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特許7336758セラミック電子部品およびその製造方法、ならびに電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法、ならびに電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20230825BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230825BHJP
   H01G 4/10 20060101ALI20230825BHJP
   C04B 35/495 20060101ALI20230825BHJP
   C04B 35/462 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01G4/30 544
H01G4/30 547
H01G4/10
H01G4/30 160
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 311Z
C04B35/495
C04B35/462
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018201043
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2019083315
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2017-0141216
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 賢 哲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 高義
(72)【発明者】
【氏名】長田 実
(72)【発明者】
【氏名】郭 燦
(72)【発明者】
【氏名】梁 大 珍
(72)【発明者】
【氏名】丁 度 源
(72)【発明者】
【氏名】▲そう▼ 永 眞
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/199770(WO,A1)
【文献】特開2012-209463(JP,A)
【文献】特表2014-510416(JP,A)
【文献】特開2012-240884(JP,A)
【文献】特開2015-119184(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143410(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/116656(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/33
H01G 4/30
H01G 4/10
C04B 35/495
C04B 35/462
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の電極と、
前記一対の電極の間に位置し複数のセラミックナノシートを含む誘電体膜と、
を含み、
前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された少なくとも2つのピークで表される面方向大きさの多峰性分布を有し、
前記複数のセラミックナノシートは、
1μm~10μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布を示し、かつ1.5μm以上の面方向大きさで現れる第1ピークを有する第1セラミックナノシート群と、
前記第1セラミックナノシート群の平均面方向大きさよりも小さい平均面方向大きさを有し、かつ前記第1ピークと分離され前記第1ピークの面方向大きさよりも小さい面方向大きさで現れる前記第2ピークを有する第2セラミックナノシート群と、
を含む、セラミック電子部品であって、
前記誘電体膜は、
前記複数のセラミックナノシートを含む第1誘電体膜と、
前記第1誘電体膜の一方の面に位置し、バルクセラミック誘電体を含む第2誘電体膜と、
を含む、セラミック電子部品
【請求項2】
前記第1ピークの面方向大きさは、1.5μm~10μmであり、
前記第2ピークの面方向大きさは、1.0μm以下である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1ピークの面方向大きさと前記第2ピークの面方向大きさとの比率は2:1~10:1である、請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1ピークの面方向大きさは、2.0μm~5.0μmであり、
前記第2ピークの面方向大きさは、0.5μm~1.0μmであり、
前記第1ピークの面方向大きさと前記第2ピークの面方向大きさとの比率は2.4:1~6:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とは、5:1~100:1の体積比で含まれる、請求項1~4のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された2つのピークで表される面方向大きさの2峰性分布を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記誘電体膜は、9.0%以下の空隙率を有し、
前記空隙率は、前記誘電体膜の総面積に対する空隙の面積の比率である、請求項1~6のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記セラミックナノシートは、50以上の誘電率を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記セラミックナノシートは、CaNb10、CaNaNb13、CaNaNb16、SrNb10、SrBiTi15、TiNbO、LaNbまたはこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記セラミックナノシートは、セラミック粉末から剥離された構造体である、請求項1~9のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記誘電体膜は、前記複数のセラミックナノシートからなる二次元ナノシート単一層を1以上含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記誘電体膜の厚さは、0.5μm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
前記誘電体膜は、
前記複数のセラミックナノシートを含む第1誘電体膜と、
前記第1誘電体膜の一方の面に位置し、バルクセラミック誘電体を含む第2誘電体膜と、
前記第2誘電体膜の一方の面に位置し、前記複数のセラミックナノシートを含む第3誘電体膜と、
を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項14】
前記誘電体膜は、
バルクセラミック誘電体を含む複数の結晶粒と、
前記複数のセラミックナノシートを含む結晶粒界と、
を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
前記セラミック電子部品は、積層セラミックキャパシタ(MLCC)を含み、
前記積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、前記一対の電極および前記誘電体膜を含む単位キャパシタが複数積層された構造を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のセラミック電子部品。
【請求項16】
層状のセラミック粉末を合成する段階と、
前記層状のセラミック粉末を剥離して面方向大きさの分布が異なる複数のセラミックナノシートを用意する段階と、
第1電極の上に前記複数のセラミックナノシートを形成して誘電体膜を形成する段階と、
前記誘電体膜の上に第2電極を形成する段階と、
を含み、
前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された少なくとも2つのピークで表される面方向大きさの多峰性分布を有し、
前記複数のセラミックナノシートを用意する段階は、
1μm~10μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布を有し、1.5μm以上の面方向大きさで第1ピークを示す第1セラミックナノシート群を用意する段階と、
前記第1セラミックナノシート群の平均粒径よりも平均粒径が小さく、かつ前記第1ピークの面方向大きさよりも小さい面方向大きさで第2ピークを示す第2セラミックナノシート群を用意する段階と、
前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とを混合する段階と、
を含む、セラミック電子部品の製造方法であって、
前記第1セラミックナノシート群を用意する段階および前記第2セラミックナノシート群を用意する段階は、それぞれ熱処理する段階および遠心分離する段階の少なくとも一方を含み、
前記第1セラミックナノシート群を用意する段階は、前記第2セラミックナノシート群を用意する段階よりも高い温度で熱処理を行うこと、および
前記第2セラミックナノシート群を用意する段階よりも遅い速度で遠心分離を行うことの少なくとも一方を含む、セラミック電子部品の製造方法
【請求項17】
前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とを混合する段階における前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群との混合体積比は、5:1~100:1である、請求項16に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項18】
前記誘電体膜を形成する段階は、
前記複数のセラミックナノシートを含むセラミックナノシート溶液を用意する段階と、
LB法、交互吸着法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、またはディップコーティング法を用いて、前記第1電極の上に前記セラミックナノシート溶液をコーティングして二次元ナノシート単一層を形成する段階と、
を含む、請求項16または17に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記誘電体膜を形成する段階は、前記二次元ナノシート単一層を形成する段階を複数回行って複数の二次元ナノシート単一層を形成する段階を含む、請求項18に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか1項に記載のセラミック電子部品を含む電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法、ならびに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックを使用する電子部品として、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタまたはサーミスタなどがある。これらのうち、キャパシタは、静電容量を得るために使用される電子部品であって、電子回路を構成する重要な素子である。キャパシタの一例である積層セラミックキャパシタ(multi-layer ceramic capacitor、MLCC)は、複数のキャパシタを含み、例えばチップ形態に製造され、液晶表示装置などの映像機器、コンピュータおよびモバイルフォンなど多様な電子装置のプリント回路基板に装着される。MLCCは、電気を充電または放電させる役割を果たすことができ、カップリング(coupling)、デカップリング(decoupling)、インピーダンス整合(impedance matching)用素子などに用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近、電子機器に高機能化、高効率化および小型化が要求され、電子装置内に装着される積層セラミックキャパシタのようなセラミック電子部品も高性能化および小型化が要求されており、さらに温度依存性および/または電圧依存性が低いという特性や、高い信頼性も要求されている。
【0004】
そこで本発明は、高い信頼性を有しながら小型化および高容量化を実現することができるセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明の他の目的は、前記セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明のさらに他の目的は、前記セラミック電子部品を含む電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、互いに対向する一対の電極と、前記一対の電極の間に位置し複数のセラミックナノシートを含む誘電体膜とを含み、前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された少なくとも2つのピークで表される面方向大きさの多峰性分布を有するセラミック電子部品が提供される。
【0008】
前記面方向大きさの多峰性分布は、1.5μm以上の面方向大きさで現れる第1ピークと、前記第1ピークと分離され、前記第1ピークの面方向大きさよりも小さい面方向大きさで現れる第2ピークと、を含んでもよい。
【0009】
前記第1ピークの面方向大きさは、1.5μm~10μmであってもよく、前記第2ピークの面方向大きさは、1.0μm以下であってもよい。
【0010】
前記第1ピークの面方向大きさと前記第2ピークの面方向大きさとの比率は、2:1~10:1であってもよい。
【0011】
前記第1ピークの面方向大きさは、2.0μm~5.0μmであってもよく、前記第2ピークの面方向大きさは、0.5μm~1.0μmであってもよく、前記第1ピークの面方向大きさと前記第2ピークの面方向大きさとの比率は、2.4:1~6:1であってもよい。
【0012】
前記複数のセラミックナノシートは、1μm~10μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布を示し、前記第1ピークを有する第1セラミックナノシート群と、前記第1セラミックナノシート群の平均面方向大きさよりも平均面方向大きさが小さく、かつ前記第2ピークを有する第2セラミックナノシート群とを含んでもよい。
【0013】
前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とは、5:1~100:1の体積比で含まれてもよい。
【0014】
前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された2つのピークで表される面方向大きさの2峰性分布を有してもよい。
【0015】
前記誘電体膜は、9.0%以下の空隙率を有してもよく、前記空隙率は、前記誘電体膜の総面積に対する空隙の面積の比率であり得る。
【0016】
前記セラミックナノシートは、50以上の誘電率を有してもよい。
【0017】
前記セラミックナノシートは、CaNb10、CaNaNb13、CaNaNb16、SrNb10、SrBiTi15、TiNbO、LaNbまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0018】
前記セラミックナノシートは、セラミック粉末から剥離されたナノ構造体であってもよい。
【0019】
前記誘電体膜は、前記複数のセラミックナノシートからなる二次元ナノシート単一層(2-dimensional nanosheet monolayer)を1以上含んでもよい。
【0020】
前記誘電体膜の厚さは、0.5μm以下であってもよい。
【0021】
前記誘電体膜は、前記複数のセラミックナノシートを含む第1誘電体膜と、前記第1誘電体膜の一方の面に位置し、バルク誘電体層を含む第2誘電体膜とを含んでもよい。
【0022】
前記誘電体膜は、前記複数のセラミックナノシートを含む第1誘電体膜と、前記第1誘電体膜の一方の面に位置し、前記バルク誘電体層を含む第2誘電体膜と、前記第2誘電体膜の一方の面に位置し、前記複数のセラミックナノシートを含む第3誘電体膜と含んでもよい。
【0023】
前記セラミック電子部品は、積層セラミックキャパシタ(MLCC)を含んでもよく、前記積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、前記一対の電極および前記誘電体膜を含む単位キャパシタが複数積層された構造を有してもよい。
【0024】
他の実施形態によれば、層状のセラミック粉末を合成する段階と、前記層状のセラミック粉末を剥離して面方向大きさの分布が異なる複数のセラミックナノシートを用意する段階と、第1電極の上に前記複数のセラミックナノシートを形成して誘電体膜を形成する段階と、前記誘電体膜の上に第2電極を形成する段階とを含み、前記複数のセラミックナノシートは、互いに分離された少なくとも2つのピークで表される面方向大きさの多峰性分布を有するセラミック電子部品の製造方法を提供する。
【0025】
前記複数のセラミックナノシートを用意する段階は、1μm~10μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布を有し、1.5μm以上の面方向大きさで第1ピークを示す第1セラミックナノシート群を用意する段階と、前記第1セラミックナノシート群の平均粒径よりも平均粒径が小さく、かつ前記第1ピークの面方向大きさよりも小さい面方向大きさで第2ピークを示す第2セラミックナノシート群を用意する段階と、前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とを混合する段階と、を含んでもよい。
【0026】
前記第1セラミックナノシート群を用意する段階および前記第2セラミックナノシート群を用意する段階は、それぞれ熱処理する段階および遠心分離する段階の少なくとも一方を含んでもよく、前記第1セラミックナノシート群を用意する段階は、前記第2セラミックナノシート群を用意する段階より高い温度で熱処理を行うこと、および前記第2セラミックナノシート群を用意する段階より遅い速度で遠心分離を行うことの少なくとも一方を含んでもよい。
【0027】
前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とを混合する段階においては、前記第1セラミックナノシート群と前記第2セラミックナノシート群とを5:1~100:1の体積比で混合してもよい。
【0028】
前記誘電体膜を形成する段階は、前記複数のセラミックナノシートを含むセラミックナノシート溶液を用意する段階と、LB法、交互吸着法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法またはディップコーティング法を用いて、前記第1電極の上に前記セラミックナノシート溶液をコーティングして二次元ナノシート単一層を形成する段階と、を含んでもよい。
【0029】
前記誘電体膜を形成する段階は、前記二次元ナノシート単一層を形成する段階を複数回行って、複数の二次元ナノシート単一層を形成する段階を含んでもよい。
【0030】
また他の実施形態によれば、前記セラミック電子部品を含む電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高い信頼性を有しながらも小型化および高容量化を実現することができるセラミック電子部品が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係るセラミック電子部品の一例であるキャパシタを示す断面図である。
図2】本発明の一形態による誘電体膜に含まれるセラミックナノシートを概略的に示す平面図である。
図3図2に示す誘電体膜に含まれるセラミックナノシートの面方向大きさの分布の一例を示すグラフである。
図4】本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を示す概略図である。
図5】本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を示す概略図である。
図6】本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図7図6に示すセラミック電子部品の誘電体膜の断面を概略的に示す図である。
図8図6に示すセラミック電子部品の誘電体膜の多様な構造の一例を、概略的に示す断面図である。
図9図6に示すセラミック電子部品の誘電体膜の多様な構造の他の一例を、概略的に示す断面図である。
図10】本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図11図10に示すセラミック電子部品をA-A’方向に切断した断面概略図である。
図12】合成例3で得られたナノシート溶液内に分散されたナノシートの面方向大きさの分布を示すグラフである。
図13】合成例4で得られたナノシート溶液内に分散されたナノシートの面方向大きさの分布を示すグラフである。
図14】実施例1-1によるキャパシタでの複数のセラミックナノシートの面方向大きさの分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、本技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、権利範囲は様々な形態に実現され、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0034】
図面で様々な層および領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示した。明細書全体にわたって、類似の部分については同一の図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上”にあるというとき、これは他の部分の“直上”にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の“直上”にあるというときは、中間に他の部分がないことを意味する。
【0035】
以下、図面を参照して一実施形態のセラミック電子部品を説明する。
【0036】
図1は、本発明の一形態に係るセラミック電子部品の一例であるキャパシタを示す概略図である。
【0037】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係るキャパシタ10は、互いに対向する一対の電極11、12および誘電体膜13を含む。
【0038】
一対の電極11、12は、金属などの導電体を含み、例えばニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、銀(Ag)、錫(Sn)、これらの合金またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。一対の電極11、12は、例えば金属板、基板(図示せず)の上に形成された導電層、基板(図示せず)の上にメッキされた金属メッキ板等の形態であり得る。ここで、基板は、例えばガラス基板、半導体基板、高分子基板またはこれらの組み合わせであり得る。
【0039】
誘電体膜13は一対の電極11、12の間に位置し、一対の電極11、12は誘電体膜13によって電気的に絶縁され得る。
【0040】
誘電体膜13は、複数のセラミックナノシート(ceramic nanosheets)が単一層で配列された二次元ナノシート単一層(2-dimensional nanosheet monolayer film)を含むことができ、二次元ナノシート単一層を1層または2層以上含むことができる。
【0041】
セラミックナノシート(以下、単に‘ナノシート’とも称する)は、例えば層状構造のバルクセラミック粉末から得られた剥離構造体(exfoliated nanostructure)であり得る。ナノシートは、例えば50以上の誘電率を有するセラミック物質から形成でき、例えば金属酸化物ナノシートであり、例えばCaNb10、CaNaNb13、CaNaNb16、SrNb10、SrBiTi15、TiNbO、LaNbまたはこれらの組み合わせを含むナノシートであるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
各セラミックナノシートは、所定の面方向大きさ(lateral size)(以下、‘面方向大きさ’という)を有する薄い板状の形態を有し得る。セラミックナノシートの平均厚さは、例えば5nm以下、例えば3nm以下、例えば2nm以下、例えば1.5nm以下であり得る。ナノシートの面方向大きさは、例えば0.1μm~30μm、例えば0.2μm~20μm、例えば0.3μm~15μm、例えば0.5μm~10μmであり得る。ナノシートの面方向大きさは、バルクセラミック粉末の合成および剥離段階における合成および剥離条件によって決定され得る。
【0043】
誘電体膜13は、互いに異なる面方向大きさの分布を有する複数のセラミックナノシートを含むことができる。セラミックナノシートの面方向大きさの分布は、例えば連続確率分布(continuous probability distribution)で表される。本発明の一実施形態に係る複数のセラミックナノシートは、互いに分離された少なくとも2つのピークで表される面方向大きさの多峰性分布(multimodal lateral size distribution)を有し得る。
【0044】
一例として、1.5μm以上の面方向大きさで現れる第1ピーク、および第1ピークと分離され、第1ピークでの面方向大きさよりも小さい面方向大きさで現れる第2ピークを含む面方向大きさの多峰性分布を有し得る。
【0045】
セラミックナノシートの面方向大きさの多峰性分布は、例えば面方向大きさの2峰性分布または面方向大きさの3峰性分布であり得る。一例として、セラミックナノシートの面方向大きさの多峰性分布は、面方向大きさの2峰性分布であり得る。
【0046】
図2は、本発明の一形態による誘電体膜に含まれるセラミックナノシートを概略的に示す平面図であり、図3は、図2に示す誘電体膜に含まれるセラミックナノシートの面方向大きさの分布の一例を示すグラフである。
【0047】
図2を参照すれば、誘電体膜13は、比較的大きな面方向大きさの分布を有する複数のセラミックナノシート13aからなる第1セラミックナノシート群と、比較的小さな面方向大きさの分布を有する複数のセラミックナノシート13bからなる第2セラミックナノシート群と、を含む面方向大きさの2峰性分布を有し得る。第1セラミックナノシート群のナノシート13aおよび第2セラミックナノシート群のナノシート13bは、ランダムに配列されていてもよく、例えば比較的大きな面方向大きさを有する第1セラミックナノシート群のナノシート13aの間に、比較的小さな面方向大きさを有する第2セラミックナノシート群のナノシート13bが充填されるように配列されていてもよい。誘電体膜13は、不可避的に発生する空隙13cも含むことができる。ここで、空隙13cは、ナノシート13a、13bによって覆われていない開放領域、またはナノシート13aと13bとの間の隙間であり得る。
【0048】
図3を参照すれば、誘電体膜13のナノシートは、第1ピークP1で表される面方向大きさの単峰性分布(unimodal lateral size distribution)(a)を有する第1セラミックナノシート群と、第2ピークP2で表される面方向大きさの単峰性分布(b)を有する第2セラミックナノシート群と、を混合して得ることができる。
【0049】
一例として、第1セラミックナノシート群は、例えば1μm~10μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布(LSR1)を示し、例えば第1ピークP1の面方向大きさ(LSP1)は1.5μm~10μmであり得る。
【0050】
一例として、第2セラミックナノシート群は、第1セラミックナノシート群のナノシートの面方向大きさよりも小さくてもよく、例えば0.01μm~5μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布(LSR2)を示すことができ、第2ピークP2の面方向大きさ(LSP2)は、例えば2.0μm以下、例えば1.0μm以下であり得る。
【0051】
一例として、第1ピークP1の面方向大きさ(LSP1)は、第2ピークP2の面方向大きさ(LSP2)よりも2倍以上大きくてもよく、例えば第1ピークP1の面方向大きさと第2ピークP2の面方向大きさとの比率(LSP1:LSP2)は、2:1~10:1であり得る。
【0052】
一例として、第1ピークP1の面方向大きさ(LSP1)は2.0μm~5.0μmであり得、第2ピークP2の面方向大きさ(LSP2)は0.5μm~1.0μmであり得、第1ピークP1の面方向大きさと第2ピークP2の面方向大きさとの比率(LSP1:LSP2)は、2.4:1~6:1であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0053】
第1セラミックナノシート群は、第2セラミックナノシート群よりも誘電体膜13中に高い体積比率で含まれ得、例えば第1セラミックナノシート群は第2セラミックナノシート群よりも5倍以上高い体積比率で含まれ得、例えば第1セラミックナノシート群と第2セラミックナノシート群とは、例えば5:1~100:1の体積比、例えば5:1~80:1の体積比、例えば5:1~70:1の体積比、例えば5:1~50:1の体積比で含まれ得るが、これらに限定されるものではない。
【0054】
このように誘電体膜13は、互いに異なる面方向大きさの分布を有する複数のセラミックナノシートを含むことによって、比較的大きな面方向大きさを有する第1セラミックナノシート群のセラミックナノシート13aの間に、比較的小さな面方向大きさを有する第2セラミックナノシート群のセラミックナノシート13bが効果的に充填され、これにより誘電体膜13内に不可避的に発生する空隙を効果的に減らすことができる。これにより、誘電体膜13の空隙率(porosity)を効果的に下げることができる。ここで、空隙率は、誘電体膜13の総面積に対してナノシート13a、13bによって覆われていない開放領域の面積の比率、すなわち、誘電体膜13の総面積に対する空隙の面積の比率で定義され得る。
【0055】
誘電体膜13の空隙率は、例えば9.0%以下、例えば8.8%以下、例えば8.5%以下、例えば8.0%以下、例えば7.5%以下、例えば7.0%以下であり得る。
【0056】
誘電体膜13の空隙率は、例えば第1セラミックナノシート群のナノシート13aと第2ナノシート群のナノシート13bのそれぞれの面方向大きさ、これらの面方向大きさの比率、およびこれらの混合比率(体積比率または面積比率)によって調節され得る。
【0057】
誘電体膜13の厚さは、例えば0.5μm以下、例えば0.3μm以下、例えば0.2μm以下、例えば0.1μm以下であり得る。
【0058】
このように、誘電体膜13にセラミックナノシートを含有させることによって、バルクセラミック粉末を使用するときと比較して、誘電体膜13の厚さを大きく減らすことができ、キャパシタの容量(capacitance)を高めることができる。特にバルクセラミック粉末は、結晶粒の大きさの減少による容量の急激な低下によって誘電体膜の厚さを減らすのに限界があるが、セラミックナノシートを含む誘電体膜13は、このような厚さの限界はなく、さらに薄い厚さで高い容量を実現することができる。
【0059】
また、前述のように誘電体膜13は、互いに異なる面方向大きさの分布を有する複数のセラミックナノシートを含むことによって、誘電体膜13の空隙率を効果的に下げて、キャパシタの容量を一層高めることができる。
【0060】
以下、セラミック電子部品の製造方法の一例を、図1図3を参照して説明する。
【0061】
本発明の一形態によるセラミック電子部品の製造方法は、層状のセラミック粉末を合成する段階、層状のセラミック粉末を剥離して面方向大きさの分布が異なる複数のセラミックナノシート13a、13bを用意する段階、電極11の上に複数のセラミックナノシートを形成して誘電体膜13を形成する段階、および誘電体膜13の上に電極12を形成する段階を含む。
【0062】
層状のセラミック粉末は、層状のセラミック材料から得ることができ、層状のセラミック材料は、例えば遷移金属酸化物とアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物とを含む混合物を熱処理して得ることができる。遷移金属酸化物は、例えばNb、Sr、Bi、Ti、Re、V、Os、Ru、Ta、Ir、W、Ga、Mo、In、Cr、Rh、Mn、Co、Feまたはこれらの組み合わせを含む金属の酸化物から選択でき、例えばNbなどであり得るが、これらに限定されるものではない。アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物は、例えばCa、Kまたはこれらの組み合わせを含む化合物から選択でき、例えばCaCO、KCOなどであり得るが、これらに限定されるものではない。遷移金属酸化物とアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物との混合比率は、製造しようとするセラミック材料の組成を考慮して適切に選択でき、例えば、遷移金属酸化物1モル当り、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物0.1モル~1モルを混合することができるが、これに限定されるものではない。熱処理は、例えば大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、または真空雰囲気下で、750~1500℃で10時間~50時間行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
層状のセラミック材料は、粉砕して層状のセラミック粉末として得ることができる。
【0064】
層状のセラミック粉末は、多様な方法で剥離され、例えば浸透圧現象を用いたプロトン酸や、有機陽イオンの順次的なイオン交換と層間挿入反応とを行うことによって剥離され得る。
【0065】
一例として、層状のセラミック粉末は、塩酸、硫酸などの酸性溶液で酸交換処理され、アルカリ金属の少なくとも一部がプロトン(H)に交換された層状プロトン交換セラミック粉末となる。酸性溶液の濃度、処理温度、処理時間などは、適切に選択でき、特に制限されない。
【0066】
次いで、得られた層状プロトン交換セラミック粉末は、インターカレーション処理され、インターカレーションされた層状セラミック粉末を得ることができる。インターカレーションは、例えば炭素数1~20のアルキル基を有するアルキルアンモニウム塩化合物を、インターカラントとして用いて行われ得るが、これに限定されるものではない。アルキルアンモニウム塩化合物の例としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラメチルアンモニウム化合物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラエチルアンモニウム化合物、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラプロピルアンモニウム化合物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラブチルアンモニウム化合物、および/またはベンジルメチルアンモニウムヒドロキシドなどのベンジルアルキルアンモニウム化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
アルキルアンモニウム塩化合物は、水溶液形態で提供され、アルキルアンモニウム塩化合物水溶液の濃度は、層状プロトン交換セラミック粉末のプロトンを基準に、0.01~20mol%であることが好ましいが、これに限定されるものではない。インターカレーション処理の温度および時間は特に制限されず、例えば25℃~80℃で1日~5日間行われ得るが、これらに限定されるものではない。インターカラントは、層状プロトン交換セラミック粉末の層の間に挿入されて、セラミックナノシートに容易に分離されるようにする。効果的な剥離のために、遠心分離、超音波またはこれらの組み合わせを行うことができる。
【0068】
層状のセラミック粉末から剥離されたセラミックナノシートは、単結晶のセラミックナノシートであり得、溶媒内で安定的に分散されコロイド形態に存在し得る。溶媒は、例えば高誘電率溶媒、例えば水または極性溶媒、例えば水、アルコール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、プロピレンカーボネート、またはこれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0069】
セラミックナノシートを用意する段階は、面方向大きさの分布が異なる複数のセラミックナノシートをそれぞれ用意した後、これらを混合することにより行うことができる。例えばセラミックナノシートを用意する段階は、比較的大きな面方向大きさの分布を有する複数のセラミックナノシート13aからなる第1セラミックナノシート群を用意する段階、比較的小さな面方向大きさの分布を有する複数のナノシート13bからなる第2セラミックナノシート群を用意する段階、および上記第1セラミックナノシート群と上記第2セラミックナノシート群とを混合する段階、を含むことができる。第1セラミックナノシート群をなすナノシート13aは、1μm~10μmのうちの少なくとも一部の範囲で面方向大きさの分布を示し、1.5μm以上の面方向大きさ(LSP1)で現れる第1ピークP1を有することができ、第2セラミックナノシート群をなすナノシート13bは、第1セラミックナノシート群の平均面方向大きさよりも平均面方向大きさが小さく第1ピークP1よりも小さい面方向大きさ(LSP2)で現れる第2ピークP2を有し得る。
【0070】
セラミックナノシートの面方向大きさは、多様な方法によって調節され得る。例えばセラミックナノシートの面方向大きさは、層状のセラミック材料または層状のセラミック粉末を用意する段階における熱処理温度および/または熱処理時間によって調節される。例えば、高い温度で熱処理されるほど面方向大きさの大きいセラミックナノシートが得られる。例えば、セラミックナノシートの面方向大きさは、層状セラミック粉末の剥離段階で、遠心分離の条件によって調節され、例えば遅い速度で遠心分離するほど、面方向大きさの大きいセラミックナノシートが得られる。したがって、例えば複数のナノシート13aからなる第1セラミックナノシート群を用意する段階は、複数のナノシート13bからなる第2セラミックナノシート群を用意する段階よりも、高い温度で熱処理を行うか遅い速度で遠心分離を行うことを含みうる。
【0071】
第1セラミックナノシート群および第2セラミックナノシート群は、それぞれ溶媒に分散された形態で混合され得、第1セラミックナノシート群と第2セラミックナノシート群とは、例えば5:1~100:1の体積比例えば5:1~80:1の体積比、例えば5:1~70:1の体積比、例えば5:1~50:1の体積比で混合され得るが、これらに限定されるものではない。
【0072】
複数のセラミックナノシートを含むセラミックナノシート溶液は、電極11の上に溶液法でコーティングされ二次元ナノシート単一層に形成される。コーティング方法としては、例えばLB法、交互吸着法、スピンコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティングまたはディップコーティング等が挙げられる。コーティングは、1回または2回以上行うことができ、2回以上行って複数の二次元ナノシート単一層を得ることができる。
【0073】
以下、本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を説明する。
【0074】
図4は、本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を示す概略図である。
【0075】
図4を参照すれば、他の実施形態によるセラミック電子部品は、前述の実施形態と同様に、互いに対向する一対の電極11、12、および一対の電極11、12の間に位置する誘電体膜13を含む。
【0076】
しかし、本実施形態によるセラミック電子部品は、前述の実施形態とは異なり、誘電体膜13が、複数のセラミックナノシートを含む第1誘電体膜14と、セラミックバルク(bulk)誘電体層を含む第2誘電体膜15と、を含む。
【0077】
第1誘電体膜14は、前述の複数のセラミックナノシートを含むことができ、前述のように層状構造のバルクセラミック粉末から得られた剥離構造体を含むことができ、複数のナノシートが単層で配列された二次元ナノシート単一層を含むことができる。具体的な説明は前述のとおりである。
【0078】
第2誘電体膜15は、剥離されないバルク誘電体層を含むことができる。バルク誘電体層は、例えば100以上の誘電率を有する金属酸化物を含むことができ、例えばバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)および/またはチタン(Ti)を含む金属酸化物を含むことができ、例えばBaTiO、SrTiOまたはBa0.5Sr0.5TiOを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
第1誘電体膜14は、第2誘電体膜15の下部または上部に配置することができ、第2誘電体膜15より薄くてもよい。一例として、第1誘電体膜14の厚さは、例えば10nm以下例えば8nm以下、例えば5nm以下、例えば3nm以下であり得る。一例として、第1誘電体膜14の厚さは、例えば0.5nm~10nm、例えば0.5nm~8nm、例えば1nm~5nm、例えば1nm~3nmであり得る。一例として、第1誘電体膜14は、1層の二次元ナノシート単一層であり得る。一例として、第2誘電体膜15の厚さは、例えば10μm以下、例えば5μm以下、例えば3μm以下、例えば2μm以下であり得る。一例として、第2誘電体膜15の厚さは、例えば0.01μm~10μm、例えば0.01μm~約5μm、例えば0.01μm~約3μm、例えば0.01μm~約2μmであり得る。
【0080】
このように、第2誘電体膜15の下部または上部にセラミックナノシートを含む第1誘電体膜14を形成することによって、高誘電率を有するバルク誘電体層を適用した第2誘電体膜15と電極11、12との界面で発生することがある不均一性を減少させ、誘電率をさらに改善することができる。
【0081】
図5は、本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を示す概略図である。
【0082】
図5を参照すれば、他の実施形態によるセラミック電子部品は、前述の実施形態と同様に、互いに対向する一対の電極11、12、および一対の電極11、12の間に位置する誘電体膜13を含む。
【0083】
しかし、本実施形態によるセラミック電子部品は、前述の実施形態とは異なり、誘電体膜13が、複数のセラミックナノシートを含む第1誘電体膜14、バルク誘電体層を含む第2誘電体膜15、および複数のセラミックナノシートを含む第3誘電体膜16を含む。
【0084】
第1誘電体膜14および第3誘電体膜16は、前述のような複数のセラミックナノシートを含むことができ、前述のように層状構造のバルクセラミック粉末から得られた剥離構造体であり得、複数のセラミックナノシートが単層で配列された二次元ナノシート単一層を含むことができる。具体的な説明は、前述のとおりである。
【0085】
第2誘電体膜15は、剥離されないセラミックバルク誘電体層を含むことができる。セラミックバルク誘電体層は、例えば100以上の誘電率を有する金属酸化物を含むことができ、例えばバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、および/またはチタン(Ti)を含む金属酸化物を含むことができ、例えばBaTiO、SrTiOまたはBa0.5Sr0.5TiOを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
第1誘電体膜14は、第2誘電体膜15の下部に配置され、第3誘電体膜16は、第2誘電体膜15の上部に配置される。第1誘電体膜14および第3誘電体膜16は、第2誘電体膜15よりも薄くてもよい。一例として、第1誘電体膜14および第3誘電体膜16の厚さは、例えば10nm以下、例えば8nm以下、例えば5nm以下、例えば3nm以下であり得る。一例として、第1誘電体膜14および第3誘電体膜16の厚さは、例えば0.5nm~10nm、例えば0.5nm~8nm、例えば1nm~5nm、例えば1nm~3nmであり得る。一例として、第1誘電体膜14および第3誘電体膜16は、それぞれ1層の二次元ナノシート単一層であり得る。一例として、第2誘電体膜15の厚さは、例えば10μm以下で、例えば5μm以下、例えば3μm以下、例えば2μm以下であり得る。一例として、第2誘電体膜15の厚さは、例えば0.01μm~10μm、例えば0.01μm~5μm、例えば0.01μm~3μm、例えば0.01μm~2μmであり得る。
【0087】
このように第2誘電体膜15の下部および上部に、それぞれナノシートを含む第1誘電体膜14および第3誘電体膜16を形成することによって、高誘電率を有するセラミックバルク誘電体層を適用した第2誘電体膜15と電極11、12との界面で発生することがある不均一性を減少させ、誘電率をさらに改善することができる。
【0088】
図6は、本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品の一部分を概略的に示す斜視図であり、図7は、図6に示すセラミック電子部品の誘電体膜の断面を概略的に示す図である。
【0089】
本実施形態によるセラミック電子部品は、前述の実施形態と同様に、互いに対向する一対の電極11、12、および一対の電極11、12の間に位置する誘電体膜13を含む。
【0090】
しかし、本実施形態によるセラミック電子部品の誘電体膜13は、図6および図7に示すように、複数の結晶粒(grains)13aと、結晶粒13aとの境界を囲んでいる結晶粒界(grain boundary)13bを含むことができる。図面では誘電体膜13の一部が模式的に示されているが、結晶粒界13bに囲まれた複数の結晶粒13aが複数の横方向および/または縦方向に沿って規則的に配置されていてもよく、結晶粒界13bによって囲まれた複数の結晶粒13aが、無秩序に配置されていてもよい。
【0091】
結晶粒13aは、剥離されない3次元バルク誘電体物質を含むことができ、例えば100以上の誘電率を有する金属酸化物を含むことができ、例えばバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)および/またはチタニウム(Ti)を含む金属酸化物を含むことができ、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
結晶粒13aは、バルク誘電体物質に対して、ドナー元素および/またはアクセプター元素をさらに含有させることができる。ドナー元素および/またはアクセプター元素は例えば金属元素または半金属元素であり得、ドナー元素は、例えばLa、Sm、Dy、Ho、Y、Nd、Ce、Nb、Ta、Wまたはこれらの組み合わせを含むことが好ましく、アクセプター元素は、例えばMn、Co、Ni、Crまたはこれらの組み合わせを含むことが好ましいが、これらに限定されるものではない。バルク誘電体物質は、酸素空隙を有することができ、ドナー元素および/またはアクセプター元素は、バルク誘電体物質中に固溶されていてもよい。このようにバルク誘電体物質にドナー元素および/またはアクセプター元素をさらに含有させることによって、バルク誘電体物質の電気的特性を変化させ、半導体性、導電性または絶縁性を効果的に得ることができる。
【0093】
結晶粒13aの平均粒径は、キャパシタの見かけ比誘電率を考慮して多様に設定することができ、例えば1.5μm以下、例えば1.4μm以下、例えば1.3μm以下、例えば1.2μm以下、例えば1.1μm以下、例えば1.0μm以下、例えば900nm以下、例えば800nm以下、例えば700nm以下、例えば600nm以下、例えば500nm以下、例えば300nm以下であり得る。また、例えば50nm以上、例えば60nm以上、例えば70nm以上、例えば80nm以上、例えば90nm以上、例えば100nm以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0094】
結晶粒界13bは、複数のセラミックナノシートが1層または2層以上に配列された二次元ナノシート単一層を含むことができる。セラミックナノシートは前述のようにバルクセラミック粉末から得られた剥離構造体であり得、前述のように互いに分離された少なくとも二つのピークで表される多重面方向大きさ分布を有し得る。セラミックナノシートおよび二次元ナノシート単一層の具体的な説明は、前述のとおりである。
【0095】
一例として、結晶粒界13bは、結晶粒13aに直接接触しているか、結晶粒界13bの少なくとも一部が結晶粒13aと離隔して配置され得る。一例として、結晶粒界13bは結晶粒13aの全体を囲んでいるか、または結晶粒13aの一部を囲んでいてもよい。
【0096】
結晶粒界13bの厚さは、結晶粒13aの厚さよりも小さくてもよく、例えば100nm以下、例えば80nm以下、例えば70nm以下、例えば50nm以下、例えば30nm以下、例えば20nm以下、例えば10nm以下、例えば5nm以下であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本実施形態によるセラミック電子部品は、隣接した結晶粒13aに所定の電圧が印加される場合、隣接した結晶粒13aの間に位置する結晶粒界13bに静電容量が形成されるので、キャパシタの機能を効果的に果たすことができる。また、結晶粒界13bに囲まれた複数の結晶粒13aが、縦横に沿って配置されるか無秩序に配置されて直列および/または並列に連結されているので、全体的に高い静電容量を有するキャパシタの機能を効果的に果たすことができる。
【0098】
図8および図9は、図6に示すセラミック電子部品の誘電体膜の多様な構造を、概略的に示す断面図である。
【0099】
図8および図9を参照すれば、誘電体膜13は、結晶粒界13bに囲まれた複数の結晶粒13aを含み、結晶粒界13bは、前述の複数のセラミックナノシート以外にバルク誘電体物質をさらに含むことができる。
【0100】
一例として、結晶粒界13bは、セラミックナノシートを含む領域13baとバルク誘電体物質を含む領域13bbとを含むことができる。例えば、図8のように、セラミックナノシートを含む領域13baとバルク誘電体物質を含む領域13bbとが断続的に繰り返されて配置されてもよく、例えば、図9のように、セラミックナノシートを含む領域13baとバルク誘電体物質を含む領域13bbとが連続的な帯状に配置されてもよい。このように、セラミックナノシートを含む領域13baとバルク誘電体物質を含む領域13bbとは、多様な形態に配置され得るが、これらに限定されるものではない。
【0101】
図10は、本発明の他の実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示す斜視図であり、図11は、図10に示すセラミック電子部品をA-A’方向に切断した断面概略図である。
【0102】
本実施形態によるセラミック電子部品は、図1のキャパシタを単位キャパシタにして複数個積層された構造を有する積層セラミックキャパシタ(multilayer ceramic capacitor、MLCC)20である。
【0103】
図10および図11を参照すれば、積層セラミックキャパシタ20は、キャパシタ本体21と外部電極31、32とを含む。キャパシタ本体21は、図1図3または図4に示されたキャパシタ10が複数個積層された構造を有し、各キャパシタは前述のように電極(内部電極)11、12と誘電体膜13とを含む。具体的な説明は前述のとおりである。
【0104】
上記ではセラミック電子部品の一例としてキャパシタおよび積層セラミックキャパシタを説明したが、これらに限定されず、セラミックを使用する全ての電子部品に適用され得る。
【0105】
上述のキャパシタ、積層セラミックキャパシタなどのセラミック電子部品は、多様な電子装置に含まれ、例えば液晶表示装置などの映像機器、コンピュータおよびモバイルフォンなどに含まれ得る。
【実施例
【0106】
以下、実施例を通じて前述の実施形態をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0107】
[合成例I:KCaNbセラミック粉末(母相)の合成]
(合成例1)
CO:CaCO:Nb粉末を1.1:2:3の組成で用意した。次いで、前記粉末を、エタノールに入れてボールミル(Ball Mill)を用いて24時間攪拌して均一に混合した。次いで、混合した粉末を、ビーカー中で磁気攪拌機とホットプレートとを用いて混合しながら乾燥した。充分な乾燥のために、追加的に100℃オーブンで1日間乾燥した。次いで、空気雰囲気下で、1200℃で10時間、か焼を行って、KCaNb10母相を用意した。
【0108】
(合成例2)
1300℃で10時間、か焼を行ったことを除いては、合成例1と同様の方法で合成して、KCaNb10母相を用意した。
【0109】
[ナノシート溶液の用意]
(合成例3)
合成例1で得られたKCaNb10母相5gをHNO 5M濃度の水溶液200cmに入れ、72時間カリウムイオン(K)を水素(H)で置換した。次いで、蒸留水を使用して中性化し、大気中で充分に乾燥し、さらにオーブンで1日以上充分に乾燥した。次いで、水素置換されたHCaNb10・1.5HO 0.4gをテトラブチルアンモニウム水溶液(tetrabutylammonium hydroxide solution、TBAOH)中で混合しながらHをTBA(テトラブチルアンモニウム)で置換し、層上で、TBAで置換されながらナノシートへの剥離が起こった。この時、HCaNb10・1.5HOとTBAOHとは、1:1の比率で混合した。剥離は、常温で7日間、150rpmで機械的に振盪させながら行った。次いで、ビーカーの底の沈殿物を除去した後、遠心分離機を用いて2,000rpmの条件で30分間遠心分離し、上澄み液(2/3)のみ使用し、沈んだ残留物は廃棄した。次いで、遠心分離された上澄み液を、メンブレンを用いてろ過してテトラブチルアンモニウム水溶液を除去し、面方向大きさ(lateral size)が3.2μmであるナノシートを含むナノシート溶液を製造した。
【0110】
(合成例4)
6,000rpmの条件で30分間遠心分離したことを除いては、合成例3と同様の方法で合成して、ナノシート溶液を製造した。
【0111】
(合成例5)
11,000rpmの条件で30分間遠心分離したことを除いては、合成例3と同様の方法で合成して、ナノシート溶液を製造した。
【0112】
(合成例6)
剥離を100rpm(mild shaking)で行ったことを除いては、合成例3と同様の方法で合成して、ナノシート溶液を製造した。
【0113】
(合成例7)
合成例1で得られたKCaNb10母相の代わりに、合成例2で得られたKCaNb10母相を使用したことを除いては、合成例3と同様の方法で合成して、ナノシート溶液を製造した。
【0114】
[評価I]
合成例3~7によるナノシート溶液に含まれている複数のナノシートの面方向大きさの分布を確認した。
【0115】
ナノシート溶液に含まれている複数のナノシートの面方向大きさの分布は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立)を用いて画像を得た後、イメージアナライザー(software:Image Pro、製造会社:Media Cybernetics)を用いて確認した。
【0116】
結果を、表1、図12および図13に示す。
【0117】
図12および図13は、合成例3および4で得られたナノシート溶液内に分散された複数のナノシートの面方向大きさの分布を示すグラフである。
【0118】
【表1】
【0119】
図12を参照すれば、合成例3で得られたナノシート溶液、は1.0μm~5.0μmの範囲内で、3.2μmの面方向大きさを有するナノシートが最も多く含まれている分布を確認することができる。
【0120】
図13を参照すれば、合成例4で得られたナノシート溶液は、0.3μm~1.6μmの範囲内で、0.9μmの面方向大きさを有するナノシートが最も多く含まれている分布を確認することができる。
【0121】
[実施例I]
(実施例1-1)
SiOとTiOとが積層されたSi基板の上に、Pt電極をスパッタリング法で200nm厚さで形成して下部電極を形成した。次いで、合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、5:1の体積比で混合した混合ナノシート溶液を用意し、下部電極の上にLB法(装置:KSV NIMA)で基板の上昇を0.5mm/minの速度で行ってコーティングし、二次元ナノシート単一層を形成した。次いで、紫外線を照射して、残っているポリマーを除去した後、オーブンで乾燥した。次いで、上記コーティングおよび乾燥を9回さらに繰り返して、合計10層の二次元ナノシート単一層を含む誘電体膜(0.4×0.2mm)を形成した。次いで、誘電体膜の上にPt電極を形成してキャパシタを製造した。
【0122】
図14は、実施例1-1によるキャパシタでの複数のセラミックナノシートの面方向大きさの分布を示すグラフである。
【0123】
(実施例1-2)
合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、15:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例1-1と同様の方法でキャパシタを製造した。
【0124】
(実施例1-3)
合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、30:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例1-1と同様の方法でキャパシタを製造した。
【0125】
(実施例1-4)
合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、50:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例1-1と同様の方法でキャパシタを製造した。
【0126】
(比較例1)
合成例3によるナノシート溶液のみを使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例1-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0127】
(実施例2-1)
SiOとTiOとが積層されたSi基板の上に、Pt電極をスパッタリング法で200nm厚さで形成して下部電極を形成した。次いで、合成例6によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを10:1の体積比で混合した混合ナノシート溶液を用意し、下部電極の上にLB法(装置:KSV NIMA)で基板上昇速度0.5mm/minの速度でコーティングして二次元ナノシート単一層(2-dimensional nanosheet monolayer)を形成した。次いで、紫外線を照射して、残っているポリマーを除去した後、オーブンで乾燥した。次いで、上記コーティングおよび乾燥を9回さらに繰り返して、合計10層の二次元ナノシート単一層を含む誘電体膜を形成した。次いで、誘電体膜の上にPt電極を形成してキャパシタを製造した。
【0128】
(実施例2-2)
合成例6によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、20:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例2-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0129】
(実施例2-3)
合成例6によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、40:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例2-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0130】
(比較例2)
合成例6によるナノシート溶液のみを使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例1-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0131】
(実施例3-1)
SiOとTiOとが積層されたSi基板の上に、Pt電極をスパッタリング法で200nm厚さで形成して下部電極を形成した。次いで、合成例7によるナノシート溶液と合成例5によるナノシート溶液とを、20:1の体積比で混合した混合ナノシート溶液を用意し、下部電極の上にLB法(装置:KSV NIMA)で基板上昇速度0.5mm/minの速度でコーティングして二次元ナノシート単一層を形成した。次いで、紫外線を照射して、残っているポリマーを除去した後、オーブンで乾燥した。次いで、上記コーティングおよび乾燥を9回さらに繰り返して、全部で10層の二次元ナノシート単一層を含む誘電体膜を形成した。次いで、誘電体膜の上にPt電極を形成して、キャパシタを製造した。
【0132】
(実施例3-2)
合成例7によるナノシート溶液と合成例5によるナノシート溶液とを、40:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例3-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0133】
(実施例3-3)
合成例7によるナノシート溶液と合成例5によるナノシート溶液とを、60:1の体積比で混合した混合溶液を使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例3-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0134】
(比較例3)
合成例7によるナノシート溶液のみを使用して二次元ナノシート単一層を形成したことを除いては、実施例3-1と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0135】
[評価III]
実施例1-1~実施例3-3と比較例1~3によるキャパシタの空隙率および静電容量を評価した。
【0136】
空隙率は、走査電子顕微鏡(SEM、日立)を用いて画像を得た後、イメージアナライザー(software:Image Pro、製造会社:Media Cybernetics)を用いて評価し、静電容量は、LCRメータ(LCR meter、Agilent社製)を用いて評価した。
【0137】
結果を、下記表2~4に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
【0141】
上記表2~4から明らかなように、実施例1-1~3-3によるキャパシタは、比較例1~3によるキャパシタに比べて空隙率が低く、それによって静電容量が高くなることが確認することができた。
【0142】
[実施例II]
(実施例4)
SiOとTiOとが積層されたSi基板の上に、Pt電極をスパッタリング法で200nmの厚さで形成して下部電極を形成した。次いで、合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、5:1の体積比で混合した混合ナノシート溶液を用意し、下部電極の上にLB法(装置:KSV NIMA)で、基板上昇速度0.5mm/minでコーティングして二次元ナノシート単一層を形成した。次いで、紫外線を照射して、残っているポリマーを除去した後、オーブンで乾燥した。次いで、二次元ナノシート単一層の上に、Ba0.5Sr0.5TiOセラミックバルク誘電体をマグネトロンRFスパッタリング(RF power density:1W/cm、蒸着圧力2Pa、供給ガス:アルゴン(20sccm)、基板温度:常温(25℃))で蒸着した。次いで、基板をO雰囲気下で、500℃で1時間アニーリングして、200nm厚さのBa0.5Sr0.5TiOバルク誘電体層を形成した。次いで、Ba0.5Sr0.5TiOバルク誘電体層の上にPt電極を形成して、キャパシタを製造した。
【0143】
(実施例5)
SiOとTiOとが積層されたSi基板の上に、Pt電極をスパッタリング法で200nm厚さで形成して下部電極を形成した。次いで、合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、5:1の体積比で混合した混合ナノシート溶液を、下部電極の上にLB法(装置:KSV NIMA)で基板の上昇を0.5mm/minの速度で行ってコーティングし、下部の二次元ナノシート単一層を形成した。次いで、紫外線を照射して、残っているポリマーを除去した後、オーブンで乾燥した。次いで、下部の二次元ナノシート単一層の上に、Ba0.5Sr0.5TiOセラミックバルク誘電体を、マグネトロンRFスパッタリング(RF power density:1W/cm、蒸着圧力 2Pa、供給ガス:アルゴン(20sccm)、基板温度:常温(25℃))で蒸着した。次いで、基板をO雰囲気下で、500℃で1時間アニーリングして、200nm厚さのBa0.5Sr0.5TiOセラミック誘電体層を形成した。次いで、Ba0.5Sr0.5TiOセラミック誘電体層の上に、合成例3によるナノシート溶液と合成例4によるナノシート溶液とを、5:1の体積比で混合した混合ナノシート溶液を、Ba0.5Sr0.5TiOセラミック誘電体層の上にLB法(装置:KSV NIMA)で、基板上昇温度0.5mm/minの速度でコーティングして上部の二次元ナノシート単一層を形成した。次いで、紫外線を照射して、残っているポリマーを除去した後、オーブンで乾燥した。次いで、上部の二次元ナノシート単一層の上にPt電極を形成して、キャパシタを製造した。
【0144】
(比較例4)
二次元ナノシート単一層を形成しないことを除いては、実施例5と同様の方法で、キャパシタを製造した。
【0145】
[評価IV]
実施例4、5および比較例4によるキャパシタの見かけ誘電率を評価した。見かけ誘電率(ε)は、下記関係式から算出される:
C=εε×(A/d)
ここで、Cは静電容量、ε0は真空の誘電率、Aは上部電極(Pt電極)の面積、dは誘電体(二次元ナノシート単一層とバルク誘電体層との合計)の厚さ
その結果を、下記表5に示す。
【0146】
【表5】
【0147】
上記表5を参照すれば、実施例4および5によるキャパシタは、比較例4によるキャパシタと比較して、高い見かけ誘電率を示すのを確認することができた。
【0148】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれら実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の技術的思想を利用した当業者の様々な変形および改良形態も、本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0149】
10 キャパシタ、
11、12 電極、
13 誘電体膜、
13a、13b セラミックナノシート、
13c 空隙、
14 第1誘電体膜、
15 第2誘電体膜、
16 第3誘電体膜、
21 キャパシタ本体、
31、32 外部電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14