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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20230825BHJP
   H04N 23/68 20230101ALI20230825BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N23/68
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022188716
(22)【出願日】2022-11-25
【審査請求日】2022-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100199314
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 寛
(72)【発明者】
【氏名】中田 周作
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219579(JP,A)
【文献】特開2019-164338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を介して被写体像を撮像する撮像素子と、
自装置の振れ量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出される振れ量に基づいて、像振れ補正のための演算を行う演算処理部と、
前記演算処理部の演算結果に基づいて、前記撮像素子についての所定の可動範囲内における並進移動及び回転移動により前記像振れ補正を実行する像振れ補正部とを備え、
前記演算処理部は、前記振れ量を相殺する振れ補正量が順次計算される計算結果に応じて、前記可動範囲内における前記並進移動及び前記回転移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とを変化させる
撮像装置。
【請求項2】
前記振れ補正量は、前記第1の移動に対応する第1の成分と、前記第2の移動に対応する第2の成分とを含み、
前記演算処理部は、前記振れ補正量の計算結果における前記第1及び第2の成分のうちの一方の成分が小さいほど、他方の成分に対応する移動が実行可能な最大量を大きくするように、前記第1及び第2の最大量を変化させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記演算処理部は、前記振れ補正量の計算結果における前記第1の成分が低減したとき、
低減した第1の成分に応じて、前記第1の最大量を減少させて、前記第2の最大量を増大させる
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記演算処理部は、前記振れ補正量の計算結果における前記第1の成分が低減していないとき、
前記振れ補正量の計算結果における前記第2の成分の大きさに基づいて、前記第1の最大量の暫定値を算出して、前記第2の最大量を設定する
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記演算処理部は、前記振れ補正量の計算結果における前記第1の成分が低減していないとき、
前記第1の最大量が前記像振れ補正部による前記第1の移動により補正済みの第1の成分以上となるように、前記第2の最大量を制限する
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記演算処理部は、
前記可動範囲における第1の所定値以下に前記第1の最大量を制限することと、
前記可動範囲における第2の所定値以下に前記第2の最大量を制限することとのうちの少なくとも一方を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学系における焦点距離に基づいて、前記第1及び第2の最大量をそれぞれ設定する制御部をさらに備え、
前記演算処理部は、前記振れ補正量の計算結果に応じて、前記制御部により設定された第1及び第2の最大量から各最大量を変化させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記像振れ補正部による前記像振れ補正である第1の像振れ補正と、前記光学系において行われる第2の像振れ補正との間の配分を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記演算処理部が前記振れ補正量の計算結果に応じて前記第1及び第2の最大量を変化させると、前記第1及び第2の像振れ補正間の配分を変更する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の移動は、前記撮像素子において前記被写体像が撮像される撮像面上の回転であり、前記第2の移動は、前記撮像面に沿った並進である
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
光学系を介して被写体像を撮像する撮像素子と、
自装置の振れ量を検出する検出部と、
前記検出部によって検出される振れ量に基づいて、所定の可動範囲内における複数種類の移動により第1の像振れ補正を実行する像振れ補正部と、
前記像振れ補正部による前記第1の像振れ補正と、前記光学系において行われる第2の像振れ補正との間の配分を制御する制御部とを備え、
前記振れ量を相殺する振れ補正量が順次計算される計算結果に応じて、前記可動範囲内で前記像振れ補正部における前記複数種類の移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とが変化し、
前記制御部は、前記振れ補正量の計算結果に応じて前記第1及び第2の最大量が変化すると、前記第1及び第2の像振れ補正間の配分を変更する
撮像装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記光学系の状態が変化したとき、前記配分を変更し、
前記光学系の状態が変化していないとき、前記振れ補正量の計算結果に応じて、前記第1及び第2の最大量が変化すると前記配分を変更し、前記第1及び第2の最大量が変化していないなら前記配分を変更しない
請求項10に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手振れ補正機能を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、様々な撮影状態において像振れ補正の補正範囲を有効に活用することを目的とした防振装置を開示する。この防振装置は、静止画モードの露光時もしくは待機時又は動画モード時といった撮影状態に応じて防振制御に用いる補正軸を設定する。さらに、動画撮影の特に歩き撮り時に発生するロールブレを効果的に補正するために、動画時には回転方向のロールブレに対する補正量を多く割り当て、並進方向のブレに対する補正量を少なく割り当てている。又、特許文献1は、歩き撮りの状態を判定するために、カメラ振れ検出部の情報を使用することも開示する。歩き撮り、定点撮影又はマクロ撮影といった撮影条件に応じて補正量の割り当てが変更されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-71574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、歩き撮り等の撮影条件に応じて補正量の割り当てが行われることから、例えば回転方向は小幅で並進方向に大幅な手振れが、当該撮影条件下で生じたために手振れが補正困難になる場合がある。このように、従来技術では、多様な手振れに対して撮像装置が本来は補正可能な範囲を有効活用し難い課題があった。
【0005】
本開示は、多様な手振れに対して撮像装置が補正可能な範囲を有効に活用することができる撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様における撮像装置は、光学系を介して被写体像を撮像する撮像素子と、自装置の振れ量を検出する検出部と、検出部によって検出される振れ量に基づいて、像振れ補正のための演算を行う演算処理部と、演算処理部の演算結果に基づいて、撮像素子についての所定の可動範囲内における並進移動及び回転移動により像振れ補正を実行する像振れ補正部とを備え、演算処理部は、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、可動範囲内における並進移動及び回転移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とを変化させる。
【0007】
本開示の別の態様における撮像装置は、光学系を介して被写体像を撮像する撮像素子と、自装置の振れ量を検出する検出部と、検出部によって検出される振れ量に基づいて、所定の可動範囲内における複数種類の移動により第1の像振れ補正を実行する像振れ補正部と、像振れ補正部による第1の像振れ補正と、光学系において行われる第2の像振れ補正との間の配分を制御する制御部とを備え、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、可動範囲内で像振れ補正部における複数種類の移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とが変化し、制御部は、振れ補正状態に応じて第1及び第2の最大量が変化すると、第1及び第2の像ぶれ補正間の配分を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における撮像装置によると、多様な手振れに対して撮像装置が補正可能な範囲を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態1に係るデジタルカメラの斜視図
図2】実施形態1に係るデジタルカメラの構成を示すブロック図
図3】デジタルカメラにおけるBIS処理部の構成を示すブロック図
図4】実施形態1におけるデジタルカメラの手ぶれ補正の全体動作を例示するフローチャート
図5】デジタルカメラにおける典型的な補正範囲を説明するための図
図6】デジタルカメラにおけるセンサ可動範囲の有効活用の課題を説明するための図
図7】実施形態1のデジタルカメラにおけるBIS機能の手振れ補正動作を例示するフローチャート
図8】実施形態1のデジタルカメラにおける最大移動量の再計算処理を例示するフローチャート
図9】ロール方向の手振れが低減した場合の手振れ補正状態の一例を示す図
図10】ロール方向の手振れが低減していない場合の手振れ補正状態の一例を示す図
図11】ロール方向の手振れが過度に大きい場合の手振れ補正状態を例示する図
図12】ロール方向の手振れの補正後にロール方向以外で過大な手振れが生じた場合の手振れ補正状態を例示する図
図13】実施形態2のデジタルカメラにおける最大移動量の再計算処理を例示するフローチャート
図14】デジタルカメラにおける最大移動量の上限値を説明するための図
図15】実施形態3におけるデジタルカメラの手振れ補正の全体動作を例示するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における実施の形態を、図面を適宜参照しながら説明する。ただし、詳細な説明において、従来技術および実質的に同一の構成に関する説明のうち不必要な部分は省略されることもある。これは、説明を簡単にするためである。また、以下の説明および添付の図面は、当業者が本開示を充分に理解できるよう開示されるのであって、特許請求の範囲の主題を限定することを意図されていない。
【0011】
(実施形態1)
実施形態1では、撮像装置の一例として像ぶれ補正機能を有するレンズ交換式のデジタルカメラの例を説明する。
【0012】
1.構成
図1は、実施形態1に係るデジタルカメラ1の斜視図である。図2は、実施形態1に係るデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。デジタルカメラ1は、カメラ本体100とそれに着脱可能な交換レンズ200とから構成される。以下の説明では、カメラ本体100内の撮像素子を移動してぶれを補正する機能を「BIS(Body Image Stabilizer)機能」という。また、交換レンズ200内の補正用レンズを移動してぶれを補正する機能を「OIS(Optical Image Stabilizer)機能」という。
【0013】
また、以下の説明において、デジタルカメラ1の水平方向に対応するX軸回りの方向(即ちチルト方向)をピッチ方向とし、とし、垂直方向に対応するY軸回りの方向(即ちパン方向)をヨー方向とする(図1参照)。又、デジタルカメラ1における撮像素子の撮像面が光軸に直交する面内で回転する方向(Z軸回りの方向)をロール方向とする(図1参照)。
【0014】
1-1.カメラ本体
カメラ本体100(撮像装置の一例)は、画像センサ110と、液晶モニタ120と、操作部130と、カメラ制御部140と、ボディマウント150と、カードスロット170とを備える。
【0015】
カメラ制御部140は、レリーズ釦からの指示に応じて、画像センサ110等の構成要素を制御することでデジタルカメラ1全体の動作を制御する。カメラ制御部140は、垂直同期信号をタイミング発生器112に送信する。これと並行して、カメラ制御部140は、露光同期信号を生成する。カメラ制御部140は、生成した露光同期信号を、ボディマウント150及びレンズマウント250を介して、レンズ制御部240に周期的に送信する。カメラ制御部140は、制御動作や画像処理動作の際に、RAM141をワークメモリとして使用する。
【0016】
画像センサ110は、交換レンズ200を介して入射される被写体像を撮像して画像データを生成する撮像素子の一例である。画像センサ110は例えばCCD、CMOSイメージセンサまたはNMOSイメージセンサである。生成された画像データは、ADコンバータ111でデジタル化される。デジタル化された画像データは、カメラ制御部140により所定の画像処理が施される。所定の画像処理とは、例えば、ガンマ補正処理、ホワイトバランス補正処理、キズ補正処理、YC変換処理、電子ズーム処理、JPEG圧縮処理である。
【0017】
画像センサ110は、タイミング発生器112により制御されるタイミングで動作する。画像センサ110は、記録用の静止画像もしくは動画像または、スルー画像(即ちライブビュー画像)を生成する。スルー画像は、主に動画像であり、ユーザが静止画像の撮像のための構図を決めるために液晶モニタ120に表示される。
【0018】
液晶モニタ120はスルー画像等の画像およびメニュー画面等の種々の情報を表示する。液晶モニタ120は、本実施形態における表示部の一例である。液晶モニタに代えて、他の種類の表示デバイス、例えば、有機ELディスプレイデバイスを使用してもよい。
【0019】
操作部130は、撮影開始を指示するためのレリーズ釦、撮影モードを設定するためのモードダイアル、及び電源スイッチ等の種々の操作部材を含む。操作部130は、液晶モニタ120に重畳して配置されたタッチパネルも含む。
【0020】
カードスロット170は、メモリカード171を装着可能であり、カメラ制御部140からの制御に基づいてメモリカード171を制御する。デジタルカメラ1は、メモリカード171に対して画像データを格納したり、メモリカード171から画像データを読み出したりすることができる。
【0021】
ボディマウント150は、交換レンズ200のレンズマウント250と機械的及び電気的に接続可能である。ボディマウント150は、レンズマウント250を介して、交換レンズ200との間で、データを送受信可能なカメラ本体100側の通信部の一例である。ボディマウント150は、カメラ制御部140から受信した露光同期信号を、レンズマウント250を介してレンズ制御部240に送信する。また、カメラ制御部140から受信したその他の制御信号を、レンズマウント250を介してレンズ制御部240に送信する。また、ボディマウント150は、レンズマウント250を介してレンズ制御部240から受信した信号をカメラ制御部140に送信する。
【0022】
また、カメラ本体100は、BIS機能を実現する構成として、カメラ本体100のぶれを検出するジャイロセンサ184(ぶれ検出部)と、ジャイロセンサ184の検出結果に基づきぶれ補正処理を制御するBIS処理部183とをさらに備える。さらに、カメラ本体100は、画像センサ110を移動させるセンサ駆動部181と、画像センサ110の位置を検出する位置センサ182とを備える。
【0023】
センサ駆動部181は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。センサ駆動部181は、その他のモータ又はアクチュエータ等を含んでもよい。位置センサ182は、光学系の光軸に垂直な面内における画像センサ110の位置を検出するセンサである。位置センサ182は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。
【0024】
BIS処理部183は、ジャイロセンサ184からの信号及び位置センサ182からの信号に基づき、センサ駆動部181を制御して、カメラ本体100のぶれを相殺するように画像センサ110を光軸に垂直な面内に並進、回転させる。センサ駆動部181により画像センサ110を駆動できる範囲には機構的に制限がある。BIS機能においてセンサ駆動部181により画像センサ110を駆動できる範囲を「センサ可動範囲」という。
【0025】
1-2.交換レンズ
交換レンズ200は、光学系と、レンズ制御部240と、レンズマウント250とを備える。光学系は、ズームレンズ210と、OIS(Optical Image Stabilizer)レンズ220と、フォーカスレンズ230と、絞り260とを含む。
【0026】
ズームレンズ210は、光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。ズームレンズ210は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。ズームレンズ210は、ズーム駆動部211により駆動される。ズーム駆動部211は、ユーザが操作可能なズームリングを含む。または、ズーム駆動部211は、ズームレバー及びアクチュエータまたはモータを含んでもよい。ズーム駆動部211は、ユーザによる操作に応じてズームレンズ210を光学系の光軸方向に沿って移動させる。
【0027】
フォーカスレンズ230は、光学系で画像センサ110上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ230は、1枚又は複数枚のレンズで構成される。フォーカスレンズ230は、フォーカス駆動部233により駆動される。
【0028】
フォーカス駆動部233はアクチュエータまたはモータを含み、レンズ制御部240の制御に基づいてフォーカスレンズ230を光学系の光軸に沿って移動させる。フォーカス駆動部233は、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、または超音波モータなどで実現できる。
【0029】
OISレンズ220は、OIS機能において、交換レンズ200の光学系で形成される被写体像のぶれを補正するためのレンズ即ち補正レンズの一例である。OISレンズ220は、デジタルカメラ1のぶれを相殺する方向に移動することにより、画像センサ110上の被写体像のぶれを小さくする。OISレンズ220は1枚又は複数枚のレンズで構成される。OISレンズ220はOIS駆動部221により駆動される。
【0030】
OIS駆動部221は、OIS処理部223からの制御を受けて、光学系の光軸に垂直な面内でOISレンズ220をシフトする。OIS駆動部221によりOISレンズ220を駆動できる範囲には機構的に制限がある。OIS駆動部221によりOISレンズ220を駆動できる範囲を「レンズ可動範囲」という。OIS駆動部221は、例えば、マグネットと平板コイルとで実現可能である。位置センサ222は、光学系の光軸に垂直な面内におけるOISレンズ220の位置を検出するセンサである。位置センサ222は、例えば、マグネットとホール素子で実現可能である。OIS処理部223は、位置センサ222の出力及びジャイロセンサ224(ぶれ検出部)の出力に基づいてOIS駆動部221を制御する。
【0031】
レンズマウント250は、ボディマウント150を介して、カメラ本体100との間で、データを送受信可能な交換レンズ200側の通信部の一例である。
【0032】
絞り260は画像センサ110に入射される光の量を調整する。絞り260は、絞り駆動部262により駆動され、その開口の大きさが制御される。絞り駆動部262はモータまたはアクチュエータを含む。
【0033】
ジャイロセンサ184または224は、デジタルカメラ1の単位時間あたりの角度変化すなわち角速度に基づいて、例えばヨー方向、ピッチ方向及びロール方向のうちの1つ以上のぶれ(振動)を検出する。ジャイロセンサ184または224は、検出したぶれの量(角速度)を示す角速度信号をBIS処理部183またはOIS処理部223に出力する。ジャイロセンサ184または224によって出力された角速度信号は、手ぶれやメカノイズ等に起因した幅広い周波数成分を含み得る。ジャイロセンサに代えて、デジタルカメラ1のぶれを検出できる他のセンサを使用することもできる。
【0034】
カメラ制御部140及びレンズ制御部240は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、プログラムを用いたマイクロコンピュータなどで構成してもよい。例えば、カメラ制御部140及びレンズ制御部240は、CPU、MPU、GPU、DSU、FPGAまたはASIC等の各種プロセッサで実現できる。
【0035】
1-3.BIS処理部
図3を用いて、カメラ本体100におけるBIS処理部183の構成を説明する。BIS処理部183は、ADC(アナログ/デジタル変換部)/LPF(ロー・パス・フィルタ)405と、HPF(ハイ・パス・フィルタ)406と、位相補償部407と、積分器408と、補正演算部409と、PID制御部410とを含む。
【0036】
ADC/LPF405は、ジャイロセンサ184からの角速度信号をアナログ形式からデジタル形式へ変換する。さらに、ADC/LPF405は、ノイズを排除してデジタルカメラ1のぶれのみを抽出するために、デジタル形式に変換された角速度信号の高周波成分を遮断する。撮影者の手ぶれの周波数が1~10Hz程度の低周波であり、この点を考慮してLPFのカットオフ周波数が設定される。ノイズが問題とならない場合はLPFの機能を省略することができる。
【0037】
HPF406は、ドリフト成分を遮断するため、ADC/LPF405から受信した信号に含まれる所定の低周波成分を遮断する。
【0038】
位相補償部407は、HPF406から受信した信号に対して、センサ駆動部181などに起因する位相遅れを補正する。
【0039】
積分器408は、位相補償部407から入力したぶれ(振動)の角速度を示す信号を積分して、ぶれ(振動)の角度を示す信号(以下「ぶれ検出信号」という)を生成する。積分器408からのぶれ検出信号は補正演算部409に入力される。
【0040】
補正演算部409には、さらに、例えばカメラ制御部140から焦点距離等の各種情報が入力される。補正演算部409は、入力される各種情報に基づき、ぶれ検出信号が示すぶれ量を補正するための手振れ補正量を算出したり、センサ駆動部181を最大限に移動可能とする最大移動量(例えば、後述する最大並進量及び最大回転量)を算出したりする。補正演算部409は、こうした算出結果をPID制御部410に出力する。
【0041】
PID制御部410は、位置センサ182からの出力と、補正演算部409からの出力とに基づいて、画像センサ110を移動させるための駆動信号を生成してセンサ駆動部181へ出力する。
【0042】
センサ駆動部181は駆動信号に基づいて画像センサ110を駆動する。具体的に、センサ駆動部181は、センサ可動範囲内で、画像センサ110を撮像面の水平方向又は垂直方向に並進移動させたり、光軸方向を回転軸として画像センサ110を回転移動させたりする。
【0043】
BIS処理部183は、カメラ制御部140とデータ通信可能に構成される。例えばBIS処理部183は、カメラ制御部140からの制御信号に応じて、手ぶれ補正動作の開始/終了を行う。また、BIS処理部183は、手ぶれ補正動作に関する各種情報をカメラ制御部140に送信する。
【0044】
OIS処理部223は、上記のようなBIS処理部183と同様の構成において、例えばセンサ駆動部181の代わりにOIS駆動部221を駆動するように構成できる。また、OIS処理部223は、例えばカメラ本体100中のジャイロセンサ184の代わりに交換レンズ200中のジャイロセンサ224の検出結果を用いて動作する。また、交換レンズ200のジャイロセンサ224は、ロール方向のぶれを検出しなくてもよい。
【0045】
2.動作
以上のように構成されるデジタルカメラ1の手ぶれ補正の動作について以下説明する。
【0046】
2-1.全体動作
本実施形態のデジタルカメラ1の手ぶれ補正に関する全体的な動作について、図4を用いて説明する。図4は、実施形態1におけるデジタルカメラ1の手ぶれ補正の全体動作を例示するフローチャートである。以下では、デジタルカメラ1のBIS機能を用いる場合の動作例を説明する。
【0047】
図4のフローチャートに示す処理は、例えば交換レンズ200がカメラ本体100に装着された状態で開始される。本フローチャートに示す各処理は、例えば、カメラ制御部140によって、動画撮影等の動作と並列的に実行される。
【0048】
まず、カメラ制御部140は、交換レンズ200のレンズ制御部240と、ボディマウント150及びレンズマウント250を介してデータ通信を行い、レンズ状態データを取得する(S1)。レンズ状態データは、例えば交換レンズ200のズーム状態に応じた焦点距離、及びフォーカス状態に応じた合焦位置などを含み、例えば交換レンズ200のRAM241に記憶されている。レンズ制御部240は、例えばカメラ制御部140からの要求に応じてレンズ状態データを読み出して、カメラ本体100に送信する。
【0049】
例えば、カメラ制御部140は、取得したレンズ状態データに基づいて、焦点距離等のレンズ状態からBIS機能において典型的に想定される補正範囲についての最大並進量及び最大回転量を算出する(S2)。図5は、デジタルカメラ1における典型的な補正範囲51を説明するための図である。
【0050】
図5(A)は、センサ可動範囲50において、中間的な焦点距離に応じた補正範囲51を例示する。図5(B)は、望遠側の補正範囲51を例示する。図5(C)は、広角側の補正範囲51を例示する。図5(A)~(C)において、横軸はセンサ駆動部181による並進の移動量を示し、縦軸は回転の移動量を示す。
【0051】
補正範囲51は、例えば図5(A)に示すように、センサ可動範囲50において最大並進量Tm及び最大回転量Rmにより規定される。最大並進量Tmは、例えばピッチ、ヨー方向といった並進成分の手振れを補正するために、センサ駆動部181が画像センサ110を並進移動させる最大の移動量である。最大回転量Rmは、ロール方向といった回転成分の手振れを補正するために、センサ駆動部181が画像センサ110を回転移動させる最大の移動量である。例えば矩形の補正範囲51内においては、並進成分と回転成分との手振れ補正が、特に互いに干渉することなくそれぞれ独立に実行可能である。
【0052】
本実施形態のデジタルカメラ1は、手振れ補正における並進成分と回転成分との間でセンサ駆動部181を共用する。こうした機構的な制約により、図5(A)~(C)に示すように、センサ可動範囲50においては、最大並進量Tmと最大回転量Rmとの間に、一方が大きいほど他方が小さくなる関係がある。また、並進成分の手振れ補正には、焦点距離が長いほど、同じ手振れ角度を補正するための並進の移動量が大きくなる特性がある。
【0053】
そこで、ステップS2において、例えばカメラ制御部140は、図5(B)に示すように望遠側の補正範囲51において、焦点距離が長い分だけ最大並進量Tmを大きく設定し、これに応じて最大回転量Rmを小さく設定する。一方、広角側の補正範囲51においては図5(C)に示すように、カメラ制御部140は、焦点距離が短い分だけ最大並進量Tmを小さく設定し、これに応じて最大回転量Rmを大きく設定する。こうして、デジタルカメラ1は、焦点距離といったレンズ状態から典型的な補正範囲51を手振れ補正の実行前に用意することができる。
【0054】
図4に戻り、カメラ制御部140は、例えば算出した補正範囲51の最大並進量Tm及び最大回転量Rm並びに焦点距離などをBIS処理部183に出力して、BIS処理部183による手振れ補正動作を制御する(S3)。
【0055】
ステップS3における手振れ補正動作は、BIS処理部183において随時、デジタルカメラ1の手振れを検出して行われる。本実施形態のデジタルカメラ1において、BIS処理部183による手振れ補正動作は、リアルタイムの手振れ補正の状態を考慮する観点から動的に、上記の最大並進量及び最大回転量を再計算しながら行われる。こうしたBIS処理部183の手振れ補正動作については後述する。
【0056】
カメラ制御部140は、例えば上記の手ぶれ補正動作(S3)の実行中に所定の制御周期においてレンズ状態データを交換レンズ200から取得して(S4)、レンズ状態が変化したか否かを判断する(S5)。制御周期は、例えばデジタルカメラ1におけるカメラ本体100と交換レンズ200間の通信周期(或いは動画撮影のフレーム周期)であり、例えば1/60~1/30秒である。
【0057】
例えば、デジタルカメラ1のユーザが交換レンズ200のズーム操作やフォーカス操作を行うことにより、レンズ状態が変化し得る。ステップS5の判断は、例えば交換レンズ200の焦点距離の変化を対象として行われる。ステップS5の判断対象は、フォーカス位置の変化などを含んでもよい。
【0058】
レンズ状態が変化したと判断したとき(S5でYES)、例えばカメラ制御部140は、変化したレンズ状態における新たな焦点距離に基づき典型的な補正範囲51の最大並進量Tm及び最大回転量Rmを改めて算出して(S2)、ステップS3以降の処理を再び行う。一方、レンズ状態が変化していないと判断したとき(S5でNO)、カメラ制御部140は、特に上記ステップS2の処理を改めて行うことなくステップS3に戻る。
【0059】
カメラ制御部140は、例えば以上の処理を、上述した所定の制御周期で繰り返し実行する。
【0060】
以上の処理によると、例えばデジタルカメラ1において焦点距離などのレンズ状態が変更されたときに(S5でYES)、カメラ制御部140は、変更されたレンズ状態に応じて典型的な補正範囲51の最大並進量Tmおよび最大回転量Rmを変更する(S2)。こうして、デジタルカメラ1のBIS機能において典型的な補正範囲51でレンズ状態を反映して、手振れ補正動作を実行できる。
【0061】
以上の説明では、ステップS2においてカメラ制御部140が焦点距離等に基づき最大移動量(最大並進量及び最大回転量の総称とする)を算出する例を説明した。本実施形態のデジタルカメラ1において、カメラ制御部140は、最大移動量を算出しなくてもよく、ステップS2は省略されてもよい。BIS処理部183が、ステップS2と同様の焦点距離等に基づく最大移動量の計算を行ってもよい。
【0062】
2-1-1.センサ可動範囲の有効活用の課題
上記のような典型的な補正範囲51を用いて手振れ補正を制御する従来の手法としては、例えばステップS2のように設定された補正範囲51内のみに、手振れ補正の動作を制限する手法が考えられる。しかしながら、こうした典型的な制御手法では、実際に実行している手振れ補正の状態を反映していないことから、センサ可動範囲50の有効活用において改善の余地がある。この点について、図6を用いて説明する。
【0063】
図6は、デジタルカメラ1におけるセンサ可動範囲50の有効活用の課題を説明するための図である。図6では、予め設定された補正範囲51内にある手振れ補正状態の一例を示す手振れ補正量M1と、当該補正範囲51外であって、且つセンサ可動範囲50内にある手振れ補正量M2とを例示する。手振れ補正量M1,M2は、手振れ補正を行うためにセンサ駆動部181が画像センサ110を移動させる移動量である。
【0064】
図6の例において、典型的な補正範囲51外の手振れ補正量M2は、補正範囲51内の手振れ補正量M1と同様に最大回転量Rmからは余裕をもって小さい回転成分を有し、センサ駆動部181としては手振れ補正が実現可能なセンサ可動範囲50内にある。それにも関わらず、上記の典型的な制御手法では、手振れ補正が、レンズ状態等より予め設定された補正範囲51内に制限されることから、補正範囲51の最大並進量を超える並進成分を有した手振れ補正量M2の手振れ補正は実現し難い。このように、上記の典型的な制御手法には、センサ可動範囲50の中で上記設定の補正範囲51外の部分を有効に活用し難い点に改善の余地がある。
【0065】
そこで、本実施形態のデジタルカメラ1は、手振れ補正量M1,M2における各成分の大きさといった手振れ補正状態に応じて逐次、センサ駆動部181を利用可能な最大移動量をBIS処理部183にて再計算する。例えば図6の例では、手振れ補正量M1,M2の回転成分の余裕に応じて、センサ駆動部181の最大並進量Tmを引き上げて、並進成分が補正可能な範囲を確保できる。こうして、本実施形態のデジタルカメラ1は、典型的な制御手法では実現困難な手振れ補正量M2の手振れ補正を実現でき、センサ可動範囲50を余さず有効活用し易くすることができる。以下、こうしたデジタルカメラ1の動作の詳細について説明する。
【0066】
2-2.動作の詳細
本実施形態のデジタルカメラ1におけるBIS処理部183の手振れ補正動作について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態のデジタルカメラ1におけるBIS機能の手振れ補正動作を例示するフローチャートである。
【0067】
図7のフローチャートに示す処理は、例えばデジタルカメラ1のBIS処理部183により、所定の動作周期において繰り返し実行される。BIS処理部183の動作周期は、例えば図4の制御周期よりも小さく、例えば数千分の1秒である。本フローは、例えば図4のステップS3に対応して複数回実行される。
【0068】
まず、BIS処理部183は、例えばジャイロセンサ184からの角速度信号を入力して、デジタルカメラ1の手振れを示す振れ量を検出する(S11)。ジャイロセンサ184は、例えばピッチ、ヨーおよびロール方向の角速度をそれぞれ検出して、各々の検出結果を角速度信号としてBIS処理部183に出力する。
【0069】
次に、BIS処理部183は、手振れの検出結果に基づいて、例えば手振れ角度をキャンセルするためにセンサ駆動部181が画像センサ110を移動させる移動量として手振れ補正量を算出する(S12)。
【0070】
例えば、BIS処理部183(図3)は、ジャイロセンサ184からの角速度信号を、ADC/LPF405、HPF406及び位相補償部407で信号処理し、積分器408により積分して手振れ角度を算出する。さらに、BIS処理部183は、例えば補正演算部409において、カメラ制御部140から入力される焦点距離(図4のS3)を用いて、算出された手振れ角度を相殺する補正角度をセンサ駆動部181の移動量に換算して、手振れ補正量を算出する(S12)。
【0071】
次に、本実施形態のBIS処理部183は、例えば補正演算部409において、算出した手振れ補正量に基づいて、現在の手振れ補正状態を反映するように最大並進量及び最大回転量といった最大移動量を演算する(S13)。本実施形態における最大移動量の再計算処理(S13)では、手振れ補正における並進成分と回転成分とのうちの一方を優先的に補正するように最大移動量が算出される。ステップS13の処理の詳細については後述する。
【0072】
次に、BIS処理部183は、例えば補正演算部409において上記のように得られた最大移動量を超えない範囲内に、算出した手振れ補正量を制限する(S14)。
【0073】
BIS処理部183は、こうして制限された手振れ補正量に基づいて、例えばPID制御部410におけるセンサ駆動部181の制御により、手振れ補正量の分だけ画像センサ110を駆動させる(S15)。PID制御部410は、制限された手振れ補正量と、位置センサ182からの出力に基づき、画像センサ110の並進及び回転を手振れ補正に必要な分だけ指示する駆動信号を生成して、センサ駆動部181に出力する。センサ駆動部181は、駆動信号にしたがって、画像センサ110を移動させることにより、手振れ補正を実行する。
【0074】
BIS処理部183は、以上のステップS11~S15の処理を、所定の動作周期毎に繰り返す。
【0075】
以上の処理によると、BIS処理部183は、実行中の手振れ補正状態を反映するように動的に最大移動量を演算しながら、BIS機能の手振れ補正動作を実行でき、センサ可動範囲50の有効活用を行い易くすることができる。
【0076】
2-2-1.最大移動量の再計算処理
図7のステップS13における最大移動量の再計算処理について、図8~12を用いて説明する。
【0077】
図8は、本実施形態のデジタルカメラ1における最大移動量の再計算処理(S13)を例示するフローチャートである。以下では、回転成分の手振れ補正よりも並進成分の手振れ補正を優先する動作例を説明する。
【0078】
まず、BIS処理部183は、図7のステップS12で算出した手振れ補正量に基づいて、例えば新たな手振れ補正状態の回転成分の大きさ(即ち絶対値)が、以前の手振れ補正状態の回転成分の大きさよりも小さいか否かを判断する(S21)。ステップS21において、デジタルカメラ1は、手振れ補正動作の実行中に、ロール方向の手振れの低減の有無を検知する。ロール方向の手振れが低減した場合(S21でYES)を図9に例示する。
【0079】
図9では、ステップS21において互いに比較される新手振れ補正量M21と、旧手振れ補正量M11とを例示する。新手振れ補正量M21は、例えばBIS処理部183による最新の動作周期におけるステップS12の算出結果の手振れ補正状態を示す。旧手振れ補正量M11は、例えば前回のステップS12の算出結果の手振れ補正状態を示す。旧手振れ補正量M11は、前回以前の1回又は複数回の算出結果であってもよく、例えば過去の所定回分の平均値であってもよい。
【0080】
BIS処理部183は、例えば図9に示すように、新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさが、旧手振れ補正量M11の回転成分R11の大きさよりも小さいと判断した場合(S21でYES)、新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさを、再計算結果の最大回転量Rm2に設定する(S22)。
【0081】
さらに、再計算結果として設定された最大回転量Rm2に基づいて、BIS処理部183は、再計算結果の最大並進量Tm2を算出する(S23)。例えば、BIS処理部183は、センサ可動範囲50を示す所定の演算式に、設定した最大回転量Rm2を代入して、ヨー方向に対応するX成分の最大並進量とピッチ方向に対応するY成分の最大並進量とをそれぞれ算出する。所定の演算式は、例えば線形にセンサ可動範囲50を近似するように規定され、フラッシュメモリ142等に格納されている。
【0082】
例えば図9の例では、新手振れ補正量M21の回転成分R21が、旧手振れ補正量M11の回転成分R11から低減したことから(S21でYES)、BIS処理部183は、再計算結果として最大回転量Rm2を減少させて(S22)、その分だけ最大並進量Tm2を増大させる(S23)。これにより、手振れ状態における回転成分R21の低減に応じて並進成分T21が補正可能な範囲を拡大することができる。
【0083】
また、ロール方向の手振れが低減していない場合(S21でNO)の一例を図10に例示する。BIS処理部183は、例えば新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさが、旧手振れ補正量M11の回転成分R11の大きさよりも小さくないと判断した場合(S21でNO)、新手振れ補正量M21の並進成分T21に基づいて、再計算中の暫定値の最大回転量Rm1を算出する(S24)。
【0084】
例えばステップS24において、BIS処理部183は、ステップS23と同様の演算式を用いて、新手振れ補正量M21の並進成分T21のうちのX成分から最大回転量を計算し、同並進成分のうちのY成分から最大回転量を計算する。さらに、BIS処理部183は、計算した両者のうちのより小さい一方を、ステップS24の暫定値の最大回転量Rm1に採用する。
【0085】
次に、BIS処理部183は、算出した暫定値の最大回転量Rm1が、旧手振れ補正量M11の回転成分R11の大きさよりも大きいか否かを判断する(S25)。例えば図10の例において、ステップS25の判断は「YES」である。ステップS25の判断は、ロール方向の手振れが補正されてからロール方向以外で過大な手振れが生じた場合に「NO」となり得る(図12参照)。
【0086】
BIS処理部183は、例えば図10に示すように、算出した暫定値の最大回転量Rm1が旧手振れ補正量M11の回転成分R11の大きさよりも大きいと判断した場合(S25でYES)、当該最大回転量Rm1が、新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさよりも大きいか否かを判断する(S26)。例えば図10の例において、ステップS26の判断は「YES」である。ステップS26の判断は、新たな手振れがロール方向で過度に大きい場合に「NO」となり得る(図11参照)。
【0087】
BIS処理部183は、例えば図10に示すように、算出した暫定値の最大回転量Rm1が新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさよりも大きいと判断した場合(S26でYES)、新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさを、再計算結果の最大回転量Rm2に設定する(S27)。
【0088】
例えば図10の例において、BIS処理部183は、再計算結果の最大回転量Rm2を、新手振れ補正量M21の回転成分R21が補正可能な最小限に設定し(S27)、これに応じてセンサ可動範囲50内で最大限に最大並進量Tm2を設定する(S23)。こうして、ロール方向の手振れの増大に対して最大回転量Rm2を過剰に引き上げないようにして、並進成分T21が補正可能な範囲を確保することができる。
【0089】
図11は、ロール方向の手振れが過度に大きい場合(S26でNO)を例示する。本例では、新手振れ補正量M21の回転成分R21が、その並進成分T21から算出した暫定値の最大回転量Rm1を超えて、センサ可動範囲50外に到っている。
【0090】
BIS処理部183は、例えば図11に示すように、暫定値の最大回転量Rmの暫定値が、新手振れ補正量M21の回転成分R21の大きさよりも大きくないと判断した場合(S26でNO)、暫定値の最大回転量Rm1を、再計算結果の最大回転量Rm2に設定する(S28)。こうして、回転成分R21が過度に大きい場合には、再計算結果の最大回転量Rm2がセンサ可動範囲50内に制限される。
【0091】
さらに、BIS処理部183は、上記のように制限された最大回転量Rm2に基づいて、センサ可動範囲50において対応する最大並進量Tm2を算出する(S23)。これにより、過大な回転成分R21の手振れはセンサ可動範囲50内まで補正しつつ、その範囲内で並進成分T21の手振れを最大限に行えるようにすることができる。
【0092】
図12は、ロール方向の手振れの補正後にロール方向以外で過大な手振れが生じた場合(S25でNO)を例示する。本例では、新手振れ補正量M21の並進成分T21を全て補正するための暫定値の最大回転量Rm1が、旧手振れ補正量M11として補正済みの回転成分R11を下回っている。こうした場合に、例えばステップS28と同様に暫定値の最大回転量Rm1を再計算結果に採用すると、旧手振れ補正量M11の時点では補正できていた回転成分R11が、その後の手振れ補正動作により却って悪化する逆効果が懸念される。
【0093】
そこで、本実施形態において、BIS処理部183は、例えば図12に示すように、暫定値の最大回転量Rm1が、旧手振れ補正量M11の回転成分R11の大きさよりも大きくないと判断した場合(S25でNO)、旧手振れ補正量M11の回転成分R11の大きさを、再計算結果の最大回転量Rm2に設定する(S29)。これにより、再計算結果の最大回転量Rm2を、補正済みの回転成分R11以上に維持して、上記の逆効果を回避することができる。
【0094】
又、BIS処理部183は、上記のように設定された最大回転量Rmに基づいて、センサ可動範囲50内において対応する最大並進量Tm2を算出する(S23)。これにより、上記の逆効果を回避可能な範囲内で、最大限にピッチ、ヨー方向の手振れを補正することができる。
【0095】
BIS処理部183は、例えば設定した最大回転量Rmに対応する最大並進量Tm2を再計算結果として設定することで(S23)、最大移動量の再計算処理(図7のステップS13)を終了して、ステップS14に進む。
【0096】
以上の最大移動量の再計算処理によると、本実施形態のデジタルカメラ1は、BIS処理部183において逐次、新たな手振れ補正状態を反映するように最大回転量Rm2及び最大並進量Tm2を再計算することができる。例えば上記の動作例において、最大回転量Rm2及び最大並進量Tm2が、比較的目立ち易いことが想定される並進成分の手振れ補正を、回転成分の手振れ補正よりも優先して行えるように設定できる。
【0097】
以上の説明では、最大移動量の再計算処理において、並進成分の手振れ補正を優先する動作例を説明したが、本実施形態のデジタルカメラ1は、並進成分の手振れ補正を優先しなくてもよい。例えば、本実施形態のデジタルカメラ1は、並進成分の手振れ補正よりも回転成分の手振れ補正を優先してもよく、例えば図8の動作例における並進成分と回転成分とを入れ替えて最大移動量の再計算処理を行ってもよい。
【0098】
以上の説明では、ステップS22においてBIS処理部183が再計算結果の最大回転量Rm2を回転成分20にまで減少させる例を説明したが、手振れ補正状態の回転成分R21が低減した場合(S21でYES)の最大回転量Rm2はこれに限定されない。例えば、BIS処理部183は、上記の場合(S21でYES)において、再計算結果としての最大回転量Rm2を、新たな回転成分R21から適宜マージンを置いて減少させてもよいし、旧手振れ補正量M11の回転成分R11を考慮して減少させてもよい。
【0099】
3.まとめ
以上のように、本実施形態における撮像装置のそれぞれ一例であるデジタルカメラ1及びカメラ本体100は、撮像素子の一例である画像センサ110と、検出部の一例であるジャイロセンサ184と、演算処理部の一例であるBIS処理部183と、像振れ補正部の一例であるセンサ駆動部181とを備える。画像センサ110は、光学系の一例である交換レンズ200を介して被写体像を撮像する。ジャイロセンサ184は、撮像装置の振れ量を検出する(S11)。BIS処理部183は、ジャイロセンサ184によって検出される振れ量に基づいて、像振れ補正のための演算を行う(S12~S14)。センサ駆動部181は、BIS処理部183の演算結果に基づいて、画像センサ110についての所定の可動範囲の一例であるセンサ可動範囲50内における並進移動及び回転移動により像振れ補正を実行する(S15)。BIS処理部183は、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、センサ可動範囲50内における並進移動及び回転移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量(例えば最大回転量)と第2の移動が実行可能な第2の最大量(例えば最大並進量)とを変化させる。
【0100】
以上の撮像装置によると、像振れ補正の動作時に刻々と変化する振れ補正状態を反映して動的に、センサ可動範囲50内で最大回転量及び最大並進量を変化させ、多様な手振れに対して撮像装置が補正可能なセンサ可動範囲50を有効に活用することができる。
【0101】
本実施形態の撮像装置において、振れ補正状態(例えば新振れ補正量M20)は、第1の移動に対応する第1の成分(例えば回転成分R20)と、第2の移動に対応する第2の成分(並進成分T20)とを含む。BIS処理部183は、振れ補正状態における第1及び第2の成分のうちの一方の成分が小さいほど、他方の成分に対応する移動が実行可能な最大量を大きくするように、第1及び第2の最大量を変化させる(図8参照)。これにより、振れ補正状態における一方の成分の余裕に応じて、他方の成分の手振れ補正が行える範囲を広げて、センサ可動範囲50を有効に活用することができる。
【0102】
本実施形態の撮像装置において、BIS処理部183は、振れ補正状態における第1の成分が低減したとき(S21でYES)、低減した第1の成分に応じて、第1の最大量を減少させて(S22)、第2の最大量を増大させる(S23)。こうして、像振れ補正の動作時に刻々と変化する振れ補正状態において、第1の成分が低減したタイミングで第2の最大量を大きく確保でき、動的なセンサ可動範囲50の有効活用を行い易くできる。
【0103】
本実施形態の撮像装置において、BIS処理部183は、振れ補正状態における第1の成分が低減していないとき(S21でNO)、振れ補正状態における第2の成分の大きさに基づいて第1の最大量を算出して(S24~S28)、第2の最大量を設定する(S23)。これにより、例えば第1の成分の手振れの増大時には、第2の成分の手振れを考慮して、各最大量を設定でき、センサ可動範囲50の有効活用を行い易くできる。
【0104】
本実施形態の撮像装置において、BIS処理部183は、第1の最大量がセンサ駆動部181による第1の移動により補正済みの第1の成分以上となるように、第2の最大量を制限する(S29,S23)。これにより、例えば図12に例示したように、第1の成分の振れの補正後に第2の成分について過大な振れが生じた場合に、補正済みの振れを却って悪化させるような逆効果を抑制して、センサ可動範囲50を活用できる。
【0105】
本実施形態の撮像装置は、制御部の一例のカメラ制御部140をさらに備える。カメラ制御部140は、交換レンズ200における焦点距離に基づいて、第1及び第2の最大量をそれぞれ設定する(S2)。BIS処理部183は、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、カメラ制御部140により設定された第1及び第2の最大量から各最大量を変化させる(S3)。これにより、焦点距離といった条件により設定された各最大量を、手振れ補正状態に応じて更新でき、動的なセンサ可動範囲50の有効活用を行い易くできる。
【0106】
本実施形態の撮像装置において、第1の移動は、例えば画像センサ110において被写体像が撮像される撮像面上の回転である。第2の移動は、撮像面に沿った並進である。本実施形態の撮像装置によると、BIS機能において振れ補正状態を反映するように動的にセンサ可動範囲50を有効活用できる。こうした有効活用は、例えば回転成分よりも並進成分の手振れ補正を優先するように行える。
【0107】
(実施形態2)
以下、図13,14を参照して、本開示の実施形態2を説明する。実施形態1では、手振れ補正状態に応じて動的に最大移動量を再計算するデジタルカメラ1について説明した。実施形態2では、再計算された最大移動量に上限を設けるデジタルカメラ1について説明する。
【0108】
以下、実施形態1に係るデジタルカメラ1と同様の構成、動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係るデジタルカメラ1を説明する。
【0109】
図13は、実施形態2のデジタルカメラ1における最大移動量の再計算処理を例示するフローチャートである。本実施形態のデジタルカメラ1は、実施形態1と同様に手振れ補正の動作を行う際(図4,7参照)、ステップS13において図13に例示する演算処理をBIS処理部183にて行う。
【0110】
本実施形態において、BIS処理部183は、実施形態1の最大移動量の再計算処理(図8)と同様にステップS21~S29の処理を行うことに加えて、図13に例示するように最大移動量を上限値以下に制限する(S31~S34)。
【0111】
図14は、本実施形態のデジタルカメラ1における最大移動量の上限値Tu,Ruを説明するための図である。最大移動量の上限値Tu,Ruは、デジタルカメラ1において取得されるレンズ状態などの各種の動作条件から、ステップS31~S34の実行前に適宜設定される。例えば、カメラ制御部140は、図4のステップS1,S4において交換レンズ200から取得されるレンズ状態データに基づいて、最大移動量の上限値Tu,Ruを設定してもよい。例えば、レンズ状態の焦点距離が大きいほど、最大並進量の上限値Tuが大きく設定されてもよいし、最大回転量の上限値Ruが小さく設定されてもよい。
【0112】
図13のフローにおいて、例えばBIS処理部183は、ステップS22,S27~S29の何れかで設定された最大回転量と上限値Ruとを比較する(S31)。BIS処理部183は、設定された最大回転量が上限値Ruよりも大きい場合(S31でYES)、再計算結果の最大回転量を上限値Ruに設定する(S32)。一方、設定された最大回転量が上限値Ru以下である場合(S31でNO)、特にステップS32の処理を行わずに、ステップS23に進む。
【0113】
また、BIS処理部183は、以上のように設定された最大回転量に基づいて、センサ可動範囲50において対応する最大並進量を算出して(S23)、算出した最大並進量と上限値Tuとを比較する(S33)。BIS処理部183は、算出した最大並進量が上限値Tuよりも大きい場合(S33でYES)、再計算結果の最大並進量を上限値Tuに設定する(S34)。一方、算出した最大並進量が上限値Tu以下である場合(S33でNO)、特にステップS34の処理を行わず、ステップS23で算出した最大並進量を再計算結果として、最大移動量の再計算処理(図13)を終了する。
【0114】
以上の処理によると、本実施形態のデジタルカメラ1は、センサ可動範囲50内で、最大移動量の上限値Tu,Ruにより規定される補正範囲52まで実質的に、手振れ補正を実行できる範囲を拡大できる。
【0115】
例えば図14に示すように、最大回転量の上限値Ruは、センサ可動範囲50において最大並進量の上限値Tuに対応する回転量Rtuよりも大きく設定できる。また、最大並進量の上限値Tuは、センサ可動範囲50において最大回転量の上限値Ruに対応する並進量Truよりも大きく設定できる。
【0116】
こうした設定の各上限値Tu,Ruによると、例えば図14に示すように、センサ可動範囲50において実質的な補正範囲52が、前述した典型的な補正範囲51(図5)よりも広く確保できる。本実施形態のデジタルカメラ1によると、こうした広い補正範囲52においてBIS機能の手振れ補正動作を実行でき、センサ可動範囲50の有効活用を行い易くすることができる。
【0117】
上記のステップS34において、最大並進量が上限値Tuに設定された場合、BIS処理部183は、上限値Tuの最大並進量に基づき、補正範囲52内など可能な範囲内で最大回転量を拡大するように再計算を行ってもよい。
【0118】
以上のように、本実施形態の撮像装置において、BIS処理部183は、センサ可動範囲50における第1の所定値(例えば上限値Ru)以下に第1の最大量を制限する(S31,S32)。BIS処理部183は、センサ可動範囲50における第2の所定値(例えば上限値Tu)以下に第2の最大量を制限する(S33,S34)。これにより、例えば上限値Ru,Tu以下の範囲内でセンサ可動範囲50を余さず有効活用できる。
【0119】
以上の説明では、最大並進量及び最大回転量の両方が制限される例を説明したが、本実施形態のデジタルカメラ1はこれに限定されない。例えば、本実施形態のデジタルカメラ1において、BIS処理部183は、最大並進量と最大回転量とのうちの何れか一方を制限してもよく、図13のステップS31,S32と、ステップS33,S34とのうちの何れか一方を省略してもよい。この場合であっても、手振れ補正において適宜制限された範囲内で、上記と同様にセンサ可動範囲50を有効活用することができる。
【0120】
(実施形態3)
以下、図15を参照して、本開示の実施形態3について説明する。実施形態1では、BIS機能により手振れ補正を行うデジタルカメラ1の動作例を説明した。実施形態3では、BIS機能とOIS機能との協調制御により手振れ補正を行うデジタルカメラ1の動作例について説明する。
【0121】
以下、実施形態1,2に係るデジタルカメラ1と同様の構成、動作の説明は適宜、省略して、本実施形態に係るデジタルカメラ1を説明する。
【0122】
本実施形態では、デジタルカメラ1においてOIS処理部223とBIS処理部183とが並列して同時に手振れ補正動作を行う。こうした同時並行の手振れ補正動作は、各処理部223,183が振れ補正量を分担する配分(即ち補正配分)を予め設定してから実行される。補正配分は、例えばBIS機能の配分を示すBIS比率と、OIS機能の配分を示すOIS比率とを含む。
【0123】
具体的に、OIS処理部223は、交換レンズ200のジャイロセンサ224の検出結果に基づき、ピッチ方向及びヨー方向の振れ検出信号を生成する。OIS処理部223は、生成した振れ検出信号が示す振れ量において、予め設定されたOIS補正比率の分の振れ補正量だけ補正するように、OIS駆動部221を制御して、OISレンズ220を駆動させる。
【0124】
このとき、BIS処理部183は、カメラ本体100のジャイロセンサ184の検出結果に基づき、ピッチ方向、ヨー方向及びロール方向の振れ検出信号を生成する。BIS処理部183は、生成した振れ検出信号が示すピッチ方向及びヨー方向の振れ量に対しては、予め設定されたBIS補正比率の分の振れ補正量だけ補正するように、センサ駆動部181に画像センサ110を並進移動させる。一方、ロール方向の振れ量については別途、設定された最大回転量の範囲内で補正するように、BIS処理部183は、センサ駆動部181に画像センサ110を回転移動させる。
【0125】
以上のデジタルカメラ1の動作によると、OIS処理部223とBIS処理部183とは逐次、検出される振れ量に対して、各々の補正配分だけ手振れ補正動作を行い、デジタルカメラ1全体として適切な手振れ補正が実現できる。この際、刻々と生じる振れ量に対して各処理部223,183が動作する幅は、補正配分としてそれぞれ設定された各々の補正比率の分だけ減縮されることから、各処理部223,183が端当たりするような事態を回避し易くできる。
【0126】
本実施形態のデジタルカメラ1は、上記のような補正配分を動的に設定して手振れ補正動作を行う。本実施形態のデジタルカメラ1の手振れ補正に関する全体の動作について、図15を用いて説明する。
【0127】
図15は、実施形態3におけるデジタルカメラ1の手振れ補正の全体動作を例示するフローチャートである。本実施形態のデジタルカメラ1において、カメラ制御部140は、例えば実施形態1における図4の処理の代わりに、図15の処理を実行する。
【0128】
まず、カメラ制御部140は、例えば図4のステップS1と同様に交換レンズ200とのデータ通信を行い、レンズ状態データを取得する(S41)。本実施形態において、レンズ状態データは、例えば交換レンズ200におけるレンズ可動範囲と焦点距離などのレンズ状態の情報を含む。
【0129】
カメラ制御部140は、取得した情報に基づいて、例えば図4のステップS2と同様にBIS機能の最大並進量及び最大回転量を算出することに加えて、OIS処理部223とBIS処理部183との間の補正配分を設定する(S42)。
【0130】
例えば、カメラ制御部140は、下記の演算式によりOIS補正比率およびBIS補正比率を算出する。
(OIS補正比率)=(OIS最大補正量)/(OIS最大補正量+BIS最大補正量)
(BIS補正比率)=(BIS最大補正量)/(OIS最大補正量+BIS最大補正量)
上式において、OIS最大補正量は、例えば交換レンズ200のレンズ可動範囲と、焦点距離などのレンズ状態とに応じて設定される。OIS最大補正量は、例えばレンズ制御部240によって管理されてもよいし、カメラ制御部140により交換レンズ200から取得される情報に基づき算出されてもよい。BIS最大補正量は、例えば上記各実施形態におけるBIS機能について設定される最大並進量である。
【0131】
初回のステップS42のBIS最大補正量としては、例えば、実施形態1と同様にカメラ制御部140が焦点距離から算出した最大並進量が用いられる。カメラ制御部140は、算出したOIS補正比率を、ボディマウント150から交換レンズ200に送信する。又、カメラ制御部140は、算出したBIS補正比率をBIS処理部183に設定する。
【0132】
BIS処理部183は、設定されたBIS補正比率を用いて、上述したように手振れ補正動作を行う。こうしたBIS機能の手振れ補正動作時に、BIS処理部183は、例えば実施形態1又は2と同様に最大移動量の再計算処理(図8又は13)を行う。これにより、リアルタイムの手振れ補正状態に応じた最大並進量及び最大回転量が逐次、再計算される。また、このとき交換レンズ200においては並列的に、OIS処理部223が、逐次設定されたOIS補正比率での手振れ補正動作を実行する。
【0133】
本実施形態のカメラ制御部140は、例えば実施形態1のステップS3と同様にBIS処理部183の手振れ補正動作を制御する際に、BIS処理部183により再計算された最大並進量を、BIS最大補正量として取得する(S43)。こうして取得されたBIS最大補正量は、ステップS47に用いられたり、次回のステップS42に用いられたりする。
【0134】
又、カメラ制御部140は、例えば実施形態1のステップS4,S5と同様に、所定の制御周期において交換レンズ200からレンズ状態データを取得し(S44)、レンズ状態の変化があるか否かを判断する(S45)。カメラ制御部140は、レンズ状態に変化がある場合(S45でYES)、ステップS42以降の処理を再び行う。例えば、交換レンズ200において焦点距離が変化すると、変化後の焦点距離に応じた補正配分が新たに設定される。
【0135】
また、本実施形態のカメラ制御部140は、例えばレンズ状態に変化がない場合(S45でNO)、BIS処理部183から取得した最大並進量(S43)に基づいて、補正配分の設定時からBIS最大補正量に変化があるか否かを判断する(S46)。
【0136】
カメラ制御部140は、BIS最大補正量に変化がある場合(S46でYES)、変化後のBIS最大補正量に基づき、補正配分の設定を更新する(S47)。例えば、カメラ制御部140は、変化後のBIS最大補正量(S43)を用いて、ステップS42と同様の演算式により新たなOIS補正比率及びBIS補正比率を算出して、算出した各補正比率を交換レンズ200及びBIS処理部183に設定する。
【0137】
カメラ制御部140は、BIS最大補正量に変化がない場合(S46でNO)、ステップS43以降の処理を所定の制御周期で繰り返す。
【0138】
以上の処理によると、OIS機能とBIS機能間の補正配分を用いたデジタルカメラ1における交換レンズ200とカメラ本体100間の協調制御の手振れ補正動作において、手振れ補正状態に応じて動的に、補正配分が設定更新される(S47)。こうして、BIS処理部183の再計算による手振れ補正状態を反映した最大移動量を活用して、カメラ本体100のセンサ可動範囲50に加えて交換レンズ200のレンズ可動範囲の有効活用を行うことができる。
【0139】
以上のように、本実施形態の撮像装置は、制御部の一例であるカメラ制御部140をさらに備える。制御部は、センサ駆動部181による像振れ補正である第1の像振れ補正と、交換レンズ200において行われる第2の像振れ補正との間の配分(即ち補正配分)を制御する(図15参照)。制御部は、BIS処理部183が振れ補正状態に応じて第1及び第2の最大量を変化させると、第1及び第2の像振れ補正間の配分を変更する(S47)。本実施形態の撮像装置によると、手振れ補正状態を反映して動的に変化する第1及び第2の最大量に応じて補正配分が変更され、第1及び第2の像振れ補正の各々が実行可能な範囲を有効活用できる。
【0140】
本実施形態の撮像装置は、通信部の一例としてのボディマウント150をさらに備えてもよい。通信部は、光学系を構成する交換レンズ200とデータ通信を行う。制御部は、通信部を介して、第1及び第2の像振れ補正間の配分の変更結果を交換レンズ200に送信する。こうして、手振れ補正状態を反映して動的に変化する第1及び第2の最大量に応じた情報が、交換レンズ200に送信され、デジタルカメラ1におけるカメラ本体100と交換レンズ200間の協調制御の手振れ補正を行い易くできる。
【0141】
また、本実施形態の撮像装置は、交換レンズ200を介して被写体像を撮像する画像センサ110と、自装置の振れ量を検出するジャイロセンサ184と、ジャイロセンサ184によって検出される振れ量に基づいて、画像センサ110についての所定のセンサ可動範囲50内における複数種類の移動(例えば並進移動と回転移動)により第1の像振れ補正を実行するセンサ駆動部181と、センサ駆動部181による第1の像振れ補正と、交換レンズ200において行われる第2の像振れ補正との間の配分を制御する制御部とを備える。像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、センサ可動範囲50内でセンサ駆動部181における複数種類の移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とが変化する。制御部は、振れ補正状態に応じて第1及び第2の最大量が変化すると、第1及び第2の像振れ補正間の配分を変更する。これによっても、多様な手振れに対して撮像装置が補正可能な範囲を有効に活用することができる。
【0142】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態1~3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態1~3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0143】
上記の実施形態1~3において、デジタルカメラ1の手振れ補正動作が動画撮影時に行われる例を説明したが、特に手振れ補正動作は特に動画撮影時に限定されない。本実施形態のデジタルカメラ1は、静止画撮影時または撮影待機時に、上記各実施形態と同様に手振れ補正動作を行ってもよく、この際に手振れ補正状態に応じてBIS機能の最大移動量の再計算を適時行ってもよい。
【0144】
例えば、実施形態3と同様の協調制御時において、本実施形態のデジタルカメラ1は、静止画の露光準備時までは手振れ補正状態に応じてBIS機能の最大移動量の再計算及び補正配分の更新を行う一方で、静止画の露光中には、最大移動量の再計算及び補正配分の更新を行わないようにしてもよい。これにより、BIS機能の最大移動量ひいてはBIS補正比率とOIS補正比率との動的な変更が露光期間内に行われることで生じ得る補正誤差の影響を回避することができる。
【0145】
上記の各実施形態において、振れ補正状態の並進成分の一例として、ピッチ方向の振れ補正量及びヨー方向の振れ補正量を例示したが、並進成分はこれに限定されない。本実施形態において、振れ補正状態の並進成分は、ピッチ方向の振れ補正量とヨー方向の振れ補正量との何れか一方であってもよいし、デジタルカメラ1自体の水平方向または垂直方向における加速度的な並進であってもよい。本実施形態のデジタルカメラ1は、検出部として加速度センサを備えてもよい。
【0146】
上記の各実施形態においては、デジタルカメラ1がBIS機能における最大移動量を再計算する動作例を説明した。本実施形態のデジタルカメラ1は、BIS機能に加えて又はこれに代えて、例えばEIS(Electronic Image Stabilizer)機能における最大移動量の再計算を行ってもよい。
【0147】
例えば、EIS機能の手振れ補正動作は、デジタルカメラ1の手振れに応じて、撮像素子による画像データを切り出す領域が、予め設定されたマージンの範囲内で並進、回転される調整によって行われる。こうしたEIS機能のマージンを可動範囲として、本実施形態のデジタルカメラ1は、切り出し領域の最大並進量及び最大回転量を、手振れ補正状態を反映するように逐次、再計算してもよい。これにより、EIS機能における可動範囲を、上記各実施形態と同様に有効活用し易くすることができる。また、本実施形態のデジタルカメラ1は、こうしたEIS機能とBIS機能及び/又はOIS機能との協調制御を、実施形態3と同様に行ってもよい。
【0148】
上記の各実施形態では、撮像装置の一例としてレンズ交換式のデジタルカメラについて説明したが、本実施形態の撮像装置は、特にレンズ交換式ではないデジタルカメラであってもよい。また、本開示の思想は、デジタルカメラのみならず、ムービーカメラであってもよいし、カメラ付きの携帯電話、スマートフォン或いはPCのような種々の撮像機能を有する電子機器にも適用可能である。
【0149】
(態様のまとめ)
以下、本開示に係る各種態様を付記する。
【0150】
本開示に係る第1の態様は、光学系を介して被写体像を撮像する撮像素子と、自装置の振れ量を検出する検出部と、検出部によって検出される振れ量に基づいて、像振れ補正のための演算を行う演算処理部と、演算処理部の演算結果に基づいて、撮像素子についての所定の可動範囲内における並進移動及び回転移動により像振れ補正を実行する像振れ補正部とを備え、演算処理部は、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、可動範囲内における並進移動及び回転移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とを変化させる撮像装置である。
【0151】
第2の態様は、第1の態様に記載の撮像装置において、振れ補正状態は、第1の移動に対応する第1の成分と、第2の移動に対応する第2の成分とを含み、演算処理部は、振れ補正状態における第1及び第2の成分のうちの一方の成分が小さいほど、他方の成分に対応する移動が実行可能な最大量を大きくするように、第1及び第2の最大量を変化させる。
【0152】
第3の態様は、第2の態様に記載の撮像装置において、演算処理部は、振れ補正状態における第1の成分が低減したとき、低減した第1の成分に応じて、第1の最大量を減少させて、第2の最大量を増大させる。
【0153】
第4の態様は、第2又は第3の態様に記載の撮像装置において、演算処理部は、振れ補正状態における第1の成分が低減していないとき、振れ補正状態における第2の成分の大きさに基づいて、第1の最大量を算出して、第2の最大量を設定する。
【0154】
第5の態様は、第2~第4の態様の何れかに記載の撮像装置において、演算処理部は、第1の最大量が像振れ補正部による第1の移動により補正済みの第1の成分以上となるように、第2の最大量を制限する。
【0155】
第6の態様は、第1~第5の態様の何れかに記載の撮像装置において、演算処理部は、可動範囲における第1の所定値以下に第1の最大量を制限することと、可動範囲における第2の所定値以下に第2の最大量を制限することとのうちの少なくとも一方を行う。
【0156】
第7の態様は、第1~第6の態様の何れかに記載の撮像装置が、光学系における焦点距離に基づいて、第1及び第2の最大量をそれぞれ設定する制御部をさらに備え、演算処理部は、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、制御部により設定された第1及び第2の最大量から各最大量を変化させる。
【0157】
第8の態様は、第1~第7の態様の何れかに記載の撮像装置が、像振れ補正部による像振れ補正である第1の像振れ補正と、光学系において行われる第2の像振れ補正との間の配分を制御する制御部をさらに備え、制御部は、演算処理部が振れ補正状態に応じて第1及び第2の最大量を変化させると、第1及び第2の像振れ補正間の配分を変更する。
【0158】
第9の態様は、第1~第8の態様の何れかに記載の撮像装置において、第1の移動は、撮像素子において被写体像が撮像される撮像面上の回転であり、第2の移動は、撮像面に沿った並進である。
【0159】
第10の態様は、光学系を介して被写体像を撮像する撮像素子と、自装置の振れ量を検出する検出部と、検出部によって検出される振れ量に基づいて、撮像素子についての所定の可動範囲内における複数種類の移動により第1の像振れ補正を実行する像振れ補正部と、像振れ補正部による第1の像振れ補正と、光学系において行われる第2の像振れ補正との間の配分を制御する制御部とを備え、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、可動範囲内で像振れ補正部における複数種類の移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とが変化し、制御部は、振れ補正状態に応じて第1及び第2の最大量が変化すると、第1及び第2の像振れ補正間の配分を変更する撮像装置である。
【0160】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0161】
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0162】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本開示の思想は、手振れ補正機能を備えた撮像機能を有する電子装置(デジタルカメラやカムコーダ等の撮像装置、携帯電話、スマートフォン等)に適用することができる。
【符号の説明】
【0164】
1 デジタルカメラ
100 カメラ本体
110 画像センサ
140 カメラ制御部
181 センサ駆動部
183 BIS処理部
184 ジャイロセンサ
200 交換レンズ
【要約】
【課題】多様な手振れに対して撮像装置が補正可能な範囲を有効に活用することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置(1,100)は、光学系(200)を介して被写体像を撮像する撮像素子(110)と、自装置の振れ量を検出する検出部(184)と、検出部によって検出される振れ量に基づいて、像振れ補正のための演算を行う演算処理部(183)と、演算処理部の演算結果に基づいて、撮像素子についての所定の可動範囲(50)内における並進移動及び回転移動により像振れ補正を実行する像振れ補正部(181)とを備え、演算処理部は、像振れ補正が順次実行される振れ補正状態に応じて、可動範囲内における並進移動及び回転移動のうちの第1の移動が実行可能な第1の最大量と第2の移動が実行可能な第2の最大量とを変化させる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15