(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ダクト、盤システム、及び施工方法
(51)【国際特許分類】
H02B 1/20 20060101AFI20230825BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20230825BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H02B1/20 N
H02B1/40 D
H02B1/40 B
H02B3/00 D
H02B3/00 E
(21)【出願番号】P 2019155015
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-04-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】南平 智志
(72)【発明者】
【氏名】安田 和弘
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-050456(JP,A)
【文献】特開平08-168116(JP,A)
【文献】特開2017-107833(JP,A)
【文献】特開2011-036036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/20
H02B 1/40
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の天井と盤装置との間において、前記天井から前記盤装置に向かう電線の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される筒状のダクトボディ
と、
前記ダクトボディと前記天井との隙間を塞ぐように調整可能なアジャスタと、
前記ダクトボディの周方向における一面を覆うダクトパネルと、
を備え、
前記ダクトボディは、前記一面が上下方向の全長にわたって開放可能となっていて、
前記ダクトパネルは、前記一面に沿って、少なくとも第1パネル及び第2パネルに分割されていて、
前記アジャスタは、前記一面の側から見て、前記第1パネル及び前記第2パネルのうちの一方のみと被るように配置される、
ダクト。
【請求項2】
施設の天井と盤装置との間において、前記天井から前記盤装置に向かう電線の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される筒状のダクトボディを備え、
前記ダクトボディは、前記ダクトボディの周方向における一面が上下方向の全長にわたって開放可能となっていて、
前記ダクトボディは、前記一面である第1面と、前記電線が通る内部空間に対して前記第1面とは反対側の第2面とを有し、
前記ダクトボディは、前記第1面を正面に向けて設置する第1設置状態、及び前記第2面を正面に向けて設置する第2設置状態のいずれの設置状態においても、前記施設の壁に取り付け可能である、
ダクト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダクトと、
内部に配線用遮断器を有する前記盤装置と、
を備える、
盤システム。
【請求項4】
筒状のダクトボディとアジャスタとダクトパネルとを備えたダクトの施工方法であって、
上下方向の全長にわたって開放可能となっている前記ダクトボディの一面を正面に向けて、施設の天井と盤装置との間に設置する第1工程と、
前記天井から前記盤装置に向かう電線を、開放された前記一面から、前記ダクトボディに通線する第2工程と、
開放された前記一面を前記ダクトパネルで覆う第3工程と、
前記アジャスタで前記ダクトボディと前記天井との隙間を塞ぐように調整する調整工程と、
を含み、
前記ダクトパネルは、前記一面に沿って、少なくとも第1パネル及び第2パネルに分割されていて、
前記調整工程では、前記アジャスタを、前記一面の側から見て、前記第1パネル及び前記第2パネルのうちの一方のみと被るように配置させる、
施工方法。
【請求項5】
筒状のダクトボディを備えたダクトの施工方法であって、前記ダクトボディは、上下方向の全長にわたって開放可能となっている第1面と、電線が通る内部空間に対して前記第1面とは反対側の第2面とを有し、かつ、前記第1面を正面に向けて設置する第1設置状態、及び前記第2面を正面に向けて設置する第2設置状態のいずれの設置状態においても、施設の壁に取り付け可能であり、
前記ダクトボディの前記第1面を正面に向けて、前記施設の天井と盤装置との間に設置するか、前記ダクトボディの前記第2面を正面に向けて、前記天井と前記盤装置との間に設置するか、を選択する選択工程と、
前記選択工程の選択結果に応じて、前記ダクトボディを前記天井と前記盤装置との間に設置する設置工程と、
前記天井から前記盤装置に向かう前記電線を、前記第1面から前記ダクトボディに通線する通線工程と、
を含む、
施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ダクト、盤システム、及び施工方法に関する。より詳細には、本開示は、施設の天井と盤装置との間におけるダクト、当該ダクトを備える盤システム、及びダクトの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に主幹ブレーカ、及び複数の分岐ブレーカが収容されるケース本体を備えた分電盤が記載されている。この分電盤のケース本体には、枠部から上側面部にかけて連続的に形成されたU字状の配線溝が設けられている。またこの分電盤には、配線溝の形成部位を閉塞するようにケース本体に着脱自在に着取される目隠し部材が設けられている。この目隠し部材により分電盤への入線部分を隠すことで、外観の低下を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、施設に設置される分電盤(盤装置)から施設の天井までの間に隙間が形成される可能性がある。天井裏側から引き下ろされて盤装置に入線される電線がこの隙間から露出することを抑制するために、ダクトを設置する場合がある。この場合、ダクトへの電線の通線作業が必要となり、天井(面)の仕上がり状況や盤装置の設置状況によっては、通線作業を容易に行いにくい可能性がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、電線の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる、ダクト、盤システム、及び施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のダクトは、筒状のダクトボディと、アジャスタと、ダクトパネルと、を備える。前記ダクトボディは、施設の天井と盤装置との間において、前記天井から前記盤装置に向かう電線の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される。前記アジャスタは、前記ダクトボディと前記天井との隙間を塞ぐように調整可能である。前記ダクトパネルは、前記ダクトボディの周方向における一面を覆う。前記ダクトボディは、前記一面が上下方向の全長にわたって開放可能となっている。前記ダクトパネルは、前記一面に沿って、少なくとも第1パネル及び第2パネルに分割されている。前記アジャスタは、前記一面の側から見て、前記第1パネル及び前記第2パネルのうちの一方のみと被るように配置される。
本開示の別の一態様のダクトは、筒状のダクトボディを備える。前記ダクトボディは、施設の天井と盤装置との間において、前記天井から前記盤装置に向かう電線の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される。前記ダクトボディは、前記ダクトボディの周方向における一面が上下方向の全長にわたって開放可能となっている。前記ダクトボディは、前記一面である第1面と、前記電線が通る内部空間に対して前記第1面とは反対側の第2面とを有する。前記ダクトボディは、前記第1面を正面に向けて設置する第1設置状態、及び前記第2面を正面に向けて設置する第2設置状態のいずれの設置状態においても、前記施設の壁に取り付け可能である。
【0007】
本開示の一態様の盤システムは、上記のいずれかのダクトと、内部に配線用遮断器を有する前記盤装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の施工方法は、筒状のダクトボディとアジャスタとダクトパネルとを備えたダクトの施工方法である。前記施工方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、調整工程と、を含む。前記第1工程にて、上下方向の全長にわたって開放可能となっている前記ダクトボディの一面を正面に向けて、施設の天井と盤装置との間に設置する。前記第2工程にて、前記天井から前記盤装置に向かう電線を、開放された前記一面から、前記ダクトボディに通線する。前記第3工程にて、開放された前記一面を前記ダクトパネルで覆う。前記調整工程にて、前記アジャスタで前記ダクトボディと前記天井との隙間を塞ぐように調整する。前記ダクトパネルは、前記一面に沿って、少なくとも第1パネル及び第2パネルに分割されている。前記調整工程では、前記アジャスタを、前記一面の側から見て、前記第1パネル及び前記第2パネルのうちの一方のみと被るように配置させる。
本開示の別の一態様の施工方法は、筒状のダクトボディを備えたダクトの施工方法である。前記ダクトボディは、上下方向の全長にわたって開放可能となっている第1面と、電線が通る内部空間に対して前記第1面とは反対側の第2面とを有し、かつ、前記第1面を正面に向けて設置する第1設置状態、及び前記第2面を正面に向けて設置する第2設置状態のいずれの設置状態においても、施設の壁に取り付け可能である。前記施工方法は、選択工程と、設置工程と、通線工程と、を含む。前記選択工程にて、前記ダクトボディの前記第1面を正面に向けて、前記施設の天井と盤装置との間に設置するか、前記ダクトボディの前記第2面を正面に向けて、前記天井と前記盤装置との間に設置するか、を選択する。前記設置工程にて、前記選択工程の選択結果に応じて、前記ダクトボディを前記天井と前記盤装置との間に設置する。前記通線工程にて、前記天井から前記盤装置に向かう前記電線を、前記第1面から前記ダクトボディに通線する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電線の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るダクトを備える盤システムの、一部が分解された外観斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の盤システムの外観斜視図である。
【
図3】
図3Aは、同上のダクトの上面図である。
図3Bは、同上のダクトの正面図である。
図3Cは、同上のダクトの下面図である。
図3Dは、同上のダクトの右側面図である。
【
図4】
図4Aは、同上のダクトにおけるダクトボディの上面図である。
図4Bは、同上のダクトボディの正面図であり、
図4AのX-X線で切った一部断面図である。
図4Cは、同上のダクトボディの下面図である。
図4Dは、同上のダクトボディの右側面図である。
【
図5】
図5は、同上のダクトの、上方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、同上のダクトボディの、上方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、同上のダクトボディに第1パネルを取り付けた状態の、上方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、同上のダクトボディに第1パネル及びアジャスタを取り付けた状態の、上方から見た斜視図である。
【
図9】
図9A~
図9Cは、同上のアジャスタにおける調整工程を説明するための図である。
【
図10】
図10は、同上のダクトにおける変形例の斜視図である。
【
図11】
図11は、同上のアジャスタにおける変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態に係るダクト2は、
図1に示すように、筒状のダクトボディ20を備えている。ダクトボディ20は、施設の天井100(
図1及び
図2参照)と盤装置1との間において、天井100から盤装置1に向かう電線7(
図1参照)の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される。
【0013】
以下では、施設は、オフィスビルであることを想定する。しかしながら、施設は、オフィスビル以外にも、例えば、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等であってもよい。更に、施設は、非住宅に限らず、戸建の住宅、又は集合住宅(マンション)であってもよい。
【0014】
本開示で言う「盤装置1」は、いわゆる電設盤を想定する。具体的には、盤装置1は、配線が盤に入線する、分電盤、配電盤、端子盤、電灯盤、又は制御盤等に相当する。以下では、盤装置1は、
図1及び
図2に示すように、壁掛け型のものを想定するが、床置き型の自立式のものでもよい。盤装置1は、例えば、内部に(1又は複数の)配線用遮断器6(
図1参照)を有している。
【0015】
以下の説明においては、
図1及び
図2におけるX軸に沿った方向を左右方向とし、X軸の正の向きを右側と規定する。またY軸に沿った方向を前後方向とし、Y軸の正の向きを前側と規定する。さらにZ軸に沿った方向を上下方向とし、Z軸の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、ダクト2の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、
図1及び
図2中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0016】
本実施形態のダクトボディ20は、
図1に示すように、その周方向における一面(第1面201:
図4A参照)が上下方向の全長にわたって開放可能となっている。したがって、ダクト2への電線7の通線作業は、例えば、先にダクトボディ20を盤装置1と天井100との間に設置してから、天井100からの電線7を、ダクトボディ20の開放した状態の一面(第1面201)から通線し、盤装置1に入線することができる。そのため、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0017】
また本実施形態に係る施工方法は、筒状のダクトボディ20を備えたダクト2の施工方法である。施工方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。第1工程にて、上下方向の全長にわたって開放可能となっているダクトボディ20の一面(第1面201)を正面に向けて、施設の天井100と盤装置1との間に設置する。第2工程にて、天井100から盤装置1に向かう電線7を、開放された一面(第1面201)から、ダクトボディ20に通線する。第3工程にて、開放された一面(第1面201)をダクトパネル21(
図1参照)で覆う。
【0018】
この構成によれば、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることが可能なダクト2の施工方法を提供できる。
【0019】
(2)詳細
以下、本実施形態に係るダクト2及びそれを備える盤システム10の全体構成について、
図1~
図11を参照しながら詳しく説明する。
【0020】
(2.1)全体構成
盤システム10は、例えばオフィスビルの施設に適用される。盤システム10は、
図1及び
図2に示すように、ダクト2と盤装置1とを備えている。盤装置1は、その内部に配線用遮断器6を有している。
【0021】
(2.2)盤装置
盤装置1は、キャビネットC1と、キャビネットC1に取り付けられる内器とを備えている。盤装置1は、一例として分電盤であるが、上述の通り、配線が盤に入線するものであれば、特に限定されない。
【0022】
キャビネットC1は、
図1及び
図2に示すように、ボックス3と、保護板4と、前枠5と、を有している。本実施形態では、ボックス3、保護板4、及び前枠5は、金属材料を用いて構成されているが、これらの部材は、金属材料以外の材料を用いて構成されていてもよく、また金属材料と金属材料以外の材料とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0023】
ボックス3は、
図1に示すように、正面視が上下方向に長い長方形状となり前面が開口面31として開口した直方体状の箱体であって、施設の壁101の設置面101Aに設置して使用される。ボックス3は、その内部に少なくとも配線用遮断器6としての主幹ブレーカ61及び複数の分岐ブレーカ62,62…を収納する内器スペース32を有している。
【0024】
具体的には、ボックス3は、矩形板状の背板301と、背板301の左端縁から前方に突出した左側板302と、背板301の右端縁から前方に突出した右側板303とを有している。さらに、ボックス3は、左側板302と右側板303の上端縁同士を連結する上板304と、左側板302と右側板303の下端縁同士を連結する下板とを有している。背板301と左側板302と右側板303と上板304と下板とで囲まれた空間が、内器スペース32を構成する。ボックス3の形状についても適宜変更可能であって、ボックス3は、上下方向に長い縦長形状に限らず、例えば正面視が正方形状となる形状、又は左右方向に長い横長形状であってもよい。
【0025】
ボックス3は、内器スペース32として、主幹ブレーカ61を収納する第1スペース321、及び、複数の分岐ブレーカ62,62…を収納する第2スペース322を有している。第1スペース321は、ボックス3内の上部の領域に位置する。第2スペース322は、第1スペース321より下側の領域に位置する。複数の分岐ブレーカ62,62…は、導電バーの左側と右側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ上下方向に並ぶように配置される。さらにボックス3は、内器スペース32として、リモコンブレーカ又はリモコンリレー等の開閉器を収納するためのスペースを第2スペース322の下側に有してもよい。これらの内器スペース32の配置は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0026】
保護板4は、ボックス3の開口面31を塞ぐように、ボックス3の開口面31に合わせた寸法、形状の矩形板状に形成されている。保護板4は、ボックス3の開口面31の右端部を回転軸として開閉するように、ボックス3に保持されている。これにより、保護板4は、ボックス3の開口面31を覆う位置(
図2に示す位置)と開放する位置(
図1に示す位置)との間で移動することになる。
【0027】
保護板4には、複数の表示窓41が形成されている。各表示窓41は、
図2に示すように保護板4を閉じた状態で、内器スペース32に対応する位置に形成されている。これにより、保護板4を閉じた状態で、利用者は、表示窓41を通して内器(配線用遮断器6)の動作状態を視認可能である。保護板4の左端部には、保護板4を開く際に操作するハンドル42が設けられている。
【0028】
ところで、キャビネットC1においては、ボックス3の上板304に矩形状の孔が形成されることにより、ボックス3の上面35(
図2参照)に開口する通線口36(
図1参照)が形成されている。
【0029】
前枠5は、
図1及び
図2に示すように、ボックス3の上端部の前縁に対して着脱可能に取り付けられる。前枠5は、左右方向に長尺で、かつ通線口36と開口面31とを隔てる部材である。言い換えれば、通線口36は、前方に開放されており、前枠5がボックス3に取り付けられた状態では、通線口36の開放部位が前枠5によって塞がれる。前枠5が取り外された状態では、通線口36は開口面31と連続することになる。なお、
図1では、通線口36の構造をより理解し易くするために、前枠5を一点鎖線で図示している。
【0030】
より具体的には、上板304は、上面視で前方に開放されたC字状に形成されており、その開放部位を塞ぐように前枠5がボックス3に取り付けられる。これにより、上板304と前枠5とで通線口36の四方を囲む枠体が構成されることになる。この枠体のうち通線口36の前方を塞ぐ前枠5が取り外し可能であるから、キャビネットC1は、通線口36が前方に開放されて開口面31につながった状態と、通線口36の開放部位が塞がった状態とを切替可能である。前枠5は、上板304に固定されてもよいし、左側板302及び右側板303に対して固定されてもよい。
【0031】
次に、上述した構成のキャビネットC1に取り付けられる内器について説明する。盤装置1の内器として最小限の構成は、例えば、
図1に示すように、第1スペース321に取り付けられる主幹ブレーカ61及び第2スペース322に取り付けられる複数の分岐ブレーカ62,62…のような、配線用遮断器6である。天井100からの電線7は、配線用遮断器6と電気的に接続される。ここでいう配線用遮断器6には、過電流又は短絡電流が流れたときに電路を遮断する遮断器だけでなく、漏電の発生を検出して電路を遮断する漏電遮断器も含む。
【0032】
主幹ブレーカ61は、その上部に一次側端子を有し、またその下部に二次側端子を有している。主幹ブレーカ61の一次側端子には、系統電源(商用電源)の単相三線式の引込線(電線7に含まれ得る)が電気的に接続される。主幹ブレーカ61の二次側には、上下方向に長い長尺板状であって、導電部材からなる導電バーが電気的に接続される。ここでは、配電方式として単相三線式を想定しているので、導電バーとしては、中性極(N相)の導電バーと、第1の電圧極(L1相)の導電バーと、第2の電圧極(L2相)の導電バーとが設けられている。これら3本の導電バーは、主幹ブレーカ61の下方に配置され、キャビネットC1に固定されている。
【0033】
複数の分岐ブレーカ62,62…は、キャビネットC1の第2スペース322において、導電バーの左側と右側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ上下方向に並ぶように配置されている。各分岐ブレーカ62は、一次側端子と二次側端子とを有しており、一次側端子が導電バーに電気的に接続され、二次側端子には複数の電路の各々が接続される。各分岐ブレーカ62は、協約形寸法に形成されている。ここで協約形寸法とは「JIS C 8201-2-1」に準拠した電灯分電盤用の回路遮断器の寸法(及び形状)をいう。
【0034】
各分岐ブレーカ62は、導電バーが差し込まれる差込口を導電バーとの対向面に有している。差込口は、3本の導電バーの各々に対応するように、各分岐ブレーカ62に3個ずつ設けられており、一次側端子は、これら3個の差込口のうち2個の差込口内に露出するように設けられている。これにより、各分岐ブレーカ62は、キャビネットC1に取り付けられた状態で、差込口に導電バーが差し込まれ、一次側端子が導電バーと電気的に接続される。
【0035】
中性極及び第1の電圧極に接続される分岐ブレーカ62は、一次側端子が中性極の導電バー及び第1の電圧極の導電バーに対応する各差込口内に露出するように設けられている。また中性極及び第2の電圧極に接続される分岐ブレーカ62は、一次側端子が中性極の導電バー及び第2の電圧極の導電バーに対応する各差込口内に露出するように設けられている。第1の電圧極及び第2の電圧極に接続される分岐ブレーカ62は、一次側端子が第1の電圧極の導電バー及び第2の電圧極の導電バーに対応する各差込口内に露出するように設けられている。
【0036】
またリモコンブレーカ又はリモコンリレー等の開閉器は、外部からの制御信号を受けて電路の開閉を行うように構成されている。これらの開閉器は、例えば、照明負荷への電力供給路に挿入され、照明負荷の点灯・消灯の制御に用いられる。
【0037】
(2.3)ダクト
次にダクト2について、主に
図3A~
図8を参照しながら説明する。
【0038】
ダクト2は、ダクトボディ20と、ダクトパネル21と、アジャスタ22と、接地端子24(
図4B及び
図6参照)とを備えている。
【0039】
ダクトボディ20は筒状である。ここではダクトボディ20は角筒状である。ダクトボディ20は、その上面において開口する第1通線口B1を有している(
図6参照)。またダクトボディ20は、その下面において開口する第2通線口B2を有している(
図6参照)。ダクトボディ20は、その軸方向を上下方向に沿うように配置される。
【0040】
ダクトボディ20は、
図4Aに示すように、第1面201と、第2面202とを有している。第1面201は、ここでは前面に相当する。第2面202は、ここでは背面に相当する。つまり、第2面202は、電線7が通る内部空間SP1に対して第1面201とは反対側の面である。第1通線口B1と第2通線口B2とは、内部空間SP1を介して互いに連通する。
【0041】
ダクトボディ20は、天井100(天井面)と盤装置1との間において、天井100から盤装置1に向かう電線7の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される。ダクトボディ20は、その周方向における第1面201が上下方向の全長にわたって開放可能となっている。ここでは第1面201は、内部空間SP1と連通する開口面R1(
図4A参照:開口領域)を含み、その開口面R1が上下方向の全長にわたって開放されている。言い換えると、開口面R1は、正面視において、第1面201よりも面積が小さい。開口面R1は、上下方向の全長にわたって開放されていることで、第1通線口B1及び第2通線口B2と連通している。
【0042】
より具体的には、ダクトボディ20は、
図4A~
図4D及び
図6に示すように、背板20Aと、左右一対の側板(左側板20B及び右側板20C)と、上枠片20Dと、下枠片20Eと、左右一対の側片(左側片20F及び右側片20G)とを有している。ダクトボディ20は、1枚の金属板に対して折り曲げ加工、打ち抜き加工、及び溶接加工等を施すことにより形成されている。ダクトボディ20は、複数枚の金属板を接合することで形成されてもよい。
【0043】
背板20Aは、左右方向に長尺の、矩形の板状である。背板20Aは、その厚み方向が前後方向に沿うように配置される。背板20Aは、左右の両端付近の各々に、厚み方向に貫通する孔部K1(
図6参照)を有している。各孔部K1には、ダクト2を壁101に固定するために壁101に埋め込まれているアンカーボルトが挿通される。ダクト2は、木ねじ等を孔部K1に挿通して壁101に固定されてもよい。
【0044】
接地端子24は、
図6に示すように、背板20Aの前面における、左端下付近に固定されている。接地端子24には、盤装置1の接地線8(
図1参照)が接続され得る。そのため、ダクト2と盤装置1とを同電位に揃えることができる。
【0045】
またダクトボディ20は、
図6に示すように、保持部23を更に有している。保持部23は、ダクトボディ20の内部において電線7を保持するための部位である。保持部23は、長尺の帯板状の金属板に対して折り曲げ加工等を施すことにより形成されている。保持部23は、左右の両端部に対して中央部分が前方に凸となるように屈曲している。保持部23は、その左右の両端部を背板20Aの前面に溶接等によって接合することで、背板20Aに取り付けられている。電線7は、保持部23に対して例えばケーブルタイで止められる。保持部23が設けられていることで、電線7がダクトボディ20の内部をより安定して通線され得る。
【0046】
左側板20B及び右側板20Cは、背板20Aの左右の両縁からそれぞれ前方に突出する。左側板20B及び右側板20Cは、矩形の板状であり、その厚み方向が左右方向に沿うように配置される。左側板20B及び右側板20Cの各々は、上部の後端寄りの位置に、厚み方向に貫通する孔(第2挿通孔H2)を有している(
図4D及び
図6参照)。第2挿通孔H2には、(後述する)アジャスタ22のアジャスタ本体220をダクトボディ20にねじ止めするためのねじP1(
図5参照)が挿通される。
【0047】
上枠片20Dは、背板20Aの上縁、左側板20Bの上縁、及び右側板20Cの上縁から、X-Y平面に沿って内側に向かって突出する。上枠片20Dは、上下方向に沿って見て、前方が開放された矩形枠状である。第1通線口B1は、上枠片20Dの内周縁により構成される。
【0048】
下枠片20Eは、背板20Aの下縁、左側板20Bの下縁、及び右側板20Cの下縁から、X-Y平面に沿って内側に向かって突出する。下枠片20Eは、上下方向に沿って見て、前方が開放された矩形枠状である。下枠片20Eは、上枠片20Dと略同形で略同寸法である。第2通線口B2は、下枠片20Eの内周縁により構成される。また下枠片20Eは、左右の両端部の各々において、厚み方向に貫通する一対の孔部J1(合計4個)を有している(
図6参照)。孔部J1には、ダクト2を盤装置1のボックス3にねじ止め固定するためのねじが挿通される。
【0049】
左側片20F及び右側片20Gは、左側板20B及び右側板20Cの前縁からそれぞれ互いに近づく方向に突出する。左側片20F及び右側片20Gは、上下方向に長尺の矩形の板状であり、それらの厚み方向が前後方向に沿うように配置される。開口面R1は、左側片20Fの右縁と右側片20Gの左縁との間の仮想的な面である。
【0050】
左側片20F及び右側片20Gの各々は、
図6に示すように、厚み方向に貫通する4つの貫通孔を有している。4つの貫通孔は、上下方向に沿って並んでおり、以下では、上から順に第2挿通孔H2、固定孔H3~H5と呼ぶ。第2挿通孔H2、固定孔H3及び固定孔H4は、対応する側片において上下方向における中央よりも上部に配置され、固定孔H5だけが下端部近傍に配置される。
【0051】
これらの左右2つの第2挿通孔H2は、左右2つの固定孔H3と共に、ダクトパネル21の(後述する)第1パネル21Aをダクトボディ20にねじ止めするための2本のねじP1及び2本のねじS1(
図5参照)がそれぞれ挿通される。またこれらの左右2つの第2挿通孔H2は、左側板20B及び右側板20Cの第2挿通孔H2と共に、アジャスタ22をねじ止めするためにも使用される。
【0052】
左右2つの固定孔H4及び左右2つの固定孔H5は、ダクトパネル21の(後述する)第2パネル21Bをダクトボディ20にねじ止めするための4本のねじS2(
図5参照)がそれぞれ挿通される。
【0053】
ダクトパネル21は、ダクトボディ20の第1面201を覆う部材である。ダクトパネル21は、全体として矩形の板状である。ここではダクトパネル21は、ダクトボディ20に対して着脱可能に固定される。具体的には、複数本のねじP1、S1及びS2により、ダクトボディ20に固定される。ダクトパネル21は、ダクトボディ20の第1面201の全域を覆うように構成される。
【0054】
本実施形態のダクトパネル21は、第1面201に沿って、少なくとも第1パネル21A及び第2パネル21B(
図1参照)に分割されている。ここでは一例として、ダクトパネル21は、上下2枚のパネルに分割されている。言い換えると、ダクトパネル21は、第1パネル21A(上側のパネル)及び第2パネル21B(下側のパネル)を有している。
【0055】
第1パネル21A及び第2パネル21Bは、左右方向に長尺の、矩形の板状であり、それらの厚み方向が前後方向に沿うように配置される。第1パネル21A及び第2パネル21Bは、互いの表面が略面一となるように、上下方向に並んでダクトボディ20に固定される。第1パネル21Aの左右方向の寸法は、第2パネル21Bの左右方向の寸法と略等しい。第1パネル21Aの上下方向の寸法は、第2パネル21Bの上下方向の寸法の略半分である。これらの寸法及び形状は、上述のものに限定されず、適宜変更可能である。
【0056】
第1パネル21Aは、左右上下の四隅に、厚み方向に貫通する4つの挿通孔M1を有している(
図1参照)。また第2パネル21Bは、左右上下の四隅に、厚み方向に貫通する4つの挿通孔M2を有している(
図1参照)。第1パネル21Aの4つの挿通孔M1には、第1パネル21Aをダクトボディ20にねじ止め固定するための2本のねじP1及び2本のねじS1が挿通される。特に第1パネル21Aの上側2つの挿通孔M1に挿通される2本のねじP1は、アジャスタ22をダクトボディ20にねじ止め固定するための4本のねじP1のうちの2本に相当する。第2パネル21Bの4つの挿通孔M2には、第2パネル21Bをダクトボディ20にねじ止め固定するための4本のねじS2が挿通される。
【0057】
ダクトパネル21がダクトボディ20に取り付けられることで、開口面R1は塞がれる。この状態において、第1通線口B1の四方は、上枠片20Dの内周縁とダクトパネル21の上縁とによって囲まれる。またこの状態において、第2通線口B2の四方は、下枠片20Eの内周縁とダクトパネル21の下縁とによって囲まれる。その結果、ダクトボディ20の、上下方向の全長にわたって開放されていた第1面201は、非開放状態となる。
【0058】
ダクトパネル21は、ねじP1、S1及びS2を外すことで、ダクトボディ20から脱離させることからできる。つまり、ダクトパネル21は、その少なくとも一部(ここでは全部)がダクトボディ20に対して外せるように構成される。
【0059】
アジャスタ22は、ダクトボディ20と天井100(天井面)との隙間G1(
図9A~9C参照)を塞ぐように調整可能に構成される。つまり、ダクトボディ20が天井100と盤装置1との間に配置された状態で、依然として小さな隙間G1が生じる場合があり、アジャスタ22は、その隙間G1を埋めるように構成される。
【0060】
アジャスタ22は、アジャスタ本体220と、4本のねじP1とを備えている。アジャスタ本体220は、1本の帯板状の金属板に対して折り曲げ加工及び打ち抜き加工等を施すことにより形成されている。アジャスタ本体220は、上下方向に沿って見て、盤ユニット11の縁に沿ったU字状である。本開示で言う盤ユニット11は、
図1に示すように、ダクトボディ20と盤装置1とから構成される。つまり、ダクトボディ20は、盤ユニット11の一部として適用される。
【0061】
ここではアジャスタ本体220は、ダクトボディ20の左側板20B、右側板20C、左側片20F、及び右側片20Gの外周縁に沿うように構成される。ただし、アジャスタ本体220と、左側片20F及び右側片20Gとの間には、第1パネル21Aが配置されるため、実際には、アジャスタ本体220は、左側板20B、右側板20C、及び第1パネル21Aの外周縁に沿うように構成される。
【0062】
より具体的には、アジャスタ本体220は、
図5及び
図8に示すように、前片220Aと、左右一対の側片220Bとを有している。前片220Aは、一対の側片220Bを連結するように一体となって形成されている。
【0063】
前片220Aは、左右方向に長尺の矩形の板状であり、厚み方向が前後方向に沿うように配置される。前片220Aは、左右の両端付近において、厚み方向に貫通する一対の第1挿通孔H1を有している。前片220Aの各第1挿通孔H1は、上下方向に長い長孔である。前片220Aの各第1挿通孔H1には、ねじP1が挿通される。ねじP1は、前片220Aの第1挿通孔H1に挿通後、更に第1パネル21Aの挿通孔M1、及び側片(左側片20F又は右側片20G)の第2挿通孔H2に挿通されてナットに螺合される。
【0064】
一対の側片220Bは、前片220Aの左右両縁からそれぞれ後方に突出する。各側片220Bは、前後方向に長尺の矩形の板状であり、厚み方向が左右方向に沿うように配置される。一対の側片220B間の間隔(すなわち前片220Aの左右方向の寸法)は、ダクトボディ20の左右方向の寸法より僅かに大きい。各側片220Bの前後方向の寸法は、ダクトボディ20の前後方向の寸法より僅かに大きい。
【0065】
前片220Aの上下方向の寸法は、各側片220Bの上下方向の寸法と略等しく、第1パネル21Aの上下方向の寸法の約半分である(
図5参照)。
【0066】
各側片220Bは、後端近傍において、厚み方向に貫通する第1挿通孔H1を有している。各側片220Bの第1挿通孔H1は、前片220Aの第1挿通孔H1と同様に、上下方向に長い長孔である。各側片220Bの第1挿通孔H1には、ねじP1が挿通される。ねじP1は、側片220Bの第1挿通孔H1に挿通後、側板(左側板20B又は右側板20C)の第2挿通孔H2に挿通されてナットに螺合される。
【0067】
要するに、アジャスタ本体220と盤ユニット11(のダクトボディ20)とは、ねじP1が挿通されてアジャスタ本体220が盤ユニット11に保持される第1挿通孔H1と第2挿通孔H2とを、それぞれ有する。第1挿通孔H1及び第2挿通孔H2の少なくともいずれか一方は、上下方向に長い長孔である。ここでは第1挿通孔H1が長孔である。
【0068】
アジャスタ本体220は、施設の天井100と、天井100からの電線7が接続される盤装置1を含む盤ユニット11との間に配置される。
【0069】
アジャスタ本体220は、4本のねじP1を外すことで、ダクトボディ20から脱離させることからできる。つまり、アジャスタ本体220は、天井100と盤ユニット11の少なくとも一方(ここでは盤ユニット11のダクトボディ20)に対して、取り外し可能である。
【0070】
アジャスタ本体220は、天井100と盤ユニット11との隙間よりも大きい。ここでは隙間とは、天井100と盤ユニット11のダクトボディ20との隙間G1(
図9A~9C参照)に相当し、アジャスタ本体220の上下方向の寸法は、隙間G1よりも大きい。
【0071】
そして、アジャスタ本体220は、隙間G1を塞ぐように盤ユニット11に対して移動可能である。具体的には、アジャスタ本体220は、4本のねじP1を緩めた状態(以下、この状態を「仮保持状態」と呼ぶ)で、長孔である4つの第1挿通孔H1が4本のねじP1にガイドされながら上下方向に沿ってスライド可能となる。
【0072】
ところで、アジャスタ本体220は、天井100と対向する一端面222(
図9A~9C参照:上端面)を有している。一端面222は、アジャスタ本体220の前方から見て、天井100と平行である。そのため、一端面222が天井100に接触した時に、一端面222と天井100との間に隙間が生じにくくなる。
【0073】
仮保持状態では、アジャスタ本体220は、自重により下方に変位して、ねじP1は第1挿通孔H1内の上部に位置する。また仮保持状態では、アジャスタ本体220は、一端面222がダクトボディ20の上枠片20Dの上面と略面一となる位置にある。
【0074】
またアジャスタ本体220は、
図5に示すように、ダクトパネル21のうち第1パネル21Aのみと被るように配置される。言い換えると、アジャスタ22は、第1面201の側から見て、第1パネル21A及び第2パネル21Bのうちの一方(ここでは第1パネル21A)のみと被るように配置される。
【0075】
(2.4)施工作業
盤システム10の施工作業について説明する。以下に説明する施工作業の作業手順は単なる一例であって特に限定されるものではない。また以下では施工例1~3に分けて施工作業を説明する。
【0076】
[施工例1]
例えば新築の施設では、盤装置1及びダクト2の施工作業を行う時点で、天井100(天井面)が未だ仕上がっていない場合がある。すなわち、床面からの天井面の高さが未確定の状況と言える。
【0077】
まず施工者は、盤装置1を壁101に設置する。続いて施工者は、
図5に示す状態にあるダクト2を、一度分解する。すなわち、施工者は、全てのねじP1、S1及びS2を緩めて外し、ダクトボディ20からアジャスタ本体220及びダクトパネル21を脱離させる。
【0078】
施工者は、
図6に示す状態のダクトボディ20を、その第1面201を正面に向けて、(予定される)天井100と盤装置1との間に設置する(第1工程)。具体的には、施工者は、第1面201を正面に向けながら、壁101に埋め込まれているアンカーボルトをダクトボディ20の孔部K1に通して、ダクトボディ20を盤装置1のボックス3の上に載せ置く。そして施工者は、アンカーボルトをナットに螺合させてダクトボディ20を壁101に固定する。また施工者は、ダクトボディ20の4つ孔部J1を介して、ダクトボディ20をボックス3にねじ止めする。これで天井100(天井面)が仕上がるまで作業を一時中断する。この段階で、電線7は、例えば、天井スラブからの吊りボルトに固定されている下地材等に括り付けられているかもしれない。
【0079】
その後、天井100(天井面)が仕上がると、施工者は、盤装置1の保護板4を開けてさらに前枠5を取り外す。これにより、ボックス3の通線口36の前方が開放される。施工者は、天井100に形成されている孔102を通じて、電線7を天井裏側から盤装置1の設置空間内に引き下ろす。この時、施工者は、天井100から盤装置1に向かう電線7を、開放された第1面201から、ダクトボディ20に通線する(第2工程)。そして、施工者は、ケーブルタイ等で電線7を保持部23に固定する。
【0080】
施工者は、ダクトボディ20内を通線する電線7を、そのままボックス3の通線口36の前方からボックス3内に入線する。そして、施工者は、配線用遮断器6に電線7を接続する。また施工者は、接地線8を接地端子24に接続する。
【0081】
施工者は、配線作業が終れば、前枠5を取り付けて保護板4を閉める。また施工者は、開放された第1面201をダクトパネル21(第1パネル21A及び第2パネル21B)で覆う(第3工程)。
【0082】
具体的には、施工者は、第1パネル21Aの4つの挿通孔M1のうち下側の2つの挿通孔M1、及びダクトボディ20の左右2つの固定孔H3を介して、2本のねじS1で第1パネル21Aをダクトボディ20にねじ止めする(
図7参照)。続いて施工者は、ダクトボディ20にアジャスタ本体220を仮保持させる。施工者は、アジャスタ本体220の4つの第1挿通孔H1、第1パネル21Aの上側の2つの挿通孔M1、及びダクトボディ20の4つの第2挿通孔H2を介して、4本のねじP1でアジャスタ本体220をダクトボディ20に保持させる(
図8参照)。この時、施工者は、ねじP1を締め付け過ぎずに、アジャスタ本体220が上下に移動可能な程度に遊びを持たせる。そして、施工者は、第2パネル21Bの4つの挿通孔M2、並びに、ダクトボディ20の左右2つの固定孔H4及び左右2つの固定孔H5を介して、4本のねじS2で第2パネル21Bをダクトボディ20にねじ止めする。
【0083】
このように第1工程、第2工程、及び第3工程が実行されることで、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0084】
図9Aは、アジャスタ本体220の仮保持状態を示す。特に
図9Aは、この仮保持状態で、天井100とダクトボディ20との間に、隙間G1が生じている例を示しており、隙間G1から電線7が露出している様子が伺える。つまり、このままの状態を放置すると、電線7の隠蔽性が低下していると言える。
【0085】
そこで、施工者は、天井100とダクトボディ20との隙間G1を塞ぐように、ダクトボディ20に対して、隙間G1よりも大きいアジャスタ本体220の位置を調整する(調整工程)。具体的には、施工者は、一端面222が天井100に接触するまで、手でアジャスタ本体220を上に移動させる(
図9Bの矢印参照)。施工者は、一端面222が天井100に接触した位置で、4本のねじP1を強固に締め付ける。その結果、露出していた電線7が、アジャスタ22によって隠蔽される(
図9C参照)。
【0086】
このように調整工程が実行されることで、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、施工性の向上を図ることが可能な施工方法を提供できる。
【0087】
なお、アジャスタ本体220が、隙間G1よりも小さい場合、隙間G1よりも大きい別のアジャスタ本体220に取り換えることが望ましい。言い換えると、アジャスタ22は、上下方向の寸法が異なる複数のアジャスタ本体220を有し、施工者は、複数のアジャスタ本体220のうち、適切な寸法のアジャスタ本体220を選択して取り付けてもよい。
【0088】
[施工例2]
次に、盤装置1及びダクト2の施工作業を行う時点で、天井100(天井面)が既に仕上がっている場合について説明する。以下では、上述した施工例1と実質的に共通する作業については適宜に説明を省略することがある。
【0089】
施工者は、盤装置1を壁101に設置する。続いて施工者は、ダクト2を一度分解する。施工者は、ダクトボディ20を、その第1面201を正面に向けて、(既に仕上がっている)天井100と盤装置1との間に設置する。この段階で、電線7は、天井100の孔102を通じて、電線7を天井裏側から盤装置1の設置空間内に引き下ろされているため、引き続き、施工者は、電線7を、開放された第1面201からダクトボディ20に通線する。施工者は、ダクトボディ20内を通線する電線7を、そのままボックス3の通線口36の前方からボックス3内に入線する。そして、施工者は、配線用遮断器6に電線7を接続する。また施工者は、接地線8を接地端子24に接続する。
【0090】
施工者は、配線作業が終れば、前枠5を取り付けて保護板4を閉める。また施工者は、開放された第1面201をダクトパネル21で覆う。続いて施工者は、ダクトボディ20にアジャスタ本体220を仮保持させる。施工者は、天井100とダクトボディ20との隙間G1を塞ぐように、ダクトボディ20に対して、隙間G1よりも大きいアジャスタ本体220の位置を調整する。
【0091】
施工例2においても、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる。また施工例2においても、アジャスタ本体220の位置調整が実行されることで、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、施工性の向上を図ることが可能な施工方法を提供できる。
【0092】
[施工例3]
次に、ダクト2の施工作業を行う時点で、未だ盤装置1が施設に搬入されていない場合について説明する。以下では、上述した施工例1と実質的に共通する作業については適宜に説明を省略することがある。
【0093】
施工者は、ダクト2を一度分解する。そして、施工者は、ダクトボディ20を、その第1面201を正面に向けて、(既に仕上がっている)天井100の下側に設置する。この段階で、電線7は、天井100の孔102を通じて、電線7を天井裏側から盤装置1の設置空間内に引き下ろされているため、施工者は、電線7を、開放された第1面201からダクトボディ20に通線して保持部23に保持させる。この段階で、電線7は、ケーブルタイ等で保持部23に固定せずに、保持部23に簡易的に巻き付けられてもよい。またこの段階で、ダクトパネル21及びアジャスタ本体220は、一旦ダクトボディ20に取り付けられてもよい。施工者は、盤装置1が搬入されるまで作業を一時中断する。
【0094】
その後、施工者は、盤装置1が搬入されると、盤装置1を壁101に設置する。施工者は、電線7をケーブルタイ等で保持部23に固定し、ボックス3の通線口36の前方からボックス3内に入線する。そして、施工者は、配線用遮断器6に電線7を接続する。また施工者は、接地線8を接地端子24に接続する。
【0095】
施工者は、配線作業が終れば、前枠5を取り付けて保護板4を閉める。また施工者は、開放された第1面201をダクトパネル21で覆う。続いて施工者は、ダクトボディ20にアジャスタ本体220を仮保持させる。また施工者は、天井100とダクトボディ20との隙間G1を塞ぐように、ダクトボディ20に対して、隙間G1よりも大きいアジャスタ本体220の位置を調整する。
【0096】
施工例3においても、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる。また施工例3においても、アジャスタ本体220の位置調整が実行されることで、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、施工性の向上を図ることが可能な施工方法を提供できる。特に施工例3では、盤装置1が設置されるまでの間、電線7をダクト2内に仮収容できる。
【0097】
[利点1]
このように本実施形態では、ダクトボディ20は、第1面201が上下方向の全長にわたって開放可能となっている。そのため、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる。電線7の隠蔽性の低下が抑制されるため、外観上の見栄えが良く、また電線7が保護される。
【0098】
またダクト2が、ダクトボディ20の第1面201を覆うダクトパネル21を更に備えるため、電線7の隠蔽性の低下が更に抑制される。特にダクトパネル21は、ダクトボディ20の第1面201の全域を覆うため、第1面201の一部の領域だけを覆う場合に比べて、電線7の隠蔽性の低下が更に抑制される。
【0099】
ところで、盤システム10の設置後、盤装置1の保守点検を定期的に行う場合がある。ここで本実施形態では、ダクトパネル21が、ダクトボディ20に対して着脱可能に固定されるため、ダクトパネル21を取り外すことで、ダクト2内の電線7を露出させることができる。要するに、ダクトパネル21を取り外せば、開口面R1を点検口として利用できる。そのため、点検者は、ダクト2の施工後においても点検作業を容易に行える。なお、開口面R1は、点検作業だけでなく、例えば配線用遮断器6や配線の増設作業等においても利用できる。
【0100】
またダクトパネル21は、その少なくとも一部がダクトボディ20に対して外せるように構成される。ここでは、ダクトパネル21は、上下方向において、第1面201に沿って分割された第1パネル21A及び第2パネル21Bから構成されて、これらの両方が個別にダクトボディ20に対して外せるように構成される。そのため、点検者は、第1パネル21A又は第2パネル21Bを取り外せば、開口面R1のうち対応する一部を点検口として利用できる。そのため、点検者は、ダクト2の施工後においても点検作業を容易に行える。また点検作業だけでなく、配線用遮断器6や配線の増設作業等も容易に行える。
【0101】
またダクト2は、隙間G1を塞ぐように調整可能なアジャスタ22を更に備えるため、例えばダクトボディ20を設置した後に、アジャスタ22の調整により隙間G1を容易に塞ぐことができる。つまり、床から天井100までの正確な寸法や、盤装置1の正確な寸法を把握しなくても、電線7の隠蔽を容易に行える。
【0102】
特にアジャスタ22は、第1面201の側から見て、第1パネル21A及び第2パネル21Bのうちの第1パネル21Aのみと被るように配置される。そのため、アジャスタ22及び第1パネル21Aは外さなくても、第2パネル21Bだけを外すことで、点検作業、又は配線用遮断器6や配線の増設作業等を容易に行える。
【0103】
[利点2]
またこのように本実施形態では、アジャスタ本体220が、隙間を塞ぐように盤ユニット11(ここではダクトボディ20)に対して移動可能であるため、電線7の隠蔽性の低下を抑制しつつ、施工性の向上を図ることができる。またアジャスタ本体220は、盤ユニット11(ここではダクトボディ20)に対して、前方から取り付け可能であるため、施工性が更に向上される。
【0104】
さらにアジャスタ本体220は、盤ユニット11(ここではダクトボディ20)に対して取り外し可能であるため、例えば、アジャスタ22が不要である場合、アジャスタ22を外すことができる。また施工後においてもアジャスタ22を外すことで点検作業、又は配線用遮断器6や配線の増設作業等を容易に行える。
【0105】
特にアジャスタ本体220は、上下方向に沿って見て、盤ユニット11(ここではダクトボディ20)の縁に沿ったU字状であるため、盤ユニット11に対して一体感のあるアジャスタ22を提供できる。したがって、外観上の見栄えが損なわれることを抑えつつ、電線7の隠蔽性の低下を抑制できる。またアジャスタ本体220を前方から容易に取り付けることができる。
【0106】
またアジャスタ本体220が、上下方向に長い長孔である第1挿通孔H1を有しているため、例えば、アジャスタ22を盤ユニット11に仮保持させた状態で、アジャスタ22の位置を調整できる。特に第1挿通孔H1によって、アジャスタ本体220が上下方向に沿ってスライド移動するため、無段階で位置調整が可能となる。
【0107】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0108】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0109】
(3.1)変形例1
基本例では、ダクト2のダクトボディ20は、第1面201を正面に向けて設置される。しかし、ダクトボディ20は、第1面201とは反対側の面である第2面202を正面に向けて設置されてもよい。
【0110】
図10は、変形例1のダクト2Aを示す。ダクト2Aのダクトボディ20は、第1設置状態、及び第2設置状態のいずれの設置状態においても、壁101に取り付け可能である。第1設置状態は、第1面201を正面に向けて設置する設置状態である。第2設置状態は、第2面202を正面に向けて設置する設置状態である。
【0111】
ダクト2Aでは、ダクトボディ20の左側片20F及び右側片20Gに、壁101のアンカーボルトを挿通するための孔が設けられている。またダクトボディ20は、アジャスタ本体220が、第2面202の側からもねじ止め可能なように、ねじP1を挿通するための挿通孔を有する。
【0112】
変形例1の構成によれば、ダクト2Aを先に設置してから電線7をダクト2A内に通線する場合、基本例と同様に、ダクト2Aを第1設置状態で壁101に取り付けることができる。またダクト2Aは、
図10に示すように既に電線7が盤装置1のボックス3内に入線して配線用遮断器6に接続されている場合も、ダクトボディ20を逆向きにして第2設置状態で壁101に取り付けることができる。要するに、ダクト2Aは、基本例と同様に先に設置するだけでなく、電線7の前方から後付けで設置可能である。そのため、ダクト2Aの施工性に関する自由度が向上される。
【0113】
なお、ダクト2Aの設置後における点検作業や増設作業を考慮すれば、ダクトボディ20は、第2面202において、厚み方向に貫通する窓部W1(
図10では二点鎖線で図示)を有していることが望ましい。この場合、ダクト2Aは、ダクトボディ20に着脱可能に取り付けられて窓部W1を塞ぐパネルを有していることが望ましい。
【0114】
(3.2)変形例2
基本例では、アジャスタ22のアジャスタ本体220は、ダクトボディ20に固定される。しかし、アジャスタ本体220は、天井100に固定されてもよい。
【0115】
図11は、変形例2のダクト2Bを示す。ダクト2Bのアジャスタ22Aでは、アジャスタ本体220は、天井100に結合可能な結合部X1を有している。結合部X1は、各々がボルトを挿通するための一対の挿通孔を有した3つの突出片X11を有している。3つの突出片X11のうちの1つは、アジャスタ本体220の前片220Aの上縁から前方に突出する。3つの突出片X11のうちの残り2つは、アジャスタ本体220の左右一対の側片220Bの上縁から互いに離れる方向に、それぞれ突出する。なお、天井100の側には、突出片X11の挿通孔に挿通された上記ボルトを螺合するためのねじ孔が設けられている。
【0116】
変形例2の構成によれば、基本例に比べて、アジャスタ22Aと天井100との間に隙間がより生じにくくなる。また変形例2では、アジャスタ本体220には第1挿通孔H1が設けられていない。そのため、基本例に比べて、アジャスタ22Aの外観上の見栄えを良くすることができる。ただし、変形例2のアジャスタ本体220も、基本例と同様に、第1挿通孔H1を有してもよい。
【0117】
(3.3)その他の変形例
基本例では、アジャスタ本体220は、ダクトボディ20の前面及び左右側面で固定されている。しかし、アジャスタ本体220は、ダクトボディ20の前面のみで固定されてもよい。言い換えると、アジャスタ本体220は、盤ユニット11の前面のみで、盤ユニット11に結合されてもよい。この場合、外観上の見栄えが損なわれることを抑えつつ、電線7の隠蔽性の低下を抑制できる。
【0118】
基本例では、ダクトパネル21は、ダクトボディ20の第1面201の全域を覆っているが、第1面201の一部の領域のみを覆うように構成されてもよい。
【0119】
基本例では、ダクトボディ20が左側片20F及び右側片20Gを有していて、開口面R1は、正面視において、第1面201よりも面積が小さい。しかし、左側片20F及び右側片20Gは、省略されてもよい。つまり、開口面R1は、第1面201と面積が略等しくて、第1面201は、その全域が開放可能されていてもよい。この場合、アジャスタ本体220は、ダクトボディ20の左右側面のみで固定されてもよい。
【0120】
基本例では、ダクトパネル21は、2枚のパネル(第1パネル21A及び第2パネル21B)に分割されている。しかし、ダクトパネル21は、分割されていなくてもよく、1枚でもよいし、分割されている場合、3枚以上に分割されていてもよい。また分割されている全てのパネルが取り外し可能でなくてもよい。少なくとも1枚のパネルだけが取り外し可能であれば、点検口として利用できる。
【0121】
基本例では、ダクトパネル21は、ダクトボディ20から取り外し可能である。しかし、ダクトパネル21は、第1面201を開放する開位置と、第1面201を閉塞する閉位置との間で移動(回転)可能にダクトボディ20に軸支された扉式のパネルでもよい。
【0122】
基本例では、第1挿通孔H1が長孔で第2挿通孔H2が丸孔であるが、逆に第2挿通孔H2が長孔で第1挿通孔H1が丸孔でもよいし、第1挿通孔H1及び第2挿通孔H2の両方が長孔でもよい。
【0123】
基本例では、ダクト2の左右の側面は、盤装置1のボックス3の左右の側面とそれぞれ略面一となるように左右方向の寸法関係が規定されている。また基本例では、ダクト2の前面は、ボックス3の前面と略面一となるように前後方向の寸法関係が規定されている。そのため、全体として一体感のある盤システム10が提供される。しかし、このような寸法関係に限定されない。
【0124】
基本例では、盤装置1において、通線口36と開口面31とを隔てる前枠5が、ボックス3から取り外し可能であることから、盤装置1に対する入線作業も容易となっている。しかし、前枠5が取り外し可能であることは、本開示において必須ではない。
【0125】
基本例では、1台の盤装置1に対して1つのダクト2が設置される。しかし、盤装置1と天井100との間の隙間が比較的大きい場合、1つのダクト2だけでは当該隙間を埋めることができない場合がある。その場合には、複数のダクト2が上下に連結されてもよい。この場合、アジャスタ22は、最も天井100に近いダクトボディ20にのみ取り付けられてもよい。
【0126】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係るダクト(2、2A、2B)は、筒状のダクトボディ(20)を備える。ダクトボディ(20)は、施設の天井(100)と盤装置(1)との間において、天井(100)から盤装置(1)に向かう電線(7)の周囲の少なくとも一部を覆うように配置される。ダクトボディ(20)は、その周方向における一面(第1面201)が上下方向の全長にわたって開放可能となっている。第1の態様によれば、電線(7)の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0127】
第2の態様に係るダクト(2、2A、2B)は、第1の態様において、ダクトボディ(20)の一面(第1面201)を覆うダクトパネル(21)を更に備える。第2の態様によれば、電線(7)の隠蔽性の低下が更に抑制される。
【0128】
第3の態様に係るダクト(2、2A、2B)に関して、第2の態様において、ダクトパネル(21)は、ダクトボディ(20)に対して着脱可能に固定される。第3の態様によれば、ダクト(2、2A、2B)の施工後においても点検作業又は増設作業等を容易に行える。
【0129】
第4の態様に係るダクト(2、2A、2B)に関して、第2の態様又は第3の態様において、ダクトパネル(21)は、ダクトボディ(20)の一面(第1面201)の全域を覆う。第4の態様によれば、電線(7)の隠蔽性の低下が更に抑制される。
【0130】
第5の態様に係るダクト(2、2A、2B)に関して、第2~第4の態様のいずれか1つにおいて、ダクトパネル(21)は、その少なくとも一部がダクトボディ(20)に対して外せるように構成される。第5の態様によれば、ダクト(2、2A、2B)の施工後においても点検作業又は増設作業等を容易に行える。
【0131】
第6の態様に係るダクト(2、2A、2B)は、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、ダクトボディ(20)と天井(100)との隙間(G1)を塞ぐように調整可能なアジャスタ(22、22A)を更に備える。第6の態様によれば、例えばダクトボディ(20)を設置した後に、アジャスタ(22、22A)の調整により隙間(G1)を容易に塞ぐことができる。
【0132】
第7の態様に係るダクト(2、2A、2B)は、第6の態様において、ダクトボディ(20)の一面(第1面201)を覆うダクトパネル(21)を更に備える。ダクトパネル(21)は、一面(第1面201)に沿って、少なくとも第1パネル(21A)及び第2パネル(21B)に分割されている。アジャスタ(22、22A)は、一面(第1面201)の側から見て、第1パネル(21A)及び第2パネル(21B)のうちの一方のみと被るように配置される。第7の態様によれば、例えば、第1パネル(21A)及び第2パネル(21B)のうちの他方をダクトボディ(20)に対して着脱可能に固定されるように構成することで、当該他方を外すことで点検作業又は増設作業等を容易に行える。
【0133】
第8の態様に係るダクト(2、2A、2B)に関して、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、ダクトボディ(20)は、その内部において電線(7)を保持するための保持部(23)を有する。第8の態様によれば、電線(7)がダクトボディ(20)の内部をより安定して通線され得る。
【0134】
第9の態様に係るダクト(2、2A、2B)は、第1~第8の態様のいずれか1つにおいて、盤装置(1)の接地線(8)が接続される接地端子(24)を更に備える。第9の態様によれば、ダクト(2、2A、2B)と盤装置(1)とを同電位に揃えることができる。
【0135】
第10の態様に係るダクト(2A)に関して、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、ダクトボディ(20)は、一面である第1面(201)と、電線(7)が通る内部空間(SP1)に対して第1面(201)とは反対側の第2面(202)とを有する。ダクトボディ(20)は、第1設置状態、及び第2設置状態のいずれの設置状態においても、施設の壁(101)に取り付け可能である。第1設置状態は、第1面(201)を正面に向けて設置する設置状態である。第2設置状態は、第2面(202)を正面に向けて設置する設置状態である。第10の態様によれば、ダクト(2A)の施工性に関する自由度が向上される。
【0136】
第11の態様に係る盤システム(10)は、第1~第10の態様のいずれか1つにおけるダクト(2、2A、2B)と、内部に配線用遮断器(6)を有する盤装置(1)と、を備える。第11の態様によれば、電線(7)の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることが可能な盤システム(10)を提供できる。
【0137】
第12の態様に係る施工方法は、筒状のダクトボディ(20)を備えたダクト(2、2A、2B)の施工方法である。施工方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。第1工程にて、上下方向の全長にわたって開放可能となっているダクトボディ(20)の一面(第1面201)を正面に向けて、施設の天井(100)と盤装置(1)との間に設置する。第2工程にて、天井(100)から盤装置(1)に向かう電線(7)を、開放された一面(第1面201)から、ダクトボディ(20)に通線する。第3工程にて、開放された一面(第1面201)をダクトパネル(21)で覆う。第12の態様によれば、電線(7)の隠蔽性の低下を抑制しつつ、通線作業に関する作業性の向上を図ることが可能な施工方法を提供できる。
【0138】
第2~第10の態様に係る構成については、第1の態様に係るダクト(2、2A、2B)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0139】
1 盤装置
2、2A、2B ダクト
20 ダクトボディ
201 第1面(一面)
202 第2面
21 ダクトパネル
21A 第1パネル
21B 第2パネル
22、22A アジャスタ
23 保持部
24 接地端子
100 天井
101 壁
6 配線用遮断器
7 電線
8 接地線
G1 隙間
SP1 内部空間