(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/035 20060101AFI20230825BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20230825BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20230825BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20230825BHJP
H01G 9/14 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
H01G9/15
H01G9/028 E
H01G9/14 A
(21)【出願番号】P 2019545671
(86)(22)【出願日】2018-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2018036209
(87)【国際公開番号】W WO2019065951
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2017191961
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 佳津代
(72)【発明者】
【氏名】椿 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-010657(JP,A)
【文献】特開2007-080888(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099261(WO,A1)
【文献】特開2017-069537(JP,A)
【文献】特開2006-108650(JP,A)
【文献】特開2005-286251(JP,A)
【文献】特開2005-327945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
H01G 9/145
H01G 9/15
H01G 9/028
H01G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、化成皮膜を有する陽極体と、前記化成皮膜に接触した固体電解質と、を備え、
前記電解液は、溶媒と、酸成分および塩基成分からなる溶質と、を含み、
前記溶媒は、ラクトン化合物、グリコール化合物およびスルホン化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記酸成分は、第1酸成分として、ベンゼンジカルボン酸、有機酸と無機酸との複合化合物、およびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記塩基成分は、
第1塩基成分として、アミンおよびアミジンから選ばれる少なくとも1種を含み、
前記電解液における前記溶質の濃度は、20質量%以上、40質量%以下であり、
前記電解液における前記第1酸成分の濃度は、15質量%以上であり、
前記電解液における前記第1塩基成分の濃度は、5質量%以上であり、
前記化成皮膜を形成するために前記陽極体に印加される化成電圧Vと、前記電解コンデンサの定格電圧Vwとの比:V/Vwは、1.7以下であり、
前記電解液は、前記酸成分を前記塩基成分より当量比で過剰に含む、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記ベンゼンジカルボン酸は、o-フタル酸である、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記電解液のpHは、4.5以下である、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記電解液は、高分子成分をさらに含み、
前記電解液における前記高分子成分の濃度は、1質量%以上、15質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記高分子成分は、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体ならびに多価アルコールの水酸基の少なくとも1つがポリアルキレングリコール(誘導体を含む)に置換された化合物から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記定格電圧Vwは、100ボルト以下(ただし10ボルト以下を除く)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記酸成分は、前記第1酸成分以外の第2酸成分として、芳香族ポリカルボン酸、多価フェノールおよびオキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
前記ラクトン化合物は、γ-ブチロラクトンである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項9】
前記グリコール化合物は、エチレングリコールである、請求項1~
8のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項10】
前記スルホン化合物は、スルホランである、請求項1~
9のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【請求項11】
前記比:V/Vwは、1.5以上である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質と電解液とを具備する電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
小型かつ大容量でESR(等価直列抵抗)の低いコンデンサとして、固体電解質と電解液とを具備する、いわゆるハイブリッド型の電解コンデンサが有望視されている。例えば、特許文献1には、陽極体の表面に酸化皮膜(化成皮膜)が形成された、ハイブリッド型の電解コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/099261号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のハイブリッド型の電解コンデンサでは、化成電圧と定格電圧との比を低くした場合、静電容量および等価直列抵抗(ESR)を十分に維持できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、本発明の第一局面は、コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、化成皮膜を有する陽極体と、前記化成皮膜に接触した固体電解質と、を備え、前記電解液は、溶媒と、溶質と、を含み、前記溶媒は、ラクトン化合物、グリコール化合物およびスルホン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記溶質は、第1酸成分としてベンゼンジカルボン酸およびその誘導体の少なくとも1種と、塩基成分としてアミンおよびアミジンの少なくとも1種と、を含み、前記電解液における前記溶質の濃度は、15質量%以上、40質量%以下であり、前記化成皮膜を形成するために前記陽極体に印加される化成電圧Vと、前記電解コンデンサの定格電圧Vwとの比:V/Vwは、1.7以下である、電解コンデンサに関する。
【0006】
また、本発明の第二局面は、コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、前記コンデンサ素子は、化成皮膜を有する陽極体と、前記化成皮膜に接触した固体電解質と、を備え、前記電解液は、溶媒と、溶質と、を含み、前記溶媒は、ラクトン化合物、グリコール化合物およびスルホン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記溶質は、第1酸成分として有機酸と無機酸との複合化合物およびその誘導体の少なくとも1種と、塩基成分としてアミンおよびアミジンの少なくとも1種と、を含み、前記電解液における前記溶質の濃度は、10質量%以上、40質量%以下であり、前記化成皮膜を形成するために前記陽極体に印加される化成電圧Vと、前記電解コンデンサの定格電圧Vwとの比:V/Vwは、1.7以下である、電解コンデンサに関する。
本明細書は以下の発明例を開示する。
[発明例1]
コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、化成皮膜を有する陽極体と、前記化成皮膜に接触した固体電解質と、を備え、
前記電解液は、溶媒と、溶質と、を含み、
前記溶媒は、ラクトン化合物、グリコール化合物およびスルホン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記溶質は、第1酸成分としてベンゼンジカルボン酸およびその誘導体の少なくとも1種と、塩基成分としてアミンおよびアミジンの少なくとも1種と、を含み、
前記電解液における前記溶質の濃度は、15質量%以上、40質量%以下であり、
前記化成皮膜を形成するために前記陽極体に印加される化成電圧Vと、前記電解コンデンサの定格電圧Vwとの比:V/Vwは、1.7以下である、電解コンデンサ。
[発明例2]
前記ベンゼンジカルボン酸は、o-フタル酸である、発明例1に記載の電解コンデンサ。
[発明例3]
コンデンサ素子と、電解液と、を備える電解コンデンサであって、
前記コンデンサ素子は、化成皮膜を有する陽極体と、前記化成皮膜に接触した固体電解質と、を備え、
前記電解液は、溶媒と、溶質と、を含み、
前記溶媒は、ラクトン化合物、グリコール化合物およびスルホン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記溶質は、第1酸成分として有機酸と無機酸との複合化合物およびその誘導体の少なくとも1種と、塩基成分としてアミンおよびアミジンの少なくとも1種と、を含み、
前記電解液における前記溶質の濃度は、10質量%以上、40質量%以下であり、
前記化成皮膜を形成するために前記陽極体に印加される化成電圧Vと、前記電解コンデンサの定格電圧Vwとの比:V/Vwは、1.7以下である、電解コンデンサ。
[発明例4]
前記電解液のpHは、4.5以下である、発明例1~3のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例5]
前記電解液は、高分子成分をさらに含み、
前記電解液における前記高分子成分の濃度は、1質量%以上、15質量%以下である、発明例1~4のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例6]
前記定格電圧Vwは、100ボルト以下である、発明例1~5のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例7]
前記電解液における前記塩基成分の濃度は、3.5質量%以上である、発明例1~6のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例8]
前記溶質は、前記第1酸成分以外の第2酸成分をさらに含み、
前記電解液における前記第2酸成分の濃度は、3質量%以上である、発明例1~7のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例9]
前記ラクトン化合物は、γ-ブチロラクトンである、発明例1~8のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例10]
前記グリコール化合物は、エチレングリコールである、発明例1~9のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
[発明例11]
前記スルホン化合物は、スルホランである、発明例1~10のいずれか一つに記載の電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、静電容量および等価直列抵抗(ESR)を十分に維持できる、ハイブリッド型の電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。
【
図2】同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る電解コンデンサは、コンデンサ素子と、電解液と、を備える。コンデンサ素子は、化成皮膜を有する陽極体と、化成皮膜に接触した固体電解質と、を備える。
【0010】
ハイブリッド型の電解コンデンサにおいて、固体電解質と化成皮膜とは接触している。よって、リーク電流を低減するために、従来、化成電圧Vを電解コンデンサの定格電圧Vwの2倍程度の高い値に設定して、十分な厚みの化成皮膜を形成している。そのため、ハイブリッド型の電解コンデンサにおいて、定格電圧Vwと化成電圧Vとの比(V/Vw)を小さくして、電解コンデンサの静電容量を高めたり、あるいは、電解コンデンサを小型化することは困難であった。
【0011】
そこで、発明者らが鋭意検討した結果、電解液を特定の組成にすることで、定格電圧Vwと化成電圧Vとの比(V/Vw)を小さくした場合においても、ハイブリッド型電解コンデンサの静電容量およびESRを維持できることが判明した。
【0012】
第1に、特定の溶質を用いるとともに、その含有量を特定の範囲とする。具体的には、第1酸成分としてベンゼンジカルボン酸およびその誘導体の少なくとも1種と、塩基成分としてアミンおよびアミジンの少なくとも1種と、を含む溶質を用いる。そして、電解液に含まれる溶質の濃度、つまり、第1酸成分を含む酸成分と塩基成分との合計の濃度を、15質量%以上、40質量%未満にする。
【0013】
第2に、特定の溶媒を用いる。具体的には、溶媒として、γ-ブチロラクトン、エチレングリコールおよびスルホランよりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる。
【0014】
電解液を上記のような組成にすることにより、溶質に含まれる第1酸成分は、陽極体の欠陥付近まで到達し易くなる。そのため、化成皮膜の自己修復性能が向上し、静電容量およびESRを維持することができる。よって、化成電圧Vと定格電圧Vwとの比:V/Vwを、1.7以下にすることができる。
【0015】
なお、電解液に高分子成分を含ませる場合、高分子成分の濃度は、1質量%以上、15質量%以下にする。これにより、電解液に高分子成分を含む場合であっても、第1酸成分の移動は妨げられ難いため、上記効果が得られる。
【0016】
化成皮膜は、酸性の水溶液(以下、化成液)中に浸漬した状態で、陽極体に所定の化成電圧を印加する方法(以下、第1の方法)により形成される皮膜に限定されない。例えば、化成皮膜は、化成液中に浸漬した状態で、陽極体を熱処理することにより形成されてもよい(以下、第2の方法)。第1の方法で化成皮膜を形成すると、化成電圧に応じた厚みTを有する化成皮膜が形成される。つまり、化成皮膜の厚みTから、化成電圧が求められる。第2の方法で化成皮膜を形成した場合にも、その厚みTから、当該化成皮膜を、第1の方法で形成する場合に必要な化成電圧が求められる。すなわち、化成電圧Vとは、厚みTの化成皮膜を形成するために陽極体に印加された電圧、および、厚みTの化成皮膜を形成するために必要な電圧を含む。
【0017】
定格電圧Vwは、定格として定められている上限の電圧であり、電解コンデンサの電極間にかけられる電圧の最大値である。
[電解液]
電解液は、溶媒および溶質を含む。
【0018】
電解液のpHは4.5以下が好ましい。電解液のpHを4.5以下とすることで、固体電解質の脱ドープ現象が抑制され易くなる。そのため、ESRを維持することができる。電解液のpHは4以下がより好ましく、3.8以下が特に好ましい。また、電解液のpHは2以上が好ましい。
【0019】
電解液の電導度は、0.01mS/cm以上、3mS/cm以下であることが好ましい。この場合、化成電圧Vと定格電圧Vwとの比:V/Vwを1.7以下とする際に、自己修復性能がさらに向上され易くなる。
(溶媒)
溶媒は、γ-ブチロラクトン(γBL)、エチレングリコール(EG)およびスルホラン(SL)よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、主溶媒)を含むことが好ましい。主溶媒としては、EG以外のグリコール化合物、SL以外のスルホン化合物、γBL以外のラクトン化合物を用いてもよい。EG以外のグリコール化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを用いることができる。SL以外のスルホン化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどを用いることができる。γBL以外のラクトン化合物としては、γ-バレロラクトンなどを用いることができる。溶媒に含まれる主溶媒(例えば、γBL、EGおよびSLの合計)の割合は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0020】
溶媒は、主溶媒以外の溶媒(以下、副溶媒)として、カーボネート化合物、1価または3価以上のアルコールなどを含むことができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などを用いることができる。アルコールとしては、例えばグリセリンやポリグリセリンを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
(溶質)
溶質の濃度は、15質量%以上、40質量%以下である。溶質の濃度は、20質量%以上、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上、35質量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
溶質の濃度は、酸成分の濃度と、塩基成分の濃度との合計である。酸成分とは、第1酸成分、および、第1酸成分以外の第2酸成分を含む。塩基成分とは、アミンおよび/またはアミジン(以下、第1塩基成分)、および、第1塩基成分以外の第2塩基成分を含む。
【0022】
溶質は、第1酸成分としてベンゼンジカルボン酸およびその誘導体の少なくとも1種を含む。ベンゼンジカルボン酸としては、o-フタル酸、m-フタル酸、p-フタル酸であってもよい。ベンゼンジカルボン酸の誘導体としては、例えば、スルホ基を有する3-スルホフタル酸、3,5-ジスルホフタル酸、4-スルホイソフタル酸、2-スルホテレフタル酸、2-メチル-5-スルホテレフタル酸等が挙げられる。なかでも、o-フタル酸が好ましい。
【0023】
電解液中に含まれる第1酸成分の濃度は、解離し易い点で、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、第1酸成分の濃度は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0024】
酸成分は、第1酸成分以外の第2酸成分を含んでもよい。
【0025】
第2酸成分として用いられる有機酸としては、例えば、ポリカルボン酸、モノカルボン酸、多価フェノール等が挙げられる。
【0026】
ポリカルボン酸としては、脂肪族ポリカルボン酸:([飽和ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、1,6-デカンジカルボン酸、5,6-デカンジカルボン酸]、[不飽和ポリカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イコタン酸])、芳香族ポリカルボン酸:(例えばトリメリット酸、ピロメリット酸)、脂環式ポリカルボン酸:(例えばシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等)が挙げられる。
【0027】
モノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸(炭素数1~30):([飽和モノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸]、[不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸])、芳香族モノカルボン酸:(例えば安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸)、オキシカルボン酸:(例えばサリチル酸、マンデル酸、レゾルシン酸)が挙げられ、これらの内で好ましいのは電導度が高く熱的にも安定な、マレイン酸、安息香酸、ピロメリット酸、レゾルシン酸である。
【0028】
多価フェノールとしては、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシン等が挙げられる。
【0029】
第2酸成分として用いられる無機酸としては、炭素化合物、水素化合物、ホウ素化合物、硫黄化合物、窒素化合物、リン化合物が挙げられる。代表的な無機酸の例として、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、アルキル燐酸エステル、ホウ酸、ホウフッ酸、4フッ化ホウ酸、6フッ化リン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0030】
第2酸成分として、有機酸と無機酸の複合化合物を用いてもよい。複合化合物としては、例えば、ボロジグリコール酸、ボロジ蓚酸、ボロジサリチル酸などが挙げられる。
【0031】
なかでも、自己修復性能がさらに向上する点で、第2酸成分としては、芳香族ポリカルボン酸、多価フェノールおよびオキシカルボン酸よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0032】
第2酸成分の濃度は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、第2酸成分の濃度は、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0033】
溶質は、第1塩基成分としてアミンおよびアミジンの少なくとも1種を含む。
【0034】
アミンは、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンであってもよい。各アミンは、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンであってもよい。なかでも、ESRを長期的に安定化する効果が高められる点で、3級アミンが好ましい。
【0035】
3級アミンとしては、トリアルキルアミン類(トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルn-プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、メチルエチルn-プロピルアミン、メチルエチルイソプロピルアミン、ジエチルn-プロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリt-ブチルアミンなど)、フェニル基含有アミン(ジメチルフェニルアミン、メチルエチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミンなど)が挙げられる。なかでも、電導度が高い点で、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンが好ましい。
【0036】
アミジンとしては、電導度が高い点で、アルキル置換アミジン基を有する化合物が好ましい。アルキル置換アミジン基を有する化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、脂環式アミジン化合物(ピリミジン化合物、イミダゾリン化合物)が挙げられる。具体的には、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、1,2-ジメチルイミダゾリニウム、1,2,4-トリメチルイミダゾリン、1-メチル-2-エチル-イミダゾリン、1,4-ジメチル-2-エチルイミダゾリン、1-メチル-2-ヘプチルイミダゾリン、1-メチル-2-(3’ヘプチル)イミダゾリン、1-メチル-2-ドデシルイミダゾリン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1-メチルイミダゾール、1-メチルベンゾイミダゾール、1-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1-メチル-1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム、1,2-ジメチル-3-エチル-イミダゾリニウム、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-ヘプチルイミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-(3’ヘプチル)イミダゾリニウム、1,3-ジメチル-2-ドデシルイミダゾリニウム、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-メチル-3-エチルイミダゾリウム、1,3-ジメチルベンゾイミダゾリウムが挙げられる。
【0037】
電解液中に含まれる第1塩基成分の濃度は、3.5質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、第1塩基成分の濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0038】
電解液中にアミンが含まれる場合、その濃度は、3.5質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、アミンの濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0039】
電解液中にアミジンが含まれる場合、その濃度は、3.5質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、アミジンの濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0040】
塩基成分は、第1塩基成分以外の第2塩基成分を含んでいてもよい。
【0041】
第2塩基成分としては、例えば、アンモニア、第4級アンモニウム化合物が挙げられる。第2塩基成分の濃度は0.1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また、第2塩基成分の濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0042】
導電性高分子に含まれるドーパントが脱ドープすることを効果的に抑制する観点から、酸成分は、塩基成分より当量比で過剰であることが好ましい。例えば、塩基成分に対する酸成分の当量比は、1~30であることが望ましい。
(高分子成分)
電解液は高分子成分を含んでもよい。高分子成分は、電解液の蒸散抑制および耐電圧向上のために含まれる。
【0043】
高分子成分は特に限定されない。高分子成分としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの誘導体、多価アルコールの水酸基の少なくとも1つがポリアルキレングリコール(誘導体含む)に置換された化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールグリセリルエーテル、ポリエチレングリコールジグリセリルエーテル、ポリエチレングリコールソルビトールエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリセリルエーテル、ポリプロピレングリコールソルビトールエーテル、ポリブチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
上記のポリアルキレングリコールは、共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、あるいは、ランダムブロック共重合体等)であってもよい。例えば、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、エチレングリコールとブチレングリコールとの共重合体、プロピレングリコールとブチレングリコールとの共重合体等が挙げられる。
【0045】
高分子成分の重量平均分子量は200以上が好ましい。溶媒に対する溶解性の観点から、高分子成分の重量平均分子量は20,000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。
【0046】
電解液における高分子成分の濃度は、1質量%以上、15質量%以下が好ましい。高分子成分の濃度がこの範囲であれば、電解液の蒸散が抑制されるとともに、第1酸成分の移動が妨げられない。よって、化成皮膜の自己修復性能が向上する。電解液における高分子成分の濃度は、1質量%以上、10質量%以下がより好ましい。
(固体電解質)
固体電解質は、例えば、マンガン化合物や導電性高分子を含む。導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体などを用いることができる。固体電解質は、ドーパントを含む。より具体的には、固体電解質は、導電性高分子としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、および、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸(PSS)を含むことができる。
【0047】
固体電解質は、モノマーとドーパントとを含有する溶液を化成皮膜に付与し、その場で、化学重合もしくは電解重合させる方法で形成してもよい。ただし、優れた耐電圧特性を期待できる点で、導電性高分子を化成皮膜に付与する方法により、固体電解質を形成することが好ましい。すなわち、固体電解質は、液状成分と、液状成分に分散する導電性高分子とドーパントとを含む高分子分散体を、化成皮膜に含浸させた後、液状成分を揮発させることにより形成されたものであることが好ましい。
【0048】
高分子分散体に含まれる導電性高分子の濃度は、0.5~10質量%であることが好ましい。また、導電性高分子の平均粒径D50は、例えば0.01~0.5μmであることが好ましい。ここで、平均粒径D50は、動的光散乱法による粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。
(化成電圧Vおよび定格電圧Vw)
厚みTの化成皮膜を形成するために陽極体に印加される化成電圧Vと、電解コンデンサの定格電圧Vwとの比:V/Vwは、1.7以下である。V/Vwは、1.6以下であってもよい。リーク電流の増大抑制の観点から、V/Vwは、1.4以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。
【0049】
化成電圧Vは特に限定されず、定格電圧Vwに応じて、V/Vwが1.7以下になるように、適宜設定すればよい。化成皮膜の厚みTは、化成電圧Vに比例して増加する。例えば、化成電圧Vが17ボルトの場合、化成皮膜の厚みTは24nmになる。化成電圧Vが170ボルトの場合、化成皮膜の厚みTは238nmになる。言い換えれば、化成皮膜の厚みTが238nmの場合、陽極体に印加された、あるいは必要な化成電圧Vは、170ボルトである。
【0050】
定格電圧Vwも特に限定されないが、100V以下(すなわち、化成皮膜の厚みTが238nm以下)の場合に、本発明の効果が特に発揮され易い。特に、化成皮膜がさらに薄くなる70ボルト以下の定格電圧Vwの場合、本発明の効果はさらに発揮される。
【0051】
以下、本発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0052】
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、
図2は、同電解コンデンサに係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図である。
【0053】
電解コンデンサは、例えば、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A、14Bと、リード線とコンデンサ素子10の電極とを接続するリードタブ15A、15Bと、電解液(不図示)とを備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12にかしめるようにカール加工されている。
【0054】
コンデンサ素子10は、
図2に示すような巻回体から作製される。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極体21と、リードタブ15Bと接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。巻回体は、陽極体21と陰極体22との間に固体電解質が形成されていない半製品である。
【0055】
陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、
図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
【0056】
陽極体21は、表面が凹凸を有するように粗面化された金属箔を具備し、凹凸を有する金属箔上に化成皮膜が形成されている。化成皮膜の表面の少なくとも一部に、固体電解質が付着している。固体電解質は、陰極体22の表面および/またはセパレータ23の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。固体電解質が形成されたコンデンサ素子10は、電解液とともに有底ケース11に収容される。
≪電解コンデンサの製造方法≫
以下、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
(i)化成皮膜を有する陽極体21を準備する工程
まず、陽極体21の原料である金属箔を準備する。金属の種類は特に限定されないが、化成皮膜の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
【0057】
次に、金属箔の表面を粗面化する。粗面化により、金属箔の表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、金属箔をエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
【0058】
次に、粗面化された金属箔の表面に、厚みTの化成皮膜を形成する。形成方法は特に限定されないが、金属箔を化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬し、熱処理する。また、金属箔を化成液に浸漬し、電圧を印加してもよい。
【0059】
通常、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(金属箔)に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極体21が準備される。
(ii)陰極体22を準備する工程
陰極体22には、陽極体21と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陰極体22の表面を粗面化してもよい。
【0060】
また、陰極体22の表面にチタンやカーボンを含む層を形成してもよい。
(iii)巻回体の作製
次に、陽極体21、陰極体22およびセパレータ23を用いて、
図2に示すよう
な巻回体を作製する。最外層に位置する陰極体22の端部を巻止めテープ24で固定する。陽極体21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合、陽極体21の裁断面に化成皮膜を設けるために、巻回体に対し、さらに化成処理を行ってもよい。セパレータ23としては、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
(iv)コンデンサ素子10を形成する工程
次に、巻回体に含まれる化成皮膜の表面に固体電解質を付着させ、コンデンサ素子10が作製される。固体電解質が導電性高分子を含む場合、重合液を用いて、その場で化学重合もしくは電解重合により合成した導電性高分子を、化成皮膜に付着させてもよい。重合液は、モノマーもしくはオリゴマー、ドーパントなどを含有する溶液である。化学重合の場合、重合液に酸化剤が添加される。また、予め合成された導電性高分子を化成皮膜に付着させてもよい。モノマーやオリゴマーには、ピロール、アニリン、チオフェン、これらの誘導体などが用いられる。
【0061】
予め合成された導電性高分子としては、高分子分散体を用いることが好ましい。高分子分散体は、液状成分と、液状成分に分散する導電性高分子と、ドーパントと、を含む。高分子分散体を化成皮膜の表面に付与する方法としては、例えば、巻回体を高分子分散体に含浸させ、乾燥させる方法が簡易で好ましい。高分子分散体は、導電性高分子としてPEDOTを含み、ドーパントとしてPSSを含むことが好ましい。
【0062】
高分子分散体を化成皮膜の表面に付与する工程と、巻回体を乾燥させる工程とは、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、化成皮膜に対する固体電解質の被覆率を高めることができる。
(v)コンデンサ素子10に電解液を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、電解液を含浸させる。コンデンサ素子10に電解液を含浸させる方法は特に限定されない。
(vi)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。その後、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、
図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
【0063】
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る電解コンデンサについて説明する。第2の実施形態による電解コンデンサは、第1酸成分として、有機酸と無機酸との複合化合物およびその誘導体のうち少なくとも1種を含む点を除き、第1の実施形態と同様の構成を有するので、重複する内容については説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、第1酸成分としての複合化合物が、ボロジサリチル酸、ボロジグリコール酸、及びボロジシュウ酸からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0065】
電解液に含まれる溶質の濃度、つまり、第1酸成分を含む酸成分と塩基成分との合計の濃度を、10質量%以上、40質量%未満にする。溶質の濃度は、15質量%以上、35質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上、35質量%以下であることが特に好ましい。第1酸成分として複合化合物を用いた場合、電解液中での解離度が高いため、溶質の濃度が10質量%以上であっても第1の実施形態と同様に第1酸成分が陽極体の欠陥付近まで到達し易くなり、化成皮膜の自己修復性能を向上できる。また、複合化合物は耐熱性に優れるため複合化合物を含む電解液はpHを保ち易く、導電性高分子からの脱ドープを抑制できるのでESRを維持できる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
定格電圧Vw:25ボルト、定格静電容量33μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ10mm×L(長さ)10mm)を以下の要領で作製した。
(陽極体の準備)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。粗面化されたアルミニウム箔の表面を化成処理して化成皮膜を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、アルミニウム箔に40ボルトの電圧を印加して行った。その後、アルミニウム箔を6mm×120mmに裁断して陽極体を準備した。V/Vwを1.6とした。化成皮膜の厚みTは55nmであった。
(陰極体の準備)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を6mm×120mmに裁断して陰極体を準備した。
(巻回体の作製)
陽極体および陰極体に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、リードタブを巻き込みながら陽極体と陰極体とをセパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部に陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。得られた巻回体に再度化成を行い、陽極体の切断された端部に化成皮膜を形成した。巻回体の外側表面の端部は巻止めテープで固定した。
(高分子分散体の調製)
3,4-エチレンジオキシチオフェンと、ポリスチレンスルホン酸(PSS、重量平均分子量10万)とを、イオン交換水に溶かし、混合溶液を調製した。混合溶液を撹拌しながら硫酸鉄(III)(酸化剤)を添加し、重合反応を行った。その後、反応液を透析し、
未反応モノマーおよび酸化剤を除去し、約5質量%のPSSがドープされたポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)を含む高分子分散体を得た。
(固体電解質の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、高分子分散体に巻回体を5分間浸漬し、その後、高分子分散体から巻回体を引き上げた。次に、高分子分散体を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、化成皮膜の少なくとも一部を被覆する固体電解質を形成した。
(電解液の含浸)
溶媒としてγ-ブチロラクトン(γBL)およびスルホランを準備した。この溶媒に、第1酸成分としてo-フタル酸を、第1塩基成分としてトリエチルアミンを、合計で19質量%の濃度、当量比(当初の当量比)1で溶解させた。上記で得られた溶液に、PEG(重量平均分子量300)を10質量%の濃度で溶解させた。最後に、o-フタル酸を12質量%追加するとともに、ピロガロール3質量%を加えて、電解液のpHを3.5にして、電解液を調製した。減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液にコンデンサ素子を5分間浸漬した。なお、各成分の濃度は、いずれも得られる電解液の質量を100%とした場合の割合である。酸成分の濃度は、28.2質量%であり、塩基成分の濃度は、5.8質
量%であった。
(コンデンサ素子の封止)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、
図1に示すような電解コンデンサ(A1)を完成させた。その後、定格電圧Vwを印加しながら、95℃で90分のエージングを行った。
<評価>
コンデンサA1について、エージング後および2500時間後の静電容量およびESRを測定した。2500時間後の値をエージング後の値で除して、変化率を算出した。結果を表1に示す。
《実施例2~5》
PEGの濃度を表1に示すように変えたこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA2~A5を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
《比較例1》
第1酸成分と第1塩基成分との当初の当量比を変えずに、当初の溶質濃度を10質量%としたこと、追加のo-フタル酸の濃度を4質量%にしたこと、および、ピロガロールを添加しなかった(溶質の合計の濃度を14質量%にした)こと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサB1を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。酸成分の濃度は、10.9質量%であり、塩基成分の濃度は、3.1質量%であった。
《比較例2》
化成電圧Vを45ボルトにして、V/Vwを1.8としたこと以外、比較例1と同様にして、電解コンデンサB2を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
《実施例6》
追加のo-フタル酸(12質量%)に替えて、ピロメリット酸4質量%およびピロガロール5質量%を加えたこと、および、PEGの濃度を15質量%にしたこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA6を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
《実施例7》
第1酸成分と第1塩基成分との当初の当量比を変えずに、当初の溶質濃度を12質量%としたこと、および、ピロガロールに替えて、ピロメリット酸を3質量%添加したこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA7を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
《実施例8》
第1酸成分と第1塩基成分との当初の当量比を変えずに、当初の溶質濃度を10質量%としたこと、および、ピロガロールを添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA8を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
《実施例9》
追加のo-フタル酸の濃度を6質量%にしたこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA9を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
《実施例10》
第1酸成分と第1塩基成分との当初の当量比を変えずに、当初の溶質濃度を25質量%としたこと、追加のo-フタル酸の濃度を10質量%にしたこと、および、ピロガロールの濃度を5質量%にしたこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA10を作製し、同様に評価した。結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
《実施例11》
化成電圧Vを35ボルトにして、V/Vwを1.4としたこと、および、ピロガロールを添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA11を作製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
《比較例3》
化成電圧Vを35ボルトにして、V/Vwを1.4としたこと以外、比較例1と同様にして、電解コンデンサB3を作製し、同様に評価した。結果を表3に示す。
【0070】
【0071】
《実施例12》
第1塩基成分としてトリエチルアミンに替えて、アミジンである1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムを用いたこと、および、第1酸成分と第1塩基成分との当初の当量比を変えずに、当初の溶質濃度を14質量%としたこと以外、実施例1と同様にして、電解コンデンサA12を作製し、同様に評価した。結果を表4に示す。酸成分の濃度は、22.2質量%であり、塩基成分の濃度は、6.8質量%であった。
《実施例13》
PEGを添加しなかったこと以外、実施例12と同様にして、電解コンデンサA13を作製し、同様に評価した。結果を表4に示す。
【0072】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、固体電解質と電解液とを具備する、ハイブリッド型の電解コンデンサに適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ