(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230825BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20230825BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20230825BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/32 531
H01G4/38 A
H01G2/02 101E
H01G4/228 S
H01G4/228 Q
(21)【出願番号】P 2020571066
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2020001434
(87)【国際公開番号】W WO2020162138
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2019018888
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】川端 基裕
(72)【発明者】
【氏名】木場 英治
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081853(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/146013(WO,A1)
【文献】特開2008-130640(JP,A)
【文献】特開2006-253280(JP,A)
【文献】特開2016-152243(JP,A)
【文献】特表2008-537361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/38
H01G 2/02
H01G 4/228
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子ユニットと、前記コンデンサ素子ユニットを収容する金属製のケースと、を備え、
前記コンデンサ素子ユニットは、
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の両端面
の一方に形成される第1電極
と、
前記コンデンサ素子の両端面の他方に形成される第2電極と、
前記第1電極に接続され
、第1領域を有する第1バスバーと、
前記第2電極に接続され
、前記第1領域に対向する第2領域を有する第2バスバーと
、
絶縁性を有し、前記第1領域と前記第2領域との間に介在する第1絶縁部材と
、を備え
、
前記第1絶縁部材には、第1取付部が設けられ、
前記ケースには、前記コンデンサ素子ユニットが前記ケースに対して所定の位置に配置され、且つ、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーが前記ケースと接触しないように前記第1取付部が取り付けられる第2取付部が設けられる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子は、前記第2電極が前記ケースの内底面と対向する向きで前記ケース内に配置され、
前記第2バスバーは、前記第2電極と前記ケースの内底面との間に位置して前記第2電極に接続される電極接続部を含み、
前記第1取付部は、前記電極接続部が前記ケースの内底面に接触しないように前記第2取付部に取り付けられる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンデンサにおいて、
前記第2取付部は、前記ケースの内底面に平行な取付面を含み、
前記第1取付部は、前記第2取付部の取付面に接触する取付面を含み、
前記第2取付部の取付面と前記ケースの内底面との距離が、前記第1取付部の取付面と前記電極接続部における前記ケースの内底面に対向する面との距離よりも大きくされる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のコンデンサにおいて、
絶縁性を有し、前記電極接続部と前記ケースの内底面との間に介在する第2絶縁部材をさらに備える、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のコンデンサにおいて、
前記第1取付部は、ネジにより前記第2取付部に取り付けられる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のコンデンサにおいて、
前記第1取付部は、前記第1取付部および前記第2取付部の一方に設けられた突起と他方に設けられた穴との嵌合により、前記第2取付部に取り付けられる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサ素子の両端面に形成された電極のそれぞれにバスバーが接続され、これらバスバーの一部が絶縁板を介して重ね合される構成を有するコンデンサ素子ユニットを備え、このコンデンサ素子ユニットが樹脂製のケース内に収容されるコンデンサが知られている。このようなコンデンサの一例であるフィルムコンデンサが、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のフィルムコンデンサでは、コンデンサ素子に接続された下バスバーが、ケースの底面と対向し、下バスバーとケースの底面とに僅かな隙間ができるように、コンデンサユニットが、ケースの底面に形成された複数の支持リブにより支持される。このとき、ケースの一部である支持リブに下バスバーが接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気自動車の普及に伴い、電気自動車へのコンデンサの使用が始められている。たとえば、電気モータ等を駆動する電源装置にコンデンサが接続される使用形態が採られ得る。この場合、電源装置からコンデンサに大きな電流が流れやすく、コンデンサ素子やバスバーが発熱しやすい。よって、コンデンサの温度が高くなりやすい。
【0006】
そこで、放熱性の高いコンデンサを実現するために、樹脂製のケースに代えて、金属製のケースを用いることが考えられる。
【0007】
しかしながら、このようにケースが金属製とされる場合、特許文献1のフィルムコンデンサのように、コンデンサ素子ユニットがケース内の所定の位置に配置されたときにバスバーがケースと接触するような構成が採られてしまうと、バスバーに流れる電流がケースへ流れてしまうとの課題が生じ得る。
【0008】
かかる課題に鑑み、本発明は、バスバーと金属製のケースとの間の絶縁性を確保しつつコンデンサ素子ユニットをケースに対して所定の位置に配置できるコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様に係るコンデンサは、前記コンデンサ素子ユニットを収容する金属製のケースと、を備える。前記コンデンサ素子ユニットは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の両端面の一方に形成される第1電極と、前記コンデンサ素子の両端面の他方に形成される第2電極と、前記第1電極に接続され、第1領域を有する第1バスバーと、前記第2電極に接続され、前記第1領域に対向する第2領域を有する第2バスバーと、絶縁性を有し、前記第1領域と前記第2領域との間に介在する第1絶縁部材と、を備える。前記第1絶縁部材には、第1取付部が設けられ、前記ケースには、前記コンデンサ素子ユニットが前記ケースに対して所定の位置に配置され、且つ、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーが前記ケースと接触しないように前記第1取付部が取り付けられる第2取付部が設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バスバーと金属製のケースとの間の絶縁性を確保しつつコンデンサ素子ユニットをケースに対して所定の位置に配置できる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)は、実施の形態に係る、フィルムコンデンサの斜視図であり、
図1(b)は、実施の形態に係る、ケース内に充填樹脂が充填される前のフィルムコンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施の形態に係る、前方上方から見たコンデンサ素子ユニットの斜視図であり、
図2(b)は、実施の形態に係る、後方下方から見たコンデンサ素子ユニットの斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、実施の形態に係る、第1バスバーの斜視図であり、
図3(b)は、実施の形態に係る、第2バスバーの斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、実施の形態に係る、前方上方から見た絶縁板の斜視図であり、
図4(b)は、実施の形態に係る、後方下方から見た絶縁板の斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、実施の形態に係る、ケースの斜視図であり、
図5(b)は、実施の形態に係る、ケースの平面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施の形態に係る、取付タブと取付ボスとの結合位置で切断された状態のフィルムコンデンサの正面断面図であり、
図6(b)は、実施の形態に係る、中央位置で切断された状態のフィルムコンデンサの側面断面図である。
【
図7】
図7(a)は、変更例1に係る、1つの絶縁カバーが外された状態のコンデンサ素子ユニットの斜視図であり、
図7(b)は、変更例1に係る、中央位置で切断された状態のフィルムコンデンサの側面断面図である。
【
図8】
図8(a)および(b)は、その他の変更例に係る、フィルムコンデンサについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のコンデンサの一実施形態であるフィルムコンデンサ1について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、前後、左右および上下の方向が付記されている。なお、図示の方向は、あくまでフィルムコンデンサ1の相対的な方向を示すものであり、絶対的な方向を示すものではない。また、説明の便宜上、「底面部」、「前側面部」など、一部の構成において、図示の方向に従った名称がつけられる場合がある。
【0014】
本実施の形態において、フィルムコンデンサ1が、特許請求の範囲に記載の「コンデンサ」に対応する。また、第1端面電極110が、特許請求の範囲に記載の「第1電極」に対応し、第2端面電極120が、特許請求の範囲に記載の「第2電極」に対応する。さらに、第1本体部210が、特許請求の範囲に記載の「第1領域」に対応し、第2本体部310が、特許請求の範囲に記載の「第2領域」に対応する。さらに、第2電極端子部320が、特許請求の範囲に記載の「電極接続部」に対応する。さらに、絶縁板400が、特許請求の範囲に記載の「第1絶縁部材」に対応する。さらに、取付タブ430が、特許請求の範囲に記載の「第1取付部」に対応する。さらに、取付ボス520が、特許請求の範囲に記載の「第2取付部」に対応する。さらに、ボルト700が、特許請求の範囲に記載の「ネジ」に対応する。
【0015】
ただし、上記記載は、あくまで、特許請求の範囲の構成と実施形態の構成とを対応付けることを目的とするものであって、上記対応付けによって特許請求の範囲に記載の発明が実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【0016】
図1(a)は、フィルムコンデンサ1の斜視図であり、
図1(b)は、ケース500内に充填樹脂600が充填される前のフィルムコンデンサ1の斜視図である。
【0017】
図1(a)および(b)に示すように、フィルムコンデンサ1は、3つのコンデンサ素子100と、第1バスバー200と、第2バスバー300と、絶縁板400と、ケース500と、充填樹脂600とを備える。3つのコンデンサ素子100、第1バスバー200、第2バスバー300および絶縁板400が一体となるように組み付けられることにより、コンデンサ素子ユニット10が構成される。コンデンサ素子ユニット10がケース500内に収容され、ケース500内に充填樹脂600が充填される。充填樹脂600は、熱硬化性樹脂、たとえば、エポキシ樹脂である。コンデンサ素子ユニット10の充填樹脂600に埋没した部分が、ケース500および充填樹脂600によって湿気や衝撃から保護される。
【0018】
図2(a)は、前方上方から見たコンデンサ素子ユニット10の斜視図であり、
図2(b)は、後方下方から見たコンデンサ素子ユニット10の斜視図である。
【0019】
コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層し、扁平状に押圧することにより形成される。コンデンサ素子100は、2つの端面101と、これら端面101を繋ぐ周面102とを含む。周面102は、2つの平坦面102aと、これら平坦面102aを繋ぐ2つの円弧面102bと含み、各円弧面102bは、その中央部分が平坦面となっている。コンデンサ素子100は、全体として、扁平な長円柱に近い形態を採る。
【0020】
コンデンサ素子100には、一方の端面101に、亜鉛等の金属の吹付けにより第1端面電極110が形成され、他方の端面101に、同じく亜鉛等の金属の吹付けにより第2端面電極120が形成される。3つのコンデンサ素子100は、第1端面電極110および第2端面電極120が、それぞれ、上方および下方の向き、周面102の平坦面102a同士が隣り合うように左右方向に配列される。このような状態で、3つのコンデンサ素子100に第1バスバー200および第2バスバー300が接続される。
【0021】
なお、本実施の形態のコンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムにより形成されたが、これ以外にも、亜鉛、マグネシウム等の他の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。あるいは、コンデンサ素子100は、これらの金属のうち、複数の金属を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよいし、これらの金属どうしの合金を蒸着させた金属化フィルムにより形成されてもよい。
【0022】
図3(a)は、第1バスバー200の斜視図であり、
図3(b)は、第2バスバー300の斜視図である。
【0023】
第1バスバー200は、導電性材料、たとえば、銅板を適宜切り抜き、折り曲げることによって形成され、第1本体部210と、3つの第1電極端子部220と、3つの第1接続端子部230とが一体となった構成を有する。
【0024】
第1本体部210は、左右方向に細長い方形板状の上面部211と、上面部211の前縁の中央部と左端部と右端部とに設けられ、前縁から垂下する方形板状の3つの前面部212とを含む。中央の前面部212と左右の前面部212との間には、所定の間隔が設けられる。上面部211は、2つの前面部212の間の前縁部分が後方に凹むように切り欠かれている。上面部211には、左端部に円形の貫通穴213が形成され、右端部に左右に長い長円形の貫通穴214が形成される。
【0025】
3つの第1電極端子部220は、方形の板状を有し、第1本体部210の3つの前面部212の前縁から前方に延びる。第1電極端子部220には、前縁に、2つの接続ピン221が左右方向に並ぶように形成される。
【0026】
3つの第1接続端子部230は、方形の板状を有し、第1本体部210の上面部211の後縁から後方に延びる。3つの第1接続端子部230は、互いに所定の間隔を有し、上面部211の中央からやや左側にずらされた状態で左右方向に並ぶ。
【0027】
第2バスバー300は、導電性材料、たとえば、銅板を適宜切り抜き、折り曲げることによって形成され、第2本体部310と、3つの第2電極端子部320と、3つの第2接続端子部330とが一体となった構成を有する。
【0028】
第2本体部310は、左右方向に細長い方形板状の上面部311と、上面部311の前縁の中央部と左端部と右端部とに設けられ、前縁から垂下する方形板状の3つの前面部312とを含む。中央の前面部312と左右の前面部312との間には、所定の間隔が設けられる。上面部311は、2つの前面部312の間の前縁部分が後方に凹むように切り欠かれている。上面部311には、左端部に左右に長い長円形の貫通穴313が形成され、右端部に円形の貫通穴314が形成される。第2本体部310の3つの前面部312は、第1本体部210の3つの前面部212よりも上下方向に長い。
【0029】
3つの第2電極端子部320は、方形の板状を有し、第2本体部310の3つの前面部312の前縁から前方に延びる。第2電極端子部320には、前縁に、2つの接続ピン321が左右方向に並ぶように形成される。3つの第2電極端子部320は、3つの第1電極端子部220よりも前後方向に長い。
【0030】
3つの第2接続端子部330は、方形の板状を有し、第2本体部310の上面部311の後縁から後方に延びる。3つの第2接続端子部330は、互いに所定の間隔を有し、上面部311の中央からやや右側にずらされた状態で左右方向に並ぶ。
【0031】
図4(a)は、前方上方から見た絶縁板400の斜視図であり、
図4(b)は、後方下方から見た絶縁板400の斜視図である。
【0032】
絶縁板400は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂により形成され、絶縁性を有する。絶縁板400は、第1絶縁部410と、第2絶縁部420とを含む。
【0033】
第1絶縁部410は、左右方向に長い方形の板状を有する。第1絶縁部410の表面(上面)には、左端部と右端部にそれぞれ円柱状の突起411、412が形成される。また、第1絶縁部410の裏面(下面)には、左端部と右端部にそれぞれ円柱状の突起413、414が形成される。突起411の外径は、第1バスバー200の貫通穴213の内径とほぼ等しく、突起412の外径は、第1バスバー200の貫通穴214の短手側の内径とほぼ等しい。突起413の外径は、第2バスバー300の貫通穴313の短手側の内径とほぼ等しく、突起414の外径は、第2バスバー300の貫通穴314の内径とほぼ等しい。
【0034】
第2絶縁部420は、左右方向に長い方形の板状を有し、第1絶縁部410の前縁から下方に延びる。第2絶縁部420には、五角形の板状を有する2つの取付タブ430が、左右方向に並ぶように設けられる。
【0035】
2つの取付タブ430は、第1絶縁部410の上面と平行となるように設けられ、第2絶縁部420の上下方向における中央部に位置する。2つの取付タブ430の間隔は、ケース500側の2つの取付ボス(後述する)の間隔と等しくされる。取付タブ430には、円形の貫通穴431が形成される。取付タブ430の裏面(下面)は、取付ボスへの取付面432となる。
【0036】
第2絶縁部420は、各取付タブ430の下方が開口する。また、第2絶縁部420は、各取付タブ430の上方が後方に凹み、この凹み部分に、長方形状の開口部421が形成される。
【0037】
絶縁板400の表面には、第1絶縁部410の左縁、右縁および後縁と第2絶縁部420の左縁および右縁に、これらの縁に沿って延びるリブ440が形成される。リブ440は、第1バスバー200の第1接続端子部230に対応する部分が途切れている。また、絶縁板400の裏面には、第1絶縁部410の左縁および右縁に、これらの縁に沿って延びるリブ450が形成される。
【0038】
絶縁板400には、裏面の左縁および右縁のリブ450の前側の下端に、それぞれ、位置決めタブ460、470が、左方および右方に張り出すように設けられる。左右の位置決めタブ460、470は、第1絶縁部410の上面と平行となるように設けられる。位置決めタブ460には、左右方向に長い長円形の貫通穴461が形成され、位置決めタブ470には、円形の貫通穴471が形成される。
【0039】
コンデンサ素子ユニット10を組み立てる際には、第1バスバー200が上方から絶縁板400の表面に重ねられ、第2バスバー300が下方から絶縁板400の裏面に重ねられる。この際、第1バスバー200の貫通穴213、214に絶縁板400の突起411、412が嵌め込まれる。また、第2バスバー300の貫通穴313、314に絶縁板400の突起413、414が嵌め込まれる。これにより、第1バスバー200と第2バスバー300とが絶縁板400に対して前後左右方向に位置決め固定された状態となる。
【0040】
3つのコンデンサ素子100が、第1バスバー200の3つの第1電極端子部220と第2バスバー300の3つの第2電極端子部320との間に装着される。各第1電極端子部220が各コンデンサ素子100の第1端面電極110に接触し、各第2電極端子部320が各コンデンサ素子100の第2端面電極120に接触する。第1電極端子部220の各接続ピン221が第1端面電極110に半田付け等の接合方法で接合される。これにより、第1バスバー200が3つのコンデンサ素子100の第1端面電極110に電気的に接続される。同様に、第2電極端子部320の各接続ピン321が第2端面電極120に半田付け等の接合方法で接合される。これにより、第2バスバー300が3つのコンデンサ素子100の第2端面電極120に電気的に接続される。
【0041】
第1バスバー200と第2バスバー300は、3つのコンデンサ素子100に接続されることで上下方向に固定された状態となり、絶縁板400に対して上下方向に外れなくなる。こうして、3つのコンデンサ素子100と、第1バスバー200と、第2バスバー300と、絶縁板400とが一体化され、
図2(a)および(b)のように、コンデンサ素子ユニット10が完成する。
【0042】
第1バスバー200の第1本体部210と第2バスバー300の第2本体部310(前面部312の下部を除く)とが、絶縁板400を挟んで重なり合う、即ち、対向する。これにより、第1バスバー200と第2バスバー300とが有するESL(等価直列インダクタンス)を効果的に低減させることができる。
【0043】
図5(a)は、ケース500の斜視図であり、
図5(b)は、ケース500の平面図である。なお、
図5(b)には、ケース500の説明に用いるため、ケース500に配置された状態の3つのコンデンサ素子100が破線で示されている。
【0044】
ケース500は、金属製であり、たとえば、アルミダイカストにより形成される。ケース500は、直方体の箱状に形成され、底面部501と、底面部501から立ち上がる前側面部502、後側面部503、左側面部504および右側面部505とを有し、上面が開口する。ケース500は、収容される3つのコンデンサ素子100が並ぶ左右方向が長手方向となり、前後方向が短手方向となる。
【0045】
ケース500には、左側面部504と後側面部503との間の角部の上端と、右側面部505と後側面部503との間の角部の上端とに、それぞれ円柱状の突起511、512が形成される。突起511の外径は、絶縁板400の位置決めタブ460の貫通穴461の短手側の内径とほぼ等しく、突起512の外径は、絶縁板400の位置決めタブ470の貫通穴471の内径とほぼ等しい。
【0046】
ケース500には、底面部501の内面、即ち内底面の後部に、左右方向に並ぶように2つの円柱状の取付ボス520が設けられる。左側の取付ボス520は、左端のコンデンサ素子100の円弧面102bと中央のコンデンサ素子100の円弧面102bと後側面部503とで囲まれる三角柱状の空間に位置し、右側の取付ボス520は、右端のコンデンサ素子100の円弧面102bと中央のコンデンサ素子100の円弧面102bと後側面部503とで囲まれる三角柱状の空間に位置する。このように、ケース500内に3つのコンデンサ素子100を配置したときにできる開き空間を利用して2つの取付ボス520が設けられるので、ケース500のサイズが増加しにくい。また、本来、空き空間に充填される分の充填樹脂600を減らすことができ、充填樹脂600の節約に繋がる。
【0047】
取付ボス520の上端面には、雌ネジが形成されたネジ穴521が設けられる。取付ボス520の上端面は、絶縁板400の取付タブ430が取り付けられる取付面522となる。取付面522は、ケース500の内底面と平行となる
取付ボス520は、リブ531により前側面部502と連結され、リブ532により後側面部503と連結される。双方のリブ531、532は、取付ボス520とほぼ同じ高さを有する。前側のリブ531は、隣り合う2つのコンデンサ素子100の間に設けられた隙間を通される。2つのリブ531、532により、取付ボス520が補強される。
【0048】
図6(a)は、取付タブ430と取付ボス520との結合位置で切断された状態のフィルムコンデンサ1の正面断面図であり、
図6(b)は、中央位置で切断された状態のフィルムコンデンサ1の側面断面図である。なお、
図6(a)および(b)には、ケース500内に充填樹脂600が充填される前の状態にあるフィルムコンデンサ1が示されている。
【0049】
図1(b)、
図6(a)および(b)に示すように、コンデンサ素子ユニット10は、上方からケース500に収容される。この際、絶縁板400の位置決めタブ460、470の貫通穴461、471にケース500の突起511、512が嵌め込まれる。これにより、コンデンサ素子ユニット10が、ケース500に対して前後左右方向に位置決め固定され、ケース500に対して所定の位置に配置された状態となる。また、絶縁板400の2つの取付タブ430がケース500の2つの取付ボス520に載置された状態となる。取付タブ430の取付面432が取付ボス520の取付面522に接触するとともに、取付タブ430の貫通穴431と取付ボス520のネジ穴521とが整合する。なお、突起511、512は、ケース500の中で剛性が高い角部に形成されているので丈夫である。よって、突起511、512を用いてコンデンサ素子ユニット10をしっかりと位置決めできる。
【0050】
2本のボルト700が、2つの取付タブ430の貫通穴431を通されて2つの取付ボス520のネジ穴521に締結される。このようにして、2つの取付タブ430が2つの取付ボス520に取り付けられ、2本のボルト700で固定される。これにより、コンデンサ素子ユニット10が、絶縁板400の部分によって、ケース500に固定される。
【0051】
図6(a)に示すように、取付ボス520の取付面522とケース500の内底面(底面部501の内面)との距離L1(取付ボス520の高さ)が、取付タブ430の取付面432と第2バスバー300の第2電極端子部320の外面(ケース500の内底面に対向する面)320aとの距離L2よりも大きくされている。これにより、第2バスバー300の第2電極端子部320は、ケース500の内底面から離れ、内底面に接触しない状態となる。また、
図6(b)に示すように、第2電極端子部320よりも上方に位置するコンデンサ素子100の第2端面電極120も、ケース500の内底面に接触しない状態となる。
【0052】
さらに、
図6(b)に示すように、取付ボス520のネジ穴521の中心からケース500の後側面部503の内面までの距離L3が、取付タブ430の貫通穴431の中心から第2バスバー300の第2本体部310の前面部312の外面312aまでの距離L4よりも大きくなっている。これにより、第2バスバー300の第2本体部310の前面部312がケース500の後側面部503の内面から離れ、内面に接触しない状態となる。
【0053】
コンデンサ素子ユニット10がケース500内に収容されると、ケース500内に液相状態の充填樹脂600が注入される。このとき、ケース500の中央部側の充填樹脂600が絶縁板400の2つの開口部421を流通することにより第2バスバー300とケース500の後側面部503との間に行き渡りやすくなる。充填樹脂600は、絶縁板400の2つの取付タブ430よりも上方までケース500内に充填され、コンデンサ素子ユニット10とケース500との間が充填樹脂600で満たされる。充填樹脂600の注入が完了すると、ケース500が加熱され、ケース500内の充填樹脂600が硬化する。コンデンサ素子ユニット10は、硬化した充填樹脂600によってもケース500に対して固定される。
【0054】
こうして、
図1(a)に示すように、フィルムコンデンサ1が完成する。
【0055】
フィルムコンデンサ1は、たとえば、電気自動車に搭載され、電気モータ等を駆動する直流の電源装置が接続され得る。この場合、電源装置からの一方の極側の3つの外部端子が、半田付けあるは溶接により、第1バスバー200の3つの第1接続端子部230に接続され、他方の極側の3つの外部端子が、半田付けあるは溶接により、第2バスバー300の3つの第2接続端子部330に接続される。なお、第1バスバー200および第2バスバー300への外部端子の接続がネジにより行われる場合には、第1接続端子部230および第2接続端子部330にネジが通される貫通穴が形成される。
【0056】
フィルムコンデンサ1には、電源装置から大きな直流電流が入力され得る。この場合、大電流が流れることによって、コンデンサ素子100や第1バスバー200、第2バスバー300が発熱しやすくなる。本実施の形態では、ケース500が金属製であるため、発生した熱がケース500から放熱されやすい。
【0057】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
【0058】
コンデンサ素子100、第1バスバー200、第2バスバー300および絶縁板400が一体に組み付けられてコンデンサ素子ユニット10が構成され、このコンデンサ素子ユニット10が金属製のケース500に収容される。そして、絶縁板400には、取付タブ430が設けられ、ケース500には、コンデンサ素子ユニット10がケース500に対して所定の位置に配置され、且つ、第1バスバー200および第2バスバー300がケース500と接触しないように取付タブ430が取り付けられる取付ボス520が設けられる。
【0059】
この構成によれば、ケース500が金属製であるため、ケース500からの放熱性が良くなり、フィルムコンデンサ1が高温になりにくくなる。しかも、コンデンサ素子ユニット10がケース500に対して所定の位置に配置されたときにケース500と接触するのは絶縁性を有する絶縁板400であり、第1バスバー200および第2バスバー300はケース500と接触しないため、第1バスバー200および第2バスバー300と金属製のケース500との間の絶縁性を確保できる。
【0060】
また、コンデンサ素子100は、第2端面電極120がケース500の内底面と対向する向きでケース500内に配置され、第2バスバー300は、第2端面電極120とケース500の内底面との間に位置して第2端面電極120に接続される第2電極端子部320を含む。そして、このような場合に、取付タブ430は、第2電極端子部320がケース500の内底面に接触しないように取付ボス520に取り付けられる。
【0061】
具体的には、取付ボス520は、ケース500の内底面に平行な取付面522を含み、取付タブ430は、取付ボス520の取付面522に接触する取付面432を含む。そして、取付ボス520の取付面522とケース500の内底面との距離L1が、取付タブ430の取付面432と第2電極端子部320の外面320aとの距離L2よりも大きくされる。
【0062】
この構成によれば、ケース500の内底面からコンデンサ素子ユニット10を支持する支持部などを突出させなくても、ケース500の内底面と第2バスバー300の第2電極端子部320との間に隙間を設けることができる。これにより、第2バスバー300に流れる電流が支持部などを通じてケース500に漏れることが防止され、第2バスバー300と金属製のケース500との間の絶縁性を確保できる。
【0063】
さらに、取付タブ430がボルト700により取付ボス520に取り付けられるので、絶縁板400、即ちコンデンサ素子ユニット10をケース500に対してしっかりと固定できる。
【0064】
なお、本実施の形態では、コンデンサ素子100の第2端面電極120とケース500の内底面との間の接触も回避できるため、コンデンサ素子100と金属製のケース500との間の絶縁性も確保できる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
【0066】
<変更例1>
図7(a)は、変更例1に係る、1つの絶縁カバー800が外された状態のコンデンサ素子ユニット10の斜視図であり、
図7(b)は、変更例1に係る、中央位置で切断された状態のフィルムコンデンサ1の側面断面図である。なお、
図7(b)には、ケース500内に充填樹脂600が充填される前の状態にあるフィルムコンデンサ1が示されている。
【0067】
変更例1では、コンデンサ素子ユニット10に、3つの絶縁カバー800が備えられる。絶縁カバー800は、特許請求の範囲に記載の「第2絶縁部材」に対応する。
【0068】
絶縁カバー800は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂により形成され、絶縁性を有する。絶縁カバー800は、底面部810と、周面部820とを含む。
【0069】
底面部810は、コンデンサ素子100の端面101とほぼ同じ形状およびほぼ同じ大きさを有する。底面部810の厚みは、コンデンサ素子ユニット10がケース500内に収容された状態で形成される第2バスバー300の第2電極端子部320とケース500の内底面との間の隙間とほぼ等しくされる。
【0070】
周面部820は、2つの平坦部821と、これら平坦部821の前端同士を繋ぐ円弧部822と含む。円弧部822は、その中央部が平坦面となっている。2つの平坦部821と円弧部822は、中央部がその他の部分よりも上方に延出している。周面部820の高さは、平坦部821および円弧部822の中央部を除き、コンデンサ素子100の端面方向の寸法(高さ)の半分程度とされることで、コンデンサ素子100からの放熱を妨げにくいようになされている。
【0071】
絶縁カバー800は、コンデンサ素子100の下側部分に下方から嵌め込まれる。これにより、コンデンサ素子100の第2端面電極120と第2バスバー300の第2電極端子部320とが絶縁カバー800の底面部810により覆われる。
図7(b)に示すように、コンデンサ素子ユニット10がケース500に収容された状態において、第2端面電極120および第2電極端子部320とケース500の内底面(底面部501の内面)との間には、絶縁カバー800が介在した状態となる。
【0072】
変更例1の構成によれば、第2バスバー300と金属製のケース500とが一層接触しにくくなり、これらの間の絶縁性が一層確保される。
【0073】
なお、絶縁カバー800は、コンデンサ素子ユニット10の剛性やケース500への取付精度の関係から第2バスバー300の第2電極端子部320とケース500の内底面との接触が懸念される場合に用いられることが望ましく、そうでない場合は、コンデンサ素子100の放熱性、製品コスト等を考慮すると、用いられないことが望ましい。
【0074】
<その他の変更例>
上記実施の形態では、絶縁板400の取付タブ430が、ボルト700によりケース500の取付ボス520に取り付けられた。しかしながら、取付タブ430の取付ボス520への取付方法は、これに限られるものではない。たとえば、
図8(a)に示す構成例では、取付タブ430に下方に突出する突起433が設けられ、取付ボス520に突起433に対応する穴523が設けられる。そして、突起433が穴523に上方から嵌合されることにより、取付タブ430が取付ボス520に取り付けられ、絶縁板400がケース500に固定される。また、
図8(b)に示す構成例では、取付ボス520に上方に突出する突起524が設けられ、取付タブ430に突起524に対応する穴434が設けられる。そして、突起524が穴434に下方から嵌合されることにより、取付タブ430が取付ボス520に取り付けられ、絶縁板400がケース500に固定される。
【0075】
図8(a)および(b)の構成とすれば、ネジ止め作業を要せず、取付タブ430を取付ボス520に容易に取り付けることができる。
【0076】
また、上記実施の形態では、第1取付部として取付タブ430が例示され、第2取付部として取付ボス520が例示された。しかしながら、コンデンサ素子ユニット10がケース500に対して所定の位置に配置され、且つ、第1バスバー200および第2バスバー300がケース500と接触しなければ、第1取付部および第2取付部の形態は、如何なるものでもよいし、第1取付部および第2取付部が設けられる位置も如何なる位置でもよい。
【0077】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、ケース500内において、1つの端面電極(第2端面電極120)がケース500の内底面と対向する向きに配置された。しかしながら、フィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子が、ケース内において、2つの端面電極が、ケースの内側面、たとえば、前側面部および後側面部の内面と対向する向きに配置されてもよい。この場合の実施形態として、ケースには、第1端面電極に接続される第1バスバーの第1電極端子部および第2端面電極に接続される第2バスバーの第2電極端子部がそれぞれが対向するケースの内側面に接触しないように絶縁板の取付タブが取り付ける取付ボスが設けられる。
【0078】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子ユニット10に3個のコンデンサ素子100が含まれる。しかしながら、コンデンサ素子100の個数は、1個である場合も含めて、適宜、変更することができる。
【0079】
さらに、上記実施の形態では、コンデンサ素子100は、誘電体フィルム上にアルミニウムを蒸着させた2枚の金属化フィルムを重ね、重ねた金属化フィルムを巻回または積層することで形成されたものであるが、これ以外にも、誘電体フィルムの両面にアルミニウムを蒸着させた金属化フィルムと絶縁フィルムとを重ね、これを巻回または積層することにより、これらコンデンサ素子100が形成されてもよい。
【0080】
さらに、上記実施の形態では、本発明のコンデンサの一例として、フィルムコンデンサ1が挙げられた。しかしながら、本発明は、フィルムコンデンサ1以外のコンデンサに適用することもできる。
【0081】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【0082】
なお、上記実施の形態の説明において「上方」「下方」等の方向を示す用語は、構成部材の相対的な位置関係にのみ依存する相対的な方向を示すものであり、鉛直方向、水平方向等の絶対的な方向を示すものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、各種電子機器、電気機器、産業機器、車両の電装等に使用されるコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 フィルムコンデンサ(コンデンサ)
10 コンデンサ素子ユニット
100 コンデンサ素子
110 第1端面電極(第1電極)
120 第2端面電極(第2電極)
200 第1バスバー
210 第1本体部(第1領域)
300 第2バスバー
310 第2本体部(第2領域)
320 第2電極端子部(電極接続部)
400 絶縁板(第1絶縁部材)
430 取付タブ(第1取付部)
432 取付面
433 突起
434 穴
500 ケース
520 取付ボス(第2取付部)
522 取付面
523 穴
524 突起
700 ボルト(ネジ)
800 絶縁カバー(第2絶縁部材)