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  • 特許-チップ抵抗器 図1A
  • 特許-チップ抵抗器 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/034 20060101AFI20230825BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01C1/034
H01C7/00 110
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019558981
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2018042217
(87)【国際公開番号】W WO2019116814
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2017236576
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井関 健
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-066743(JP,A)
【文献】特開2015-179713(JP,A)
【文献】特開平02-304901(JP,A)
【文献】特開2003-188001(JP,A)
【文献】特開2003-068505(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/034
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面と一対の端面とを有する 絶縁基板と、前記絶縁基板の前記上面の両端部に設けられた一対の第1の上面電極と、前記絶縁基板の前記上面に設けられ、かつ前記一対の第1の上面電極の間に形成されて前記一対の第1の上面電極に接続された抵抗体と、前記一対の第1の上面電極の上面に形成されて前記抵抗体の上面の一部を覆う一対の第2の上面電極と、前記抵抗体と前記一対の第2の上面電極を覆うように設けられた保護層 と、少なくとも前記一対の第1の上面電極と電気的に接続されるように前記絶縁基板の前記一対の端面にそれぞれ設けられた一対の端面電極と、前記一対の第2の上面電極の上面の一部と前記一対の端面電極の表面に形成された一対の金属層とを備え、前記抵抗体にはトリミング溝が形成されており、前記一対の第2の上面電極は、前記一対の第1の上面電極より前記トリミング溝に近い部分を有しかつ上面視で前記トリミング溝を覆わず、前記保護層は、樹脂と、アルミナまたはシリカで構成されてかつ前記樹脂に混合されたフィラーの含有量は90wt%~97wt%である第1の保護膜と、前記第1の保護膜を覆う第2の保護膜とを含み、前記第1の保護膜は前記第2の保護膜より熱伝導率が高い、チップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器に使用される厚膜抵抗体で形成された小形のチップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5はチップ抵抗器500の断面図である。チップ抵抗器500は、絶縁基板1と、絶縁基板1の上面の両端部に設けられた一対の上面電極2と、絶縁基板1の上面に設けられてかつ一対の上面電極2間に形成された抵抗体3と、一対の上面電極2と、抵抗体3を覆う一対の上面電極4と、抵抗体3を覆う保護膜5aと、抵抗体3と一対の上面電極4の一部を覆うように設けられた保護膜5bと、一対の上面電極2と電気的に接続されるように絶縁基板1の両端面に設けられた一対の端面電極6と、一対の上面電極4の一部と一対の端面電極6の表面に形成されためっき層7とを備えている。抵抗体3には抵抗値調整用のトリミング溝8が設けられている。
【0003】
チップ抵抗器500に類似する従来のチップ抵抗器が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
チップ抵抗器500においては、高電力を入力すると抵抗体3の発熱が大きくなり、高電力を入力できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-222757号公報
【発明の概要】
【0006】
チップ抵抗器は、絶縁基板と、絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の第1の上面電極と、絶縁基板の上面に設けられ、かつ一対の第1の上面電極の間に形成されて一対の第1の上面電極に接続された抵抗体と、一対の第1の上面電極の上面に形成されて抵抗体を覆いかつ抵抗体に接続された一対の第2の上面電極と、抵抗体と一対の第2の上面電極を覆うように設けられた保護層と、少なくとも一対の第1の上面電極と電気的に接続されるように絶縁基板の一対の端面にそれぞれ設けられた一対の端面電極と、一対の第2の上面電極の上面の一部と一対の端面電極の表面に形成された一対の金属層とを備える。抵抗体にはトリミング溝が形成されている。一対の第2の上面電極は、一対の第1の上面電極よりトリミング溝に近い部分を有しかつ上面視でトリミング溝を覆っていない。保護層は、第1の保護膜と、第1の保護膜を覆う第2の保護膜とを含む。第1の保護膜は第2の保護膜より熱伝導率が高い。
【0007】
このチップ抵抗器は高電力に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは実施の形態におけるチップ抵抗器の断面図である。
図1B図1B図1Aに示すチップ抵抗器の拡大断面図である。
図2図2は実施の形態におけるチップ抵抗器の抵抗体の温度の変化を示す図である。
図3図3は実施の形態における他のチップ抵抗器の断面図である。
図4図4は実施の形態におけるさらに他のチップ抵抗器の断面図である。
図5図5は従来のチップ抵抗器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aは実施の形態におけるチップ抵抗器1000の断面図である。チップ抵抗器1000は絶縁基板11を備える。絶縁基板11は、上面111と、下面211と、互いに反対側の一対の端面311a、311bとを有する。端面311a、311bは上面111と下面211とに繋がる。チップ抵抗器1000は、絶縁基板11と、この絶縁基板11の上面111の両端部に設けられた一対の上面電極12a、12bと、絶縁基板11の上面111に設けられてかつ一対の上面電極12a、12bの間に形成された抵抗体13と、抵抗体13を覆うコート層14と、一対の上面電極12a、12bの上面112a、112bに形成されて抵抗体13を覆う一対の上面電極15a、15bと、抵抗体13とコート層14と一対の上面電極15a、15bとを覆う保護層16と、少なくとも一対の上面電極12a、12bと電気的に接続されるように絶縁基板11の両端面に設けられた一対の端面電極17a、17bと、一対の上面電極15a、15bの一部と一対の端面電極17a、17bの表面にそれぞれ形成された金属層18a、18bとを備えている。
【0010】
保護層16は、抵抗体13と一対の上面電極15a、15bを覆う保護膜16aと、保護膜16aを覆う保護膜16bとで構成されている。保護膜16aは保護膜16bより熱伝導率が高くなっている。
【0011】
絶縁基板11は、Alを96%含有するアルミナで構成されている。絶縁基板11の上面111と下面211と端面311a、311bとは矩形状を有し、絶縁基板11は上面視で矩形状を有する。
【0012】
上面電極12a、12bは、絶縁基板11の上面111の端面311a、311bにそれぞれ繋がる両端部に設けられており、銀、銀パラジウム、または銅からなる厚膜材料を印刷、焼成することによって形成されている。なお、絶縁基板11の下面211の端面311a、311bにそれぞれ繋がる両端部には下面電極20a、20bが形成されている。チップ抵抗器1000は下面電極20a、20bを備えていなくてもよい。
【0013】
抵抗体13は、絶縁基板11の上面111において上面電極12a、12bの間に、銀パラジウム、酸化ルテニウム、または銅ニッケルからなる厚膜材料を印刷した後、焼成することによって形成されている。抵抗体13の両端部は上面電極12a、12bの上面112a、112bにそれぞれ位置している。なお、抵抗体13は棒状ではなく、その両端部は絶縁基板11の内側に位置している。
【0014】
コート層14は抵抗体13の上面113に設けられて抵抗体13を完全に覆う。抵抗体13を覆うように硼珪酸ガラス等の絶縁材料で構成されたコート層14が設けられている。コート層14の上方からレーザを照射して抵抗体13にトリミング溝19設けられている。トリミング溝19の幅や長さを調整することで、抵抗体13の抵抗値を調整することができる。
【0015】
上面電極15a、15bは、銀、銀パラジウム、または銅からなる厚膜材料を印刷、焼成することによって形成されている。上面電極15a、15bは、抵抗体13に覆われておらず抵抗体13から露出する上面電極12a、12bのそれぞれの一部とコート層14の上面114の一部に形成されている。上面電極15a、15bは抵抗体13に当接していない。上面電極15a、15bは、抵抗体13にそれぞれ上面電極12a、12bを介して接続されている。一対の上面電極15a、15bの互いに対向するすなわち内側に向かう端部は保護層16に覆われている。
【0016】
上面電極15a、15bは、上面電極12a、12bに比べてトリミング溝19に近い部分315a、315bをそれぞれ有する。上面電極15a、15bの部分315a、315bは上面電極15a、15bの互いに対向する内側の部分である。上面電極15a、15bの部分315a、315bはトリミング溝19の近傍まで延びているが、上面視でトリミング溝19を覆わない。上面電極15a、15bがトリミング溝19を覆うとチップ抵抗器1000の抵抗値が変化したり、トリミング溝19の状態を確認できなかったりする場合がある。上面電極15a、15bの部分315a、315bは抵抗体13の上面113の上方に位置する。
【0017】
上面電極15a、15bは、保護層16と金属層18a、18bによってそれぞれ完全に覆われ、保護層16と金属層18a、18bから露出していない。これにより、上面電極15a、5bに伝わった熱が逃げずに、直接金属層18a、18bまで伝わるようにすることができる。
【0018】
保護層16は、保護膜16aと、保護膜16aを覆う保護膜16bとで構成されている。保護膜16bは保護膜16aの上面116aに設けられている。
【0019】
保護膜16aは、コート層14と、少なくとも一対の上面電極15a、15bのコート層14の上面114に位置する部分とに当接して直接覆うように形成されている。保護膜16aは、保護膜16bと抵抗体13との間に位置する。
【0020】
図1B図1Aに示すチップ抵抗器1000の拡大断面図である。保護膜16aは、樹脂91と、樹脂91に混合されて分散するアルミナまたはシリカからなるフィラー92とで構成されている。実施の形態では、樹脂91はエポキシ樹脂である。
【0021】
保護膜16bは、保護膜16aを覆うように形成されている。保護膜16bは、エポキシ樹脂からなる厚膜材料により設けられている。したがって、保護膜16aは、保護膜16bより熱が伝わりやすく、熱伝導率が高くなっている。
【0022】
一対の端面電極17a、17bは絶縁基板11の両端面311a、311bにそれぞれ設けられ、一対の上面電極12a、12bと一対の上面電極15a、15bとそれぞれ電気的に接続されるように、Agと樹脂からなる材料を印刷することによって形成される。
【0023】
一対の端面電極17a、17bの表面には、金属よりなる金属層18a、18bがそれぞれ形成されている。金属層18aは、端面電極17a上に形成された金属膜118aと、金属膜118a上に形成されて金属膜118aを覆う金属膜218aからなる。金属層18bは、端面電極17b上に形成された金属膜118bと、金属膜118b上に形成されて金属膜118bを覆う金属膜218bからなる。実施の形態では、金属層18は金属をめっきして形成されるめっき層である。具体的には実施の形態では金属膜118a、118bは端面電極17a、17bにニッケル(Ni)をめっきして形成されためっき膜であり、金属膜218a、218bは金属膜118a、118bにすず(Sn)をめっきして形成され他めっき膜である。ただし、金属層18a、18b(金属膜118a、118b、218a、218b)の材料や製法はこれらに限らない。金属層18a、18bは、一対の上面電極15a、15bの一部と接続され、かつ保護層16と接する。
【0024】
上面電極12a、12b、15a、15bを通して抵抗体13に電流が流れると、抵抗体13のうちトリミング溝19の近傍が局部的に最も高温であるホットスポットとなる。上記したように実施の形態におけるチップ抵抗器1000では、トリミング溝19と一対の上面電極15a、15bとの距離が近く、また一対の上面電極15a、15bが熱伝導率の高い保護膜16aに接触して覆われている。したがって、トリミング溝19近傍のホットスポットで発生した熱を効率よく金属層18a、18bに放出でき、これにより、抵抗体13のホットスポットの温度を下げることができ、高電力をチップ抵抗器に入力できる。
【0025】
上面電極15a、15bは上面電極12a、12bより熱伝導率が高い。実施の形態では、上面電極12a、12bは銅よりなり、上面電極15a、15bは銀よりなる。これにより、トリミング溝19近傍のホットスポットで発生した熱が、熱伝導性が高い一対の上面電極15a、15bと保護膜16aへ伝わるので、効果的に金属層18a,18bへより効果的に伝わる。さらに、一対の上面電極15a、15bと保護膜16aより熱伝導性が低い保護膜16bによってその熱が上方へ逃げないので、金属層18a、18bへより効果的に熱が伝わる。
【0026】
さらに、金属層18a、18bから実装用はんだを介して実装用基板へ熱をチップ抵抗器1000の外部に伝えて逃がすことができるので、抵抗体13のホットスポットの温度が下がり、抵抗体13の温度を均一化させることができる。
【0027】
図5に示すチップ抵抗器500においては、高電力を入力すると抵抗体3の発熱が大きくなるので抵抗体3の表面の温度が高くなり、高電力を入力することができない場合がある。
【0028】
実施の形態におけるチップ抵抗器1000では、抵抗体13で発生した熱を効率よく放出できるので、抵抗体13のホットスポットの温度が下がり、抵抗体13の温度を均一化させることができ、チップ抵抗器1000に高電力を入力できる。
【0029】
図2は、保護膜16aでのフィラー92の含有量と抵抗体13の温度の変化とを示す。図2において、縦軸は抵抗体13の温度の変化を示し横軸は保護膜16aにおけるフィラー92の含有量を重量パーセントで示す。
【0030】
図2は、フィラー92の含有量が60wt%(重量%)の場合の抵抗体13のホットスポットの温度を基準点0℃として示す。図2は、フィラー92の含有量のいくつかの値と、それら値での抵抗体13のホットスポットの温度を上記基準点からの変化(℃)として示している。
【0031】
図2から明らかなように、フィラー92の含有量が90wt%以上になると、急激に温度が下がる。
【0032】
フィラー92の含有量を97wt%より増やすと、樹脂91の量が極端に減るので、保護膜16aが絶縁基板11や抵抗体13もしくはコート層14への密着しにくくなり、絶縁基板11や抵抗体13もしくはコート層14から剥がれたり、製造の際の作業性が悪化したりして好ましくない。
【0033】
以上のことから、保護膜16aに対するフィラー92の含有量を90wt%~97wt%とすることが好ましい。
【0034】
図3は実施の形態における他のチップ抵抗器1001の断面図である。図3において、図1Aに示すチップ抵抗器1000と同じ部分には同じ参照番号を付す。チップ抵抗器1001では、コート層14は、抵抗体13の端部13a、13bを露出するように抵抗体13の上面113に設けられて抵抗体13を覆う。上面電極15a、15bは、抵抗体13の端部13a、13bにそれぞれ接続されている。一対の上面電極15a、15bの互いに対向するすなわち内側に向かう端部は保護層16に覆われている。
【0035】
図1Aに示すチップ抵抗器1000では、上面電極15a、15bは上面電極12a、12bを介して抵抗体13に接続されている。図3に示すチップ抵抗器1001では、上面電極15a、15bは抵抗体13の端部13a、13bに当接して直接的に接続されている。
【0036】
チップ抵抗器1001は図1Aに示すチップ抵抗器1000と同様に高電力が入力されても抵抗体13の温度を低くかつ均一にすることができる。
【0037】
図4は実施の形態におけるさらに他のチップ抵抗器1002の断面図である。図4において、図1Aに示すチップ抵抗器1000と同じ部分には同じ参照番号を付す。チップ抵抗器1002は、図1Aに示すチップ抵抗器1000のコート層14を備えていない。
【0038】
図4に示すチップ抵抗器1002では、上面電極15a、15bは抵抗体13の端部13a、13bのみならず、上面113に当接して接続されている。また、保護膜16aは、抵抗体13と、少なくとも一対の上面電極15a、15bの抵抗体13の上面113に位置する部分とに当接して直接覆うように形成されている。保護層16の保護膜16aは抵抗体13の上面113に当接する。
【0039】
チップ抵抗器1002は図1Aに示すチップ抵抗器1000と同様に高電力が入力されても抵抗体13の温度を低くかつ均一にすることができる。
【0040】
実施の形態において、「上面」「下面」等の方向を示す用語は絶縁基板等のチップ抵抗器の構成部品の相対的な位置でのみ決まる相対的な方向を示し、鉛直方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【符号の説明】
【0041】
11 絶縁基板
12a、12b 上面電極(第1の上面電極)
13 抵抗体
15a、15b 上面電極(第2の上面電極)
16 保護層
16a 保護膜(第1の保護膜)
16b 保護膜(第2の保護膜)
18a、18b 金属層
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5