(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】没食子酸エピガロカテキンとチロシンキナーゼ阻害剤との併用の、癌治療薬の製造への用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20230825BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230825BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20230825BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230825BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K31/5377
A61K38/18
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021566331
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2019085776
(87)【国際公開番号】W WO2020223888
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521487225
【氏名又は名称】雲南大葉帝紅生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】YUNNAN DAYE DIHONG BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】C-200, Building 6, Yunnan Agricultural University, Panlong District Kunming, Yunnan 650201 (CN)
(73)【特許権者】
【識別番号】521487236
【氏名又は名称】雲南農業大学
【氏名又は名称原語表記】YUNNAN AGRICULTURAL UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Project Center 806, Yunnan Agricultural University,Panlong District Kunming, Yunnan 650201 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】盛軍
(72)【発明者】
【氏名】王宣軍
(72)【発明者】
【氏名】黄艶苹
(72)【発明者】
【氏名】字成庭
(72)【発明者】
【氏名】向澤敏
(72)【発明者】
【氏名】黄業偉
(72)【発明者】
【氏名】趙雲麗
(72)【発明者】
【氏名】爨向丹
(72)【発明者】
【氏名】徐歓歓
(72)【発明者】
【氏名】羅瑞
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108467418(CN,A)
【文献】国際公開第2006/057154(WO,A1)
【文献】Cancer Sci,2011年,Vol.102, No.2, pp.317-323
【文献】ONCOLOGY REPORTS,2012年,Vol.27,pp.1799-1807
【文献】Drugs R D,2017年,Vol.17,pp.545-555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療薬の製造における没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、EGF及びチロシンキナーゼ阻害剤の使用であって、前記チロシンキナーゼ阻害剤は、ゲフィチニブ(Gefitinib)であり
、前記癌は、EGFR野生型腫瘍である、使用。
【請求項2】
癌治療用医薬組成物であって、請求項1に記載の有効量の没食子酸エピガロカテキン(EGCG)、EGF及びチロシンキナーゼ阻害剤の組み合わせを含み、前記チロシンキナーゼ阻害剤は、ゲフィチニブ(Gefitinib)であり、前記癌は、EGFR野生型腫瘍である、癌治療用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬技術分野に関し、具体的には抗癌組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼ受容体(TKR)上皮成長因子受容体(EGFR)は、懸濁細胞以外の各類の細胞膜上で広く発現している。EGFRタンパク質の過剰活性化は、腫瘍形成、進行、悪性度及び予後とは非常に密接な関係を有し、腫瘍細胞増殖を引き起こし、腫瘍組織の血管形成及び腫瘍細胞の転移を促進することができる。EGFRは、ヒト腫瘍の標的療法における主要な標的の1つである。チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、標的治療薬の開発の主要な分野である。野生型EGFR腫瘍に対して開発されたゲフィチニブ(Gefitinib)は、第1世代のTKI型EGFR阻害剤である。市販後にGefiitnibは、EGFRが高度に活性化された患者に対して顕著な効果がないことが臨床的に発見した。検討によれば、Gefitinbの、L858R突然変異が発生したEGFRに対する親和性は、野生型EGFRに対する親和性の5-6倍であり、該突然変異を有する患者に対する有効率が高くて80%以上であり、これらの腫瘍患者に対する特効薬となることが発見した。EGFRL858Rを有する患者は、全ての腫瘍患者の6%のみを占めるが、総数の60%以上のEGFR野生型患者に対して、臨床的に利用可能な、有効なTKI類阻害剤がない。従って、野生型EGFRに対して新たな治療策を開発することは、重要な意義を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在まで、野生型EGFRの腫瘍患者に対して有効な阻害剤がないという背景技術に存在する問題を克服するために、本発明は、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)及びEGCGをリード化合物として部分的または全体的に設計合成された化合物と1種又は複数種のチロシンキナーゼ阻害剤との併用による治療方法を提供する。両者を併用することによって、野生型EGFRの、従来のチロシンキナーゼ阻害剤に対する感受性を向上させ、従来の阻害剤の適用範囲を広くし、EGFR野生型癌患者のために、有効な治療策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記技術的解決手段により実現される。
没食子酸エピガロカテキン(EGCG)とチロシンキナーゼ阻害剤との併用の、癌治療薬の製造への用途である。前記没食子酸エピガロカテキンは、EGCGと、EGCGをリード化合物として部分的または全体的に設計合成された化合物と、を含み、前記チロシンキナーゼ阻害剤は、1種又は複数種のチロシンキナーゼ阻害剤の組み合わせを含む。
好ましくは、前記癌は、野生型EGFRを発現する腫瘍である。
具体的に好ましくは、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)とゲフィチニブ(Gefitinib)との併用の、EGFR野生型腫瘍治療薬の製造への用途である。
癌を治療する医薬組成物であって、有効量の没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と1種又は複数種のチロシンキナーゼ阻害剤の組み合わせを含むか、又は、EGCGをリード化合物として部分的または全体的に設計合成された化合物と1種又は複数種のチロシンキナーゼ阻害剤の組み合わせを含む。
好ましくは、前記医薬組成物の、EGFR野生型腫瘍治療薬の製造及びEGFR野生型腫瘍の治療への用途である。
具体的に好ましくは、癌を治療する医薬組成物は、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)と、ゲフィチニブ(Gefitinib)と、を含む。EGFR野生型腫瘍に対する薬物を製造する時、化合物の使用量は、投与経路、患者の年齢、体重、治療される疾患のタイプ及び重症度などに応じて調整されてもよい。gefitinibの用量は、0.1-5mg/kg体重であり、EGCGの用量は、0.1-8mg/kg体重である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
本発明は、EGCG及びEGCGをリード化合物として部分的または全体的に設計合成された化合物とチロシンキナーゼ阻害剤の併用を開示し、特に、EGCGとGefitinibとの併用により製造された医薬組成物は、EGFR野生型腫瘍患者の治療に用いることができ、体外では、腫瘍細胞の成長を著しく阻害することが見られ、体内では、EGFR野生型腫瘍細胞の異種移植による腫瘍の体積の増大を阻害することができ、両者の併用により、用量が大きい抗癌薬による治療リスク及び毒性副作用を減少させる。
本発明は、EGFR野生型腫瘍患者のために有効な治療策を提供するだけでなく、従来のチロシンキナーゼ阻害剤の適用範囲も拡張する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】EGCGとGefitinibの併用の、EGFR野生型及び突然変異型細胞増殖に対する影響を示す。
【
図2】EGCGとGefitinibの併用の、EGFR野生型及び突然変異型細胞中のEGFRシグナルパスウェイにおける関連タンパク質に対する影響を示す。
【
図3】EGCGとGefitinibの併用の、A431担癌マウスの体重に対する影響を示す。
【
図4】EGCGとGefitinibの併用の、A431移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍成長に対する影響を示す直観図である。
【
図5】EGCGとGefitinibの併用の、A431移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍体積に対する影響(移植腫瘍成長曲線)を示す。
【
図6】EGCGとGefitinibの併用の、A431移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍重量に対する影響を示す。
【
図7】EGCGとGefitinibの併用の、NCI-H1975担癌マウスの体重に対する影響を示す。
【
図8】EGCGとGefitinibの併用の、NCI-H1975移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍成長に対する影響を示す直観図である。
【
図9】EGCGとGefitinibの併用の、NCI-H1975移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍体積に対する影響(移植腫瘍成長極性)を示す。
【
図10】EGCGとGefitinibの併用の、NCI-H1975移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍重量に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下では、本発明の好適な実施例を詳しく説明し、当業者に理解させる。
本発明は、EGFR野生型であって高度に発現された細胞株及びEGFR二重突然変異の細胞株を検討対象として選択し、主に、EGFRの第1世代の阻害剤gefitinibとEGCGの併用の、EGFR野生型腫瘍細胞増殖に対する阻害作用及び異種移植されたヌードマウスの腫瘍成長に対する阻害作用を検討し、且つ該効果の作用メカニズムを説明する。
【0008】
実施例1 EGCGとGefitinibの併用の、EGFR野生型及び突然変異型細胞の体外での増殖効果に対する影響
1.実験材料
細胞株:ヒト扁平上皮細胞癌A431、ヒト肺癌細胞株NCI-H1666、NCI-H1975。
2.検出原理:MTT法による細胞活性の検出
MTTにより細胞の活性を検出する実験:MTTの濃度は、5mg/mlである。従って、MTT 0.5グラムを秤量し、100mlのリン酸緩衝液(PBS)又はフェノールレッドフリー培地に溶解し、0.22μmろ過膜によりろ過を行い、溶液中の細菌を除去し、調製を完了した後に、分注して4℃で暗所に保存した。容器は、好ましくは、アルミ箔で包まれる。
試験ステップ:Aにおいて、付着細胞操作方法を用いて、まず、対数期細胞を収集して細胞懸濁液の濃度を調整し、被験細胞の密度を3×10
4/ウェルに調整し、各ウェルに200μlを添加する(周囲ウェルは、無菌PBSで満たされる)。それと同時に、ゼロ調節ウェル(ジメチルスルホキシド)、対照ウェル(細胞、同一の濃度の薬物溶解媒体(酸性培地)、MTT、ジメチルスルホキシド)を設置して5%CO
2、37℃のインキュベータで培養する。
Bにおいて、細胞付着後に、細胞単層がウェル底部(96ウェルの平底プレート)で集密になることが見られ、まず、PBSを用いて細胞を洗浄し、PBSを捨て、薬物を添加し、1ウェル当たり200μlに応じて、4-6個の二重ウェルを設置する。そうしなければ、真実の状況を反映しにくい。処理を完了した後に、周囲ウェルは、同様に、酸性培地で満たされる。サンプルの揮発を防止する。
Cにおいて、5%CO
2を用いて37℃で24時間インキュベーションし、倒立顕微鏡下で細胞状態を観察する。
Dにおいて、各ウェルに20μlのMTT溶液(5mg/ml、即ち0.5%MTT)を添加し、引き続き4h培養する。薬物とMTTが反応できると、遠心分離した後に培養液を廃棄し、PBSで注意深く一回洗浄した後に、MTTを含む培養液を添加する。
Eにおいて、培養を中止し、ウェル内の培養液を注意深く抽出する。
Fにおいて、各ウェルに150μlのジメチルスルホキシドを添加し、シェーカーに置いて10min低速振とうし、結晶物を十分に溶解させる。酵素結合免疫測定装置OD490nmで各ウェルの吸光度を測定する。630nmは、参照部で検出された吸光度値(OD値)である。
Gにおいて、細胞活性演算式は、活性=実験群のOD平均値-コントロール群のOD平均値/1)X100%であり、これにより得られたデータを用いて、excelにおいて棒グラフを求める。
3.実験の結果
結果は
図1に示すとおりである。Gefitinib単独処理群は、A431細胞の生存率に対して影響がなく、NCI-H1666細胞に対して著しい阻害効果を果たすが、予想通りに、GefitinibとEGFの併用処理群及びGefitinibとEGCGの併用処理群は、2つの野生型EGFRの細胞株の成長に対して著しい阻害効果を果たしていない。しかしながら、GefitinibにEGCG、EGFが同時に存在する場合、EGFR野生型細胞の成長を著しく阻害することができ、二重突然変異型NCI-H1975細胞に対して効果を果たしない。このような併用により細胞を処理する方式は、細胞の成長に対して選択的な阻害効果を果たし、野生型EGFRの細胞A431及びNCI-H1666に対して非常に明らかな阻害効果を示すが、二重突然変異型NCI-H1975細胞に対して効果がないことを示す。
【0009】
実施例2 EGCG、EGFが同時に存在する場合、Gefitinibの、野生型及び突然変異型細胞中のEGFRシグナルパスウェイにおける関連蛋白質リン酸化に対する影響
1.実験材料
細胞株:ヒト扁平上皮細胞癌A431、ヒト肺癌細胞株NCI-H1975。
2.検出原理:Western Blotによる細胞中の関連タンパク質の変動状況の検出
3.実験方法:aにおいて、細胞を処理し、細胞が付着した後に、飢餓処理を行い、一晩処理した後に、EGCG、EGFの処理を行う。具体的な実験群に応じて実験を行い、コントロール対照群に直接的に酸性培地を添加し、残りの実験群に10mLの酸性培地を添加し、EGCGの最終濃度を20μg/mLにし、EGF母液を20ng/mLに希釈した後に、酸性培地に添加し、薬物を添加した後に、細胞培養インキュベーターに置き、実験群に応じて対応する処理時間を設定する。
bにおいてタンパク質抽出。
cにおいて、タンパク質定量化。タンパク質測定原理としてBCAタンパク質定量化方法を用いる。
dにおいて、SDS-PAGE原理は、異なるタンパク質が所持する電荷量によって異なる。電界強度により、分子量が異なるタンパク質を分離する。続いて、分離したタンパク質をPVDF膜に移転し、非共有結合の形式により、タンパク質を吸着する。これは、タンパク質ポリペプチドの生物学的活性を破壊することがない。続いて、膜に移転したタンパク質を抗原として、対応する抗体と抗原を一晩又は室温で2時間結合させる。続いて、HRPで標識されている第2抗体と室温で1時間結合し、基質で発色させることにより、標的タンパク質の発現を検出することができる。
4.実験の結果
結果は
図2に示すとおりである。野生型EGFRA431細胞にEGCG及びEGFが同時に存在する場合、Gefitinibは、EGFRファミリー及びその下流タンパク質ERKのリン酸化を著しく阻害することができる。しかしながら、二重突然変異型EGFR NCI-H1975細胞においてこのような結果が見られていない。細胞生存率実験と一致した実験の結果を示す。
【0010】
実施例3 EGCG とGefitinibの併用の、EGFR野生型AA431細胞癌異種移植腫瘍モデルにおける腫瘍に対する阻害作用
1.実験材料
A431細胞及び培養。ヒト扁平上皮細胞癌A431を、10%FBSを含むDMEM高グルコース完全培地で培養し、細胞を1mLの培養液当たりに2×10
6個の細胞となるように希釈する。培養皿に接種する。細胞培養インキュベーターに置いて培養する。対数成長期の細胞を取り、0.5%パンクレアチン溶液を用いて消化を行い、単細胞懸濁液を製造し、15000rpmで3min遠心分離し、上澄みを廃棄し、PBSを用いて細胞密度を5×10
6/mLに調整する。
ヌードマウス及びその飼育。オスのBALB/C nu/nuクリーン級のマウスであり、6-8週齢であり、江蘇省常州市カーベンス実験動物有限公司により提供した。ヌードマウスを滅菌通気型密閉した動物飼育室に飼育し、温度を25℃とし、昼間中に定時的に光照射を行い、夜では黒い環境とし、餌および飲水は自由摂取とする。ヌードマウス用ケージ及び水を高温、高圧で滅菌する。ヌードマウスのために、清浄なケージ、トイレ砂及び飲用水などを交換し、ヌードマウスの成長環境の清潔を保持する。
2.実験方法
aにおいて、ヌードマウス移植腫瘍モデルを確立する。細胞を蘇生し、継代し、細胞状態を調整し、1週間後に細胞の成長環境は、安定していく傾向がある。細胞に対して消化、計数を行った後、生細胞数密度を、200μLの懸濁液当たりに5×10
6個の細胞を含有するように調整して使用に備える。続いて、1500gを3min遠心分離する。培地を抽出して除去した後、生理食塩水を用いて均一に吹き、細胞懸濁液を製造して使用に備える。無菌スーパークリーンベンチ内で、ヌードマウスを体重の平均値が一致したという原則に応じてグルーピングし、耳部を切って標識する。各ヌードマウスの背部に200μLの細胞懸濁液(約5×10
6個の細胞)を皮下注射する。1日おきにノギスにて腫瘍の長径(Dmax)と短径(Dmin)を測定し、腫瘍の体積V(V= Dmax × Dmin
2/2)を算出する。
bにおいて、動物のグルーピング及び薬物投与を行う。下記グルーピングされたヌードマウスに応じて薬物投与を行う。(1)コントロール対照群:1週間に6日、1日に1回、生理食塩水を腹腔内注射し、1%-Tween 80を含有する生理食塩水を胃内投与する。(2)ゲフィチニブ群:50mg/kgの用量に応じて胃内投与する(1週間に2回)。(3)EGCG群:1週間に6日、1日に1回腹腔内注射し、用量がそれぞれ20mg/kg又は40mg/kgである。(4)併用投与群に対して、1週間に6日(1日に1回)、用量がそれぞれ20mg/kg又は40mg/kgであり、腹腔内注射方式で投与する。Gefitinibを1週間に2回、50mg/kgの投与量に応じて投与し、実験を行う。投与する前に、腫瘍の体積を1週間に3回測定する。また、ヌードマウスの体重を測定し、1週間に1回の頻度に応じて実行し、実験に対して記録を行う。投与完了後に、ヌードマウスを屠殺し、腫瘍塊を取り出し、写真を撮る。後続の実験設定に応じて固形腫瘍を保存する。
3.実験の結果
図3に示すように、正常対照群の動物に比べて、各群に明らかな体重低下の現象が発生していない。しかしながら、EGCG単独処理群において、薬物を3週間投与した後に、ヌードマウスの体重の増加が促進され、対照群に比べて、著しい変動が発生した。各群の薬物は、動物に対して明らかな毒性副作用がない。薬物投与が完了した後に、ヌードマウスの腫瘍を取り出す。
図4に示すように、併用の、腫瘍成長に対する影響を示す。1日おきに、ヌードマウス移植腫瘍を測定することによって、腫瘍成長曲線を描く。
図5に示すように、Gefitinib併用群は、Gefitinib単独処理群に比べて、29回目の腫瘍体積の測定から、腫瘍体積の成長を著しく阻害する。従来の実験の結果と一致したように、Gefitinibの体外での選択性は、体内での実験における選択性よりもはるかに高い。本実験において、同様に、Gefitinibの、ヌードマウスの腫瘍成長に対して良好な阻害効果を果たすことが得られる。EGCGと併用した後、非常に明らかな阻害効果を示し、ほぼ腫瘍の成長を完全に阻害する。取り出された腫瘍を秤量する。結果は
図6に示すとおりである。Gefitinib単独処理群は、コントロール対照群に比べて、腫瘍阻害率が52%であり、Gefitinib併用群とGefitinib単独処理群は、固形腫瘍に対する阻害率がそれぞれ69%、81%である。統計学的には差異がないが、併用群は、単独使用に比べて、腫瘍の成長を一定の程度阻害した。実験プロセス全体において、死んだ動物がいなかった。
【0011】
実施例4 EGCGとGefitinibの併用の、EGFR二重突然変異型NCI-H1975細胞癌異種移植腫瘍モデルにおけう腫瘍に対する阻害作用
1.実験材料
NCI-H1975細胞及び培養。ヒト非小細胞肺癌NCI-H1975を、10%FBSを含有するDMEM1640完全培地で培養し、細胞を2×106/mLに希釈する。培養皿に接種する。細胞培養インキュベーターに置いて培養する。対数成長期の細胞を取り、0.5%パンクレアチン溶液を用いて消化を行い、単細胞懸濁液を製造し、15000rpmで3min遠心分離し、上澄みを廃棄し、PBSを用いて細胞密度を5×106 /mLに調整する。
ヌードマウス及びその飼育。オスのBALB/C nu/nuクリーン級のマウスであり、6-8週齢であり、江蘇省常州市カーベンス実験動物有限公司により提供した。ヌードマウスを滅菌通気型密閉した動物飼育室に飼育し、温度を25℃とし、昼間中に定時的に光照射を行い、夜では黒い環境とし、餌および飲水は自由摂取とする。ヌードマウス用ケージ及び水を高温、高圧で滅菌する。ヌードマウスのために、清浄なケージ、トイレ砂及び飲用水などを交換し、ヌードマウスの成長のための環境の清潔を保持する。
2.実験方法
aにおいて、ヌードマウス移植腫瘍モデルを確立する。細胞を蘇生し、継代し、細胞状態を調整し、1週間後に細胞の成長環境は、安定していく傾向がある。細胞に対して消化、計数を行った後、生細胞数密度を、200μLの懸濁液当たりに3×106個の細胞を含有するように調整して使用に備える。続いて、1500gを3min遠心分離する。培地を抽出して除去した後、生理食塩水を用いて均一に吹き、細胞懸濁液を製造する。無菌スーパークリーンベンチ内で、ヌードマウスを体重の平均値が一致したという原則に応じてグルーピングし、耳部を切って標識する。各ヌードマウスの背部で200μLの細胞懸濁液(約3×106個の細胞)を皮下注射する。1日おきにノギスにて腫瘍の長径(Dmax)と短径(Dmin)を測定し、腫瘍の体積V(V= Dmax × Dmin2/2)を算出する。
bにおいて、動物のグルーピング及び薬物投与を行う。腫瘍細胞接種後翌日から、グルーピングされたヌードマウスに応じて薬物投与を行う。コントロール対照群:1週間に6日、毎日、生理食塩水を腹腔内注射し、1%-Tween 80を含有する生理食塩水を胃内投与する。Gefitinibを1% Tween-80に溶解して懸濁液を製造する。(2)Gefitinibを1週間に2回胃内投与する。50mg/kg又は100mg/kgのGefitinibを投与する。(3)EGCG群に対して、1週間に6日、1日に1回の頻度に応じて投与し、腹腔内注射の用量がEGCG 40mg/kgである。(4)併用投与群に対して、1週間に6日、1日に1回のEGCG 40mg/kg及び1週間に2回のGefitinib 50mg/kg又は100 mg/kgの用量に応じて投与する。腫瘍体積の測定頻度は1日おきに行うことであり、ヌードマウスの体重を2日おきに1回秤量し、記録する。投与完了した後に、ヌードマウスを屠殺し、腫瘍塊を取り出し、写真を撮る。後続の実験設定に応じて固形腫瘍を保存する。モデリング実験において、6-8週齢のヌードマウスを選択し、6個の群に分け、各群に5-6匹があり、とし、減菌餌で飼育する。
【0012】
3実験の結果
腫瘍細胞注射完了後翌日に、投与を開始する。投与期間において、3日おきにヌードマウスの体重を測定し、結果は、
図7に示すとおりである。各群の薬物の、NCI-H1975担癌マウスの体重に対する影響に差別がなく、プロセス全体において、薬物によるヌードマウスの死亡が発生しなかった。薬物がヌードマウスに対して毒性副作用がないことを示す。各群の薬物の、NCI-H1975担癌マウスの腫瘍成長に対する阻害作用は、
図8に示すとおりである。図面から分かるように、GefitinibとEGCGを併用した後、NCI-H1975担癌ヌードマウスの腫瘍成長が阻害されず、各群における腫瘍の成長に差異がない。結果から分かるように、このような併用は、EGFR二重突然変異型細胞NCI-H1975移植腫瘍に対して効果がない。更に、このような併用がEGFR野生型腫瘍に対して阻害作用があることを証明した。1日おきに移植腫瘍ヌードマウスの腫瘍体積を測定することによって、腫瘍成長曲線を描く。結果は
図9に示すとおりである。併用は、NCI-H1975細胞移植腫瘍の腫瘍体積に対して影響がない。剥離した腫瘍の重量を秤量する。結果は、
図10に示すとおりである。併用は、EGFR二重突然変異型1975細胞の移植腫瘍の腫瘍重量に対して影響がない。
【0013】
本発明において、EGFR野生型であって高度に発現された扁平上皮細胞株及びEGFR二重突然変異型肺癌細胞株を対照として、一連の細胞実験(MTT:Western-blotting)を行うことによって、gefitinibとEGCG及びその誘導体の併用後に、EGFR野生型腫瘍に対して非常に明らかな阻害作用を示すが、EGFR二重突然変異型非小細胞肺癌に効果がないことを証明した。このような併用が選択性を有することを表す。
【0014】
体内での実験によれば、gefitinibとEGCGの併用は、EGFR野生型腫瘍細胞移植腫瘍の成長を著しく阻害することができ、有機体の体重に明らかな影響を与えず、このような併用は、明らかな毒性副作用がないことを更に証明した。
要するに、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)とEGFR阻害剤gefitinibの併用は、EGFR野生型腫瘍細胞の成長を著しく阻害することができ、且つ有機体に対して損傷を与えることなく、両者の併用により、用量が大きい抗癌薬による治療のリスク及び毒性副作用を減少させる。本発明は、EGFR野生型癌患者のために、有効な治療策を提供し、従来の阻害剤の感受性を向上させ、従来の阻害剤の適用範囲を拡張した。
EGFR野生型肺癌に対する薬物を製造する場合、化合物の用量は、投与経路、患者の年齢、体重、治療される疾患のタイプ及び重症度などに応じて調整されてもよい。gefitinibの用量は、0.1-5mg/kg体重であり、EGCGの用量は、0.1-8mg/kg体重である。
【0015】
最後に説明しておきたいこととして、上記好適な実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものだけであり、これを限定するものではない。上記好適な実施例を参照しながら本発明を詳しく説明したが、形式及び細部に対して種々の変更を行うことができ、これらはいずれも本発明の特許請求の範囲によって限定される範囲に含まれることは、当業者であれば理解されるべきである。