IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社大林組の特許一覧 ▶ 大裕株式会社の特許一覧

特許7336701制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム
<>
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図1
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図2
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図3
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図4
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図5
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図6
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図7
  • 特許-制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230825BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E02F9/20 N
H04Q9/00 351
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019131926
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021017689
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】吉本 達也
(72)【発明者】
【氏名】森 直樹
(72)【発明者】
【氏名】古屋 弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】野村 光寛
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-089559(JP,A)
【文献】特開2012-073708(JP,A)
【文献】特開2017-218790(JP,A)
【文献】特開2004-019127(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111384(WO,A1)
【文献】特開平09-256407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を自動制御するための第一制御信号を出力する自動操作装置と、
前記建設機械を手動制御するための第二制御信号を出力する手動操作装置と、
前記建設機械に前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方を出力する操作制御管理装置とを含み、
前記操作制御管理装置は、
前記第一制御信号と、前記第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械へ出力する切替部と、
を備え
前記判定部は、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きいかおよび、前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きいかを判定し、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きい場合、または前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きい場合に、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定する
制御システム。
【請求項2】
前記切替部は、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定した場合に、前記第二制御信号を優先して前記建設機械の制御装置へ出力する
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記切替部は、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号ではないと判定した場合に、前記第一制御信号を優先して前記建設機械の制御装置へ出力する、または、前記第二制御信号の前記制御装置への出力を停止する
請求項1または請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記判定部は、前記第二制御信号を所定時間以上、継続して取得した場合に、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する
請求項1から請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記第一制御信号と前記第二制御信号の偏差が所定の偏差閾値以上あると判定した場合に、前記第一制御信号から前記第二制御信号の切り替えにおいて前記建設機械の動作の不連続性または動作の安定性を抑制するための値を前記第二制御信号へ乗じる
請求項1から請求項の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
建設機械を自動制御する自動操作装置から出力された第一制御信号と、前記建設機械を手動制御する手動操作装置から出力された第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力する切替部と、
を備え
前記判定部は、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きいかおよび、前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きいかを判定し、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きい場合、または前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きい場合に、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定する
操作制御管理装置。
【請求項7】
建設機械を自動制御するための第一制御信号と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号とを取得し、
前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定し、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力し、
前記判定において、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きいかおよび、前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きいかを判定し、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きい場合、または前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きい場合に、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定する
操作制御管理方法。
【請求項8】
建設機械を自動制御するための第一制御信号と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号とを取得するステップと、
前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力するステップと、
を実行し、
前記判定するステップにおいて、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きいかおよび、前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きいかを判定し、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散が所定の第一分散閾値より大きい場合、または前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散が所定の第二分散閾値より大きい場合に、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定するステップを実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、作業員の労力軽減や作業員不足の解消、また、地盤の状態が悪いなど、危険な状況を有する現場における作業員の安全確保を目的として、建設機械の自動制御や遠隔制御を用いた建設作業が行われる。関連する技術として、運転の操作の精度を向上させる技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3835222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような建設現場で利用される建設機械の操作精度を高める技術が求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決する制御システム、操作制御管理装置、操作制御管理方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、制御システムは、建設機械を自動制御するための第一制御信号を出力する自動操作装置と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号を出力する手動操作装置と、前記建設機械に前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方を出力する操作制御管理装置とを含み、前記操作制御管理装置は、前記第一制御信号と、前記第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械へ出力する切替部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、操作制御管理装置は、建設機械を自動制御する自動操作装置から出力された第一制御信号と、前記建設機械を手動制御する手動操作装置から出力された第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力する切替部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、操作制御管理方法は、建設機械を自動制御するための第一制御信号と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定し、前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力することを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、建設機械を自動制御するための第一制御信号と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号とを取得するステップと、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定するステップと、前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力するステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建設現場で利用される建設機械の操作精度を高める技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態による制御システムの構成を示す第一のブロック図である。
図2】本実施形態による制御システムの構成を示す第二のブロック図である。
図3】本実施形態による操作制御管理装置のハードウェア構成図である。
図4】本実施形態による操作制御管理装置の機能ブロック図である。
図5】本実施形態による操作制御管理装置の処理フローを示す第一の図である。
図6】本実施形態による操作制御管理装置の処理フローを示す第二の図である。
図7】本実施形態による操作制御管理装置の最小構成を示す図である。
図8】本実施形態による最小構成の操作制御管理装置による処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による操作制御管理装置を説明する。
図1は、同実施形態による操作制御管理装置を含む制御システムの構成を示す第一のブロック図である。この図で示すように、制御システム100は、操作制御管理装置1、建設機械2、自動操作装置3、遠隔操作装置4を備える。操作制御管理装置1は、建設機械2と通信接続する。また、操作制御管理装置1は、自動操作装置3、遠隔操作装置4とも通信接続する。
【0013】
図2は、制御システムの構成を示す第二のブロック図である。
建設機械2は、制御装置21とアクチュエータ22とを含んで構成される。
自動操作装置3は、建設機械2を自動制御するための第一制御信号を操作制御管理装置1へ送信する。遠隔操作装置4は、手動操作装置の一態様であり、建設機械2を手動制御する第二制御信号を操作制御管理装置1へ送信する。そして、操作制御管理装置1は、第一制御信号と第二制御信号の何れか一方を選択し、建設機械2の制御装置21へ出力する。これにより、制御装置21は、建設機械2を駆動するアクチュエータ22などの駆動機構の動きを制御する。なお、図2の制御システム100の構成によれば、操作制御管理装置1が建設機械2の外部に設けられる態様を示しているが、操作制御管理装置1は建設機械2に備わるものであってよい。同様に、自動操作装置3も建設機械2の外部に設けられる態様を示しているが、自動操作装置3も建設機械2に備わるものであってもよい。なお、以降の説明において、第一制御信号と第二制御信号とを区別しない場合には、単に制御信号と記載する。また、図2の制御システム100の構成によれば、制御装置21とアクチュエータ22はそれぞれ1つずつ設けられる態様を示しているが、アクチュエータは複数あってもよい。例えば、建設機械2が油圧ショベルであれば、旋回、ブーム、アーム、バケット、左走行、右走行、の6つのアクチュエータを備える。アクチュエータは複数備わる場合、制御装置21は、それぞれのアクチュエータの動きを制御する。
【0014】
図3は、操作制御管理装置のハードウェア構成図である。
図3で示すように、操作制御管理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、通信モジュール104等の各ハードウェアを備えたコンピュータである。なお、制御装置21、自動操作装置3、遠隔操作装置4も、同様のハードウェア構成を備えたコンピュータである。
【0015】
図4は、操作制御管理装置の機能ブロック図である。
操作制御管理装置1は、予め記憶する操作制御プログラムを実行する。これにより操作制御管理装置1は、制御部11、取得部12、判定部13、切替部14の各機能を発揮する。
制御部11は、各機能部を制御する。
取得部12は、制御信号を取得する。具体的には、取得部12は、自動操作装置3から出力された第一制御信号と、遠隔操作装置4から出力された第二制御信号とを受信する。取得部12は、制御信号を所定の時間以上継続して受信した場合に、当該制御信号を取得したと判定する。前記所定の時間は、第一制御信号と第二制御信号とで個別に設定してもよい。
なお、取得部12は、受信した制御信号に応じて、制御信号を取得したか否かを判定しても良い。例えば、取得部12は、受信した制御信号が示す値が、所定の値より大きい場合に、制御信号を取得したと判定する。取得部12は、受信した制御信号が示す値が所定の値より小さい場合には、制御信号を取得していないと判定する。なお、制御信号が示す値とは、制御信号に含まれる建設機械2を駆動するアクチュエータ22の操作量であり、例えば、建設機械2が油圧ショベルであれば、旋回、ブーム、アーム、バケット、左走行、右走行、に対する操作量などである。
【0016】
判定部13は、第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であるか否かを判定する。具体的には、判定部13は、第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散に基づいて、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であると判定する。または、判定部13は、第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散に基づいて、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であると判定する。なお、判定部13は、第二制御信号を所定時間以上継続して取得した場合をトリガに、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であるか否かを判定してもよい。
【0017】
切替部14は、制御装置21へ入力する制御信号を選択する。切替部14は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であると判定した場合に、第二制御信号を優先して建設機械2の制御装置21へ出力する。一方、切替部14は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではないと判定した場合に、第一制御信号を優先して建設機械2の制御装置21へ出力する。なお、切替部14は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではないと判定した場合に、第二制御信号の制御装置21への出力を停止してもよい。
【0018】
このような操作制御管理装置1によれば、建設現場で利用される建設機械の操作精度を高めることができる。以下、操作制御管理装置1の処理の詳細について説明する。
【0019】
なお、以降の説明において、第一制御信号と第二制御信号とを区別しない場合には、単に制御信号と記載する。
【0020】
図5は、操作制御管理装置の処理フローを示す第一の図である。
図6は、操作制御管理装置の処理フローを示す第二の図である。
操作制御管理装置1の取得部12は、自動操作装置3から第一制御信号を取得したか否かを判定する(ステップS101)。また、取得部12は、遠隔操作装置4から第二制御信号を取得したか否かを判定する(ステップS102)。取得部12は自動操作装置3から取得した第一制御信号と、遠隔操作装置4から取得した第二制御信号とを判定部13へ出力する。
【0021】
判定部13は、第一制御信号と第二制御信号とを共に取得している場合には、それら制御信号を取得してからタイマを作動してタイマの値が所定時間に達したか否かを判定した後、何れか優先度の高い制御信号を出力するよう切替部14へ指示する。切替部14は、出力を指示された第一制御信号または第二制御信号を制御装置21へ出力する。以下、判定部13が、遠隔操作装置4から取得した第二制御信号が第一制御信号より優先度が高い場合について説明する。
【0022】
判定部13は、第一制御信号を取得し、第二制御信号を取得していないと判定した場合には、第一制御信号を取得してからタイマを作動した後、タイマの値が所定時間に達したか否かを判定する(ステップS103)。所定時間は、例えば1ミリ秒などの時間であってもよい。判定部13は、第一制御信号を取得してからタイマを作動してタイマの値が所定時間に達した場合には、第一制御信号を出力するよう切替部14へ指示する。切替部14は、第一制御信号を制御装置21へ出力する(ステップS104)。
【0023】
判定部13は、第二制御信号を取得し、第一制御信号を取得していないと判定した場合には、第二制御信号を取得してからタイマを作動した後、タイマの値が所定時間に達したか否かを判定する(ステップS105)。この所定時間も、例えば1ミリ秒などの時間であってもよい。判定部13は、第二制御信号を取得してからタイマを作動してタイマの値が所定時間に達した場合には、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であるか否かを判定する(ステップS106)。判定部13は第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であると判定した場合、第二制御信号を出力するよう切替部14へ指示する。切替部14は、第二制御信号を制御装置21へ出力するよう切り替える(ステップS107)。
【0024】
通常、人が建設機械2を遠隔操作する遠隔操作装置4に備わる操作レバーを操作する場合、人の感覚により微妙に操作レバーを揺らしながら建設機械2のアクチュエータ22の駆動範囲を調整する。従って、人が操作している場合には第二制御信号が示す値は変動し、その値の単位時間当たりの分散σ1は大きくなる。一方で、遠隔操作装置4の操作レバーに何等かの物が当たり、操作レバーが基準位置から操作入力位置に動き、その状態で止まった場合、遠隔操作装置4は、操作量の変動が無い、または、小さい第二制御信号を操作制御管理装置1へ出力する。従って、人が操作していない場合の一例としては、第二制御信号が示す値の変動は無いか小さく、その値の単位時間当たりの分散σ1は小さくなる。例えば、急な体調不良により、遠隔操作装置4を操作する人が、操作レバーに体を覆いかぶせて倒れたとする。このような場合には、操作制御管理装置1は値の一定な第二制御信号を取得することとなり、判定部13は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではないと判定することができる。
【0025】
この処理を行う為に、上述のステップS106においては、判定部13は、第二制御信号を取得している間、当該第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散σ1を算出する。判定部13は、分散σ1が分散閾値σaよりも大きいか否かを判定する(ステップS161)。判定部13は分散σ1が分散閾値σaよりも大きい場合に、当該第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であると判定する(ステップS162)。
【0026】
また通常、人が建設機械2を遠隔操作する遠隔操作装置4に備わる操作レバーを操作する場合、人の感覚により微妙に操作レバーを揺らしながら建設機械2のアクチュエータ22の駆動範囲を調整する。従って、人が操作している場合であって、駆動範囲を増加または減少させる場合には、第二制御信号の時間変化に応じた(単位時間当たりの)変位の分散σ2は大きくなる。一方で、遠隔操作装置4の操作レバーに何等かの物が当たり、操作レバーが基準位置から操作入力位置に動いて、その入力位置に物が与える力が線型的に徐々に変化した場合、遠隔操作装置4は時間変化に応じた変位の無い、または少ない第二制御信号を操作制御管理装置1へ出力する。従って、人が操作していない場合の一例としては、第二制御信号の値の時間経過に応じた変位は無いか少なく、当該時間経過に応じた変位の分散σ2は小さくなる。一方、遠隔操作装置4に物があたり、その物が徐々に操作レバーの位置を大きく変化させ続けるような場合には、操作制御管理装置1は値の時間経過に応じた変位が一定な第二制御信号を取得することとなり、判定部13は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではないと判定することができる。
【0027】
この処理を行う為に、判定部13は、第二制御信号を取得している間、当該第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散σ2を算出してもよい。時間経過に応じた変位は、例えば単位時間当たりの変位であり、単位時間における第二制御信号が示す値の傾き(増加量)である。判定部13は、分散σ2が変位の分散閾値σbよりも大きいか否かを判定する(ステップS163)。判定部13は、変位の分散σ2が変位の分散閾値σbよりも大きい場合、当該第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号であると判定する(ステップS162)。判定部13は、ステップS162において分散σ1が分散閾値σaであると判定した場合、または、ステップS163において変位の分散σ2が変位の分散閾値σb以下であると判定した場合には、当該第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではないと判定する(ステップS164)。
なお、ステップS161の判定とステップS163の判定は、両方行ってもよいし、一方のみを行ってもよい。また、上述の処理では、ステップS161の判定の後にステップS163の判定を行っているが、この判定の順序は逆であってもよい。
【0028】
判定部13は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではないと判定した場合、切替部14に第二制御信号の出力を停止するよう指示する。切替部14は、第二制御信号の出力を停止して、第一制御信号を制御装置21へ出力するよう切り替える(ステップS104)。この時、操作制御管理装置1が第一制御信号を取得していない場合には、制御装置21への制御信号の出力は停止する。
【0029】
このような処理により、操作制御管理装置1は、第二制御信号が人の操作により遠隔操作装置4から出力された信号ではない異常な信号と判定した場合には、第二制御信号の出力を停止することができる。これにより、建設現場で利用される建設機械の操作精度を高めることができる。
【0030】
なお上述の処理において、遠隔操作装置4が第二制御信号を操作制御管理装置1に出力しているが、遠隔操作装置4が制御システム100に備わらず、建設機械2に備わる手動操作装置が、第二制御信号を操作制御管理装置1に出力するものであってよい。この場合も操作制御管理装置1は、上述の処理において説明した遠隔操作装置4から出力される第二制御信号の代わりとして、手動操作装置から出力された第二制御信号を取得して、同様の処理を行ってよい。
【0031】
上述の処理において、操作制御管理装置1の判定部13は、制御信号を解析し、当該制御信号に基づいて、異常な動作を示す制御信号であると判定した場合には、さらに、制御装置21への制御信号の出力を停止するようにしてもよい。
【0032】
例えば、遠隔操作装置4から取得した第二制御信号を解析して、前後の第二制御信号が示す駆動方向が全く逆方向である場合には、その第二制御信号の制御装置21への出力を停止するようにしてもよい。または、判定部13は、機械学習を用いて第二制御信号が異常な状態である場合の値の変化を検出する学習モデルを生成し、新たに取得した第二制御信号を当該学習モデル入力した際に、異常な状態であることを示す情報が出力された場合に、制御装置21への制御信号の出力を停止するようにしてもよい。
【0033】
また、例えば、判定部13は、第一制御信号を制御装置21へ出力している状態から、第二制御信号を制御装置21へ出力する状態へ切り替える際に、第一制御信号が示す値と、第二制御信号が示す値の偏差が大きい場合、異常と判定してよい。偏差が大きな場合は、建設機械2の動作は不連続、不安定な動作となり、建設機械2の安全性や安定性を逸するおそれがある。従って、判定部13は、第一制御信号の出力から第二制御信号の出力に切り替える際に、各制御信号の値の偏差が所定の閾値以上の場合には、第二制御信号が示す値にゲイン特性値を乗じて、制御装置21へ出力するようにしてよい。ゲイン特性値は、例えば、遠隔操作装置4を操作する人物の過去の操作レバーによる操作入力の特性を指標として、第二制御信号を補正する情報であり、予め当該人物の過去の操作入力に基づいて算出したゲイン特性値算出式を用いて、算出した値であってよい。判定部13はゲイン特性値の代わりに、遠隔操作装置4を操作する人物の過去の操作レバーによる操作入力の特性を指標として、算出できる制御装置21の時定数を算出して、これにより第二制御信号の出力に時定数を適用して制御装置21へ出力するようにしてよい。
【0034】
これにより、操作制御管理装置1は、第一制御信号が示す値と、第二制御信号が示す値の偏差が大きい場合に、建設機械2の動作は不連続、不安定な動作となることを抑制することができる。また操作制御管理装置1は、例えば、第一制御信号により自動制御されている建設機械2を素早く手動の遠隔操作に切り替えたい場合、切り替え後の、操作入力の動作(例えば建設機械2のアームの振幅運動)を素早く(高周波で)行えば、制御装置21での応答性は高い状態で第二制御信号による遠隔操作に切り替えることができる。一方で第一制御信号により自動制御されている高速動作する建設機械2の動作を、なだらかに遠隔操作により切替したい場合、切り替え後の、操作入力の動作をゆっくり行えば、制御装置21での応答性は鈍く切り替わる。これにより、自動操作装置3による操作から遠隔操作装置4による操作へ切り替えた際の建設機械2の動作の応答を、遠隔操作装置4を操作する人の意図に従い制御することが可能となる。
【0035】
判定部13は、第二制御信号の出力から第一制御信号の出力に切り替える際に、各制御信号の値の偏差が所定の閾値以上の場合に、第一制御信号に対してゲインを適用したり、時定数を適用したりすることで、第二制御信号による手動の制御から、第一制御信号による自動の制御への切り替え時の不連続、不安定な動作となる現象を抑制してもよい。
【0036】
本実施形態は、制御対象が建設機械2の場合を説明しているが、自動操作装置3や遠隔操作装置4、操作制御管理装置1は、建設機械2の代わりにロボットなどの他の制御対象装置を制御するものであってよい。
【0037】
図7は、本実施形態による操作制御管理装置の最小構成を示す図である。
図8は、本実施形態による最小構成の操作制御管理装置による処理フローを示す図である。
操作制御管理装置1は、判定部13、切替部14を少なくとも備える。
判定部13は、制御対象装置を自動制御する自動操作装置から出力された第一制御信号と、制御対象装置を手動制御する手動操作装置から出力された第二制御信号とを取得し、第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する(ステップS701)。
切替部14は、判定の結果に基づいて、第一制御信号と第二制御信号の何れか一方に切り替えて制御対象装置の制御装置へ出力する(ステップS702)。
【0038】
上述の各装置は内部に、コンピュータシステムを有してよい。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われてよい。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0039】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0040】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0041】
(付記1)
建設機械を自動制御するための第一制御信号を出力する自動操作装置と、
前記建設機械を手動制御するための第二制御信号を出力する手動操作装置と、
前記建設機械に前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方を出力する操作制御管理装置とを含み、
前記操作制御管理装置は、
前記第一制御信号と、前記第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械へ出力する切替部と、
を備える制御システム。
【0042】
(付記2)
前記判定部は、前記第二制御信号が示す値の単位時間当たりの分散に基づいて、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定する
付記1に記載の制御システム。
【0043】
(付記3)
前記判定部は、前記第二制御信号が示す値の時間経過に応じた変位の分散に基づいて、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定する
付記1または付記2に記載の制御システム。
【0044】
(付記4)
前記切替部は、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であると判定した場合に、前記第二制御信号を優先して前記建設機械の制御装置へ出力する
付記1から付記3の何れか一つに記載の制御システム。
【0045】
(付記5)
前記切替部は、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号ではないと判定した場合に、前記第一制御信号を優先して前記建設機械の制御装置へ出力する
付記1から付記4の何れか一つに記載の制御システム。
【0046】
(付記6)
前記切替部は、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号ではないと判定した場合に、前記第二制御信号の前記制御装置への出力を停止する
付記1から付記5の何れか一つに記載の制御システム。
【0047】
(付記7)
前記判定部は、前記第二制御信号を所定時間以上、継続して取得した場合に、前記第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する
付記1から付記6の何れか一つに記載の制御システム。
【0048】
(付記8)
遠隔に設けられた前記手動操作装置から前記第二制御信号を取得する取得部と、
を備える付記1から付記7の何れか一つに記載の制御システム。
【0049】
(付記9)
前記判定部は、前記第一制御信号と前記第二制御信号の偏差が所定の偏差閾値以上あると判定した場合に、前記第一制御信号と前記第二制御信号との切り替えにおける前記建設機械の動作の不連続性または安定性を抑制する
付記1から付記8の何れか一つに記載の制御システム。
【0050】
(付記10)
建設機械を自動制御する自動操作装置から出力された第一制御信号と、前記建設機械を手動制御する手動操作装置から出力された第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力する切替部と、
を備える操作制御管理装置。
【0051】
(付記11)
制御対象装置を自動制御する自動操作装置から出力された第一制御信号と、前記制御対象装置を手動制御する手動操作装置から出力された第二制御信号とを取得し、前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により前記手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記制御対象装置の制御装置へ出力する切替部と、
を備える操作制御管理装置。
【0052】
(付記12)
建設機械を自動制御するための第一制御信号と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号とを取得し、
前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定し、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力する
操作制御管理方法。
【0053】
(付記13)
建設機械を自動制御するための第一制御信号と、前記建設機械を手動制御するための第二制御信号とを取得するステップと、
前記第二制御信号の状態に基づいて、当該第二制御信号が人の操作により手動操作装置から出力された信号であるか否かを判定するステップと、
前記判定の結果に基づいて、前記第一制御信号と前記第二制御信号の何れか一方に切り替えて前記建設機械の制御装置へ出力するステップと、
を実行するためのプログラム。
【符号の説明】
【0054】
1・・・操作制御管理装置
2・・・建設機械(制御対象装置)
3・・・自動操作装置
4・・・遠隔操作装置(手動操作装置)
11・・・制御部
12・・・取得部
13・・・判定部
14・・・切替部
21・・・制御装置
22・・・アクチュエータ
100・・・制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8