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特許7336737熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21K 1/04 20060101AFI20230825BHJP
   B21J 5/08 20060101ALI20230825BHJP
   B21J 5/10 20060101ALI20230825BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20230825BHJP
   B21J 9/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B21K1/04
B21J5/08 Z
B21J5/10 Z
B21J13/02 C
B21J13/02 K
B21J13/02 A
B21J9/06 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021066134
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126568
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501347224
【氏名又は名称】株式会社阪村ホットアート
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正弘
(72)【発明者】
【氏名】榎本 稔
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/122186(WO,A1)
【文献】特開2013-164095(JP,A)
【文献】特開2005-271034(JP,A)
【文献】特開2004-298898(JP,A)
【文献】特開2009-279627(JP,A)
【文献】特開昭57-175045(JP,A)
【文献】特開昭53-066866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/04
B21J 5/08
B21J 5/10
B21J 13/02
B21J 9/06
F16C 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの熱間フォーマーを用いて一個の円柱状素材から内、外輪を、2セットで計4個を圧造成形するための熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法であって、まず、第1工程において、加熱され所定寸法に切断された一個の円柱状素材Aをダイとパンチにより圧造成形して、外輪部B1と、外輪部B1の中央上部に形成されかつ外輪部B1の内径と同径の上側凹部B5と内輪部B2の内径と同径の下側凹部B6とからなる浅い段付凹所B4と、段付凹所B4を除く外輪部B1の内周部分と同心一体に連設されかつ下部が外輪部B1の下面よりも下方に突出しかつ厚肉底部B3を備えた内輪部B2とでなる第1親子成形品Bを形成し、次いで、第2工程において、第1親子成形品Bをダイとパンチにより外輪部B1と内輪部B2の境界で打抜いて二つに分離し、外輪R1と、外径が外輪R1の内径と同径で上部に凹部C6を有する厚肉底部C3付きの内輪部C2とを形成し、その後、第3工程において、ダイとパンチにより厚肉底部C3付き内輪部C2における厚肉底部C3を穴抜きして、内輪R2と、内輪R2の内径と同径で2セット目小サイズの内、外輪を成形するための高さを有する第2円柱状素材D3との二つに分離し、さらに、第4工程において、第2円柱状素材D3をダイとパンチにより圧造成形して、第2外輪部E1と、第2外輪部E1の中央上部に形成されかつ第2外輪部E1の内径と同径の上側凹部E5と第2内輪部E2の内径と同径の下側凹部E6とからなる段付凹所E4と、段付凹所E4部分を除いて第2外輪部E1と同心一体に連設されかつ下部が外輪部E1の下面よりも下方に突出する厚肉底部E3付きの第2内輪部E2とでなる第2親子成形品Eを形成し、然る後、第5工程において、第2親子成形品Eを内外二つのダイと内外二つのパンチで2段打ち抜き加工することにより、第2内輪部E2における底部E3を穴抜きすると共に、第2外輪E1と第2内輪部E2との境界部分で打抜いて二つに分離して、第2外輪R3と、第2外輪R3の内径と同径の外径を有する第2内輪R4と、その底部の穴抜カスF3との三つに分離形成するようにしたことを特徴とする熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの熱間フォーマーを用いて一個の円柱状素材から軸受における内、外輪を、2セットで計4個を圧造成形するための熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受の内、外輪の製造方法としては、一つの熱間フォーマーを用いて、例えば図8に示すように、まず第1工程において、所定温度に加熱されかつ所定寸法に切断された図8の(a)に示す一個の円柱状素材10Aに据え込み加工を施して図8の(b)に示すような扁平な円盤状素材10Bを形成し、次いで、第2工程において、円盤状素材10Bをパンチとダイで圧造成形して図8の(c)に示す大径の外輪部11と、外輪部11と同心一体で薄板状の底部13を有する小径の内輪部12とからなる一個の親子成形品10Cを形成し、その後、第3工程において、親子成形品10Cをパンチによる打抜きにより外輪部11と内輪部12との境界で二つに分離して、図8の(d)に示すような外輪R1と、外径が外輪R1の内径と同径となりかつ底部13を有する内輪部12とを形成し、然る後、第4工程において、パンチにより内輪部12における底部13を穴抜きして、内輪R2と、内輪R2の内径と同径の円板状穴抜カス13との二つに分離し、これにより内、外輪R1,R2を製造するようにしたものが知られている。
なお、以上ようにして製造された内、外輪R1,R2のうち、少なくとも外輪R1は、熱間フォーマーによる成形後、後工程でリングロール法による冷間転造組成加工にて拡径成形されて使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法よれば、一個の円柱状素材Aから大径の外輪R1と、外径が外輪R1の内径と同径となる内輪R2が製造されると同時に、円板状穴抜カス13が発生することになる。その際、内輪R2の内径と同径の大きな円板状穴抜カス13が発生することから、大きな材料ロスが生じて歩留まりが悪い問題あった。
この問題を解消する手段として、従来では第2工程において、図8の(c)に示すように外輪部11と、底部13を有する内輪部12とからなる一個の親子成形品10Cを形成する際、外輪部11と内輪部12との中心部に形成する段付凹所14の深さを深く形成し、つまり外輪部11の中央部上面から内輪部12の底面近くに至る上下二段の凹部からなる深い段付凹所14を形成して、内輪部12における底部12の板厚を小さく設定し、これにより穴抜カス13を軽減して材料ロスを抑えるように図られている。
しかし、円盤状素材10Bからいきなり図8の(c)に示す外輪部11と、段付凹所14が深く形成されかつ底部13の板厚を小さく設定した有底内輪部12とからなる親子成形品10Cを圧造成形するには、第2工程において極端に大きな成形荷重(例えば#6314CRFのブランクを親子成形する場合、成形荷重が1200~1300トンに設定されている。)が必要となる。このように第2工程におけるダイとパンチに大きな成形荷重がかかると成形時の金型摩耗が激しく発生することになり、その結果、高価な金型の寿命、つまり交換時期が短くなってしまっているのが現状である。また、内輪R2の内径と同径となる円板状穴抜カス13の大きな外径面積自体は変わることがないので、依然として歩留まりが悪く材料コストが高く付く問題を有していた。
【0004】
そこで、本発明は、上記した問題に鑑み発明したもので、一個の円柱状素材から内、外輪を成形する際に生じる穴抜カスを、2セット目として小サイズの内、外輪を圧造成形する際の第2円柱状素材として有効利用できるように工夫し、これにより一つの熱間フォーマーで一個の円柱状素材から内、外輪を2セットで計4個を成形することができ、しかも、成形荷重を低減させて成形時の金型摩耗を軽減させ金型寿命を長期化でき、その上、全体として材料の歩留まりも大幅に向上して材料コストの低減化が図れる熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一つの熱間フォーマーを用いて一個の円柱状素材から内、外輪を、2セットで計4個を圧造成形するための熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法であって、まず、第1工程において、加熱され所定寸法に切断された一個の円柱状素材Aをダイとパンチにより圧造成形して、外輪部B1と、外輪部B1の中央上部に形成されかつ外輪部B1の内径と同径の上側凹部B5と内輪部B2の内径と同径の下側凹部B6とからなる浅い段付凹所B4と、段付凹所B4を除く外輪部B1の内周部分と同心一体に連設されかつ下部が外輪部B1の下面よりも下方に突出しかつ厚肉底部B3を備えた内輪部B2とでなる第1親子成形品Bを形成し、次いで、第2工程において、第1親子成形品Bをダイとパンチにより外輪部B1と内輪部B2の境界で打抜いて二つに分離し、外輪R1と、外径が外輪R1の内径と同径で上部に凹部C6を有する厚肉底部C3付きの内輪部C2とを形成し、その後、第3工程において、ダイとパンチにより厚肉底部C3付き内輪部C2における厚肉底部C3を穴抜きして、内輪R2と、内輪R2の内径と同径で2セット目小サイズの内、外輪を成形するための高さを有する第2円柱状素材D3との二つに分離し、さらに、第4工程において、第2円柱状素材D3をダイとパンチにより圧造成形して、第2外輪部E1と、第2外輪部E1の中央上部に形成されかつ第2外輪部E1の内径と同径の上側凹部E5と第2内輪部E2の内径と同径の下側凹部E6とからなる段付凹所E4と、段付凹所E4部分を除いて第2外輪部E1と同心一体に連設されかつ下部が外輪部E1の下面よりも下方に突出する厚肉底部E3付きの第2内輪部E2とでなる第2親子成形品Eを形成し、然る後、第5工程において、第2親子成形品Eを内外二つのダイと内外二つのパンチで2段打ち抜き加工することにより、第2内輪部E2における底部E3を穴抜きすると共に、第2外輪E1と第2内輪部E2との境界部分で打抜いて二つに分離して、第2外輪R3と、第2外輪R3の内径と同径の外径を有する第2内輪R4と、その底部の穴抜カスF3との三つに分離形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記した本発明の熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法によれば、一個の円柱状素材Aから内、外輪R1,R2を圧造成形する際に生じる穴抜カスを、2セット目として小サイズの内、外輪R3,R4を成形する際の第2円柱状素材D3として有効利用できるように工夫したから、一つの熱間フォーマーで一個の円柱状素材から内、外輪を2セットで計4個を圧造成形することができる。しかも、成形荷重を低減させて成形時の金型摩耗を軽減させ金型寿命を長期化でき、その上、全体として材料の歩留まりも大幅に向上して材料コストの低減化を図ることができる。
具体的には、上記した第3工程において、1セット目の内、外輪R1,R2を成形する際に生じる穴抜カスを、穴抜カスとしてではなく2セット目で小サイズの内、外輪R3,R4を成形するための高さとボリューウムを有する第2円柱状素材D3として残すように工夫した。そのためには、第1工程において、外輪部B1と、上下の段付凹所B4と、底部B3付きの内輪部B2とからなる第1親子成形品Bを圧造成形する際、上下の段付凹所B4の深さを、積極的に外輪部B1の中央上部に浅く形成するようにした。その結果、前述した従来例のように、その第2工程において穴抜きカスを少なくする目的で、外輪部11の中央部でこれの上面から内輪部12の底面近くにまで至る深い段付凹所14を形成する製造方法の場合に較べて、その成形荷重を著しく低減できる。したがって、この成形荷重の低減により成形時の金型摩耗を軽減させて金型交換時期を長期にできる。
また、第2円柱状素材D3を、内輪D2の内径と同径で高さとボリューウムのある円柱形状として残すことにより、第2円柱状素材D3の温度を圧造成形可能な高温状態のまま維持することができる。これにより、第4、第5工程において2セット目小サイズの内、外輪R3,R4を圧造成形する場合についても、高温状態のもとで成形荷重を極力抑えて高精度に第2親子成形品Eを圧造成形することができる。その上、最後の第5工程において発生する穴抜きカスF3は、内、外輪を2セットで計4個を成形したうえでの穴抜きカスF3であり、加えて2セット目の内輪R4の内径が1セット目の内輪R2の内径よりも小さいことから、従来の穴抜きカス13よりも少なく抑えることができる。その結果、全体として材料に対する歩留まりを大幅に向上して材料コストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る内、外輪の製造方法による内、外輪の製造工程における円柱状素材の正面図である。
図2】同据込加工によりスケール落としされた円柱状素材の正面図である。
図3】同第1工程における第1親子成形品の縦断面図である。
図4】同第2工程における成形品の縦断面図である。
図5】同第3工程における成形品の縦断面図である。
図6】同第4工程における第2親子成形品の縦断面図である。
図7】同第5工程における成形品の縦断面図である。
図8】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る、熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法を図に基づいて説明する。
【0009】
図1図7は、一つの熱間フォーマーにより一個の円柱状素材から軸受における内、外輪を2セットで計4個を圧造成形する製造工程を段階的に示している。
【0010】
図1は加熱されたうえで所定寸法に切断された一個の中実の円柱状素材Aを示す。この円柱状素材Aは、複数の圧造ステーションを備えた横型多段式の熱間フォーマー(横型多段式の熱間フォーマーの全体構造については図示せず。)において加熱された丸棒状線材を送り装置によりダイブロックの前方に寸法決めして送り出し、かつ切断装置の切断刃にて所定寸法に切断したものである。
【0011】
そして、この円柱状素材Aは、熱間フォーマーにおける第1工程よりも前段の据込工程において、スケール落としのための据込加工が行われ、その据込加工によって図2に示すようなスケール落としが施されたやや外膨みの円柱状素材A1が形成される。
その場合、例えば#6206CRFに使用する円柱状素材Aを据込加工する場合、成形荷重は20~25トンで行なわれる。なお、このスケール落としを行うための据込加工は必ずしも必要ではなく省略してもよい。
スケール落としが行われた円柱状素材A1は図示しないトランスファチャックにより熱間フォーマーの第1工程に移送される。
【0012】
そして、熱間フォーマーの第1工程において、加熱された円柱状素材A1はダイとパンチにより圧造成形され、図3に示す外輪部B1と、外輪部B1の中央上部に形成されかつ外輪部B1の内径と同径の上側凹部B5と内輪部B2の内径と同径の下側凹部B6とからなる浅い段付凹所B4と、段付凹所B4を除く外輪部B1の内周部分と同心一体に連設されかつ下部が外輪部B1の下面よりも下方に突出しかつ厚肉底部B3を備えた内輪部B2とでなる第1親子成形品Bが形成される。
この第1工程において、外輪部B1と、上下の段付凹所B4と、底部B3付き内輪部B2とからなる第1親子成形品Bを形成する際、段付凹所B4の深さを、外輪部B1の中央上部に浅く形成するだけでよい。これにより、その成形荷重を著しく低減できる。例えば、図3に示す#6314CRFのブランクを親子成形する場合、従来の成形荷重に対して、本発明ではその成形荷重を従来の50%以下に低減することができる。
図に示す実施例では、外輪部B1と内輪部B2の上下高さ寸法が同一に設定されている。なお、この高さ寸法は多少異なる寸法であってもよい。
そして、圧造成形されダイ外に排出された第1工程成形品Cは図示しないトランスファチャックにより挟持されて熱間フォーマーの第2工程に移送される。
【0013】
次いで、第2工程において、第1成形品Bがダイとパンチにより外輪部B1と内輪部B2との境界で打抜かれて二つに分離され、図4に示すような1セット目の外輪R1と、外径が外輪R1の内径と同径で上部に凹部C6を有する厚肉底部C3付きの内輪部C2とが形成される。
そして、成形された外輪R1はダイ外部の所定位置に取り出されたうえで排出コンベア(図示せず)上などに排出されて適宜収納部に配送される一方、厚肉底部C3付きの内輪部C2はトランスファチャックにより挟持されて熱間フォーマーの第3工程に移送される。
【0014】
その後、第3工程において、ダイと穴抜きパンチにより厚肉底部C3付き内輪C2における底部C3を穴抜きして、図5に示すように1セット目の内輪R2と、内輪R2の内径と同径で2セット目小サイズの内、外輪を成形するための高さとボリュームを有する第2円柱状素材D3との二つに分離される。
そして、成形された内輪R2はダイ外部の所定位置に取り出されたうえで排出コンベア(図示せず)上などに排出されて適宜収納部に配送される一方、第2円柱状素材D3はトランスファチャックにより挟持されて熱間フォーマーの第4工程に移送される。
【0015】
さらに、第4工程において、第2の円柱状素材D3をダイとパンチにより圧造成形して、図6に示すような第2外輪部E1と、第2外輪部E1の中央上部に形成されかつ第2外輪部E1の内径と同径の上側凹部E5と第2内輪部E2の内径と同径の下側凹部E6とからなる段付凹所E4と、段付凹所E4部分を除いて第2外輪部E1と同心一体に連設されかつ下部が外輪部E1の下面よりも下方に突出する底部E3付きの第2内輪部E2とでなる第2親子成形品Eが形成される。
図に示す実施例では、底部E3の板厚を薄くすることと、底部E3の下からの穴抜きが円滑に行えるようにするため、底部E3の底面側にも内輪部E2の内径と同径の凹所E7が形成されている。
その場合、第4工程においては、第1親子成形品Bのサイズに較べて図6に示すような小さなサイズの第2親子成形品Eを形成することになるので、その成形荷重は第1親子成形品Bの成形荷重よりも低減されるのは勿論、例えば図6に示す#6206CRFのブランクを親子成形する場合、その成形荷重は従来の80%に低減される。
そして、圧造成形された第2親子成形品Eは図示しないトランスファチャックにより挟持されて熱間フォーマーの第5工程に移送される。
【0016】
然る後、第5工程において、第2親子成形品Eは、内外二つのダイと内外二つのパンチで2段打ち抜き加工されて、第2内輪部E2における底部E3が穴抜きされると共に、第2外輪E1と第2内輪部E2との境界部分で打抜かれて二つに分離され、図7に示すように第2外輪R3と、第2外輪R3の内径と同径の外径を有する第2内輪R4と、その底部の薄板状穴抜カスF3との三つに分離形成されることになる。
そして、第5工程において成形された第2外輪R3と第2内輪R4は、それぞれダイ外部の所定位置に取り出されたうえで排出コンベア(図示せず)上などに排出されて適宜収納部に配送される一方、穴抜カスF3は穴抜き動作時にダイ外へ押し出されて排出される。
【0017】
以上のように上記した本発明の熱間フォーマーによる内、外輪の製造方法によれば、一個の円柱状素材Aから内、外輪R1,R2を圧造成形する際に生じる穴抜カスを、2セット目として小サイズの内、外輪R3,R4を成形する際の第2円柱状素材D3として有効利用できるように工夫したから、一つの熱間フォーマーで一個の円柱状素材から内、外輪を2セットで計4個を圧造成形することができる。しかも、成形荷重を低減させて成形時の金型摩耗を軽減させ金型寿命を長期化でき、その上、全体として材料の歩留まりも大幅に向上して材料コストの低減化を図ることができる。
具体的には、上記した第3工程において、1セット目の内、外輪R1,R2を成形する際に生じる穴抜カスを、穴抜カスとしてではなく2セット目で小サイズの内、外輪R3,R4を成形するための高さとボリューウムを有する第2円柱状素材D3として残すように工夫した。そのためには、第1工程において、外輪部B1と、上下の段付凹所B4と、底部B3付きの内輪部B2とからなる第1親子成形品Bを圧造成形する際、上下の段付凹所B4の深さを、積極的に外輪部B1の中央上部に浅く形成するようにした。その結果、前述した従来例のように、その第2工程において穴抜きカスを少なくする目的で、外輪部11の中央部でこれの上面から内輪部12の底面近くにまで至る深い段付凹所14を形成する製造方法の場合に較べて、その成形荷重を著しく低減できる。したがって、この成形荷重の低減により成形時の金型摩耗を軽減させて金型交換時期を長期にできる。
また、第2円柱状素材D3を、内輪D2の内径と同径で高さとボリューウムのある円柱形状として残すことにより、第2円柱状素材D3の温度を圧造成形可能な高温状態のまま維持することができる。これにより、第4、第5工程において2セット目小サイズの内、外輪R3,R4を圧造成形する場合についても、高温状態のもとで成形荷重を極力抑えて高精度に第2親子成形品Eを圧造成形することができる。その上、最後の第5工程において発生する穴抜きカスF3は、内、外輪を2セットで計4個を成形したうえでの穴抜きカスF3であり、加えて2セット目の内輪R4の内径が1セット目の内輪R2の内径よりも小さいことから、従来の穴抜きカス13よりも少なく抑えることができる。その結果、全体として材料に対する歩留まりを大幅に向上して材料コストの低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0018】
A 円柱状素材
B 第1親子成形品
B1 外輪部
B2 内輪部
B3 肉厚底部
B4 段付凹所
B5 上側凹部
B6 下側凹部
C2 内輪部
C3 底部
C6 凹部
D3 第2円柱状素材
E 第2親子成形品
E1 第2外輪部
E2 第2内輪部
E3 底部
E4 段付凹所
E5 上側凹部
E6 下側凹部
F3 穴抜きカス
R1 外輪
R2 内輪
R3 第2外輪
R4 第2内輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8