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特許7336732無線通信装置、路側機および無線通信方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】無線通信装置、路側機および無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/46 20180101AFI20230825BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20230825BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230825BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20230825BHJP
【FI】
H04W4/46
H04W4/44
H04W84/12
H04W88/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019061481
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162057
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸成
(72)【発明者】
【氏名】本塚 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】入江 誠隆
【審査官】野村 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-038202(JP,A)
【文献】国際公開第2009/133740(WO,A1)
【文献】特開2005-234921(JP,A)
【文献】特開2003-132492(JP,A)
【文献】特開2010-011143(JP,A)
【文献】特開2019-161371(JP,A)
【文献】特開2016-015572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の前方において第1の移動物体-移動物体間通信又は第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号をスキャンする第1無線機と、
前記移動物体の後方に向けて第2の移動物体-移動物体間通信又は第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を送信する第2無線機と、
を備え
前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、
前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記第1無線機及び前記第2無線機は、一体的に前記移動物体に取り付けられた、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第1無線機及び前記第2無線機の取り付け位置は、前記移動物体のルーフである、
請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第1無線機は、前記移動物体のフロント部に取り付けられ、
前記第2無線機は、前記移動物体のリア部に取り付けられた、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記フロント部は、ダッシュボード、サンバイザー、前方モニタカメラ、バックミラー、及び、フロントバンパーの少なくとも1つであり、
前記リア部は、シャークフィン、後方モニタカメラ、バックドア、及び、リアバンパーの少なくとも1つである、
請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第1無線機と前記第2無線機との間のデータ伝送を制御する制御装置を備えた、
請求項1から5の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第1の移動物体-移動物体間通信又は前記第2の移動物体-移動物体間通信は、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータの共有サービス、並びに、ドライブレコーダ及び前記移動物体に搭載されたカメラによる映像配信サービスの少なくとも1つに関する通信である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記第1の路側機-移動物体間通信又は前記第2の路側機-移動物体間通信は、インターネット接続サービス、ETC(electric toll collection)を用いた自動料金支払いサービス、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータ共有サービス、ソフトウェア又はファームウェアの更新サービス、マップ配信サービス、監視カメラ及び路側機に搭載されたカメラによる映像配信サービス、並びに、交通情報配信サービスの少なくとも1つに関する通信である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記データ伝送は、映像伝送サービスにおけるデータの中継である、
請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項10】
路側機であって、
移動物体が前記路側機から遠ざかる側において第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号をスキャンする第1無線機と、
前記移動物体が前記路側機に接近する側に向けて第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を送信する第2無線機と、
を備え、
前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、
前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する、
路側機。
【請求項11】
前記第1無線機及び前記第2無線機は、一つの筐体内に設置される、
請求項10に記載の路側機。
【請求項12】
前記第1無線機及び前記第2無線機は、分離した2つの筐体にそれぞれ設置され、
前記第1無線機は、前記移動物体が前記路側機から遠ざかる側に設置され、
前記第2無線機は、前記移動物体が前記路側機に接近する側に設置される、
請求項10に記載の路側機。
【請求項13】
前記第1無線機と前記第2無線機との間の信号伝送を制御する制御装置を備えた、
請求項10から12の何れか1項に記載の路側機。
【請求項14】
移動物体の無線通信方法であって、
前記移動物体の前方において第1の移動物体-移動物体間通信又は第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号を、前記移動物体の第1無線機によって、スキャンし、
前記移動物体の後方に向けて第2の移動物体-移動物体間通信又は第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を、前記移動物体の第2無線機によって、送信
前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、
前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する、
移動物体の無線通信方法。
【請求項15】
路側機の無線通信方法であって、
移動物体が前記路側機から遠ざかる側において第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号を、前記路側機の第1無線機によって、スキャンし、
前記移動物体が前記路側機に接近する側に向けて第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を、前記路側機の第2無線機によって、送信
前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、
前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する、
路側機の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置、路側機および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、指向性アンテナを列車(車両)の前方側及び後方に設置して、基地局(アクセスポイント:AP)と端末(ステーション:STA)との間の通信(路車間通信)を行う方法が記載されている。
【0003】
一方、非特許文献2には、基地局を介さずに端末同士で通信する方法として、PBSS(Personal Basic Service Set)が規定されている。PBSSでは、スケジューリングを決定する役割を行うPCP(PBSS Central Point)を、近隣の通信可能な1つ以上のSTAの中から決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-288820号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】IEEE802.11-2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の非限定的な実施例は、移動物体-移動物体間通信又は路側機-移動物体間通信の無線接続成功率を向上する、改善された無線通信装置、路側機および無線通信方法の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る無線通信装置は、移動物体の前方において第1の移動物体-移動物体間通信又は第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号をスキャンする第1無線機と、前記移動物体の後方に向けて第2の移動物体-移動物体間通信又は第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を送信する第2無線機と、を備え、前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する
【0008】
本開示の一態様に係る路側機は、移動物体が前記路側機から遠ざかる側において第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号をスキャンする第1無線機と、前記移動物体が前記路側機に接近する側に向けて第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を送信する第2無線機と、を備え、前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する
【0009】
本開示の一態様に係る移動物体の無線通信方法は、前記移動物体の前方において第1の移動物体-移動物体間通信又は第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号を、前記移動物体の第1無線機によって、スキャンし、前記移動物体の後方に向けて第2の移動物体-移動物体間通信又は第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を、前記移動物体の第2無線機によって、送信前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する
【0010】
本開示の一態様に係る路側機の無線通信方法は、移動物体が前記路側機から遠ざかる側において第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号を、前記路側機の第1無線機によって、スキャンし、前記移動物体が前記路側機に接近する側に向けて第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を、前記路側機の第2無線機によって、送信前記第1無線機は端末(STA)モードで動作し、前記第2無線機はPCP(PBSS Central Point)モード又はアクセスポイント(AP)モードで動作する
【0011】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、移動物体-移動物体間通信又は路側機-移動物体間通信の無線接続成功率を向上できる。
【0013】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】無線通信システムの構成例を示す図
図2】無線通信システムの構成例を示す図
図3】無線通信システムの構成例を示す図
図4】車載機の構成例を示すブロック図
図5】路側機の構成例を示すブロック図
図6A】車載機の動作例を示すフローチャート
図6B】車載機の動作例を示すフローチャート
図6C】車載機の動作例を示すフローチャート
図7A】路側機の動作例を示すフローチャート
図7B】路側機の動作例を示すフローチャート
図7C】路側機の動作例を示すフローチャート
図8A】車載機の設置例を示す図
図8B】車載機の設置例を示す図
図9A】路側機の設置例を示す図
図9B】路側機の設置例を示す図
図10A】車載機の構成の変形例を示すブロック図
図10B】車載機の構成の変形例を示すブロック図
図10C】車載機の構成の変形例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
また、各図面において、共通の構成要素には同一の符号が付される。また、同種の要素を区別して説明する場合には、「車両10A」、「車両10B」のように参照符号を使用し、同種の要素を区別しないで説明する場合には、「車両10」のように参照符号のうちの共通番号を使用することがある。なお、「車両」は、「移動物体」あるいは「モビリティ」と呼んでもよい。
【0018】
周囲の交通状況が時々刻々と変化するような交差点付近や混雑した複数車線における無線通信では、車車間又は路車間の通信が成功する範囲が最適化されるPCPを、迅速かつ効率的に決定することは難しい。
【0019】
例えば、決定したPCPの通信圏外に位置する車載機は、PCPを発見できないため、車車間又は路車間の通信確立に失敗し易い。
【0020】
一例として、同じ方向へ走行する3台の車載機の車車間通信について検討する。先頭の第1車載機が後続の第2車載機と通信可能な場合に、一例として、先頭の第1車載機がPCPに決定される。ここで、第2車載機の後方から第3車載機が第2車載機に接近して車車間通信を試みる。しかし、第3車載機が第1車載機の通信圏外である場合、PCPである第1車載機を発見できないため、第1車載機および第2車載機が属するPBSSへの参加に失敗する可能性が高い。
【0021】
別の一例として、基地局をPCPとする方法が考えられる。例えば、1台の路側機に向かって、2台の車載機が走行する場合について検討する。路側機と、路側機に向かう先頭の第1車載機と、が互いに通信可能な場合、一例として、路側機がPCPに決定される。
【0022】
ここで、第2車載機が第1の車載機の後方から第1の車載機に接近して車車間通信を試みる。しかし、上述した3台の車載機の車車間通信と同様に、第2車載機が路側機の通信圏外である場合、第2車載機は、PCPに決定された路側機を発見できないため、路側機および第1車載機が属するPBSSへの参加に失敗する可能性が高い。
【0023】
このように、PCPをどの車載機又は路側機に決定(又は選択)するかによって、PBSSへの参加に成功する無線機、および、PBSSへの参加に失敗する無線機が変わり得る。そのため、周囲の交通状況が時々刻々と変化するような道路環境において、PCPを決定することは現実的ではない。
【0024】
以下に説明する実施の形態では、車車間通信(移動物体-移動物体間通信)又は路車間通信(路側機-移動物体間通信)の無線接続成功率を向上する技術について説明する。なお、以下の説明において、車車間通信は「V2V(vehicle-to-vehicle)通信」、路車間通信は「V2I(vehicle-to-infrastructure)通信」又は「I2V(infrastructure-to-vehicle)通信」とそれぞれ表記されることがある。
【0025】
(実施の形態1)
図1図2、及び、図3は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成の一例を示す図である。図1には、車車間通信に着目した通信態様の一例が示され、図2には、車車間通信及び路車間通信に着目した通信態様の一例が示される。また、図3には、路車間通信に着目した通信態様の一例が示される。
【0026】
なお、図1図2、及び、図3に例示した通信態様は、同一の無線通信システムにおける通信態様と捉えてもよいし、一部又は全部が異なる無線通信システムにおける通信態様と捉えてもよい。
【0027】
図1には、例えば、3台の車両10A、10Bおよび10Cのそれぞれに搭載された無線通信装置(車載機)100a、100bおよび100cが示される。図1において、3台の車両10A、10Bおよび10Cは、同じ方向(例えば図1の紙面右方向)に走行している。なお、「車載機」は、「OBU」(on-board unit)と称されることもある。なお、「車両」は、「移動物体」あるいは「モビリティ」と呼んでもよい。
【0028】
先頭車両10Aの車載機100aは、後続車両10Bが車載機100aの通信エリア内に位置する場合に、車両10Bの車載機100bと通信(車車間通信、移動物体間通信)する。
【0029】
同様に、車両10Bの車載機100bは、後続車両10Cが車載機100bの通信エリア内に位置する場合に、車両10Cの車載機100cと通信(車車間通信)する。
【0030】
なお、車両10Aと車両10Cとの間に位置する車両10B(車載機100b)は、先行車両10A(車載機100a)および後続車両10C(車載機100c)とそれぞれ個別の通信を行う場合もあるし、先行車両10A(車載機100a)と後続車両10C(車載機100c)との間の通信を中継(リレー又はフォワード)する場合もある。後者のリレー通信を含む車車間通信は、「V2V2V通信」と表記されることがある。
【0031】
一方、図2には、例えば、2台の車両10Bおよび10Cのそれぞれに搭載された無線通信装置(車載機)100bおよび100cと、1台の路側機200と、が示される。図2において、2台の車両10Bおよび10Cは、同じ方向(例えば、路側機200に接近する方向)に走行している。
【0032】
なお、「路側機」は、「RSU」(roadside unit)あるいは「ITSスポット」と称されることもある。「ITS」は、「intelligent transport sysytems」の略記である。路側機200は、例えば、路肩の道路設備(インフラストラクチャ)に配備される。
【0033】
図2において、路側機200は、車両10Bの車載機100bが路側機200の通信エリア内に位置する場合に、当該車載機100bと通信(路車間通信)する。また、車両10Bの車載機100bは、後続車両10Cが車載機100bの通信エリア内に位置する場合に、車両10Cの車載機100cと通信(車車間通信)する。
【0034】
図2において、車両10Bの車載機100bは、路側機200および車両10Cの車載機100cとそれぞれ個別の通信を行う場合もあるし、路側機200と車載機100cとの間の通信を中継(リレー又はフォワード)する場合もある。後者のリレー通信は、「I2V2V通信」、あるいは「V2V2I通信」と表記されることがある。
【0035】
図1又は図2に例示した車車間通信又は路車間通信には、例えば、指向性を有するミリ波帯の電波が用いられてよい。非限定的な一例として、各車載機100a,100b、100c、および、路側機200には、IEEE802.11adあるいはIEEE802.11ayに準拠したミリ波帯無線機が適用されてよい。「車載機」および「路側機」を区別しない場合、「無線機」と総称することがある。
【0036】
また、図1において、車載機100の台数は、3台に限られず、2台であってもよいし4台以上であってもよい。一方、図2において、車載機100の台数は、2台に限られず、3台以上であってもよい。更に、図2において、路側機200の台数は、1台に限られず、2台以上であってもよい。
【0037】
車載機100は、例えば図4にて後述するように、STAモードにて動作(又は無線通信)するSTA無線機(無線機)101と、PCPモード又はAPモードにて動作(又は無線通信)するPCP/AP通信装置(無線機)102と、を備える。
【0038】
図1及び図2に例示したように、STA無線機101は、車両10の前方に無線電波を放射する向きで車両10に取り付けられ、PCP/AP無線機102は、車両10の後方に無線電波を放射する向きで車両10に取り付けられる。
【0039】
STA無線機101は、前方に位置する先行車両10AのPCP/AP無線機102を発見した場合に、車両10AのPCP/AP無線機102と無線接続する。なお、STA無線機101は、例えば、PCP/AP無線機102が周期的に送信するビーコン信号(発信信号)を受信することによって、PCP/AP無線機102を発見する。「ビーコン信号」は、車車間通信又は路車間通信の接続先検出用信号の一例である(以降において同じ)。
【0040】
例えば図1において、車両10Cは、STA無線機101によって、先行車両10BのPCP/AP無線機102が送信したビーコン信号を受信した場合、先行車両10BのPCP/AP無線機102と無線接続(無線リンク)を確立する。
【0041】
同様に、車両10Bは、STA無線機101によって、先行車両10AのPCP/AP無線機102が送信したビーコン信号を受信した場合、先行車両10AのPCP/AP無線機102と無線接続(無線リンク)を確立する。図2に例示した車載機100bと車載機100cとの間の車車間通信についても同様であり、後続車両10のSTA無線機101と先行車両10のPCP/AP無線機102との間で無線リンクが確立される。
【0042】
図1において想定されるサービスの非限定的な一例としては、上りリンク(UL)又は下りリンク(DL)のリレー通信(V2V2V)を用いたサービス、および、1対1のV2V通信を用いたサービスが挙げられる。
【0043】
リレー通信を用いたサービスの一例としては、車両10A~10Cが隊列走行している場合に、先頭車両10Aが備えるカメラによって撮影された画像データ(静止画又は動画像)を後続の車両10B及び10Cに、順次、DL伝送するサービスが想定される。あるいは、逆に、最後尾の車両10Cが備えるカメラによって撮影された画像データを先行する車両10B及び10Aに、順次、UL伝送するサービスが想定される。
【0044】
一方、1対1のV2V通信を用いたサービスの一例としては、先行車両10が取得した情報(例えば、各種センサによって取得された情報や上述した画像データ)を後続車両10にDL伝送するサービスが想定される。あるいは、逆に、後続車両10が取得した情報(例えば、各種センサによって取得された情報や上述した画像データ)を先行車両10にUL伝送するサービスが想定される。
【0045】
図2において、路側機200は、例えば図5にて後述するように、STAモードにて動作(又は無線通信)するSTA無線機(無線機)201と、PCPモード又はAPモードにて動作(又は無線通信)するPCP/AP通信装置(無線機)202と、を備える。
【0046】
図2に例示したように、路側機200のSTA無線機201は、例えば、走行中の車両10が当該路側機200から遠ざかる側に向けて無線電波を放射する。これにより、走行中の車両10が当該路側機200から遠ざかる側に、通信エリア#1が形成される。
【0047】
路側機200のPCP/AP無線機202は、例えば、走行中の車両10が当該路側機200に接近する側に向けて無線電波を放射する。これにより、走行中の車両10が当該路側機200に接近する側に、通信エリア#2が形成される。
【0048】
したがって、図2において、路側機200に接近する車両10Bは、通信エリア#1に進入し、STA無線機201によって、PCP/AP無線機202が送信したビーコン信号を受信した場合、当該PCP/AP無線機202と無線リンクを確立する。
【0049】
図2において想定されるサービスの非限定的な一例としては、UL又はDLのリレー通信(I2V2V)を用いたサービス、および、1対1のI2V通信又はV2V通信を用いたサービスが挙げられる。
【0050】
リレー通信を用いたサービスの一例としては、路側機200が取得した情報(例えば、道路交通情報)を、車両10B及び10Cに、順次、DL伝送するサービスが想定される。路側機200が取得した情報には、例えば、テキストデータ、音声データ、及び/又は、画像データが含まれてよい。
【0051】
画像データの一例としては、交差点に設置された路側機200が備えるカメラによって交差点の現況を撮影した画像データ(静止画又は動画像)が挙げられる。例えば、交差点の現況を示す画像データを、DLのリレー通信によって、交差点に接近する車両10に知らせるサービスが想定される。
【0052】
また、リレー通信を用いたサービスの他の一例としては、車両10Cが取得した情報を、車両10B及び路側機200に、順次、UL伝送するサービスが想定される。車両10が取得した情報には、例えば、テキストデータ、音声データ、及び/又は、画像データが含まれてよい。
【0053】
例えば、車載センサによって取得された、車両10の運転状態あるいは走行状態を示す情報や、車載カメラによって撮影された画像データがUL伝送されてよい。ULのリレー通信によって、例えば、自動運転によって隊列走行する複数の車両10の運転状態(速度や操舵角)を個々の車両10が自律的に制御できる。
【0054】
一方、1対1のI2V通信を用いたサービスの一例としては、車両10が取得した情報(例えば、各種センサによって取得された情報や画像データ)を路側機200にDL伝送するサービスが想定される。あるいは、逆に、後続車両10が取得した情報(例えば、各種センサによって取得された情報や画像データ)を路側機200にUL伝送するサービスが想定される。
【0055】
次に、例えば図3に示したように、車両10Aが路側機200を通り過ぎた場合について検討する。
【0056】
車両10Aが、通信エリア#1に進入した後、路側機200を通り過ぎて、通信エリア#2に進入した場合、路側機200は、STA無線機201によって、車両10AのPCP/AP無線機102と無線リンクを確立する。
【0057】
例えば、STA無線機201は、車両10AのPCP/AP無線機102が送信したビーコン信号を受信することによって車両10AのPCP/AP無線機102と無線リンクを確立する。
【0058】
したがって、車両10Aは、通信エリア#1に進入した後、路側機200を通り過ぎても、通信エリア#2を離脱するまでは通信を継続できる。よって、車両10に対する通信エリアを実質的に拡大でき、通信継続時間を長くできる。通信継続時間を長くできるため、無線通信システムにおけるトータルの伝送量を増加できる。
【0059】
一方、図3において、車両10Bが路側機200に接近して通信エリア#2に進入した場合、路側機200は、PCP/AP無線機202によって、車両10BのSTA無線機101と無線リンクを確立する。
【0060】
例えば、車両10Bは、路側機200の通信エリア#2に進入することによって路側機200のPCP/AP無線機202が送信したビーコン信号をSTA無線機101によって受信する。
【0061】
ビーコン信号の受信により、車両10BのSTA無線機202は、路側機200(PCP/AP無線機202)を発見し、路側機200のPCP/AP無線機202と無線リンクを確立する。
【0062】
以上のように、車載機100は、先行車両10又は路側機200とは、STA無線機101によって、先行車両10のPCP/AP無線機102又は路側機200のPCP/AP無線機202と無線リンクを確立する。
【0063】
また、車載機100は、後続車両10又は路側機200とは、PCP/AP無線機102によって、後続車両10のSTA無線機101又は路側機200のSTA無線機201と無線リンクを確立する。
【0064】
なお、図3において、路側機200は、先行車両10Aの車載機100aと、後続車両10Bの車載機100bと、の間の通信を中継(リレー又はフォワード)してもよい。このようなリレー通信は、「V2IV2通信」と表記されてよい。
【0065】
(車載機100の構成)
次に、車載機100の構成の一例について説明する。図4は、実施の形態1に係る車載機100の構成の一例を示すブロック図である。
【0066】
図4に示したように、車載機100は、例えば、STAモードにて動作する無線通信装置(STA無線機)101、PCPモード又はAPモードにて動作する無線通信装置(PCP/AP無線機)102、及び、制御装置103を備える。
【0067】
STA無線機101は、他の車両(例えば先行車両)10に搭載されたPCP/AP無線機102、または路側機200に搭載されたPCP/AP無線機202(図5参照)と接続して無線通信(車車間通信又は路車間通信)を行う。
【0068】
PCP/AP無線機102は、他の車両(例えば後続車両)10に搭載されたSTA無線機101、または路側機200に搭載されたSTA無線機201(図5参照)と接続して無線通信(車車間通信又は路車間通信)を行う。
【0069】
STA無線機101及びPCP/AP無線機102は、それぞれ、車載機100における第1無線機及び第2無線機の一例である。
【0070】
制御装置103は、例えば、STA無線機101及びPCP/AP無線機102による無線通信を制御する。この無線通信の制御には、例示的に、ビームフォーミング、及び、ビームフォーミングによる指向性ビームのスイープ制御が含まれてよい。指向性ビームのスイープ制御には、例示的に、仰角方向のスイープ制御が含まれてよい。
【0071】
制御装置103は、車両10に搭載された1つ又は複数の車載機器に接続されてよい。車載機器の一例としては、センサ、CPU(central processing unit)、ECU(electronic control unit)、メモリ、及び、ストレージが挙げられる。一例として、図4には、車両10に搭載されたセンサ(車載センサ)111及びCPU112に、制御装置103が接続されている。
【0072】
CPU112は、例えば制御装置103と協働して、STA無線機101及びPCP/AP無線機102の通信動作を制御してよい。
【0073】
CPU112に接続されたメモリ113は、例えば、車両10の運転を制御するためのデータや、STA無線機101及びPCP/AP無線機102の通信動作を制御するためのデータを記憶する。メモリ113には、例えば、STA無線機101及びPCP/AP無線機102の通信によって受信(取得)した情報やデータが記憶されてもよい。
【0074】
STA無線機101とPCP/AP無線機102との間の情報やデータの送受信は、例示的に、制御装置103を介して行われる。そのため、制御装置103は、レイヤ2(L2)スイッチ、レイヤ3(L3)スイッチ、又は、ルータを含んでよい。また、制御装置103には、アプリケーションレイヤにおけるデータ交換を行うためのCPUが含まれてもよい。
【0075】
センサ111には、例えば、カメラ、レーダ、LiDAR(light detection and ranging)、ソナー、超音波センサ、GNSS(global navigation satellite system)、及び、GPS(global positioning system)の少なくとも1つが適用されてよい。
【0076】
(路側機200の構成)
次に、路側機200の構成の一例について説明する。図5は、実施の形態1に係る路側機200の構成の一例を示すブロック図である。
【0077】
図5に示したように、路側機200は、例えば、STAモードにて動作する無線通信装置(STA無線機)201、PCPモード又はAPモードにて動作する無線通信装置(PCP/AP無線機)202、制御装置203、及び、通信装置210を備える。
【0078】
STA無線機201は、図2にて既述のとおり、通信エリア#1を形成し、通信エリア#1内に位置する車両10のPCP/AP無線機102と接続して無線通信(路車間通信)を行う。
【0079】
PCP/AP無線機202は、図2にて既述のとおり、通信エリア#2を形成し、通信エリア#2内に位置する車両10のSTA無線機101と接続して無線通信(路車間通信)を行う。
【0080】
STA無線機201及びPCP/AP無線機202は、それぞれ、路側機200における第1無線機及び第2無線機の一例である。
【0081】
通信装置210は、例えば、インターネットのような外部ネットワークと通信する。通信装置210と外部ネットワークとの接続は、有線でもよいし無線でもよい。なお、有線接続の場合には、通信装置210を用いずに、制御装置203に外部ネットワークが接続されてもよい。別言すると、制御装置203には、有線接続のためのインタフェース(IF)が備えられてよい。
【0082】
制御装置203は、例えば、STA無線機201及びPCP/AP無線機202による無線通信を制御する。この無線通信の制御には、ビームフォーミング、及び、ビームフォーミングによる指向性ビームのスイープ制御が含まれてよい。指向性ビームのスイープ制御には、例示的に、仰角方向のスイープ制御が含まれてよい。
【0083】
制御装置203は、路側機200に搭載された1つ又は複数の機器に接続されてよい。路側機200に搭載された機器の一例としては、センサ、CPU、メモリ、及び、ストレージが挙げられる。一例として、図5には、路側機200に搭載されたセンサ211及びCPU212に、制御装置203が接続されている。
【0084】
CPU212は、例えば制御装置203と協働して、STA無線機201、PCP/AP無線機202及び通信装置210の通信動作を制御してよい。
【0085】
CPU212に接続されたメモリ213は、例えば、路側機200の動作を制御するためのデータや、STA無線機201、PCP/AP無線機202、及び、通信装置210の通信動作を制御するためのデータを記憶する。メモリ213には、例えば、STA無線機201、PCP/AP無線機202、及び、通信装置210の通信によって受信(取得)した情報やデータが記憶されてもよい。
【0086】
STA無線機201、PCP/AP無線機202、及び、通信装置210の間の情報やデータの送受信は、例示的に、制御装置203を介して行われる。そのため、制御装置203は、L2スイッチ、L3スイッチ、又は、ルータを含んでよい。また、制御装置203には、アプリケーションレイヤにおけるデータ交換を行うためのCPUが含まれてもよい。
【0087】
センサ211には、例えば、カメラ、レーダ、LiDAR、ソナー、超音波センサ、GNSS、及び、GPSの少なくとも1つが適用されてよい。
【0088】
なお、上述した車載機100及び路側機200の構成において、「PCP/AP無線機」は「基地局」に読み替えられてよく、「STA無線機」は「端末」に読み替えられてよい。
【0089】
(動作例)
次に、車載機100の動作例および路側機200の動作例を項目別に説明する。
【0090】
(車載機100の動作例)
図6A図6B、及び、図6Cは、実施の形態1に係る車載機100の動作の一例を示すフローチャートである。図6A図6Cには、例示的に、図1及び図2に示した車両10Bに搭載された車載機100bの動作例が示される。
【0091】
例えば、図6Aには、図1及び図2において、車両10Bの車載機100bが、後続車両10Cの車載機100cと1対1通信(V2V通信)する場合の動作例が示される。
【0092】
図6Bには、図2において、車両10Bの車載機100bが、路側機200と1対1通信(V2I通信)する場合、あるいは図1及び図2において、先行車両10Aの車載機100aと1対1通信(V2V通信)する場合の動作例が示される。
【0093】
図6Cには、図2において、車両10Bの車載機100bが、路側機200と後続車両10Cの車載機100cとの間の通信をリレーする場合(I2V2V通信)、あるいは図1において先行車両10Aの車載機100aと後続車両10Cの車載機100cとの間の通信をリレーする場合(V2V2V通信)の動作例が示される。
【0094】
(V2V通信;図6A
図6Aに示すように、S1001において、車両10Bの車載機100bは、車両10Bの後方に向けて設置されたPCP/AP無線機102を起動する。PCP/AP無線機102は、起動後に、無線電波、例えばビーコン信号を周期的に送信する。ビーコン信号の送信周期は、非限定的な一例として、約100msである。
【0095】
S1002において、車載機100bは、例えば制御装置103において、後続車両10Cの車載機100cとの接続確立後に提供するサービス(又はアプリケーション)を起動する。サービスの起動により、PCP/AP無線機102は、後続車両10Cからの接続(サービス)要求の待ち受け状態となる。
【0096】
例えば、車両10Bの車載機100bは、S1003において、後続車両10C(STA無線機101)から接続要求が受信されるか否かを監視する。後続車両10Cから接続要求が受信されない場合(S1003のNo)、車載機100bは、接続要求の受信監視を継続する。
【0097】
一方、後続車両10Cから接続要求が受信された場合(S1003のYes)、車載機100bは、接続要求を受け入れ、S1004において、後続車両10C(STA無線機101)と無線接続を確立する。
【0098】
なお、図6Aに示したように、上述したS1001からS1004までの処理を、便宜的に、S1101と表記する。
【0099】
無線接続の確立後、車載機100bは、S1004aにおいて、車両10BがV2V通信によって提供可能なサービスのリスト(以下「サービス候補リスト」と称することがある)を後続車両10Cへ送信する。サービス候補リストには、少なくとも1つのサービスが含まれる。サービス候補リストの送信後、車載機100bは、送信したサービス候補リストに含まれる、少なくとも1つのDLのV2V通信によるサービスを開始する。
【0100】
ここで、「サービス」の「開始」とは、例えば、サービスの提供に関する要求(以下「サービス要求」と称することがある)があれば、要求に応じたサービスを提供できる状態にあること、別言すると、サービス要求の待ち受けを開始すること、を意味する。サービスの提供とは、例えば、サービスに応じた情報やデータの伝送を意味すると捉えてよい。
【0101】
なお、S1004での無線接続が確立した後、後続車両10Cの車載機100c(STA無線機101)が車両10Bの車載機100b(PCP/AP無線機102)へ、サービス候補リストを送信してもよい。この場合、ULのV2V通信によるサービスが開始される。
【0102】
V2V通信によるサービスの非限定的な一例としては、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータの共有サービス、ドライブレコーダ及び車載カメラによる映像配信サービスが挙げられる。
【0103】
なお、図6Aに示した動作例は、車載機100aと車載機100bとのV2V通信に適用されてもよい。例えば、図6Aにより上述した動作例において、車載機100b及び車載機100cは、それぞれ、車載機100a及び車載機100bに読み替えられてよい。別言すると、図6Aにより上述した動作例は、3台以上の車載機100が互いの通信エリア内に位置する場合に、何れの車両10間のV2V通信に適用されてもよい。
【0104】
(V2I通信又はV2V通信)
次に、図6Bの動作例について説明する。図6Bに示すように、S1005において、車両10Bの車載機100bは、車両10Bの前方に向けて設置されたSTA無線機101を起動する。
【0105】
なお、車両10Bにおいて、STA無線機101とPCP/AP無線機102とは、何れが先に起動されてもよいし、並行して起動されてもよい。別言すると、図6Aの処理S1001と図6Bの処理S1005とは、何れが先に実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0106】
STA無線機101の起動後、車載機100bは、S1006において、STA無線機101によって無線電波のスキャンを開始して、路側機200又は他の車両10(例えば先行車両10A)がPCP/APモードにて周期的に送信するビーコン信号を探索する。
【0107】
例えば、車載機100bは、S1007において、ビーコン信号が受信されたか否かを監視する。ビーコン信号が受信されない場合(S1007のNo)、車載機100bは、ビーコン信号が受信されるまで、別言すると、ビーコン信号の送信元無線機(以下「ビーコン送信元無線機」と略称することがある)を発見できるまでスキャンを繰り返す。
【0108】
ビーコン信号が受信された場合(S1007のYes)、S1008において、車載機100bは、発見したビーコン送信元無線機と無線接続を確立する。このビーコン送信元無線機は、例えば、路側機200のPCP/AP無線機202、あるいは先行車両10Aの車載機100aにおけるPCP/AP無線機102である。
【0109】
なお、S1007において、車両10Bの周囲の状況によっては、車載機100bにおいて、複数のビーコン送信元無線機を発見できることがある。複数のビーコン送信元無線機が発見された場合、車載機100bは、例えば、受信信号品質の高いビーコン信号の送信元無線機を接続先に選択、決定してよい。あるいは、接続先(路側機200又は車載機100)は、例えば、ユーザによって選択、決定されてもよい。複数の接続先候補(例えば、複数の車載機)が存在する場合には、特定の車載機がユーザによって選択、決定されてよい。ユーザによる接続先の選択、決定は、例えば、車両10Bの乗員による制御装置103に対する接続先の選択操作入力を介して行われてよい。
【0110】
なお、「受信信号品質」の一例としては、SNR(Signal Noise Ratio)、及び、RSSI(Received Signal Strength Indication, Received Signal Strength Indicator)が挙げられる。
【0111】
車載機100bは、発見したビーコン送信元無線機との無線接続確立後、S1009において、接続先の路側機200または先行車両10Aから当該接続先が提供可能なサービス候補リストを受信する。このサービス候補リストには、少なくとも1つのサービスが含まれる。
【0112】
なお、図6Bに示したように、S1005からS1009までの処理を、便宜的に、S1102と表記する。
【0113】
サービス候補リストを受信した後、車載機100bは、S1009aにおいて、接続先から受信したサービス候補リストの中から少なくとも1つのサービスを選択し、選択したサービスの利用を開始する。この場合、DLのV2I通信又はV2V通信によるサービスが開始される。
【0114】
なお、サービス候補リストにおけるサービスの選択は、例えば、制御装置103において、所定の選択基準あるいは選択規則に従って自律的に行われてもよいし、車両10Bの乗員(例えばドライバー)のサービス候補リストに対する手動の選択操作を介して行われてもよい。選択基準あるいは選択規則は、例えば、車両10Bの乗員によって制御装置103に対して予め入力、設定されてよい。
【0115】
なお、S1008での無線接続が確立した後、車両10Bの車載機100b(STA無線機101)が、路側機200(PCP/AP無線機202)、あるいは先行車両10の車載機100(PCP/AP無線機102)へサービス候補リストを送信してもよい。この場合、ULのV2I通信又はV2V通信によるサービスが開始される。
【0116】
V2I通信によるサービスの非限定的な一例としては、インターネット接続サービス、ETC(electric toll collection)を用いた自動料金支払いサービス、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータ共有サービス、ソフトウェアやファームウェアの更新サービス、マップ配信サービス、監視カメラ及び路側カメラによる映像配信サービス、及び、交通情報配信サービスが挙げられる。
【0117】
(リレー通信;図6C
次に、リレー通信の動作例について図6Cを参照して説明する。図6Cに示したように、リレー通信では、例えばS1101(図6A参照)及びS1102(図6B参照)が実行される。S1101及びS1102は何れが先に実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0118】
S1010において、車載機100bは、図6BのS1009で受信したサービス候補リストの中に、後続車両10C(車載機100c)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれているか否かを判断する。
【0119】
後続車両10C(車載機100c)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれている場合(S1010のYes)、車載機100bは、S1011において、リレー通信によるサービス(以下「リレーサービス」と称することがある)のリストを後続車両10Cへ送信する。リストの送信後、車載機100bは、送信したリストに含まれる、少なくとも1つのDLのI2V2V通信又はV2V2V通信によるサービスを開始する。
【0120】
一方、後続車両10C(車載機100c)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれない場合(S1010のNo)、車載機100bは、S1012において、例えば、車両10から後続車両10Cに提供可能なサービス候補リストを後続車両10C(車載機100c)へ送信してよい。このサービス候補リストの送信は、図6AのS1004aと同等の処理と捉えてもよい。
【0121】
なお、S1010において「No」の場合、車載機100bは、追加的あるいは代替的に、後続車両10C(車載機100c)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれないことを示す情報を、後続車両10Cの車載機100cへ送信してもよい。
【0122】
リレーサービスの非限定的な一例としては、隊列走行における映像伝送サービス、及び、交差点におけるシースルー映像サービスが挙げられる。例えば、渋滞発生時や隊列走行時に、リレーサービスによって先頭車両10からの前方カメラ映像を後続車両10が受信することによって、後続車両10において先頭車両10の前方状況を確認できる。
【0123】
また、例えば、最後尾の車両10の後方カメラ映像を先行車両10が受信することによって、最後尾の車両10の後方状況を確認でき、安全運転の支援に繋がる。また、先行車両10によるブロッケージの影響により、後続車両10が路側機200とダイレクトに無線接続を確立できない場合でも、当該後続車両10は、先行車両10からのリレーサービスを受けることで、路側機200から先行車両10に提供された情報を共有できる。
【0124】
(路側機200の動作例)
次に、図7A図7B、及び、図7Cのフローチャートを参照して、実施の形態1に係る路側機200の動作の一例について説明する。
【0125】
例えば、図7Aには、図3において、路側機200が、通信エリア#2に位置する車両10Bの車載機100bと1対1通信(I2V通信)する場合の動作例が示される。
【0126】
図7Bには、図3において、路側機200が、通信エリア#1に位置する車両10Aの車載機100aと1対1通信(I2V通信)する場合の動作例が示される。
【0127】
図7Cには、図3において、路側機200が、車両10Aの車載機100aと車両10Bの車載機100bとの間の通信をリレーする場合(V2I2V通信)の動作例が示される。
【0128】
(I2V通信;図7A
図7Aに示すように、路側機200は、S2001において、車両10が路側機200に接近する側に向けて設置されたPCP/AP無線機202を起動する。PCP/AP無線機202は、起動後に、無線電波、例えばビーコン信号を周期的に送信する。ビーコン信号の送信周期は、非限定的な一例として、100msである。これにより、車両10が路側機200に接近する側に、図2及び図3に示したように、通信エリア#2が形成される。
【0129】
その後、路側機200は、例えば制御装置203において、通信エリア#2内に位置する車両10の車載機100(例えば図2及び図3に示す車両10Bの車載機100b)との接続確立後に提供するサービス(又はアプリケーション)を起動する(S2002)。サービスの起動により、路側機200(PCP/AP無線機202)は、車両10B(車載機100b)からの接続(サービス)要求の待ち受け状態となる。
【0130】
例えば、路側機200は、S2003において、通信エリア#2内に位置する車両10Bの車載機100b(STA無線機101)から接続要求が受信されるか否かを監視する。車両10Bから接続要求が受信されない場合(S2003のNo)、車載機100bは、接続要求の受信監視を継続する。
【0131】
一方、車両10Bから接続要求が受信された場合(S2003のYes)、路側機200は、接続要求を受け入れ、S2004において、通信エリア#2内に位置する車両10Bの車載機100b(STA無線機101)と無線接続を確立する。
【0132】
なお、図7Aに示したように、S2001からS2004までの処理を、便宜的に、S2101と表記する。
【0133】
無線接続の確立後、路側機200(PCP/AP無線機202)は、S2004aにおいて、路側機200が路車間通信によって提供可能なサービスのリスト(サービス候補リスト)を車両10B(車載機100b)に送信する。サービス候補リストには、少なくとも1つのサービスが含まれる。サービス候補リストの送信後、路側機200は、送信したサービス候補リストに含まれる、少なくとも1つのDLのI2V通信によるサービスを開始する。
【0134】
なお、S2004での無線接続が確立した後、車両10Bの車載機100b(STA無線機101)が路側機200(PCP/AP無線機202)へ、サービス候補リストを送信してもよい。この場合、ULのV2I通信によるサービスが開始される。
【0135】
V2I通信によるサービスの非限定的な一例としては、図6Aにて既述のとおり、インターネット接続サービス、ETCを用いた自動料金支払いサービス、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータ共有サービス、ソフトウェアやファームウェアの更新サービス、マップ配信サービス、監視カメラ及び路側カメラによる映像配信サービス、及び、交通情報配信サービスが挙げられる。
【0136】
(I2V通信;図7B
次に、図7Bを参照して、例えば図3において、路側機200が、通信エリア#1に位置する車両10Aの車載機100aと1対1通信(I2V通信)する場合の動作例について説明する。
【0137】
図7Bに示すように、路側機200は、S2005において、車両10が路側機200から遠ざかる側に向けて設置されたSTA無線機201を起動する。STA無線機201の起動後、路側機200は、S2006において、STA無線機201によって無線電波のスキャンを開始して、通信エリア#1において車両10A(車載機100aのPCP/AP無線機102)が周期的に送信するビーコン信号を探索する。
【0138】
例えば、路側機200は、S2007において、ビーコン信号が受信されたか否かを監視する。ビーコン信号が受信されない場合(S2007のNo)、路側機200は、ビーコン信号が受信されるまで、別言すると、PCP/AP無線機102を発見できるまで、スキャンを繰り返す。
【0139】
ビーコン信号が受信された場合(S2007のYes)、S2008において、路側機200は、発見したPCP/AP無線機102と無線接続を確立する。なお、S2007において、通信エリア#1の状況によっては、路側機200において、複数のPCP/AP無線機102を発見できることがある。複数のPCP/AP無線機102が発見された場合、路側機200は、例えば、受信信号品質の高いビーコン信号の送信元であるPCP/AP無線機102を接続先に選択、決定してよい。
【0140】
路側機200は、PCP/AP無線機102との無線接続確立後、S2009において、接続先のPCP/AP無線機102(車両10A)から車両10Aが提供可能なサービス候補リストを受信する。このサービス候補リストには、少なくとも1つのサービスが含まれる。
【0141】
なお、図7Bに示したように、S2005からS2009までの処理を、便宜的に、S2102と表記する。
【0142】
サービス候補リストを受信した後、路側機200は、S2009aにおいて、車両10Aから受信したサービス候補リストの中から少なくとも1つのサービスを選択し、選択したサービスの利用を開始する。この場合、車両10Aから路側機200へのV2I通信によるサービスが開始される。
【0143】
なお、S2009において路側機200が通信エリア#1内に位置する車両10Aの車載機100a(PCP/AP無線機102)に対して、サービス候補リストを送信し、車両10Aにサービスを提供してもよい。この場合は、路側機200から車両10AへのI2V通信によるサービスが開始される。なお、車両10から路側機200へのV2I通信は、ULの路車間通信と称してもよい。また、路側機200から車両10へのI2V通信は、DLの路車間通信と称してもよい。
【0144】
(リレー(V2I2V)通信;図7C
次に、リレー通信の動作例について図7Cを参照して説明する。図7Cに示したように、リレー通信では、例えばS2101(図7A参照)及びS2102(図7B参照)が実行される。S2101及びS2102は何れが先に実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0145】
路側機200は、図7BのS2009で受信したサービス候補リストの中に、通信エリア#2内に位置する車両10B(車載機100b)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれているか否かを判断する。
【0146】
車両10B(車載機100b)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれている場合(S2010のYes)、路側機200は、S2011において、リレー通信によるサービス(リレーサービス)のリストを車両10Bへ送信する。リストの送信後、路側機200は、送信したリストに含まれる、少なくとも1つのV2I2V通信によるサービスを開始する。
【0147】
一方、車両10B(車載機100b)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれない場合(S2010のNo)、路側機200は、S2012において、例えば、路車間通信によって提供可能なサービス候補リストを車両10B(車載機100b)へ送信してよい。このサービス候補リストの送信は、図7AのS2004aと同等の処理と捉えてもよい。
【0148】
なお、S2010において「No」の場合、路側機200は、追加的あるいは代替的に、車両10B(車載機100b)へリレー(又はフォワード)可能なサービスが含まれないことを示す情報を、車両10B(車載機100b)へ送信してもよい。
【0149】
V2I2V通信によるリレーサービスの非限定的な一例としては、通信エリア#1の車両10Aにおいて撮影された映像データを、路側機200が受信し、通信エリア#2の車両10Bへ送信するようなサービスが挙げられる。
【0150】
ここで、路側機200(例えば、制御装置203)は、車両10Aから受信した映像データに対し、人工知能(AI)を用いて画像認識などの処理を行った後、処理後のデータを車両10Bへ送信してもよい。なお、AIには、機械学習及びディープラーニングが含まれてよい。
【0151】
以上のように、実施の形態1によれば、車両10の進行方向前方において発見した車載機100のPCP/AP無線機102又は路側機200のPCP/AP無線機202と無線接続を確立する。
【0152】
例えば、基地局(PCP又はAP)の役割を果たす車両10(車載機100)を周囲の交通状況の変化に応じて動的あるいは適応的に選定しなくとも、個々の車両10が、自律的に発見した基地局として機能する車載機100又は路側機200と無線接続する。
【0153】
したがって、車車間又は路車間の無線通信システム全体としての接続成功率を向上できる。接続成功率が向上することによって、車車間通信又は路車間通信の安定性あるいは信頼性を向上できる。
【0154】
(STA無線機及びPCP/AP無線機の設置例)
次に、図8A及び図8Bを参照して、車両10における車載機100(STA無線機101及びPCP/AP無線機102)の設置例について説明する。また、図9A及び図9Bを参照して、路側機200におけるSTA無線機201及びPCP/AP無線機202の設置例について説明する。
【0155】
図1図4に例示した車載機100は、STA無線機101とPCP/AP無線機102とが1つの装置として構成され、車両10に対して、当該車両10の前方及び後方への無線電波の放射を阻害しない箇所(例えば、ルーフ)に一体的に設置される。1つの装置を車両10に設置するため、設置が簡易である。
【0156】
これに対し、図8A及び図8Bに例示したように、STA無線機101とPCP/AP無線機102とは、個別の装置として車両10に対して分離して設置されてもよい。
【0157】
例えば、図8A及び図8Bに例示したように、車両10の前方へ無線電波を放射するSTA無線機101は、車両10のフロント部に設置され、かつ、車両10の後方へ無線電波を放射するPCP/AP無線機102は車両10のリア部に設置されてよい。
【0158】
車両10のフロント部に対するSTA無線機101の取り付け位置の非限定的な一例としては、ダッシュボード、サンバイザー、前方モニタカメラの近傍、ルームミラー(バックミラー)、及び、フロントバンパーが挙げられる。
【0159】
これらの取り付け候補位置の一部又は全部は、車載レーダ装置(例えば、ミリ波レーダ)の取り付け候補位置と共通するため、車載レーダ装置にSTA無線機101が一体化されてもよい。また、前方モニタカメラにSTA無線機101が一体化されてもよい。
【0160】
車両10のリア部に対するPCP/AP無線機102の取り付け位置の非限定的な一例としては、シャークフィン、後方モニタカメラの近傍、バックドア、及び、リアバンパーが挙げられる。後方モニタカメラにPCP/AP無線機102が一体化されてもよい。
【0161】
上述のようにSTA無線機101とPCP/AP無線機102とを車両10の前方及び後方に分離して設置することで、STA無線機101及びPCP/AP無線機102の車両10に対する設置個所の選択肢あるいは自由度が増す。
【0162】
また、ルーフに一体的に設置する場合に比して、車両10の前方及び後方への通信距離を拡大できる。また、車体での反射波による電波干渉あるいは車体による無線電波のブロッケージを低減あるいは回避できるため、通信の安定性を向上できる。トラックあるいはバスといった大型車両の場合、一般的な小型あるいは中型の車両に比して、通信距離の拡大、あるいは通信の安定性向上といった効果を更に高めることができる。
【0163】
路側機200についても、車載機100と同様、図9A及び図9Bに例示したように、STA無線機201とPCP/AP無線機202とは、一体的に設置されてもよいし、分離して設置されてもよい。
【0164】
例えば、路側機200の種類あるいは形状によって、あるいは一体的な設置及び分離設置の何れかを選択できる。また、STA無線機201及びPCP/AP無線機202のサイズによって、一体的な設置及び分離設置の何れかが選択されてもよい。
【0165】
例えば、路側機200が取り付けられる道路設備(例えば、電柱、道路標識、看板など)のサイズに対して路側機200(無線機201及び202)のサイズが小さい場合、道路設備による無線電波の反射あるいはブロッケージの影響を受け易い。
【0166】
このような場合、分離設置を採用することで、無線電波の反射あるいはブロッケージの影響を低減又は回避できる。これに対して、路側機200が取り付けられる道路設備のサイズに対して路側機200(無線機201及び202)のサイズが大きい場合には、一体的な設置を採用することで、路側機200の設置コストを低減できる。
【0167】
(車載機及び路側機の変形例)
車載機100は、図4に例示したように、1つの筐体に、STA無線機101及びPCP/AP無線機102が収容されてもよいし、例えば図10A図10B及び図10Cに例示したように、異なる筐体に分離して収容されてもよい。
【0168】
図10Aには、STA無線機101と制御装置103とが1つの筐体に収容された例が示される。図10Bには、PCP/AP無線機102と制御装置103とが1つの筐体に収容された例が示される。図10Cには、STA無線機101とPCP/AP無線機102とが異なる(個別の、又は、分離した)筐体に収容された例が示される。制御装置103を、STA無線機101およびPCP/AP無線機102の一方又は双方とは、異なる場所に設置することができるので、設計あるいは設置の自由度が増す。例えば、既存又は新規の機器又は設備との共存又は統合を易化できる。また、熱源を空間的に分離又は分散できる(別言すると、熱源の集中を回避又は緩和できる)ため、例えば、STA無線機101、PCP/AP無線機102および制御装置103の少なくとも1つに要求される温度環境条件を緩和できる。
【0169】
なお、路側機200についても同様である。例えば、STA無線機201と制御装置203とが1つの筐体に収容されてもよいし、PCP/AP無線機202と制御装置203とが1つの筐体に収容されてもよい。
【0170】
なお、上述した実施の形態1において、STA無線機101とPCP/AP無線機102との設置関係は逆転してもよい。例えば、PCP/AP無線機102が車両10の前方に無線電波を放射する向きで車両10に取り付けられ、STA無線機101が、車両10の後方に無線電波を放射する向きで車両10に取り付けられてもよい。
【0171】
路側機200についても同様である。例えば、走行中の車両10が路側機200から遠ざかる側に、PCP/AP無線機202による通信エリア#2が形成され、走行中の車両10が路側機200に接近する側に、STA無線機201による通信エリア#1が形成されてもよい。
【0172】
また、STA無線機101(201)及びPCP/AP無線機102(202)は、いずれも、STAモード及びPCP/APモードの双方をサポートした無線機であってもよい。制御装置103(203)の制御によって、動作モードが切り替えられてよい。例えば、車両10の前進及び後退の切り替えに応じて、無線機の動作モードがSTAモード及びPCP/APモードの間で切り替えられてよい。
【0173】
以上の構成を用いることで、相手先の動作モードによって、接続可能な動作モードに変更できるため、接続成功率が向上し、また、進行方向が入れ替わる移動物体として、例えば、列車、新幹線、船舶、飛行機にも応用できる。
【0174】
上述の実施の形態において、各構成要素に用いた「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0175】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例または修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0176】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0177】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0178】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【0179】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0180】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0181】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0182】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0183】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0184】
<本開示のまとめ>
本開示に係る無線通信装置は、移動物体の前方及び後方の一方において第1の移動物体-移動物体間通信又は第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号をスキャンする第1無線機と、前記移動物体の前方及び後方の他方に向けて第2の移動物体-移動物体間通信又は第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を送信する第2無線機と、を備える。
【0185】
本開示に係る無線通信装置において、前記第1無線機及び前記第2無線機は、一体的に前記移動物体に取り付けられてよい。
【0186】
本開示に係る無線通信装置において、前記第1無線機及び前記第2無線機の取り付け位置は、前記移動物体のルーフであってよい。
【0187】
本開示に係る無線通信装置において、前記第1無線機及び前記第2無線機は、前記移動物体のフロント部及びリア部に分離して取り付けられてよい。
【0188】
本開示に係る無線通信装置において、前記フロント部は、ダッシュボード、サンバイザー、前方モニタカメラ、バックミラー、及び、フロントバンパーの少なくとも1つであってよく、前記リア部は、シャークフィン、後方モニタカメラ、バックドア、及び、リアバンパーの少なくとも1つであってよい。
【0189】
本開示に係る無線通信装置は、前記第1無線機と前記第2無線機との間のデータ伝送を制御する制御装置を備えてよい。
【0190】
本開示に係る無線通信装置において、前記第1の移動物体-移動物体間通信又は前記第2の移動物体-移動物体間通信は、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータの共有サービス、並びに、ドライブレコーダ及び前記移動物体に搭載されたカメラによる映像配信サービスの少なくとも1つに関する通信であってよい。
【0191】
本開示に係る無線通信装置において、前記第1の路側機-移動物体間通信又は前記第2の路側機-移動物体間通信は、インターネット接続サービス、ETC(electric toll collection)を用いた自動料金支払いサービス、安全運転支援システムに関するサービス、センサデータ共有サービス、ソフトウェア又はファームウェアの更新サービス、マップ配信サービス、監視カメラ及び路側機に搭載されたカメラによる映像配信サービス、並びに、交通情報配信サービスの少なくとも1つに関する通信であってよい。
【0192】
本開示に係る無線通信装置において、前記データ伝送は、映像伝送サービスにおけるデータの中継であってよい。
【0193】
本開示に係る路側機は、移動物体が前記路側機に接近する側および前記移動物体が前記路側機から遠ざかる側の一方において第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号をスキャンする第1無線機と、前記移動物体が前記路側機に接近する側および前記移動物体が前記路側機から遠ざかる側の他方に向けて第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を送信する第2無線機と、を備える。
【0194】
本開示に係る路側機において、前記第1無線機及び前記第2無線機は、一つの筐体内に設置されてよい。
【0195】
本開示に係る路側機において、前記第1無線機及び前記第2無線機は、前記移動物体が前記路側機に接近する側および前記移動物体が前記路側機から遠ざかる側に分離した2つの筐体にそれぞれ設置されてよい。
【0196】
本開示に係る路側機は、前記第1無線機と前記第2無線機との間の信号伝送を制御する制御装置を備えてよい。
【0197】
本開示に係る移動物体の無線通信方法は、前記移動物体の前方及び後方の一方において第1の移動物体-移動物体間通信又は第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号を、前記移動物体の第1の無線機によって、スキャンし、前記移動物体の前方及び後方の他方に向けて第2の移動物体-移動物体間通信又は第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を、前記移動物体の第2の無線機によって、送信する。
【0198】
本開示に係る路側機の無線通信方法は、移動物体が前記路側機に接近する側および前記移動物体が前記路側機から遠ざかる側の一方において第1の路側機-移動物体間通信の第1接続先検出用信号を、前記路側機の第1無線機によって、スキャンし、前記移動物体が前記路側機に接近する側および前記移動物体が前記路側機から遠ざかる側の他方に向けて第2の路側機-移動物体間通信の第2接続先検出用信号を、前記路側機の第2無線機によって、送信する。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本開示は、例えば、移動物体間又は路側機-移動物体間の無線通信に好適である。
【符号の説明】
【0200】
10,10A,10B,10C 車両
100,100a,100b,100c 車載機
101 STA無線機
102 PCP/AP無線機
103 制御装置
111 センサ
112 CPU
113 メモリ
200 路側機
201 STA無線機
202 PCP/AP無線機
203 制御装置
210 通信装置
211 センサ
212 CPU
213 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C