(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/00 20200101AFI20230825BHJP
【FI】
D06F39/00 F
D06F39/00 C
(21)【出願番号】P 2019162500
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】磯野 俊悠
(72)【発明者】
【氏名】益田 明
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 雅朗
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 龍太
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-062575(JP,U)
【文献】特開2003-062389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内部に揺動可能に支持された水槽と、
前記水槽の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽を回転駆動させるモータと、
前記モータを前記水槽の外底部に固定するモータ保持部と、
前記筐体の背面側に配設され、前記モータを制御する制御装置と、
前記モータと前記制御装置とを接続するリード線と、
難燃部材により形成され、前記水槽の外底部に配設さ
れている水槽側取付部と、
前記水槽側取付け部に前記リード線を係止する係止部と、を備え、
前記水槽側取付部は、前記係止部が設けられている係止面と、前記係止面から垂直に折曲がった遮蔽面と、を有し、
前記遮蔽面は、前記係止部の前記水槽の中心向きの反対側を遮蔽しておらず、前記係止部の前記水槽の中心向きを遮蔽する洗濯機。
【請求項2】
前記水槽の外底部の中心側には樹脂部品が設けられており、
前記遮蔽面は、前記樹脂部品と前記制御装置から近い側の係止部との間に設けられている、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記
係止部は、前記係止面に形成されている結束バンド用孔と、前記孔に挿入され前記リード線を結束する結束バンドと、を含む、請求項2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、水槽の下方にリード線が固定された縦型洗濯機を開示する。
【0003】
特許文献1における縦型洗濯機は、筐体と、筐体内部に弾性支持された水槽と、水槽の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、水槽の下部に配設され、洗濯兼脱水槽を回転駆動させるモータと、水槽の下部に固定されてモータを保持するモータ保持部と、モータを制御する制御装置と、モータと制御装置とを接続するリード線と、を備える。モータと接続されたリード線は、モータ保持部上に設けられたリード線係止部によりモータ保持部に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、リード線の断線を抑制するとともに、モータ保持部の材料費を低減し、リード線係止部を取り付ける位置の自由度が高い洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における洗濯機は、筐体と、前記筐体内部に揺動可能に支持された水槽と、前記水槽の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動させるモータと、前記モータを前記水槽の外底部に固定するモータ保持部と、前記筐体の背面側
に配設され、前記モータを制御する制御装置と、前記モータと前記制御装置とを接続するリード線と、難燃部材により形成され、前記水槽の外底部に配設されている水槽側取付部と、前記水槽側取付け部に前記リード線を係止する係止部と、を備え、前記水槽側取付部は、前記係止部が設けられている係止面と、前記係止面から垂直に折曲がった遮蔽面と、を有し、前記遮蔽面は、前記係止部の前記水槽の中心向きの反対側を遮蔽しておらず、前記係止部の前記水槽の中心向きを遮蔽する。
【発明の効果】
【0007】
本開示における洗濯機は、リード線の断線を抑制するとともに、モータ保持部の材料費を低減し、リード線係止部を取り付ける位置の自由度を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】同洗濯機の背面カバーを外した状態の下部背面図
【
図4】(a)同洗濯機の水槽側取付部の正面図、(b)同洗濯機の水槽側取付部の側面図、(c)同洗濯機の水槽側取付部の斜視図
【
図5】同洗濯機の水槽に取り付けられた水槽側取付部の周囲を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。なお、添付図面および以下の説明によって本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
(洗濯機の基本構成)
図1は、実施の形態1における洗濯機の縦断面図である。
【0011】
洗濯機100は、外枠101と、上部枠体102と、下部枠体103とを備えている。上部枠体102は、外枠101の上部に固定されており、略中央に洗濯物投入口105が開口するように形成されている。下部枠体103は、樹脂により形成されており、外枠101の下部と固定されている。
【0012】
上部枠体102の後方上部には、蓋104が洗濯物投入口105を覆うように開閉自在に軸支されている。蓋104の後方には操作表示部106が設けられており、操作表示部106は表示部及び操作部を含む。使用者は、操作部を操作しながら表示部に表示される情報を確認し、洗濯機の運転条件を設定する。
【0013】
外枠101の内部には、有底円筒状に形成された水槽107がサスペンション(図示せず)により弾性支持されている。
【0014】
排水管115は、水槽107の底部の内外を連通するように配設されている。水槽107の内部に溜まった水は、排水弁(図示せず)が開放されることにより水槽107から排出され、排水管115を通って洗濯機100の外部へ排出される。
【0015】
水槽107の内部には、洗濯兼脱水槽109が回転自在に保持されている。洗濯兼脱水槽109の側壁には多数の脱水孔112が形成されており、洗濯水を洗濯兼脱水槽109の内外に通過させる。洗濯兼脱水槽109の上方位置にはバランサ111が設けられており、脱水動作時の洗濯兼脱水槽109のガタツキを抑制する。洗濯兼脱水槽109の底部には、パルセータ110が回転自在に設けられている。パルセータ110が回転することにより、洗濯兼脱水槽109の内部の洗濯物を攪拌できる。
【0016】
水槽107の下部中央には、板状に形成された金属部品であるモータ保持部120が配設されている。モータ保持部120には、水槽107の外底部に取り付けられた伝達機構126と、ベルト122を介して伝達機構126を駆動させるモータ121と、が固定されている。ベルト122は、モータ121に設けられたモータ側プーリ123と、伝達機構126側に設けられたメカ側プーリ124との間で架橋されており、モータ121の回転駆動力を伝達機構126に伝達させる。
【0017】
伝達機構126には、回転軸125と、減速ギア(図示せず)と、回転軸125の接続先を切り換えるクラッチ(図示せず)と、ブレーキ(図示せず)と、が設けられている。回転軸125は、パルセータ110及び洗濯兼脱水槽109と、それぞれ接続されている。伝達機構126は、クラッチを切り替えることで、パルセータ110を単独で回転させ、または、パルセータ110及び洗濯兼脱水槽109を同時に回転させる。
【0018】
外枠101の背面は一部分が開口しており、開口部分には制御装置である制御基板(図示せず)を内蔵したコントローラボックス113が配設されている。制御基板は、モータ121や伝達機構126等を制御して一連の洗濯運転を実行させる。背面カバー114は、外枠101の開口部分を覆うように配設されており、コントローラボックス113の背面近傍において背面カバー膨出部114aが形成されている。
【0019】
(リード線)
図2は、実施の形態1における洗濯機の背面カバーを外した状態の下部背面図、
図3は、
図2におけるA-A断面図である。
【0020】
図2及び
図3に示すように、モータ121から引き出されたリード線127は、下部枠体103の背面に引き回され、コントローラボックス113の下部に形成されたボックス開口部113aからコントローラボックス113の内部に挿入されている。リード線127は、制御基板とモータ121とを電気的に接続し、電力供給や電気信号の伝達を行う。
【0021】
制御基板側のリード線127は下部枠体側取付部140に係止されており、下部枠体側取付部140はコントローラボックス113の下方において下部枠体103に配設されている。モータ121側のリード線127は水槽側取付部130に係止されており、水槽側取付部130は水槽107の下部に固定されている。水槽側取付部130は、後述する応力集中を低減するために、下部枠体側取付部140の近傍位置において下部枠体側取付部140と略平行となるように配置されている。
【0022】
リード線127は、水槽側取付部130と下部枠体側取付部140との間で、弛みであるリード線弛み部127aを持たせるように係止されている。後述のように、水槽107の振動に伴い、水槽側取付部130と下部枠体側取付部140との間の距離は大きく変動するため、リード線弛み部127aを設けることでリード線127が断裂することを抑止している。
【0023】
(水槽側取付部)
図4(a)は、実施の形態1における洗濯機の水槽側取付部の正面図、
図4(b)は、同洗濯機の水槽側取付部の側面図、
図4(c)は、同洗濯機の水槽側取付部の斜視図、
図5は、同洗濯機の水槽に取り付けられた水槽側取付部の周囲を示す斜視図である。
【0024】
図3、
図4及び
図5に示すように、水槽側取付部130は、金属等の難燃部材により板状に形成されており、モータ保持部120とは別部品である。水槽側取付部130とモータ保持部120とを別部品にすることで、水槽107に対するリード線127の固定位置を自由に配置できる。
【0025】
図3、
図4及び
図5に示すように、水槽側取付部130は、係止面131と、係止面131から垂直に折り曲げられた遮蔽面132と、により構成されており、係止面131には、位置決め用孔136と、ビス用孔135と、結束バンド用孔133と、がそれぞれ形成されている。
【0026】
水槽107の外底部には、位置決め用孔136と対向する位置に位置決めボス137が形成されている。水槽側取付部130は、位置決めボス137が位置決め用孔136に嵌め合わされた状態で、遮蔽面132が水槽107の中心側に位置する向きに配置される。水槽側取付部130は、位置決めされた状態で、ビス用孔135において水槽107の外底部にビス134にて固定される。なお、水槽側取付部130は、ビス134を外すことにより簡単に脱着可能である。
【0027】
結束バンド用孔133は、係止面131において二箇所に形成されており、それぞれ、上流側の結束バンド用孔133aと下流側の結束バンド用孔133bとしている。リード線127は、二箇所の結束バンド用孔133と略同じ間隔となるように二つの結束バンド150、すなわち、上流側の結束バンド150a、下流側の結束バンド150bでそれぞれ結束されている。上流側の結束バンド150a及び下流側の結束バンド150bは、リード線127を結束した状態で、それぞれ、上流側の結束バンド用孔133a及び下流側の結束バンド用孔133bに挿入され、係止面131の裏面に係止されている。
【0028】
遮蔽面132は、下流側の結束バンド用孔133bの近傍に形成されており、排水管115からリード線127を遮蔽するように配置されている。
【0029】
以上のように構成された洗濯機100について、以下、その動作を説明する。
【0030】
(洗濯運転時における水槽の振動)
使用者は、蓋104を開いて洗濯物投入口105から洗濯兼脱水槽109内に洗濯物を投入し、操作表示部106を操作して電源をONにする。続いて、使用者は、操作表示部106を操作して各種コースを選択し、洗濯運転を開始させる。各種コースは、洗い工程、濯ぎ工程、脱水工程、等の各種工程により構成されている。設定したコースにおける一連の工程が終了すると、洗濯運転が終了する。
【0031】
洗濯運転の際、サスペンションにより揺動自在に支持された水槽107は、洗濯兼脱水槽109やパルセータ110の動作に伴って振動する。水槽側取付部130に固定されたリード線127は、水槽107の振動ともに大きく揺れ動く一方、外枠101に固定されたリード線127は略振動しない。従って、リード線127は、水槽側取付部130の下流側の結束バンド150b、及び下部枠体側取付部140の上流側の結束バンド150aによる係止箇所において応力が集中し、断線して発火する虞がある。本実施の形態における水槽側取付部130及び下部枠体側取付部140は、難燃部材により形成されており、リード線127の発火が広がることを抑制できる。従って、水槽側取付部130は、係止面131上で発生した火災により水槽107が延焼することを抑制できる。
【0032】
本実施の形態における水槽側取付部130は、前述のように、応力集中による断線を抑制するためにコントローラボックス113の近傍且つ水槽107の外周近傍に配設される。本実施の形態における水槽側取付部130は、モータ保持部120と別部品であり、下部枠体側取付部140の近傍位置において水槽107に直接固定されている。これにより、モータ保持部120を水槽107の外周近傍まで延伸させる必要が無くなり、モータ保持部120を小さく形成できる。
【0033】
また、水槽の大きさが異なる複数機種の洗濯機を製造する場合、水槽側取付部130の取付位置を変更することにより、洗濯機100の背面側且つ水槽107の外周近傍に水槽側取付部130を配置できる。従って、水槽側取付部130とモータ保持部120とを別部品にしたことにより、水槽の大きさが異なる複数機種の洗濯機において部品を共通化できる。
【0034】
水槽側取付部130は、樹脂部品である排水管115の近傍において遮蔽面132が形成されている。これにより、発火の虞がある下流側の結束バンド150bの近傍から排水管115を遮蔽し、排水管115が延焼することを抑制できる。なお、モータ121から引き回されたリード線127は、上流側の結束バンド用孔133aの近傍において大きく屈曲し、結束バンド150により上流側の結束バンド用孔133aに係止されている。遮蔽面132は、下流側の結束バンド150bの近傍にのみ形成されているので、上流側で大きく屈曲するリード線127と接触しない。これにより、洗濯運転時の振動の際、遮蔽面132と接触するリード線127が断線することを抑止できる。
【0035】
(作用等)
以上のように、本実施の形態において、洗濯機100は、外枠101、上部枠体102、及び下部枠体103と、外枠101の内部に揺動可能に支持された水槽107と、水槽107の内部に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽109と、洗濯兼脱水槽109を回転駆動させるモータ121と、外枠101の背面側に配設され、モータ121を制御する制御基板と、モータ121と制御基板とを接続するリード線127と、水槽107の外底部に配設され、リード線127を固定する水槽側取付部130と、を備える。
【0036】
これにより、水槽側取付部130を水槽107の外周近傍に取り付け可能になるとともに、モータ保持部120を小さく形成できる。そのため、リード線127の断線を抑制するとともに、モータ保持部120の材料費を低減できる。
【0037】
本実施の形態のように、水槽側取付部130は、難燃部材により形成されており、水槽107に取り付けられた状態において水槽107の中心向きを遮蔽する遮蔽面132を有するようにしてもよい。
【0038】
これにより、水槽107の中心側に形成された排水管115等の樹脂部品に対して、リード線127の係止箇所を難燃部材により遮蔽できる。そのため、リード線127の係止箇所が断線して発火した場合、排水管115等の樹脂部品に延焼することを抑制できる。
【0039】
本実施の形態のように、遮蔽面132は、下流側の結束バンド150bによるリード線127の係止箇所を覆うように形成されていてもよい。
【0040】
これにより、上流側の結束バンド用孔133aの近傍において、リード線127の屈曲部分と遮蔽面132が接触しない。そのため、遮蔽面132によりリード線127が断線することを抑止できる。
【0041】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されない。
【0042】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0043】
実施の形態1では、洗濯機の一例として、縦型洗濯機である洗濯機100を説明した。洗濯機は、筐体内に揺動自在に支持された水槽及び制御装置を備えていればよいので縦型洗濯機に限定されない。洗濯機は、二槽式洗濯機であってもよい。
【0044】
実施の形態1では、難燃部材の一例として、金属を説明した。難燃部材は、金属に限定されるものではなく、セラミックや難燃性の樹脂を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は、モータ及び制御装置をリード線で電気的に接続している洗濯機に適用可能である。具体的には、縦型洗濯機、二槽式洗濯機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 洗濯機
101 外枠(筐体)
102 上部枠体
103 下部枠体
104 蓋
105 洗濯物投入口
106 操作表示部
107 水槽
109 洗濯兼脱水槽
110 パルセータ
111 バランサ
112 脱水孔
113 コントローラボックス
113a ボックス開口部
114 背面カバー
114a 背面カバー膨出部
115 排水管
120 モータ保持部
121 モータ
122 ベルト
123 モータ側プーリ
124 メカ側プーリ
125 回転軸
126 伝達機構
127 リード線
130 水槽側取付部
131 係止面
132 遮蔽面
133 結束バンド用孔
133a 上流側の結束バンド用孔
133b 下流側の結束バンド用孔
134 ビス
135 ビス用孔
136 位置決め用孔
137 位置決めボス
140 下部枠体側取付部
150 結束バンド
150a 上流側の結束バンド
150b 下流側の結束バンド