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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20230825BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20230825BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G2/10 600
H01G2/06 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020521082
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2019015583
(87)【国際公開番号】W WO2019225187
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2018100913
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】前野 史和
(72)【発明者】
【氏名】三浦 寿久
(72)【発明者】
【氏名】金谷 英里子
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207427(JP,A)
【文献】特開2006-049556(JP,A)
【文献】特開2010-074935(JP,A)
【文献】特開2017-130545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 2/10
H01G 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容するケースと、
前記ケース内に充填される充填樹脂と、
電子回路が搭載された回路基板を固定するための固定部を有し、前記回路基板を前記充填樹脂から露出した状態で保持するように構成された基板保持部と、
を備え
前記固定部は、前記回路基板が載せられる載置面を有し、
前記基板保持部は、少なくとも前記載置面が前記充填樹脂から露出するように、前記充填樹脂中に埋没し、
前記固定部には、前記載置面に前記回路基板をネジ止めするためのネジ穴が形成され、
前記基板保持部は、前記固定部の周囲に配置され、前記固定部を取り囲む第1壁部と、前記固定部と前記第1壁部との間を埋める第2壁部と、を含む堀部をさらに有する、
コンデンサ。
【請求項2】
請求項に記載のコンデンサにおいて、
前記基板保持部は、前記コンデンサ素子よりも前記ケースの開口に近い側に配置され、
前記基板保持部には、前記ケースの前記開口に近い表面と前記コンデンサ素子に近い表面との間を貫通する開口部が設けられる、
コンデンサ。
【請求項3】
請求項に記載のコンデンサにおいて、
前記基板保持部には、前記開口部が複数設けられ、
隣接する2つの前記開口部の間に、T字状の断面形状を有する桟が形成される、
コンデンサ。
【請求項4】
請求項1ないしの何れか一項に記載のコンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子の両端面のそれぞれに形成された電極に接続されるバスバーを、さらに備え、
前記基板保持部は、前記バスバーと前記電子回路とを電気的に接続する電気配線を有する、
コンデンサ。
【請求項5】
請求項1ないしの何れか一項に記載のコンデンサにおいて、
前記基板保持部の前記固定部に固定された前記回路基板を、さらに備える、
コンデンサ。
【請求項6】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を収容するケースと、
前記ケース内に充填される充填樹脂と、
電子回路が搭載された回路基板を固定するための固定部を有し、前記回路基板を前記充填樹脂から露出した状態で保持するように構成された基板保持部と、
を備え、
前記固定部は、前記回路基板が載せられる載置面を有し、
前記基板保持部は、前記コンデンサ素子よりも前記ケースの開口に近い側に配置され、少なくとも前記載置面が前記充填樹脂から露出するように、前記充填樹脂中に埋没し、
前記基板保持部には、前記ケースの前記開口に近い表面と前記コンデンサ素子に近い表面との間を貫通する開口部が複数設けられ、
隣接する2つの前記開口部の間に、T字状の断面形状を有する桟が形成される、
コンデンサ。
【請求項7】
請求項6に記載のコンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子の両端面のそれぞれに形成された電極に接続されるバスバーを、さらに備え、
前記基板保持部は、前記バスバーと前記電子回路とを電気的に接続する電気配線を有する、
コンデンサ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のコンデンサにおいて、
前記基板保持部の前記固定部に固定された前記回路基板を、さらに備える、
コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両端面に電極が形成されたコンデンサ素子と、各電極に一端が接続された電極端子と、電極端子の他端が接続された導電部を有する両面基板と、両面基板に一端が接続されることにより導電部を介して電極端子と電気的に接続される外部端子と、ケース内に充填されたモールド樹脂とを備えるケースモールド型のコンデンサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。両面基板はモールド樹脂に埋没し、外部端子はモールド樹脂から露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-259932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のコンデンサの両面基板には、導電部が形成されているだけであり、電子回路は搭載されていない。
【0005】
一方で、ケースモールド型のコンデンサに、コンデンサ素子に関連する電子回路、たとえば、コンデンサ素子に残留した電荷を放電させるための放電回路を搭載した回路基板が備えられ得る。この場合、上記のように、回路基板がモールド樹脂中に埋没されると、電子回路を構成する部品の発熱が外部に放熱されにくくなり、電子回路やコンデンサ素子に不具合が生じ得ることが懸念される。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、回路基板から良好に放熱が行えるコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主たる態様に係るコンデンサは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子が収容されるケースと、前記ケース内に充填される充填樹脂と、電子回路が搭載された回路基板を固定するための固定部を有する基板保持部と、を備える。前記基板保持部は、前記回路基板を前記充填樹脂から露出した状態で保持するように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回路基板から良好に放熱が行えるコンデンサを提供できる。
【0009】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、実施の形態に係る、フィルムコンデンサの斜視図であり、図1(b)は、実施の形態に係る、基板ホルダが装着されたコンデンサ素子ユニットがケース内に収容された状態のフィルムコンデンサの斜視図である。
図2図2(a)は、実施の形態に係る、前方から見たコンデンサ素子ユニットの斜視図であり、図2(b)は、実施の形態に係る、後方から見たコンデンサ素子ユニットの斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る、コンデンサ素子ユニットの底面図である。
図4図4は、実施の形態に係る、回路基板の斜視図である。
図5図5(a)は、実施の形態に係る、前方から見た基板ホルダの斜視図であり、図5(b)は、実施の形態に係る、後方から見た基板ホルダの斜視図である。
図6図6(a)は、実施の形態に係る、基板ホルダの平面図であり、図6(b)は、実施の形態に係る、基板ホルダの底面図である。
図7図7(a)は、実施の形態に係る、前方上方から見た端子カバーの斜視図であり、図7(b)は、実施の形態に係る、前方下方から見た端子カバーの斜視図である。
図8図8(a)および(b)は、実施の形態に係る、基板ホルダが装着された状態のコンデンサ素子ユニットの部分側面断面図である。
図9図9は、実施の形態に係る、基板ホルダが装着された状態のコンデンサ素子ユニットの部分拡大平面図である。
図10図10(a)は、実施の形態に係る、ケース内に充填樹脂が充填された後、基板ホルダに回路基板が装着される前のフィルムコンデンサの部分拡大斜視図であり、図10(b)は、実施の形態に係る、基板ホルダに回路基板が装着された後のフィルムコンデンサの部分拡大斜視図である。
図11図11(a)および(b)は、実施の形態に係る、端子台に端子カバーが装着された状態の基板ホルダの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のコンデンサの一実施形態であるフィルムコンデンサ1について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、前後、左右および上下の方向が付記されている。なお、図示の方向は、あくまでフィルムコンデンサ1の相対的な方向を示すものであり、絶対的な方向を示すものではない。
【0012】
本実施の形態において、フィルムコンデンサ1が、特許請求の範囲に記載の「コンデンサ」に対応する。また、第1端面電極110および第2端面電極120が、特許請求の範囲に記載の「電極」に対応する。さらに、第1バスバー200および第2バスバー300が、特許請求の範囲に記載の「バスバー」に対応する。さらに、放電回路510が、特許請求の範囲に記載の「電子回路」に対応する。さらに、基板ホルダ600が、特許請求の範囲に記載の「基板保持部」に対応する。さらに、固定ボス620が、特許請求の範囲に記載の「固定部」に対応する。さらに、第1信号バスバー670および第2信号バスバー680が、特許請求の範囲に記載の「電気配線」に対応する。
【0013】
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【0014】
図1(a)は、フィルムコンデンサ1の斜視図であり、図1(b)は、基板ホルダ600が装着されたコンデンサ素子ユニットUがケース800内に収容された状態のフィルムコンデンサ1の斜視図である。
【0015】
フィルムコンデンサ1は、5個のコンデンサ素子100と、第1バスバー200と、第2バスバー300と、絶縁板400と、回路基板500と、基板ホルダ600と、端子カバー700と、ケース800と、充填樹脂900と、を備える。5個のコンデンサ素子100と、第1バスバー200と、第2バスバー300と、絶縁板400とにより、コンデンサ素子ユニットUが構成される。
【0016】
図2(a)は、前方から見たコンデンサ素子ユニットUの斜視図であり、図2(b)は、後方から見たコンデンサ素子ユニットUの斜視図である。図3は、コンデンサ素子ユニットUの底面図である。
【0017】
コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層し、扁平状に押圧することにより形成される。コンデンサ素子100には、一方の端面に、亜鉛等の金属の吹付けにより第1端面電極110が形成され、他方の端面に、同じく亜鉛等の金属の吹付けにより第2端面電極120が形成される。5個のコンデンサ素子100は、両端面が上下方向を向く状態で左右方向に配列される。
【0018】
第1バスバー200は、導電性材料、たとえば、銅板を適宜切り抜き、折り曲げることによって形成され、第1本体部210と、第1中継端子部220と、第1接続端子群230と、第1接続端子240とが一体となった構成を有する。
【0019】
第1本体部210は、左側の3個のコンデンサ素子100の第1端面電極110のほぼ前半面と、右側の2つのコンデンサ素子100の第1端面電極110のほぼ全面を覆う。第1本体部210には、各第1端面電極110に対応する位置にほぼ長方形の開口部211が形成され、これら開口部211の縁部に一対の第1電極端子212が形成される。第1電極端子212は、第1端面電極110に半田付け等の接合方法で接合される。これにより、第1バスバー200が第1端面電極110に電気的に接続される。また、第1本体部210には、ほぼ正方形の開口部213の縁部に鉤状の第1接続ピン214が形成される。さらに、第1本体部210には、2つの円形の小嵌合孔215a、4つの円形の大嵌合孔215b、4つの円形の流通孔216aおよび4つの長円形の流通孔216bが形成される。さらに、第1本体部210には、開口部213の右隣りの流通孔216bに繋がるように係合孔217が形成される。
【0020】
第1本体部210の前端部210aは、僅かに下方に延びて5個のコンデンサ素子100の周面の一部を覆う。前端部210aの右側には、2つの係合孔218が形成される。前端部210aは、左右の端部に途切れた部分を有し、その部分に鉤状の位置決め片219が設けられる。位置決め片219は、コンデンサ素子ユニットUをケース800内に収容したときに、ケース800に対するコンデンサ素子ユニットUの位置決めに用いられる。
【0021】
第1中継端子部220は、第1本体部210の左半分の後端部から上方に立ち上がる。第1中継端子部220の上端部に第1接続端子群230が設けられる。第1中継端子部220は、第1接続端子群230が設けられていない右端の上端部からさらに上方へ延びる上延部220aと、この上延部220aから後方に延びる後延部220bとを有し、この後延部220bの後端部に第1接続端子240が設けられる。
【0022】
第1接続端子群230は、左右方向に並ぶ9個の端子231により構成される。第1接続端子240は、円形の取付孔241を有する。
【0023】
第2バスバー300は、導電性材料、たとえば、銅板を適宜切り抜き、折り曲げることによって形成され、第2本体部310と、第2中継端子部320と、第2接続端子群330と、第2接続端子340とが一体となった構成を有する。
【0024】
第2本体部310は、左側の3個のコンデンサ素子100の第1端面電極110のほぼ後半面を覆う上面部310aと、5個のコンデンサ素子100の周面を覆う後面部310bと、5個のコンデンサ素子100の第2端面電極120の一部を覆う下面部310cとにより構成される。下面部310cの前端部における各第2端面電極120に対応する位置に一対の第2電極端子311が形成される。第2電極端子311は、第2端面電極120に半田付け等の接合方法で接合される。これにより、第2バスバー300が第2端面電極120に電気的に接続される。上面部310aには、ほぼL字形の開口部312の縁部に鉤状の第2接続ピン313が形成される。また、上面部310aには、円形の小嵌合孔314および3つの長円形の流通孔315が形成される。後面部310bには、3つの円形の流通孔316aおよび5つの長円形の流通孔316bが形成される。また、後面部310bの右側には、2つの係合孔317が形成される。さらに、後面部310bには、2つの位置決め片318が設けられる。これら位置決め片318は、コンデンサ素子ユニットUをケース800内に収容したときに、ケース800に対するコンデンサ素子ユニットUの位置決めに用いられる。
【0025】
第2中継端子部320は、第2本体部310の上面部310aの前端部から上方に立ち上がる。第2中継端子部320の上端部に第2接続端子群330が設けられる。第2中継端子部320は、第2接続端子群330が設けられていない右端の上端部からさらに上方へ延びる上延部320aと、この上延部320aから後方に延びる後延部320bとを有し、この後延部320bの後端部に第2接続端子340が設けられる。
【0026】
第2接続端子群330は、左右方向に並ぶ9個の端子331により構成される。第2接続端子340は、円形の取付孔341を有する。
【0027】
絶縁板400は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂により形成され、絶縁性を有する。絶縁板400は、第1バスバー200の第1中継端子部220と第2バスバー300の第2中継端子部320との間に介在される第1絶縁部410と、第2バスバー300の第2本体部310の上面部310aと左側の3個のコンデンサ素子100の第1端面電極110との間に介在される第2絶縁部420とを含む。第2絶縁部420には、上面部310aの3つの流通孔315と整合する3つの長円形の流通孔421が形成される。第1バスバー200の第1中継端子部220と第2バスバー300の第2中継端子部320とが第1絶縁部410を挟んで前後に重なり合うことで、第1バスバー200と第2バスバー300とが有するESL(等価直列インダクタンス)を低減させることができる。
【0028】
図4は、回路基板500の斜視図である。
【0029】
回路基板500は、長方形状を有するプリント基板である。回路基板500には、直列または並列に接続された放電抵抗(図示せず)を含む放電回路510が搭載される。回路基板500の4つの角部には、円形の取付孔501が形成される。また、回路基板500には、左端部の中央部と右端部の中央部に円形の位置決め孔502が形成される。右端部の位置決め孔502は、右側が開放する。さらに、回路基板500には、左後の角部の近傍に、放電回路510と電気的に接続された第1スルーホール503および第2スルーホール504が形成される。
【0030】
図5(a)は、前方から見た基板ホルダ600の斜視図であり、図5(b)は、後方から見た基板ホルダ600の斜視図である。図6(a)は、基板ホルダ600の平面図であり、図6(b)は、基板ホルダ600の底面図である。
【0031】
基板ホルダ600は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂により形成され、ケース800の内部に対応する形状を有する外枠610を備える。外枠610の前側には、先端に爪部611aを有するスナップ片611が2か所に形成される。また、外枠610の後側は、下方に延びる左右方向に長い内板部612と外板部613とが形成される。内板部612と外板部613は、前後に第2バスバー300の第2本体部310の厚み分の間隔を有して対向する。内板部612には、先端に爪部614aを有するスナップ片614が2か所に形成される。外板部613は、内板部612よりも低く、右側のスナップ片614に対向する部分が切り欠かれている。
【0032】
基板ホルダ600には、外枠610の内側に、4つの円柱状の固定ボス620が回路基板500の4つの取付孔501と同じ配置間隔で設けられる。固定ボス620の上端面は、回路基板500が載せられる載置面621となり、この載置面621に有底であるネジ穴622が形成される。ネジ穴622には、内周面に雌ネジが切られている。各固定ボス620の周囲には、堀部630が設けられる。堀部630は、固定ボス620を取り囲む第1壁部631と、固定ボス620と第1壁部631との間を埋める第2壁部632とからなる。後側の2つの堀部630では、外枠610の一部が第1壁部631の一部を兼ねる。各固定ボス620の下端面には、円形の大突起623が形成される。
【0033】
適宜の形状を有する複数の桟640が、外枠610の内側に、縦横に掛け渡される。これら桟640で区画されることにより、基板ホルダ600には、外枠610の内側に複数の開口部650が設けられる。隣接する2つの開口部650の間に形成される一部の桟641は、断面がT字状に形成される。左側の前後の2つの固定ボス620を繋ぐリブ642が、それら固定ボス620の間の桟640上に形成され、右側の前後の2つの固定ボス620を繋ぐリブ643が、それら固定ボス620の間の桟640上に形成される。2つのリブ642、643の中央部に位置決めピン644が形成される。後側の2つの固定ボス620の間に位置する桟640の下面には、爪部645aを有するスナップ片645が形成される。
【0034】
基板ホルダ600には、外枠610の内側に配線部660が設けられる。配線部660には、銅等の導電性の金属材料により形成された第1信号バスバー670および第2信号バスバー680がインサート成形によって埋め込まれる。基板ホルダ600には、配線部660の周りも複数の開口部650が設けられる。
【0035】
第1信号バスバー670は、第1接続部671と、第1接続ピン672と、第1出力信号端子673と、第1導線部674を含み、第2信号バスバー680は、第2接続部681と、第2接続ピン682と、第2出力信号端子683と、第2導線部684を含む。第1接続部671および第2接続部681は、接続孔671a、681aを有し、配線部660に隣接する開口部650内に露出する。第1接続ピン672および第2接続ピン682は、左後の固定ボス620および堀部630の近傍において上方に突出する。第1出力信号端子673および第2出力信号端子683は、ピン状を有し、外枠610の後側に設けられた端子台690から後方に向かって突き出す。第1接続部671、第1接続ピン672および第1出力信号端子673が第1導線部674により繋がり、第2接続部681、第2接続ピン682および第2出力信号端子683が第2導線部684により繋がる。
【0036】
配線部660の上面には、第1接続ピン672を取り囲むように第1囲み壁部661が設けられ、第2接続ピン682を取り囲むように第2囲み壁部662が設けられる。左後の堀部630における第1壁部631と外枠610の一部が、第1囲み壁部661の一部を兼ね、第1壁部631とリブ642の一部が、第2囲み壁部662の一部を兼ねる。また、配線部660の下面には、円形の小突起663が3か所に形成される。
【0037】
端子台690には、2つのスリット状の差込穴691が左右に並ぶように設けられる。また、端子台690には、後面中央部の溝部692に突起693が形成される。
【0038】
図7(a)は、前方上方から見た端子カバー700の斜視図であり、図7(b)は、前方下方から見た端子カバー700の斜視図である。
【0039】
端子カバー700は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂により形成され、左右2つのカバー部710を備える。各カバー部710は、上壁部711と、内壁部712と、外壁部713とで構成され、上壁部711に2つのほぼ長方形の窓部714を有する。右側のカバー部710は、予備として設けられる。また、端子カバー700には、端子台690の2つの差込穴691に対応する形状を有する差込片720が形成される。さらに、端子カバー700は、2つのカバー部710の間に、下方に突出するスナップ片730を有する。スナップ片730先端には爪部731が形成される。
【0040】
図8(a)および(b)は、基板ホルダ600が装着された状態のコンデンサ素子ユニットUの部分側面断面図である。図8(a)では、コンデンサ素子ユニットUが、左側の2つの固定ボス620の位置で切断されており、図8(b)では、コンデンサ素子ユニットUが、左側のスナップ片611、614と係合孔218、317との位置で切断されている。図9は、基板ホルダ600が装着された状態のコンデンサ素子ユニットUの部分拡大平面図である。
【0041】
基板ホルダ600が、上方からコンデンサ素子ユニットUの右側の領域に装着される。図8(a)に示すように、基板ホルダ600の4つの大突起623が第1バスバー200の4つの大嵌合孔215bに嵌合する。同様に、基板ホルダ600の3つの小突起663が第1バスバー200の2つの小嵌合孔215aおよび第2バスバー300の小嵌合孔314に嵌合する。また、基板ホルダ600の内板部612と外板部613とにより第2バスバー300の第2本体部310が挟み込まれる。さらに、図8(b)に示すように、基板ホルダ600の前側の2つのスナップ片611の爪部611aが第1バスバー200の2つの係合孔218と係合し、基板ホルダ600の後側の2つのスナップ片614の爪部614aが第2バスバー300の2つの係合孔317と係合する。同様に、基板ホルダ600のスナップ片645の爪部645aが第1バスバー200の係合孔217と係合する。こうして、基板ホルダ600がコンデンサ素子ユニットUに対し前後、左右および上下方向に固定される。
【0042】
図9に示すように、第1バスバー200の第1接続ピン214が基板ホルダ600の第1信号バスバー670の第1接続部671の接続孔671aに嵌め込まれ、第1接続ピン214と第1接続部671とが半田付けにより結合される。同様に、第2バスバー300の第2接続ピン313が基板ホルダ600の第2信号バスバー680の第2接続部681の接続孔681aに嵌め込まれ、第2接続ピン313と第2接続部681とが半田付けにより結合される。
【0043】
図1(b)に示すように、基板ホルダ600が装着されたコンデンサ素子ユニットUがケース800内に収容される。
【0044】
ケース800は、樹脂製であり、たとえば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)により形成される。ケース800は、ほぼ直方体の箱状に形成され、上面が開口する。ケース800には、左側面および右側面の外壁面の上部に取付タブ810が設けられる。各取付タブ810には、挿通孔811が形成される。挿通孔811には、孔の強度を上げるために金属製のカラー812が嵌め込まれる。また、各取付タブ810には、後方に突出する位置決め突起813が形成される。フィルムコンデンサ1が外部装置の設置部に設置される際、これら取付タブ810がネジ等によって設置部に固定される。
【0045】
コンデンサ素子ユニットUが収容されたケース800内に充填樹脂900が充填される。充填樹脂900は、熱硬化性樹脂、たとえば、エポキシ樹脂であり、溶融状態でケース800内に注入される。この際、基板ホルダ600に設けられた複数の開口部650が、ケース800の開口側とコンデンサ素子100側との間で貫通しているので、注入された溶融状態の充填樹脂900が開口部650を通過する。また、溶融状態の充填樹脂900が第1バスバー200に設けられた流通孔216a、216bおよび第2バスバー300に設けられた流通孔315、316a、316bを通過する。これにより、ケース800内に円滑に充填樹脂900が充填される。その後、ケース800内が加熱されると、ケース800内の充填樹脂900が硬化する。コンデンサ素子ユニットUの充填樹脂900に埋没した部分が、ケース800および充填樹脂900によって湿気や衝撃から保護される。
【0046】
図10(a)は、ケース800内に充填樹脂900が充填された後、基板ホルダ600に回路基板500が装着される前のフィルムコンデンサ1の部分拡大斜視図であり、図10(b)は、基板ホルダ600に回路基板500が装着された後のフィルムコンデンサ1の部分拡大斜視図である。
【0047】
図10(a)に示すように、ケース800内には、基板ホルダ600の4つの堀部630の第1壁部631の上端面よりもやや低い位置まで、充填樹脂900が充填される。第1壁部631は充填樹脂900の表面よりも高い状態にあり、固定ボス620の周囲領域、即ち堀部630の内部には充填樹脂900が充填されない。また、第1囲み壁部661および第2囲み壁部662も充填樹脂900の表面よりも高い状態にあり、第1接続ピン672および第2接続ピン682の周囲領域にも充填樹脂900が充填されない。基板ホルダ600は、その大部分が充填樹脂900中に埋没するが、4つの固定ボス620(載置面621)、第1接続ピン672、第2接続ピン682および位置決めピン644が、充填樹脂900から露出する。
【0048】
図10(b)に示すように、回路基板500が基板ホルダ600に装着され、充填樹脂900から露出した状態で保持される。この際、基板ホルダ600の位置決めピン644が回路基板500の位置決め孔502に挿入され、回路基板500が基板ホルダ600に位置決めされる。回路基板500の4つの取付孔501が、対応する固定ボス620のネジ穴622に整合する。各取付孔501を通されたネジ520が、各ネジ穴622に止められる。これにより、回路基板500が基板ホルダ600にネジ止め固定される。第1接続ピン672が第1スルーホール503に通されて半田着けされ、第2接続ピン682が第2スルーホール504に通されて半田着けされる。これにより、第1バスバー200が第1信号バスバー670を介して回路基板500の放電回路510と電気的に接続され、第2バスバー300が第2信号バスバー680を介して回路基板500の放電回路510と電気的に接続される。
【0049】
図11(a)および(b)は、端子台690に端子カバー700が装着された状態の基板ホルダ600の部分拡大断面図である。図11(a)では、基板ホルダ600が、左側の差込穴691の位置で切断されており、図11(b)では、基板ホルダ600が、溝部692の位置で切断されている。
【0050】
回路基板500が基板ホルダ600に装着された後、基板ホルダ600の端子台690に端子カバー700が装着される。この際、図11(a)に示すように、端子カバー700の2つの差込片720が端子台690の2つの差込穴691に差し込まれる。さらに、図11(b)に示すように、端子カバー700のスナップ片730の爪部731が端子台690の突起693と係合する。端子台690から後方へ突出する第1出力信号端子673および第2出力信号端子683が端子カバー700の左側のカバー部710により覆われる。カバー部710の窓部714を通じて、第1出力信号端子673および第2出力信号端子683を上方から覗き見ることができる。
【0051】
こうして、フィルムコンデンサ1が完成する。
【0052】
フィルムコンデンサ1が外部装置に搭載されると、第1バスバー200の第1接続端子群230および第1接続端子240が、それらに対応する外部装置の外部端子に接続され、第2バスバー300の第2接続端子群330および第2接続端子340が、それらに対応する外部装置の外部端子に接続される。また、第1信号バスバー670の第1出力信号端子673および第2信号バスバー680の第2出力信号端子683には、それらに対応する外部装置の電圧信号入力用の端子が接続される。なお、電圧信号入力用の端子が第1出力信号端子673および第2出力信号端子683へ接続される際には、端子カバー700が端子台690から取り外される。
【0053】
フィルムコンデンサ1の通電時、コンデンサ素子100の電圧が電圧信号として第1出力信号端子673および第2出力信号端子683から外部装置に出力される。これにより、外部装置では、コンデンサ素子100の電圧異常を検出することが可能となる。
【0054】
フィルムコンデンサ1への通電が停止したとき、5個のコンデンサ素子100には電荷が残留し得る。残留した電荷は、第1信号バスバー670および第2信号バスバー680を通じて回路基板500の放電回路510へ入力され、放電回路510により放電される。これにより、コンデンサ素子100に電荷が残留することが防止される。
【0055】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0056】
フィルムコンデンサ1は、放電回路510が搭載された回路基板500を固定するための固定ボス620を有し、回路基板500がケース800内に充填された充填樹脂900から露出した状態で保持される基板ホルダ600を備える。この構成によれば、回路基板500を充填樹脂900から露出するように固定ボス620に固定できるので、放電回路510の構成部品(放電抵抗等)が発熱した際、回路基板500から良好に熱を放出させることができる。
【0057】
また、固定ボス620は、回路基板500が載せられる載置面621を有し、基板ホルダ600は、少なくとも載置面621が充填樹脂900から露出するように、充填樹脂900中に埋没する。この構成によれば、充填樹脂900を利用して、基板ホルダ600をケース800内にしっかりと固定できる。
【0058】
さらに、固定ボス620には、載置面621に回路基板500をネジ止めするためのネジ穴622が形成され、基板ホルダ600には、固定ボス620を取り囲む第1壁部631と、固定ボス620と第1壁部631との間を埋める第2壁部632とからなる堀部630が、固定ボス620の周囲に設けられる。この構成によれば、ネジ止めにより、回路基板500を固定ボス620にしっかりと固定することができる。しかも、堀部630により、固定ボス620の周囲に充填樹脂900が充填されないようにすることができるので、固定ボス620の周囲の充填樹脂900が載置面621に這い上がりネジ穴622に侵入してしまう、ということを防止できる。よって、侵入した充填樹脂900により回路基板500のネジ止めが適正に行われなくなる、ということを防止できる。
【0059】
さらに、基板ホルダ600は、コンデンサ素子100よりもケース800の開口側に配置され、基板ホルダ600には、ケース800の開口側とコンデンサ素子100側との間で貫通する開口部650が設けられる。この構成によれば、ケース800内に注入された溶融状態の充填樹脂900を、開口部650を流通させてコンデンサ素子100側に導くことができ、ケース800内に充填樹脂900が円滑に充填される。
【0060】
さらに、基板ホルダ600には、開口部650が複数設けられ、隣接する2つの開口部650の間に、T字状の断面形状を有する桟641が形成される。この構成によれば、基板ホルダ600が丈夫になり、変形しにくくなる。
【0061】
さらに、コンデンサ素子100の両端面に形成された第1端面電極110および第2端面電極120にそれぞれ接続される第1バスバー200および第2バスバー300を備え、基板ホルダ600には、第1バスバー200および第2バスバー300と放電回路510とを電気的に接続する第1信号バスバー670および第2信号バスバー680が設けられる。この構成によれば、回路基板500を基板ホルダ600に装着することにより、第1バスバー200および第2バスバー300と放電回路510とを電気的に接続できる。また、第1信号バスバー670に第1出力信号端子673が設けられ、第2信号バスバー680に第2出力信号端子683が設けられることにより、コンデンサ素子100の電圧を電圧信号として外部装置へ出力できる。
【0062】
さらに、フィルムコンデンサ1は、基板ホルダ600の固定ボス620に固定された回路基板500を備える。この構成によれば、放電回路510が搭載された回路基板500がフィルムコンデンサ1側に備えられるので、外部装置側で回路基板500を準備しなくてよい。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
【0064】
たとえば、上記実施の形態では、フィルムコンデンサ1に回路基板500が備えられる。しかしながら、フィルムコンデンサ1に回路基板500が備えられず、回路基板500が外部装置側で準備され、フィルムコンデンサ1が外部装置に搭載された際に、回路基板500が基板ホルダ600に装着されるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、回路基板500に放電回路510が搭載される。しかしながら、コンデンサ素子100に関連する電子回路であれば、放電回路510以外の電子回路が回路基板500に搭載されてもよい。
【0066】
さらに、上記実施の形態では、基板ホルダ600は、ネジ穴622を有する固定ボス620を有し、回路基板500が、ネジ止めにより固定ボス620に固定される。しかしながら、基板ホルダ600に、他の固定構造を有する固定部が設けられてもよい。たとえば、基板ホルダ600にスナップ片を有する固定部が設けられ、回路基板500に係合孔が設けられ、スナップ片と係合孔との係合、即ち、スナップフィットにより、回路基板500が固定部に固定されるようにしてもよい。この場合、固定部の周囲に堀部630がなくてもよい。
【0067】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子ユニットUに5個のコンデンサ素子100が含まれる。しかしながら、コンデンサ素子100の個数は、1個である場合も含めて、適宜、変更することができる。
【0068】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムにより形成されたが、これ以外にも、亜鉛、マグネシウム等の他の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。あるいは、コンデンサ素子100は、これらの金属のうち、複数の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよいし、これらの金属どうしの合金を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。また、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層することで形成されたものであるが、これ以外にも、誘電体フィルムの両面にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムと絶縁フィルムとを重ね、これを巻回または積層することにより、これらコンデンサ素子100が形成されてもよい。
【0069】
さらに、上記実施の形態では、本発明のコンデンサの一例として、フィルムコンデンサ1が挙げられた。しかしながら、本発明は、フィルムコンデンサ1以外のコンデンサに適用することもできる。
【0070】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0071】
なお、上記実施の形態の説明において「上方」「下方」等の方向を示す用語は、構成部材の相対的な位置関係にのみ依存する相対的な方向を示すものであり、鉛直方向、水平方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、車両の電装等に使用されるコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 フィルムコンデンサ(コンデンサ)
100 コンデンサ素子
110 第1端面電極(電極)
120 第1端面電極(電極)
200 第1バスバー(バスバー)
300 第2バスバー(バスバー)
500 回路基板
510 放電回路(電子回路)
600 基板ホルダ(基板保持部)
620 固定ボス(固定部)
621 載置面
622 ネジ穴
630 堀部
631 第1壁部
632 第2壁部
640 桟
641 桟
650 開口部
670 第1信号バスバー(電気配線)
680 第2信号バスバー(電気配線)
800 ケース
900 充填樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11