(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/06 20100101AFI20230825BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230825BHJP
C30B 29/20 20060101ALI20230825BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L21/205
C30B29/20
C23C16/34
(21)【出願番号】P 2019182829
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-07-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、文部科学省、「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】上山 智
(72)【発明者】
【氏名】竹内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 勇
(72)【発明者】
【氏名】ルー ウェイファン
(72)【発明者】
【氏名】曽根 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 一喜
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮
(72)【発明者】
【氏名】大矢 昌輝
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0064608(US,A1)
【文献】特開2009-076896(JP,A)
【文献】特開2019-012744(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0013076(KR,A)
【文献】特表2017-525159(JP,A)
【文献】特表2019-502257(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0007987(KR,A)
【文献】特表2019-519123(JP,A)
【文献】特表2016-518703(JP,A)
【文献】特表2015-508941(JP,A)
【文献】LU, Weifang et al.,Effect of AlGaN undershell on the cathodoluminescence properties of coaxial GaInN/GaN multiple-quantum-shells nanowires,Nanoscale,2019年10月01日,VOL.11,p.18746-p.18757,https://doi.org/10.1039/C9NR07271C
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 33/00-33/64
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
C30B 29/20
C23C 16/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長基板と、前記成長基板上に形成された柱状半導体層とを備える半導体発光素子であって、
前記柱状半導体層は、中心にn型ナノワイヤ層が形成され、前記n型ナノワイヤ層よりも外周に活性層が形成され、前記活性層よりも外周にp型半導体層が形成されており、
Alを含む窒化物半導体材料からなる内側表面保護層が、
前記n型ナノワイヤ層の底部に設けられ
、
前記内側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
請求項
1に記載の半導体発光素子であって、
前記内側表面保護層の膜厚が1nm以上100nm以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
成長基板と、前記成長基板上に形成された柱状半導体層とを備える半導体発光素子であって、
前記柱状半導体層は、中心にn型ナノワイヤ層が形成され、前記n型ナノワイヤ層よりも外周に活性層が形成され、前記活性層よりも外周にp型半導体層が形成されており、
Alを含む窒化物半導体材料からなる外側表面保護層が、前記活性層の外周を覆って設けられ
、
前記外側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
請求項
1から3の何れか一つに記載の半導体発光素子であって、
前記p型半導体層よりも外周にトンネル接合層が形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項5】
成長基板と、前記成長基板上に形成された柱状半導体層とを備える半導体発光素子であって、
前記柱状半導体層は、中心にn型ナノワイヤ層が形成され、前記n型ナノワイヤ層よりも外周に活性層が形成され、前記活性層よりも外周にp型半導体層が形成され
、前記p型半導体層よりも外周にトンネル接合層が形成されており、
Alを含む窒化物半導体材料からなる外側表面保護層が、前記トンネル接合層の外周を覆って設けられ
、
前記外側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
請求項
1から5の何れか一つに記載の半導体発光素子であって、
前記柱状半導体層を覆う埋込半導体層をさらに備えることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項7】
成長基板上に開口部を有するマスク層を形成するマスク工程と、選択成長を用いて前記開口部に柱状半導体層を形成する成長工程とを有し、
前記成長工程は、
n型ナノワイヤ層を形成する工程と、前記n型ナノワイヤ層よりも外側に活性層を形成する工程と、
前記n型ナノワイヤ層の底部にAlを含む窒化物半導体材料からなる内側表面保護層を形成する工程と、
前記活性層よりも外側にp型半導体層を形成する工程を含
み、
前記内側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする半導体発光素子の成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物系半導体の結晶成長方法が急速に進展し、この材料を用いた高輝度の青色、緑色発光素子が実用化された。従来から存在した赤色発光素子とこれらの青色発光素子、緑色発光素子を組み合わせることで光の3原色全てが揃い、フルカラーのディスプレイ装置も実現可能となった。即ち、光の3原色全てを混合させると白色の光を得ることもできるようになり、照明用デバイスへの応用も可能である。
【0003】
照明用途の光源に用いる半導体発光素子では、高電流密度領域において高いエネルギー変換効率と高い光出力を実現できることが望ましく、放出される光の配光特性が安定していることが望ましい。これらの課題を解決するために特許文献1では、半導体基板上にn型ナノワイヤコアと中間活性層とp型シェルを成長し、シェル上にITO等の透明導電膜を形成した半導体発光素子が提案されている。
【0004】
また特許文献2には、透明導電膜での光吸収を防止するために、活性層の外周にp型半導体層とトンネル接合層を形成し、埋め込み半導体層をコンタクト層としてナノワイヤコアの側面から電流を注入する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、ナノワイヤ側面の活性層の外側にカバー層を設けることで発光素子の効率を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-518703号公報
【文献】特開2019-012744号公報
【文献】特表2015-508941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2,3に開示されているナノワイヤコアの外周に活性層を形成した半導体発光素子では、サファイア基板の全面に活性層を形成したものよりも結晶欠陥や貫通転位が少なく、高品質な結晶を得られるため高電流密度における外部量子効率を図ることができる。
【0008】
しかし、サファイア基板上に選択成長でナノワイヤコアを成長させ、その後に活性層、p型半導体層を作製する際の熱によるナノワイヤの表面及び活性層表面の劣化により、活性層の結晶品質が低下して発光効率も低下する可能性がある。
【0009】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、ナノワイヤよりも外周に形成された活性層の結晶品質をさらに向上させて、外部量子効率を向上させることが可能な半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子は、成長基板と、前記成長基板上に形成された柱状半導体層とを備える半導体発光素子であって、前記柱状半導体層は、中心にn型ナノワイヤ層が形成され、前記n型ナノワイヤ層よりも外周に活性層が形成され、前記活性層よりも外周にp型半導体層が形成されており、Alを含む窒化物半導体材料からなる内側表面保護層が、前記n型ナノワイヤ層の底部に設けられ、前記内側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする。
【0011】
このような本発明の半導体発光素子では、n型ナノワイヤ層に接して内側表面保護層が設けられており、内側表面保護層はAlを含む窒化物半導体材料で構成されるため、n型ナノワイヤ層中に生じた点欠陥が活性層に伝搬することを抑制し、活性層の結晶品質向上と外部量子効率の向上を図ることができる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記内側表面保護層の膜厚が1nm以上100nm以下である。
【0015】
また上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子は、成長基板と、前記成長基板上に形成された柱状半導体層とを備える半導体発光素子であって、前記柱状半導体層は、中心にn型ナノワイヤ層が形成され、前記n型ナノワイヤ層よりも外周に活性層が形成され、前記活性層よりも外周にp型半導体層が形成されており、Alを含む窒化物半導体材料からなる外側表面保護層が、前記活性層の外周を覆って設けられ、前記外側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の一態様では、前記p型半導体層よりも外周にトンネル接合層が形成されている。
【0017】
また上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子は、成長基板と、前記成長基板上に形成された柱状半導体層とを備える半導体発光素子であって、前記柱状半導体層は、中心にn型ナノワイヤ層が形成され、前記n型ナノワイヤ層よりも外周に活性層が形成され、前記活性層よりも外周にp型半導体層が形成され、前記p型半導体層よりも外周にトンネル接合層が形成されており、Alを含む窒化物半導体材料からなる外側表面保護層が、前記トンネル接合層の外周を覆って設けられ、前記外側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする。
【0018】
また本発明の一態様では、前記柱状半導体層を覆う埋込半導体層をさらに備える。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の半導体発光素子の製造方法は、成長基板上に開口部を有するマスク層を形成するマスク工程と、選択成長を用いて前記開口部に柱状半導体層を形成する成長工程とを有し、前記成長工程は、n型ナノワイヤ層を形成する工程と、前記n型ナノワイヤ層よりも外側に活性層を形成する工程と、前記n型ナノワイヤ層の底部にAlを含む窒化物半導体材料からなる内側表面保護層を形成する工程と、前記活性層よりも外側にp型半導体層を形成する工程を含み、前記内側表面保護層に少なくともAlが含まれており、Alの組成比が最大0.06以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ナノワイヤよりも外周に形成された活性層の結晶品質をさらに向上させて、外部量子効率を向上させることが可能な半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る半導体発光素子10を示す模式図であり、
図1(a)は全体を示し、
図1(b)は柱状半導体層部分の構造を拡大して示している。
【
図2】半導体発光素子10の製造方法を示す模式図であり、
図2(a)はマスク形成工程、
図2(b)はナノワイヤ成長工程、
図2(c)は柱状半導体層成長工程、
図2(d)は除去工程、
図2(e)は電極形成工程を示している。
【
図3】半導体発光素子10の発光強度を示したグラフであり、
図3(a)は、内側表面保護層15の膜厚と発光強度の関係を示し、
図3(b)は内側表面保護層15のAl組成比と発光強度の関係を示している。
【
図4】第2実施形態に係る半導体発光素子30の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。
【
図5】第3実施形態に係る半導体発光素子40の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。
【
図6】第4実施形態に係る半導体発光素子50の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。
【
図7】第5実施形態に係る半導体発光素子60の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、第1実施形態に係る半導体発光素子10を示す模式図であり、
図1(a)は全体を示し、
図1(b)は柱状半導体層部分の構造を拡大して示している。
【0024】
図1(a)(b)に示すように、半導体発光素子10は、成長基板11と、下地層12と、マスク13と、n型ナノワイヤ層14と、内側表面保護層15と、活性層16と、p型半導体層17と、トンネル接合層18と、埋込半導体層19とを備えている。ここで、n型ナノワイヤ層14、内側表面保護層15、活性層16、p型半導体層17およびトンネル接合層18は、成長基板11に対して垂直方向に選択成長されて柱形状とされており、本発明における柱状半導体層を構成している。
【0025】
図1(a)に示すように、半導体発光素子10の一部は下地層12が露出されており、下地層12上にカソード電極20,21が形成されている。また、柱状半導体層の上方には、一部領域に埋込半導体層19が残されており、当該領域の埋込半導体層19上にアノード電極22,23が形成されている。アノード電極22,23が形成されていない領域では、p型半導体層17が部分的に露出するまで埋込半導体層19およびトンネル接合層18が除去されている。
【0026】
成長基板11は、半導体材料を結晶成長可能な材料で構成された略平板状の部材であり、主面側にマスク13が形成されている。成長基板11は単一の材料で構成されていてもよく、単結晶基板上にバッファ層等の複数の半導体層を成長させたものを用いてもよい。成長基板11は、バッファ層を介して半導体単結晶層を成長させるための材料から構成される単結晶の基板であればよく、半導体発光素子10を窒化物系半導体で構成する場合にはc面サファイア基板が好ましいが、Si等の他の異種基板であってもよい。また、レーザ発振させるためには、共振器面が劈開により形成しやすいc面GaN基板を用いてもよい。バッファ層は、単結晶基板と下地層12の間に形成されて両者の格子不整合を緩和するための層である。単結晶基板としてc面サファイア基板を用いる場合には材料としてAlNを用いることが好ましいが、GaNやAlGaNなどを用いるとしてもよい。
【0027】
下地層12は、成長基板11やバッファ層上に形成された単結晶の半導体層であり、ノンドープのGaNを数μmの厚さで形成することが好ましい。下地層12は単層で構成するとしてもよく、n型コンタクト層等のn型半導体層を備えた複数層で構成するとしてもよい。n型コンタクト層は、n型不純物がドープされた半導体層であり、例えばSiドープしたn型Al
0.05Ga
0.95Nが挙げられる。
図1(a)に示したように、下地層12の一部は露出されてカソード電極20,21が形成されている。
【0028】
マスク13は、下地層12の表面に形成された誘電体材料からなる層である。マスク13を構成する材料としては、マスク13からは半導体の結晶成長が困難なものを選択し、例えばSiO2やSiNxなどが好適である。マスク13には後述する開口部が複数形成されており、開口部から部分的に露出した下地層12から半導体層が成長可能とされている。
【0029】
柱状半導体層は、マスク13に設けられた開口部に結晶成長された半導体層であり、成長基板11の主面に対して鉛直に略柱状の半導体層が立設して形成されている。このような柱状半導体層は、構成する半導体材料に応じて適切な成長条件を設定し、特定の結晶面方位が成長する選択成長を実施することで得られる。
図1に示した例では、マスク13に複数の開口部を二次元的に周期的に形成しているため、柱状半導体層も成長基板11上に二次元的に周期的に形成されている。ここでは柱状半導体層を二次元的に周期的に配置した例を示したが、柱状半導体層が1つであってよく、非周期的に複数の柱状半導体層を形成するとしてよい。
【0030】
n型ナノワイヤ層14は、マスク13の開口部から露出した下地層12上に選択成長された柱状の半導体層であり、例えばn型不純物がドープされたGaNから構成されている。n型ナノワイヤ層14としてGaNを用いると、下地層12のc面上に選択成長されたn型ナノワイヤ層14は、6つのm面がファセットとして形成された略六角柱の形状となる。
図1(a)(b)では開口部が形成された領域にのみn型ナノワイヤ層14が成長しているように見えるが、実際には横方向成長によりマスク13上にも結晶成長が進むため、開口部の周囲に拡大した六角柱が形成される。例えば、開口部を直径150nm程度の円として形成した場合には、直径240nm程度の円に内接する六角形を底面とする高さ1~2mm程度の六角柱状のn型ナノワイヤ層14を形成することができる。
【0031】
内側表面保護層15は、Alを含む窒化物半導体材料からなる半導体層であり、n型ナノワイヤ層14に接して外周を覆って設けられている。窒化物半導体層にAlが微量に含まれていると、GaN層よりも結晶成長中に生じた点欠陥が伝搬しにくいことが知られている。したがって内側表面保護層15は、マスク13の開口部から下地層12上に半導体層を選択成長する際に生じる点欠陥が活性層16にまで伝搬することを抑制するための層であり、一般式AlyGazN(y+z=1)で表される。内側表面保護層15はノンドープで形成してもよく、Si等のn型不純物をドープで形成してもよい。
【0032】
内側表面保護層15の組成比は、後述するように前記一般式のyの値が0より多く0.06以下の範囲が好ましい。また、内側表面保護層15の膜厚は、後述するように1nm以上30nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1nm以上5nm以下の範囲である。内側表面保護層15に含まれるAlは、欠陥の伝搬を抑制するためと、高温でのマストランスポート防止という観点で好ましい。
図1(b)に示すように、本実施形態では内側表面保護層15をn型ナノワイヤ層14と活性層16との間に形成している。
【0033】
活性層16は、n型ナノワイヤ層14よりも外周に成長された半導体層であり、例えば厚さ5nmのGa0.85In0.15N量子井戸層と厚さ10nmのGaN障壁層を5周期重ねた多重量子井戸活性層が挙げられる。ここでは多重量子井戸活性層を挙げたが、単一量子井戸構造であってもよく、バルク活性層であってもよい。活性層16がn型ナノワイヤ層14の側面および上面に形成されているため、活性層16の面積を確保することができる。
【0034】
p型半導体層17は、活性層16よりも外周に成長された半導体層であり、例えばp型不純物がドープされたGaNから構成されている。p型半導体層17が活性層16の側面および上面に形成されているため、n型ナノワイヤ層14と活性層16とp型半導体層17でダブルヘテロ構造が構成され、良好にキャリアを活性層16に閉じ込めて発光再結合の確率を向上させることができる。
【0035】
トンネル接合層18は、p型半導体層17よりも外周に成長された半導体層であり、例えば内側にp型不純物が高濃度にドープされたp+層と、外側にn型不純物が高濃度にドープされたn+層とが順に成長された二層構造を有している。p+層は、p型不純物が高濃度にドープされた半導体層であり、例えば厚さ5nmでMg濃度が2×1020cm-3のGaNを用いることができる。n+層は、例えば厚さ10nmでSi濃度が2×1020cm-3のGaNを用いることができる。p+層とn+層によりトンネル接合が形成されるため、p+層とn+層の二層は本発明におけるトンネル接合層18を構成している。
【0036】
埋込半導体層19は、柱状半導体層の上面および側面を覆って、マスク13に至るまで覆うように形成された半導体層である。
図1(a)に示したように、アノード電極22,23が形成されている領域における柱状半導体層の上方では、埋込半導体層19がトンネル接合層18上も覆っている。アノード電極22,23が形成されていない領域における柱状半導体層の上方では、埋込半導体層19とトンネル接合層18が除去されてp型半導体層17の上部が露出し、トンネル接合層18の側面には
図1に示したように埋込半導体層19が接触している。
【0037】
カソード電極20,21は、下地層12が露出された領域に形成された電極であり、下地層12の最表面とオーミック接触する金属材料とパッド電極の積層構造で構成されている。アノード電極22,23は、埋込半導体層19上の一部に形成された電極であり、埋込半導体層19の最表面とオーミック接触する金属材料とパッド電極の積層構造で構成されている。また、
図1では図示を省略したが、必要に応じて半導体発光素子10の表面をパッシベーション膜で覆うなど公知の構造を適用してもよい。
【0038】
半導体発光素子10の発光波長を長波長化する場合には、活性層16のInNモル分率を高める必要がある。例えばn型ナノワイヤ層14の外接円直径が300nmのとき、赤色の活性層組成Ga0.6In0.4Nを用いる必要があるが、InNモル分率上昇とともに圧縮応力が高まり、ミスフィット転位が発生する場合がある。これを避けるために、Ga0.6In0.4N井戸層の膜厚を小さくするか、n型ナノワイヤ層14を構成する材料をGaInNとすることも可能である。同様に、半導体発光素子10の波長を短波長化する場合には、n型ナノワイヤ層14としてAlGaNを用いることや、活性層16の井戸層およびバリア層を各々組成の異なるAlGaNに変更することも可能である。
【0039】
図2は、半導体発光素子10の製造方法を示す模式図であり、
図2(a)はマスク形成工程、
図2(b)はナノワイヤ成長工程、
図2(c)は柱状半導体層成長工程、
図2(d)は除去工程、
図2(e)は電極形成工程を示している。
【0040】
まず
図2(a)に示すマスク工程では、サファイア単結晶からなる成長基板11上に有機金属化合物気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、AlNからなるバッファ層、GaNおよびAl0.05Ga0.95Nからなる下地層12を成長させる。次に、下地層12上にスパッタ法でSiO
2からなるマスク13を膜厚30nm程度堆積させ、ナノインプリンティングリソグラフィーのような微細パターン形成方法を用いて、直径150nm程度の開口部を形成する。バッファ層の成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMA(
TriMethylAluminium)およびアンモニアを用い、成長温度が1100℃、V/III比が100、水素をキャリアガスとして圧力10hPaである。下地層12およびn型半導体層の成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMG(TriMethylGallium)、TMAおよびアンモニアを用い、成長温度が1050℃、V/III比が1000、水素をキャリアガスとして圧力500hPaである。
【0041】
次に
図2(b)に示すナノワイヤ成長工程では、MOCVD法による選択成長により、開口部から露出した下地層12上にGaNからなるn型ナノワイヤ層14を成長させる。n型ナノワイヤ層14の成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMG、モノシランおよびアンモニアを用い、成長温度が1050℃、V/III比が20、水素をキャリアガスとして圧力100hPaである。
【0042】
次に
図2(c)に示す柱状半導体層成長工程では、MOCVD法を用いてn型ナノワイヤ層14の側面および上面に、厚さ1~100nmのAlを含む内側表面保護層15、厚さ5nmのGa
0.85In
0.15N量子井戸層と厚さ10nmのGaN障壁層を5周期重ねた活性層16、p型不純物をドープしたGaNからなるp型半導体層17、厚さ5nmでMg濃度が2×10
20cm
-3のGaNからなるp+層と、厚さ10nmでSi濃度が2×10
20cm
-3からなるn+層を含むトンネル接合層18を順次成長させる。次に、n型GaNからなる埋込半導体層19を成長させ、トンネル接合層18の外周および上面を埋込半導体層19で埋める。
【0043】
内側表面保護層15の成長条件としては、例えば成長温度が800℃、V/III比が3000、窒素をキャリアガスとして圧力1000hPaであり、原料ガスとしてTMG、TMAおよびアンモニアを用いる。活性層16の成長条件としては、例えば成長温度が800℃、V/III比が3000、窒素をキャリアガスとして圧力1000hPaで、原料ガスとしてTMG、TMI(TriMethylIndium)およびアンモニアを用いる。p型半導体層17の成長条件としては、例えば成長温度が950℃、V/III比が1000、水素をキャリアガスとして圧力300hPaであり、原料ガスとしてTMG、Cp2Mg(bisCycropentadienylMagnesium )およびアンモニアを用いる。トンネル接合層18の成長条件としては、例えば成長温度が800℃、V/III比が3000、窒素をキャリアガスとして圧力500hPaであり、原料ガスとしてTMG、Cp2Mg、モノシランおよびアンモニアを用いる。埋込半導体層19の成長条件としては、例えば成長温度が900℃、V/III比が20、水素がキャリアガスとして圧力200hPaで、原料ガスとしてTMG、モノシランおよびアンモニアを用いる。
【0044】
次に
図2(d)に示す除去工程では、選択的にドライエッチングにより埋込半導体層19およびトンネル接合層18の上面を除去し、p型半導体層17の上面を露出させる。また、カソード電極20,21を形成する領域では、マスク13まで除去して下地層12の上面を露出させる。
【0045】
さらにp型半導体層17が露出した状態で大気雰囲気中において600℃でアニールし、p型半導体層17とトンネル接合層18に取り込まれた水素を離脱させてp型半導体層17とトンネル接合層を活性化させる活性化工程を実施する。ここでは大気雰囲気中でのアニールを示したが、p型半導体層17とトンネル接合層18を活性化できる原子状水素の存在しない雰囲気であればよい。
【0046】
最後に
図2(e)に示す電極形成工程では、下地層12の表面にカソード電極20,21を形成し、埋込半導体層19上にアノード電極22,23を形成する。また、必要に応じて電極形成後のアニールやパッシベーション膜の形成、素子分割を実施して半導体発光素子10を得る。
【0047】
本実施形態の半導体発光素子10では、カソード電極20,21とアノード電極22,23の間に電圧を印加すると、埋込半導体層19、トンネル接合層18、p型半導体層17、活性層16、内側表面保護層15、n型ナノワイヤ層14、n型半導体層の順に電流が流れ、活性層16で発光再結合により光が生じる。活性層16からの発光は、半導体発光素子10の外部に取り出される。
【0048】
図3(a)は、内側表面保護層15の膜厚と発光強度の関係を示し、
図3(b)は内側表面保護層15のAl組成比と発光強度の関係を示している。
図3(a)に示したグラフでは、内側表面保護層15としてAl組成比が0.06のAlGaNを用い、
図3(b)に示したグラフでは、内側表面保護層15としてAlGaNを用いて膜厚を30nmとしている。したがって、
図3(a)における 膜厚0nmと、
図3(b)におけるAl組成比0%は、内側表面保護層15が無い比較例を示している。
【0049】
図3(a)に示したように、内側表面保護層15の膜厚が60nm以上であっても、内側表面保護層15無しの場合より発光強度が大きく、外部量子効率が高い。これは、n型ナノワイヤ層14に生じた点欠陥が内側表面保護層15によって低減され、活性層16の結晶品質が向上しているためであると考えられる。内側表面保護層15の膜厚は、1nmのときに発光強度が最大であり、膜厚が増加するに従って発光強度が低下していく。内側表面保護層15の膜厚が1nm未満では、n型ナノワイヤ層14の側面全体に内側表面保護層15を形成することが困難であるため好ましくない。また、膜厚の増加に伴って発光強度が低下するため30nm以下の膜厚であることが好ましく、より好ましくは5nm以下である。
【0050】
図3(b)に示したように、内側表面保護層15としてAlGaNを用いると、Al組成比が0で内側表面保護層15無しの場合よりも発光強度が大きく、外部量子効率が高い。Al組成比が4%程度で発光強度が最大となり、それ以上の組成比では発光強度が減少している。内側表面保護層15のAl組成比は0より大きければ発光強度が向上しているが、Alを含み6%以下の範囲で発光強度向上の効果が大きく得られるため好ましい。
【0051】
図3(a)(b)に示したように本実施形態の半導体発光素子10では、n型ナノワイヤ層14と活性層16の間に内側表面保護層15を形成しているため、n型ナノワイヤ層14中に生じた点欠陥が活性層16にまで継続することが抑制され、活性層16の結晶品質が向上することで外部量子効率が向上する。
【0052】
また、本実施形態の半導体発光素子10では、活性層16がn型ナノワイヤ層14よりも外周に形成され、さらにその外周にトンネル接合層18が形成され、埋込半導体層19で埋め込まれている。したがって、アノード電極22,23から注入された電流は、埋込半導体層19からトンネル接合層18を経由してトンネル電流としてp型半導体層17の側壁から活性層16に注入される。また、柱状半導体層の上部においては、n型の埋込半導体層19と接触しているp型半導体層17の上面に対しては逆バイアスとなり電流注入が生じない。トンネル接合層18を介したトンネル電流による電流注入は抵抗が小さく、良好に電流注入を行うことができる。また、n型の半導体層である埋込半導体層19はp型の半導体層よりも電流が拡散しやすいため、良好に柱状半導体層の側面で底面近傍まで電流を拡散させて、トンネル接合層18全体から電流注入を行うことができる。
【0053】
これにより、アノード電極22,23から注入された電流は、柱状半導体層の上面ではなく側面全体から良好にp型半導体層17に注入され、活性層16に対して良好に電流注入をして高電流密度を実現するとともに、外部量子効率を向上させることが可能となる。
【0054】
また、n型ナノワイヤ層14の側面は選択成長により形成されたm面となっているため、その外周に形成された活性層16とp型半導体層17も互いにm面で接触している。m面は無極性面であり分極が生じないため活性層16での発光効率も高く、しかも六角柱の側面全てがm面であることから半導体発光素子10の発光効率を向上させることができる。さらに、柱状半導体層の高さを500nm以上にまで大きくすると、活性層16の体積を従来の半導体発光素子よりも3~10倍程度まで増加させることができ、注入キャリア密度を低減して効率ドループを大幅に低減できる。
【0055】
さらに、埋込半導体層19は活性層16よりもバンドギャップの大きい材料で構成されているため、ITO等で柱状半導体層に対して電流注入を行う場合と比較して、埋込半導体層19での光吸収を著しく低下させることができる。これにより、活性層16で生じた光の半導体発光素子10内部での吸収を抑制し、半導体発光素子10外部に光を取り出す外部量子効率を向上させることが可能となる。
【0056】
以上に述べたように、本実施形態の半導体発光素子10およびその製造方法では、n型ナノワイヤ層14に接して内側表面保護層15が設けられており、内側表面保護層15はAlを含む窒化物半導体材料で構成されるため、n型ナノワイヤ層14中に生じた点欠陥が活性層16に伝搬することを抑制し、活性層16の結晶品質向上と外部量子効率の向上を図ることができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図4を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図4は、第2実施形態に係る半導体発光素子30の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。本実施形態では、n型ナノワイヤ層14をGaNで構成する代わりに、内側表面保護層35をナノワイヤ形状に形成する点が第1実施形態と異なっている。
【0058】
図4に示すように、本実施形態の半導体発光素子30は、成長基板11と、下地層12と、マスク13と、内側表面保護層35と、活性層16と、p型半導体層17と、トンネル接合層18と、埋込半導体層19とを備えている。本実施形態では、活性層16が内側表面保護層35の外周に形成されており、活性層16よりも外周にp型半導体層17が形成され、p型半導体層17よりも外周にトンネル接合層18が形成されて柱形状とされており、柱状半導体層を構成している。
【0059】
内側表面保護層35は、マスク13の開口部から露出した下地層12上に選択成長された柱状の半導体層であり、n型不純物がドープされたAlを含む窒化物半導体材料から構成されている。内側表面保護層35には、少なくともAlが含まれており、Alの組成比は、最大0.06mol%以下の範囲が好ましい。
【0060】
内側表面保護層35の形成では、第1実施形態の
図2(b)に示したナノワイヤ成長工程に代えて、マスク13の開口部から露出した下地層12上にAlGaNを選択成長する。内側表面保護層35の成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMG、TMAおよびアンモニアを用い、成長温度が1050℃、V/III比が20、水素をキャリアガスとして圧力100hPaである。
【0061】
本実施形態の半導体発光素子30では、n型ナノワイヤ層14の代わりに内側表面保護層35がAlを含む窒化物半導体材料で構成されている。しかし、ナノワイヤ形状の内側表面保護層35によって、マスク13の開口部から下地層12上に半導体層を選択成長する際に生じる点欠陥が活性層16にまで伝搬することが抑制され、活性層16の高品質化と外部量子効率の向上を図ることができる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、第3実施形態に係る半導体発光素子40の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。本実施形態では、内側表面保護層45がn型ナノワイヤ層14の底部に設けられている点が第1実施形態と異なっている。
【0063】
図5に示すように、本実施形態の半導体発光素子40は、成長基板11と、下地層12と、マスク13と、内側表面保護層45と、n型ナノワイヤ層14と、活性層16と、p型半導体層17と、トンネル接合層18と、埋込半導体層19とを備えている。本実施形態では、内側表面保護層45がn型ナノワイヤ層14の底部に形成されてn型ナノワイヤ層14と接触しており、n型ナノワイヤ層14よりも外周に活性層16が形成され、活性層16よりも外周にp型半導体層17が形成され、p型半導体層17よりも外周にトンネル接合層18が形成されて柱形状とされており、柱状半導体層を構成している。
【0064】
内側表面保護層45は、マスク13の開口部から露出した下地層12上に選択成長された半導体層であり、n型不純物がドープされたAl含む窒化物半導体材料から構成されている。内側表面保護層35に含まれるAlの組成比は、0より多く、0.06以下の範囲が好ましい。また、内側表面保護層45の膜厚は、1nm以上100nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1nm以上5nm以下の範囲である。
【0065】
内側表面保護層45の形成では、第1実施形態の
図2(b)に示したナノワイヤ成長工程の初期段階において、マスク13の開口部から露出した下地層12上にAlGaNを選択成長する。内側表面保護層45の成長条件としては、例えば原料ガスとしてTMG、TMAおよびアンモニアを用い、成長温度が1050℃、V/III比が20、水素をキャリアガスとして圧力100hPaである。
【0066】
内側表面保護層45を形成した後に、原料ガスであるTMAの供給を停止しTMGとアンモニアの供給を継続することで、内側表面保護層45上に第1実施形態と同様にGaNからなるn型ナノワイヤ層14を柱状に形成することができる。
【0067】
本実施形態の半導体発光素子40では、内側表面保護層45はn型ナノワイヤ層14と接触しており、内側表面保護層45が下地層12とn型ナノワイヤ層14の間に設けられている。したがって、下地層12上に内側表面保護層45は、Alを含む窒化物半導体材料で構成されているため選択成長時に生じる点欠陥が抑制され、n型ナノワイヤ層14および活性層16にまで伝搬する欠陥を低減し、活性層16の結晶品質向上と外部量子効率の向上を図ることができる。
【0068】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、第4実施形態に係る半導体発光素子50の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。本実施形態では、活性層16の内側に内側表面保護層15を設けることに加えて、活性層16の外周に外側表面保護55が形成されている点が第1実施形態と異なっている。
【0069】
図6に示すように、本実施形態の半導体発光素子50は、成長基板11と、下地層12と、マスク13と、n型ナノワイヤ層14と、内側表面保護層15と、活性層16と、外側表面保護層55と、p型半導体層17と、トンネル接合層18と、埋込半導体層19とを備えている。本実施形態では、n型ナノワイヤ層14よりも外周に内側表面保護層15が形成され、内側表面保護層15より外周に活性層16が形成され、活性層16よりも外周に外側表面保護層55が形成され、外側表面保護層55より外周にp型半導体層17が形成され、p型半導体層17よりも外周にトンネル接合層18が形成されて柱形状とされており、柱状半導体層を構成している。
【0070】
外側表面保護層55は、活性層16の側面および上面に接して外周を覆って形成された半導体層であり、Alを含む窒化物半導体材料で構成されている。外側表面保護層55にAlが微量に含まれていると、Alを含まないGaNよりも熱安定性が高くなる。これにより、後工程において比較的高温でp型半導体層17を結晶成長する際に、外側表面保護層55より内側に比較的低温で結晶成長された活性層16を保護し、マストランスポートによる変形や井戸層に含まれるInの拡散を抑制することができる。
【0071】
外側表面保護層55に含まれるAlの組成比は、0より多く、0.06以下の範囲が好ましい。また、外側表面保護層55の膜厚は、1nm以上30nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1nm以上5nm以下の範囲である。外側表面保護層55はノンドープで形成してもよく、Mg等のp型不純物をドープして形成してもよい。
図6に示したように、本実施形態では活性層16の内側と外側に内側表面保護層15と外側表面保護層55とを設けているので、活性層16に非対称な歪が加わらないように、内側表面保護層15と外側表面保護層55の組成比や膜厚を同程度とすることが好ましい。
【0072】
本実施形態の半導体発光素子50でも、n型ナノワイヤ層14に接して外側表面保護層15が設けられており、外側表面保護層15はAlを含む窒化物半導体材料で構成されるため、n型ナノワイヤ層14中に生じた点欠陥が活性層16に伝搬することを抑制し、活性層16の結晶品質向上と外部量子効率の向上を図ることができる。
【0073】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図7は、第5実施形態に係る半導体発光素子60の柱状半導体層部分の構造を拡大して示す模式図である。本実施形態では、活性層16の内側に内側表面保護層15を設けることに加えて、トンネル接合層18の外周に外側表面保護層65が形成されている点が第1実施形態と異なっている。
【0074】
図7に示すように、本実施形態の半導体発光素子60は、成長基板11と、下地層12と、マスク13と、n型ナノワイヤ層14と、内側表面保護層15と、活性層16と、p型半導体層17と、トンネル接合層18と、外側表面保護層65と、埋込半導体層19とを備えている。本実施形態では、n型ナノワイヤ層14よりも外周に内側表面保護層15が形成され、内側表面保護層15より外周に活性層16が形成され、活性層16よりも外周にp型半導体層17が形成され、p型半導体層17よりも外周にトンネル接合層18が形成され、トンネル接合層18よりも外周に外側表面保護層65が形成されて柱形状とされており、柱状半導体層を構成している。
【0075】
外側表面保護層65は、トンネル接合層18の側面および上面に接して外周を覆って形成された半導体層であり、Alを含む窒化物半導体材料で構成されている。外側表面保護層65にAlが微量に含まれていると、Alを含まないGaNよりも熱安定性が高くなる。これにより、後工程において比較的高温で埋込半導体層19を結晶成長する際に、外側表面保護層65より内側に結晶成長された活性層16、p型半導体層17およびトンネル接合層18を保護し、p型半導体層17にドープされたMg等のp型不純物が埋込半導体層19に拡散することを抑制することができる。
【0076】
外側表面保護層65に含まれるAlの組成比は、Alを含み0.06以下の範囲が好ましい。また、外側表面保護層65の膜厚は、1nm以上30nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1nm以上5nm以下の範囲である。外側表面保護層65はノンドープで形成してもよく、Si等のn型不純物をドープして形成してもよい。
【0077】
本実施形態の半導体発光素子60でも、n型ナノワイヤ層14に接して内側表面保護層15が設けられており、内側表面保護層15はAlを含む窒化物半導体材料で構成されるため、n型ナノワイヤ層14中に生じた点欠陥が活性層16に伝搬することを抑制し、活性層16の結晶品質向上と外部量子効率の向上を図ることができる。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10,30,40,50,60…半導体発光素子
11…成長基板
12…下地層
13…マスク
14…n型ナノワイヤ層
15,35,45…内側表面保護層
16…活性層
17…p型半導体層
18…トンネル接合層
19…埋込半導体層
20,21…カソード電極
22,23…アノード電極
55,65…外側表面保護