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特許7336597ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-23
(45)【発行日】2023-08-31
(54)【発明の名称】ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20230824BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20230824BHJP
   C22C 16/00 20060101ALI20230824BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20230824BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230824BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230824BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20230824BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20230824BHJP
   B22F 10/66 20210101ALI20230824BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20230824BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20230824BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20230824BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20230824BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230824BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230824BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20230824BHJP
【FI】
A61F2/38
A61F2/30
C22C16/00
C22F1/18 E
B22F1/00 R
B22F1/05
B22F10/00
B22F10/64
B22F10/66
C22C1/08 F
B22F10/38
A61L27/04
B33Y40/20
B33Y70/00
B33Y80/00
C22F1/00 621
C22F1/00 630A
C22F1/00 630Z
C22F1/00 675
C22F1/00 691B
C22F1/00 691A
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022534428
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 CN2021101291
(87)【国際公開番号】W WO2022088707
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】202011200074.1
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522225594
【氏名又は名称】嘉思特医療器材(天津)股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 朝盛
(72)【発明者】
【氏名】尹 方
(72)【発明者】
【氏名】周 紅秀
(72)【発明者】
【氏名】劉 念
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109620481(CN,A)
【文献】特表2018-513728(JP,A)
【文献】特表2013-506486(JP,A)
【文献】特開平04-144555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00;2/02-2/80;3/00-4/00
A61L 27/04
A61L 27/56
C22C 16/00
C22F 1/18
B22F 1/00
B22F 1/05
B22F 10/00
B22F 10/64
B22F 10/66
C22C 1/08
B22F 10/38
B33Y 40/20
B33Y 70/00
B33Y 80/00
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉を原料として、3Dプリントで一体成形してジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、不活性ガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)前記第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)前記第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)前記第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、関節面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、及び
5)前記第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧不活性ガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを得るステップ
を含むジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの製造方法であって、
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの前記第1の中間生成物、前記第2の中間生成物、前記第3の中間生成物、前記第4の中間生成物、前記第5の中間生成物は前記、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造と同じ;
前記不活性ガスはヘリウムガス又はアルゴンガスであり;
前記ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造は、左右に設けられた内側顆(11)と、外側顆(12)とを備え、前記内側顆(11)の内側顆前端(1101)と前記外側顆(12)の外側顆前端(1102)が一体化され、前記内側顆(11)の後端部と前記外側顆(12)の後端部が規制ストッパー(15)を介して接続され;前記内側顆(11)の外側壁及び前記外側顆(12)の外側壁に把持凹溝(16)が設けられ、前記内側顆(11)は、内側顆固定面(110)を有し、前記外側顆が外側顆固定面(120)を有し;前記内側顆固定面(110)は、順次連接される第1の固定面(111)、第2の固定面(112)、第3の固定面(113)、第4の固定面(114)、及び第5の固定面(115)を含み、前記外側顆固定面(120)は順次連接される第6の固定面(121)、第7の固定面(122)、第8の固定面(123)、第9の固定面(124)、及び第10の固定面(125)を含み;前記第3の固定面(113)及び前記第8の固定面(123)の中央に取り付け穴(17)が設けられ、前記第1の固定面(111)は、前記第2の固定面(112)と交差して第1の交線(181)が形成され;前記第2の固定面(112)は、前記第3の固定面(113)と交差して第2の交線(182)が形成され;前記第3の固定面(113)は、前記第4の固定面(114)と交差して第3の交線(183)が形成され;前記第4の固定面(114)と前記第5の固定面(115)は、第4の交線(184)を形成し;前記第6の固定面(121)と前記第7の固定面(122)の交線と前記第1の交線(181)は、共線であり;前記第7の固定面(122)と前記第8の固定面(123)の交線と前記第2の交線(182)は共線であり;前記第8の固定面(123)と前記第9の固定面(124)の交線と前記第3の交線(183)は共線であり;前記第9の固定面(124)と前記第10の固定面(125)の交線と前記第4の交線(184)は共線であり;前記第1の交線(181)、前記第2の交線(182)、前記第3の交線(183)及び前記第4の交線(184)は、互いに平行であり;
前記第1の固定面(111)と前記第2の固定面(112)との間の夾角は、前記第6の固定面(121)と前記第7の固定面(122)との間の夾角に等しく、130°~140°であり;前記第2の固定面(112)と前記第3の固定面(113)との間の夾角は、前記第7の固定面(122)と前記第8の固定面(123)との間の夾角に等しく、130°~140°であり;前記第3の固定面(113)と前記第4の固定面(114)との間の夾角は、前記第8の固定面(123)と前記第9の固定面(124)との間の夾角に等しく、130°~140°であり;前記第4の固定面(114)と前記第5の固定面(115)との間の夾角は、前記第9の固定面(124)と前記第10の固定面(125)との間の夾角に等しく、130°~140°であり;
前記第1の固定面(111)、前記第5の固定面(115)、前記第6の固定面(121)、及び前記第10の固定面(125)に第1種の骨梁(191)が設けられ;
前記第2の固定面(112)、前記第4の固定面(114)、前記第7の固定面(122)、及び前記第9の固定面(124)に第2種の骨梁(192)が設けられ;
前記第3の固定面(113)及び前記第8の固定面(123)に第3種の骨梁(193)が設けられ;
前記第1種の骨梁(191)の気孔径及び気孔率は、順次に前記第2種の骨梁(192)及び前記第3種の骨梁(193)より小さい、
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1種の骨梁(191)の気孔径は、0.74mm~0.85mmで、気孔率が70.0%~74.7%で、開気孔率が100%であり;
前記第2種の骨梁(192)の気孔径は、0.86mm~0.99mmで、気孔率が74.8%~77.5%で、開気孔率が100%であり;
前記第3種の骨梁(193)の気孔径は、1.00mm~1.10mmで、気孔率が77.6%~85%で、開気孔率が100%である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1種の骨梁(191)、前記第2種の骨梁(192)、及び前記第3種の骨梁(193)は、0.5mm~3mmの範囲の同じ厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の固定面と前記第7の固定面との結合部に矩形の第1の実体構造(21)が設けられ、前記第1の固定面と前記第6の固定面との結合部に半円形の第2の実体構造(20)が設けられ、前記第1の実体構造(21)及び前記第2の実体構造(20)の厚さは、骨梁の厚さに等しく、0.5mm~3mmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記内側顆固定面(110)、前記外側顆固定面(120)、及び前記規制ストッパー(15)で構成される固定面の縁に側壁(22)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラント材料の技術分野に関し、特に、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節全置換術は、末期の膝関節症の効果的な臨床治療法で、傷んだ膝関節組織を人工的に設計された関節プロテーゼで置き換えることで、患者の痛みを和らげ、膝関節機能を回復させ、生活の品質を向上させる。人体の解剖学的構造に対して、膝関節プロテーゼのコンポーネントには、大腿骨顆、脛骨プラトー、及びインサートが含まれる。医療機器技術の急速な発展及びプロテーゼ製品の安全性と有効性に対する人々の要求が高まり続けることに伴い、膝関節プロテーゼの設計と製造技術には、継続的な最適化と向上が必要であった。
【0003】
現在、臨床応用されている膝関節プロテーゼには、骨セメント固定及び生物学的固定(非骨セメント固定)の2つのカテゴリがある。骨セメント固定型プロテーゼは、関節プロテーゼと骨組織を機械的に固定するため、骨セメントの硬化と充填に依存している。しかし、長年の臨床応用により、骨セメント固定は、骨セメントモノマーの重合熱の放出により、周囲の組織に損傷を与え、骨セメント粒子が血液に入り、又は骨セメント充填時の骨髄腔内圧の上昇により肺塞栓症及び脂肪塞栓症につながることといった多くの安全性及び有効性の問題をもたらす可能性があることが分かっている。
【0004】
生物学的膝関節プロテーゼは、骨セメントによってもたらされる安全性及び有効性のリスクを効果的に排除し、通常、表面の多孔質構造を利用して骨の内方成長を促進し、長期的な安定性が得られる。ただし表面の多孔質構造は、通常サンドブラスト、コーティング、焼結などの表面処理スキルで作製されるため、実体との結合強度が低く、脱落しやすく、プロテーゼの寿命を短縮していた。また、Wolffの法則によると、応力で骨を変形させた後(微小ひずみとも呼ばれる)、元の信号が生じて骨の合成と分解代謝を調節でき、ひずみ範囲は最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値の間でのみで骨成長を促進できる。したがって、骨組織の大部分領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあることを実現し、骨の内方成長に有利な膝関節大腿顆プロテーゼを設計することは重要な意味を持っている。
【0005】
ジルコニウム・ニオブ合金は、優れた耐食性、機械的性質、及び優れた生体適合性を備え、医療機器の分野で徐々に応用されている。ジルコニウム・ニオブ合金は、N、C、Oなどの元素と反応して、表面に硬いセラミック層を形成でき、優れた耐摩耗性及び低い摩耗率を備えているため、柔軟な材料の摩耗を低減でき、すなわち関節表面・界面の耐摩耗性に優れている。かつセラミック層は、金属イオンの放出を減らすことができ、優れた生体適合性を持ち、すなわちオッセオインテグレーション界面との生体適合性に優れている。摩耗率の低い関節面と骨の内方成長の特性に優れたオッセオインテグレーション界面(骨梁)との有機的な組み合わせるにより、プロテーゼは両方の界面の利点を同時に実現させることができ。しかしながら従来技術は、この最適化な設計を同時に実現することができない。
【0006】
アディティブマニュファクチャリングテクノロジーとしての3Dプリント技術は、製造プロセスに向けた製品設計コンセプトを打ち破り、パフォーマンスに向けた製品設計コンセプトを実現し、すなわち複雑な部品の一体成形の難しさを解決するだけでなく、機械加工による原材料及びエネルギーの無駄を減少する。しかし3Dプリント製品の実体部分は、微細構造の不均一性、内部欠陥、機械的性質の低下などの問題が発生しやすく、骨梁部分の構造内の粉末は十分に焼結できず、機械的性質は劣る。したがって、機械的性質に優れ、両方の界面の利点を同時に実現し、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを製造することは重要な意味を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術における上述の問題点の克服を意図しており、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的手段は、次の通りである。
【0010】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉を原料として、3Dプリントで一体成形してジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、不活性ガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、関節面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、及び、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧不活性ガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを得るステップ、
を含むジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの製造方法であって、
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造と同じ、前記不活性ガスはヘリウムガス又はアルゴンガスであり;
前記ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造は、左右に設けられた内側顆11と、外側顆12とを備え、内側顆11の内側顆前端1101と外側顆12の外側顆前端1102が一体化され、内側顆11の後端部と外側顆12の後端部が規制ストッパー15を介して接続され;前記内側顆11の外側壁及び外側顆12の外側壁に把持凹溝16が設けられ、前記内側顆11は、内側顆固定面110を有し、前記外側顆が外側顆固定面120を有し;前記内側顆固定面110は、順次連接される第1の固定面111、第2の固定面112、第3の固定面113、第4の固定面114、及び第5の固定面115を含み、前記外側顆固定面120は順次連接される第6の固定面121、第7の固定面122、第8の固定面123、第9の固定面124、及び第10の固定面125を含み;前記第3の固定面113及び第8の固定面123の中央に取り付け穴17が設けられ、前記第1の固定面111は、第2の固定面112と交差して第1の交線181が形成され;第2の固定面112は、第3の固定面113と交差して第2の交線182が形成され;第3の固定面113は、第4の固定面114と交差して第3の交線183が形成され;第4の固定面114と第5の固定面115は、第4の交線184を形成し;第6の固定面121と第7の固定面122の交線と第1の交線181は、共線であり;第7の固定面122と第8の固定面123の交線と第2の交線182は共線であり;第8の固定面123と第9の固定面124の交線と第3の交線183は共線であり;第9の固定面124と第10の固定面125の交線と第4の交線184は共線であり;前記第1の交線181、第2の交線182、第3の交線183及び第4の交線184は、互いに平行であり;
前記第1の固定面111と第2の固定面112との間の夾角は、第6の固定面121と第7の固定面122との間の夾角に等しく、130°~140°であり;第2の固定面112と第3の固定面113との間の夾角は、第7の固定面122と第8の固定面123との間の夾角に等しく、130°~140°であり;第3の固定面113と第4の固定面114との間の夾角は、第8の固定面123と第9の固定面124との間の夾角に等しく、130°~140°であり;第4の固定面114と第5の固定面115との間の夾角は、第9の固定面124と第10の固定面125との間の夾角に等しく、130°~140°であり;
前記第1の固定面111、第5の固定面115、第6の固定面121、及び第10の固定面125に第1種の骨梁191が設けられ;
前記第2の固定面112、第4の固定面114、第7の固定面122、及び第9の固定面124に第2種の骨梁192が設けられ;
前記第3の固定面113及び第8の固定面123に第3種の骨梁193が設けられ;
前記第1種の骨梁191の気孔径及び気孔率は、順次に第2種の骨梁192及び第3種の骨梁193より小さい。
【0011】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmである。
【0012】
ステップ2)、ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる。
【0013】
第1種の骨梁191の気孔径は、0.74mm~0.85mmで、気孔率が70.0%~74.7%で、開気孔率が100%であり;
前記第2種の骨梁192の気孔径は、0.86mm~0.99mmで、気孔率が74.8%~77.5%で、開気孔率が100%であり;
前記第3種の骨梁193の気孔径は、1.00mm~1.10mmで、気孔率が77.6%~85%で、開気孔率が100%である。
【0014】
第1種の骨梁191、第2種の骨梁192、及び第3種の骨梁193は、0.5mm~3mmの範囲の同じ厚さを有する。
【0015】
第2の固定面と第7の固定面との結合部に矩形の第1の実体構造21が設けられ、第1の固定面と第6の固定面との結合部に半円形の第2の実体構造20が設けられ、第1の実体構造21及び第2の実体構造20の厚さは、骨梁の厚さに等しく、0.5mm~3mmの範囲である。
【0016】
内側顆固定面110、外側顆固定面120、及び規制ストッパー15で構成される固定面の縁に側壁22が設けられる。
【0017】
上記方法で製造されたジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼである。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較して、本発明は、次の有利な効果を有する。
【0019】
本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼは、大腿骨顆骨組織の大部分領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあることを実現し、骨の内方成長に有利で、長期安定性を向上する。
【0020】
本発明は、3Dプリントで一体成形し、従来の機械加工では複雑な構造を作製できないという難題を解決し、かつ骨梁と実体との結合強度が高く、脱落し難くなり、プロテーゼの寿命を延ばす。
【0021】
本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの骨梁部分は、優れた耐圧縮性を有し、実体部分の圧縮降伏強度が向上し、可塑性が向上する。
【0022】
本発明の前記ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの一体化により、オッセオインテグレーション界面の優れた生体適合性、骨の内方成長性及び摩擦界面の超耐摩耗性、低摩耗率を実現する。本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの酸化層とマトリックスとの間に酸素リッチ層があり、酸素リッチ層が遷移層の機能を有し、酸化層とマトリックスとの間の付着力を高め、酸化層の脱落を防ぎ、かつ酸化層の硬度が高い。
【0023】
本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼは、アーチファクトが低く、核磁気共鳴への干渉がほぼなく、核磁気共鳴画像検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】外側顆から観察された本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの等角図である。
図2】内側顆から観察された本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼ(第1の実体構造、第2の実体構造を含む)の等角図である。
図3】大腿骨顆の前面から観察された本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの等角図である。
図4】大腿骨顆の前面から観察された実施例1に係るジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの有限要素解析ひずみの三次元モデリングである。
図5】大腿骨顆の後面から見た実施例1に係るジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの有限要素解析ひずみの三次元モデリングである。
図6】比較例1に係る実体部分の金属組織学的微細構造図である(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
図7】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分の金属組織学的微細構造図(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
図8】比較例1の骨梁部分SEM画像である。
図9】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分SEM画像図である。
図10】実施例1の酸化層及びマトリックスの横断面SEM画像である。
図11】実施例1の酸化層表面のXRD曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼは、3Dプリントで一体成形される。
【0026】
以下には、添付の図面及び実施例を参照しつつ本発明をさらに説明する。
【0027】
(実施例1)
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉を原料として、3Dプリントで一体成形してジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃に上げ、180MPaにて一定温度で3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-120℃に上げ、一定温度で5時間保持し、次に温度を-40℃に上げ、一定温度で5時間保持し、さらに温度を4℃に上げ、一定温度で3時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、関節面の表面粗さRa=0.012μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、5℃/分で500℃に加熱し、0.4℃/分で温度を400℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを得るステップ、
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造と同じ、
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:85.6%、Nb:12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0028】
上記ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼ(図1図3)の構造は、左右に設けられた内側顆11と、外側顆12とを備え、内側顆11の内側顆前端1101と外側顆12の外側顆前端1102が一体化され、内側顆11の後端部と外側顆12の後端部が規制ストッパー15を介して接続され;前記内側顆11の外側壁及び外側顆12の外側壁に把持凹溝16が設けられ、前記内側顆11は、内側顆固定面110を有し、前記外側顆が外側顆固定面120を有し;前記内側顆固定面110は、順次連接される第1の固定面111、第2の固定面112、第3の固定面113、第4の固定面114、及び第5の固定面115を含み、前記外側顆固定面120は順次連接される第6の固定面121、第7の固定面122、第8の固定面123、第9の固定面124、及び第10の固定面125を含み;前記第3の固定面113及び第8の固定面123の中央に取り付け穴17が設けられ、前記第1の固定面111は、第2の固定面112と交差して第1の交線181が形成され;第2の固定面112は、第3の固定面113と交差して第2の交線182が形成され;第3の固定面113は、第4の固定面114と交差して第3の交線183が形成され;第4の固定面114と第5の固定面115は、第4の交線184を形成し;第6の固定面121と第7の固定面122の交線と第1の交線181は、共線であり;第7の固定面122と第8の固定面123の交線と第2の交線182は共線であり;第8の固定面123と第9の固定面124の交線と第3の交線183は共線であり;第9の固定面124と第10の固定面125の交線と第4の交線184は共線であり;前記第1の交線181、第2の交線182、第3の交線183及び第4の交線184は、互いに平行である。
【0029】
前記第1の固定面111と第2の固定面112との間の夾角は、第6の固定面121と第7の固定面122との間の夾角に等しく、135°であり;第2の固定面112と第3の固定面113との間の夾角は、第7の固定面122と第8の固定面123との間の夾角に等しく、135°であり;第3の固定面113と第4の固定面114との間の夾角は、第8の固定面123と第9の固定面124との間の夾角に等しく、135°であり;第4の固定面114と第5の固定面115との間の夾角は、第9の固定面124と第10の固定面125との間の夾角が等しく、135°である。
【0030】
前記第1の固定面111、第5の固定面115、第6の固定面121、及び第10の固定面125に第1種の骨梁191が設けられる。
【0031】
前記第2の固定面112、第4の固定面114、第7の固定面122、及び第9の固定面124に第2種の骨梁192が設けられる。
【0032】
前記第3の固定面113及び第8の固定面123に第3種の骨梁193が設けられる。
【0033】
前記第1種の骨梁191の気孔径及び気孔率は、順次に第2種の骨梁192及び第3種の骨梁193より小さい。
【0034】
第1種の骨梁191の気孔径は、0.8mmで、気孔率が72%で、開気孔率が100%である。
【0035】
前記第2種の骨梁192の気孔径は、0.93mmで、気孔率が76%で、開気孔率が100%である。
【0036】
前記第3種の骨梁193の気孔径は、1.05mmで、気孔率が80%で、開気孔率が100%である。
【0037】
第1種の骨梁191、第2種の骨梁192、及び第3種の骨梁193は、1.5mmの同じ厚さを有する。
【0038】
第2の固定面と第7の固定面との結合部に矩形の第1の実体構造21がさらに設けられ、第1の固定面と第6の固定面との結合部に半円形の第2の実体構造20が設けられ、第1の実体構造21及び第2の実体構造20の厚さは、骨梁の厚さ1mmと同じであるが、0.5、0.6、0.7mm、0.9、1.1、1.5、2.0、2.5、3mmなどの0.5mm~3mmの任意の値を選択することもできる。
【0039】
内側顆固定面110、外側顆固定面120、及び規制ストッパー15で構成される固定面の縁に側壁22が設けられる。
【0040】
(実施例2)
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉を原料として、3Dプリントで一体成形してジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1325℃に上げ、160MPaにて一定温度で2時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整ステップは、温度を-100℃に上げ、一定温度で4時間保持し、次に温度を-30℃に上げ、一定温度で4時間保持し、さらに温度を6℃に上げ、一定温度で2時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、関節面の表面粗さRa=0.035μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量10質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、15℃/分で600℃に加熱し、0.7℃/分で温度を450℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを得るステップ、
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造と同じ、
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:93.4%、Nb:5.1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0041】
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造は、実施例1と同じで、相違点は次の通りである。すなわち、
前記第1の固定面111と第2の固定面112との間の夾角は、第6の固定面121と第7の固定面122との間の夾角に等しく、130°であり;第2の固定面112と第3の固定面113との間の夾角は、第7の固定面122と第8の固定面123との間の夾角に等しく、130°であり;第3の固定面113と第4の固定面114との間の夾角は、第8の固定面123と第9の固定面124との間の夾角に等しく、130°であり;第4の固定面114と第5の固定面115との間の夾角は、第9の固定面124と第10の固定面125との間の夾角が等しく、130°である。
【0042】
前記第1の固定面111、第5の固定面115、第6の固定面121、及び第10の固定面125に第1種の骨梁191が設けられる。
【0043】
前記第2の固定面112、第4の固定面114、第7の固定面122、及び第9の固定面124に第2種の骨梁192が設けられる。
【0044】
前記第3の固定面113及び第8の固定面123に第3種の骨梁193が設けられる。
【0045】
前記第1種の骨梁191の気孔径及び気孔率は、順次に第2種の骨梁192及び第3種の骨梁193より小さい。
【0046】
第1種の骨梁191の気孔径は、0.74mmで、気孔率が70.0%で、開気孔率が100%である。
【0047】
前記第2種の骨梁192の気孔径は、0.86mmで、気孔率が74.8%で、開気孔率が100%である。
【0048】
前記第3種の骨梁193の気孔径は、1.00mmで、気孔率が77.6%で、開気孔率が100%である。
【0049】
第1種の骨梁191、第2種の骨梁192、及び第3種の骨梁193は、0.5mmの同じ厚さを有する。
【0050】
(実施例3)
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉を原料として、3Dプリントで一体成形してジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、アルゴンガスの保護雰囲気下にて、温度を1400℃に上げ、140MPaにて一定温度で1時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-80℃に上げ、一定温度で3時間保持し、次に温度を-20℃に上げ、一定温度で3時間保持し、さらに温度を8℃に上げ、一定温度で1時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、関節面の表面粗さRa=0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量15質量%の常圧アルゴンガスを導入し、20℃/分で700℃に加熱し、0.9℃/分で温度を495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼを得るステップ、
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造と同じである。
【0051】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:96.5%、Nb:1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0052】
ジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの構造は、実施例1と同じで、相違点は次の通りである。すなわち、
前記第1の固定面111と第2の固定面112との間の夾角は、第6の固定面121と第7の固定面122との間の夾角に等しく、140°であり;第2の固定面112と第3の固定面113との間の夾角は、第7の固定面122と第8の固定面123との間の夾角に等しく、140°であり;第3の固定面113と第4の固定面114との間の夾角は、第8の固定面123と第9の固定面124との間の夾角に等しく、140°であり;第4の固定面114と第5の固定面115との間の夾角は、第9の固定面124と第10の固定面125との間の夾角が等しく、140°である。
【0053】
前記第1の固定面111、第5の固定面115、第6の固定面121、及び第10の固定面125に第1種の骨梁191が設けられる。
【0054】
前記第2の固定面112、第4の固定面114、第7の固定面122、及び第9の固定面124に第2種の骨梁192が設けられる。
【0055】
前記第3の固定面113及び第8の固定面123に第3種の骨梁193が設けられる。
【0056】
前記第1種の骨梁191の気孔径及び気孔率は、順次に第2種の骨梁192及び第3種の骨梁193より小さい。
【0057】
第1種の骨梁191の気孔径は、0.85mmで、気孔率が74.7%で、開気孔率が100%である。
【0058】
前記第2種の骨梁192の気孔径は、0.99mmで、気孔率が77.5%で、開気孔率が100%である。
【0059】
前記第3種の骨梁193の気孔径は、1.10mmで、気孔率が85%で、開気孔率が100%である。
【0060】
第1種の骨梁191、第2種の骨梁192、及び第3種の骨梁193は、3mmの同じ厚さを有する。
【0061】
(比較例1)
ジルコニウム・ニオブ合金粉末(実施例1と同じ)を原料として、3Dプリントによる一体成形及び機械加工トリミングを経て、実施例1と同じ構造の大腿骨顆プロテーゼを得た。
【0062】
≪実験的検証≫
本発明の実施例1の有限要素モデルに対し有限要素解析を実施し、図4図5に示すようにひずみの三次元モデリングは、1000~3000の範囲の微小ひずみ(影付き部分)のみを示している。大腿顆骨組織全体の有限要素モデルにおける本発明の実施例1の大腿顆骨組織の有限要素モデル上の1000~3000の微小ひずみ領域の割合は、65.2%で、本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼが大部分領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあることを実現し、優れた骨の内方成長特性を有することを示している。
【0063】
倒立顕微鏡(Axio Vert.A1、ドイツのカールツァイス社製)で比較例1の実体部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分に対し、金属組織学的微細構造を観察し、結果を図6図7に示す。比較例1の金属組織写真では、微細なαマルテンサイトが観察され、組織が比較的微細で、応力集中が発生しやすく、可塑性に劣る。実施例1の金属組織は、バスケット構造と結晶粒微細化を伴うα相を示している。結果は、本発明の大腿骨顆プロテーゼのマトリックス部分(酸化層を除く)が優れた強度及び可塑性を有することを示している。
【0064】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で比較例1の骨梁部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分を観察や解析した結果を図8図9に示す。比較例1と比較して、実施例1の骨梁構造中のジルコニウム・ニオブ合金粉末はさ、らに焼結されることで、骨梁の総合特性が向上されたことを示している。
【0065】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股ふん有限公司製)で前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)及び比較例1の実体の圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)に対して圧縮試験を行い、実施例1及び比較例1の実体圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表1に示す。実施例1の圧縮降伏強度は、546.72MPaで、比較例1(P<0.05)よりも優れ、本発明で得られたジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの実体部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0066】
【表1】
【0067】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股ふん有限公司製)で気孔径0.80mm、気孔率72%、開気孔率100%の比較例1の骨梁圧縮試験片及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない気孔径0.80mm、気孔率72%、開気孔率100%の実施例1の骨梁圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)に対して圧縮試験を行い、比較例1及び実施例1の骨梁圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表2に示す。実施例1の骨梁降伏強度は、18.39MPaで、比較例1(P<0.05)よりも明らかに高く、本発明で得られたジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの骨梁部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0068】
【表2】
【0069】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で実施例1の大腿骨顆プロテーゼのジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化層の横断面を観察した(図10)。実施例2、実施例3の大腿骨顆プロテーゼのジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化層の横断面も観察し、酸化層の厚さは、それぞれ10.3μm、17.2μm及び20.6μmで、酸化層とジルコニウム・ニオブ合金マトリックスとの間に酸素リッチ層があり、ジルコニウム・ニオブ合金マトリックスと酸化層との間の結合力を向上する。
【0070】
XRD(D8DISCOVER,ドイツのBruker社製)で実施例1の大腿骨顆プロテーゼの酸化層を解析(図11)し、酸化層は単斜晶の二酸化ジルコニウム及び正方晶の二酸化ジルコニウムを含んでいた。
【0071】
微小硬度計(MHVS-1000 PLUS、中国の上海奧龍星迪検測設備有限公司製)で実施例1~3のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼに対して微小硬さ試験を行い、試験荷重は0.05kgで、試験片の荷重時間が20秒で、各試験片から8点取った。実施例1~3で測定された平均硬さ値は1948.6Hv、1923.7Hv、及び1967.2Hvであり、本発明のジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの酸化層の硬度が高いことを示している。
【0072】
実験により、実施例2、3で製造されたジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼの骨梁部分のジルコニウム・ニオブ合金粉末融合性、耐圧縮性、実体部分の耐圧縮性、金属組織、酸化層の結晶構造、厚さ及び硬さは、実施例1で製造されたジルコニウム・ニオブ合金の酸化層を含む領域毎の骨梁大腿骨顆プロテーゼと似っていることを証明した。
【符号の説明】
【0073】

11 内側顆
12 外側顆
15 規制ストッパー
16 把持凹溝
17 取り付け穴
21 第1の実体構造
20 第2の実体構造
22 側壁
110 内側顆固定面
120 外側顆固定面
111 第1の固定面
112 第2の固定面
113 第3の固定面
114 第4の固定面
115 第5の固定面
121 第6の固定面
122 第7の固定面
123 第8の固定面
124 第9の固定面
125 第10の固定面
181 第1の交線
182 第2の交線
183 第3の交線
184 第4の交線
191 第1種の骨梁
192 第2種の骨梁
193 第3種の骨梁
1101 内側顆前端
1102 外側顆前端
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11