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特許7336596超音波観測装置、超音波観測装置の作動方法、超音波観測装置の作動プログラム、及び超音波観測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】超音波観測装置、超音波観測装置の作動方法、超音波観測装置の作動プログラム、及び超音波観測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20230824BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022532890
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025680
(87)【国際公開番号】W WO2022003829
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】壷井 秀憲
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-000625(JP,A)
【文献】特開2020-000609(JP,A)
【文献】特開2020-000601(JP,A)
【文献】特開2020-000646(JP,A)
【文献】特開2015-062621(JP,A)
【文献】特開2012-139460(JP,A)
【文献】特開2004-230033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子に送信信号を送信する送信部と、
前記圧電素子から受信信号を受信する受信部と、
前記圧電素子に前記圧電素子を再分極させる所定の信号を送信する信号送信部と、
前記送信部が前記送信信号を送信する送信タイミングと、前記受信部が前記受信信号を受信する受信タイミングとを制御するタイミング制御部と、
前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる信号制御部と、
を備える超音波観測装置。
【請求項2】
前記所定の信号は、ユニポーラパルスである請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項3】
前記送信タイミングと前記受信タイミングとは、異なるタイミングである請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記信号制御部は、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域の一部に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域の一部に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項5】
前記信号制御部は、所定の周期で前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項6】
前記受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部を備え、
前記信号制御部は、前記画像生成部が前記超音波画像を生成している状態において、前
記信号送信部に前記所定の信号を送信させる請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項7】
前記信号制御部が、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる領域を表示装置に表示させる表示制御部を備える請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項8】
前記受信信号が被検体からの反射信号であるか否かを判定する判定部を備え、
前記信号制御部は、前記判定部が、前記受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定した領域に、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記受信信号の電圧値が閾値を超えた場合に、前記受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定する請求項に記載の超音波観測装置。
【請求項10】
前記信号制御部は、複数の前記圧電素子のうち、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない圧電素子に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない圧電素子に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項11】
前記送信部は、1つの前記圧電素子に前記送信信号を送信する複数の送信回路を有し、
前記圧電素子の数と、前記送信回路の数とが等しい請求項10に記載の超音波観測装置。
【請求項12】
前記送信部は、1つの前記圧電素子に前記送信信号を送信する複数の送信回路を有し、
前記送信回路と前記圧電素子との接続を切り替えるスイッチ部を備える請求項10に記載の超音波観測装置。
【請求項13】
複数の前記圧電素子は、円周に沿って配列されている請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項14】
圧電素子に送信信号を送信する送信部と、
前記圧電素子から受信信号を受信する受信部と、
前記圧電素子に前記圧電素子を再分極させる所定の信号を送信する信号送信部と、を備える超音波観測装置の作動方法であって、
タイミング制御部が、前記送信部が前記送信信号を送信する送信タイミングと、前記受信部が前記受信信号を受信する受信タイミングとを制御し、
信号制御部が、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる超音波観測装置の作動方法。
【請求項15】
圧電素子に送信信号を送信する送信部と、
前記圧電素子から受信信号を受信する受信部と、
前記圧電素子に前記圧電素子を再分極させる所定の信号を送信する信号送信部と、を備える超音波観測装置の作動プログラムであって、
前記送信部が前記送信信号を送信する送信タイミングと、前記受信部が前記受信信号を受信する受信タイミングとを制御し、
前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送
信させることを超音波観測装置に実行させる超音波観測装置の作動プログラム。
【請求項16】
少なくとも2つの圧電素子を有する超音波振動子と、
所定のタイミングにおいて、第1の領域に含まれる前記圧電素子に超音波を送信又は受信させるとともに、前記第1の領域には含まれない第2の領域に含まれる前記圧電素子に再分極信号を送信するプロセッサと、
を備える超音波観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波観測装置、超音波観測システム、及び超音波観測装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波振動子に送信信号を送信して被検体に超音波を照射するとともに、超音波振動子が受信した受信信号を受信して超音波画像を生成する超音波観測装置が知られている。
【0003】
超音波観測装置は、超音波振動子が有する圧電素子の分極特性を利用して超音波の送受信を行う。具体的には、超音波観測装置は、高電圧のパルス信号である送信信号を圧電素子に印加することにより、圧電素子から被検体に超音波を照射させる。その後、被検体により反射された超音波エコーを圧電素子が受信し、電圧に変換して出力した受信信号を超音波観測装置が受信する。そして、超音波観測装置は、受信した受信信号を用いて超音波画像を生成する。
【0004】
圧電素子の分極特性は、経時的に劣化(脱分極)し、同時に音響特性も劣化する。特許文献1及び2には、脱分極した圧電素子に高電圧を印加することにより再分極させ、音響特性を回復させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献1の技術では、所定の期間をおいて定期的(超音波観測装置のメンテナンス時、起動時等)に再分極処理を行う必要がある。特許文献2の技術では、超音波観測装置に超音波プローブを接続する際に、圧電素子を再分極するための高電圧が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-5024号公報
【文献】特開2004-230033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2の技術では、超音波観測装置の使用時に音響特性を回復させることができなった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、超音波観測装置の使用時においても音響特性を回復させることができる超音波観測装置、超音波観測システム、及び超音波観測装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、圧電素子に送信信号を送信する送信部と、前記圧電素子から受信信号を受信する受信部と、前記圧電素子に所定の信号を送信する信号送信部と、前記送信部が前記送信信号を送信する送信タイミングと、前記受信部が前記受信信号を受信する受信タイミングとを制御するタイミング制御部と、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる信号制御部と、を備える。
【0010】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記所定の信号は、前記圧電素子を再分極させる再分極信号である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記所定の信号は、ユニポーラパルスである。
【0012】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記送信タイミングと前記受信タイミングとは、異なるタイミングである。
【0013】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記信号制御部は、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域の一部に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域の一部に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記信号制御部は、所定の周期で前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像生成部を備え、前記信号制御部は、前記画像生成部が前記超音波画像を生成している状態において、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記信号制御部が、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる領域を表示装置に表示させる表示制御部を備える。
【0017】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記受信信号が被検体からの反射信号であるか否かを判定する判定部を備え、前記信号制御部は、前記判定部が、前記受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定した領域に、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記判定部は、前記受信信号の電圧値が閾値を超えた場合に、前記受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定する。
【0019】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記信号制御部は、複数の前記圧電素子のうち、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない圧電素子に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない圧電素子に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記送信部は、1つの前記圧電素子に前記送信信号を送信する複数の送信回路を有し、前記圧電素子の数と、前記送信回路の数とが等しい。
【0021】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、前記送信部は、1つの前記圧電素子に前記送信信号を送信する複数の送信回路を有し、前記送信回路と前記圧電素子との接続を切り替えるスイッチ部を備える。
【0022】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置は、複数の前記圧電素子は、円周に沿って配列されている。
【0023】
また、本発明の一態様に係る超音波観測システムは、超音波観測装置と、前記圧電素子を有する超音波振動子と、を備える。
【0024】
また、本発明の一態様に係る超音波観測装置の作動方法は、圧電素子に送信信号を送信する送信部と、前記圧電素子から受信信号を受信する受信部と、前記圧電素子に前記圧電素子を再分極させる所定の信号を送信する信号送信部と、を備える超音波観測装置の作動方法であって、タイミング制御部が、前記送信部が前記送信信号を送信する送信タイミングと、前記受信部が前記受信信号を受信する受信タイミングとを制御し、信号制御部が、前記送信タイミングにおいて、前記送信部が前記送信信号を送信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる、又は前記受信タイミングにおいて、前記受信部が前記受信信号を受信しない領域に対して、前記信号送信部に前記所定の信号を送信させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、超音波観測装置の使用時においても音響特性を回復させることができる超音波観測装置、超音波観測システム、及び超音波観測装置の作動方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施の形態1に係る超音波観測装置を含む超音波観測システム全体の構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す超音波観測装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、超音波観測装置が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
図4図4は、圧電素子と送受信回路との接続関係を説明するための図である。
図5図5は、変形例に係る超音波観測装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、各信号の送受信のタイミングを表すタイミングチャートである。
図7図7は、送信タイミングにおける圧電素子と送受信回路との接続関係を説明するための図である。
図8図8は、受信タイミングにおける圧電素子と送受信回路との接続関係を説明するための図である。
図9図9は、圧電素子の位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して本発明に係る超音波観測装置、超音波観測システム、及び超音波観測装置の作動方法の実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。本発明は、圧電素子を有する超音波振動子を制御する超音波観測装置、超音波観測システム、及び超音波観測装置の作動方法一般に適用することができる。
【0028】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0029】
(実施の形態1)
〔超音波観測システムの構成〕
図1は、実施の形態1に係る超音波観測装置を含む超音波観測システム全体の構成を示す模式図である。超音波観測システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波観察を行うシステムである。この超音波観測システム1は、図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、内視鏡観察装置4と、表示装置5と、光源装置6と、超音波振動子7と、を備える。
【0030】
超音波内視鏡2は、その先端部に超音波振動子7を有し、超音波観測装置3から受信した電気的なパルス信号(送信信号)を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体へ照射するとともに、被検体で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号(受信信号)に変換して出力する。
【0031】
超音波内視鏡2は、通常は撮像光学系及び撮像素子を有しており、被検体の消化管(食道、胃、十二指腸、大腸)、又は呼吸器(気管、気管支)へ挿入され、消化管や、呼吸器の撮像を行うことが可能である。また、その周囲臓器(膵臓、胆嚢、胆管、胆道、リンパ節、縦隔臓器、血管等)を、超音波を用いて撮像することが可能である。また、超音波内視鏡2は、光学撮像時に被検体へ照射する照明光を導くライトガイドを有する。このライトガイドは、先端部が超音波内視鏡2の被検体への挿入部の先端まで達している一方、基端部が照明光を発生する光源装置6に接続されている。
【0032】
超音波内視鏡2は、図1に示すように、挿入部21と、操作部22と、ユニバーサルコード23と、コネクタ24と、を備える。挿入部21は、被検体内に挿入される部分である。この挿入部21は、図1に示すように、先端側に設けられ、超音波を送受信する超音波振動子7を保持する硬性の先端硬質部211と、先端硬質部211の基端側に連結され湾曲可能とする湾曲部212と、湾曲部212の基端側に連結され可撓性を有する可撓管部213と、を備える。ここで、挿入部21の内部には、具体的な図示は省略したが、光源装置6から供給された照明光を伝送するライトガイド、各種信号を伝送する複数の信号ケーブルが引き回されているとともに、処置具を挿通するための処置具用挿通路が形成されている。なお、本明細書では、挿入部21の超音波振動子7側を先端側、操作部22に連なる側を基端側とする。
【0033】
操作部22は、挿入部21の基端側に連結され、医師等からの各種操作を受け付ける部分である。この操作部22は、図1に示すように、湾曲部212を湾曲操作するための湾曲ノブ221と、各種操作を行うための複数の操作部材222と、を備える。また、操作部22には、処置具用挿通路に連通し、当該処置具用挿通路に処置具を挿通するための処置具挿入口223が形成されている。
【0034】
ユニバーサルコード23は、操作部22から延在し、各種信号を伝送する複数の信号ケーブル、及び光源装置6から供給された照明光を伝送する光ファイバ等が配設されたケーブルである。
【0035】
コネクタ24は、ユニバーサルコード23の先端に設けられている。そして、コネクタ24は、超音波ケーブル3a、ビデオケーブル4a、及び光ファイバケーブル6aがそれぞれ接続される第1~第3コネクタ部241~243を備える。
【0036】
超音波観測装置3は、超音波ケーブル3a(図1参照)を介して超音波内視鏡2に電気的に接続し、超音波ケーブル3aを介して超音波内視鏡2にパルス信号である送信信号を出力するとともに超音波内視鏡2からエコー信号である受信信号を入力する。そして、超音波観測装置3は、当該エコー信号に所定の処理を施して超音波画像を生成する。
【0037】
内視鏡観察装置4は、ビデオケーブル4a(図1参照)を介して超音波内視鏡2に電気的に接続し、ビデオケーブル4aを介して超音波内視鏡2からの画像信号を入力する。そして、内視鏡観察装置4は、当該画像信号に所定の処理を施して内視鏡画像を生成する。
【0038】
表示装置5は、液晶又は有機EL(Electro Luminescence)、プロジェクタ、CRT(Cathode Ray Tube)などを用いて構成され、超音波観測装置3にて生成された超音波画像や、内視鏡観察装置4にて生成された内視鏡画像等を表示する。
【0039】
光源装置6は、光ファイバケーブル6a(図1)を介して超音波内視鏡2に接続し、光ファイバケーブル6aを介して被検体内を照明する照明光を超音波内視鏡2に供給する。
【0040】
超音波振動子7は、例えば256個の圧電素子が円周に沿って配列されているラジアル振動子であるが、コンベックス振動子、リニア振動子であってもよく、圧電素子の数も特に限定されない。また、超音波振動子7は、振動子を2次元的に配列したものであってもよい。超音波内視鏡2は、超音波振動子7として複数の圧電素子をアレイ状に設け、送受信にかかわる圧電素子を電子的に切り替えたり、各圧電素子の送受信に遅延をかけたりすることで、電子的に走査させるものである。
【0041】
〔超音波観測装置の構成〕
図2は、図1に示す超音波観測装置の構成を示すブロック図である。超音波観測装置3は、図2に示すように、送信部31と、受信部32と、信号送信部33と、タイミング制御部34と、信号制御部35と、信号処理部36と、画像生成部37と、判定部38と、入力部39と、制御部40と、記憶部41と、表示制御部42と、を備える。
【0042】
送信部31は、圧電素子に送信信号を送信する。具体的には、送信部31は、高電圧パルス生成部を有し、超音波内視鏡2と電気的に接続され、所定の波形及び送信タイミングに基づいて高電圧パルス生成部において生成した高電圧パルスである送信信号を超音波振動子7の各圧電素子へ送信する。送信部31は、圧電素子に送信信号を送信する256個の送信回路を有し、各送信回路は、それぞれ1つの圧電素子に接続されている。送信部31が送信するパルス信号の周波数帯域は、超音波振動子7におけるパルス信号の超音波パルスへの電気音響変換の線型応答周波数帯域をほぼカバーする広帯域にするとよい。また、受信部32は、制御部40が出力する各種制御信号を超音波内視鏡2に対して送信する。
【0043】
受信部32は、圧電素子から受信信号を受信する。具体的には、受信部32は、超音波振動子7の各圧電素子から電気的なエコー信号である受信信号を受信してデジタルの高周波(RF:Radio Frequency)信号のデータ(以下、RFデータという)を生成、出力する。受信部32は、圧電素子から受信信号を受信する256個の受信回路を有し、各受信回路は、それぞれ1つの圧電素子に接続されている。すなわち、超音波振動子7が有する圧電素子の数と、送信部31が有する送信回路の数と、受信部32が有する受信回路の数と、が等しい。なお、送信タイミングと受信タイミングとが異なる場合、送信回路と受信回路との機能を1つの回路で実現してもよく、この回路を以下において送受信回路という。また、受信部32は、超音波内視鏡2から識別用のIDを含む各種情報を受信して制御部40へ送信する機能も有する。
【0044】
信号送信部33は、圧電素子に所定の信号を送信する。所定の信号は、圧電素子を再分極させる高電圧の再分極信号であり、例えばユニポーラパルスである。具体的には、信号送信部33は、送信部31の高電圧パルス生成部に制御信号を送信することにより、送受信回路を経由して、圧電素子に再分極信号を送信する。ただし、信号送信部33は、高電圧パルス生成部を有していてもよい。また、所定の信号は、圧電素子を再分極させる効果がある高電圧の信号であればよく、バイポーラパルスであってもよい。
【0045】
タイミング制御部34は、送信部が送信信号を送信する送信タイミングと、受信部が受信信号を受信する受信タイミングとを制御する。送信タイミングと受信タイミングとは、異なるタイミングである。タイミング制御部34は、CPU(Central Proccesing Unit)や各種演算回路等を用いて実現される。
【0046】
信号制御部35は、送信タイミングにおいて、送信部31が送信信号を送信しない領域に対して、信号送信部33に所定の信号を送信させる、又は受信タイミングにおいて、受信部32が受信信号を受信しない領域に対して、信号送信部33に所定の信号を送信させる。信号制御部35は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0047】
信号処理部36は、受信部32から受信したRFデータをもとにデジタルのBモード用受信データを生成する。具体的には、信号処理部36は、RFデータに対してバンドパスフィルタ、包絡線検波、対数変換など公知の処理を施し、デジタルのBモード用受信データを生成する。対数変換では、RFデータを基準電圧Vで除した量の常用対数をとってデシベル値で表現する。信号処理部36は、生成した1フレーム分のBモード用受信データを、画像生成部37へ出力する。信号処理部36は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0048】
画像生成部37は、受信部32から受信した受信信号(RFデータ)に基づいて超音波画像(画像データ)を生成する。画像生成部37は、Bモード用受信データに対して、スキャンコンバーター処理、ゲイン処理、コントラスト処理等の公知の技術を用いた信号処理を行うとともに、表示装置5における画像の表示レンジに応じて定まるデータステップ幅に応じたデータの間引き等を行うことによってBモード画像データを生成する。スキャンコンバーター処理では、Bモード用受信データのスキャン方向を、超音波のスキャン方向から表示装置5の表示方向に変換する。Bモード画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である。画像生成部37は、信号処理部36からのBモード用受信データに走査範囲を空間的に正しく表現できるよう並べ直す座標変換を施した後、Bモード用受信データ間の補間処理を施すことによってBモード用受信データ間の空隙を埋め、Bモード画像データを生成する。画像生成部37は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0049】
判定部38は、受信信号が被検体からの反射信号であるか否かを判定する。具体的には、判定部38は、受信信号の電圧値が閾値を超えた場合に、受信信号が被検体からの反射信号であると判定する。
【0050】
入力部39は、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール等のユーザインタフェースを用いて実現され、各種情報の入力を受け付ける。入力部39は、ユーザによる観測位置の入力を受け付ける。観測位置は、超音波画像内においてユーザが最も観察したい位置である。
【0051】
制御部40は、超音波観測システム1全体を制御する。制御部40は、演算及び制御機能を有するCPUや各種演算回路等を用いて実現される。制御部40は、記憶部41が記憶、格納する情報を記憶部41から読み出し、超音波観測装置3の作動方法に関連した各種演算処理を実行することによって超音波観測装置3を統括して制御する。なお、制御部40をタイミング制御部34、信号制御部35、信号処理部36、画像生成部37、判定部38、又は表示制御部42と共通のCPU等を用いて構成することも可能である。
【0052】
記憶部41は、超音波観測システム1を動作させるための各種プログラム、及び超音波観測システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータなどを記憶する。また、記憶部41は、超音波観測システム1の作動方法を実行するための作動プログラムを含む各種プログラムを記憶する。作動プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。なお、上述した各種プログラムは、通信ネットワークを介してダウンロードすることによって取得することも可能である。ここでいう通信ネットワークは、例えば既存の公衆回線網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などによって実現されるものであり、有線、無線を問わない。
【0053】
以上の構成を有する記憶部41は、各種プログラム等が予めインストールされたROM(Read Only Memory)、及び各処理の演算パラメータやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を用いて実現される。
【0054】
表示制御部42は、撮像素子が生成した撮像信号に基づく内視鏡画像のデータ、超音波振動子7が生成した電気的な受信信号に基づいて画像生成部37が生成した超音波画像のデータを表示装置5に出力して表示させる。さらに、内視鏡画像のデータ及び超音波画像のデータに種々の情報を重畳して表示装置5に出力して表示させる。また、表示制御部42は、信号制御部35が信号送信部33に再分極信号を送信させる領域(圧電素子)を表示装置5に表示させる。表示制御部42は、CPUや各種演算回路等を用いて実現される。
【0055】
〔超音波観測装置の動作〕
次に、超音波観測装置3の動作を説明する。図3は、超音波観測装置が実行する処理の概要を示すフローチャートである。図3に示すように、まず、制御部40は、圧電素子の番号に対応する変数nをn=1に設定する(ステップS1)。
【0056】
続いて、判定部38は、超音波振動子7の各圧電素子について、再分極が必要であるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には、判定部38は、受信部32が直前に受信した受信信号の電圧が閾値を超えているか否か、再分極信号を送信してから所定時間経過したか否か等の判断基準に基づいて、超音波振動子7の256個の圧電素子それぞれについて、再分極が必要であるか否かを判定する。なお、観測開始時において、受信部32が受信信号を受信していない場合や、再分極信号を送信してからの時間が判定不能である場合には、判定部38は、全ての圧電素子に再分極信号を送信すると判定してもよい。
【0057】
判定部38が、再分極が必要であると判定した場合(ステップS2:Yes)、タイミング制御部34が、送信タイミングと受信タイミングとが、異なるタイミングとなる(送信タイミングと受信タイミングとが重複しない)ように制御し、超音波の送受信を行う。
【0058】
まず、送信タイミングにおいて、送信部31は、変数nに対応する圧電素子に送信信号を送信する(ステップS3)。図4は、圧電素子と送受信回路との接続関係を説明するための図である。図4に示すように、超音波振動子7の256個の圧電素子は、円周に沿って配列されており、各圧電素子がCH1~CH256の256個の送受信回路とそれぞれ接続されている。そして、送信部31は、CHnの送受信回路に接続されている圧電素子に送信信号を送信する。なお、図4は、n=64の例を示し、送信部31は、CH64の送受信回路に接続されている圧電素子に送信信号を送信する。ただし、送信部31は、CHnに接続されている圧電素子を中心とする複数の圧電素子に送信信号を送信してもよい。
【0059】
その後、受信タイミングにおいて、受信部32は、圧電素子から受信信号を受信するとともに、信号制御部35は、受信部32が受信信号を受信しない領域に位置する圧電素子に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させる(ステップS4)。図4に示す例では、送信部31が、送信信号を送信したCH64に隣接する前後に隣接するそれぞれ32個の送受信回路により受信信号を受信する。そして、計65個の圧電素子からの受信信号を加算して、CH64の送受信回路に接続されている1つの圧電素子に対応する受信信号を生成する。換言すると、CH33~CH96の送受信回路が、受信信号の受信に用いられる受信チャンネル(Rx)である。この受信タイミングにおいて、CH1~CH32の送受信回路、及びCH97~CH256の送受信回路は、超音波画像の生成に用いられていない。そこで、信号制御部35は、受信タイミングにおいて受信部32が受信信号を受信しない領域に対応する、CH1~CH32及びCH97~CH256の再分極用チャンネル(Px)に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させる。
【0060】
続いて、制御部40は、変数n>256であるか否かを判定する(ステップS5)。制御部40が、変数n>256ではないと判定した場合(ステップS5:No)、制御部40は、n=n+1とし、ステップS2に戻る。
【0061】
一方、制御部40が、変数n>256であると判定した場合(ステップS5:Yes)、画像生成部37は、受信部32が受信した受信信号に基づいて超音波画像を生成する(ステップS7)。
【0062】
その後、制御部40は、超音波観測装置3による観測を終了する否かを判定する(ステップS8)。
【0063】
制御部40が、超音波観測装置3による観測を終了すると判定した場合(ステップS8:Yes)、一連の処理を終了する。
【0064】
一方、制御部40が、超音波観測装置3による観測を終了しないと判定した場合(ステップS8:No)、ステップS1に戻り処理を継続する。
【0065】
ステップS2において、判定部38が、再分極が必要ではないと判定した場合(ステップS2:No)、送信タイミングにおいて、送信部31は、変数nに対応する圧電素子に送信信号を送信する(ステップS9)。さらに、受信タイミングにおいて、受信部32は、圧電素子から受信信号を受信する(ステップS10)。この受信タイミングにおいて、信号制御部35は、信号送信部33に再分極信号を送信させない。
【0066】
以上説明した実施の形態1によれば、受信タイミングにおいて受信部32が受信信号を受信しない圧電素子に再分極信号を送信することにより、超音波画像を生成しながら音響特性を回復させることができる。また、超音波観測装置3は、画像生成部37が1枚の超音波画像を生成する間にN回再分極信号を送信し、音響特性を回復させる。換言すると、信号制御部35は、画像生成部37が超音波画像を生成している状態において、信号送信部33に再分極信号を送信させる。その結果、超音波観測装置3の使用時(観察時)に音響特性が劣化することが防止されている。
【0067】
なお、上述した実施の形態1では、信号制御部35は、受信タイミングにおいて受信部32が受信信号を受信しない圧電素子に再分極信号を送信したが、信号制御部35は、送信タイミングにおいて送信部31が送信信号を送信しない圧電素子に再分極信号を送信してもよい。この場合、再分極信号が超音波画像に影響を与えることを防止するため、送信部31が送信信号を送信する圧電素子から離れた位置の送受信回路(例えば図4の状況において、送信信号を送信するCH64に対して反対側に位置するCH129~CH256の送受信回路)に再分極信号を送信することが好ましい。
【0068】
また、信号制御部35は、受信タイミングにおいて受信部32が受信信号を受信しない領域に対応する全ての圧電素子に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させたが、これに限られない。信号制御部35は、受信タイミングにおいて、受信部32が受信信号を受信しない圧電素子の一部に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させてもよい。例えば、図4に示す状況において、信号制御部35は、この受信タイミングにおいて、受信部32が受信信号を受信しない領域に対応する一部の送受信回路(例えば、CH129~CH256の送受信回路)に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させてもよい。この場合、送受信及び再分極のいずれにも用いられない圧電素子があるため、圧電素子の連続使用による超音波振動子7の表面温度の上昇や、多数の圧電素子を同時使用することによる音響出力の低減等を防止することができる。
【0069】
また、信号制御部35は、所定の周期で信号送信部33に再分極信号を送信させてもよい。この場合、再分極信号を送信されない期間が設けられることにより、圧電素子の連続使用による超音波振動子7の表面温度の上昇や、多数の圧電素子を同時使用することによる音響出力の低減等を防止することができる。
【0070】
また、判定部38は、受信信号が被検体からの反射信号であるか否かを判定してもよい。具体的には、判定部38は、受信信号の電圧値が閾値を超えた場合に、受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定する。超音波振動子7が被検体に接触しておらず、超音波振動子7と被検体との間に空気層が存在する場合、送信信号が超音波振動子7の音響レンズのレンズ反射面において反射し、受信信号の電圧値が高くなるためである。そして、信号制御部35は、判定部38が、受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定した圧電素子に、信号送信部33に再分極信号を送信させる。その結果、超音波振動子7が被検体に接触しておらず、超音波画像を正しく生成することができない圧電素子を再分極信号を送信することができるため、超音波画像に影響を与えずに音響特性を回復させることができる。なお、このとき、再分極信号が送信された圧電素子は、正しい超音波画像を生成することができないため、表示制御部42は、再分極信号が送信された圧電素子を表示装置5に表示させてもよい。
【0071】
(変形例)
図5は、変形例に係る超音波観測装置の構成を示すブロック図である。図5に示すように、超音波観測装置3Aは、圧電素子に送信信号を送信する128個の送信回路を有する送信部31Aと、圧電素子から受信信号を受信する128個の受信回路を有する受信部32Aと、送信回路及び受信回路と圧電素子との接続を切り替えるスイッチ部であるマルチプレクサ43Aと、を備える。以下においては、超音波観測装置3Aが、送信回路と受信回路とを一体として構成した送受信回路を128個有する例を説明する。
【0072】
図6は、各信号の送受信のタイミングを表すタイミングチャートである。図6には、左から信号の種類、素子番号(圧電素子の番号)、TxRx回路(送受信回路)の番号を示す。まず、タイミング制御部34は、所定の周期で音線同期信号を送信することにより、1音線(1つの圧電素子)に対応する信号の送受信を行うタイミングが同期する。さらに、タイミング制御部34は、T/Rスイッチ制御信号がOFFに対応する送信タイミング(Tx)と、T/Rスイッチ制御信号がONに対応する受信タイミング(Rx)との切り替えを行う。換言すると、送信タイミング(Tx)と受信タイミング(Rx)とは異なるタイミング(重複していない)である。
【0073】
時間t11~t13において、送信部31は、CH33~CH96の送受信回路を経由して、素子番号EL33~EL96の圧電素子に送信信号を送信する。図7は、送信タイミングにおける圧電素子と送受信回路との接続関係を説明するための図である。図7に示すように、CH33~CH96の送受信回路が、送信信号の送信に用いられる送信チャンネル(Tx)である。このとき、CH1~CH32の送受信回路及びCH97~CH128の送受信回路は、送信信号の送信に用いられていない。そこで、タイミング制御部34は、マルチプレクサ切替タイミング信号を送信してマルチプレクサ43Aを制御し、CH1~CH32の送受信回路に接続する圧電素子を、素子番号EL1~EL32の圧電素子から素子番号EL129~EL160の圧電素子に切り替える。さらに、信号制御部35は、信号送信部33にCH1~CH32の送受信回路を経由して、素子番号EL129~EL160の圧電素子に再分極信号を送信させる。同様に、タイミング制御部34は、マルチプレクサ切替タイミング信号を送信してマルチプレクサ43Aを制御し、CH97~CH128の送受信回路に接続する圧電素子を、素子番号EL97~EL128の圧電素子から素子番号EL225~EL256の圧電素子に切り替える。さらに、信号制御部35は、信号送信部33にCH97~CH128の送受信回路を経由して、素子番号EL225~EL256の圧電素子に再分極信号を送信させる。その結果、素子番号EL129~EL160の圧電素子に接続されているCH1~CH32の送受信回路、及び素子番号EL225~EL256の圧電素子に接続されているCH97~CH128の送受信回路が、再分極信号を送信する再分極用チャンネル(Px)となる。
【0074】
その後、時間t12において、CH1~CH32の送受信回路及びCH97~CH128の送受信回路に接続する圧電素子が、素子番号EL1~EL32の圧電素子及び素子番号EL97~EL128の圧電素子に戻る。そして、時間t13~t14において、受信部32は、CH1~CH128の送受信回路を経由して、素子番号EL1~EL128の圧電素子から受信信号を受信する。図8は、受信タイミングにおける圧電素子と送受信回路との接続関係を説明するための図である。図8に示すように、CH1~CH128の送受信回路が、受信信号の受信に用いられる受信チャンネル(Rx)である。
【0075】
また、次の音線に移行し、時間t21~t23において、送信部31は、CH34~CH97の送受信回路を経由して、素子番号EL34~EL97の圧電素子に送信信号を送信する。このとき、信号制御部35は、信号送信部33にCH2~CH33の送受信回路及びCH98~CH1の送受信回路を経由して、素子番号EL130~EL161の圧電素子及び素子番号EL226~EL1の圧電素子に再分極信号を送信させる。そして、時間t23~t24において、受信部32は、CH2~CH1の送受信回路を経由して、素子番号EL2~EL129の圧電素子から受信信号を受信する。
【0076】
以上説明した変形例によれば、圧電素子と送受信回路との接続関係をマルチプレクサ43Aによって切り替える場合であっても、送信タイミングにおいて送信部31が送信信号を送信しない圧電素子に再分極信号を送信することにより、超音波画像を生成しながら音響特性を回復させることができる。
【0077】
(実施の形態2)
図9は、圧電素子の位置関係を説明するための図である。図9に示すように、実施の形態2に係る超音波観測装置の超音波振動子7Aは、圧電素子を1つ有し、圧電素子をメカ的に走査させる。超音波振動子7Aは、例えば圧電素子を回転させるラジアル振動子である。
【0078】
判定部38は、受信信号が被検体からの反射信号であるか否かを判定する。具体的には、判定部38は、受信信号の電圧値が閾値を超えた場合に、受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定する。超音波振動子7が被検体に接触しておらず、超音波振動子7と被検体との間に空気層が存在する場合、送信信号が超音波振動子7の音響レンズのレンズ反射面において反射し、受信信号の電圧値が高くなるためである。
【0079】
図9に示す例において、判定部38が、受信信号が被検体からの反射信号であると判定した領域を受信信号の受信に用いられる受信チャンネル(Rx)とする。一方、判定部38が、受信信号が被検体からの反射信号ではないと判定した領域を再分極信号を送信する再分極用チャンネル(Px)とする。その結果、超音波振動子7が被検体に接触しておらず、超音波画像を正しく生成することができない圧電素子を再分極信号を送信することができるため、超音波画像に影響を与えずに音響特性を回復させることができる。なお、このとき、再分極信号が送信された圧電素子は、正しい超音波画像を生成することができないため、表示制御部42は、再分極信号が送信された領域を表示装置5に表示させてもよい。表示制御部42は、例えば再分極信号が送信された領域の色を変えて表示装置5に表示させてもよいし、この領域に影を重畳させて表示装置5に表示させてもよい。
【0080】
また、信号制御部35は、受信タイミングにおいて受信部32が受信信号を受信しない領域に対応する全ての領域に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させたが、これに限られない。信号制御部35は、信号送信部33に再分極信号を送信させる領域と、信号送信部33に再分極信号を送信させない領域とを選択してもよい。例えば、図9に示す状況において、信号制御部35は、この受信タイミングにおいて、受信部32が受信信号を受信しない領域に対応する一部の領域(例えば、Rxから所定量以上離間した範囲)に対して、信号送信部33に再分極信号を送信させてもよい。この場合、送受信及び再分極のいずれにも用いられない圧電素子がある。その結果、各圧電素子には、送受信及び再分極のいずれにも用いられない期間があるため、圧電素子の連続使用による超音波振動子7の表面温度の上昇を防止するとともに、音響出力の低減等を防止することができる。
【0081】
また、信号制御部35は、所定の周期で信号送信部33に再分極信号を送信させてもよい。この場合、各圧電素子には、再分極信号を送信されない期間が設けられることにより、圧電素子の連続使用による超音波振動子7の表面温度の上昇を防止するとともに、音響出力の低減等を防止することができる。
【0082】
また、上述した実施の形態では、圧電素子から超音波を送受信し、Bモード画像である超音波画像を生成している状態において、圧電素子に再分極信号を送信する例を説明したが、これに限られない。例えば、高調波を用いて超音波画像を生成するTHI(Tissue Harmonic Imaging)により超音波画像を生成している状態において、圧電素子に再分極信号を送信してもよい。また、圧電素子から照射した超音波により対象組織を焼灼するHIFU(High Intensity Focused Ultrasound:高密度焦点式超音波治療法)を行う場合、信号制御部35は、送信部31がHIFUを行うための駆動信号を送信しない領域に対して、再分極信号を送信すればよい。同様に、生体組織の硬さを計測するエラストグラフィを行う場合、信号制御部35は、送信部31がプッシュパルスを照射させる信号を送信しない領域に対して、再分極信号を送信すればよい。
【0083】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 超音波観測システム
2 超音波内視鏡
3、3A 超音波観測装置
3a 超音波ケーブル
4 内視鏡観察装置
4a ビデオケーブル
5 表示装置
6 光源装置
6a 光ファイバケーブル
7、7A 超音波振動子
21 挿入部
22 操作部
23 ユニバーサルコード
24 コネクタ
31、31A 送信部
32、32A 受信部
33 信号送信部
34 タイミング制御部
35 信号制御部
36 信号処理部
37 画像生成部
38 判定部
39 入力部
40 制御部
41 記憶部
42 表示制御部
43A マルチプレクサ
211 先端部
212 湾曲部
213 可撓管部
221 湾曲ノブ
222 操作部材
223 処置具挿入口
241 第1コネクタ部
242 第2コネクタ部
243 第3コネクタ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9