(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】画像表示システム、移動体、画像表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 3/02 20060101AFI20230825BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20230825BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230825BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G09G3/02 A
G09G3/34 J
G09G3/20 612U
G09G3/20 641P
G02B26/10 101
(21)【出願番号】P 2019057235
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-10-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 文人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 孝介
(72)【発明者】
【氏名】長久 幸広
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-074818(JP,A)
【文献】特開2013-161069(JP,A)
【文献】特開2012-155020(JP,A)
【文献】特開2019-021652(JP,A)
【文献】特開2008-103511(JP,A)
【文献】特開2009-212423(JP,A)
【文献】特開2007-272144(JP,A)
【文献】特開2006-106696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/02
G09G 3/34
G09G 3/20
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流を前記第1電流の設定値に基づいて生成し、第2電流を前記第2電流の設定値に基づいて生成し、前記第1電流及び前記第2電流から構成された駆動電流を光源に供給する光源駆動部と、
前記画像信号に応じて前記第1電流の設定値を生成し、生成した前記第1電流の設定値を前記光源駆動部に出力する処理部と、
前記駆動電流の補正処理を行う補正部と、を備え、
前記第2電流は、前記光源の周囲温度の変化が所定温度未満である場合に、前記第2電流の設定値が前記階調値に応じて変化しない電流であり、
前記処理部は、前記画像信号の前記階調値が第1階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値に比例した電流値に設定し、前記階調値が前記第1階調範囲よりも数値が小さい第2階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値と前記第1電流の電流値との対応関係に基づいて設定し、
前記補正処理は、受光部により検出された前記光源の光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように前記対応関係を補正する処理を含
み、
前記補正部は、
前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度未満である場合、前記対応関係を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流のうち前記第1電流のみを補正し、
前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度以上である場合、前記対応関係及び前記第2電流の設定値を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流の両方を補正する、
画像表示システム。
【請求項2】
前記第2電流は、前記光源が発光し始める閾値電流値以下の電流値に設定される、
請求項1に記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記補正部は、前記対応関係の各階調値に対応する前記電流値を前記第1電流の設定値とした場合において、前記駆動電流に対する前記光源の光の測定強度の変化率を、前記駆動電流に対する前記目標強度の変化率に一致させるための補正係数を求め、前記補正係数に基づいて前記対応関係を補正する、
請求項1又は2に記載の画像表示システム。
【請求項4】
前記光源駆動部は、前記第2電流の設定値に基づいて前記第2電流を生成し、
前記補正処理は、前記第2電流の設定値を補正する処理を含む、
請求項1~3の何れか1項に記載の画像表示システム。
【請求項5】
前記対応関係は、前記階調値を複数有し、
前記複数の階調値の間隔は、前記第2階調範囲のうち、低階調側の一定範囲と高階調側の残りの範囲とでは、前記低階調側の一定範囲の方が狭い、
請求項1~
4の何れか1項に記載の画像表示システム。
【請求項6】
前記光源駆動部は、
前記第1電流を生成する第1電流源と、
前記第2電流を生成する第2電流源と、
前記第1電流と前記第2電流とを足し合わせて前記駆動電流を生成する加算器と、を備える、
請求項1~
5の何れか1項に記載の画像表示システム。
【請求項7】
互いに異なる光色の光を出射する複数の前記光源を備え、
前記光源駆動部は、前記複数の光源に複数の前記駆動電流をそれぞれ供給し、
前記処理部は、前記複数の駆動電流にそれぞれ対応する複数の前記対応関係を有し、
前記補正部は、前記複数の駆動電流の各々に対して前記補正処理を行う
請求項1~
6の何れか1項に記載の画像表示システム。
【請求項8】
前記補正部は、前記複数の駆動電流それぞれに対して前記補正処理を実行することで、前記複数の光源が出射する光で構成される光のホワイトバランスを調整する、
請求項
7に記載の画像表示システム。
【請求項9】
請求項1~
8の何れか1項に記載に画像表示システムと、
前記画像表示システムが搭載された移動体本体と、を備える
移動体。
【請求項10】
画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流を前記第1電流の設定値に基づいて生成し、第2電流を前記第2電流の設定値に基づいて生成し、前記第1電流及び前記第2電流から構成された駆動電流を光源に供給する光源駆動処理と、
前記画像信号に応じて前記第1電流の設定値を生成し、生成した前記第1電流の設定値を前記光源駆動処理に出力する処理と、
前記駆動電流の補正処理を行う
駆動電流補正処理と、を備え、
前記第2電流は、前記光源の周囲温度の変化が所定温度未満である場合に、前記第2電流の設定値が前記階調値に応じて変化しない電流であり、
前記処理は、前記画像信号の前記階調値が第1階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値に比例した電流値に設定し、前記階調値が前記第1階調範囲よりも数値が小さい第2階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値と前記第1電流の電流値との対応関係に基づいて設定し、
前記
駆動電流補正処理は、受光部により検出された前記光源の光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように前記対応関係を補正する処理を含
み、
前記駆動電流補正処理は、
前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度未満である場合、前記対応関係を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流のうち前記第1電流のみを補正し、
前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度以上である場合、前記対応関係及び前記第2電流の設定値を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流の両方を補正する、
画像表示方法。
【請求項11】
コンピュータシステムに、
請求項
10に記載の画像表示方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像表示システム、移動体、画像表示方法及びプログラムに関し、より詳細には、画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流及び前記階調値に応じて変化しない第2電流から構成された駆動電流に応じてレーザ光を出射する画像表示システム、この画像表示システムを搭載した移動体、画像表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、レーザ光によって画像を表示する画像表示装置を開示する。この画像表示装置は、画像を描画するためのRGB各光色のレーザ光を出射するRGB各光色用の光源と、各光源を制御するコントロールユニットとを備えている。コントロールユニットは、駆動電流を各光源に出力することで、各光源から出射されるレーザ光の強度を制御する。駆動電流は、画像信号の階調値に応じて変化するスケール電流と、画像信号の階調値に応じて変化しないオフセット電流とを足し合わせて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像表示装置では、使用者が画像表示装置を視聴している最中にバックグランド処理でホワイトバランスを調整する。このとき、オフセット電流を増加及び減少させながらホワイトバランスの最適値を探索する。しかし、オフセット電流を増減変化させると、表示画像全体の階調が上下変動するため、表示画像の階調が乱れる。
【0005】
本開示は、表示画像の階調の乱れを抑制しつつ、表示画像の階調を補正できる画像表示システム、移動体、画像表示方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る画像表示システムは、画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流を前記第1電流の設定値に基づいて生成し、第2電流を前記第2電流の設定値に基づいて生成し、前記第1電流及び前記第2電流から構成された駆動電流を光源に供給する光源駆動部と、前記画像信号に応じて前記第1電流の設定値を生成し、生成した前記第1電流の設定値を前記光源駆動部に出力する処理部と、前記駆動電流の補正処理を行う補正部と、を備える。前記第2電流は、前記光源の周囲温度の変化が所定温度未満である場合に、前記第2電流の設定値が前記階調値に応じて変化しない電流である。前記処理部は、前記画像信号の前記階調値が第1階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値に比例した電流値に設定し、前記階調値が前記第1階調範囲より数値が小さい第2階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値と前記第1電流の電流値との対応関係に基づいて設定する。前記補正処理は、受光部により検出された前記光源の光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように前記対応関係を補正する処理を含む。前記補正部は、前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度未満である場合、前記対応関係を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流のうち前記第1電流のみを補正し、前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度以上である場合、前記対応関係及び前記第2電流の設定値を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流の両方を補正する。
【0007】
本開示の一態様に係る移動体は、上記の一態様の画像表示システムと、前記画像表示システムが搭載された移動体本体と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る画像表示方法は、画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流を前記第1電流の設定値に基づいて生成し、第2電流を前記第2電流の設定値に基づいて生成し、前記第1電流及び前記第2電流から構成された駆動電流を光源に供給する光源駆動処理と、前記画像信号に応じて前記第1電流の設定値を生成し、生成した前記第1電流の設定値を前記光源駆動処理に出力する処理と、前記駆動電流の補正処理を行う駆動電流補正処理と、を備える。前記第2電流は、前記光源の周囲温度の変化が所定温度未満である場合に、前記第2電流の設定値が前記階調値に応じて変化しない電流である。前記処理は、前記画像信号の前記階調値が第1階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値に比例した電流値に設定し、前記階調値が前記第1階調範囲より数値が小さい第2階調範囲にある場合は、前記第1電流の設定値を前記階調値と前記第1電流の電流値との対応関係に基づいて設定する。前記駆動電流補正処理は、受光部により検出された前記光源の光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように前記対応関係を補正する処理を含む。前記駆動電流補正処理は、前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度未満である場合、前記対応関係を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流のうち前記第1電流のみを補正し、前記光源の周囲温度の変化が前記所定温度以上である場合、前記対応関係及び前記第2電流の設定値を補正することで、前記第1電流及び前記第2電流の両方を補正する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上記の一態様の画像表示方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、表示画像の階調の乱れを抑制しつつ、表示画像の階調を補正できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る画像表示システムの模式的な構成を示す構成図である。
【
図2】同上の画像表示システムの光源から出射されるレーザ光の強度と駆動電流との関係の一例を示す強度特性図である。
【
図3】同上の画像表示システムにおける画像信号の階調値とスケール電流の電流値との対応関係の一例を示す対応図である。
【
図4】同上の画像表示システムにおける画像信号の階調値とレーザ光の目標強度との対応関係の一例を示す強度特性図である。
【
図5】同上の画像表示システムにおける対応関係(階調値と電流値との対応関係)の電流値を補正する補正係数の算出方法を説明する説明図である。
【
図6】同上の画像表示システムにおける補正後の対応関係(階調値と電流値との対応関係)の一例を示す対応図である。
【
図7】同上の画像表示システムにおけるオフセット電流の設定値を補正する補正定数の算出方法を説明する説明図である。
【
図8】同上の画像表示システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
図1~
図8を参照して、本実施形態に係る画像表示システム1について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(全体説明)
図1に示すように、本実施形態に係る画像表示システム1は、レーザ光を表示対象物に照射することで、表示対象物に画像を表示するシステムである。本実施形態では、画像表示システム1は、例えば、移動体の移動体本体に搭載される。移動体は、一例として、人を乗せた状態で路面上を走行する自動車である。つまり、移動体は、画像表示システム1と、画像表示システム1が搭載された移動体本体とを備えている。
【0014】
画像表示システム1は、例えば、移動体の車室内におけるウインドシールド(フロントガラスとも言う)の下方(例えば、ダッシュボード内)に設置され、ウインドシールドにレーザ光を出射することで、ウインドシールドに画像を表示する。運転者は、移動体の前方に広がる実空間に重ねて、ウインドシールドに表示された画像を視認する。この場合、画像表示システム1は、画像として、種々の運転支援情報(例えば、ナビゲーション情報、撮像画像、車速情報、歩行者情報、周辺車両情報、車線逸脱情報、及び車両コンディション情報等)を表示してもよい。
【0015】
画像表示システム1は、複数(例えば3つ)の光源2(赤色光源2R、緑色光源2G及び青色光源2B)と、ダイクロイックミラー3,4,5と、走査用ミラー6と、透過ミラー7と、受光部8と、光源駆動部9と、映像処理部10と、温度センサ11とを備えている。なお、本実施形態では、画像表示システム1は、カラー画像を表示する場合を想定するため、各色の光源2R,2B,2Gを備えるが、単色画像を表示する場合は、光源は1つであってもよい。
【0016】
各色の光源2は、光源駆動部9からの駆動電流Idrに応じた強度のレーザ光を出力する。各色の光源2は、半導体レーザ(例えばレーザダイオード)によって構成されている。赤色光源2Rは、赤色レーザ光C1を生成して出射する。緑色光源2Gは、緑色レーザ光C2を生成して出射する。青色光源2Bは、青色レーザ光C3を生成して出射する。
【0017】
ダイクロイックミラー3,4,5は、赤色光、緑色光及び青色光のうち互いに異なる光色のレーザ光を反射し、その他の光色のレーザ光を透過する。ダイクロイックミラー3は、赤色光源2Rの前側に配置され、赤色光源2Rからの赤色レーザ光をダイクロイックミラー4,5を透過させて走査用ミラー6に向けて反射する。ダイクロイックミラー4は、緑色光源2Gの前方に配置され、緑色光源2Gからの緑色レーザ光をダイクロイックミラー5を透過させて走査用ミラー6に向けて反射し、ダイクロイックミラー3で反射された赤色レーザ光を透過する。ダイクロイックミラー5は、青色光源2Bの前方に配置され、青色光源2Bからの青色レーザ光を走査用ミラー6に向けて反射し、各ダイクロイックミラー3,4で反射された各光色(緑色及び青色)のレーザ光を透過する。各ダイクロイックミラー3,4,5で反射された各色のレーザ光は、1つのレーザ光に合成されて走査用ミラー6に入射する。
【0018】
走査用ミラー6は、走査用ミラー6に入射したレーザ光を表示対象物に向けて反射する。また、走査用ミラー6は、映像処理部10の制御に従って、入射したレーザ光の反射方向を2次元的に走査することで、レーザ光によって表示対象物に画像を描画する。この描画により、表示対象物に画像が表示される。
【0019】
走査用ミラー6は、ミラー部と、ミラー部に設けられた2つの回転軸部と、2つの回転軸部を回転させる駆動部とを有する。ミラー部は、ミラー部に入射するレーザ光を反射する光学部品である。2つの回転軸部は、互いに直交している。2つの回転軸部のうち、一方の回転軸部は、ミラー部を画像の横方向に走査するための回転軸部である。2つの回転軸部のうち、他方の回転軸部は、ミラー部を画像の縦方向に走査するための回転軸部である。ミラー部が2つの回転軸部の周りに回転されることで、ミラー部に入射されたレーザ光を2次元的に走査しつつ反射させることができる。走査用ミラー6は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーで構成されている。
【0020】
透過ミラー7は、光源2から出射されたレーザ光の強度を映像処理部10にフィードバックさせるために、レーザ光の一部を受光部8に向けて反射させる。透過ミラー7は、例えば、ダイクロイックミラー5と走査用ミラー6との間に配置されており、ダイクロイックミラー5から走査用ミラー6に伝搬するレーザ光の一部を受光部8に向けて反射し、残りを透過して走査用ミラー6に入射させる。
【0021】
受光部8は、透過ミラー7で反射されたレーザ光を受光し、レーザ光の強度に応じた電気信号を映像処理部10に出力する。
【0022】
光源駆動部9は、映像処理部10からの駆動信号に応じて、光源2毎の駆動電流Idrを生成し、生成した駆動電流Idrを各光源2に供給する。これにより、各光源2は、光源駆動部9からの駆動電流Idrに応じた強度のレーザ光を出射する。
【0023】
赤色光源2Rに供給される駆動電流Idrは、スケール電流Isc(第1電流)及びオフセット電流Ios(第2電流)が足し合わされて構成されている。赤色光源2Rに供給される駆動電流Idrのスケール電流Iscは、表示対象物に表示される画像の赤色成分の階調値に応じて変化する電流である。赤色光源2Rに供給される駆動電流Idrのオフセット電流Iosは、表示対象物に表示される画像の赤色成分の階調値に応じて変化しない電流である。すなわち、赤色光源2Rに供給される駆動電流Idrは、画像の赤色成分の階調値に応じて変化する電流部分(スケール電流Isc)と、画像の赤色成分の階調値に応じて変化しない電流部分(オフセット電流Ios)とで構成されている。緑色光源2Gに供給される駆動電流Idr、及び、青色光源2Bに供給される駆動電流Idrも、赤色光源2Rに供給される駆動電流Idrと同様に、スケール電流Isc及びオフセット電流Iosが足し合わせて構成されている。
【0024】
なお、階調値とは、画像の各画素の濃淡(明るさ)を例えば256段階で表したときのどの段階の濃淡であるかを示す値であり、階調値「0」~「255」の値を取り得る。例えば、階調値「0」は256階調の一番暗い濃淡を表し、階調値「255」は256階調の一番明るい濃淡を表す。
【0025】
ここで、
図2を参照して、半導体レーザである光源2の強度特性について説明する。
【0026】
図2に示す強度特性G10は、光源2に供給される駆動電流Idrと、光源2から出射されるレーザ光の強度との関係を示す。
図2に示すように、光源2に供給される駆動電流Idrの電流値は、光源2の固有の閾値電流値Ithに達するまでは、電流値の増加に伴ってレーザ光の強度は殆ど変化しない。そして、光源2に供給される駆動電流Idrの電流値が閾値電流値Ithを超えること、レーザ光の強度は、急に立ち上がる。閾値電流値Ithは、光源2が発光し始める電流値である。
【0027】
このような光源2の強度特性を踏まえ、光源2の発光の応答性を高める観点から、光源2にオフセット電流Iosが供給される。具体的には、光源2は、容量成分を含むことから、供給される駆動電流Idrが0から閾値電流値Ithまで上昇する過程で、駆動電流Idrの一部が容量の充電に用いられる分、実際の発光に寄与する駆動電流Idrの立ち上がりが遅れる。このため、各色の光源2は、駆動電流Idrの供給を受け始めてから発光するまでの遅延時間を要する。
【0028】
そこで、各色の光源2にオフセット電流Ios(設定値Ic)が供給されることで、光源2が待機状態となり、発光の遅延が抑制される。そして、そのオフセット電流Iosに、画像の階調値に応じて変化するスケール電流Iscが加算されることで、光源2の発光の応答性が高められる。このように、駆動電流Idrは、階調値に応じて変化しない(すなわち電流値が固定された)オフセット電流Iosと、階調値に応じて変化するスケール電流Iscとを足し合わせて構成されている。オフセット電流Iosは、光源2の閾値電流値Ith以下の電流値(設定値Ic)に設定されることが望ましい。スケール電流Iscは、オフセット電流Iosの設定値Icから最大電流値Ibまでの範囲の電流値を取り得る。
【0029】
駆動電流Idrの電流値がオフセット電流Iosの電流値Icから最大電流値Ibまでの範囲で、光源2から画像の描画に用いられるレーザ光が出射される。つまり、光源2に供給される駆動電流Idrの電流値について、オフセット電流Iosの設定値Icの状態が画像が最も暗い状態(階調値0)に対応し、最大電流値Ibの状態が画像が最も明るい状態(階調値255)に対応し、階調値「0」~「255」の範囲が、画像を描画するためのレーザ光が出射される強度の範囲に対応する。電流値Icから最大電流値Ibまでの範囲が駆動電流Idrの使用範囲となる。
【0030】
光源駆動部9は、インターフェース部91と、3つの駆動電流生成部92R,92G,92Bと、制御部93とを備えている。
【0031】
3つの駆動電流生成部92R,92G,92Bは、3つの光源2R,3G,2Bに一対一に対応し、対応する光源2R,3G,2Bに供給する駆動電流Idrを生成する。すなわち、駆動電流生成部92Rは、赤色光源2Rに供給する駆動電流Idrを生成する。駆動電流生成部92Gは、緑色光源2Gに供給する駆動電流Idrを生成する。駆動電流生成部92Bは、青色光源2Bに供給する駆動電流Idrを生成する。
【0032】
駆動電流生成部92R,92G,92Bは、オフセット電流源921(第2電流源)と、DA変換器922(第1電流源)と、加算器923とを備えている。
【0033】
オフセット電流源921は、制御部93から入力されるオフセット電流Iosの設定値に応じた電流値のオフセット電流Iosを生成する。DA変換器922は、インターフェース部91から入力されるスケール電流Iscの設定値に応じた電流値のスケール電流Iscを生成する。加算器923は、オフセット電流源921によって生成されたオフセット電流Iosと、DA変換器922によって生成されたスケール電流Iscとを足し合わせて駆動電流Idrを生成する。生成された駆動電流Idrは、対応する光源2に出力される。
【0034】
インターフェース部91は、映像処理部10から入力される光源2毎のスケール電流Iscの設定値を各駆動電流生成部92R,92G,92BのDA変換器922に出力する。制御部93は、映像処理部10から入力される光源2毎のオフセット電流Iosの設定値を各駆動電流生成部92R,92G,92Bのオフセット電流源921に出力する。
【0035】
温度センサ11は、画像表示システム1内に配置され、光源2の周囲温度を検出する。温度センサ11の検出温度は、映像処理部10に出力される。
【0036】
映像処理部10は、外部から供給される画像信号に基づいて、光源2毎に、光源2から出射されるレーザ光の強度を制御するための電流設定値(スケール電流Iscの設定値(第1設定値)及びオフセット電流Iosの設定値(第2設定値))を生成し、生成した電流設定値を光源駆動部9に出力する。上記の画像信号は、表示対象物に表示される画像を構成する画像信号である。
【0037】
映像処理部10は、処理部本体14(処理部)と、補正部15と、記憶部16とを備えている。記憶部16は、不揮発性の記憶部である。
【0038】
処理部本体14は、外部から供給される画像信号に応じて光源2毎の電流設定値(すなわちスケール電流Iscの設定値及びオフセット電流Iosの設定値)を生成する。より詳細には、処理部本体14は、画像信号が示す各色成分(赤色成分、緑色成分及び青色成分)の階調値に基づき、その階調値に応じたスケール電流Iscの設定値を画像の画素毎に生成する。更に詳細には、記憶部16は、階調値とスケール電流Iscの電流値との対応関係(以下、単に「対応関係」と記載する。)を記憶している。この対応関係は、各光源2毎に記憶されている。すなわち、処理部本体14は、3つの光源2の駆動電流Idrにそれぞれ対応する複数の対応関係を有する。本実施形態では、この対応関係は、変換テーブルであるが、変換式であってもよい。処理部本体14は、各光源2用の駆動電流Idrのスケール電流Iscの設定値を生成するときは、各光源2用の対応関係に基づいて、画像信号が示す各色成分の階調値に対応する電流値をスケール電流Iscの設定値として決定する。このように、画像信号に応じてスケール電流Iscの設定値が生成される。
【0039】
本実施形態では、処理部本体14は、画像信号の階調値が第1階調範囲にある場合は、スケール電流Iscの設定値を階調値に比例した電流値に設定する。また、処理部本体14は、画像信号の階調値が第1階調範囲より数値が小さい第2階調範囲にある場合は、上記の対応関係に基づいて、スケール電流Iscの設定値を上記の対応関係に対応する電流値に設定する。第1階調範囲は、所定の階調値(例えば階調値「150」)よりも大きい階調範囲であり、第2階調範囲は、前記所定の階調範囲以下の範囲である。すなわち、第2階調範囲は、階調値の全範囲(例えば階調値「0」~「255」)のうち、低階調側の一定範囲(例えば階調値「0」~「100」)を含む所定範囲(例えば階調値「0」~「150」)である。第1階調範囲は、第2階調範囲以外の残りの階調範囲(例えば階調値「151」~「255」)である。
【0040】
また、記憶部16は、各光源2毎に、オフセット電流Iosの設定値を記憶している。処理部本体14は、記憶部16に記憶されたオフセット電流Iosの設定値を読み出してオフセット電流Iosの設置値として決定する。このように、オフセット電流Iosの設定値が生成される。
【0041】
このように映像処理部10で生成されたスケール電流Iscの設定値及びオフセット電流Iosの設定値は、光源駆動部9に出力される。そして、光源駆動部9において、インターフェース部91が、映像処理部10からの各光源2用のスケール電流Iscの設定値を各駆動電流生成部92R,92G,92BのDA変換器922に入力する。これにより、DA変換器922が、入力されたスケール電流Iscの設定値に応じたスケール電流Iscを出力する。また、制御部93が、映像処理部10からの各光源2用のオフセット電流Iosの設定値を各駆動電流生成部92R,92G,92Bのオフセット電流源921に入力する。これにより、DA変換器922が、入力されたオフセット電流Iosの設定値に応じたオフセット電流Iosを出力する。そして、各駆動電流生成部92R,92G,92Bにおいて、加算器923が、オフセット電流源921によって生成されたオフセット電流Iosと、DA変換器922によって生成されたスケール電流Iscとを足し合わして駆動電流Idrを生成する。生成された駆動電流Idrは、各光源2に入力される。各光源2は、入力された駆動電流Idrに応じた強度のレーザ光C1~C3を出射する。
【0042】
このように各光源2から出射されたレーザ光C1~C3は、各ダイクロイックミラー3,4,5及び透過ミラー7を介して走査用ミラー6に入射される。そして、走査用ミラー6が、走査用ミラー6に入射したレーザ光を表示対象物(例えば車両のフロントシールド)に向けて反射させつつ、そのレーザ光を画像信号の水平同期信号及び垂直同期信号に同期して2次元的に走査する。これにより、レーザ光によって表示対象物に画像が表示される。その際、レーザ光の一部が透過ミラー7によって受光部8にフィードバックされ、受光部8の検出値(すなわちレーザ光の測定強度)が映像処理部10に入力される。
【0043】
補正部15は、画像が表示対象物に表示されている最中に、例えば定期的(例えば10秒間隔)に、受光部8の検出値(すなわちレーザ光の測定強度)に基づいて、3つの光源2の駆動電流Idrそれぞれについて、レーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように駆動電流Idrの補正処理を行う。以下、この補正処理を階調補正処理とも記載する。この階調補正により、補正部15は、例えば、表示対象物に表示される画像のホワイトバランスを調整する。
【0044】
より詳細には、温度センサ11は、画像表示システム1内の温度(すなわち各光源2の周囲温度)を検出している。そして、補正部15は、温度センサ11の検出温度が、前回の階調補正処理時の検出温度と比べて所定温度以上変化していない場合は、光源2毎に、駆動電流Idrのスケール電流Isc及びオフセット電流Iosのうち、スケール電流Iscのみを補正することで、駆動電流Idrの補正処理(すなわち階調補正処理)を行う。
【0045】
更に詳細には、補正部15は、各光源2用の対応関係の各電流値を、各光源2のレーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように補正することで、スケール電流Iscを補正する。例えば、対応関係における或る階調値に対応する電流値をスケール電流Iscの設定値としてレーザ光を発光させたとき、レーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲よりも大きい場合は、補正部15は、上記の階調補正処理において、対応関係の各階調値に対応する電流値を、レーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように、より小さい電流値に補正する。すなわち、上記の階調補正処理には、光源2のレーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように対応関係を補正する処理を含む。
【0046】
スケール電流Iscは、画像の各画素の階調値を指定する電流である。このため、補正部15は、画像の非表示範囲の画素を走査するレーザ光の測定強度を利用して、スケール電流Iscを補正可能である。これにより、その補正(階調補正処理)の影響が画像の表示範囲に及ぼすことを抑制できる。より詳細には、補正部15は、画像の非表示範囲で、各光源2を1つずつ順番に、各光源2用の対応関係の各階調値に対応する駆動電流Idrで発光させる。なお、「各階調値に対応する駆動電流Idr」とは、各階調値に対応する電流値をスケール電流Iscの設定値に設定したときの駆動電流Idrである。そして、補正部15は、光源2毎に、対応関係の各階調値に対応する駆動電流Idrで各光源2からレーザ光を出射させたときのレーザ光の測定強度を受光部8の検出値から求める。そして、補正部15は、求めた測定強度と、階調値毎に決められたレーザ光の目標強度との差が規定範囲内に収まるように、対応関係における各階調値に対応する電流値(スケール電流Iscの電流値)を補正する。
【0047】
また、温度センサ11の検出温度が、前回の階調補正処理時の検出温度と比べて所定温度以上変化している場合は、補正部15は、光源2毎に、駆動電流Idrのスケール電流Isc及びオフセット電流Iosの両方を補正することで、駆動電流Idrを補正する。より詳細には、補正部15は、各光源2用の対応関係の各電流値及びオフセット電流Iosの設定値を、各光源2のレーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように補正する。これにより、駆動電流Idrのオフセット電流Ios及びスケール電流Iscの両方が補正される。
【0048】
光源2の周囲温度が大きく変化すると、光源2の強度特性の変化も大きくなる。例えば強度特性の低階調側の歪みが大きくなる。このため、光源2の周囲温度が大きく変化する場合は、対応関係の各電流値のみの補正では、対応関係の各電流値の補正に負担が掛かり過ぎる。このため、この場合は、対応関係の各電流値及びオフセット電流Iosの設定値の両方を補正する。これにより、対応関係の各電流値に補正の負担が掛かり過ぎることなく、補正を行うことができる。
【0049】
このように、補正部15は、階調補正処理を行う補正モードを、光源2の周囲温度に応じて、第1補正モード又は第2補正モードに切り替えるように構成されている。ここで、階調補正処理とは、レーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるようにするための駆動電流Idrの補正処理である。第1補正モードは、対応関係の各電流値及びオフセット電流Iosの設定値のうち、対応関係の各電流値のみを補正する補正モードである。すなわち、第1補正モードは、駆動電流Idrのスケール電流Isc及びオフセット電流Iosのうちスケール電流Iscのみを補正する補正モードである。第2補正モードは、対応関係の各電流値及びオフセット電流Iosの設定値の両方を補正する補正モードである。すなわち、第2補正モードは、駆動電流Idrのスケール電流Isc及びオフセット電流Iosの両方を補正する補正モードである。
【0050】
換言すれば、補正部15は、光源2の周囲温度に基づいて、上記の階調補正処理において、オフセット電流Iosを補正するか否かを決定する。すなわち、補正部15は、駆動電流Idrを補正するとき、スケール電流Iscと共にオフセット電流Iosを補正するか否かを決定する。そして、補正部15は、光源2の周囲温度の変化が所定温度以上になると、上記の階調補正処理において、オフセット電流Iosを補正する。すなわち、補正部15は、駆動電流Idrを補正するとき、スケール電流Iscと共にオフセット電流Iosを補正する。
【0051】
以上、この実施形態によれば、レーザ光の測定強度と目標強度との差が規定範囲内に収まるように階調補正処理を行うとき、対応関係(すなわちスケール電流Isc)を補正する。このため、画像の非表示範囲において画像の階調を補正できる。この結果、画像の表示範囲の階調を乱すことなく画像の階調を補正できる。
【0052】
なお、本実施形態では、補正部15の階調補正処理は、定期的に行われるが、階調補正処理のタイミングは、定期的に限定されない。例えば、補正部15の階調補正処理は、温度センサ11の検出温度が一定以上変化したときに実行されてよいし、画像表示システム1の明るさが調整されたときに実行されてもよい。
【0053】
(対応関係の一例)
図3の対応関係T1は、上記で説明した対応関係(すなわち階調値とスケール電流Iscの電流値との対応関係)の一例を示す。対応関係T1は、映像処理部10に入力された入力画像の画像信号の各階調値に対して、DA変換器922から出力させるスケール電流Iscの電流値を指定する。対応関係T1は、例えば赤色光源2R用の対応関係を示す。対応関係T1は、複数(例えば10個)の階調値K1~K10と、複数(10個)の電流値I1~I10とを一対一に対応させている。すなわち、対応関係T1は、画像信号の階調値の範囲に含まれる複数(例えば10個)の特定の階調値K1~K10にそれぞれ対応するスケール電流Iscの複数の電流値I1~I10を有している。なお、対応関係T1で採用される階調値の個数は、10個に限定されない。
【0054】
なお、階調値の第2階調範囲(例えば階調値「0」~「150」)のうち、対応関係T1で採用されない階調値に対応する電流値は、採用された階調値に対応する電流値の線形補間で決められてもよい。また、採用されない階調値に対応する電流値は、採用されないその階調値に一番近い階調値に対応する電流値で近似して決められてもよい。
【0055】
図4の強度特性G1は、画像の各階調値と、各階調値での光源2(例えば赤色光源2R)のレーザ光の目標強度との関係を示す。
図4に示すように、画像の階調範囲(全範囲)S1は、第1階調範囲S2と第2階調範囲S3を含む。第1階調範囲S2は、上記の通り、所定階調値(例えば階調値「150」)よりも大きい階調範囲(例えば階調値「151」~「255」)であり、第2階調範囲S3は、上記の所定階調値以下の範囲(例えば階調値「0」~「150」)である。第2階調範囲S3は、低階調側の一定範囲S4(例えば階調値「0」~「100」)と、高階調側の残りの範囲S5(例えば階調値「101」~「150」)とを含む。
【0056】
なお、本実施形態では、第2階調範囲S3は、低階調側の一定範囲S4と高階調側の残りの範囲S5とを含むが、低階調側の一定範囲S4だけを含む範囲であってもよい。
【0057】
図4に示すように、強度特性G1は、第2階調範囲S3のうち、低階調側の一定範囲S4と高階調側の残りの範囲S5とでは、高階調側の残りの範囲S5よりも低階調側の一定範囲S4の方が大きく変化する。このため、対応関係T1で採用される複数の階調値K1~K10は、高階調側の残りの範囲S5よりも低階調側の一定範囲S4の方が採用間隔D1をより小さくすることが望ましい。すなわち、複数の階調値K1~K10のうちの隣り合う階調値の間隔D1は、高階調側の残りの範囲S5よりも低階調側の一定範囲S4の方が狭いことが望ましい。なお、採用間隔D1は、対応関係T1で採用される階調値K1~K10の間隔である。
【0058】
緑色光源2G用の対応関係及び青色光源2B用の対応関係も、赤色光源2R用の対応関係T1と同様に構成されている。
【0059】
なお、対応関係T1は、光源2の周囲温度が常温(例えば15℃~25℃)の強度特性G1を用いることが望ましい。
【0060】
(階調補正処理の詳細)
図3~
図5を参照して、レーザ光の測定強度と目標強度との差が規定定囲内に収まるように、
図3の対応関係T1の各電流値I1~I10を補正する手順を説明する。すなわち、階調補正処理において、駆動電流Idrのスケール電流Isc及びオフセット電流Iosのうちのスケール電流Iscのみを補正する手順を説明する。以下の説明では、赤色光源2R用の対応関係T1の各電流値I1~I10を補正の場合を例示する。
【0061】
図4に示すように、強度特性G1は、
図3の対応関係T1の各階調値K1~K10に対応する駆動電流Idrで光源2Rからレーザ光を出射させたときの各階調値K1~K10でのレーザ光の目標強度M1~M10を与える。なお、上記の「対応関係T1の各階調値K1~K10に対応する駆動電流Idr」とは、対応関係T1の各階調値K1~K10に対応する電流値をスケール電流Iscの設定値とした場合の駆動電流Idrである。強度特性G1において各階調値K1~K10で決まる各強度M1~M10が、各階調値K1~K10でのレーザ光の目標強度M1~M10となる。
図4中の各強度L1~L10は、対応関係T1の各階調値K1~K10に対応する駆動電流Idrが供給されたときに光源2Rから出射されるレーザ光の測定強度を示す。
【0062】
まず、
図3の対応関係T1の或る階調値(例えばK1)に対応する電流値(例えばI1)を補正する場合を説明する。或る階調値K1に対応する電流値I1を、スケール電流Iscの設定値としてDA変換器922に設定し、予め設定されたオフセット電流Iosの設定値をオフセット電流生成部921に設定した場合に光源2から出射されるレーザ光の強度を受光部8で測定する。この測定された強度を測定強度L1とする(
図4参照)。
【0063】
図5の強度特性G1aは、
図4の強度特性G1を、駆動電流Idrとレーザ光の強度との関係を示す座標系で示したグラフである。この座標系では、強度特性G1aは、光源2Rに駆動電流Idrを供給してレーザ光を出射させたときのその駆動電流Idrでのレーザ光の目標強度を与える。例えば、強度特性G1aは、或る階調値K1での駆動電流Idr(階調値K1に対応する電流値I1と予め設定されたオフセット電流Iosの設定値Icとの和)に対しては、目標強度M1を与える。この座標系では、強度特性G1aのスケール電流部分N1の傾き(第1の傾き)は、スケール値(1階調当たりのスケール電流Iscの変化量)を表し、そのとき流れるスケール電流Iscに比例する。スケール電流部分N1とは、強度特性G1aのうち、横軸(駆動電流Idrを規定する座標軸)におけるスケール電流Iscの範囲(電流値Ic以上の範囲)に重なる部分である。
【0064】
また、スケール電流部分N2は、2つの座標位置P1,P2を結ぶ直線である。座標位置P1は、或る階調値K1に対応する駆動電流Idr(I1+Ic)と、その駆動電流Idrでの光源2Rのレーザ光の測定強度L1とで指定される座標位置である。座標位置P2は、駆動電流Idrを規定する座標軸(すなわち横軸)上のオフセット電流Iosの設定値Icでの座標位置である。
【0065】
すなわち、スケール電流部分N2は、或る階調値K1に対応する駆動電流Idr(I1+Ic)でのレーザ光の測定強度L1から推定される強度特性G2のスケール電流部分を直線近似したグラフである。スケール電流部分N2の傾き(第2の傾き)は、レーザ光の測定強度L1から推定されるスケール値を表し、そのとき流れるスケール電流Iscに比例する。
【0066】
なお、この説明では、スケール電流部分N2を求めるとき、座標位置P2として、横軸上のオフセット電流Iosの設定値Icでの座標位置を用いるが、横軸上におけるレーザ光の測定強度がゼロになるときの駆動電流Idrの電流値での座標位置を用いてもよい。
【0067】
測定強度L1を目標強度M1に一致させるように補正することは、強度特性G2を強度特性G1aに一致させるように補正することに対応する。ここで、「強度特性G2を強度特性G1aに一致させる」とは、強度特性G2と強度特性G1aとの両方の値が一致することに限定されず、両方の値の差が一定範囲内に収まる場合も含まれる。また、駆動電流Idrのスケール電流Iscを補正することは、スケール電流部分N2の傾きをスケール電流部分N1の傾きに一致させることに対応する。
【0068】
スケール電流部分N2の傾きに対するスケール電流部分N1の傾きの比率(第1の傾きと第2の傾きの比)をα1とする。スケール電流部分N1,N2の傾きがスケール電流Iscに比例することを考慮すると、比率α1は、測定強度L1を目標強度M1に一致するように補正するように、スケール電流Iscを補正するための補正係数となる。以下、比率α1を補正係数α1とも記載する。
【0069】
ここで、スケール電流部分N1の傾き(第1の傾き)は、階調値K1に対応する電流値I1をスケール電流Iscの設定値とした場合における、駆動電流Idrに対する目標強度M1の変化率である。スケール電流部分N2の傾き(第2の傾き)は、階調値K1に対応する電流値I1をスケール電流Iscの設定値とした場合における、駆動電流Idrに対する測定強度L1の変化率である。従って、補正係数α1は、階調値K1に対応する電流値I1をスケール電流Iscの設定値とした場合において、駆動電流Idrに対する測定強度L1の変化率を、駆動電流Idrに対する目標強度M1の変化率に一致させるための補正係数である、とも言える。
【0070】
図5から、スケール電流部分N1の傾きは、M1/I1であり、スケール電流部分N2の傾きは、L1/I1である。ここで、スケール電流部分N1は、2つの座標位置P3,P2を通る直線として近似している。座標位置P3は、或る階調値K1での駆動電流Idr(I1+Ic)と、その駆動電流Idrでのレーザ光の目標強度M1とで指定される座標位置である。すなわち、座標位置P3は、強度特性G1a上における或る階調値K1での駆動電流Idr(I1+Ic)で指定される点である。
【0071】
この場合、補正係数α1は、(スケール電流部分N1の傾き)÷(スケール電流部分N2の傾き)であるため、M1/L1となる。すなわち、対応関係T1の或る階調値K1に対応する電流値I1を、その階調値K1でのレーザ光の測定強度L1が目標強度M1に一致するように補正するには、電流値I1に補正係数α1を掛ければよい(
図6参照)。
【0072】
この説明では、或る階調値(例えばK1)対する補正係数を求めたが、上記と同様にして、他の階調値K2~K10に対する補正係数α2~α10を求める。そして、求めた補正係数α2~α10を、残りの電流値I2~I10に掛けることで、対応関係T1の各電流値I1~I10を補正する(
図6参照)。これにより、赤色光源2Rのレーザ光の測定強度が目標強度に一致するように、赤色光源2R用の対応関係T1の各電流値I1~I10が補正される。そして、残りの光源2B,2G用の対応関係の各電流値についても、上記と同様に補正される。
【0073】
次に
図7を参照して、レーザ光の測定強度と目標強度Mの差が規定定囲内に収まるように、
図3の対応関係T1の各電流値I1~I10、及び、オフセット電流Iosの設定値Icを補正する手順を説明する。すなわち、階調補正処理において、駆動電流Idrのスケール電流Isc及びオフセット電流Iosの両方を補正する手順を説明する。以下の説明では、赤色光源2R用の対応関係T1の各電流値I1~I10を補正の場合を例示する。
【0074】
まず、オフセット電流Iosの設定値Icを補正する。予め設定された2つの駆動電流の電流値Ia,Ibで光源2Rからレーザ光を出射させ、そのときのレーザ光の強度を測定する。2つの電流値Ia,Ibには、特に制限はないが、精度を上げるため、電流値Iaは低階調側の電流値で、電流値Ibは高階調側の電流値であることが望ましい。それら各電流値Ia,Ibでのレーザ光の測定強度をLa,Lbとする。これら2つの座標位置P4(Ia,La)と座標位置P5(Ib,Lb)とを結ぶ直線N3が、これらの測定強度La,Lbから推定される光源2の強度特性G3のスケール電流部分を直線近似したグラフである。このスケール電流部分N3と横軸との交点P6が、推定されるオフセット電流Iosの設定値(推定設定値)Idを与える。
【0075】
推定設定値Idは、(Lb×Ia-La×Ib)/(Lb-La)となる。したがって、推定設定値Idと設定値Icとの差分ΔI(=Id-Ic)が、オフセット電流Iosの設定値Icに加算されることで、オフセット電流Iosの設定値Icが補正される。以下、この差分ΔIを補正定数ΔIとも記載する。すなわち、オフセット電流Iosの設定値Icは、補正定数ΔIが加算されることで階調補正処理が行われる。
【0076】
そして、この補正されたオフセット電流Iosの設定値(Ic+ΔI)に対して、上記と同様に、対応関係T1の各電流値I1~I10が補正される。これにより、レーザ光の測定強度Lと目標強度Mとの差が規定範囲内に収まるように、
図3の対応関係T1の各電流値I1~I10、及び、オフセット電流Iosの設定値Icが補正される。
【0077】
そして、残りの光源2用の対応関係の電流値、及び、オフセット電流Iosの設定値についても、上記と同様に補正される。
【0078】
(動作説明)
図8を参照して、画像表示システム1の動作を説明する。
【0079】
補正部15は、階調補正処理を行うとき、温度センサ11の検出温度に基づいて、各光源2の周囲温度が前回の階調補正処理時の各光源2の周囲温度と比べて一定温度以上変化しているかを監視している。各光源2の周囲温度が前回の階調補正処理時の各光源2の周囲温度と比べて一定温度以上変化していない場合(S1:NO)は、補正部15は、レーザ光の測光(強度の測定)を開始する(S2)。より詳細には、補正部15は、光源2から出射されるレーザ光の走査位置が画像の非表示範囲にあるタイミングにおいて、対応関係における各階調値に対応する電流値を順にスケール電流Iscの設定値として光源駆動部9に設定する。これにより、各階調値に対して光源2からレーザ光が出射される。その測定強度は、受光部8で測定される。
【0080】
そして、補正部15は、対応関係の各階調値でのレーザ光の測定強度から、上述のように各階調値に対応する各電流値I1~I10の補正係数α1~α10を算出する(S3)。そして、補正部15は、算出した各補正係数α1~α10を対応関係の各電流値I1~I10に掛け合わせることで、対応関係の各電流値I1~I10を補正する(S4)。
【0081】
そして、補正部15は、補正の適否の確認のために、補正後の対応関係を用いてレーザ光の強度の測定を行う(S5)。より詳細には、補正部15は、例えば、各階調値に対応する電流値を順にスケール電流Iscの設定値として光源駆動部9に設定し、各階調値に対して光源2からレーザ光を出射させ、その強度を受光部8で受光させる。なお、この場合のレーザ光の測定も、光源2から出射されるレーザ光の走査位置が画像の非表示範囲にあるタイミングで行われる。
【0082】
そして、補正部15は、各階調値においてレーザ光の測定強度と目標強度との差分を計算し、その差分が規定範囲内であるか判定する。そして、対応関係の全ての階調値において、差分が規定範囲内である場合(S6:YES)は、補正部15は、ステップS3で求めた補正係数α1~α10は適正であるとして、処理が終了する。
【0083】
他方、対応関係の全ての階調値のうち1つ以上の階調値において測定強度と目標強度との差分が規定範囲内にない場合(S6:NO)は、補正部15は、ステップS3で求めた補正係数α1~α10は適正でないと判断して、ステップS2に戻る。そして、補正部15は、ステップS3で算出した補正係数α1~α10をキャンセルして補正をやり直す。そして、補正部15は、ステップS6の判定がYESとなるまで、ステップS2~S6の処理を繰り返す。そして、ステップS6の判定がYESとなると、補正部15は、処理を終了する。これにより、補正係数が確定され、補正後の対応関係を用いて、光源2のスケール電流Iscの設定値が設定される。他の光源2に対しても、同様の処理が行われる。
【0084】
なお、ステップS6では、測定強度と目標強度との差分が規定範囲内にあった階調値に対応する電流値の補正係数は確定し、測定強度と目標強度との差分が規定範囲内になかった階調値に対応する電流値の補正係数だけ算出し直してもよい。
【0085】
他方、ステップS1で、各光源2の周囲温度が前回の階調補正処理時の各光源2の周囲温度と比べて所定温度以上変化している場合(S1:YES)は、補正部15は、測光を開始する(S7)。より詳細には、補正部15は、光源2から出射されるレーザ光の走査位置が画像の非表示範囲にあるタイミングにおいて、予め設定された2つの電流値を順にスケール電流Iscの設定値として光源駆動部9に設定して、光源2からレーザ光を出射させる。その測定強度は、受光部8で測定される。そして、補正部15は、上記の2つの電流値でのレーザ光の測定強度から、上述のようにオフセット電流Iosの設定値Icの補正定数である差分ΔIを算出する。そして、補正部15は、この差分ΔIをオフセット電流Iosの設定値Icに加算し、オフセット電流Iosの設定値Icを補正する(S8)。そして、この補正されたオフセット電流Iosの設定値を用いて、ステップS9~S10にて、ステップS3~S4と同様に、対応関係の各階調値に対応する電流値I1~I10の補正係数α1~α10を算出する(S9)。そして、補正部15は、算出した各補正係数α1~α10を対応関係の各電流値I1~I10に掛け合わせることで、対応関係の各電流値I1~I10を補正する(S10)。そして、補正部15は、ステップS6と同様に、補正の適否の確認のために、補正後の対応関係を用いてレーザ光の強度の測定を行う(S11)。
【0086】
そして、補正部15は、各階調値においてレーザ光の測定強度と目標強度との差分を計算し、その差分が規定範囲内であるか判定する。全ての階調値において、測定強度と目標強度との差分が規定範囲内である場合(S12:YES)は、補正部15は、ステップS3で求めた補正係数α1~α10は適正であるとして、処理が終了する。
【0087】
他方、全ての階調値のうち1つ以上の階調値において測定強度と目標強度との差分が規
定範囲内にない場合(S12:NO)は、補正部15は、ステップS8で求めた補正定数ΔI及びステップS9で求めた補正係数α1~α10は適正でないと判断して、ステップS7に戻る。そして、補正部15は、ステップS8,S9で算出した補正定数ΔI及び補正係数α1~α10をキャンセルして、補正をやり直す。そして、補正部15は、ステップS12の判定がYESとなるまで、ステップS7~S12の処理を繰り返す。そして、ステップS12の判定がYESとなると、補正部15は、処理を終了する。これにより、補正定数ΔI及び補正係数α1~α10が確定され、補正後の対応関係を用いて光源2のスケール電流Iscの設定値が設定され、補正後のオフセット電流Iosの設定値が設定される。他の光源2に対しても、同様の処理が行われる。
【0088】
(変形例)
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、画像表示システム1と同様の機能は、画像表示方法又はコンピュータプログラムで具現化されてもよい。
【0089】
一態様に係る画像表示方法は、画像信号が示す階調値に応じて変化するスケール電流Isc及び階調値に応じて変化しないオフセット電流Iosから構成された駆動電流Idrを光源2に供給し、スケール電流Iscの設定値に基づいてスケール電流Iscを生成する光源駆動処理と、画像信号に応じてスケール電流Iscの設定値を生成し、生成したスケール電流Iscの設定値を光源駆動処理に出力する処理と、駆動電流Idrの補正処理を行う補正処理と、を備える。処理は、画像信号の階調値が第1階調範囲S2にある場合は、スケール電流Iscの設定値を階調値に比例した電流値に設定する。また、処理は、階調値K1~K10が第1階調範囲S2より数値が小さい第2階調範囲S3にある場合は、階調値K1~K10とスケール電流Iscの電流値I1~I10との対応関係T1に基づいて、スケール電流Iscの設定値を対応関係T1に対応する電流値I1~I10に設定する。補正処理は、光源2の光の測定強度L1~L10と目標強度M1~M10との差が規定範囲内に収まるように対応関係T1を補正する処理を含む。
【0090】
一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記画像表示方法を実行させるためのプログラムである。
【0091】
(まとめ)
第1の態様の画像表示システム(1)は、画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流(Isc)及び階調値に応じて変化しない第2電流(Ios)から構成された駆動電流(Idr)を光源(2)に供給し、第1電流(Isc)の設定値に基づいて第1電流(Isc)を生成する光源駆動部(9)と、画像信号に応じて第1電流(Isc)の設定値を生成し、生成した第1電流(Isc)の設定値を光源駆動部(9)に出力する処理部(14)と、駆動電流(Idr)の補正処理を行う補正部(15)と、を備える。処理部(14)は、画像信号の階調値(K1~K10)が第1階調範囲(S2)にある場合は、第1電流(Isc)の設定値を階調値に比例した電流値に設定し、階調値(K1~K10)が第1階調範囲(S2)よりも数値が小さい第2階調範囲(S3)にある場合は、階調値(K1~K10)と第1電流(Isc)の電流値(I1~I10)との対応関係(T1)に基づいて、第1電流(Isc)の設定値を対応関係(T1)に対応する電流値(I1~I10)に設定する。補正処理は、光源(2)の光の測定強度(L1~L10)と目標強度(M1~M10)との差が規定範囲内に収まるように対応関係(T1)を補正する処理を含む。
【0092】
この構成によれば、光源(2)が出射する光(C1~C3)の測定強度(L1~L10)と目標強度(M1~M10)との差が規定範囲内に収まるように画像の階調値を補正するとき、対応関係(T1)(すなわち第1電流(Isc))を補正する。このため、画像の非表示範囲において画像の階調値を補正できる。この結果、画像の表示範囲の階調値を乱すことなく画像の階調値を補正できる。
【0093】
第2の態様の画像表示システム(1)は、第1の態様において、第2電流(Ios)は、光源(2)が発光し始める閾値電流値(Ith)以下の電流値(Ic)に設定される。
【0094】
この構成によれば、第2電流(Ios)を小さくできる。このため、第2電流(Ios)の変動を小さくでき、第2電流(Ios)の変動による階調値の変動が表示画像に影響することを抑制できる。
【0095】
第3の態様の画像表示システム(1)では、第1又は第2の態様において、補正部(15)は、対応関係(T1)の各階調値(K1~K10)に対応する電流値(I1~I10)を第1電流(Isc)の設定値とした場合において、駆動電流(Idr)に対する光源(2)の光の測定強度(L1~L10)の変化率を、駆動電流(Idr)に対する目標強度(M1~M10)の変化率に一致させるための補正係数(α1~α10)を求め、補正係数(α1~α10)に基づいて対応関係(T1)を補正する。
【0096】
この構成によれば、対応関係(T1)を、簡単な処理で、測定強度(L1~L10)と目標強度(M1~M10)との差が規定範囲内に収まるように補正できる。
【0097】
第4の態様の画像表示システム(1)では、第1~3の態様の何れか1つの態様において、光源駆動部(9)は、第2電流(Ios)の設定値に基づいて第2電流(Ios)を生成し、上記の補正処理は、第2電流(Ios)の設定値を補正する処理を含む。
【0098】
この構成によれば、駆動電流(Idr)の補正を、駆動電流(Idr)の第1電流(Isc)の補正と第2電流(Ios)の補正とに振り分けることができる。このため、第1電流(Isc)の補正が過度に大きくなることを抑制できる。
【0099】
第5の態様の画像表示システム(1)では、第1~4の態様の何れか1つの態様において、補正部(15)は、光源(2)の周囲温度に基づいて、上記の補正処理において第2電流(Ios)を補正するか否かを決定する。
【0100】
この構成によれば、光源(2)の周囲温度に応じて、第2電流(Ios)を補正するか否かを決めることができる。
【0101】
第6の態様の画像表示システム(1)では、第5の態様において、補正部(15)は、光源(2)の周囲温度の変化が所定温度以上になると、上記の補正処理において第2電流(Ios)を補正する。
【0102】
この構成によれば、光源(2)の周囲温度の変化が大きい場合(すなわち光源(2)の強度特性の温度変化が大きい場合)に、第1電流(Isc)と共に第2電流(Ios)を補正することができる。
【0103】
第7の態様の画像表示システム(1)では、第1~第6の態様の何れか1つの態様において、対応関係(T1)は、階調値(K1~K10)を複数有する。複数の階調値(K1~K10)の間隔(D1)は、第2階調範囲(S3)のうち、低階調側の一定範囲(S4)と高階調側の残りの範囲(S5)とでは、低階調側の一定範囲(S4)の方が狭い。
【0104】
この構成によれば、光源(2)が出射する光(C1~C3)の強度特性(G1)が大きく変化する低階調側の一定範囲(S4)において、きめ細かく補正を行うことができる。
【0105】
第8の態様の画像表示システム(1)では、第1~第7の態様の何れか1つの態様において、光源駆動部(9)は、第1電流(Isc)を生成する第1電流源(922)と、第2電流(Ios)を生成する第2電流源(921)と、第1電流(Isc)と第2電流(Ios)とを足し合わせて駆動電流(Idr)を生成する加算器(923)と、を備える。
【0106】
この構成によれば、簡単な構成で、第1電流(Isc)と第2電流(Ios)から駆動電流(Idr)を生成できる。
【0107】
第9の態様の画像表示システム(1)では、第1~第8の態様の何れか1つの態様において、互いに異なる光色の光(C1~C3)を出射する複数の光源(2)を備える。光源駆動部(9)は、複数の光源(2)に複数の駆動電流(Idr)をそれぞれ供給する。処理部(14)は、複数の駆動電流(Idr)にそれぞれ対応する複数の対応関係(T1)を有する。補正部(15)は、複数の駆動電流(Idr)の各々に対して補正処理を行う。
【0108】
この構成によれば、光源(2)が出射する光(C1~C3)が互いに異なる光色の光で構成される場合でも、各光色の光(C1~C3)の階調値を個別に補正できる。
【0109】
第10の態様の画像表示システム(1)では、第1~第8の態様の何れか1つの態様において、補正部(15)は、複数の駆動電流(Idr)それぞれに対して補正処理を実行することで、複数の光源(2)が出射する光で構成される光のホワイトバランスを調整する。
【0110】
この構成によれば、複数の光源(2)からの光(C1~C3)で構成される光のホワイトバランスを調整できる。
【0111】
第11の態様の移動体は、第1~第10の態様の何れか1つの態様の画像表示システム(1)と、画像表示システム(1)が搭載された移動体本体と、を備える。
【0112】
この構成によれば、上記の画像表示システム(1)を備えた移動体を提供できる。
【0113】
第12の態様の画像表示方法は、画像信号が示す階調値に応じて変化する第1電流(Isc)及び階調値に応じて変化しない第2電流(Ios)から構成された駆動電流(Idr)を光源(2)に供給し、第1電流(Isc)の設定値に基づいて第1電流(Isc)を生成する光源駆動処理と、画像信号に応じて第1電流(Isc)の設定値を生成し、生成した第1電流(Isc)の設定値を光源駆動処理に出力する処理と、駆動電流(Idr)の補正処理を行う補正処理と、を備える。処理は、画像信号の階調値が第1階調範囲(S2)にある場合は、第1電流(Isc)の設定値を階調値に比例した電流値に設定し、階調値(K1~K10)が第1階調範囲(S2)より数値が小さい第2階調範囲(S3)にある場合は、階調値(K1~K10)と第1電流(Isc)の電流値(I1~I10)との対応関係(T1)に基づいて、第1電流(Isc)の設定値を対応関係(T1)に対応する電流値(I1~I10)に設定する。補正処理は、光源(2)の光の測定強度(L1~L10)と目標強度(M1~M10)との差が規定範囲内に収まるように対応関係(T1)を補正する処理を含む。
【0114】
この構成によれば、光源(2)が出射する光(C1~C3)の測定強度(L1~L10)と目標強度(M1~M10)との差が規定範囲内に収まるように画像の階調値を補正するとき、対応関係(T1)(すなわち第1電流(Isc))を補正する。このため、画像の非表示範囲において画像の階調値を補正できる。この結果、画像の表示範囲の階調値を乱すことなく画像の階調値を補正できる。
【0115】
第13の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第12の態様の画像表示方法を実行させるためのプログラム。
【0116】
この構成によれば、上記の画像表示方法をプロセッサに実行させるためのプログラムを提供できる。
【符号の説明】
【0117】
1 画像表示システム
2 光源
9 光源駆動部
14 処理部
15 補正部
921 オフセット電流源(第2電流源)
922 DA変換器(第1電流源)
923 加算器
C1~C3 レーザ光
I1~I10 電流値
L1~L10 測定強度
M1~M10 目標強度
K1~K10 階調値
Idr 駆動電流
Ic 設定値
Ios オフセット電流(第2電流)
Isc スケール電流(第1電流)
Ith 閾値電流値
S2 第1階調範囲
第3 第2階調範囲
S4 低階調側の一定範囲
S5 高階調側の残りの範囲
T1 対応関係
α1~α10 比例係数