(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】光源装置及び投写型表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20230825BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20230825BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20230825BHJP
F21V 7/30 20180101ALI20230825BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20230825BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20230825BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20230825BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20230825BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230825BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 311
F21V7/28 240
F21V7/30
F21V9/32
G03B21/00 D
H04N5/74 A
F21Y113:13
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2019077769
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-01-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝明
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/186233(WO,A1)
【文献】特開2012-234161(JP,A)
【文献】特開2017-198801(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129656(WO,A1)
【文献】特開2017-227862(JP,A)
【文献】特開2013-092752(JP,A)
【文献】特開2012-008549(JP,A)
【文献】特開2011-221504(JP,A)
【文献】特開2018-045199(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208334(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0080630(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
23/00-99/00
G02B5/20-5/30
G02F1/13357
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
9/12-9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光学系と、蛍光光学系と、前記レーザー光学系及び前記蛍光光学系の各出射光を合成する光合成器とを備えた光源装置であって、
前記レーザー光学系は、
青色光、緑色光、及び赤色光をそれぞれ発生し、もしくは青色光及び赤色光をそれぞれ発生する複数の第1のレーザー光源と、
前記各第1のレーザー光源の各出射光を合成する第1のダイクロイックミラーと、
前記第1のダイクロイックミラーによって合成された光を集光する集光素子と、
前記集光素子によって集光された光が入射する位置に配置される拡散板とを備え、
前記蛍光光学系は、第2のレーザー光源と、前記第2のレーザー光源の出射光で励起されて、緑色光及び赤色光を含む蛍光光を発生する蛍光板を備え、
前記光合成器は第2のダイクロイックミラーを備えた光源装置。
【請求項2】
前記各第1のレーザー光源の出射光は直線偏光され、前記レーザー光学系の出射光は、前記第2のダイクロイックミラーの面に対してP偏光を有して入射する請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記第2のダイクロイックミラーは、
前記各第1のレーザー光源の出射光の波長帯域において、前記第2のダイクロイックミラーの面に対してP偏光を有して入射する光を透過し、
前記各第1のレーザー光源の青色光以外の出射光の波長帯域において、前記第2のダイクロイックミラーの面に対してS偏光を有して入射する光を反射し、
前記蛍光板によって発生される蛍光光の波長帯域において、前記第2のダイクロイックミラーの面に対してS偏光を有して入射する光を反射する分光特性を有する請求項2記載の光源装置。
【請求項4】
前記拡散板は、
表面において円周状に形成された微細な凹凸形状の領域を有するガラスからなる第1の円形基板と、
前記第1の円形基板を回転駆動する第1のモーターとを備えた請求項1~
3のうちの1つに記載の光源装置。
【請求項5】
前記蛍光板は、
Ce付活YAG系黄色蛍光体を形成した蛍光体層を備えた第2の円形基板と、
前記第2の円形基板を回転駆動する第2のモーターとを備えた請求項1~
4のうちの1つに記載の光源装置。
【請求項6】
前記各第1のレーザー光源は半導体レーザー素子を備える請求項1~
5のうちの1つに記載の光源装置。
【請求項7】
前記第2のレーザー光源は青色半導体レーザー素子を備える請求項1~
6のうちの1つに記載の光源装置。
【請求項8】
前記レーザー光学系の光は、第1の領域に入射した後に前記拡散板に入射し、
前記蛍光光学系の光は、前記第1の領域に入射した後に前記蛍光板に入射する請求項1~
7のうちの1つに記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1~
8のうちの1つに記載の光源装置と、
前記光源装置の出射光を集光して被照明領域に照射する照明光学系と、
映像信号に従って画像を形成する画像形成素子と、
前記画像形成素子で形成された画像を拡大して投写する投写レンズを備えた投写型表示装置。
【請求項10】
前記各第1のレーザー光源の出射光の光出力と、前記第2のレーザー光源の出射光の光出力とは互いに独立に調整可能であり、前記各出射光の光出力を調整することにより前記光源装置の出射光の色域が調整される請求項
9記載の投写型表示装置。
【請求項11】
前記画像形成素子がミラー偏向型のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)である請求項
9又は10に記載の投写型表示装置。
【請求項12】
前記画像形成素子が液晶パネルである請求項
9又は10に記載の投写型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成素子に形成される画像を照明光で照射し、投写レンズによりスクリーン上に拡大投写する投写型表示装置、並びに当該投写型表示装置を用いた光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラー偏向型のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)又は液晶パネルの画像形成素子を用いた投写型表示装置の光源として、長寿命である半導体レーザー又は発光ダイオードなどの固体光源を用いた多数の光源装置が開示されている。その中で、青、緑、及び赤色の固体光源を用いた広色域で高効率な光源装置が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1は、コヒーレント光を用いる無スペックル・ディスプレイ装置を開示している。特許文献1によれば、赤色レーザーと青色レーザーと緑色レーザーとから出射した光は、対応する3つのダイクロイックミラーで合成された後、拡散素子に入射する。拡散阻止は、擦りガラスで構成され、モーターによって回転される。拡散素子により拡散された光は、レンズを介して空間的光変調器を照射する。空間的光変調器で形成された画像を投写レンズによりスクリーン上に拡大投写する。可干渉性の高いレーザー光を用いてスクリーン上に画像を形成した時にスペックルノイズを生じる。スペックルノイズは微細な凹凸を有するスクリーンから反射したレーザー光が干渉し合うことによって生じるランダムな干渉パターンであり、明暗の斑点模様として観察される。このスペックルノイズを回転可能な拡散素子により解消するものである。
【0004】
また、特許文献2は、スペックルノイズを解消するための他の手段として、デスペックル効果を奏するデスペックル素子が形成されたデスペックル領域と、光を透過する透過領域とをそれぞれ備えた複数のデスペックルホイールを組み合わせた構成を開示している。デスペックル領域は、回折、拡散、及び/又は位相差の機能を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-208089号公報
【文献】特開2016-184064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の光源装置の構成において、複数の回転可能な拡散板を用いるだけでは、スペックルノイズの解消には不十分であった。また、複数の半導体レーザー素子からなるアレイを備えた光源装置では、光源装置の発光領域が複数の半導体レーザー素子に対応して分割されていることと、各半導体レーザー素子の微小な発光領域のサイズとに起因して、スクリーン上において微小な輝度むらを生じるという問題を抱えている。このため、青、緑、及び赤の固体光源を用いて、従来よりも良好にスペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消することが求められる。
【0007】
本開示は、青、緑、及び赤の固体光源を用いて、従来技術に比較して小型であってかつ良好にスペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消することができる光源装置と、その光源装置を用いた投写型表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光源装置は、レーザー光学系と、蛍光光学系と、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を合成する光合成器とを備える。レーザー光学系は、青色光、緑色光、及び赤色光をそれぞれ発生し、もしくは青色光及び赤色光をそれぞれ発生する複数の第1のレーザー光源と、各第1のレーザー光源の各出射光を合成する第1のダイクロイックミラーと、各第1のレーザー光源の各出射光のスペックルノイズ及び輝度むらを低減する拡散板とを備える。蛍光光学系は、第2のレーザー光源と、第2のレーザー光源の出射光で励起されて、緑色光及び赤色光を含む蛍光光を発生する蛍光板を備える。光合成器は第2のダイクロイックミラーを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、スペックルノイズを低減した青、緑、赤のレーザー光源光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、ダイクロイックミラーで合成するので、従来技術に比較して小型であってかつスペックルノイズと微小な輝度むらを解消しつつ広色域の出射光を発生できる高輝度の光源装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る光源装置の構成を示す概略平面図
【
図2】実施の形態1に係る光源装置の第2のダイクロイックミラーの分光特性を示すグラフ
【
図3】実施の形態1に係る光源装置の蛍光板のスペクトル特性を示すグラフ
【
図4】本開示の実施の形態2に係る光源装置の構成を示す概略平面図
【
図5】実施の形態2に係る光源装置の第2のダイクロイックミラーの分光特性を示すグラフ
【
図6】本開示の実施の形態3に係る光源装置の構成を示す図概略平面図
【
図7】本開示の実施の形態4に係る投写型表示装置の構成を示す概略平面図
【
図8】本開示の実施の形態5に係る投写型表示装置の構成を示す概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
[1.実施の形態1]
[1-1.構成]
図1は本開示の実施の形態を示す光源装置58の構成を示す概略平面図である。
【0013】
図1において、光源装置58は、第1のレーザー光源である緑色レーザー光源22と、赤色レーザー光源26と、青色レーザー光源30と、第2のレーザー光源である励起用レーザー光源47とを備える。緑色レーザー光源22は、複数の緑色半導体レーザー素子を配置した緑色半導体レーザー基板20と、コリメートレンズアレイ21とを備える。赤色レーザー光源26は、複数の赤色半導体レーザー素子を配置した赤色半導体レーザー基板24と、コリメートレンズアレイ25とを備える。青色レーザー光源30は、複数の青色半導体レーザー素子を配置した青色半導体レーザー基板28と、コリメートレンズアレイ29とを備える。励起用レーザー光源47は、複数の青色半導体レーザー素子を配置した青色半導体レーザー基板45と、コリメートレンズアレイ46とを備える。
【0014】
また、光源装置58は、放熱板23,27,31,48と、ミラー32,37,42を備える。さらに、光源装置58は、第1のダイクロイックミラーである赤反射のダイクロイックミラー33及び青反射のダイクロイックミラー34と、コンデンサレンズ35,41,43,49,50,52,53と、拡散板36,51と、円形拡散板38及びモーター39を備える回転拡散板40とを備える。また、光源装置58は、第2のダイクロイックミラーであるダイクロイックミラー44と、反射膜と蛍光体層55を形成したアルミニウム基板54及びモーター56を備える蛍光板57とを備える。光源装置58の外部において、コンデンサレンズ59,61と、ミラー60と、ロッドインテグレータ62とを備える。
【0015】
図1において、レーザー光源から出射する光と、ダイクロイックミラーへ入射及び出射する光とについて、それらの偏光方向を示す。
【0016】
本実施の形態では、緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色レーザー光源30からダイクロイックミラー44までの光学系を「レーザー光学系」といい、励起用レーザー光源47から蛍光板57までの光学系を「蛍光光学系」という。
【0017】
[1-1-1.レーザー光学系]
緑色レーザー光源22は、複数の緑色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した緑色半導体レーザー基板20と、各緑色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ21とを備える。例えば、緑色レーザー光源22は、24個(=6×4)の緑色半導体レーザー素子と、24個のコリメートレンズとを備える。緑色半導体レーザー基板20の各緑色半導体レーザー素子は、525±8nm波長幅を有する直線偏光された緑色のレーザー光を発生して出射する。緑色半導体レーザー基板20の各緑色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ21の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。放熱板23は緑色半導体レーザー基板20を冷却する。
【0018】
赤色レーザー光源26は、複数の赤色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した赤色半導体レーザー基板24と、各赤色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ25とを備える。例えば、例えば、赤色レーザー光源26は、24個(=6×4)の赤色半導体レーザー素子と、24個のコリメートレンズとを備える。赤色半導体レーザー基板24の各赤色半導体レーザー素子は、640±8nmの波長幅を有する直線偏光された赤色のレーザー光を発生して出射する。赤色半導体レーザー基板24の各赤色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ25の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。放熱板27は赤色半導体レーザー基板24を冷却する。
【0019】
青色レーザー光源30は、複数の青色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した青色半導体レーザー基板28と、各青色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ29を備える。例えば、青色レーザー光源30は、12個(=6×2)の青色半導体レーザー素子及び12個のコリメートレンズを備える。青色半導体レーザー基板28の各青色半導体レーザー素子は、465±8nmの波長幅を有する直線偏光された青色のレーザー光を発生して出射する。青色半導体レーザー基板28の各青色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ29の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。放熱板31は青色半導体レーザー基板28を冷却する。
【0020】
青色半導体レーザー素子は、赤色半導体レーザー素子及び緑色半導体レーザー素子に比較して、発光効率が高く、かつ、所望の色度を有する白色光を発生するために必要な光出力が小さい。従って、上述の例では、青色半導体レーザー素子の個数は、赤色半導体レーザー素子の個数及び緑色半導体レーザー素子の個数の半分になるように構成している。
【0021】
緑色レーザー光源22及び青色レーザー光源30から出射されたレーザー光と、赤色レーザー光源26から出射されてミラー32で反射されたレーザー光とは、赤反射のダイクロイックミラー33と青反射のダイクロイックミラー34に入射する。緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色レーザー光源30は、出射された各レーザー光が、赤反射のダイクロイックミラー33及び青反射のダイクロイックミラー34に対して、P偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。赤反射のダイクロイックミラー33は、入射した緑色レーザー光と青色レーザー光の95%以上を透過し、入射した赤色レーザー光の97%以上を反射する特性を有する。赤反射のダイクロイックミラー33の透過率が50%となる半値波長は583nmとしている。青反射のダイクロイックミラー34は、入射した赤色レーザー光と緑色レーザー光の95%以上を透過し、入射した青色レーザー光の97%以上を反射する特性を有する。青反射のダイクロイックミラー34の透過率が50%となる半値波長は495nmとしている。
【0022】
図1の例では、青反射のダイクロイックミラー34は2分割され、分割された各部分は、赤反射のダイクロイックミラー33の両側にそれぞれ配置される。言い換えると、青反射のダイクロイックミラー34は、赤反射のダイクロイックミラー33と同じ位置において交差して配置されている。
【0023】
赤反射のダイクロイックミラー33と青反射のダイクロイックミラー34で合成された各レーザー光はコンデンサレンズ35に入射する。コンデンサレンズ35の形状は、各レーザー光が回転拡散板40の近傍で集光するように決められている。コンデンサレンズ35を透過したレーザー光は、拡散板36で拡散された後、ミラー37で反射され、回転拡散板40に入射する。
【0024】
拡散板36は、ガラス基板上に形成された微細なマイクロレンズをアレイ状に形成して拡散面を構成したものであり、入射光を拡散する。マイクロレンズを形成することにより、フッ酸などの溶液を用いた化学処理によりガラス基板の表面を微細な凹凸形状に加工した拡散板よりも、最大拡がり角度を低減することができ、従って拡散損失を低減することができる。拡散板36の拡散角度、すなわち、拡散光の最大強度の50%となる半値角度幅は、略3度と小さい。従って、拡散板36は入射光の偏光特性を保持する。拡散板36は、その出射光が後段のいずれかの光学素子に入射するときのスポット光の径が所望のスポット径となるように、入射光を拡散させる。ここで、光強度がピーク強度の13.5%となる直径をスポット径と定義する。例えば、拡散板36は、その出射光が回転拡散板40の近傍に入射するとき、スポット光が2.5~3.5mmのスポット径を有するように構成される。
【0025】
回転拡散板40は、ガラス基板上に円周状に拡散層を形成した円形拡散板38と、円形拡散板38の中央部に設けられたモーター39とを備え、回転駆動される。回転拡散板は、例えば、最大で10800rpm程度の速度で高速に回転駆動される。拡散層は、化学処理によりガラス基板の表面を微細な凹凸形状に加工することにより形成される。回転拡散板40の拡散角度は略15度である。従って、回転拡散板40は入射光の偏光特性を維持する。拡散層は、化学処理によりガラス基板への両面に形成されてもよい。化学処理により拡散層を形成する場合、アレイ状のマイクロレンズを形成した拡散板よりも、大型の拡散板を比較的安価に製作できる。一般に、化学処理により形成された拡散層を備えた拡散板の最大拡がり角は、アレイ状のマイクロレンズを形成した拡散板の最大拡がり角よりも大きくなるが、回転拡散板40の出射光は、コンデンサレンズ41で効率よく集光できる。
【0026】
実施の形態1に係る光源装置58では、回転拡散板40を用いて拡散面を回転することにより、レーザー光に起因するスクリーン上でのランダムな干渉パターンが時間的かつ空間的に高速に変動して、スペックルノイズを解消することができる。また、回転拡散板40を用いて拡散面を回転することにより、緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色レーザー光源30の各発光領域が複数の半導体レーザー素子に対応して分割されていることと、各半導体レーザー素子の微小な発光領域のサイズとに起因する微小な輝度むらを低減することもできる。
【0027】
回転拡散板40により、多数の拡散角度で時間的に多重化された光は、レーザー光の可干渉性が大幅に解消された光となって、コンデンサレンズ41で集光され、ミラー42で反射した後、コンデンサレンズ43で略平行光に変換される。コンデンサレンズ41,43の形状は、回転拡散板40の近傍のスポット光が略平行光となるように決められている。
【0028】
コンデンサレンズ43を出射した各レーザー光はダイクロイックミラー44に入射する。ダイクロイックミラー44は、各レーザー光がダイクロイックミラー44の面に対してP偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。
【0029】
図2は、ダイクロイックミラー44の分光特性を示す。分光特性は波長に対する透過率を示し、ガラス基板上に、TiO
2などの高屈折率材料と、SiO
2などの低屈折率材料とを交互に形成して60層の光学薄膜を構成した事例を示す。ダイクロイックミラー44は、波長445±8nmと465±8nmの青色レーザー光のP偏光とS偏光を95%以上で透過し、波長525±8nmの緑色レーザー光のP偏光と、波長640±8nmの赤色レーザー光のP偏光を、それぞれ95%以上で透過する分光特性を有する。また、ダイクロイックミラー44は、波長525±8nmの緑色レーザー光のS偏光と、波長640±8nmの赤色レーザー光のS偏光を68%以上の高い反射率で反射する分光特性を有する。さらに、ダイクロイックミラー44は、490~500nmのシアン成分と、545~620nmの緑、赤成分を含む色光のP偏光及びS偏光を、それぞれ88%以上の高い反射率で反射する分光特性を有する。したがって、青、緑、及び赤色のレーザー光は、高い効率でダイクロイックミラー44を透過する。
【0030】
[1-1-2.蛍光光学系]
一方、励起用レーザー光源47は、複数の青色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した青色半導体レーザー基板45と、各青色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ46とを備える。例えば、励起用レーザー光源47は、24個(=6×4)の青色半導体レーザー素子と、24個のコリメートレンズとを備える。青色半導体レーザー基板45の各青色半導体レーザー素子は、455±8nmの波長幅を有する直線偏光された青色のレーザー光を発生して出射する。青色半導体レーザー基板45の各青色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ46の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。放熱板48は励起用レーザー光源47を冷却する。
【0031】
励起用レーザー光源47の青色半導体レーザー素子の個数は、投写型表示装置を構成した場合に、励起用レーザー光源47による光束と、緑色レーザー光源22及び赤色レーザー光源26による光束が略同等となるように決定される。
【0032】
励起用レーザー光源47は、出射されたレーザー光がダイクロイックミラー44の入射面に対して、P偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。
【0033】
励起用レーザー光源47の出射光の平行な光束は、コンデンサレンズ49及び50により小径化され、励起系の拡散板51に入射する。励起系の拡散板51は、ガラス基板の表面を微細な凹凸形状に加工することにより形成される。励起系の拡散板51の拡散角度は略5度と小さい。従って、励起系の拡散板51は入射光の偏光特性を保持する。励起系の拡散板51の出射光はダイクロイックミラー44に入射する。
【0034】
励起系の拡散板51からダイクロイックミラー44に入射し、ダイクロイックミラー44を透過したP偏光の光は、コンデンサレンズ52,53により集光され、蛍光板57に入射する。励起系の拡散板51は、その出射光が蛍光板57に入射するときのスポット光の径が所望のスポット径となるように、入射光を拡散させる。例えば、励起系の拡散板51は、その出射光が蛍光板57に入射するとき、スポット光が2~3mmのスポット径を有するように構成される。
【0035】
蛍光板57は、反射膜と蛍光体層55を形成した円形のアルミニウム基板54と、アルミニウム基板54の中央部に設けられたモーター56とを備え、回転駆動される。蛍光板57の反射膜は、可視光を反射する金属膜もしくは誘電体膜であり、アルミニウム基板54の上に形成される。さらに反射膜上には、蛍光体層55が形成される。蛍光体層55には、青色光により励起されて緑色光及び赤色光の成分を含んだ黄色光を発生するCe付活YAG系黄色蛍光体を形成している。この蛍光体の結晶母体の代表的な化学組織は、Y3Al5O12である。蛍光体層55は円環状に形成されている。スポット光で励起された蛍光体層55は、緑色光及び赤色光の成分を含む黄色光を発生する。蛍光板57は、高い熱伝導性を有するアルミニウム基板であり、かつ、回転駆動されるので、励起光による蛍光体層55の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。蛍光体層55に入射した光は、緑色光及び赤色光を含む蛍光光を発生する。蛍光光は、スペックルノイズを含まない。蛍光体層55によって発生された蛍光光の一部は、コンデンサレンズ53,52に向かって出射し、また、蛍光体層55によって発生された蛍光光の他の一部は、反射膜で反射され、コンデンサレンズ53,52に向かって出射する。蛍光板57から出射した緑色光及び赤色光は、ランダム偏光となり、再びコンデンサレンズ53,52で集光され、略平行光に変換された後、ダイクロイックミラー44に入射する。
【0036】
図3は、蛍光板57のスペクトル特性を示す。スペクトル特性は、波長に対する蛍光光の相対光強度を示している。蛍光光は、544nmにピークをもつ、色度(x,y)=(0.490,0.550)の黄色光である。ダイクロイックミラー44の特性により、蛍光光のスペクトルにおいて、緑色レーザー光及び赤色レーザー光の波長帯域において、P偏光成分の96%以上とS偏光成分の32%以下は透過するが、それ以外の成分は反射する。このため、蛍光板57で発生した蛍光光の光束のうち、ダイクロイックミラー44で反射する光束は約80%となる。
【0037】
[1-1-3.レーザー光学系及び蛍光光学系の出射光の合成]
ダイクロイックミラー44は、レーザー光学系によって発生された青、緑、及び赤色のレーザー光の96%を透過し、また、蛍光光学系によって発生された蛍光光の80%を反射する。これにより、ダイクロイックミラー44は、青、緑、及び赤色のレーザー光と蛍光光とを高い効率で同一の光軸上で合成することができる。ダイクロイックミラー44を出射する青、緑、及び赤色のレーザー光と蛍光光との合成光は、レーザー光のスペックルノイズが解消された、広色域の光となる。
【0038】
なお、光源装置58の出射光は、コンデンサレンズ59を透過した後、ミラー60で反射され、コンデンサレンズ61により、光均一化素子であるロッドインテグレータ62(一部を図示)へ集光される。
【0039】
上述の例では、緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色のレーザー光源30の出射光が、赤反射のダイクロイックミラー33及び青反射のダイクロイックミラー34に対してP偏光を有して入射する場合について説明した。しかしながら、これらのレーザー光源の出射光は、最終的にダイクロイックミラー44に対してP偏光を有して入射すればよく、従って、赤反射のダイクロイックミラー33及び青反射のダイクロイックミラー34に対してP偏光とは異なる向きの偏光を有して入射してもよい。この場合、直線偏光を有するレーザー光源の出射光の偏光面は、ダイクロイックミラー44に対してP偏光を有して入射するように、位相差板などを用いて回転される。
【0040】
上述の例では、緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、青色レーザー光源30、及び励起用レーザー光源47がそれぞれ、24個、24個、12個、及び24個の半導体レーザー素子を配置した場合について説明した。しかしながら、これらのレーザー光源は、高輝度化のため、それぞれ、より多数の半導体レーザー素子を用いて構成されてもよい。
【0041】
以上のように、実施の形態1に係る光源装置58は、回転拡散板40によりスペックルノイズを低減した青、緑、及び赤色のレーザー光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、ダイクロイックミラー44により同一の光軸上で合成する。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消しつつ、青、緑、及び赤色のレーザー光を含む広色域の出射光を発生できる光源装置58を構成することができる。
【0042】
[1-2.効果等]
実施の形態1に係る光源装置58は、レーザー光学系と、蛍光光学系と、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を合成する光合成器とを備える。レーザー光学系は、青色光、緑色光、及び赤色光をそれぞれ発生する複数のレーザー光源22,26,30と、各レーザー光源22,26,30の各出射光を合成するダイクロイックミラー33,34と、各レーザー光源22,26,30の各出射光のスペックルノイズ及び輝度むらを低減する拡散板40とを備える。蛍光光学系は、レーザー光源47と、レーザー光源47の出射光で励起されて、緑色光及び赤色光を含む蛍光を発生する蛍光板57を備える。光合成器はダイクロイックミラー44を備える。これにより、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消しつつ青、緑、及び赤色のレーザー光を含む広色域の出射光を発生できる光源装置58を構成することができる。
【0043】
実施の形態1に係る光源装置58によれば、各レーザー光源22,26,30の出射光は直線偏光され、レーザー光学系の出射光は、ダイクロイックミラー44の面に対してP偏光を有して入射してもよい。これにより、ダイクロイックミラー44は、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を高効率で合成することができる。
【0044】
実施の形態1に係る光源装置58によれば、ダイクロイックミラー44は、以下の分光特性を有してもよい。各レーザー光源22,26,30の出射光の波長帯域において、ダイクロイックミラー44の面に対してP偏光を有して入射する光を透過する。また、各レーザー光源22,26,30の青色光以外の出射光の波長帯域において、ダイクロイックミラー44の面に対してS偏光を有して入射する光を反射する。また、蛍光板57によって発生される蛍光の波長帯域において、ダイクロイックミラー44の面に対してS偏光を有して入射する光を反射する。これにより、ダイクロイックミラー44は、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を高効率で合成することができる。
【0045】
実施の形態1に係る光源装置58によれば、拡散板40は、表面において円周状に形成された微細な凹凸形状の領域を有するガラスからなる円形拡散板38(円形基板)と、円形拡散板38を回転駆動するモーター39とを備えてもよい。これにより、拡散面を回転することにより、レーザー光に起因するスクリーン上でのランダムな干渉パターンが時間的かつ空間的に高速に変動して、スペックルノイズを解消することができる。
【0046】
実施の形態1に係る光源装置58によれば、蛍光板57は、Ce付活YAG系黄色蛍光体を形成した蛍光体層55を備えたアルミニウム基板54(円形基板)と、当該アルミニウム基板54を回転駆動するモーター56とを備えてもよい。これにより、蛍光板57を回転駆動することにより、励起光による蛍光体層55の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。
【0047】
実施の形態1に係る光源装置58によれば、各レーザー光源22,26,30は半導体レーザー素子を備えてもよい。これにより、広色域の出射光を発生することができる。
【0048】
実施の形態1に係る光源装置58によれば、レーザー光源47は青色半導体レーザー素子を備えてもよい。これにより、高い発光効率で動作させ、また、小さな光出力で所望の色度を有する白色光を発生することができる。
【0049】
[2.実施の形態2]
[2-1.構成]
図4は実施の形態2に係る光源装置101の構成を示す概略平面図である。実施の形態2に係る光源装置101は、実施の形態1に係る光源装置85の緑色レーザー光源を除去し、蛍光板によって発生された蛍光光を含む出射光において、赤色の色域のみを拡大する。
【0050】
図4において、光源装置101は、第1のレーザー光源である赤色レーザー光源72と、青色レーザー光源76と、第2のレーザー光源である励起用レーザー光源90とを備える。赤色レーザー光源72は、複数の赤色半導体レーザー素子を配置した赤色半導体レーザー基板70と、コリメートレンズアレイ71とを備える。青色レーザー光源76は、複数の青色半導体レーザー素子を配置した青色半導体レーザー基板74と、コリメートレンズアレイ75とを備える。励起用レーザー光源90は、複数の青色半導体レーザー素子を配置した青色半導体レーザー基板88と、コリメートレンズアレイ89とを備える。
【0051】
また、光源装置101は、放熱板73,77,91と、ミラー78,82,85と、第1のダイクロイックミラーである赤反射のダイクロイックミラー79と、コンデンサレンズ80,84,86,92,93,95,96と、拡散板81,83を備える。さらに、光源装置101は、第2のダイクロイックミラーであるダイクロイックミラー87と、反射膜と蛍光体層98を形成したアルミニウム基板97と、モーター99とを備える蛍光板100とを備える。光源装置101の外部において、コンデンサレンズ102,104と、ミラー103と、ロッドインテグレータを示す。
【0052】
図4において、レーザー光源から出射する光と、ダイクロイックミラーへ入射及び出射する光とについて、それらの偏光方向を示す。
【0053】
本実施の形態では、赤色レーザー光源72及び青色レーザー光源76からダイクロイックミラー87までの光学系を「レーザー光学系」といい、励起用レーザー光源90から蛍光板100までの光学系を「蛍光光学系」という。
【0054】
[2-1-1.レーザー光学系]
実施の形態2に係る光源装置101は、実施の形態1に係る光源装置85の緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色レーザー光源30に代えて、赤色レーザー光源72及び青色レーザー光源76のみを備える。また、実施の形態2に係る光源装置101は、実施の形態1に係る光源装置85の第1のダイクロイックミラーである赤反射のダイクロイックミラー33及び青反射のダイクロイックミラー34に代えて、第1のダイクロイックミラーとして赤反射のダイクロイックミラー79のみを備える。また、実施の形態2に係る光源装置101は、光源装置85の拡散板36及び回転拡散板40に代えて、固定した拡散板83のみを備える。これらの点で、実施の形態2に係る光源装置101は、実施の形態1に係る光源装置85とは異なる。
【0055】
赤色レーザー光源72は、複数の赤色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した赤色半導体レーザー基板70と、各赤色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ71とを備える。例えば、例えば、赤色レーザー光源72は、12個(=6×2)の赤色半導体レーザー素子と、12個のコリメートレンズとを備える。赤色半導体レーザー基板70の各赤色半導体レーザー素子は、640±8nmの波長幅を有する直線偏光された赤色のレーザー光を発生光して出射する。赤色半導体レーザー基板70の各赤色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ71の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。放熱板73は赤色半導体レーザー基板70を冷却する。
【0056】
青色レーザー光源76は、複数の青色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した青色半導体レーザー基板74と、各青色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ75とを備える。例えば、青色レーザー光源76は、12個(=6×2)の青色半導体レーザー素子と、12個のコリメートレンズとを備える。青色半導体レーザー基板74の各青色半導体レーザー素子は、455±8nmの波長幅を有する直線偏光された青色のレーザー光を発生して出射する。青色半導体レーザー基板74の各青色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ75の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。放熱板77は青色半導体レーザー基板74を冷却する。
【0057】
青色レーザー光源76から出射されたレーザー光と、赤色レーザー光源72から出射されてミラー78で反射されたレーザー光とは、赤反射のダイクロイックミラー79に入射する。赤色レーザー光源72及び青色レーザー光源76は、出射された各レーザー光が、赤反射のダイクロイックミラー79に対して、P偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。赤反射のダイクロイックミラー79は、入射した青色レーザー光の95%以上を透過し、入射した赤色レーザー光の97%以上を反射する特性を有する。赤反射のダイクロイックミラー79の透過率が50%となる半値波長は583nmとしている。
【0058】
赤反射のダイクロイックミラー79で合成された各レーザー光はコンデンサレンズ80に入射する。コンデンサレンズ80の形状は、各レーザー光が拡散板83の近傍で集光するように決められている。コンデンサレンズ80を透過したレーザー光は、拡散板81で拡散された後、ミラー82で反射され、拡散板83に入射する。
【0059】
拡散板81,83は、ガラス基板上に形成された微細なマイクロレンズをアレイ状に形成して拡散面を構成したものであり、入射光を拡散する。拡散板81の拡散角度は略3度であり、拡散板83の拡散角度は略10度であり、拡散板81,83は入射光の偏光特性を保持する。拡散板81は、その出射光が拡散板83の近傍に入射するときのスポット光の径が所望のスポット径となるように、入射光を拡散させる。実施の形態2に係る光源装置101では、実施の形態1の構成に対して、赤色レーザー光源72及び青色レーザー光源76の光出力が低いので、回転拡散板を使用することなく、固定の拡散板83のみを用いても、スペックルノイズを十分に低減することができる。
【0060】
拡散板81,83により、多数の拡散角度で多重化された光は、レーザー光の可干渉性があるレベル程度に解消された光となって、コンデンサレンズ84で集光され、ミラー85で反射した後、コンデンサレンズ86で略平行光に変換される。コンデンサレンズ84,86の形状は、拡散板83の近傍のスポット光が略平行光となるように決められている。
【0061】
コンデンサレンズ86を出射した各レーザー光はダイクロイックミラー87に入射する。ダイクロイックミラー87は、青色及び赤色のレーザー光がダイクロイックミラー87の面に対してP偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。
【0062】
図5は、ダイクロイックミラー87の分光特性を示す。分光特性は波長に対する透過率を示し、ガラス基板上に、TiO
2などの高屈折率材料と、SiO
2などの低屈折率材料とを交互に形成して60層の光学薄膜を構成した事例を示す。ダイクロイックミラー87は、波長455±8nmの青色レーザー光のP偏光及びS偏光と、波長640±8nmの赤色レーザー光のP偏光を95%以上で透過する分光特性を有する。また、ダイクロイックミラー87は、波長640±8nmの赤色レーザー光のS偏光を97%以上の高い反射率で反射する特性を有する。さらに、ダイクロイックミラー87は、500~615nmと680~780nmの青、緑、及び赤色の成分を含む色光のP偏光及びS偏光を、それぞれ97%以上の高い反射率で反射する特性を有する。したがって、青色及び赤色のレーザー光は、高い効率でダイクロイックミラー87を透過する。
【0063】
[2-1-2.蛍光光学系]
一方、励起用レーザー光源90は、複数の青色半導体レーザー素子を一定の間隔で2次元状に配置した青色半導体レーザー基板88と、各青色半導体レーザー素子に対応する複数のコリメートレンズを一定の間隔で2次元状に配置したコリメートレンズアレイ89とを備える。例えば、励起用レーザー光源47は、36個(=6×6)の青色半導体レーザー素子と、36個のコリメートレンズとを備える。青色半導体レーザー基板88の各青色半導体レーザー素子は、455±8nmの波長幅を有する直線偏光された青色のレーザー光を発生して出射する。青色半導体レーザー基板88の各青色半導体レーザー素子の出射光は、コリメートレンズアレイ89の対応するコリメートレンズによりそれぞれ集光され、平行な光束に変換される。
【0064】
励起用レーザー光源90は、出射されたレーザー光がダイクロイックミラー87の入射面に対して、P偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。
【0065】
励起用レーザー光源90の出射光の平行な光束は、コンデンサレンズ92,93により小径化され、励起系の拡散板94に入射する。励起系の拡散板94は、ガラス基板の表面を微細な凹凸形状に加工することにより形成される。励起系の拡散板94の拡散角度は略5度と小さい。従って、励起系の拡散板94は入射光の偏光特性を保持する。励起系の拡散板94の出射光はダイクロイックミラー87に入射する。
【0066】
励起系の拡散板94からダイクロイックミラー87に入射し、ダイクロイックミラー87を透過したP偏光の光は、コンデンサレンズ95及び96により集光され、蛍光板100に入射する。励起系の拡散板94は、その出射光が蛍光板100に入射するときのスポット光の径が所望のスポット径となるように、入射光を拡散させる。例えば、励起系の拡散板94は、その出射光が蛍光板100に入射するとき、スポット光が2~3mmのスポット径を有するように構成される。
【0067】
蛍光板100は、反射膜と蛍光体層98を形成した円形のアルミニウム基板97と、アルミニウム基板97の中央部に設けられたモーター99とを備え、回転駆動される。蛍光板100の反射膜は、可視光を反射する金属膜もしくは誘電体膜であり、アルミニウム基板97の上に形成される。さらに反射膜上には、蛍光体層98が形成される。蛍光体層98には、青色光により励起されて緑色光及び赤色光の成分を含んだ黄色光を発生するCe付活YAG系黄色蛍光体を形成している。この蛍光体の結晶母体の代表的な化学組織は、Y3Al5O12である。蛍光体層98は円環状に形成されている。スポット光で励起された蛍光体層98は、緑色光及び赤色光の成分の光含む黄色光を発生する。蛍光板100は、高い熱伝導性を有するアルミニウム基板であり、かつ、回転駆動されるので、励起光による蛍光体層98の温度上昇を抑制し、蛍光変換効率を安定に維持することができる。蛍光体層98に入射した光は、緑色光及び赤色光を含む蛍光光を発生する。蛍光光は、スペックルノイズを含まない。蛍光体層98によって発生された蛍光光の一部は、コンデンサレンズ96及び95に向かって出射し、また、蛍光体層98によって発生された蛍光光の他の一部は、反射膜で反射され、コンデンサレンズ96,95に向かって出射する蛍光板100から出射した緑色光及び赤色光は、ランダム偏光となり、再びコンデンサレンズ96,95で集光され、略平行光に変換された後、ダイクロイックミラー87に入射する。
【0068】
ダイクロイックミラー87の特性により、蛍光光のスペクトルにおいて、青色レーザー光及び赤色レーザー光の波長帯域において、P偏光成分の96%以上とS偏光成分の2%以下は透過するが、それ以外の成分は反射する。蛍光板100で発生した蛍光光の光束のうち、ダイクロイックミラー87で反射する光束は約98%となる。
【0069】
[2-1-3.レーザー光学系及び蛍光光学系の出射光の合成]
ダイクロイックミラー87は、レーザー光学系によって発生された青色及び赤色のレーザー光の96%を透過し、また、蛍光光学系によって発生された蛍光光の98%を反射する。これにより、ダイクロイックミラー87は、青色及び赤色のレーザー光と蛍光光とを、高い効率で、同一の光軸上で合成することができる。ダイクロイックミラー87を出射する青色及び赤色のレーザー光と蛍光光との合成光は、レーザー光のスペックルノイズが解消された、赤色が広色域の光となる。
【0070】
光源装置101の出射光は、コンデンサレンズ102を透過した後、ミラー103で反射され、コンデンサレンズ104により、光均一化素子であるロッドインテグレータ105(一部を図示)へ集光される。
【0071】
上述の例では、赤色レーザー光源72及び青色のレーザー光源76の出射光が、赤反射のダイクロイックミラー79に対してP偏光を有して入射する場合について説明した。しかしながら、これらのレーザー光源の出射光は、最終的にダイクロイックミラー87に対してP偏光を有して入射すればよく、従って、赤反射のダイクロイックミラー79に対してP偏光とは異なる向きの偏光を有して入射してもよい。この場合、直線偏光を有するレーザー光源の出射光の偏光面は、ダイクロイックミラー87に対してP偏光を有して入射するように、位相差板などを用いて回転される。
【0072】
上述の例では、赤色レーザー光源72、青色レーザー光源76、励起用レーザー光源90がそれぞれ、12個、12個、及び36個の半導体レーザー素子を配置した場合について説明した。しかしながら、これらのレーザー光源は、高輝度化のため、それぞれ、より多数の半導体レーザー素子を用いて構成されてもよい。
【0073】
以上のように、実施の形態2に係る光源装置101は、拡散板83によりスペックルノイズを低減した青色及び赤色のレーザー光源光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、ダイクロイックミラー87により同一の光軸上で合成する。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消しつつ、赤色のレーザー光を含むことにより赤色について広色域の出射光を発生できる光源装置101を構成することができる。
【0074】
[2-2.効果等]
実施の形態2に係る光源装置101は、レーザー光学系と、蛍光光学系と、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を合成する光合成器とを備える。レーザー光学系は、青色光及び赤色光をそれぞれ発生する複数のレーザー光源72,76と、各レーザー光源72,76の各出射光を合成するダイクロイックミラー33,34と、各レーザー光源72,76の各出射光のスペックルノイズ及び輝度むらを低減する拡散板83とを備える。蛍光光学系は、レーザー光源90と、レーザー光源90の出射光で励起されて、緑色光及び赤色光を含む蛍光を発生する蛍光板100を備える。光合成器はダイクロイックミラー87を備える。これにより、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消しつつ、青、緑、及び赤色のレーザー光を含む広色域の出射光を発生できる光源装置101を構成することができる。
【0075】
[3.実施の形態3]
[3-1.構成]
図6は実施の形態3に係る光源装置155の構成を示す概略平面図である。
【0076】
図6において、光源装置155は、第1のレーザー光源である緑色レーザー光源122と、赤色レーザー光源126と、青色レーザー光源130と、第2のレーザー光源である励起用レーザー光源141とを備える。緑色レーザー光源122は、複数の緑色半導体レーザー素子を配置した緑色半導体レーザー基板120と、コリメートレンズアレイ121とを備える。赤色レーザー光源126は、複数の赤色半導体レーザー素子を配置した赤色半導体レーザー基板124と、コリメートレンズアレイ125とを備える。青色レーザー光源130は、複数の青色半導体レーザー素子を配置した青色半導体レーザー基板128と、コリメートレンズアレイ129とを備える。励起用レーザー光源141は、複数の青色半導体レーザー素子を配置した青色半導体レーザー基板139と、コリメートレンズアレイ140とを備える。
【0077】
また、光源装置155は、放熱板123,127,131,142と、透過のダイクロイックミラー132と、赤透過のダイクロイックミラー133と、コンデンサレンズ134,143,144,147,148,153と、円形拡散板135及びモーター136を備える回転拡散板137と、合成プリズム138,154とを備える。さらに、光源装置155は、青透過のダイクロイックミラー146と、反射膜と蛍光体層150を形成したアルミニウム基板149及びモーター151を備える蛍光板152と、ロッドインテグレータ156とを備える。
【0078】
なお、
図6は、レーザー光源122,126,130から出射する光を示す。
【0079】
本実施の形態では、緑色レーザー光源122、赤色レーザー光源126、及び青色レーザー光源130から回転拡散板137までの光学系を「レーザー光学系」といい、励起用レーザー光源141から蛍光板152で反射されてコンデンサレンズ153までの光学系を「蛍光光学系」という。
【0080】
[3-1-1.レーザー光学系]
緑色レーザー光源122、赤色レーザー光源126、及び青色レーザー光源130は、それぞれ、実施の形態1で示した緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色レーザー光源30と同様に構成される。
【0081】
緑色レーザー光源22及び青色レーザー光源30から出射されたレーザー光は、青透過のダイクロイックミラー132で合成された後、赤透過のダイクロイックミラー133で赤色レーザー光源から出射されたレーザー光と合成される。緑色レーザー光源122、赤色レーザー光源126、及び青色レーザー光源130は、出射された各レーザー光が、青透過のダイクロイックミラー132及び赤透過のダイクロイックミラー133に対して、P偏光を有して45度の入射角で入射するように配置される。青透過のダイクロイックミラー132は、入射した青色レーザー光の96%以上を透過し、入射した緑色レーザー光の98%以上を反射する特性を有する。青透過のダイクロイックミラー132の半値波長は495nmとしている。赤透過のダイクロイックミラー133は、入射した赤色レーザー光の96%以上を透過し、入射した緑色レーザー光及び青色レーザー光の98%以上を反射する特性を有する。赤透過のダイクロイックミラー133の半値波長は583nmとしている。
【0082】
青、緑、及び赤色の合成されたレーザー光は、コンデンサレンズ134で集光され、回転拡散板137に入射する。
【0083】
回転拡散板137は、ガラス基板上に円周状に拡散層を形成した円形拡散板135と、円形拡散板135の中央部に設けられたモーター136とを備え、回転駆動される。拡散層は、化学処理によりガラス基板の表面を微細な凹凸形状に加工することにより形成される。回転拡散板137の拡散角度は略15度である。従って、回転拡散板137は入射光の偏光特性を維持する。回転拡散板137により、多数の拡散角度で時間的に多重化された光は、レーザー光の可干渉性が大幅に解消された光となって、プリズム138に入射する。
【0084】
プリズム138は、直角三角形の形状の底面を有し、45度の反射面をもつ。プリズム138で反射された光は、ロッドインテグレータ156に入射する。プリズム138の光軸とロッドインテグレータ156の光軸とは、偏軸して配置さている。すなわち、プリズム138及びロッドインテグレータ156は、プリズム138で反射された光がロッドインテグレータ156の中心とは異なる位置を通るように配置される。コンデンサレンズ134の形状は、プリズム138の出射面の近傍で集光するように決められている。
【0085】
[3-1-2.蛍光光学系]
一方、励起用レーザー光源141は、実施の形態1で示した励起用レーザー光源47と同様に構成される。
【0086】
励起用レーザー光源141の出射光の平行な光束は、コンデンサレンズ143,144により小径化され、励起系の拡散板145に入射する。励起系の拡散板145は、略4度の拡散角度で入射光を拡散する。励起系の拡散板145の出射光は、青透過のダイクロイックミラー146を透過した後、コンデンサレンズ147及び148により集光され、蛍光板152に入射する。例えば、励起系の拡散板145は、その出射光が蛍光板152に入射するとき、スポット光が1.5mm~2.5mmのスポット径を有するように構成される。
【0087】
蛍光板152は、反射膜と蛍光体層150を形成した円形のアルミニウム基板149と、アルミニウム基板149の中央部に設けられたモーター151とを備え、回転駆動される。蛍光体層150には、青色光により励起されて緑色光及び赤色光の成分を含んだ黄色光を発生するCe付活YAG系黄色蛍光体を形成している。励起された蛍光体層150は緑、赤成分の光含む黄色光を発生する。蛍光光は、スペックルノイズを含まない。蛍光板152から出射した緑色光及び赤色光は、ランダム偏光となり、再びコンデンサレンズ147及び148で集光され、略平行光に変換された後、ダイクロイックミラー146で反射される。ダイクロイックミラー146で反射された光は、コンデンサレンズ153で集光され、プリズム154に入射する。
【0088】
プリズム154は、直角三角形の形状の底面を有し、45度の反射面をもつ。プリズム154で反射された光は、ロッドインテグレータ156に入射する。プリズム154の光軸とロッドインテグレータ156の光軸とは、偏軸して配置されている。すなわち、プリズム154及びロッドインテグレータ156は、プリズム154で反射された光がロッドインテグレータ156の中心とは異なる位置を通るように配置される。コンデンサレンズ153の形状は、プリズム154の出射面の近傍で集光するように決められている。
【0089】
[3-1-3.レーザー光学系及び蛍光光学系の出射光の合成]
レーザー光学系によって発生された青、緑、及び赤色のレーザー光は、プリズム138を介して光均一化素子であるロッドインテグレータ156に入射する。また、蛍光光学系によって発生された蛍光光は、プリズム154を介してロッドインテグレータ156に入射する。これにより、プリズム138及び154は、青、緑、及び赤色のレーザー光と蛍光光とを、高い効率で、偏軸して合成する。ロッドインテグレータ156から出射する青、緑、及び赤色のレーザー光と蛍光光との合成光は、レーザー光のスペックルノイズが解消された、広色域の光となる。
【0090】
上述の例では、緑色レーザー光源122、赤色レーザー光源126、及び青色のレーザー光源130の出射光が、青透過のダイクロイックミラー132及び赤透過のダイクロイックミラー133に対してP偏光を有して入射する場合について説明した。しかしながら、これらのレーザー光源1の出射光は、直線偏光に代えて、ランダム偏光を有してもよい。
【0091】
上述の例では、緑色レーザー光源122、赤色レーザー光源126、青色レーザー光源130、及び励起用レーザー光源141がそれぞれ、24個、24個、12個、及び24個の半導体レーザー素子を配置した場合について説明した。しかしながら、これらのレーザー光源は高輝度化のため、それぞれ、より多数の半導体レーザー素子を用いて構成されてもよい。
【0092】
以上のように、実施の形態3に係る光源装置155は、回転拡散板137によりスペックルノイズを低減した青、緑、及び赤色のレーザー光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、プリズム138,154により偏軸して合成する。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消しつつ、青、緑、及び赤色のレーザー光を含む広色域の出射光を発生できる光源装置155を構成することができる。
【0093】
[3-2.効果等]
実施の形態3に係る光源装置155は、レーザー光学系と、蛍光光学系と、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を合成する光合成器とを備える。レーザー光学系は、青色光、緑色光、及び赤色光をそれぞれ発生する複数のレーザー光源122,126,130と、各レーザー光源122,126,130の各出射光を合成するダイクロイックミラー132,133と、各レーザー光源122,126,130の各出射光のスペックルノイズ及び輝度むらを低減する拡散板137とを備える。蛍光光学系は、レーザー光源141と、レーザー光源141の出射光で励起されて、緑色光及び赤色光を含む蛍光を反射する蛍光板152を備える。光合成器は、レーザー光学系及び蛍光光学系の各出射光を偏軸して合成するプリズム138,154を備える。これにより、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズ及び微小な輝度むらを解消しつつ、青、緑、及び赤色のレーザー光を含む広色域の出射光を発生できる光源装置155を構成することができる。
【0094】
[4.実施の形態4]
[4-1.構成]
図7は、実施の形態4に係る投写型表示装置である。実施の形態4に係る投写型表示装置では、画像形成手段として、3つのデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いている。
図7の光源装置58は、実施の形態1に係る光源装置58と同様に構成される。
【0095】
図7において、光源装置58から出射されるレーザー光と蛍光光の合成光は、コンデンサレンズ59を透過した後、ミラー60で反射され、コンデンサレンズ61によりロッドインテグレータ62へ集光される。ロッドインテグレータ62への入射光は、ロッドインテグレータ62の内部で複数回反射されることにより、その光強度分布が均一化されて出射する。ロッドインテグレータ62からの出射光はリレーレンズ202により集光され、反射ミラー203で反射された後、フィールドレンズ204を透過し、全反射プリズム205に入射する。
【0096】
全反射プリズム205は2つのプリズムから構成され、互いのプリズムの近接面には薄い空気層206が形成される。空気層206は、臨界角以上の角度で入射する光を全反射する。フィールドレンズ204から全反射プリズム205への入射光は、全反射プリズム205の全反射面で反射されて、カラープリズム207に入射する。
【0097】
カラープリズム207は3つのプリズムからなり、それぞれのプリズムの近接面には青反射のダイクロイックミラー208と赤反射のダイクロイックミラー209が形成されている。カラープリズム207への入射光は、カラープリズム207の青反射のダイクロイックミラー208と赤反射のダイクロイックミラー209により、青色光、赤色光、及び緑色光に分離され、それぞれDMD210,211,212に入射する。
【0098】
DMD210,211,212は、複数のマイクロミラーからなるアレイを備える。DMD210,211,212は、映像信号に従って各マイクロミラーを偏向させ、入射光を、投写レンズ213に進むか、又は、投写レンズ213の有効外へ進むように反射させる。DMD210,211,212により反射された光は、再度カラープリズム207を透過する。カラープリズム207を透過する過程で、分離された青色光、赤色光、及び緑色光は合成され、全反射プリズム205に入射する。
【0099】
カラープリズム207から全反射プリズム205に入射した光は、空気層206に臨海角以下で入射するので、空気層206を透過して、投写レンズ213に入射する。投写レンズ213は、DMD210,211,212により形成された画像光をスクリーン(図示せず)上に拡大して投写する。
【0100】
緑色レーザー光源122、赤色レーザー光源126、青色のレーザー光源130、及び励起用レーザー光源141は、各レーザー光の光束と蛍光光の光束が略同等になるように構成されている。色域は色規格DCI(Digital Cinema Initiatives)を包含する。これらのレーザー光源を独立して調光することで、光源装置58の出射光の色域が色規格DCIからREC2020を包括するよう調整することができる。
【0101】
光源装置58は、回転拡散板40によりスペックルノイズを低減した青、緑、及び赤色のレーザー光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、ダイクロイックミラー44により同一の光軸上で合成する。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズが解消された広色域の画像光を生成できる投写型表示装置を実現できる。
【0102】
上述の例では、青色レーザー光源30の各青色半導体レーザー素子が、465±8nmの波長幅を有する青色レーザー光を発生する場合について説明したが、他の波長幅の光源を用いてもよい。例えば、465±8nmの波長幅を有する青色レーザー光を発生する青色レーザー光源と、と445±8nmの波長幅を有する青色レーザー光を発生する青色レーザー光源とを用いてもよい。この場合、445nmと465nmの2波長の青色レーザー光を発生し、525nmの緑色レーザー光と蛍光光の緑成分光とを発生し、640nm波長の赤色レーザー光源と蛍光光の赤色成分光とを発生する。青、緑、及び赤色がそれぞれ2つの発光スペクトルをもつので、波長分割方式の立体表示装置の構成が可能となる。
【0103】
実施の形態4に係る光源装置58は、実施の形態1に係る光源装置58に代えて、実施の形態2又は実施の形態3に係る光源装置101,155を用いてもよい。実施の形態2に係る光源装置101を用いた場合において、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、赤色を色規格DCIの色域に広域化した投写型表示装置を得ることができる。実施の形態3に係る光源装置155を用いた場合には、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、広色域化した高効率な投写型表示装置を得ることができる。
【0104】
実施の形態4に係る光源装置58では、画像形成手段にDMD210,211,212を用いているので、液晶を用いた画像形成手段と比べて、耐光性及び耐熱性が高い投写型表示装置を構成することができる。さらに、実施の形態4に係る光源装置58では、3つのDMD210,211,212を用いているので、色再現が良好で、明るく高精細な投写画像を得ることができる。
【0105】
以上のように、実施の形態4に係る投写型表示装置は、スペックルノイズを低減した青、緑、及び赤色のレーザー光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、同一の光軸上で合成するダイクロイックミラーまたは偏軸して合成するプリズムを備えた光源装置58を備える。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、広色域の出射光を発生できる投写型表示装置を構成することができる。
【0106】
[4-2.効果等]
実施の形態4に係る投写型表示装置は、光源装置58と、光源装置58の出射光を集光して被照明領域に照射する照明光学系と、映像信号に従って画像を形成する画像形成素子と、画像形成素子で形成された画像を拡大して投写する投写レンズ213を備える。これにより、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、広色域の出射光を発生できる投写型表示装置を構成することができる。
【0107】
実施の形態4に係る投写型表示装置によれば、各レーザー光源の青色光以外の出射光の光束は、別のレーザー光源の出射光の光束と略同等であってもよい。
【0108】
また、実施の形態4に係る投写型表示装置によれば、各レーザー光源の出射光の光出力と、別のレーザー光源の出射光の光出力とは互いに独立に調整可能であってもよい。各出射光の光出力を調整することにより光源装置58の出射光の色域が調整される。これにより、これらのレーザー光源を独立して調光することで、例えば、光源装置58の出射光の色域が色規格DCIからREC2020を包括するよう調整することができる。
【0109】
実施の形態4に係る投写型表示装置によれば、画像形成素子がミラー偏向型のデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)であってもよい。これにより、液晶を用いた画像形成手段と比べて、耐光性及び耐熱性が高い投写型表示装置を構成することができる。
【0110】
[5.実施の形態5]
[5-1.構成]
図8は、実施の形態5に係る投写型表示装置の構成を示す概略平面図である。実施の形態5に係る投写型表示装置では、画像形成手段として、TN(Twisted Nematic)モードもしくはVA(Vertical Alignment)モードであって、画素領域に薄膜トランジスタを形成したアクティブマトリクス方式の透過型の液晶パネルを用いている。
【0111】
図8の光源装置217の基本的な構成は、実施の形態1に係る光源装置58のものと実質的に同様である。実施の形態5に係る光源装置217は、緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、及び青色レーザー光源30の出射光を合成するダイクロイックミラーが、赤反射のダイクロイックミラー218と青反射のダイクロイックミラー219を同じ位置において互いに交差して配置するのではなく、順次に色合成するように異なる位置に配置している点で、実施の形態1に係る光源装置58とは異なる。
【0112】
図8において、投写型表示装置は、レンズアレイ板220,221と、偏光変換素子222と、重畳用レンズ223と、青透過のダイクロイックミラー224と、緑反射のダイクロイックミラー225と、反射ミラー226,227,228と、リレーレンズ229,230を備える。また、投写型表示装置は、フィールドレンズ231,232,233と、入射側偏光板234,235,236と、液晶パネル237,238,239と、出射側偏光板240,241,242とを備える。さらに、投写型表示装置は、赤反射のダイクロイックミラーと青反射のダイクロイックミラーを備える色合成プリズム243と、投写レンズ244とを備える。
【0113】
以上のように構成された投写型表示装置において、光源装置217から出射されるレーザー光と蛍光光の合成光は、複数のレンズ素子を備えるレンズアレイ板220に入射する。レンズアレイ板220に入射した光束は多数の光束に分割される。分割された多数の光束は、複数のレンズを備えるレンズアレイ板221に収束される。レンズアレイ板220の各レンズ素子は、液晶パネル237,238,239と相似形の開口形状を有する。レンズアレイ板221の各レンズ素子の焦点距離は、レンズアレイ板220と液晶パネル237,238,239とが略共役関係となるように決められている。レンズアレイ板221からの分割された光は、偏光変換素子222に入射する。
【0114】
偏光変換素子222は、偏光分離プリズムと1/2波長板を備える。偏光変換素子222は、入射するランダム偏光の光をS偏光の光に変換する。偏光変換素子222の出射光は重畳用レンズ223に入射する。
【0115】
重畳用レンズ223は、レンズアレイ板221の各レンズ素子の出射光を液晶パネル237,238,239上に重畳して照射するためのレンズである。レンズアレイ板220,221と、重畳用レンズ223とを、「照明光学系」という。重畳用レンズ223の出射光は、色分離手段である青透過のダイクロイックミラー224及び緑反射のダイクロイックミラー225により、青色光、緑色光、及び赤色光に分離される。緑色光は、フィールドレンズ231及び入射側偏光板234を透過して液晶パネル237に入射する。青色光は、反射ミラー226で反射された後、フィールドレンズ232及び入射側偏光板235を透過して液晶パネル238に入射する。赤色光は、リレーレンズ229,230及び反射ミラー227,228で透過、屈折、及び反射されて、フィールドレンズ233及び入射側偏光板236を透過して液晶パネル239に入射する。
【0116】
入射側偏光板234及び出射側偏光板240は、それらの透過軸を直交するように、液晶パネル237の両側に配置される。同様に、入射側偏光板235及び出射側偏光板241は、それらの透過軸を直交するように、液晶パネル238の両側に配置される。同様に、入射側偏光板236及び出射側偏光板242は、それらの透過軸を直交するように、液晶パネル239の両側に配置される。
【0117】
3枚の液晶パネル237,238,239は、映像信号に応じた画素への印加電圧の制御により、入射光の偏光状態を変化させて及び光を変調し、緑、青、及び赤色の画像光を形成する。
【0118】
出射側偏光板240から色合成プリズム243に入射した緑色の画像光は、色合成プリズム243を透過して投写レンズ244に入射する。出射側偏光板241から色合成プリズム243に入射した青色の画像光は、色合成プリズム243の青反射のダイクロイックミラーによって反射され、投写レンズ244に入射する。出射側偏光板242から色合成プリズム243に入射した赤色の画像光は、色合成プリズム243の赤反射のダイクロイックミラーによって反射され、投写レンズ244に入射する。このように、色合成プリズム243によって青、及び赤色の画像光が合成され、投写レンズ244に入射する。投写レンズ244に入射した光は、スクリーン(図示せず)上に拡大して投写される。
【0119】
ここで、光源装置58において、緑色レーザー光源22、赤色レーザー光源26、青色のレーザー光源30、及び励起用レーザー光源47は、各レーザー光の光束と蛍光光の光束が略同等になるように構成されている。色域は色規格DCIを包含する。これらのレーザー光源を独立して調光することで、光源装置217の出射光の色域が色規格DCIからREC2020を包括するよう調整することができる。
【0120】
光源装置217は、回転拡散板40により、スペックルノイズを低減した青、緑、及び赤色のレーザー光と、スペックルノイズがない蛍光光とを、ダイクロイックミラー44により同一の光軸上で合成する。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズが解消された広色域の画像光を生成できる投写型表示装置を実現できる。
【0121】
上述の例では、青色レーザー光源30の各青色半導体レーザー素子が、465±8nmの波長幅を有する青色レーザー光を発生する場合について説明したが、他の波長幅の光源を用いてもよい。例えば、465±8nmの波長幅を有する青色レーザー光を発生する青色レーザー光源と、445±8nmの波長幅を有する青色レーザー光を発生する別の青色レーザー光源とを用いてもよい。この場合、445nmと465nmの2波長の青色レーザー光を発生し、525nmの緑色レーザー光と蛍光光の緑成分光とを発生し、640nm波長の赤色レーザー光源と蛍光光の赤色成分光とを発生する。青、緑、及び赤色がそれぞれ2つの発光スペクトルをもつので、波長分割方式の立体表示装置の構成が可能となる。
【0122】
実施の形態5に係る光源装置において、実施の形態1に係る光源装置に代えて、実施の形態2又は実施の形態3の光源装置を用いてもよい。実施の形態2に係る光源装置を用いる場合において、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、赤色を色規格DCIの色域に広域化した投写型表示装置を得ることができる。実施の形態3に係る光源装置を用いる場合において、投写型表示装置は、レーザー光と蛍光光を合成するプリズムからの光を平行化してレンズアレイ板220に入射させるために、コンデンサレンズをさらに備える。実施の形態3に係る光源装置により、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、広色域化した高効率な投写型表示装置を得ることができる。
【0123】
実施の形態5に係る光源装置では、画像形成手段として、時分割方式ではなく偏光を利用する3枚の液晶パネルを用いているので、カラーブレイキングがなく、色再現が良好で、明るく高精細な投写画像を得ることができる。また、実施の形態5に係る光源装置では、3つのDMD素子を用いた場合よりも、全反射プリズムが不要であり、色合成用のプリズムが45度入射の小型プリズムになるので、投写型表示装置を小型化できる。
【0124】
以上のように、実施の形態5に係る投写型表示装置は、スペックルノイズを低減した青、緑、及び赤色のレーザー光源と、スペックルノイズがない蛍光光とを、同一の光軸上で合成するダイクロイックミラーまたは偏軸して合成するプリズムを備えた光源装置を備える。このため、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、広色域の出射光を発生できる投写型表示装置を構成することができる。
【0125】
上述の例では、画像形成手段として、透過型の液晶パネルを用いたが、反射型の液晶パネルを用いて構成してもよい。反射型の液晶パネルを用いることにより、従来技術に比較して小型で高精細な投写型表示装置を構成することができる。
【0126】
[5-2.効果等]
実施の形態5に係る投写型表示装置は、光源装置217と、光源装置217の出射光を集光して被照明領域に照射する照明光学系と、映像信号に従って画像を形成する画像形成素子と、画像形成素子で形成された画像を拡大して投写する投写レンズを備える。これにより、従来技術に比較して小型であってかつ、スペックルノイズと輝度むらを解消しつつ、広色域の出射光を発生できる投写型表示装置を構成することができる。
【0127】
実施の形態5に係る投写型表示装置によれば、画像形成素子が液晶パネルであってもよい。これにより、DMD素子を用いた場合よりも、投写型表示装置を小型に構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示の一態様に係る光源装置は、画像形成手段を用いた投写型表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0129】
20,120 緑色半導体レーザー基板
21,25,29,46,71,75,89,121,125,129,140 コリメートレンズアレイ
22,122 緑色レーザー光源
23,27,31,48,73,77,91,123,127,131,142 放熱板
24,70,124 赤色半導体レーザー基板
26,72,126 赤色レーザー光源
28,45,74,88,128,139 青色半導体レーザー基板
30,76,130 青色レーザー光源
32,37,42,60,78,82,85,103 ミラー
33,79,209 赤反射のダイクロイックミラー
34,208 青反射のダイクロイックミラー
35,41,43,49,50,52,53,59,61,80,84,86,92,93,95,96,102,104,134,143,144,147,148,153 コンデンサレンズ
36,51,81,83,94,145 拡散板
38,135 円形拡散板
39,56,99,136,151 モーター
40,137 回転拡散板
44,87 ダイクロイックミラー
47,90,141 励起用レーザー光源
54,97,149 アルミニウム基板
55,98,150 蛍光体層
57,100,152 蛍光板
58 光源装置
62,105,156 ロッドインテグレータ
132,146,224 青透過のダイクロイックミラー
101 光源装置
133 赤透過のダイクロイックミラー
138,154 プリズム
155 光源装置
202,229,230 リレーレンズ
203,226,227,228 反射ミラー
204,231,232,233 フィールドレンズ
205 全反射プリズム
206 空気層
207 カラープリズム
210,211,212 DMD
213 投写レンズ
220,221 レンズアレイ板
222 偏光変換素子
223 重畳用レンズ
225 緑反射のダイクロイックミラー
234,235,236 入射側偏光板
237,238,239 液晶パネル
240,241,242 出射側偏光板
243 色合成プリズム
244 投写レンズ