ましくは有する乾燥空気、または窒素などの保護ガスを用いたブランケティングによって実現できる。
【0023】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、少なくとも一方の成分が液状溶媒(iii)中にある、すなわち溶解または懸濁状態にある方法で、特に好ましくは、成分(i)および(ii)の両方が液状溶媒中にある、すなわち溶解または懸濁状態にある方法で、成分(i)をクロロシラン(ii)に加えるか、またはクロロシラン(ii)を成分(i)に加えることにより、製造することが好ましい。
【0024】
本発明において反応中に形成される塩化水素を捕捉するために、補助塩基(iv)を加えてもよい。補助塩基(iv)としては、塩基性塩、またはアミン類、尿素類、イミン類、イミダゾール類、グアニジン類またはアミジン類などの含窒素化合物を用いてもよい。塩基性塩(iv)の例は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウムおよび酸化マグネシウムである。含窒素化合物(iv)の例は、アンモニア、エチルアミン、ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、尿素、テトラメチル尿素、グアニジン、テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N-メチルイミダゾール、N-エチルイミダゾール、ピペリジン、ピリジンおよびピコリンである。
【0025】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)を製造するために含窒素化合物(iv)を使用する場合、これらは、窒素原子がN結合水素原子を有さない化合物であることが好ましい。
【0026】
本発明においてオルガノポリシロキサン(A)を製造するために補助塩基(iv)を使用する場合、補助塩基(iv)のクロロシラン(ii)に対するモル当量比は、好ましくは1~1.5:1である。本発明において、オルガノポリシロキサン(A)を製造する際に補助塩基を使用しない場合が好ましい。
【0027】
補助塩基(iv)を使用する場合、これを、成分(i)とともに最初に装入するか、または成分(i)および(ii)を補助塩基(iv)と同時に加えることが好ましく、ここで、補助塩基(iv)は、必要に応じて、溶媒(iii)に最初に装入してもよい。
【0028】
成分(i)とクロロシラン(ii)との反応終了後、揮発性成分、形成された任意の塩化物塩、および必要に応じて使用される溶媒(iii)を除去した後、混合物を直接使用してもよい。必要であれば、得られた塩化水素、アルカリ金属の塩化物塩、必要に応じて補助塩基(iv)の塩化物塩、および過剰のクロロシラン(ii)を水で洗浄除去してもよく、ここで揮発性成分、任意に使用される溶媒(iii)、および過剰のクロロシラン(ii)は、有利には最初に蒸留除去して、未反応のクロロシラン(ii)を回収する。
【0029】
本発明において使用される成分(A)は、好ましくは、環状オルガノシロキサンを少なくとも部分的に含む、種々のオルガノポリシロキサンの混合物である。
【0030】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、好ましくは平均で9~25個、特に好ましくは平均で9~20個、とりわけ好ましくは9~15個のケイ素原子を有する。
【0031】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、望ましくは平均式
[Ra1 bSiO3/2m[R7 r89 tSiO1/2n (I)
を有するものである。
【0032】
式(I)中、
R、R1、R7、R8、R9、a、b、rおよびtは、上記で定義された通りであり、
mは、0.50以上0.70以下であり、
nは、0.30以上0.50以下であり、
ただし、式(I)において、和b+t≠0であり、和m+nが1である。
【0033】
平均式(I)のオルガノポリシロキサン(A)において、比n:mは、好ましくは0.40~1.00、特に好ましくは0.40~0.80、とりわけ好ましくは0.45~0.70である。
【0034】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、好ましくは平均式
[Ra1 bSiO3/2m[Mer89 tSiO1/2n (I’)
を有するものである。
【0035】
式(I’)中、R、R1、R8、R9、a、b、r、t、mおよびnは、上記で定義された通りであり、Meはメチルであり、ただし、比n:mは0.40~1.00の範囲であり、式(I’)において、和b+t≠0および和m+nが1である。
【0036】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、
[PhSiO3/2m[MeR8PhSiO1/2n(n:m=0.40~1.00)、
[MeSiO3/2m[MeR8PhSiO1/2n(n:m=0.40~1.00)、
[PhSiO3/2m[Me28SiO1/2n(n:m=0.40~1.00)、および
[MeSiO3/2m[Ph28SiO1/2n(n:m=0.40~1.00)
から選択される平均式を有するものが特に好ましい。
ここで、R8、mおよびnは、上記で定義された通りであり、Meはメチルであり、Phはフェニルである。
【0037】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)は、
[PhSiO3/2m[MeViPhSiO1/2n(n:m=0.40~1.00)、
[MeSiO3/2m[MeViPhSiO1/2n(n:m=0.40~1.00)、および
[PhSiO3/2m[Me2ViSiO1/2n(n:m=0.40~1.00)
から選択される平均式を有するものがとりわけ好ましい。
ここで、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、Viはビニルである。
【0038】
本発明において使用される成分(A)において、式(I)の環状オルガノポリシロキサンの割合、すなわちR、R1、R7、R8、R9、a、b、rおよびtが上記で定義された通りである式(Ra1 bSi(OSiR7 r89 t)O2/23または式(Ra1 bSi(OSiR7 r89 t)O2/24のものの割合は、式(I)のオルガノポリシロキサン(A)の合計に対して、0.80以下、好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.40以下、とりわけ好ましくは0.30以下である。
【0039】
本発明において使用され、プロセスAによって製造されるオルガノポリシロキサン(A)は、未反応の反応物(i)および(ii)、クロロシラン(ii)の加水分解および二量化から生じるジシロキサン、例えば不揮発性の1,3-ジメチル-1,3-ジフェニル-1,3-ジビニルジシロキサン、と混合されていてもよく、ここで、好ましくは、未変換の反応物(i)および(ii)の含有量は0.5重量%未満であり、ジシロキサンの含有量は5重量%未満である。
【0040】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)の重量平均モル質量Mwは、望ましくは900~3000g/mol、好ましくは900~2500g/mol、特に好ましくは1000~2400g/mol、とりわけ好ましくは1000~2000g/molである。
【0041】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)の数平均モル質量Mnは、望ましくは800~2000g/mol、好ましくは800~1500g/mol、特に好ましくは850~1400g/mol、とりわけ好ましくは900~1200g/molである。
【0042】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)の多分散度Mw/Mnは、1.0~3.5、望ましくは1.0~2.5、好ましくは1.1~2.3、特に好ましくは1.1~2.0、とりわけ好ましくは1.1~1.4である。
【0043】
本発明において使用されるオルガノポリシロキサン(A)の例は、
[(PhSi(OSiViMe2)O2/240.23(PhSiO3/20.50(ViMe2SiO1/20.27 (ここで、Mwは1070g/mol、Mn=930g/mol、Mw/Mn=1.15);
[(PhSiO3/24(ViMe2SiO1/240.16(PhSiO3/20.49(ViMe2SiO1/20.19 (ここで、Mwは1180g/mol、Mn=1055g/mol、Mw/Mn=1.12);
(PhSiO3/20.69(ViMe2SiO1/20.31 (ここで、Mw=1310g/mol、Mn=1160g/mol、およびMw/Mn=1.13);
(MeSiO3/20.63(ViMePhSiO1/20.37 (ここで、Mw=1150g/mol、Mn=900g/mol、およびMw/Mn=1.28);
[(ViMePhSiO1/220.05[(MeSi(OSiViMePh)O2/240.50(MeSiO3/20.30(ViMePhSiO1/20.15 (ここで、Mw=1020g/mol、Mn=690g/mol、およびMw/Mn=1.47);
(PhSiO3/20.72(ViMePhSiO1/20.28 (ここで、Mw=2660g/mol、Mn=1900g/mol、およびMw/Mn=1.40)、
(PhSiO3/20.63(ViMePhSiO1/20.37 (ここで、Mw=2410g/mol、Mn=1460g/mol、およびMw/Mn=1.65、
[(ViMePhSiO1/220.11[(PhSiO3/230.23[(PhSiO3/240.33(ViMePhSiO1/20.33 (ここで、Mw=2370g/mol、Mn=1080g/mol、およびMw/Mn=2.20)
であり、ここで、Meはメチルであり、Viはビニルであり、Phはフェニルである。
【0044】
本発明において使用される成分(B)は、任意の所望の従来知られている、2個のSi結合水素原子を含む有機ケイ素化合物、例えば、SiH官能性のシランおよびシロキサン、から選択することができる。
【0045】
結合剤(B)は、好ましくは、
式:R4 ef5 gSiO(4-e-f-g)/2 (IV)
の単位を含む有機ケイ素化合物である。
【0046】
上記式中、
4は、同一であっても異なっていてもよく、一価または二価の、SiC結合した、必要に応じて置換された脂肪族飽和炭化水素基を表し、
5は、同一であっても異なっていてもよく、一価または二価の、SiC結合した、必要に応じて置換された脂肪族飽和芳香族炭化水素基を表し、
eは、0、1、2または3、好ましくは0、1または2、特に好ましくは1または2であり、fは、0、1または2、好ましくは1または2であり、gは、0、1または2、好ましくは1または2であり、ただし、e+f+g≦4であり、分子当たり2個のSi結合水素原子が存在する。
【0047】
結合剤(B)は、分子当たり、好ましくは少なくとも1個の基R5、特に好ましくは1~4個、とりわけ好ましくは1~2個の基R5を含む。
【0048】
結合剤(B)は、二価の、SiC結合した、特に式(IV)の2つの単位を互いに連結する脂肪族飽和芳香族炭化水素基である基R5を、分子当たり少なくとも1個含むことが好ましい。
【0049】
基R4の例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-n-ブチル基、2-n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基;n-ヘキシル基などのヘキシル基;n-ヘプチル基などのヘプチル基;n-オクチル基、ならびに2,4,4-トリメチルペンチル基および2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基などのオクチル基;n-ノニル基などのノニル基;n-デシル基などのデシル基;n-ドデシル基などのドデシル基;n-ヘキサデシル基などのヘキサデシル基;n-オクタデシル基などのオクタデシル基;などのアルキル基;;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;;ならびにメチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基およびメチルメチレン基であり、好ましくはメチル基である。
【0050】
基R5の例は、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基などのアリール基;o-,m-,p-トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基などのアルカリール基;ならびにベンジル基、α-およびβ-フェニルエチル基、2-(2-メチルフェニル)エチル基、2-(3-メチルフェニル)エチル基および2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-フェニルプロペニル基および2-フェニルイソプロペニル基などのアラルキル基;ならびにフェニレン基およびメチル(フェニル)メチレン基、フェニルメチレン基およびジフェニルメチレン基、-(C64)-CH2-(C64)-、-(C64)-C(CH32-(C64)-、-(C64)-C(CH3)H-(C64)-、-(C64)-C(C65)H-(C64)-、-(C64)-C(C65)Me-(C64)-、-(C64)-C(C652-(C64)-、-(C64)-O-(C64)-、-(C64)-S-(C64)-、ならびに二価のビフェニル基、ナフタレン基、アントラセン基またはフェナントレン基であり、フェニル基、二価のビフェニル基またはフェニレン基が好ましい。
【0051】
結合剤(B)の例は、ジフェニルシラン(CAS 775-12-2)、メチル(フェニル)シラン(CAS 766-08-5)などのフェニルシラン;1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン(CAS 6689-22-1)、1,1,3-トリメチル-3-フェニルジシロキサン、1,5-ジメチル-1,3,3,5-テトラフェニルトリシロキサン、1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン、1,1,3,5,5-ペンタメチル-3-フェニルトリシロキサンなどのシロキサン単位を有する結合剤;1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(CAS 2488-01-9)、1,4-ビス(メチルフェニルシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(ジメチルシリル)-1,1’-ビフェニル、ビス(4’-(ジメチルシリル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジメチルシラン、4,4’-ビス(メチルフェニルシリル)-1,1’-ビフェニル、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジメチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)(エチル)メチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジエチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジ-n-ブチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジ-tert-ブチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジプロピルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジイソプロピルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)メタン、2,2-ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)プロパンなどのフェニレン単位や二価のビフェニル単位を有する結合剤;9,10-ビス(ジメチルシリル)アントラセン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,5-ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、2,6-ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,8-ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,6-ビス(ジメチルシリル)ナフタレン、1,7-ビス(ジメチルシリル)ナフタレンなどの二価の多環式芳香族炭化水素を含む結合剤;ならびにビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)エーテルおよびビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)スルフィドである。
【0052】
結合剤(B)は、好ましくは、ジフェニルシラン、1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(ジメチルシリル)-1,1’-ビフェニル、ビス(4’-(ジメチルシリル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジメチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジメチルシラン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)メタン、ビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)エーテルまたはビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)スルフィドである。
【0053】
結合剤(B)は、特に好ましくは、ジフェニルシラン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、4,4’-ビス(ジメチルシリル)-1,1’-ビフェニルまたはビス(4-(ジメチルシリル)フェニル)ジメチルシランであり、とりわけ好ましくは、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、4,4’-ビス(ジメチルシリル)-1,1’-ビフェニル、1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサンまたはビス(4-ジメチルシリルフェニル)ジメチルシランである。
【0054】
結合剤(B)は、市販品から選択されるか、または化学で一般的に使用される方法、例えばグリニャール反応、によって製造してもよい。
【0055】
本発明の組成物において、成分(A)および(B)は、脂肪族不飽和炭素-炭素多重結合に対するSi結合水素のモル比が望ましくは0.80~1.20、好ましくは0.85~1.10、特に好ましくは0.90~1.10、とりわけ好ましくは0.95~1.05であるような量で使用される。
【0056】
使用可能な触媒(C)としては、脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加に従来も使用されているすべての触媒が挙げられる。
【0057】
触媒(C)の例は、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウムおよびイリジウムなどの金属、好ましくは白金であり、これらは、活性炭、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素などの微細化担体物質に、必要に応じて固定されていてもよい。
【0058】
好ましく使用される触媒(C)は、白金、ならびにその化合物および錯体である。
そのような白金触媒(C)の例は、金属状および微細化白金(これらは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは活性炭などの担体上に配置されていてもよい)、白金の化合物または錯体であり、例えば、ハロゲン化白金(例えば、PtCl4、H2PtCl6・6H2O、Na2PtCl4・4H2O)、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金-アルコキシド錯体、白金-エーテル錯体、白金-アルデヒド錯体、白金-ケトン錯体(例えばH2PtCl6・6H2Oとシクロヘキサノンとの反応生成物)、白金-ビニルシロキサン錯体(特に、検出可能な量の無機結合ハロゲンを含むかまたは含まない白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)、ビス(γ-ピコリン)白金二塩化物、トリメチレンジピリジン白金二塩化物、ジシクロペンタジエン白金二塩化物、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)二塩化物、ならびに四塩化白金とオレフィンおよび第一級アミンもしくは第二級アミンまたは第一級および第二級アミンとの反応生成物(例えば1-オクテンに溶解した四塩化白金とsec-ブチルアミンとの反応生成物)、または欧州特許第110370号明細書によるアンモニウム-白金錯体、ならびにN-ヘテロ環状カルベン(NHC)との白金錯体、例えば、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン][1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン]白金(0)(CAS 849830-54-2)、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリジニリデン][1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン]白金(0)(CAS 873311-51-4)、[1,3-ビス(シクロヘキシル)イミダゾール-2-イリデン][1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン]白金(0)(CAS 400758-55-6)、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-1-イウム白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)、1,3-ビス(2,6-ジメチルフェニル)-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-1-イウム白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)および1,3-ビス(2-メチルフェニル)-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-1-イウム白金(ジビニルテトラメチルジシロキサン)である。
【0059】
触媒(C)として好ましく使用されるのは、文献でKarstedt触媒として長い間知られている白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(CAS 68478-92-2)である。
【0060】
触媒(C)は、それぞれの場合において金属元素、好ましくは白金元素として計算されるが、成分(A)および(B)の総重量に対して、望ましくは1~5000重量ppm(百万重量部当たりの重量部)の量で、好ましくは1~2000重量ppmの量で、特に好ましくは1~500重量ppmの量で、本発明の調製物で使用される。
【0061】
触媒(C)として、本発明の調製物は、Karstedt触媒(CAS 68478-92-2)を、白金元素として計算されるが、成分(A)および(B)の総重量に対して、非常に特に好ましくは5~100重量ppmの量で使用する。
【0062】
好ましい実施形態では、触媒(C)は、抑制剤(D)と混合して使用される。
成分(A)、(B)および(C)に加えて、本発明の組成物は、成分(A)、(B)および(C)とは異なるさらなる物質、例えば、抑制剤(D)、添加剤(E)および有機溶媒(F)、を含んでいてもよい。
【0063】
本発明の組成物は、ヒドロシリル架橋性組成物に従来も使用され、室温で脂肪族炭素-炭素多重結合へのSi結合水素の付加を遅らせるもの、または処理時間および架橋速度を特異的に調節するために使用できるものなどの抑制剤(D)を含んでいてもよい。
【0064】
必要に応じて使用される抑制剤(D)の例は、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オールおよび2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコール、テトラメチル-テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのポリメチルビニルシクロシロキサン、線状ビニル末端ポリジメチルシロキサン、トリアルキルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸ビス(2-メトキシ-1-メチルエチル)などのマレイン酸エステル、フマル酸ジエチルおよびフマル酸ジアリルなどのフマル酸アルキル、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシドなどの有機ヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミンおよびアミド、ホスフィンおよびホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、ニトリル、ジアジリジンおよびオキシム、ならびにアルキルチオ尿素、チウラムモノスルフィドおよびジスルフィドである。
【0065】
必要に応じて使用される抑制剤(D)の好ましい例は、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オールおよび2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコール、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどのポリメチルビニルシクロシロキサン、線状ビニル末端ポリジメチルシロキサン、トリアルキルシアヌレート、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸ビス(2-メトキシ-1-メチルエチル)などのマレイン酸エステル、フマル酸ジエチルおよびフマル酸ジアリルなどのフマル酸アルキル、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシドおよびピナンヒドロペルオキシドなどの有機ヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、ホスフィンおよびホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、ジアジリジンおよびオキシム、ならびにアルキルチオ尿素、チウラムモノスルフィドおよびジスルフィドである。
【0066】
必要に応じて使用される抑制剤(D)は、特に好ましくは1-エチニルシクロヘキサン-1-オールまたはチウラムモノスルフィドであり、とりわけ好ましくはチウラムモノスルフィドである。
【0067】
抑制剤(D)を使用する場合、それは、それぞれの場合において成分(A)および(B)の総重量に対して、好ましくは5~5000重量ppm、特に好ましくは10~2000重量ppm、とりわけ好ましくは20~1000重量ppmの量で使用される。本発明の組成物は、好ましくは抑制剤(D)を含む。
【0068】
本発明の付加架橋組成物は、当該組成物を形成する個々の成分のすべてを-50℃~30℃の温度で組み合わせた後、比較的長期間、特に数週間から、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも3ヶ月、特に好ましくは少なくとも4ヶ月、とりわけ好ましくは少なくとも5ヶ月にわたって貯蔵安定であるように調節することができる。同様に、上記組成物を形成する成分のすべてを組み合わせた後、硬化開始までの限られた作業時間(ポットライフ)しか残らないように、本発明の調製物を調節することが可能である。これは、抑制剤を加えないか、または、例えば、付加反応に対する抑制効果がそれほど顕著ではない成分(D)、例えば、1-エチニルシクロヘキサン-1-オールなどのアセチレンアルコールを加えることによって達成される。
【0069】
本発明において必要に応じて使用される成分(E)は、好ましくは、可塑剤、接着促進剤、可溶性染料、無機および有機顔料、蛍光染料、殺菌剤、芳香剤、分散剤、レオロジー添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、タックに影響を与える物質、電気的性質に影響を与える物質、熱伝導率向上剤;強度、ガラス転移温度および/または破壊靭性を高めるための改質剤;補強フィラーおよび非補強フィラー;ならびにガラス、カーボンまたはプラスチック製の繊維織物;またはそれらの組合せから選択される。
【0070】
本発明の組成物が成分(E)を含む場合、その使用量は、それぞれの場合において、成分(A)および(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~200重量部、特に好ましくは0.1~100重量部、とりわけ好ましくは0.1~50重量部である。
【0071】
必要に応じて使用される溶媒(F)の例は、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジエチルケトン、2-ヘキサノン、アセチルアセトンおよびブタン-2,3-ジオンなどのケトン;酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、酢酸2-メトキシプロピル(MPA)、ジ(プロピレングリコール)ジベンゾエートおよびエチル(エトキシ)プロピオネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n-ブチル、酢酸メチル、酢酸n-,sec-またはtert-ブチル、2-ヒドロキシプロピオン酸ブチル、プロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチルおよびマレイン酸ジメチルなどのエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンおよびN-エチル-2-ピロリドンなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリルなどのニトリル;メチラール、エチルヘキシラール、ブチラール、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサンおよびグリセロールホルマールなどのアセタール;メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジフェニルエーテル、アリルフェニルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、シクロヘキシルフェニルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ブチルフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、アニソール、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、モノ-,ジ-,トリ-またはテトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチルメチルエーテルおよび1,4-ジオキサンなどのエーテル;ジメチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシドおよびジブチルスルホキシドなどのスルホキシド;n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、ならびに2-エチルヘキサン、2,4,4-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタンおよび2-メチルヘプタンなどの異性体オクタン、Exxsol(商標)、Isopar(商標)、Hydroseal(登録商標)またはShellsol(登録商標)の商標名で入手できるような、60~300℃の沸点範囲を有する飽和炭化水素の混合物などの飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、o-,m-またはp-キシレン、ソルベントナフサおよびメシチレンなどの芳香族炭化水素;メチラール、エチルヘキシラール、ブチラール、1,3-ジオキソランおよびグリセロールホルマールなどのアセタール;1,3-ジオキソラン-2-オン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピルおよび炭酸プロピレングリコール、炭酸エチレンなどの炭酸塩;クロロホルム;ジクロロメタン;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびメチルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどの、炭素-炭素多重結合を持つ脂肪族もしくは芳香族基を有さず、Si-H基を有さない、ジシロキサンおよび線状または環状のシリコーン;ならびにそれらの混合物である。
【0072】
必要に応じて使用される溶媒(F)は、好ましくは、エーテル、芳香族炭化水素または飽和炭化水素である。
【0073】
本発明の組成物が溶媒(F)を含む場合、その使用量は、それぞれの場合において、成分(A)および(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.001~20重量部、特に好ましくは0.01~10重量部、とりわけ好ましくは0.1~5重量部である。本発明の組成物は、好ましくは溶媒(F)を含まない。
【0074】
本発明の組成物は、望ましくは、
(A)必要に応じて有機溶媒(iii)の存在下、必要に応じて補助塩基(iv)の存在下、成分(i)と成分(ii)との反応により製造される脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン、ここで、生成混合物は、好ましくは水中で後処理され、濾過され、脱揮され、
(B)2個のSi結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、および
(C)脂肪族多重結合へのSi結合水素の付加を促進する触媒、
必要に応じて(D)抑制剤、
必要に応じて(E)さらなる構成要素、ならびに
必要に応じて(F)溶媒と
を含む組成物である。
【0075】
本発明の組成物は、好ましくは、
(A)式[Ra1 bSiO3/2m[Mer89 tSiO1/2n (I’)のオルガノポリシロキサンと、ここで、b+t≠0であり、比n:mが0.40~1.00であり、
(B)2個の反応性SiH単位を有する結合剤と、
(C)触媒と、
(D)抑制剤と、
必要に応じて(E)さらなる構成要素と、
必要に応じて(F)溶媒と
を含む組成物である。
【0076】
本発明の組成物は、特に好ましくは、
(A)式[Ra1 bSiO3/2m[Mer89 tSiO1/2n (I’)のオルガノポリシロキサンと、ここで、b+t≠0であり、比n:mが0.40~1.00であり、
(B)2個の反応性SiH単位と、二価の、SiC結合した、必要に応じて置換された脂肪族飽和芳香族炭化水素基である少なくとも1個の基R5とを有する結合剤と、
(C)触媒と、
(D)抑制剤と、
必要に応じて(E)さらなる構成要素と、
必要に応じて(F)溶媒と
を含む組成物である。
【0077】
本発明の組成物は、好ましくは成分(A)~(F)以外の構成要素をさらに含まない。
【0078】
本発明において使用される成分は、それぞれの場合において、当該成分の1種であってもよく、またはそれぞれの成分の少なくとも2種の混合物であってもよい。
【0079】
(A)、(B)および(C)から構成される本発明の組成物は、23℃および1013hPaで固体または液体であってよく、好ましくは23℃および1013hPaで液体であってよい。
【0080】
(A)、(B)および(C)から構成される本発明の組成物が23℃および1013hPaで液体である場合、該組成物の動的粘度は、それぞれの場合において23℃で、好ましくは1mPa・s超1,000,000mPa・s未満、特に好ましくは10mPa・s超500,000mPa・s未満、とりわけ好ましくは100mPa・s超100,000mPa・s未満である。
【0081】
本発明の組成物の製造は、例えば、上記個々の成分を任意の所望の順序で、従来知られている方法で混合するなど、既知の方法に従って実施することができる。
【0082】
本発明はさらに、上記個々の成分を混合することにより本発明の組成物を製造する方法を提供する。
【0083】
本発明の方法では、混合は、好ましくは10℃~40℃の範囲の温度で実施することができる。しかしながら、必要に応じて、混合は、より高い温度、例えば、40℃~100℃の範囲の温度で実施することもでき、ここで、抑制剤(D)を組成物に加えることが好ましい。周囲温度で混合するときに、原料の温度に混合中のエネルギー入力による温度上昇を加えて生じる温度で混合を行うことが好ましく、必要に応じて加熱または冷却を行ってもよい。
【0084】
混合は、周囲気圧、すなわち約900~1100hPaで実施することができる。さらに、減圧下、例えば30~500hPaの絶対圧で、一時的または連続的に混合を行い、揮発性化合物および/または空気を除去するか、または高圧下、例えば1100hPa~3000hPaの絶対圧で作業することが可能であり、特に連続モードでは、例えば、これらの圧力が、ポンピング中の圧力および高温で使用される材料の蒸気圧によって閉鎖系でもたらされる場合である。
【0085】
本発明の方法は、連続的、不連続的または半連続的に実施することができ、好ましくは不連続的に実施することができる。
【0086】
本発明の組成物を製造する本発明の方法の好ましい実施形態では、構成要素(A)、(B)および(C)ならびに必要に応じて使用される成分(D)、(E)および(F)を、任意の所望の順序で混合する。
【0087】
本発明の方法が、成分(A)および(B)ならびに必要に応じて使用される成分(D)、(E)および(F)を任意の所望の順序で予混合し、次に成分(C)を、必要に応じて成分(D)または(F)との混合物として、加えることを含む場合、特に好ましい。
【0088】
さらなる特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、成分(A)および(B)ならびに必要に応じて使用される成分(E)および(F)を任意の所望の順序で予混合し、次に成分(C)と成分(D)との混合物を、必要に応じて成分(F)との混合物として、加えることを含む。
【0089】
さらなる特に好ましい実施形態では、本発明の方法は、成分(A)ならびに必要に応じて使用される成分(E)および(F)を任意の所望の順序で予混合し、次に成分(B)および(C)、必要に応じて使用される成分(D)、ならびに必要に応じて使用される成分(F)の混合物を、加えることを含む。
【0090】
好ましい実施形態では、必要に応じて有機溶媒(iii)中で、必要に応じて補助塩基(iv)の存在下、成分(i)とクロロシラン(ii)とを反応させた直後に、成分(A)を、水性後処理し、脱揮し、続いて、任意の所望の順序で、有機ケイ素成分(B)ならびに必要に応じて使用される成分(D)、(E)および(F)と混合し、必要に応じて成分(D)または(F)との混合物として成分(C)を加える。
【0091】
本発明の混合物/本発明に従って製造される混合物は、好ましくは、硬化前に脱気される。
【0092】
本発明における架橋は、好ましくは50℃~270℃、特に好ましくは70℃~200℃、とりわけ好ましくは140℃~200℃の範囲の温度で行われる。本発明における架橋は、特に好ましくは、最初に100℃~200℃の温度で行われ、続いて210℃~250℃での後硬化工程が行われる。
【0093】
本発明における架橋は、好ましくは、周囲気圧、すなわち約900~1100hPaで行われるが、高圧、すなわち1200hPa~10MPaで行われてもよい。
【0094】
本発明における架橋は、空気雰囲気中または窒素もしくはアルゴンなどの保護ガス雰囲気中で行うことができる。本発明における架橋は、好ましくは、空気雰囲気中で220℃以下の温度で、保護ガス雰囲気中で220℃を超える温度で行われる。
【0095】
本発明はさらに、本発明の組成物を架橋することにより製造される成形品に関する。
【0096】
本発明の成形品の、23℃で測定される弾性率は、0.50GPaを超えることが望ましく、好ましくは0.80GPaを超え、特に好ましくは1.00GPaを超える。
【0097】
本発明の成形品の、23℃で測定される曲げ強度σfMは、15MPaを超えることが望ましく、好ましくは20MPaを超え、特に好ましくは25MPaを超え、とりわけ好ましくは30MPaを超える。
【0098】
本発明の成形品のtanδmaxは、少なくとも0.400であることが望ましく、好ましくは少なくとも0.500、特に好ましくは少なくとも0.600、とりわけ好ましくは少なくとも0.700である。
【0099】
本発明の成形品の、tanδmax/2におけるピーク幅として定義される半値全幅は、25℃以下であることが望ましく、好ましくは20℃以下、特に好ましくは17℃以下、とりわけ好ましくは15℃以下である。
【0100】
25℃で測定される圧縮試験において、本発明の成形品は、好ましくは降伏応力σyを有し、降伏応力は、圧縮の増加が応力の増加を初めて伴わない応力(DIN EN ISO 604:2003-12、第3.3.1章を参照)として定義され、応力/圧縮ひずみ曲線(DIN EN ISO 604:2003-12、第4章、図1;曲線aを参照)における最大応力に続く、σy後のさらなる圧縮増加における応力降下(ひずみ軟化)によって確認可能である。
【0101】
本発明の成形品の、25℃で測定される流量比は、1.40未満であることが望ましく、好ましくは1.30未満、特に好ましくは1.20未満、とりわけ好ましくは1.10未満である。
【0102】
本発明の成形品は、高強度、すなわち高い弾性率値および曲げ強度値、良好な流動特性、すなわち低流量比σ20%:σy、ならびにガラス転移温度(Tg)における高い減衰最大tanδmaxおよび低い半値全幅によって確認可能な均質なネットワーク構造を兼ね備えるという利点を有する。
【0103】
本発明の組成物は、容易に入手可能な物質から、一般的に使用される方法によって製造可能であるという利点を有する。
【0104】
本発明の組成物は、液体であり、23℃の温度で容易に加工可能という利点を有する。
【0105】
本発明の方法は、実施が容易であるという利点を有する。
【0106】
粘度測定
本発明の文脈において、DIN 53019に準拠した動的粘度は、特に明記しない限り、23℃の温度および1013hPaの気圧で測定される。測定は、Anton Paar “Physica MCR 300”回転レオメーターを使用して行う。ここでは、1~200mPa・sの粘度については、1.13mmのリング測定スロットを備える同軸シリンダー測定システム(CC 27)を使用する。一方、200mPa・sを超える粘度については、コーンプレート測定システム(CP 50-1測定コーンを備えるSearle-System)を使用する。せん断速度は、ポリマーの粘度(100s-1で1~99mPa・s;200s-1で100~999mPa・s;120s-1で1000~2999mPa・s;80s-1で3000~4999mPa・s;62s-1で5000~9999mPa・s;50s-1で10,000~12,499mPa・s;38.5s-1で12,500~15,999mPa・s;33s-1で16,000~19,999mPa・s;25s-1で20,000~24,999mPa・s;20s-1で25,000~29,999mPa・s;17s-1で30,000~39,999mPa・s;10s-1で40,000~59,999mPa・s;5s-1で60,000~149,999;3.3s-1で150,000~199,999mPa・s;2.5s-1で200,000~299,999mPa・s;1.5s-1で300,000~1,000,000mPa・s)に合わせて設定している。
【0107】
測定システムを測定温度に温度制御した後、慣らし運転、事前せん断および粘度測定からなる3段階の測定プログラムを用いる。慣らし運転は、測定が行われる、予想粘度に応じた上記せん断速度まで、1分間にわたってせん断速度を段階的に増加させることによって行われる。該温度が達成されるとすぐに、事前せん断が一定のせん断速度で30秒間行われ、その後、25回のそれぞれ4.8秒の個別の測定から粘度が決定され、そこから平均値が決定される。平均値は、mPa・s単位で報告される動的粘度に相当する。
【0108】
シリンダー状試験片の作製
DMA、曲げ強度測定および圧縮測定を実施するために、シリンダー状加硫物から試験片を作製した。シリンダー状加硫物は、長さ×内径=150mm×10mmの寸法を有するステンレス鋼管(ステンレス鋼製のスクリュートップキャップで一方を密閉した)中で作製した。シクロシロキサン組成物の付着を防ぐために、ポリテトラフルオロエチレン製の底部シールをスクリュートップの内側に配置し;ステンレス鋼管の内面を、オルガノポリシロキサン組成物を充填する前に、適切なサイズの試験管ブラシを使用してWACKER(登録商標)SILICONE PASTE Pでわずかに濡らし、続いて、上記管を180℃で2時間保管した。次に、上記管にシクロシロキサン組成物を充填し、窒素雰囲気中の再循環空気オーブン内で180℃で72時間、次に、250℃でさらに2時間硬化させた。ステンレス鋼管を、開口側が上を向くように直立させた。次に、試験片を脱型する前に、試験片を管内で23℃に冷却した。硬化中に覆われなかった側の試験片の最上部20mmは、それ以上使用せずに廃棄した。
【0109】
動的機械分析(DMA)
測定パラメータ:
・機器:ARESレオメーター(TA-機器)
・温度範囲:-100℃~300℃
・加熱速度:窒素パージで4K/min
・周波数:1Hz
・ひずみ:最初は0.03%、測定信号がしきい値を下回ると自動的に増加
【0110】
調査のために、長さ×幅×高さ=40mm×6mm×3mmの寸法を有する長方形の試験片をシリンダー状試験片から作製し;結果として得られたクランプ長さは25mmであった。
【0111】
本明細書では、tanδは、減衰、すなわち、位相角の正接、または損失弾性率G''の貯蔵弾性率G'に対する比に相当し;tanδmaxは、ガラス転移温度Tgでの減衰最大tanδ(=タンジェントデルタ曲線の最大値)として定義される。
【0112】
本明細書では、半値全幅は、tanδmax/2におけるtanδ曲線の℃単位でのピーク幅として定義される。
【0113】
表1に報告されているtanδmaxの値は、小数点以下第3位に丸められ、半値全幅の報告値は、最も近い整数に丸められ、それぞれの場合においてDIN 1333:1992-02 セクション4に準拠する。
【0114】
圧縮試験
本発明の文脈において、圧縮特性(降伏応力)は、標準DIN EN ISO 604:2003-12に準拠して実施した。
【0115】
測定パラメータ:
・機器:Instron 3369 試験システム
・ロードセル:50kN
・圧縮ピストン:50mm
・試験速度:1mm/min
・温度:25℃、28%RH
・初期荷重:40N
・潤滑剤:なし
【0116】
サンプル調製:調査のために、直径9.5mm、高さ17mmを有するシリンダー状試験片を作製した。圧縮試験は、試験体の3つの試験片で実施した。試験体を、約4.5mmに圧縮し、つまり初期高さを基準として約26%に圧縮し、測定が完了するまで、実質的に理想的なバレル形状(球根状)の変形を受けさせた。20%圧縮でのMPa単位での圧縮応力σと降伏応力σの商として定義される流量比(DIN EN ISO 604:2003-12、第3.3.1章を参照)を使用して、材料の流動特性を評価した。表1に報告されている流量比の値は、DIN 1333:1992-02 セクション4に準拠して、小数点以下第2位に丸められた3つの個別の測定値のそれぞれの平均値に相当する。
【0117】
曲げ強度
本発明において、曲げ強度および曲げ弾性率は、ISO 178:2011-04 方法Aに準拠して、60mmの支持距離、5mm/minの試験速度で測定した。測定は、23℃および相対湿度50%で行った。好ましい手順は次のとおりである:長さ×直径=100mm×9.5mmの寸法を有するシリンダー状試験片を使用した。測定は、それぞれの場合において5つの試験片で実施した。曲げ強度σfM(試験中に試験片が受ける最大曲げ応力(ISO 178:2011-04、6ページ、第3.4章を参照))は、式
【0118】
【数1】
【0119】
に従って計算した。式中、Lは支持距離60mmであり、σfはニュートン単位で測定された曲げ応力であり、φはmm単位での試験片の直径である。曲げ弾性率Efは、式
【0120】
【数2】
【0121】
に従って計算した。式中、Lは支持距離60mmであり、σf1は0.10mmのたわみで測定されたキロニュートン(kN)単位での曲げ応力であり、σf2は0.25mmのたわみで測定されたキロニュートン(kN)単位での曲げ応力であり、φは試験片のmm単位での直径である。表1に報告されているMPa単位での曲げ強度σfMおよびGPa単位での曲げ弾性率Efの値は、DIN 1333:1992-02 セクション4に準拠して、最も近い整数(曲げ弾性率)または小数点以下第1位(曲げ強度)に丸められた個々の測定値のそれぞれの平均値に相当する。
【0122】
モル質量
本発明の文脈において、数平均モル質量Mnおよび重量平均モル質量Mwは、それぞれの場合において、g/molの単位であり、DIN 1333:1992-02 セクション4に準拠して最も近い10の位に丸められて、固定相としてポリスチレン-co-ジビニルベンゼンをベースとし、10,000Å、500Åおよび100Åの順序で、排除サイズが450,000g/molを超える、異なる細孔サイズ分布を有する3つのカラムにより構成されるカラムアセンブリのポリスチレン標準に対する較正による、DIN 55672-1/ISO 160414-1およびISO 160414-3に準拠したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/GPC)によって測定される。フェニル含有成分はTHF溶離液で測定され、非フェニル含有成分はトルエン溶離液で測定される。分析は、屈折率検出器を使用して、45±1℃のカラム温度で実施される。
【0123】
以下の例では、特に明記しない限り、部とパーセンテージとのすべての数値は重量によるものである。特に明記しない限り、以下の例は、周囲圧力、すなわち約1013hPa、および室温、すなわち約23℃、または追加の加熱もしくは冷却なしに室温で反応物を組み合わせたときに達成される温度で実施される。
【0124】
以下では、Meはメチルを表し、Viはビニルを表し、Phはフェニルを表す。
【0125】
例示的な実施形態
シロキサン成分1の製造
窒素雰囲気下、29.6g(1644mmol)の脱イオン水を最初に装入した後、840.0gの無水エタノール(Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)を加え、66.4g(1160mmol)の固体水酸化ナトリウム(Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)をそこに溶解させ、これにより、混合物は約52℃まで熱せられ、わずかに濁った。次いで、混合物を攪拌しながら35℃まで冷却した後、400.0g(1664mmol)のトリエトキシフェニルシラン(CAS 780-69-8;Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)を10分間かけて速やかに加え、これにより、混合物の温度は48℃まで上昇した。混合物をさらに15分間撹拌し、白色固体の沈殿を生じさせ、次いで還流下で30分間83℃まで加熱し、混合物を無色透明にした。次いで、混合物を23℃までゆっくりと冷却し、さらに6時間撹拌した。次いで、懸濁液を濾過し、濾過ケーキを1mbar未満、80℃で1時間乾燥させた。これにより、233.4gの微細で白色のシリコネート粉末(シリコネート1)が得られ、該シリコネート粉末は、ナトリウム:ケイ素の比が1:1であり、Mettler Toledo社のHR73 ハロゲン湿度分析計を用いて160℃で測定した固形分含有率が86.5重量%であり、水に50%程度まで完全に溶解した。
【0126】
窒素雰囲気下、このようにして製造した196.7g(1062mmol)のシリコネート1を最初に装入し、518.0gの無水tert-ブチルメチルエーテル(Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)と混合して、容易に撹拌可能な懸濁液を形成させた。次いで、222.5g(1844mmol)のクロロジメチルビニルシラン(CAS 1719-58-0;Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)をゆっくりと加え、これにより、混合物は熱せられ、ガスが発生した。約140gを加えた後、混合物は著しく粘性が高くなり、発熱性およびガスの発生が減少した。この時点で、残りのクロロジメチルビニルシランを急速に加えた。添加完了後の白色のクリーム状の懸濁液の温度は56℃であった。次いで、混合物を加熱して56℃で3時間還流し、室温まで冷却した。次いで、461.5g(2562mmol)の脱イオン水を、添加中の温度が27℃~33℃になるように慎重に混合物に加え、発熱反応を開始させ、ガスを発生させた。添加完了後、形成された2つの相を互いに分離する前に、混合物をさらに30分間撹拌した。55.0gのtert-ブチルメチルエーテルを上相に加え、次いで混合物を濾過した。透明な濾液が得られた。揮発性成分を留去し、残渣を80℃、0.5mbarで脱揮した。このようにして得られた生成物(シロキサン成分1)は、無色の油性残渣として得られ、平均組成[(PhSi(OSiViMe2)O2/240.23(PhSiO3/20.50(ViMe2SiO1/20.27を有し、数平均モル質量Mnが930g/mol、重量平均モル質量Mwが1070g/mol、多分散度が1.15であった。
【0127】
シロキサン成分2の製造
窒素雰囲気下、400.0g(1664mmol)のトリエトキシフェニルシラン(CAS 780-69-8;Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)と、132.7g(1064mmol)の45%水酸化カリウム水溶液(abcr GmbH(カールスルーエ、ドイツ)から市販されている)および30.2g(1676mmol)の脱イオン水の混合物とを、KPGスターラーを備える11撹拌フラスコに、45分間かけて、50℃のジャケット加熱下、混合温度が55℃を超えないように同時に計量した。次いで、混合物を55℃でさらに15分間撹拌した。混合物を23℃までゆっくりと冷却し、さらに6時間撹拌した。混合物をBuechi B-290 ミニスプレードライヤーで乾燥し、加水分解物を、2流体ノズルを使用して、入力空気温度210℃、および処理量5%で、上からスプレーチャンバー中に噴霧した。これにより、190gの固体シリコネート粉末(シリコネート2)が得られ、該シリコネート粉末は、カリウム:ケイ素の比が0.65:1であり、Mettler Toledo社のHR73 ハロゲン湿度分析計を使用して160℃で測定した固形分含有率が94.3重量%であった。
【0128】
窒素雰囲気下、このようにして得られた147.5g(769mmol)のシリコネート2を最初に装入し、295.0gの無水tert-ブチルメチルエーテル(Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)と混合して、容易に撹拌可能な懸濁液を形成させた。次いで、139.0g(1152mmol)のクロロジメチルビニルシラン(CAS 1719-58-0;Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)から市販されている)を30分間かけてゆっくりと加え、これにより、混合物は熱せられ、ガスが発生した。混合物の温度は56℃まで上昇した。添加後、混合物を加熱して56℃で5時間還流し、次いで室温まで冷却した後、283.8g(1575mmol)の脱イオン水を2分間かけて慎重に加え、これにより、温度が30℃から25℃に低下した。添加完了後、形成された2つの相を互いに分離する前に、混合物をさらに30分間撹拌した。上相を濾過し、濾過ケーキを77.0gのtert-ブチルメチルエーテルを用いて部分的に洗浄した。透明で黄色がかった濾液が得られた。合わせた濾液の揮発性成分を留去し、残渣を100℃、0.5mbarで脱揮した。得られた生成物(シロキサン成分2)は、無色で、わずかに黄色がかった油性残渣として得られ、平均組成(PhSiO3/20.69(ViMe2SiO1/20.31を有し、数平均モル質量Mnが1160g/mol、重量平均モル質量Mwが1310g/mol、多分散度が1.13であった。
【0129】
例1
50.0gのシロキサン成分1を17.0gの1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(CAS 2488-01-9;abcr GmbH(カールスルーエ、ドイツ)から市販されている)と、Hauschild & Co.KG社のSpeedmixer(登録商標)DAC 150 FVZ中で、3000rpmで10秒間混合した後、混合物を、Karstedt触媒(CAS 68478-92-2;Heraeus Deutschland GmbH & Co.KG(ハーナウ、ドイツ)から白金(0)ジビニルテトラメチルシロキサン錯体「KARSTEDT Concentrate 20% sol.L006P」として市販されている)1.0gの、ViMe2Si末端基を有し、平均粘度が800~1200mPa・sのポリジメチルシロキサン(CAS 68083-19-2;Wacker Chemie AG(ミュンヘン、ドイツ)からVINYLPOLYMER 1000として市販されている)20.0gにおける混合物0.02gと混合した。この混合物をSpeedmixer(登録商標)DAC 150 FVZ中で、3000rpmで30秒間混合し、ステンレス鋼製のシリンダー型に流し込み、硬化させた。測定結果を表1に示す。
【0130】
例2
シロキサン成分1の代わりに、50.0gのシロキサン成分2と13.4gの1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとを用いるという変更をして、例1に記載した手順を繰り返した。長期保存すると粘度が上昇するので、シロキサン成分2を70℃まで1時間加熱し、使用前に周囲温度まで冷却した。測定結果を表1に示す。
【0131】
【表1】