(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230825BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20230825BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M10/0587
H01M10/04 W
(21)【出願番号】P 2020553734
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019040061
(87)【国際公開番号】W WO2020090410
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018204327
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 茂樹
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-195224(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046443(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/157119(WO,A1)
【文献】特開2017-224402(JP,A)
【文献】特開2012-243434(JP,A)
【文献】特開2014-041817(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097562(WO,A1)
【文献】特開2016-058309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 10/0587
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に介在するセパレータとを備え、
前記正極及び前記負極の各々は、集電体と、前記集電体の表面に形成された合材層とを有し、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、前記合材層の表面の略全域に形成された、当該合材層よりも抵抗が大きな半導体層を有
し、
前記半導体層は活物質を含む、二次電池。
【請求項2】
前記半導体層は、酸化物、窒化物、炭化物、及び活物質から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極は、
前記活物質と、結着材と、導電材とを含む正極合材層を有し、
前記半導体層は、前記正極合材層の表面の略全域に形成されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記半導体層は
、前記結着材と、前記導電材とを含み、
前記半導体層における前記導電材の含有率は、前記正極合材層における前記導電材の含
有率よりも低い、請求項3に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極と、負極と、正極及び負極の間に介在するセパレータとを有する電極体を備えた二次電池が知られている。例えば、特許文献1に開示されたリチウムイオン電池では、セパレータの表面に半導電性層を設けて、過充電時に過剰に蓄えられた電気エネルギーを放出できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池では、電極体内に導電性の異物が混入して当該異物がセパレータを貫通することにより、微小短絡が発生する場合がある。二次電池において、短絡が発生した場合にリーク電流(放電)を抑制することは重要な課題であり、特許文献1に開示された技術は、リーク電流の抑制という面では未だ改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である二次電池は、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に介在するセパレータとを備え、前記正極及び前記負極の各々は、集電体と、前記集電体の表面に形成された合材層とを有する。前記正極及び前記負極の少なくとも一方は、前記合材層の表面の略全域に形成された、当該合材層よりも抵抗が大きな半導体層を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る二次電池によれば、導電性の異物がセパレータを貫通して微小短絡が発生したとしてもリーク電流を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の一例である二次電池の縦方向断面図である。
【
図2】実施形態の一例である二次電池の正極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
リチウムイオン電池等の二次電池において、リーク電流が大きな短絡の発生を抑制することは重要な課題である。本発明者らは、正極合材層及び負極合材層の少なくとも一方の表面の略全域に、当該合材層よりも抵抗が大きな半導体層を形成することにより、かかる短絡の抑制に成功した。導電性の異物を介して正極と負極が接触したとしても、電極の表面には合材層よりも高抵抗な半導体層が存在するため、リーク電流を十分に抑制でき、また電極表面で起こる短絡の反応ムラを低減できる。
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る二次電池の実施形態の一例について詳説する。以下では、正極合材層の表面の略全域に半導体層が形成された形態を例示するが、半導体層は負極合材層の表面の略全域に形成されていてもよく、正極合材層の表面及び負極合材層の表面の両方に形成されていてもよい。
【0010】
また、以下では、巻回型の電極体14が円筒形の電池ケースに収容された円筒形電池を例示するが、電極体は巻回型に限定されず、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して1枚ずつ交互に積層されてなる積層型であってもよい。また、本開示に係る二次電池は、角形の金属製ケースを備える角形電池、コイン形の金属製ケースを備えるコイン形電池等であってもよく、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された外装体を備えるラミネート電池であってもよい。
【0011】
図1は、実施形態の一例である二次電池10の断面図である。
図1に例示するように、二次電池10は、電極体14と、電解質と、電極体14及び電解質を収容する電池ケース15とを備える。電極体14は、正極11と、負極12と、セパレータ13とを備え、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。電池ケース15は、有底円筒形状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17とで構成されている。なお、二次電池10は、水系電解質を用いた二次電池であってもよく、非水系電解質を用いた二次電池であってもよい。以下では、二次電池10は、非水電解質を用いたリチウムイオン電池等の非水電解質二次電池として説明する。
【0012】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、固体電解質であってもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0013】
二次電池10は、電極体14の上下にそれぞれ配置された絶縁板18,19を備える。
図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極リード20は封口体17の底板23の下面に溶接等で接続され、底板23と電気的に接続された封口体17の天板であるキャップ27が正極端子となる。負極リード21は外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0014】
外装缶16は、例えば有底円筒形状の金属製容器である。外装缶16と封口体17との間にはガスケット28が設けられ、電池内部の密閉性が確保されている。外装缶16には、例えば側面部の一部が内側に張り出した、封口体17を支持する溝入部22が形成されている。溝入部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。
【0015】
封口体17は、電極体14側から順に、底板23、下弁体24、絶縁部材25、上弁体26、及びキャップ27が積層された構造を有する。封口体17を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材25を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体24と上弁体26は各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材25が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、下弁体24が上弁体26をキャップ27側に押し上げるように変形して破断し、下弁体24と上弁体26の間の電流経路が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体26が破断し、キャップ27の開口部からガスが排出される。
【0016】
以下、電極体14を構成する正極11、負極12、及びセパレータ13について、特に正極11について詳説する。
【0017】
[正極]
図2は、実施形態の一例である正極11の断面図である。正極11は、正極集電体30と、正極集電体30の少なくとも一方の表面に形成された正極合材層31と、正極合材層31の表面の略全域に形成された正極半導体層32とを備える。正極合材層31は、正極の高容量化の観点から、正極集電体30の両面に形成されることが好ましい。正極半導体層32は、各正極合材層31の表面にそれぞれ形成される。
【0018】
正極集電体30には、アルミニウム、又はアルミニウム合金等、非水電解質二次電池の作動電圧範囲における正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルムなどを用いることができる。好適な正極集電体30は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属の箔であって、5μm~20μmの厚みを有する。正極合材層31は、正極活物質と、結着材と、導電材とを含む。正極合材層31の厚みは、正極集電体30の片側で、例えば30μm~120μmであり、好ましくは50μm~90μmである。
【0019】
正極合材層31に含まれる正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有金属複合酸化物が用いられる。リチウム含有金属複合酸化物の例としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4、LiMPO4、Li2MPO4F(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0020】
正極合材層31に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。正極合材層31に含まれる導電材としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0021】
正極半導体層32は、正極合材層31よりも抵抗が大きな表面層であって、正極11の最表面に形成される。正極半導体層32を設けることで、正極11の表面抵抗を大きくすることができ、リーク電流が大きな短絡の発生を効果的に抑制できる。短絡のリーク電流の大きさは、短絡の抵抗値で決まり、短絡の抵抗値は、正極集電体30と負極集電体40の間にある各合材層及び正極半導体層32の抵抗値の影響を受ける。正極半導体層32を正極合材層31の表面に形成することで、短絡の抵抗値を大きくしてリーク電流を抑制することができる。
【0022】
正極半導体層32の抵抗値は、正極合材層31の抵抗値の1.5倍以上が好ましい。正極半導体層32が正極活物質を含む場合は、半導体層の活物質も充放電に利用できるようにするため、2倍~10倍がより好ましく、正極半導体層32の抵抗値は、例えば15Ω~1000Ωである。一方、正極半導体層32が正極活物質を含まない場合の抵抗は、正極半導体層32を充放電に利用しないので、例えば15Ω~100000Ωである。正極合材層31及び正極合材層31と正極半導体層32の抵抗値は、2端子法により測定できる(詳細な測定方法は後述の実施例参照)。
【0023】
正極半導体層32は、上述の通り、正極合材層31の表面の略全域に形成される。微小短絡は正極11のいずれの部位で発生するかを予測できないので、正極合材層31の表面の略全域に正極半導体層32を形成することで、リーク電流が大きな短絡の発生を効果的に抑制できる。正極半導体層32は、正極合材層31の表面をはみ出して形成されてもよい。即ち、正極半導体層32は、正極集電体30の表面において、正極合材層31の表面の全域を覆い、かつ正極合材層31よりも大面積に形成されてもよい。例えば、正極リード20が接続される、正極集電体30の表面が露出した露出部において、正極半導体層32は正極集電体30の表面に直接形成されてもよい。
【0024】
また、正極半導体層32は、正極合材層31の表面の略全域に形成されていればよく、本開示の目的を損なわない範囲で正極半導体層32が形成されていない部位があってもよい。本明細書において、「正極合材層31の表面の略全域」とは、完全に全域はもとより、実質的に全域と認められる場合を含む。正極半導体層32は、正極合材層31の表面の95%以上の領域に形成され、好ましくは実質的に100%の領域に形成される。
【0025】
正極半導体層32は、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、及び正極活物質から選択される少なくとも1種を含む。正極半導体層32は、酸化物、窒化物、炭化物、及び正極活物質から選択される少なくとも1種を主成分として構成されることが好ましい。主成分とは、正極半導体層32の構成成分のうち、最も多く含まれる構成成分である。酸化物、窒化物、炭化物、及び正極活物質から選択される少なくとも1種の含有量は、正極半導体層32の総質量に対して、例えば80質量%~98質量%である。正極半導体層32は、例えばSi、Al、Cr、Zr、Ta、Ti、Mn、Mg、及びZnから選択される少なくとも1種を含有する酸化物、窒化物、又は炭化物を含んでいてもよい。
【0026】
正極半導体層32は、正極活物質を主成分として構成されることが好ましい。正極半導体層32に正極活物質を用いることで、体積あたりの電池容量の減少を抑えつつ、リーク電流が大きな短絡の発生を抑制できる。正極半導体層32に含まれる正極活物質には、正極合材層31の場合と同様に、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有金属複合酸化物を用いることができる。正極半導体層32に含まれる正極活物質は、正極合材層31に含まれる正極活物質と同じであってもよいし、異なっていてもよい。正極合材層31及び正極半導体層32は、例えば同じ正極活物質を含む。この場合、正極半導体層32における正極活物質の含有率は、正極合材層31における正極活物質の含有率よりも高い。
【0027】
正極半導体層32は、さらに、結着材、及び導電材を含むことが好ましい。結着材を用いることで、正極半導体層32の膜強度が向上する。また、導電材を用いることで、正極半導体層32の抵抗値を調整することが容易になる。正極半導体層32の抵抗値は、半導体層を正極容量としてカウントでき、上記短絡の発生を十分に抑制可能な範囲に制御されることが好ましい。正極半導体層32に含まれる結着材及び導電材は、正極合材層31に含まれる結着材及び導電材と同じであってもよいし、異なっていてもよい。正極半導体層32は、正極合材層31の場合と同様に、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着材、及びアセチレンブラック(AB)等の導電材を含む。
【0028】
正極半導体層32における導電材の含有率は、正極合材層31における導電材の含有率よりも低いことが好ましい。導電材の含有率によって正極半導体層32及び正極合材層31の抵抗値は大きく変化するので、正極半導体層32における導電材の含有率を正極合材層31における導電材の含有率よりも低くすることで、正極合材層31に十分な導電性を維持しつつ、正極半導体層32の抵抗値を大きくすることができる。正極半導体層32、及び正極合材層31で同じ導電材を含有する正極半導体層32スラリーの調整が簡便という点から、正極合材層31と正極半導体層32の構成材料は同じにして、正極半導体層32における導電材の含有量を正極合材層31よりも少なくすることで抵抗値を調整するのがより好ましい。
【0029】
正極半導体層32は導電材を含むため、正極容量としてカウントできる。外装缶16の大きさは定型であるため、正極11の厚みには制限がある。許容される正極11の厚みの範囲において、正極合材層31と正極半導体層32の間ではトレードオフの関係が成り立つことから、例えば、正極半導体層32が絶縁層であれば微小短絡によるリーク電流を抑制することはできるが、絶縁層は容量に寄与できないので正極半導体層32の厚み分だけ容量が低くなる。正極半導体層32に導電材を添加することで、微小短絡によるリーク電流を抑制しつつ高容量化を図ることができる。
【0030】
正極半導体層32の厚みは、正極合材層31の厚みよりも薄く、例えば0.5μm~60μmであり、好ましくは1μm~20μmである。正極半導体層32の厚みが当該範囲であれば、微小短絡の抵抗値を小さくしてリーク電流を許容範囲に抑制できる。正極合材層31と正極半導体層32の厚みの比率は、正極容量と短絡抑制の両立等の観点から、5:5~9.5:0.5が好ましく、8:2~9.5:0.5がより好ましい。
【0031】
正極11は、例えば正極合材スラリー、及び正極半導体層用スラリーを用いて製造される。具体的には、正極集電体30の両面に正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて正極合材層31を形成した後、正極合材層31の表面の略全域に正極半導体層用スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させて正極半導体層32を形成する。その後、ローラー等を用いて正極合材層31及び正極半導体層32を圧縮する。各スラリーには、正極活物質、結着材、及び導電材が含まれる。但し、導電材の添加量は、正極合材スラリー>正極半導体層用スラリーである。
【0032】
[負極]
負極12は、負極集電体40と、負極集電体40の少なくとも一方の表面に形成された負極合材層41とを備える。負極集電体40には、銅、銅合金等、非水電解質二次電池の作動電圧範囲における負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルムなどを用いることができる。負極合材層41は、負極活物質、及び結着材を含み、負極集電体40の両面に形成されることが好ましい。負極12は、負極集電体40の表面に負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層41を負極集電体40の両面に形成することにより製造できる。
【0033】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、一般的には黒鉛等の炭素材料が用いられる。黒鉛は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛のいずれであってもよい。また、負極活物質として、Si、Sn等のLiと合金化する金属、Si、Sn等を含む金属化合物、リチウムチタン複合酸化物などを用いてもよい。SiOx(0.5≦x≦1.6)で表されるSi含有化合物が、黒鉛等の炭素材料と併用されてもよい。
【0034】
負極合材層41に含まれる結着材には、正極11の場合と同様に、PTFE、PVdF等の含フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィンなどを用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)が用いられる。負極合材層41には、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、PVAなどが含まれていてもよい。負極合材層41には、例えばSBRと、CMC又はその塩が含まれる。
【0035】
負極12は、負極合材層41の表面の略全域に形成された負極半導体層を有していてもよい。負極半導体層は、負極合材層41よりも高抵抗な表面層であって、例えば酸化物、窒化物、炭化物、及び負極活物質から選択される少なくとも1種と、結着材とを含む。リーク電流を抑制するには、微小短絡の抵抗値を大きくすればよいので、負極に抵抗値の大きい表面層を形成した場合についても、正極に表面層を形成したのと同様の効果がある。
【0036】
[セパレータ]
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどが好適である。セパレータ13は、単層構造であってもよく、積層構造を有していてもよい。また、セパレータ13の表面には、アラミド樹脂等の耐熱性の高い樹脂層、無機化合物のフィラーを含むフィラー層が設けられていてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本開示をさらに詳説するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2で表されるリチウム含有遷移金属複合酸化物を用いた。正極活物質と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、アセチレンブラック(AB)とを96.5:1.5:2.0の固形分質量比で混合し、分散媒体をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とする正極合材スラリーを調製した。当該正極合材スラリーを正極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、正極合材層(未圧縮状態)を形成した。
【0039】
次に、正極活物質と、PVdFと、ABとを97.5:1.5:1.0の固形分質量比で混合し、分散媒体をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とする半導体層用スラリーを調製した。当該半導体層用スラリーを正極合材層の表面に塗布し、塗膜を乾燥させることにより、正極合材層の表面の全域に半導体層を形成した。その後、ローラーを用いて正極合材層及び半導体層を圧縮し、集電体を所定の電極サイズに切断して、正極を作製した。正極集電体の片側において、正極合材層の厚みは60μm、半導体層の厚みは8μmであった。
【0040】
[負極の作製]
黒鉛粉末と、CMCのナトリウム塩と、SBRのディスパージョンとを、98:1:1の固形分質量比で混合し、分散媒を水とする負極合材スラリーを調製した。次に、当該負極合材スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラーを用いて圧縮することにより、集電体の両面に負極合材層を形成した。当該集電体を所定の電極サイズに切断して、負極を作製した。
【0041】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を、3:3:4の体積比で混合した。当該混合溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度となるように溶解させて非水電解質を調製した。
【0042】
[電池の作製]
上記正極及び上記負極にタブをそれぞれ取り付け、セパレータを介して各電極を渦巻き状に巻回し、扁平状に成形して扁平状の巻回型電極体を作製した。当該電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入して、105℃で2時間真空乾燥した後、上記非水電解液を注入し、外装体の開口部を封止してラミネート電池を作製した。
【0043】
<実施例2>
半導体層用スラリーの調製において、正極活物質と、PVdFと、ABとの固形分質量比を97.7:1.5:0.8に変更したこと以外は、実施例1と同様にして正極及び二次電池を作製した。正極合材層と半導体層の厚みは、実施例1の正極と同じ厚みに調整した。
【0044】
<比較例1>
半導体層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして正極及び二次電池を作製した。正極合材層の厚みは、実施例1の正極合材層と同じ厚みに調整した。
【0045】
[正極の抵抗値の測定]
実施例及び比較例の各正極について、三菱化学株式会社製 Loresta-GPを用い、APプローブによる2端子法(25℃)により表面抵抗を測定した。表1に示す値は、比較例1の正極の抵抗値を1としたときの相対値である。
【0046】
[微小短絡発生割合の評価]
実施例及び比較例の各電池それぞれ280個について5日間の自己放電を評価した。自己放電量が平均+3σを超える場合に微小短絡が発生したものとして、微小短絡が発生した電池の個数をカウントし、微小短絡発生割合を算出した。実施例1、2及び比較例1で相対的に評価し、微小短絡発生割合が低い順に◎、〇、×とした。
【0047】
【0048】
表1に示す結果から分かるように、実施例の二次電池はいずれも、比較例1の二次電池と比べて、上記評価における微小短絡が発生し難い。
【符号の説明】
【0049】
10 二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 外装缶、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極リード、21 負極リード、22 溝入部、23 底板、24 下弁体、25 絶縁部材、26 上弁体、27 キャップ、28 ガスケット、30 正極集電体、31 正極合材層、32 正極半導体層、40 負極集電体、41 負極合材層。