(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒およびこれを備えたカメラ
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20210101AFI20230825BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20230825BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/08 A
(21)【出願番号】P 2022184843
(22)【出願日】2022-11-18
【審査請求日】2022-12-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】木元 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】勝代 雅行
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健士
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-290065(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092921(WO,A1)
【文献】特開2015-055677(JP,A)
【文献】特開2015-138169(JP,A)
【文献】特開2007-033656(JP,A)
【文献】実開平04-016406(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持する略円筒状の本体部を有するレンズ枠と、
前記レンズ枠に設けられ、前記レンズの光軸を中心とする径方向において突出し、
前記光軸の方向における同じ位置に配置され、対向する位置に配置されたカム枠に形成されたカム溝に係合する複数の第1カムピンと、
前記レンズ枠に設けられ、前記径方向に付勢するように支持され、前記カム枠に形成されたカム溝に係合する付勢ピンと、
前記付勢ピンが対向する前記レンズ枠の前記本体部の一部が前記光軸の方向において切り欠かれた切欠き部と、
前記レンズ枠の外周に配置され、前記光軸の方向に沿って形成された複数の直進案内溝を有する略円筒状の直進案内筒と、
前記レンズ枠に設けられ、前記直進案内筒の前記直進案内溝と係合した状態で移動する複数の直進案内部と、
を備え、
前記レンズ枠の前記本体部は、
前記複数の第1カムピンのうち、1つの前記
第1カムピンから
他の前記第1カムピンにかけて
前記付勢ピンが設けられている側において周方向
に連続的に設けられている、
レンズ鏡筒。
【請求項2】
レンズを保持する略円筒状の本体部を有するレンズ枠と、
前記レンズ枠に設けられ、前記レンズの光軸を中心とする径方向において突出し、対向する位置に配置されたカム枠に形成されたカム溝に係合する複数の第1カムピンと、
前記レンズ枠に設けられ、前記径方向に付勢するように支持され、前記カム枠に形成されたカム溝に係合する付勢ピンと、
前記付勢ピンが対向する前記レンズ枠の前記本体部の一部が前記光軸の方向において切り欠かれた切欠き部と、
前記レンズ枠の外周に配置され、前記光軸の方向に沿って形成された複数の直進案内溝を有する略円筒状の直進案内筒と、
前記レンズ枠に設けられ、前記直進案内筒の前記直進案内溝と係合した状態で移動する複数の直進案内部と、
を備え、
前記レンズ枠の前記本体部は、前記付勢ピンから前記第1カムピンにかけて周方向において連続的に設けられており、
前記切欠き部は、前記
付勢ピンから最も離間した2つの前記第1カムピンの間にのみ設けられている、
レンズ鏡筒。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記レンズ枠において、前記付勢ピンが径方向において付勢されて前記カム溝から受ける反力の径方向における成分の方向に設けられている、
請求項1
または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記レンズ枠に設けられ、前記付勢ピンに対して前記光軸の方向に沿って隣接配置され、前記径方向において突出し、前記カム枠に形成されたカム溝に係合する第2カムピンを、さらに備えている、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記レンズ枠における前記第2カムピンおよび前記付勢ピンが設けられた部分は、前記切欠き部が設けられた部分よりも、前記光軸の方向において長さが大きい、
請求項
4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1カムピンは、樹脂によって成形されている、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記付勢ピンは、金属材料によって成形されている、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第2カムピンは、樹脂によって成形されている、
請求項
4に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記第1カムピンが2つ設けられており、
前記付勢ピンは、2つの前記第1カムピンに対して、前記レンズ枠の前記本体部における周方向において略等角度間隔で配置されている、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記第1カムピンが2つ設けられており、
前記レンズ枠の前記本体部は、前記付勢ピンから2つの前記第1カムピンにかけて周方向において連続的に設けられている、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
前記切欠き部は、2つの前記第1カムピンの間に設けられている、
請求項
10に記載のレンズ鏡筒。
【請求項12】
前記付勢ピンは、前記光軸の方向において、前記第1カムピンに対してずれた位置に設けられている、
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項13】
請求項1または2に記載のレンズ鏡筒と、
前記レンズ鏡筒が取り付けられるカメラ本体と、
を備えたカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ鏡筒およびこれを備えたカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のレンズを含む光学系を備え、カメラ本体に対して交換可能な状態で装着されるレンズ鏡筒が使用されている。
例えば、特許文献1には、レンズ保持枠に固定支持されたカムピンと、レンズ保持枠のカムピンの近傍に付勢支持された1本の付勢ピンと、カムピンおよび付勢ピンのそれぞれと係合するカム溝を有するカム枠と、を備えたレンズ鏡筒について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のレンズ鏡筒では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたレンズ鏡筒では、レンズ保持枠が周方向において連続的に形成された略円筒状の外周面を有している。しかし、レンズ鏡筒の構成部品との干渉を回避するために、外周面の一部が光軸方向において切り欠かれた形状を有するレンズ鏡筒では、レンズ保持枠の強度が低下するため、外部から外力が付与されると変形しやすくなってしまう。
【0005】
このとき、ガタの発生を抑制するために設けられた付勢ピンの周囲が変形すると、付勢ピンが係合しているカム溝から反力を受けているため、レンズ枠全体が変形してしまうおそれがある。
本開示の課題は、レンズ枠の一部が切り欠かれた形状において、レンズ枠の強度を確保してレンズ枠全体の変形を防止することが可能なレンズ鏡筒およびこれを備えたカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレンズ鏡筒は、レンズ枠と、複数の第1カムピンと、付勢ピンと、切欠き部と、略円筒状の直進案内筒と、複数の直進案内部と、を備えている。レンズ枠は、レンズを保持する略円筒状の本体部を有する。複数の第1カムピンは、レンズ枠に設けられ、レンズの光軸を中心とする径方向において突出し、対向する位置に配置されたカム枠に形成されたカム溝に係合する。付勢ピンは、レンズ枠に設けられ、径方向に付勢するように支持され、カム枠に形成されたカム溝に係合する。切欠き部は、付勢ピンが対向するレンズ枠の本体部の一部が光軸の方向において切り欠かれている。略円筒状の直進案内筒は、レンズ枠の外周に配置され、光軸の方向に沿って形成された複数の直進案内溝を有する。複数の直進案内部は、レンズ枠に設けられ、直進案内筒の直進案内溝と係合した状態で移動する。レンズ枠の本体部は、付勢ピンから第1カムピンにかけて周方向において連続的に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るレンズ鏡筒によれば、レンズ枠の一部が切り欠かれた形状において、レンズ枠の強度を確保してレンズ枠全体の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るレンズ鏡筒がカメラ本体に装着されたカメラの外観構成を示す斜視図。
【
図4A】
図3のレンズ鏡筒に含まれる4群ユニットの切欠き部側の構成を示す斜視図。
【
図4B】
図3のレンズ鏡筒に含まれる4群ユニットの切欠き部とは反対側に設けられた付勢ピン側の構成を示す斜視図。
【
図7A】
図4A等に示す4群ユニットの付勢ピン側の構成を示す斜視図。
【
図8A】
図4A等の4群ユニットに設けられたカムピンと4群ユニットの外周側に配置されるカム枠との関係を示す透視図。
【
図8B】
図8Aに示す4群ユニットおよびカム枠を組み立てた状態の上面図。
【
図10A】
図4A等の4群ユニットに設けられた付勢ピンおよびカムピンと4群ユニットの外周側に配置されるカム枠との関係を示す透視図。
【
図13A】
図10Aの4群ユニットが1群ユニットとともにカム枠の内周側に装填された状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、出願人は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0010】
(実施形態1)
本開示の一実施形態に係るレンズ鏡筒10およびこれを備えたカメラ1について、
図1~
図13Bを用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態に係るカメラ1は、
図1に示すように、レンズ鏡筒10と、レンズ鏡筒10が着脱可能な状態で取り付けられるカメラ本体2と、を備えている。
【0011】
(レンズ鏡筒10の構成)
レンズ鏡筒10は、
図2および
図3に示すように、フォーカスリングユニット11と、ズームリング12と、1群ユニット(直進案内筒)13と、カム枠14と、2,3群ユニット15と、4群ユニット(レンズ枠)20と、後枠16と、を備えている。
フォーカスリングユニット11は、
図3に示すように、レンズ鏡筒10を構成する部品のうち、光軸AX方向において最も被写体側に配置された略円筒状の部材であって、その外周面には、ユーザによって回転操作されるズームリング12が装着される。
【0012】
ズームリング12は、
図3に示すように、フォーカスリングユニット11の外周面に装着された略円環状の部材であって、ユーザの回転操作によって、レンズ鏡筒10に含まれる複数のレンズの相対位置を変化させるズーム操作を行う。
1群ユニット13は、
図3に示すように、フォーカスリングユニット11の外周面側に配置された略円筒状の部材であって、その内周面側において1群レンズを保持している。
【0013】
カム枠14は、
図3に示すように、1群ユニット13の外周面側に配置され、略円筒状の本体部14aと、本体部14aに形成された複数のカム溝14b,14cとを有している。
2,3群ユニット15は、
図3に示すように、1群ユニット13の内周面側に内包された略円環状の部材であって、その内周面側において2群レンズおよび3群レンズを保持している。2,3群ユニット15は、レンズ鏡筒10の光軸AX方向において、1群ユニット13と4群ユニット20との間に配置されている。
【0014】
4群ユニット20は、
図3に示すように、光軸AX方向において、2,3群ユニット15の像面側に配置されており、その内周面側においてレンズL4a,L4bを保持している。
なお、4群ユニット20の詳細な構成については、後段にて詳述する。
後枠16は、
図3に示すように、レンズ鏡筒10を構成する部品のうち、光軸AX方向において最も像面側に配置される略円筒状の部材であって、図示しないカメラ本体2側のマウント部に装着される。
【0015】
(4群ユニット20の構成)
本実施形態のレンズ鏡筒10に含まれる4群ユニット20は、略円筒状の外形を有し、樹脂射出成型等によって成形されている。4群ユニット20は、
図4Aおよび
図4Bに示すように、略円筒状の本体部21と、3つのカムピン22a,22b,22cと、付勢ピン23とを有している。
【0016】
略円筒状の本体部21は、その内周部分(レンズ保持部21a)において、光学系を構成するレンズL4a,L4b(
図5B参照)を保持している。本体部21は、その外周部分に、カムピン22a,22b,22cと、付勢ピン23と、が設けられている。そして、本体部21は、カムピン22a,22b,22cとともに、樹脂を用いた射出成型によって一体成形されている。
【0017】
カムピン22a,22b,22cは、例えば、PC(ポリカーボネート)樹脂によって成形された略円錐台の形状を有し、
図5Aに示すように、それぞれ略等角度(約120度)間隔で、本体部21の外周面に設けられている。また、3つのカムピン22a,22b,22cは、光軸AXを中心とする円の径方向外向きに突出するように本体部21の外周面に設けられており、上述したカム枠14の本体部14aに形成されたカム溝14b,14cに係合し、カム溝14b,14cに沿って移動する。カムピン22a,22b,22cは、本体部21における光軸AX方向の被写体側の端部に配置されている。
【0018】
カムピン22a(第1カムピン)は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、本体部21の外周面において、光軸AXを中心とする円の径方向外向きに突出するように設けられている。そして、カムピン22aは、4群ユニット20の外周面側に配置されたカム枠14の略円筒状の本体部14aに設けられたカム溝14bに係合する。
カムピン22b(第1カムピン)は、
図5Aに示すように、本体部21の外周面におけるカムピン22aから時計回りに約120度の位置に、光軸AXを中心とする円の径方向外向きに突出するように設けられている。そして、カムピン22bは、カムピン22aと同様に、4群ユニット20の外周面側に配置されたカム枠14の略円筒状の本体部14aに設けられたカム溝14bに係合する。
【0019】
カムピン22c(第2カムピン)は、
図6Aおよび
図6Bに示すように、本体部21の外周面におけるカムピン22bから時計回りに約120度の位置に、光軸AXを中心とする円の径方向外向きに突出するように設けられている。そして、カムピン22cは、カムピン22a,22bと同様に、4群ユニット20の外周面側に配置されたカム枠14の略円筒状の本体部14aに設けられたカム溝14cに係合する。
【0020】
付勢ピン23は、本体部21の外周面に設けられた3つの樹脂製のカムピン22a,22b,22cのうち、カムピン22cの近傍に設けられている。より詳細には、付勢ピン23は、カムピン22cに対して光軸AX方向における被写体側に隣接配置されている。
また、付勢ピン23は、金属(例えば、SUS)の切削加工によって成形されており、圧縮コイルバネ24によって4群ユニット20の外周面から径方向外向きに付勢されている。そして、付勢ピン23は、カムピン22cとともに、4群ユニット20の外周面側に配置されたカム枠14の略円筒状の本体部14aに設けられたカム溝14cに係合する。
【0021】
さらに、付勢ピン23は、
図6Bに示すように、カムピン22a,22b,22cが光軸AX方向において略同じ位置に設けられているのに対し、カムピン22a,22b,2cよりも被写体側にずれた位置に設けられている。
なお、カムピン22cおよび付勢ピン23は、本体部21に設けられた切欠き部C1に対向する位置であって、切欠き部C1から最も離間した位置に設けられている。このため、
図6Bに示すように、カムピン22cおよび付勢ピン23が設けられている本体部21の外周面の光軸AX方向における長さL1は、これに対向する位置の外周面の長さL2よりも大きい。
【0022】
すなわち、付勢ピン23およびこれに隣接配置されたカムピン22cは、4群ユニット20の本体部21における剛性が大きい部分に設けられている。
付勢ピン23は、
図7Bに示すように、本体部21の外周面におけるカムピン22cに対して光軸AX方向に隣接する位置に設けられた取付孔21bに、圧縮コイルバネ24を介して取り付けられている。
【0023】
圧縮コイルバネ24は、取付孔21b内に挿入された状態で、取付孔21bと付勢ピン23とに挟まれるように配置されている。そして、付勢ピン23が取付孔に対して取り付けられると、圧縮コイルバネ24は収縮し、付勢ピン23が径方向外向きに付勢力を付与する。
ここで、本実施形態のレンズ鏡筒10では、
図7Aおよび
図7Bに示すように、4群ユニット20の略円筒状の本体部21が、カムピン22aとカムピン22bとの間に、光軸AX方向において切り欠かれたように形成された切欠き部C1を有している。
【0024】
一方、本体部21は、カムピン22aから付勢ピン23にかけて周方向において連続的に設けられているとともに、カムピン22bから付勢ピン23にかけて周方向において連続的に設けられている。
ここで、連続的とは、本体部21の外周面が付勢ピン23からカムピン22a,22bまで連続して設けられており、凹部や切欠き等によって外周面が周方向において分断されていない状態を意味している。よって、本体部21の外周面の光軸AX方向における端部に凹部や切欠き等が設けられた構成は、付勢ピン23からカムピン22a,22bまでの外周面が分断されていないため、「連続的に設けられている」に含まれる。
【0025】
これにより、本体部21における付勢ピン23が設けられた位置付近は、カムピン22a,22bが設けられた位置と比較して剛性が高く、外力が付与された場合でも変形しにくい。
よって、他部品との干渉防止のために4群ユニット20の本体部14aの一部が切り欠かれた形状であっても、4群ユニット20の強度を確保して4群ユニット20全体の変形を防止することができる。
【0026】
ここで、
図8Aおよび
図8Bに示すように、カム枠14の内周面側に4群ユニット20が装着されると、カム枠14のカム溝14bにカムピン22a,22b、カム溝14cにカムピン22cおよび付勢ピン23が係合した状態となる。
このとき、樹脂製のカムピン22a等は、
図9に示すように、カム枠14のカム溝14b,14cに係合し、カム枠14が光軸AXを中心に回転すると、カム溝14b,14cに係合しているカムピン22a,22b,22cがカム溝14b,14cに沿って移動することで、カム枠14に対して4群ユニット20が光軸AX方向において前後に移動する。
【0027】
一方、付勢ピン23は、径方向外向きに突出した状態で、圧縮コイルバネ24によって径方向外向きに付勢されている。このため、
図10Aおよび
図10Bに示すように、カム枠14の内周面側に4群ユニット20が装着されると、
図11に示すように、隣接配置されたカムピン22cとともに、カム溝14bよりも幅が広いカム溝14cに係合した状態で付勢力を付与し、カム枠14に対する4群ユニット20のガタの発生を抑制する。
【0028】
ここで、
図12に示すように、4群ユニット20において、圧縮コイルバネ24によって付勢ピン23が径方向外向きに付勢力F1を付与した結果、付勢ピン23は、常時、カム溝14cから反力F2を受けている。
すなわち、切欠き部C1は、4群ユニット20において、付勢ピン23が径方向において付勢力F1を付与した結果、カム溝14cから受ける反力F2の径方向における成分の方向に設けられている。
【0029】
これにより、4群ユニット20の本体部21に切欠き部C1が設けられた構成において、付勢ピン23が常時、カム溝14cから反力F2を受けている場合でも、切欠き部C1が設けられた影響を受けにくく剛性が高く変形しにくい位置に付勢ピン23が設けられている。
換言すれば、付勢ピン23は、切欠き部C1の影響によって剛性が低下し易い位置から最も離間した位置に配置されている。このため、切欠き部C1による剛性の低下の影響をほとんど受けることなく、カム枠14に対して4群ユニット20を駆動させることができる。
【0030】
図13Aは、カム枠14の内周側に、1群ユニット13および4群ユニット20が装填された状態を示す。
この状態において、付勢ピン23によって径方向外向きへの付勢力が付与されると、カム枠14のカム溝14cの底面からの反力によって、4群ユニット20全体が、
図13Bに示す矢印方向へ付勢される。
【0031】
このとき、
図13Bに示すように、カムピン22a,22bの根元部分に設けられた直進案内部25が、1群ユニット13の本体部13aに光軸方向に沿って形成された直進案内溝13bに係合した状態で保持される。
これにより、4群ユニット20の切欠き部C1の近傍に配置されたカムピン22a,22b周辺の部分(直進案内部25)は、1群ユニット13の直進案内溝13bによって、略円筒状の4群ユニット20の接線方向における移動が規制されるように保持される。
【0032】
よって、付勢ピン23による付勢力によって4群ユニット20が
図13Bに示す矢印方向へ付勢された場合でも、切欠き部C1の周辺に設けられたカムピン22a,22bが、直進案内部25によって接線方向において支持されるとともに、カム枠14のカム溝14bによって径方向において支持されるため、カムピン22a,22b周辺の破損等を防止することができる。
【0033】
<主な特徴>
本実施形態のレンズ鏡筒10は、レンズL4a,L4bを保持する略円筒状の4群ユニット20と、カムピン22a,22bと、付勢ピン23と、切欠き部C1と、略円筒状の1群ユニット13と、複数の直進案内部25と、を備える。カムピン22a,22bは、4群ユニット20に設けられ、レンズL4a,L4bの光軸を中心とする径方向において突出し、カム枠14のカム溝14bに係合する。付勢ピン23は、4群ユニット20に設けられ、径方向に付勢するように支持され、カム枠14のカム溝14cに係合する。切欠き部C1は、付勢ピン23が対向する4群ユニット20の外周面の一部が光軸の方向において切り欠かれている。4群ユニット20の外周面は、付勢ピン23からカムピン22a,22bにかけて周方向において連続的に設けられている。略円筒状の1群ユニット13は、4群ユニット20の外周に配置され、光軸の方向に沿って形成された複数の直進案内溝13bを有する。複数の直進案内部25は、4群ユニット20に設けられ、1群ユニット13の直進案内溝13bと係合した状態で移動する。
【0034】
これにより、カム枠14のカム溝14cに係合した状態で径方向において付勢力を付与する付勢ピン23がカム溝14cの面から常時、反力を受けている状態において、付勢ピン23の周囲が開口部分(切欠き部C1)から最も離間した位置に配置されている。
よって、付勢ピン23が設けられた付近における本体部21の剛性は、従来の切欠き部C1のない構成と比較して同程度に維持することができる。
【0035】
この結果、4群ユニット20の本体部14aの一部が切り欠かれた形状において、4群ユニット20の強度を確保して4群ユニット20全体の変形を防止することができる。
【0036】
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、カムピン22cと付勢ピン23とが、4群ユニット20の本体部21における光軸AX方向において隣接する位置に配置されている例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、付勢ピンと隣接する位置にカムピン(第2カムピン)が設けられていないレンズ鏡筒であってもよい。
あるいは、付勢ピンとカムピン(第2カムピン)とが隣接する位置ではなく、離間した位置にそれぞれ設けられた構成であってもよい。
【0037】
(B)
上記実施形態では、付勢ピン23が、本体部21の外周面における光軸AX方向における被写体側に突出した位置に設けられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、付勢ピンが、本体部の略筒状の外周面の範囲内に設けられた構成であってもよい。
【0038】
(C)
上記実施形態では、付勢ピン23が、他のカムピン22a,22b,22cが設けられた位置よりも光軸AX方向においてずれた位置に設けられている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、付勢ピンが、他のカムピンと光軸方向において略同じ位置にある構成であってもよい。
【0039】
(D)
上記実施形態では、カムピン22a,22bおよびカムピン22cが、それぞれ樹脂によって形成されている例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、カムピンの素材は、樹脂以外であってもよい。
【0040】
(E)
上記実施形態では、付勢ピン23が金属によって形成されている例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、付勢ピンの素材は、金属以外であってもよい。
【0041】
(F)
上記実施形態では、カメラ本体に対して着脱可能な交換レンズに対して、本開示の構成を適用した例を挙げて説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
例えば、カメラ本体に対して着脱不能な状態で固定されたレンズ鏡筒に対して、本開示の構成が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本開示のレンズ鏡筒は、レンズ枠の一部が切り欠かれた形状において、レンズ枠の強度を確保してレンズ枠全体の変形を防止することができるという効果を奏することから、各種撮像装置に装着されるレンズ鏡筒に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 カメラ
2 カメラ本体
10 レンズ鏡筒
11 フォーカスリングユニット
12 ズームリング
13 1群ユニット
13a 本体部
13b 直進案内溝
14 カム枠
14a 本体部
14b カム溝
14c カム溝
15 2,3群ユニット
16 後枠
20 4群ユニット(レンズ枠)
21 本体部
21a レンズ保持部
21b 取付孔
22a,22b カムピン(第1カムピン)
22c カムピン(第2カムピン)
23 付勢ピン
24 圧縮コイルバネ
25 直進案内部
AX 光軸
C1 切欠き部
F1 付勢力
F2 反力
L1,L2 長さ
L4a,L4b レンズ
【要約】
【課題】レンズ枠の一部が切り欠かれた形状において、レンズ枠の強度を確保してレンズ枠全体の変形を防止することが可能なレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒10は、4群ユニット20、カムピン22a,22b、付勢ピン23、切欠き部C1、略円筒状の1群ユニット13、複数の直進案内部25を備える。4群ユニット20は、レンズL4a等を保持する略円筒状の本体部21を有する。カムピン22a,22bは、4群ユニット20に設けられ径方向において突出しカム枠14のカム溝14bに係合する。付勢ピン23は、4群ユニット20に設けられ径方向に付勢するように支持されカム溝14bに係合する。切欠き部C1は、付勢ピン23が対向する4群ユニット20の本体部21の一部が光軸の方向において切り欠かれている。4群ユニット20の本体部21は、付勢ピン23からカムピン22a,22bにかけて周方向において連続的に設けられている。
【選択図】
図7A