(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法および監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230825BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20230825BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20230825BHJP
H02H 7/26 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
G01R31/52
H02H3/16 B
H02H3/00 N
H02H7/26 C
(21)【出願番号】P 2019178536
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】591148602
【氏名又は名称】佐鳥電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517161142
【氏名又は名称】株式会社SoBrain
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100208395
【氏名又は名称】北畠 健二
(72)【発明者】
【氏名】井上 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】茂木 達哉
(72)【発明者】
【氏名】頭本 頼数
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-218237(JP,A)
【文献】特開2008-145155(JP,A)
【文献】特開平9-284984(JP,A)
【文献】特開2012-5193(JP,A)
【文献】特開2009-58234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
H02H 3/00
H02H 7/26
H01F 27/00
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線路の漏洩電流を計測する計測部と、
前記計測部により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測部により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断部と、
前記計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行うコンデンサ接地回路部とを備え、
前記コンデンサ接地回路部に含まれる各コンデンサは、同じ容量に設定されており、 前記コンデンサ接地回路部は、前記電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路に接続されるものであり、
前記判断部は、前記電線路が非接地式の構成の場合であって、前記変圧器の二次側が単相三線結線の場合、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第1位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第2位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断する、監視装置。
【請求項2】
電線路の漏洩電流を計測する計測部と、
前記計測部により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測部により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断部と、
前記計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行うコンデンサ接地回路部とを備え、
前記コンデンサ接地回路部は、前記電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路に接続されるものであり、
前記判断部は、前記電線路が非接地式の構成の場合であって、前記変圧器の二次側が単相三線結線の場合、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第1位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第2位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断するものであり、
前記判断部は、前記第1位相角と前記第2位相角とを比較し、当該比較結果により、地絡電流に容量成分が含まれると判断した場合、前記第1位相角と前記第2位相角との差分の角度と、前記漏洩電流または前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記容量成分を算出する監視装置。
【請求項3】
電線路の漏洩電流を計測する計測部と、
前記計測部により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測部により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断部と、
前記計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行うコンデンサ接地回路部とを備え、
前記コンデンサ接地回路部は、前記電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路に接続されるものであり、
前記判断部は、前記電線路が非接地式の構成の場合であって、前記変圧器の二次側が三相デルタ結線の場合、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第3位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第4位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断する監視装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記第3位相角と前記第4位相角とを比較し、当該比較結果により、地絡電流に容量成分が含まれると判断した場合、前記第3位相角と前記第4位相角との差分の角度と、前記漏洩電流または前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記容量成分を算出する請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
変圧器の二次側が単相三線結線の場合であって、電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、前記電線路の監視を行う監視方法であって、
前記コンデンサ接地回路部は、計測部と前記変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行い、
前記電線路の漏洩電流を計測する計測工程と、
前記計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測工程により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第1位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第2位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断工程と、
前記判断
工程で地絡電流に容量成分が含まれると判断した場合、前記第1位相角と前記第2位相角との差分の角度と、前記漏洩電流または前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記容量成分を算出する算出工程と、
を備える監視方法。
【請求項6】
変圧器の二次側が単相三線結線の場合であって、電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、前記電線路の監視を行う監視プログラムであって、
前記コンデンサ接地回路部は、計測部と前記変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行い、
コンピュータに、
前記電線路の漏洩電流を計測する計測工程と、
前記計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測工程により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第1位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第2位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断工程と、
前記判断
工程で地絡電流に容量成分が含まれると判断した場合、前記第1位相角と前記第2位相角との差分の角度と、前記漏洩電流または前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記容量成分を算出する算出工程と、
を実行させるための監視プログラム。
【請求項7】
変圧器の二次側が三相デルタ結線の場合であって、電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、前記電線路の監視を行う監視方法であって、
前記コンデンサ接地回路部は、計測部と前記変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行い、
前記電線路の漏洩電流を計測する計測工程と、
前記計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測工程により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第3位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第4位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断工程とを備える監視方法。
【請求項8】
変圧器の二次側が三相デルタ結線の場合であって、電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、前記電線路の監視を行う監視プログラムであって、
前記コンデンサ接地回路部は、計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行い、
コンピュータに、
前記電線路の漏洩電流を計測する計測工程と、
前記計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測工程により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、前記計測部で計測した漏洩電流をベクトルで示したときの第3位相角と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流をベクトルで示したときの第4位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断工程と、を実行させるための監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線路を監視する監視装置、監視方法および監視プログラム
に関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備の負荷機器を含む電気系統の絶縁性能は、感電、火災等の防止上、非常に重要であるが、電気設備の経年劣化や工事等により絶縁性能が損なわれ、電線路に漏洩電流(以下、「Io」という。)が発生することがある。Ioの発生を予兆したり、または、実際に発生しているIoを検知して、事故を未然に、または、早い段階で防止することが重要である。
【0003】
このため、受電変圧器には、二次側の回路の接地線にIoを監視する監視装置を設けるようにしている。ここで、Ioには、対地静電容量に起因する漏洩電流(以下、「Ioc」という。)と、絶縁抵抗に直接関与している対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流(以下、「Ior」という。)とが含まれている。
【0004】
例えば、特許文献1では、B種接地線に抑制抵抗を介置し、漏電電流を検出する絶縁監視装置の構成が開示されている。具体的には、当該絶縁監視装置では、変圧器の二次側回路に漏電が発生して二次側電線の地絡抵抗が閾値抵抗よりも小さくなった場合には、切替スイッチを開放することにより、B種接地線に抑制抵抗が介置された状態とし、二次側電線に一線地絡が生じたものと判断し、かつ、各二次側電線とグランドとの間の静電容量が同一であると仮定して、一線地絡による漏電電流を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、電線路が接地式(S相接地)の構成だけを前提としており、電線路が非接地式の構成を考慮していない。とくに、電線路が非接地式の構成の場合、負荷側に発生する浮遊容量成分の影響により、電線路の監視を好適に行うことが困難である。
【0007】
本開示では、電線路が非接地式の構成の場合であっても浮遊容量成分の影響を低減し、電線路の監視を好適に行うことができる監視装置、監視方法および監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における監視装置は、電線路の漏洩電流を計測する計測部と、前記計測部により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測部により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断部と、前記計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行うコンデンサ接地回路部とを備え、前記コンデンサ接地回路部は、前記電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路に接続される。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における監視方法は、電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、前記電線路の監視を行う監視方法であって、前記コンデンサ接地回路部は、計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行い、前記電線路の漏洩電流を計測する計測工程と、前記計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測工程により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断工程とを備える。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における監視プログラムは、電線路が非接地の構成である場合に、前記電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、前記電線路の監視を行う監視プログラムであって、前記コンデンサ接地回路部は、計測部と変圧器との間に配置され、前記電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行い、コンピュータに、前記電線路の漏洩電流を計測する計測工程と、前記計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、前記計測工程により計測した漏洩電流と、前記対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する判断工程と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電線路が非接地式の構成の場合であっても浮遊容量成分の影響を低減し、電線路の監視を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】電線路が非接地式の単相三線結線の構成を示す図である。
【
図3】所定条件下における回路シミュレータによる結果を示す図である。
【
図4】電線路が非接地式の三相デルタ結線の構成を示す図である。
【
図5】所定条件下における回路シミュレータによる結果を示す図である。
【
図8】三相デルタ電路において精度試験を行ったときの構成を示す図である。
【
図9】単相電路において精度試験を行ったときの構成を示す図である。
【
図11】三相デルタ電路の接地容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図12】三相デルタ電路の接地容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図13】三相デルタ電路の漏洩電流変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図14】三相デルタ電路の漏洩電流変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図15】三相デルタ電路の静電容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図16】三相デルタ電路の静電容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図17】単相三線電路の接地容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図18】単相三線電路の接地容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図19】単相三線電路の漏洩電流変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図20】単相三線電路の漏洩電流変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図21】単相三線電路の静電容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図22】単相三線電路の静電容量変化による精度試験の結果を示す図である。
【
図23】監視方法の手順についての説明に供するフローチャートである。
【
図24】コンピュータの構成を示すブロック図である。
【
図25】ハードウェアの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
図1は、監視装置1の構成を示す図である。監視装置1は、計測部11と、判断部12と、コンデンサ接地回路部13とを備える。なお、本実施の形態では、コンデンサ接地回路部13を用いたコンデンサ接地の例を示すが、コンデンサ接地に限られず、他のインピーダンス(例えば、コイルなど)による接地でもよい。
【0015】
計測部11は、電線路の漏洩電流を計測する。計測部11は、具体的には、零相変流器(ZCT)により構成されており、電線路(3相分の電線)を一括して貫通する構成である。例えば、計測部11は、貫通分割形零相変流器で構成されることにより、簡易に電線路に設置することができる。
【0016】
判断部12は、計測部11により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、計測部11により計測した漏洩電流と、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する。
【0017】
ここで、絶縁監視装置3の構成と動作について説明する。絶縁監視装置3は、主に、変圧器2の二次側における絶縁監視を行う装置である。特に、絶縁監視装置3は、絶縁監視を行うために電線路及び負荷を停電状態にすることなく、かつ、絶縁監視用の信号として商用周波数(50Hz、60Hz)とは異なる特定周波数(例えば、20Hz)を注入することなく、監視情報を検出し、検出した監視情報を外部に通知する機能などを有している。
【0018】
監視情報には、漏洩電流(以下、「Io」という。)や、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流(以下、「Ior」という。)や、対地静電容量に起因する漏洩電流(以下、「Ioc」という。)や、位相角度(θ)や、基準電圧や、絶縁抵抗値(Gr)や、温度などが含まれている。また、Ioは、コンデンサ接地回路部13のアース線または幹線で計測した電流である。また、位相角度(θ)とは、基準電圧(Vref)に対する漏れ電流の位相角度を示している。
【0019】
Ioは、IorとIocとのベクトル和である。Iocは、電線路の長さに応じて容量が増大するだけでなく、負荷に使用されているインバータやノイズフィルター等に起因する高調波歪み電流によっても容量が増大する成分である。Iorは、電気火災等を引き起こす原因となる成分である。絶縁監視装置3は、IorをIoから正確に算出することができる。また、絶縁監視装置3は、所定時間間隔(例えば、250msec)で絶縁監視を行う。
【0020】
コンデンサ接地回路部13は、計測部11と変圧器2との間に配置され、電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行う。コンデンサ接地回路部13は、電線路が非接地の構成である場合に、電線路に接続される。コンデンサ接地回路部13に含まれる各コンデンサは、同じ容量に設定されている。また、コンデンサ接地回路部13に含まれる各コンデンサは、負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)よりも大きな容量である。例えば、負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)は、2μFであり、コンデンサ接地回路部13に含まれる各コンデンサの容量は、5μFである。
【0021】
このような構成によれば、監視装置1は、負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)よりも大きな容量であるコンデンサ接地回路部13を計測部11と変圧器2との間に配置するので、電線路が非接地式の構成の場合、浮遊容量成分(対地静電容量)の影響を低減し、電線路の監視を好適に行うことができる。
【0022】
監視装置1は、
図1に示すように、電線路が接地式の構成であるか、または、電線路が非接地式の構成であるかを選択する選択部14を備える構成でもよい。なお、
図1では、選択部14は、物理的なスイッチで構成されているが、一例であり、この構成に限定されない。
【0023】
コンデンサ接地回路部13は、選択部14により電線路が非接地の構成が選択された場合に、電線路に接続される。具体的には、ユーザにより電線路が非接地の構成である旨の操作が行われた場合、絶縁監視装置3は、コンデンサ接地回路部13が接地状態になるように選択部14を制御する。なお、この構成に限られず、選択部14は、直接ユーザの操作を受け付ける構成でもよい。
【0024】
また、コンデンサ接地回路部13自体が選択部14の機能を有する(内蔵する)構成でもよい。このような構成の場合、監視装置1は、選択部14を別途備える必要がないため、構成規模を縮小化することができる。
【0025】
さらに、コンデンサ接地回路部13は、各コンデンサの容量を可変にする構成でもよい。このような構成の場合、監視装置1は、接地する環境に適した容量にコンデンサを変更することができる。
【0026】
なお、絶縁監視装置3は、電線路が接地式の構成の場合であって、変圧器2の二次側が三相デルタ結線の場合、Ioと位相角度(θ)に基づいて、Iorを算出する。例えば、絶縁監視装置3は、(1)式にIoと位相角度(θ)を代入して、Iorを算出する。
Ior=Io×sinθ/cos(π/6) ・・・(1)
【0027】
また、絶縁監視装置3は、電線路が接地式の構成の場合であって、変圧器2の二次側が単相三線結線の場合、Ioと位相角度(θ)に基づいて、Iorを算出する。例えば、絶縁監視装置3は、(2)式にIoと位相角度(θ)を代入して、Iorを算出する。
Ior=Io×cosθ ・・・(2)
【0028】
このような構成によれば、監視装置1は、電線路が非接地式の構成の場合には、コンデンサ接地回路部13を計測部11と変圧器2との間に配置し、電線路が接地式の構成の場合には、コンデンサ接地回路部13を計測部11と変圧器2との間に配置しない。よって、監視装置1は、電線路が非接地式の構成の場合および接地式の構成の双方に対応することができる。
【0029】
<単相三線結線の場合>
電線路が非接地式の構成の場合であって、変圧器2の二次側が単相三線結線の場合について説明する。
図2は、電線路が非接地式の単相三線結線の構成を示す図である。
図2では、R相に地絡が発生した場合を想定し、R相に地絡抵抗R1が接続されている例を示している。Cr、Cn、Ctは、各相の負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)を示している。具体的には、Crは、R相漏洩容量を示している。Cnは、N相漏洩容量を示している。Ctは、T相漏洩容量を示している。Vrは、R相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示しており、詳細には、R相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgのアース側と間の電圧値を示している。Vnは、N相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示しており、詳細には、N相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgのアース側と間の電圧値を示している。Vtは、T相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示しており、詳細には、T相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgのアース側と間の電圧値を示している。Vrefは、T相とR相との間の電圧(基準電圧)を示している。
【0030】
判断部12は、計測部11で計測した漏洩電流(Io)をベクトルで示したときの第1位相角(θ)を算出する。判断部12は、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流(Ior)をベクトルで示したときの第2位相角(r)を算出する。判断部12は、第1位相角(θ)と第2位相角(r)とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断する。
【0031】
このような構成によれば、監視装置1は、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断し、その判断結果をディスプレイなどで報知することにより、表示されているIoに静電容量成分の影響が反映されているかどうかを作業者に認識させることができる。
【0032】
例えば、作業者は、監視装置1により地絡電流に容量成分が含まれていない旨の報知がされていれば、Ioに静電容量成分の影響が反映されていないこと、すなわち、IoにIocが含まれていないことを認識することができる。
【0033】
一方、作業者は、監視装置1により地絡電流に容量成分が含まれている旨の報知がされていれば、Ioに静電容量成分の影響が反映されていること、すなわち、IoにIocが含まれていることを認識することができる。
【0034】
また、判断部12は、第1位相角(θ)と第2位相角(r)とを比較し、当該比較結果により、地絡電流に容量成分が含まれると判断した場合、第1位相角(θ)と第2位相角(r)との差分の角度と、漏洩電流または対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、容量成分を算出する。
【0035】
このような構成によれば、監視装置1は、地絡電流に容量成分が含まれる場合、その容量成分(Ioc)を報知することにより、どのくらいのIocが電線路に流れているのかを作業者に示すことができる。
【0036】
ここで、所定条件の場合における回路シミュレータの結果について説明する。以下で説明する所定条件とは、R相が地絡、線路が非接地式、接地容量(Cg)が5μF、R相漏洩容量(Cr)が2μF、N相漏洩容量(Cn)が0μF、T相漏洩容量(Ct)が0μF、地絡抵抗(R1)が500Ω、である。
図3は、この所定条件のときの回路シミュレータによる結果を示す図である。
【0037】
回路シミュレータによる演算により算出されたIoと第1位相角(θ)の具体的な数値は、以下のとおりである。
Io=173.24mA
θ=37.964°
【0038】
なお、以下では、「Io」は、ベクトルIoを意味する場合がある。「Ior」は、ベクトルIorを意味する場合がある。「Vn」は、ベクトルVnを意味する場合がある。「Vr」は、ベクトルVrをする場合がある。「Vr」は、ベクトルVxを意味する場合がある。
【0039】
Vxは、Ioを基準として、Ioから所定の角度に生じ、Ioと、第1位相角(θ)とにより求めることができる。また、Vnをベクトル表現した場合、Vnは、
図3に示すように、Vx上に示される。また、VnとVxの関係は、(3)式に示すとおりである。
Vn=Vx/3 ・・・(3)
【0040】
また、Vrは、R相と対地との間の電圧を示している。Vrの大きさは、R相とT相との間の電圧(基準電圧Vref)と、Vnとにより求めることができる。Iorと原点とのなす角が第2位相角(r)である。
【0041】
ここで、
図3に示す例では、第1位相角(θ)と第2位相角(r)とが異なる、すなわち、IoにIocが含まれている場合を示している。なお、IoにIocが含まれない場合、Ioは、Vrと同じ方向に示される。
【0042】
判断部12は、Iocを、三角関数を利用して、例えば、(4)式に基づいて算出する。
Ioc=Ior・tan(θ-r) ・・・(4)
【0043】
<三相デルタ結線の場合>
線路が非接地式の構成の場合であって、変圧器2の二次側が三相デルタ結線の場合について説明する。
図4は、電線路が非接地式の三相デルタ結線の構成を示す図である。
図4では、T相に地絡が発生した場合を想定し、T相に地絡抵抗R2が接続されている例を示している。Cxは、各相の負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)を示している。Vrは、R相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示しており、詳細には、R相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgのアース側と間の電圧値を示している。Vsは、S相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示しており、詳細には、S相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgのアース側と間の電圧値を示している。Vtは、T相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示しており、詳細には、T相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgのアース側と間の電圧値を示している。Vrefは、R相とT相との間の電圧(基準電圧)を示している。
【0044】
判断部12は、計測部11で計測した漏洩電流(Io)をベクトルで示したときの第3位相角を算出する。判断部12は、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流(Ior)をベクトルで示したときの第4位相角を算出する。判断部12は、第3位相角と第4位相角とを比較し、当該比較結果に基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断する。
【0045】
このような構成によれば、監視装置1は、地絡電流に容量成分が含まれるか否かを判断し、その判断結果をディスプレイなどで報知することにより、表示されているIoに静電容量成分の影響が反映されているかどうかを作業者に認識させることができる。
【0046】
例えば、作業者は、監視装置1により地絡電流に容量成分が含まれていない旨の報知がされていれば、Ioに静電容量成分の影響が反映されていないこと、すなわち、IoにIocが含まれていないことを認識することができる。
【0047】
一方、作業者は、監視装置1により地絡電流に容量成分が含まれている旨の報知がされていれば、Ioに静電容量成分の影響が反映されていること、すなわち、IoにIocが含まれていることを認識することができる。
【0048】
また、判断部12は、第3位相角と第4位相角とを比較し、当該比較結果により、地絡電流に容量成分が含まれると判断した場合、第3位相角と第4位相角との差分の角度と、漏洩電流または対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、容量成分を算出する。
【0049】
このような構成によれば、監視装置1は、地絡電流に容量成分が含まれる場合、その容量成分(Ioc)を報知することにより、どのくらいのIocが電線路に流れているのかを作業者に示すことができる。
【0050】
ここで、所定条件の場合における回路シミュレータの結果について説明する。以下で説明する所定条件とは、R相が地絡、線路が非接地式、接地容量(Cg)が5μF、浮遊容量(Cx)が2μF、地絡抵抗(R2)が500Ω、である。
図5は、この所定条件のときの回路シミュレータによる結果を示す図である。
【0051】
回路シミュレータによる演算により算出されたIoと第3位相角(θ)の具体的な数値は、以下のとおりである。
Io=212.59mA
θ=52.993°
【0052】
なお、以下では、「Io」は、ベクトルIoを意味する場合がある。「Ior」は、ベクトルIorを意味する場合がある。「Vc」は、ベクトルVcをする場合がある。「Vr」は、ベクトルVxを意味する場合がある。「Vt」は、ベクトルVxを意味する場合がある。「Vs」は、ベクトルVxを意味する場合がある。
【0053】
Vxは、Ioを基準として、Ioから所定の角度に生じ、Ioと、第3位相角(θ)とにより求めることができる。また、Vcをベクトル表現した場合、Vcは、
図5に示すように、Vx上に示される。また、VcとVxの関係は、(5)式に示すとおりである。つまり、Vcは、Ioと第3位相角(θ)とにより求めることができる。
Vc=Vx/3 ・・・(5)
【0054】
また、
図5は、Vcから導かれる各相電圧の関係図を示している。ベクトルVcの終点(先端)は、R相とT相との間の電圧(基準電圧(Vref))を基準とした三相デルタ電圧ベクトル図の重心位置(以下、この重心位置を点P1と称する。)を示す。ベクトルVcの始点(以下、この視点を点P2と称する)は、接地点を示している。三相デルタ電圧ベクトル図は、
図5に示すように、点P1を重心とした正三角形で示すことができる。
【0055】
また、点P2を始点とし、頂点P3を終点としたベクトルは、ベクトルVrを示す。点P2を始点とし、頂点P4を終点としたベクトルは、ベクトルVtを示す。点P2を始点とし、頂点P5を終点としたベクトルは、ベクトルVsを示す。ベクトルVrの終点と、ベクトルVtの終点とを結んだ直線が基準電圧(Vref)を示す。
【0056】
Vrは、R相とコンデンサ接地回路部13のコンデンサCgとの間の電圧値を示している。ベクトルVrの大きさは、点P1と点P3を結んだ直線の長さと、角度(30°+A)により求めることができる。
【0057】
また、三相デルタ結線の線路浮遊静電容量(Cx)がバランスしている条件では、IoとVrは同一方向に流れる。よって、Cxが0μFの場合には、「Ioc=0」となり、「Ior=Io」となる。
【0058】
また、
図5に示す例では、IoにIocが含まれていない場合を示している。なお、Iorと原点とのなす角を第4位相角(r)とすると、IoにIocが含まれていない場合とは、第3位相角(θ)と第4位相角(r)とが等しくなっている状態である。また、IoにIocが含まれている場合には、Iorは、Vrと異なる方向に示される。
【0059】
また、判断部12は、Iocを、三角関数を利用して、例えば、(6)式に基づいて算出する。つまり、第3位相角(θ)と第4位相角(r)とが等しい場合には、「Ioc=0」である。
Ioc=Ior・tan(θ-r) ・・・(6)
【0060】
なお、上述では、基準電圧(Vref)をT相とR相との間の電圧としたが、基準電圧(Vref)は、S相とT相との間の電圧にしてもよいし、R相とS相との間の電圧にしてもよい。また、
図5に示した各相電圧の関係図および演算式などは、基準電圧(Vref)に応じて適宜変更される。
【0061】
また、IorとIoとの関係は、以下式(7)で表すことができる。
Ior=Io×(Cg/(Cg+Cx)) ・・・(7)
【0062】
また、地絡抵抗値R2は、VrとIorとから下記式(8)で求めることができる。
R2=Vr/Ior ・・・(8)
【0063】
<精度試験>
つぎに、コンデンサ接地回路部13を設置したときの絶縁監視装置3の漏電電流計測機能の精度試験とその結果について説明する。また、本試験では、電気保安業務の法令に基づく評価基準から漏洩電流値を基準にすべきと考え、「50mA」付近での電流値を計測して、その精度を検証した。
【0064】
具体的には、以下に示すように、「自家用電気工作物保安管理規定」の「電気保安業務」における「状態監視」項で勧告されている電流値(50mA)を基準とし、計測値が許容誤差10%以内に収まれば、「良」判定とした。
基準電流値:50mA
許容誤差:10%以内
【0065】
図6は、試験項目を示す図である。
図7は、試験に用いた機材を示す図である。試験は、1.三相デルタ電路の接地容量変化による精度試験、2.三相デルタ電路の漏洩電流変化による精度試験、3.三相デルタ電路の静電容量変化による精度試験、4.単相三線電路の接地容量変化による精度試験、5.単相三線電路の漏洩電流変化による精度試験、6.単相三線電路の静電容量変化による精度試験、の6つ行った。
【0066】
ここで、三相デルタ電路の接地容量変化による精度試験の手順について説明する。
手順1-1. 浮遊静電容量(Cx)治具の全ての相に1μFを設定する。
手順1-2. 絶縁監視装置3の静電容量設定画面に1μFを設定する。
手順1-3. 接地用コンデンサ(Cg)治具に試験該当の容量値を設定する。
手順1-4. 絶縁監視装置3の接地容量設定画面において、接地用コンデンサ(Cg)治具に設定した値を設定する。
手順1-5. Ior測定器4の値を見ながら、三相用疑似漏電治具の試験該当相の電流値を50mAにする。
手順1-6. 絶縁監視装置3で測定(演算)したIo、位相角(θ)、Iorの値を記録する。
本試験においては、手順1-3から手順1-6を繰り返し行って、試験該当の全ての容量値について実施する(Cgを変化させてゆく)。
【0067】
三相デルタ電路の漏洩電流変化による精度試験の手順について説明する。
手順2-1. 浮遊静電容量(Cx)治具の全ての相に1μFを設定する。
手順2-2. 絶縁監視装置3の静電容量設定画面に1μFを設定する。
手順2-3. 接地用コンデンサ(Cg)治具の全ての相に20μFを設定する。
手順2-4. 絶縁監視装置3の接地容量設定画面において、Cgを20μFに設定する。
手順2-5. Ior測定器4の値を見ながら、三相用疑似漏電治具の試験該当相の電流値を試験該当の電流値にする。
手順2-6. 絶縁監視装置3で測定(演算)したIo、位相角(θ)、Iorの値を記録する。
本試験においては、手順2-5から手順2-6を繰り返し行って、試験該当の全ての容量値について実施する(漏洩抵抗成分を変化させてゆく)。
【0068】
三相デルタ電路の静電容量変化による精度試験の手順について説明する。
手順3-1. 接地用コンデンサ(Cg)治具の全ての相に20μFを設定する。
手順3-2. 絶縁監視装置3の接地容量設定画面において、Cgを20μFに設定する。
手順3-3. 浮遊静電容量(Cx)治具の全ての相に試験該当の静電容量を設定する。
手順3-4. 絶縁監視装置3の静電容量設定画面において、浮遊静電容量(Cx)治具に設定した値を設定する。
手順3-5. Ior測定器4の値を見ながら、三相用疑似漏電治具の試験該当相の電流値を50mAにする。
手順3-6. 絶縁監視装置3で測定(演算)したIo、位相角(θ)、Iorの値を記録する。
本試験においては、手順3-3から手順3-6を繰り返し行って、試験該当の全ての容量値について実施する(Cxを変化させてゆく)。
【0069】
単相電路の接地容量変化による精度試験の手順について説明する。
手順4-1. 浮遊静電容量(Cx)治具の全ての相に1μFを設定する。
手順4-2. 絶縁監視装置3の静電容量設定画面において、Cxを1μFに設定する。
手順4-3. 接地用コンデンサ治具に試験該当の容量値を設定する。
手順4-4. 絶縁監視装置3の接地容量設定画面において、接地用コンデンサ治具に設定した値を設定する。
手順4-5. Ior測定器4の値を見ながら、単相用疑似漏電治具の試験該当相の電流値を50mAにする。
手順4-6. 絶縁監視装置3で測定(演算)したIo、位相角(θ)、Iorの値を記録する。
本試験においては、手順4-3から手順4-6を繰り返し行って、試験該当の全ての容量値について実施する。
【0070】
単相電路の漏洩電流変化による精度試験の手順について説明する。
手順5-1. 浮遊静電容量(Cx)治具の全ての相に1μFを設定する。
手順5-2. 絶縁監視装置3の静電容量設定画面において、Cxを1μFに設定する。
手順5-3. 接地用コンデンサ治具の全ての相に20μFを設定する。
手順5-4. 絶縁監視装置3の接地容量設定画面において、Cgを20μFに設定する。
手順5-5. Ior測定器4の値を見ながら、単相用疑似漏電治具の試験該当相の電流値を試験該当の電流値にする。
手順5-6. 絶縁監視装置3で測定(演算)したIo、位相角(θ)、Iorの値を記録する。
本試験においては、手順5-5と手順5-6を繰り返し行って、試験該当の全ての容量値について実施する。
【0071】
単相電路の静電容量変化による精度試験の手順について説明する。
手順6-1. 接地用コンデンサ治具の全ての相に20μFを設定する。
手順6-2. 絶縁監視装置3の接地容量設定画面において、Cgを20μFに設定する。
手順6-3. 浮遊静電容量(Cx)治具の全ての相に試験該当の静電容量を設定する。
手順6-4. 絶縁監視装置3の静電容量設定画面において、浮遊静電容量(Cx)治具に設定した値を設定する。
手順6-5. Ior測定器4の値を見ながら、単相用疑似漏電治具の試験該当相の電流値を50mAにする。
手順6-6. 絶縁監視装置3で測定(演算)したIo、位相角(θ)、Iorの値を記録する。
本試験においては、手順6-3から手順6-6を繰り返し行って、試験該当の全ての容量値について実施する。
【0072】
図8は、三相デルタ電路において精度試験を行ったときの構成を示す図である。
図8に示す構成は、
図4に示す構成に対して、T相に流れるIorを測定するためのIor測定器4を組み合わせた構成である。なお、
図8では、T相に地絡が発生した場合を想定し、T相に地絡抵抗R2が接続されている例を示している。R相に地絡が発生した場合を想定した試験では、R相に地絡抵抗R2を接続した。また、S相に地絡が発生した場合を想定した試験では、S相に地絡抵抗R2を接続した。
【0073】
図9は、単相電路において精度試験を行ったときの構成を示す図である。
図8に示す構成は、
図3に示す構成に対して、T相に流れるIorを測定するためのIor測定器4を組み合わせた構成である。なお、
図9では、R相に地絡が発生した場合を想定し、R相に地絡抵抗R1が接続されている例を示している。T相に地絡が発生した場合を想定した試験では、T相に地絡抵抗R1を接続した。
【0074】
図10は、すべての試験の結果をまとめた図である。
図10に示す通り、すべての試験において、計測値は、許容誤差10%以内であり、「良」判定であった。
【0075】
<試験結果>
三相デルタ電路においては、T相接地の場合の試験結果を示すが、R相接地およびS相接地の場合についても試験を行った。また、単相電路においては、R相接地の場合の試験結果を示すが、T相接地の場合についても試験を行った。
【0076】
図11および
図12は、三相デルタ電路の接地容量変化による精度試験の結果を示す図である。すべての設定値において、絶縁監視装置3による計算値と、Ior測定器4による計測値とが、許容誤差10%以内かつ誤差率2%以内であった。
【0077】
図13および
図14は、三相デルタ電路の漏洩電流変化による精度試験の結果を示す図である。すべての設定値において、絶縁監視装置3による計算値と、Ior測定器4による計測値とが、許容誤差10%以内かつ誤差率2%以内であった。
【0078】
図15および
図16は、三相デルタ電路の静電容量変化による精度試験の結果を示す図である。すべての設定値において、絶縁監視装置3による計算値と、Ior測定器4による計測値とが、許容誤差10%以内かつ誤差率2%以内であった。
【0079】
図17および
図18は、単相三線電路の接地容量変化による精度試験の結果を示す図である。すべての設定値において、絶縁監視装置3による計算値と、Ior測定器4による計測値とが、許容誤差10%以内かつ誤差率2%以内であった。
【0080】
図19および
図20は、単相三線電路の漏洩電流変化による精度試験の結果を示す図である。すべての設定値において、絶縁監視装置3による計算値と、Ior測定器4による計測値とが、許容誤差10%以内かつ誤差率2%以内であった。
【0081】
図21および
図22は、単相三線電路の静電容量変化による精度試験の結果を示す図である。すべての設定値において、絶縁監視装置3による計算値と、Ior測定器4による計測値とが、許容誤差10%以内かつ誤差率2%以内であった。
【0082】
図11から
図22の精度試験の結果が示すように、監視装置1は、電線路が非接地式の構成の場合において、負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)よりも大きな容量が設定されたコンデンサ接地回路部13を計測部11と変圧器2との間に配置することにより、浮遊容量成分(対地静電容量)の影響を低減して、地絡負荷電流が50mA以下で、許容誤差が10%以内かつ誤差率2%以内の精確なIorを算出することができ、電線路の監視を好適に行うことができる。
【0083】
(監視方法について)
ここで、監視装置1による監視方法について説明する。
図23は、監視方法の手順についての説明に供するフローチャートである。監視方法は、電線路が非接地の構成である場合に、電線路にコンデンサ接地回路部13が接続され、電線路の監視を行う方法である。
【0084】
コンデンサ接地回路部13は、計測部11と変圧器2との間に配置され、電線路を構成する各線路にそれぞれ接続して、コンデンサを介して接地を行っている。
【0085】
ステップST1において、計測部11は、電線路の漏洩電流を計測する。
ステップST2において、判断部12は、ステップST1の工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、ステップST1の工程により計測した漏洩電流と、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する。監視装置1は、判断結果を作業者に報知する。
【0086】
このようにして、監視方法は、負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)よりも大きな容量であるコンデンサ接地回路部13を計測部11と変圧器2との間に配置するので、電線路が非接地式の構成の場合、浮遊容量成分(対地静電容量)の影響を低減し、電線路の監視を好適に行うことができる。
【0087】
(監視プログラムについて)
電線路が非接地の構成である場合に、電線路にコンデンサ接地回路部が接続され、電線路の監視を行う監視プログラムは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0088】
工程1(計測工程):電線路の漏洩電流を計測する工程
工程2(判断工程):計測工程により計測した漏洩電流に基づいて対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流を算出し、計測工程により計測した漏洩電流と、対地絶縁抵抗に起因する漏洩電流とに基づいて、地絡電流に容量成分が含まれるかどうかを判断する工程
【0089】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図を用いて説明する。コンピュータ500は、
図24に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスA上に接続されて構成されており、これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0090】
入出力I/F504には、例えば、各種の情報を表示するディスプレイ、および、ユーザの操作を受け付けるタッチパネルなどが接続される。タッチパネルは、ディスプレイの前面に配置される。よって、ユーザは、ディスプレイに表示されるアイコンを指でタッチ操作などをすることにより、直感的な操作を行うことができる。なお、タッチパネルは、ディスプレイの前面に配置されていなくてもよい。また、タッチパネルに代えて、または、タッチパネルと共に、キーボードおよびマウスなどのポインティングデバイスが入出力I/F504に接続される構成でもよい。また、入出力I/F504には、外部に音声を出力するスピーカや、外部の音声が入力されるマイクが接続されてもよい。
【0091】
ディスプレイは、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどにより構成され、プロセッサ501による制御の下、種々の情報を表示する。プロセッサ501が支援プログラムに基づいてディスプレイを制御することにより、報知部の機能が実現される。
【0092】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0093】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)により実現される。ストレージ503には、上述した工程1および工程2で実現される監視プログラムなどの各種のプログラムが格納されている。
【0094】
例えば、プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0095】
具体的には、プロセッサ501は、ユーザの操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、監視プログラム)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ502に展開し、プログラムを実行する。また、プロセッサ501が監視プログラムを実行することにより、計測部11および判断部12の各機能が実現される。
【0096】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0097】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、
図25に示すように、専用のハードウェアである処理回路601で構成されてもよい。処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0098】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0099】
通信I/F505は、所定の通信規格に準拠したインターフェイスであり、有線または無線により外部装置と通信を行う。
【0100】
このようにして、監視プログラムは、コンピュータ500で実行されることにより、負荷側で発生する浮遊容量成分(対地静電容量)よりも大きな容量であるコンデンサ接地回路部13を計測部11と変圧器2との間に配置するので、電線路が非接地式の構成の場合、浮遊容量成分(対地静電容量)の影響を低減し、電線路の監視を好適に行うことができる。
【符号の説明】
【0101】
1 監視装置
2 変圧器
3 絶縁監視装置
11 計測部
12 判断部
13 コンデンサ接地回路部
14 選択部