(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】腫瘍を治療するためのコクサッキーウイルスB群
(51)【国際特許分類】
A61K 35/768 20150101AFI20230825BHJP
C12N 15/41 20060101ALI20230825BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230825BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230825BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20230825BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20230825BHJP
A61K 35/765 20150101ALI20230825BHJP
A61K 35/766 20150101ALI20230825BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/4164 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/24 20060101ALI20230825BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230825BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230825BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230825BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
A61K35/768
C12N15/41 ZNA
C12N7/01
A61K31/7105
A61K45/00
A61K35/763
A61K35/761
A61K35/765
A61K35/766
A61K39/395 T
A61K31/513
A61K31/407
A61K31/519
A61K31/675
A61K31/4164
A61K31/704
A61K31/7048
A61K31/337
A61K31/17
A61K31/136
A61K31/282
A61K31/24
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/113 Z
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2020557325
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2019082608
(87)【国際公開番号】W WO2019201192
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】201810338046.2
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519326323
【氏名又は名称】シァメン・ユニヴァーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】517173983
【氏名又は名称】ヤン シェン ターン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】チェン、トン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】イェ、シャンツォン
(72)【発明者】
【氏名】フ、ウェンクン
(72)【発明者】
【氏名】パン、デクァン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シア、ニンシャオ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0085411(US,A1)
【文献】国際公開第2014/171526(WO,A1)
【文献】特表2016-500108(JP,A)
【文献】特表2014-502970(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103429258(CN,A)
【文献】特表2017-524693(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106999577(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103981152(CN,A)
【文献】Virology,1997年,Vol. 239, No. 10,p. 71-77
【文献】Molecular Therapy,2009年,Vol. 17, No. 3,p. 409-416
【文献】Oncoimmunology,2016年,Vol. 5, No. 10,e1220467,doi: 10.1080/2162402X.2016.1220467
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/768
C12N 15/41
C12N 7/01
A61P 35/00
C12N 15/113
C12N 15/63
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型コクサッキーウイルスB群1型(CVB1)若しくは改変
CVB1又は核酸分子を含む、被験体における腫瘍を治療するための医薬組成物であって、前記核酸分子は、以下:
(1)前記
野生型CVB1又は改変
CVB1のゲノム配列又はcDNA配列と、
(2)前記ゲノム配列又は前記cDNA配列の相補的配列と、
から選択される配列を含
み、
前記野生型CVB1は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列を有する、及び/又は、配列番号1に示されるcDNA配列を有する;
前記改変CVB1のゲノムは、野生型CVB1のゲノムと比較して、以下の;
(1)5’非翻訳領域(5’UTR)における内部リボソーム進入部位(IRES)配列の外因性IRES配列との置換;
(2)サイトカインをコードする核酸配列、抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチドをコードする核酸配列、又はマイクロRNAの標的配列から選択される外因性核酸の挿入;
から選択される1以上の改変を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記外因性IRES配列が、ヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列である、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
以下の特徴:
(1)前記サイトカインがGM-CSFであること;
(2)前記抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチドがPD-1又はPD-L1に対するscFvであること;
(3)前記マイクロRNAが、miR-133及びmiR-206から選択されること;
の1つ以上によって特徴づけられる、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記改変CVB1は、以下の特徴:
(1)前記改変CVB
1は、以下:配列番号13~配列番号16の
いずれか1つに示される
ゲノム配列を有すること、
(2)前記改変CVB
1は、以下:配列番号8~配列番号11の
いずれか1つに示されるcDNA配列を有すること、
の1つを有する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
以下の特徴:
(1)前記核酸分子は、前記
野生型CVB1又は改変
CVB1のゲノム配列からなること、又は
(2)前記核酸分子は、前記
野生型CVB1若しくは改変
CVB1のcDNA配列、又は前記cDNA配列の相補的配列を含むベクターであること、
の1つによって特徴づけられる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記核酸分子は、配列番号12~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を有するか、又は、配列番号1、配列番号8~配列番号11のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列もしくはその相補的配列を含むベクターである、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記
野生型CVB1若しくは改変
CVB1又は前記核酸分子が、抗腫瘍活性を有する追加の薬学的活性剤と組み合わせて投与される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記追加の薬学的活性剤は、追加の腫瘍溶解性ウイルス、化学療法剤又は免疫療法剤から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記追加の薬学的活性剤は、以下の:
(1)前記追加の腫瘍溶解性ウイルスは、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されること;
(2)前記化学療法剤は、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、シクロホスファミド、ダカルバジン、ミトキサントロン、アントラサイクリン類、エトポシド、白金化合物、タキサン類又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されること;
(3)前記免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍特異的標的化抗体又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されること;
の1つ以上によって特徴づけられる、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
以下の特徴:
(1)前記腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌からなる群から選択されること、
(2)前記被験体は、ヒトであること、
の少なくとも1つを有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
野生型CVB1と比較して、5’UTRの内部リボソーム進入部位(IRES)配列がヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列と置き換えられている、改変CVB1
であって、
前記野生型CVB1は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列を有する、及び/又は、配列番号1に示されるcDNA配列を有する、改変CVB1。
【請求項12】
前記ヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列
が、配列番号2に示されてい
る、請求項
11に記載の改変CVB1。
【請求項13】
前記改変CVB1は、サイトカインをコードする核酸配列、抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチドをコードする核酸配列、及びマイクロRNAの標的配列から選択される、外因性核酸を更に含む、請求項
12に記載の改変CVB1。
【請求項14】
以下の特徴:
(1)前記サイトカインが、GM-CSFであること;
(2)前記抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチドが、PD-1又はPD-L1に対するscFvであること;
(3)前記マイクロRNAがmiR-133及びmiR-206から選択されること;
の1つ以上によって特徴づけられる、請求項
13に記載の
改変CVB1。
【請求項15】
前記改変CVB1は、以下の特徴:
1)前記改変CVB1は、配列番号13に示され
るゲノム配列を有すること、
2)前記改変CVB1は、配列番号8に示され
るcDNA配列を有すること、
の1つを有する、請求項
12~14のいずれか一項に記載の改変CVB1。
【請求項16】
核酸分子であって、以下:
(1)請求項
12~15のいずれか一項に記載の改変CVB1のゲノム配列又はcDNA配列と、
(2)前記ゲノム配列又は前記cDNA配列の相補的配列と、
から選択される配列を含む、核酸分子。
【請求項17】
以下の特徴:
(1)前記核酸分子が、前記改変CVB1のゲノム配列からなること;
(2)前記核酸分子が、前記改変CVB1のcDNA配列、又は前記cDNA配列の相補的配列を含むベクターであること;
の1つによって特徴づけられる、請求項
16に記載の核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス療法及び腫瘍療法の分野に関する。特に、本発明は、被験体(例えば、ヒト)における腫瘍を治療するための、及び被験体(例えば、ヒト)における腫瘍を治療するための医薬の製造のための、CVB1若しくはその改変形、又はCVB1若しくはその改変形のゲノムヌクレオチド配列若しくはその相補的配列を含む核酸分子の使用に関する。本発明はまた、腫瘍を治療する方法であって、治療を必要とする被験体にCVB1若しくはその改変形、又はCVB1若しくはその改変形のゲノムヌクレオチド配列若しくはその相補的配列を含む核酸分子を投与する工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍の現在の治療手段には、主として外科的治療、化学療法及び放射線療法が含まれる。これらの従来の療法は転移した腫瘍の治療には満足いくものではなく、更に患者の健康に大きな害を及ぼす場合がある。これに対して、新しいタイプの治療として、腫瘍溶解性ウイルスの使用による腫瘍治療法は、特異性が高く、効果が優れ、かつ副作用が低いという特性を有するため、現在では有望な腫瘍治療法とみなされている。
【0003】
腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞内で自己複製し得ることで、腫瘍細胞を死滅若しくは溶解させる又は腫瘍細胞の成長を停止させるウイルスである。in vivo治療に使用される場合に、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍細胞に対して特異的な選択性を示し、直接的に腫瘍細胞死を誘導することができるが、正常細胞にはほとんど効果を有しないか又は全く効果を有さず、一方で、腫瘍溶解性ウイルスは免疫系でBリンパ球及びTリンパ球の応答を刺激することにより、間接的に腫瘍細胞を死滅させることもできる。
【0004】
これまでに報告されている腫瘍溶解活性を有するエンテロウイルスには、悪性神経膠腫等のヒト固形腫瘍の治療のためのキメラポリオウイルス(非特許文献1)、ヒト胃癌細胞及び卵巣癌細胞を死滅させるエコーウイルスECHO1(非特許文献2、非特許文献3)等が含まれる。しかしながら、依然として、腫瘍特異性と腫瘍死滅活性との両方を有するウイルスを得ることが必要とされる。
【0005】
CVB1は、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属に属している。研究によると、CVB1は一般には、感染後に感染者に発熱、くしゃみ及び咳等の軽度の症状を引き起こすにすぎないが、新生児、幼児、及び免疫不全成人においてウイルス性心筋炎、膵炎、肝炎、無菌性髄膜炎及びインスリン依存性糖尿病等の重度の慢性自己免疫疾患を引き起こす場合もあることが分かっている(非特許文献4)。現在、当該技術分野においてCVB1の腫瘍溶解活性に関する報告はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Dobrikova et al., Mol Ther 2008, 16 (11): 1865-1872
【文献】Shafren et al., Int J Cancer 2005, 115 (2): 320-328
【文献】Haley et al., J Mol Med (Berl) 2009, 87 (4): 385-399
【文献】Rinehart et al., J Virol 1997, 71(5): 3986-3991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、特段の定めがない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用される細胞培養、生化学、細胞生物学、核酸化学等のための作業工程は、対応する分野で広く使用されている慣用の工程である。一方で、本発明をより良く理解するために、関連する用語の定義及び説明を以下に示す。
【0008】
本明細書で使用される場合に、「CVB1(コクサッキーウイルスB群1型)」という用語は、ピコルナウイルス科のエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスB群の1つの種を指し、そのゲノムは5’非翻訳領域(5’UTR)と、1つのオープンリーディングフレーム(ORF)と、3’非翻訳領域(3’UTR)と、ポリ(A)テールとからなる一本鎖プラス鎖RNAである。ORFは、自体のプロテアーゼにより加水分解され切断されて、構造タンパク質VP1~VP4並びに非構造タンパク質2A、2B、2C、3A、3B、3C及び3Dを生成し得る前駆体ポリタンパク質をコードしている。本発明をより明確に記載するために、CVB1ゲノムにおける上記タンパク質に対応する核酸配列は、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、2A遺伝子、2B遺伝子、2C遺伝子、3A遺伝子、3B遺伝子、3C遺伝子及び3D遺伝子と呼ばれる。本発明において、「コクサッキーウイルスB群1型(CVB1)」という表現は、天然源から分離することができ、意図的かつ人工的に改変されていない野生型CVB1を意味し、その例には、限定されるものではないが、原型株Conn-5及び様々な臨床分離株(例えば、本発明の実施例1に記載される臨床分離株)が含まれる。野生型CVB1のゲノム配列又はcDNA配列は、当該技術分野においてよく知られており、様々な公共データベース(例えば、GenBankデータベースのアクセッション番号:MG780414)において見出すことができる。
【0009】
本明細書で使用される場合に、ウイルスの「改変形」という用語は、野生型ウイルスを改変することにより得られる、野生型ウイルスの所望の活性(例えば、腫瘍溶解活性)を保持する改変ウイルスを指す。本発明において、CVB1の「改変形」には、限定されるものではないが、野生型CVB1のゲノム配列と比較して、ゲノム配列が1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入又は欠失を有し、少なくともCVB1の腫瘍溶解活性を保持する改変CVB1ウイルスが含まれる。
【0010】
本明細書で使用される場合に、「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、腫瘍細胞に感染し、腫瘍細胞内で複製し、腫瘍細胞死及び溶解を引き起こし、又は腫瘍細胞成長を妨げることができるウイルスを指す。このウイルスは、非腫瘍細胞に対して最小限の毒性効果を有することが好ましい。
【0011】
本明細書で使用される場合に、「腫瘍特異性」という用語は、腫瘍細胞内で生物学的機能又は生物学的活性を選択的に示すことを指す。例えば、本発明において「腫瘍特異性」という用語がウイルスの死滅選択性を説明するために使用される場合に、その用語は、ウイルスが非腫瘍細胞を死滅させることなく若しくは実質的に死滅させずに、腫瘍細胞を選択的に死滅させることができること又はウイルスが非腫瘍細胞を死滅させるよりも腫瘍細胞を死滅させることに有効であることを意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合に、「腫瘍溶解活性」という用語は、主に腫瘍死滅活性を含む。ウイルスの腫瘍溶解活性を説明する場合に、ウイルスの腫瘍溶解活性は、典型的には、ウイルスが腫瘍細胞に感染する能力、腫瘍細胞内で複製する能力、及び/又は腫瘍細胞を死滅させる能力によって測定することができる。ウイルスの腫瘍溶解活性は、当該技術分野において知られる任意の方法を用いて測定され得る。例えば、ウイルスが腫瘍細胞に感染する能力は、所与の割合の腫瘍細胞(例えば、細胞の50%)に感染するのに必要なウイルス量を測定することによって評価することができ、腫瘍細胞内で複製する能力は、腫瘍細胞内でのウイルスの増殖を測定することにより評価することができ、腫瘍細胞を死滅させる能力は、細胞変性効果(CPE)を観察する又は腫瘍細胞活性を測定することにより評価することができる。
【0013】
本明細書で使用される場合に、「CVB1のcDNA配列」という表現は、RNA配列中のリボヌクレオチドが対応するデオキシリボヌクレオチドにより置き換えられている点、例えばウラシルリボヌクレオチド(UMP)がチミンデオキシリボヌクレオチド(dTMP)により置き換えられている点のみがウイルスゲノムRNA配列と異なるウイルスゲノムRNA配列のDNA形を意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合に、「外因性核酸」という用語は、元の配列に対して外来である人工的に導入されたヌクレオチド配列を指す。外因性核酸には、限定されるものではないが、ウイルスゲノムには見られない任意の遺伝子又はヌクレオチド配列が含まれる。しかしながら、本発明において、外因性核酸は、最大1500ヌクレオチド、例えば最大1200ヌクレオチド、最大1000ヌクレオチドからなることが特に好ましい。幾つかの場合には、好ましくは、外因性核酸は、サイトカイン等の抗腫瘍死滅活性を有するタンパク質若しくはポリペプチド若しくは抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチドをコードする、又は外因性核酸は、マイクロRNA(miRNA)の標的配列を含む。本発明においては、マイクロRNAは、好ましくは、腫瘍細胞中での発現レベルが正常細胞よりも大幅に低い及び/又は明らかな組織特異性を有するマイクロRNAであり、その例としては、限定されるものではないが、肝臓組織で特異的に発現されるmiR-122、miR-192、miR-483等、膵臓組織で特異的に発現されるmiR216a/b、miR217及びmiR-375、心臓で特異的に発現されるmiR-1、miR-133a/b、miR-208等、腎臓組織で特異的に発現されるmiR-192、miR-196a/b、miR-204、miR-215等、筋肉組織で特異的に発現されるmiR-133a/b、miR-206等、脳組織で特異的に発現されるmiR-124a、miR-125a/b、miR-128a/b、miR-138等、並びに肝臓腫瘍組織で過少発現されるmiR-34、miR-122a、miR-26a、膵臓腫瘍組織で過少発現されるmiR-107、miR-96及びmiR-196、腎臓腫瘍組織で過少発現されるmiR-34、膀胱腫瘍組織で過少発現されるmiR-143、miR-133a/b、肺腫瘍組織で過少発現されるmiR-Let-7、miR-29等が含まれる(例えば、Ruiz AJ and Russell S J. MicroRNAs and oncolytic viruses. [J]. Curr Opin Virol, 2015, 13: 40-48を参照;その全ては、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)。
【0015】
本発明においては、改変CVB1が上記マイクロRNAの標的配列を含む場合に、その改変CVB1は、該マイクロRNAが高度に発現される又は特異的に発現される細胞/組織において該マイクロRNAによって調節されるので、腫瘍溶解性ウイルスの複製は弱まり、更にはその死滅活性が失われ、その一方で、該マイクロRNAの発現が低い又は発現のない腫瘍細胞/組織では、腫瘍溶解性ウイルスは正常に複製するため、腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0016】
本明細書で使用される場合に、「サイトカイン」という用語は、当業者によく知られる意味を有する。しかしながら、本発明において、本発明の腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍の治療に使用される場合に、サイトカインは腫瘍治療のために使用することができるサイトカインであることが特に好ましい。「サイトカイン」の例には、限定されるものではないが、インターロイキン類(例えば、IL-2、IL-12及びIL-15)、インターフェロン類(例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ)、腫瘍壊死因子(例えば、TNFα)、コロニー刺激因子(例えば、GM-CSF)並びにそれらの任意の組合せが含まれる(例えば、Ardolino M, Hsu J, Raulet D H. Cytokine treatment in cancer immunotherapy [J]. Oncotarget, 2015, 6 (23): 19346-19347を参照)。
【0017】
本明細書で使用される場合に、「抗腫瘍タンパク質又はポリペプチド」という用語は、限定されるものではないが、(1)細胞に対して毒性を有し、細胞増殖を阻害する又はアポトーシスを誘導することができるタンパク質又はポリペプチド(その例には、限定されるものではないが、チミジンキナーゼTK(TK/GCV)、TRAIL及びFasLが含まれる)(例えば、Candolfi M, King GD, Muhammad AG, et al. Evaluation of proapototic transgenes to use in combination with Flt3L in an immune-stimulatory gene therapy approach for Glioblastoma multiforme (GBM) [J]. FASEB J, 2008, 22: 1077.13を参照)、(2)免疫療法効果を有するタンパク質又はポリペプチド(その例には、限定されるものではないが、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(抗CTLA-4)、プログラム死受容体1(抗PD-1)及びプログラム死リガンド1(抗PDL-1)に対する一本鎖抗体(scFv)が含まれる)(例えば、Nolan E, Savas P, Policheni AN, et al. Combined immune checkpoint blockade as a therapeutic strategy for BRCA1-mutated breast cancer [J]. Science Trans Med, 2017, 9: eaal4922を参照;その全ては、引用することにより本明細書の一部をなす)、(3)腫瘍血管新生を阻害するタンパク質又はポリペプチド(その例には、限定されるものではないが、血管内皮成長因子(抗VEGF)、VEGF由来ポリペプチド(例えば、D(LPR)、KSRVRKGKGQKRKRKKSRYK等)及びATN-161に対する一本鎖抗体(scFv)が含まれる)(例えば、Rosca EV, Koskimaki JE, Rivera CG, et al. Anti-angiogenic peptides for cancer therapeutics [J]. Curr Pharm Biotechnol, 2011, 12 (8): 1101-1116を参照;その全ては、引用することにより本明細書の一部をなす)を含む、腫瘍に対する治療活性を有するタンパク質又はポリペプチドを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合に、「scFv」という用語は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VLとVHとがリンカーによって連結されている単一ポリペプチド鎖を指す(例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)、及びPluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Volume 113, edited by Roseburg and Moore, Springer-Verlag, New York, pages 269-315 (1994)を参照)。そのようなscFv分子は、一般構造:NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOHを有し得る。
【0019】
本明細書で使用される場合に、「同一性」という用語は、2つのタンパク質/ポリペプチド間又は2つの核酸間の一致度を指す。比較される2つの配列が或る特定の部位に同じ単量体サブユニットの塩基又はアミノ酸を有する(例えば、2つのDNA分子の各々が或る特定の部位にアデニンを有する又は2つのタンパク質/ポリペプチドの各々が或る特定の部位にリジンを有する)場合に、2つの分子はその部位で同一である。2つの配列間の同一性のパーセントは、比較される部位の総数に対する、2つの配列が共有する同一の部位の数に100を掛けた関数である。例えば、2つの配列の10個の部位の6個が一致している場合に、これらの2つの配列は60%の同一性を有する。例えば、DNA配列:CTGACTとCAGGTTとは、50%の同一性を共有する(6個の部位の3個が一致している)。一般的に、2つの配列の比較は、最大の同一性が得られるように行われる。そのようなアラインメントは、例えばNeedlemanらの方法(J. Mol. Biol. 48:443-453, 1970)に基づくAlignプログラム(DNAstar, Inc.社)等のコンピュータープログラムを使用することにより実施することができる。2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセントはまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers及びW. Millerのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))を使用して、PAM120残基重み付け表を使用して、12のギャップ長ペナルティー及び4のギャップペナルティーで決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)内のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman及びWunschのアルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))によって、Blossum 62行列又はPAM250行列のいずれかを使用して、16、14、12、10、8、6又は4のギャップ重み付け及び1、2、3、4、5、又は6の長さ重み付けで決定することができる。
【0020】
本明細書で使用される場合に、「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドがその中に挿入され得る核酸の運搬体を指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を可能にする場合に、そのベクターは発現ベクターと呼称される。ベクターを形質転換、形質導入又はトランスフェクションによって宿主細胞へと導入することができるので、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントは宿主細胞において発現され得る。ベクターは当業者によく知られており、限定されるものではないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC)等の人工染色体、λファージ又はM13ファージ等のバクテリオファージ及び動物ウイルスが含まれる。ベクターとして使用され得る動物ウイルスには、限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス及びパポバウイルス(例えば、SV40)が含まれる。ベクターは、限定されるものではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択用のエレメント及びレポーター遺伝子を含む発現を制御する様々なエレメントを含み得る。さらに、ベクターは複製開始部位を含み得る。
【0021】
本明細書で使用される場合に、「内部リボソーム進入部位(IRES)」という用語は、5’キャップ構造に頼らずに翻訳を開始することができるメッセンジャーRNA(mRNA)配列中に位置するヌクレオチド配列を指す。IRESは、通常は5’非翻訳領域(5’UTR)内に位置しているが、mRNAの他の場所に位置する場合もある。
【0022】
本明細書で使用される場合に、「ヒトライノウイルス2(HRV2)」という用語は、ピコルナウイルス科のウイルスであって、そのゲノム配列又はcDNA配列が当該技術分野においてよく知られており、様々な公的データベース(例えば、GenBankデータベースのアクセッション番号X02316.1)に見出すことができるウイルスを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合に、「CVB1又はその改変形のゲノム配列を含む核酸分子」又は「核酸分子がCVB1又はその改変形のゲノム配列を含む」という表現は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。すなわち、核酸分子がDNAである場合に、その核酸分子は、CVB1又はその改変形のDNAの形のゲノム配列を含み、核酸分子がRNAである場合に、その核酸分子は、CVB1又はその改変形のゲノム配列を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合に、「薬学的に許容可能な担体及び/又は添加剤」という用語は、被験体及び活性成分と薬理学的及び/又は生理学的に適合可能な担体及び/又は添加剤を指し、その担体及び/又は添加剤は、当該技術分野においてよく知られており(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照)、限定されるものではないが、pH調整剤、界面活性剤、イオン強度増強剤、浸透圧維持剤、吸収遅延剤、希釈剤、アジュバント、防腐剤、安定剤等が含まれる。例えば、pH調整剤には、限定されるものではないが、リン酸緩衝生理食塩水が含まれる。界面活性剤には、限定されるものではないが、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤、例えばTween-80が含まれる。イオン強度増強剤には、限定されるものではないが、塩化ナトリウムが含まれる。浸透圧維持剤には、限定されるものではないが、糖、NaCl等が含まれる。吸収遅延剤には、限定されるものではないが、モノステアレート及びゼラチンが含まれる。希釈剤には、限定されるものではないが、水、水性緩衝液(例えば、緩衝生理食塩水)、アルコール類及びポリオール類(例えば、グリセロール)等が含まれる。アジュバントには、限定されるものではないが、アルミニウムアジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、フロイントアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント)等が含まれる。防腐剤には、限定されるものではないが、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン類、トリクロロ-t-ブタノール、フェノール、ソルビン酸等が含まれる。安定剤は、当業者により一般的に理解される意味を有し、薬物中の活性成分の所望の活性(例えば、腫瘍溶解活性)を安定化することができ、限定されるものではないが、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、ラクトース、デキストラン又はグルコース)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエー、アルブミン又はカゼイン)又はそれらの分解産物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合に、「治療する」という用語は、疾患(例えば、腫瘍)の治療若しくは治癒、疾患(例えば、腫瘍)の症状の発症の遅延、及び/又は疾患(例えば、腫瘍)の進行の遅延を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合に、「有効量」という用語は、意図される目的を有効的に達成することができる量を指す。例えば、治療的有効量は、疾患(例えば、腫瘍)を治療若しくは治癒する、疾患(例えば、腫瘍)の症状の発症を遅延させる、及び/又は疾患(例えば、腫瘍)の進行を遅延させるのに有効な又は十分な量であり得る。そのような有効量は、当業者又は医師によって容易に決定することができ、意図される目的(治療等)、全体的健康状態、年齢、性別、被験者の体重、治療されるべき疾患の重症度、合併症、投与経路等に関連し得る。そのような有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0027】
本明細書で使用される場合に、「被験体」という用語は、哺乳動物、例えば霊長類哺乳動物、例えばヒトを指す。或る特定の実施の形態では、被験体(例えば、ヒト)は腫瘍を有する、又は腫瘍を有するリスクがある。
【0028】
多数の実験を行うとともに探求を繰り返した末に、本出願の発明者らは、予想外にも、CVB1が幅広いスペクトルと顕著な腫瘍細胞死滅能力とを有することを見出した。この発見に基づいて、本発明者らは、腫瘍を治療するための新しい腫瘍溶解性ウイルス及び該ウイルスに基づく腫瘍治療方法を開発した。
【0029】
したがって、第1の態様では、本発明は、被験体における腫瘍を治療するための、又は被験体における腫瘍を治療するための医薬の製造のための、コクサッキーウイルスB群1型(CVB1)若しくはその改変形又は核酸分子の使用であって、前記核酸分子は、以下:
(1)CVB1又はその改変形のゲノム配列又はcDNA配列と、
(2)前記ゲノム配列又は前記cDNA配列の相補的配列と、
から選択される配列を含む、使用を提供する。
【0030】
或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1は野生型CVB1である。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1はコクサッキーウイルスB群1型に感染した個体から分離された臨床分離株であり得る。
【0031】
或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のゲノム配列は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のゲノム配列は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列である。
【0032】
或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のcDNA配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のcDNA配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列である。
【0033】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記改変形は、野生型CVB1と比較してゲノム中に1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入又は欠失を有する改変CVB1である。
【0034】
或る特定の好ましい実施の形態では、野生型CVB1と比較して、改変CVB1は、以下:
(1)非翻訳領域(例えば、5’UTR又は3’UTR)における1つ以上の突然変異と、
(2)1つ以上の外因性核酸の挿入と、
(3)1つ以上の内因性遺伝子の欠失又は突然変異と、
(4)上記3つの項目の任意の組み合わせと、
から選択される1つ以上の改変を有する。
【0035】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、5’非翻訳領域(5’UTR)において1つ以上の突然変異を含む。
【0036】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、5’UTR配列の全て又は部分の置換を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1の5’UTRにおける内部リボソーム進入部位(IRES)配列は、外因性IRES配列、例えばヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列と置き換えられている。或る特定の好ましい実施の形態では、ヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列は配列番号2に示されている。
【0037】
ヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列の使用は、幾つかの場合には、例えば、腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍特異性の改善に有利である。正常なヒト神経細胞では、ヒトライノウイルス2の内部リボソーム進入部位配列に宿主RNA結合タンパク質(DRBP76及びNF45)が特異的に結合し、それによりelF4G等の因子の動員が妨げられ(Merrill et al. J Virol 2006,80 (7): 3147-3156、Merrill and Gromeier, J Virol 2006,80 (14): 6936-6942、Neplioueva et al., PLoS One 2010,5 (7): e11710)、その一方で、Raf/Erk1/2/MAPK及びその他のシグナル伝達経路に対応しておらず、リボソームはヒトライノウイルス2の内部リボソーム進入部位配列にほとんど結合することができないため、ウイルスタンパク質の翻訳を開始することができない(Dobrikov et al., Mol Cell Biol 2011, 31(14): 2947-2959、Dobrikov et al., Mol Cell Biol 2013, 33(5): 937-946)ことが以前に報告されている。ヒト神経膠腫腫瘍細胞においては、ヒトライノウイルス2の内部リボソーム進入部位は上記の2つの要因により影響されないため、ウイルスタンパク質の転写及び翻訳を正常に開始することができる。したがって、幾つかの場合には、CVB1の内部リボソーム進入部位配列をヒトライノウイルス2の内部リボソーム進入部位配列で置き換えることは、正常なヒト神経細胞に対する本発明のウイルスの毒性副作用を、ヒト神経膠腫の治療でのそのウイルスの使用に影響を与えることなく回避又は低減するのに有益である。
【0038】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は外因性核酸を含む。
【0039】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、サイトカイン(例えば、GM-CSF、好ましくはヒトGM-CSF)又は抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチド(例えば、PD-1又はPD-L1に対するscFv、好ましくはヒトPD-1又はPD-L1に対するscFv)をコードする。或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、改変CVB1のゲノムの5’UTRとVP4遺伝子との間、又はVP1遺伝子と2A遺伝子との間に挿入される。
【0040】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、マイクロRNA(miRNA)(例えば、miR-133又はmiR-206)の標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、マイクロRNAの標的配列は、改変CVB1のゲノムの3’非翻訳領域(3’UTR)に挿入される。
【0041】
腫瘍細胞における或る特定のマイクロRNAの発現レベルが正常細胞よりも大幅に低いこと、及び/又は明らかな組織特異性を有することが以前に報告されている。したがって、幾つかの場合には、本発明の改変CVB1がそのようなマイクロRNAの標的配列を含むことが有利である。それというのも、正常な細胞又は組織で高度に発現されるそのようなマイクロRNAは、対応する標的配列を介して正常な細胞又は組織における改変CVB1の複製を低減し得るか、又は更には遮断し得るため、非腫瘍細胞に対する改変CVB1の毒性副作用は減少、更には回避されるからである。そのようなマイクロRNAには、限定されるものではないが、miR-133、miR-206、miR-1、miR-143、miR-145、miR-217、let-7、miR-15、miR-16等が含まれる(例えば、国際公開第2008103755号、米国特許出願公開第20160143969号、又はBaohong Zhang et al., Developmental Biology, Volume 302, Issue 1, 1 February 2007, Pages 1-12を参照;その全ては、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)。
【0042】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、上記の1つ以上(例えば、2つ、3つ又は4つ)のマイクロRNAの標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、miR-133及び/又はmiR-206の標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、miR-133の標的配列は、配列番号3に示されている。或る特定の好ましい実施の形態では、miR-206の標的配列は、配列番号4に示されている。幾つかの場合には、miR-133及び/又はmiR-206の標的配列の挿入が有利である。これは、miR-133及びmiR-206が筋肉組織で特異的に発現されるため、miR-133及び/又はmiR-206の標的配列を改変CVB1へと挿入することで、腫瘍溶解性ウイルスの組織向性を変化させることにより正常な筋肉組織への損傷を減少する又は回避することができるからである。
【0043】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、上記の外因性核酸の少なくとも1つの挿入及び/又は上記の非翻訳領域における少なくとも1つの突然変異を含む。
【0044】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のゲノム配列は、以下:配列番号13~配列番号16に示されるヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のゲノム配列は、配列番号13~配列番号16に示されるヌクレオチド配列から選択されるいずれか1つである。
【0045】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のcDNA配列は、以下:配列番号8~配列番号11に示されるヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のcDNA配列は、配列番号8~配列番号11に示されるヌクレオチド配列から選択されるいずれか1つである。
【0046】
本発明の改変CVB1は逆遺伝学技術により得ることができ、逆遺伝学技術は当該技術分野において知られており、例えば、Yang LS, Li SX, Liu YJ, et al. Virus Res, 2015, 210: 165-168、Hou WH, Yang LS, Li SX, et al. Virus Res, 2015, 205: 41-44を参照のこと(その全ては、引用することにより本明細書の一部をなす)。そのような実施の形態では、典型的には、野生型CVB1のcDNAに改変を加えることで(例えば、外因性核酸の挿入、内因性遺伝子の欠失若しくは突然変異、又は非翻訳領域における突然変異)、改変CVB1が得られる。
【0047】
本発明によるCVB1又はその改変形を前処理することで、被験体におけるウイルスに対する免疫応答を低減させる又は排除することができ、ここで、上記前処理は、リポソーム又はミセル中にCVB1をパッケージングすること、及び/又はプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン又はトリプシン)を使用してウイルスのキャプシドタンパク質を除去し、宿主におけるウイルスに対する体液性免疫及び/又は細胞性免疫を低下させることを含み得る。
【0048】
本発明において、本明細書に記載されるCVB1又はその改変形は、腫瘍細胞における馴化のために連続継代され得る。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍細胞は、当該技術分野において知られる腫瘍細胞系統若しくは腫瘍細胞株であり得る、又は腫瘍を有する個体(例えば、被験体)からのin vivoでの外科的切除若しくは臨床的分離によって得られた腫瘍細胞であり得る。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形は、腫瘍を有する個体(例えば、被験体)から得られた腫瘍細胞における馴化のために連続継代される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍細胞は、腫瘍を有する個体(例えば、被験体)からの外科的切除又は臨床的分離によって得られる。或る特定の好ましい実施の形態では、馴化のための連続継代法は、以下の過程、すなわち1)標的腫瘍細胞にウイルスを感染させる過程と、2)上清中のウイルスを採取する過程と、3)新たな標的腫瘍細胞に得られたウイルスを再感染させる過程とからなる複数のサイクル(例えば、少なくとも5サイクル、少なくとも10サイクル、少なくとも15サイクル、少なくとも20サイクル)を含む。
【0049】
或る特定の好ましい実施の形態では、上記のCVB1及びその改変形は、組み合わせて使用され得る。したがって、医薬はCVB1及びその改変形の1つ又は幾つかを含み得る。
【0050】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCVB1若しくはその改変形のゲノム配列若しくはcDNA配列又は上記ゲノム配列若しくはcDNA配列の相補的配列からなる。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は本明細書に記載されるCVB1又はその改変形のゲノム配列を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子はRNAである。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、配列番号12~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を有する。
【0051】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCVB1若しくはその改変形のゲノム配列若しくはcDNA配列、又は上記ゲノム配列若しくは上記cDNA配列の相補的配列を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)である。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCVB1若しくはその改変形のcDNA配列、又は上記cDNA配列の相補的配列を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)である。
【0052】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、CVB1又はその改変形のゲノム配列の相補的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、相補的配列は、以下:
(1)配列番号12に示されるヌクレオチド配列と、
(2)配列番号12に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
(3)配列番号13~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と、
(4)配列番号13~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
から選択されるヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0053】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、CVB1又はその改変形のcDNA配列の相補的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、相補的配列は、以下:
(1)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と、
(2)配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
(3)配列番号8~配列番号11のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と、
(4)配列番号8~配列番号11のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
から選択されるヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0054】
本発明の核酸分子は、当該技術分野において知られる任意の手段によって送達することができ、例えば、ネイキッド核酸分子(例えば、ネイキッドRNA)を直接的に注入することができる又は非ウイルス送達システムを使用することができる。非ウイルス送達システムは、限定されるものではないが、"Yin H, et al. Nat Rev Genet. 2014 Aug; 15(8): 541-55."及び"Riley MK, Vermerris W. Nanomaterials (Basel). 2017 Apr 28; 7(5). Pii: E94."(これらは、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に詳細に記載される材料、例えばリポソーム、無機ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)、ポリマー(例えば、PEG)を含む当該技術分野においてよく知られる様々な材料から得ることができる。
【0055】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は、治療的有効量の本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は治療的有効量の核酸分子を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は、医療技術分野で知られる任意の形で存在し得る。例えば、医薬は、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、ロゼンジ剤、坐剤、又は注射剤(注射液、凍結乾燥粉末を含む)等の形態であり得る。幾つかの実施の形態では、医薬は、注射液又は凍結乾燥粉末である。
【0056】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は薬学的に許容可能な担体又は添加剤を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は安定剤を含む。
【0057】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は、任意に、追加の薬学的活性剤を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態では、本発明によるCVB1若しくはその改変形、又は本発明の核酸分子は、追加の薬学的活性剤と組み合わせて使用される。好ましい実施の形態では、追加の薬学的活性剤は追加の腫瘍溶解性ウイルス、化学療法剤又は免疫療法剤等の抗腫瘍活性を有する薬剤である。
【0058】
本発明において、追加の腫瘍溶解性ウイルスには、限定されるものではないが、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス又はそれらの任意の組合せが含まれる。化学療法剤には、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、シクロホスファミド、ダカルバジン、ミトキサントロン、アントラサイクリン類(例えば、エピルビシン又はドキソルビシン)、エトポシド、白金化合物(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)、タキサン類(例えば、パクリタキセル又はドセタキセル)又はそれらの任意の組合せが含まれる。免疫療法剤には、限定されるものではないが、免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-L1/PD-1阻害薬又はCTLA-4阻害薬)、腫瘍特異的標的化抗体(例えば、リツキシマブ又はハーセプチン)又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0059】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬はCVB1及び/又はその改変形の単位用量を含み、例えば、少なくとも1×102pfu、少なくとも1×103pfu、少なくとも1×104pfu、1×105pfu、1×106pfu、少なくとも1×107pfu、少なくとも1×108pfu、少なくとも1×109pfu、少なくとも1×1010pfu、少なくとも1×1011pfu、少なくとも1×1012pfu、少なくとも1×1013pfu、少なくとも1×1014pfu又は少なくとも1×1016pfuのCVB1及び/又はその改変形を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は1×102pfu~1×1017pfuのCVB1及び/又はその改変形を含む。
【0060】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は本明細書に記載される核酸分子の単位用量を含み、例えば3×1010~3×1014のウイルスゲノムコピーの核酸分子を含む。
【0061】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬は追加療法と組み合わせて投与され得る。この追加療法は、外科手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法又は遺伝子療法等の腫瘍に関して知られている任意の療法であり得る。この追加療法は医薬の投与前に、その投与と同時に又はその投与後に施すことができる。
【0062】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。
【0063】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0064】
第2の態様では、本発明は、腫瘍を治療する方法であって、治療を必要とする被験体に、有効量のCVB1若しくはその改変形又は有効量の核酸分子を投与する工程を含み、上記核酸分子は、以下:
(1)上記CVB1又はその改変形のゲノム配列又はcDNA配列と、
(2)上記ゲノム配列又は上記cDNA配列の相補的配列と、
から選択される配列を含む、方法を提供する。
【0065】
或る特定の好ましい実施の形態では、被験体にCVB1が投与される。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1は野生型CVB1である。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1はコクサッキーウイルスB群1型に感染した個体から分離された臨床分離株であり得る。
【0066】
或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のゲノム配列は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のゲノム配列は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列である。
【0067】
或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のcDNA配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1又はその改変形のcDNA配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列である。
【0068】
或る特定の好ましい実施の形態では、被験体にCVB1の改変形が投与される。或る特定の好ましい実施の形態では、改変形は、野生型CVB1と比較してゲノム中に1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入又は欠失を有する改変CVB1である。
【0069】
或る特定の好ましい実施の形態では、野生型CVB1と比較して、改変CVB1は、以下:
(1)非翻訳領域(例えば、5’UTR又は3’UTR)における1つ以上の突然変異と、
(2)1つ以上の外因性核酸の挿入と、
(3)1つ以上の内因性遺伝子の欠失又は突然変異と、
(4)上記3つの項目の任意の組み合わせと、
から選択される1つ以上の改変を有する。
【0070】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、5’非翻訳領域(5’UTR)において1つ以上の突然変異を含む。
【0071】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、5’UTR配列の全て又は部分の置換を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1の5’UTRにおける内部リボソーム進入部位(IRES)配列は、外因性IRES配列、例えばヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列と置き換えられている。或る特定の好ましい実施の形態では、ヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列は配列番号2に示されている。
【0072】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は外因性核酸を含む。
【0073】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、サイトカイン(例えば、GM-CSF、好ましくはヒトGM-CSF)又は抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチド(例えば、PD-1又はPD-L1に対するscFv、好ましくはヒトPD-1又はPD-L1に対するscFv)をコードする。或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、改変CVB1のゲノムの5’UTRとVP4遺伝子との間、又はVP1遺伝子と2A遺伝子との間に挿入される。
【0074】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、マイクロRNA(miRNA)(例えば、miR-133又はmiR-206)の標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、マイクロRNAの標的配列は、改変CVB1のゲノムの3’非翻訳領域(3’UTR)に挿入される。
【0075】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、上記の1つ以上(例えば、2つ、3つ又は4つ)のマイクロRNAの標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、miR-133及び/又はmiR-206の標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、miR-133の標的配列は、配列番号3に示されている。或る特定の好ましい実施の形態では、miR-206の標的配列は、配列番号4に示されている。
【0076】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、上記の外因性核酸の少なくとも1つの挿入及び/又は上記の非翻訳領域における少なくとも1つの突然変異を含む。
【0077】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のゲノム配列は、以下:配列番号13~配列番号16に示されるヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のゲノム配列は、配列番号13~配列番号16に示されるヌクレオチド配列から選択されるいずれか1つである。
【0078】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のcDNA配列は、以下:配列番号8~配列番号11に示されるヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のcDNA配列は、配列番号8~配列番号11に示されるヌクレオチド配列から選択されるいずれか1つである。
【0079】
或る特定の好ましい実施の形態では、上記のCVB1及びその改変形は、組み合わせて使用され得る。したがって、CVB1及びその改変形の1つ以上を被験体に投与することができる。
【0080】
或る特定の好ましい実施の形態では、本明細書に記載される核酸分子が被験体に投与される。
【0081】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCVB1若しくはその改変形のゲノム配列若しくはcDNA配列又は上記ゲノム配列若しくは上記cDNA配列の相補的配列からなる。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は本明細書に記載されるCVB1又はその改変形のゲノム配列を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子はRNAである。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、配列番号12~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を有する。
【0082】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCVB1若しくはその改変形のゲノム配列若しくはcDNA配列、又は上記ゲノム配列若しくは上記cDNA配列の相補的配列を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)である。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載されるCVB1若しくはその改変形のcDNA配列、又は上記cDNA配列の相補的配列を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)である。
【0083】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、CVB1又はその改変形のゲノム配列の相補的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、相補的配列は、以下:
(1)配列番号12に示されるヌクレオチド配列と、
(2)配列番号12に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
(3)配列番号13~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と、
(4)配列番号13~配列番号16のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
から選択されるヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0084】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、CVB1又はその改変形のcDNA配列の相補的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、相補的配列は、以下:
(1)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と、
(2)配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
(3)配列番号8~配列番号11のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列と、
(4)配列番号8~配列番号11のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
から選択されるヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0085】
本発明において、本発明の核酸分子は、当該技術分野において知られる任意の手段によって送達することができ、例えば、ネイキッド核酸分子(例えば、ネイキッドRNA)を直接的に注入することができる又は非ウイルス送達システムを使用することができる。非ウイルス送達システムは、限定されるものではないが、"Yin H, et al. Nat Rev Genet. 2014 Aug; 15(8): 541-55."及び"Riley MK, Vermerris W. Nanomaterials (Basel). 2017 Apr 28; 7(5). Pii: E94."(これらは、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に詳細に記載される材料、例えばリポソーム、無機ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)、ポリマー(例えば、PEG)を含む当該技術分野においてよく知られる様々な材料から得ることができる。
【0086】
或る特定の好ましい実施の形態では、本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は核酸分子を、医薬組成物として製剤化して投与することができる。このような医薬組成物は、治療的有効量の本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は治療的有効量の核酸分子を含み得る。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は、医療技術分野で知られる任意の形で存在し得る。例えば、医薬組成物は、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、ロゼンジ剤、坐剤、注射剤(注射液、凍結乾燥粉末を含む)及び他の形態であり得る。幾つかの実施の形態では、医薬組成物は、注射液又は凍結乾燥粉末である。
【0087】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は薬学的に許容可能な担体又は添加剤を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は安定剤を含む。
【0088】
本発明において、本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は核酸分子は様々な適切な経路により被験体に投与され得る。幾つかの場合には、本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は核酸分子の投与経路は腫瘍の位置及び種類に依存する。例えば、容易にアクセス可能な固形腫瘍の場合に、ウイルス又は核酸分子は任意に腫瘍への直接注射(例えば、腫瘍内注射)により投与され、造血系の腫瘍の場合に、ウイルス又は核酸分子は静脈内又は他の血管内経路で投与することができ、体内の容易にアクセス可能でない腫瘍(例えば、転移)の場合に、ウイルス又は核酸分子は全身を駆け巡ることで腫瘍に到達することができるように全身投与することができる(例えば、静脈内注射又は筋肉内注射)。任意に、本発明のウイルス又は核酸分子は、皮下経路、腹腔内経路、くも膜下経路(例えば、脳腫瘍の場合)、局所経路(例えば、黒色腫の場合)、経口経路(例えば、口腔癌又は食道癌の場合)、鼻腔内経路又は吸入スプレー経路(例えば、肺癌の場合)等を介して投与され得る。或る特定の好ましい実施の形態では、本明細書に記載される本発明のCVB1及び/又はその改変形又は核酸は、皮内経路、皮下経路、筋肉内経路、静脈内経路及び経口経路等を介して投与され得る。
【0089】
或る特定の好ましい実施の形態では、上記方法は、抗腫瘍活性を有する追加の薬学的活性剤を投与することを更に含む。そのような追加の薬学的活性剤は、本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は核酸分子の投与の前に、その投与と同時に又はその投与の後に投与され得る。
【0090】
或る特定の好ましい実施の形態では、追加の薬学的活性剤には、追加の腫瘍溶解性ウイルス、化学療法剤又は免疫療法剤が含まれる。
【0091】
本発明において、追加の腫瘍溶解性ウイルスには、限定されるものではないが、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス又はそれらの任意の組合せが含まれる。化学療法剤には、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、シクロホスファミド、ダカルバジン、ミトキサントロン、アントラサイクリン類(例えば、エピルビシン又はドキソルビシン)、エトポシド、白金化合物(例えば、カルボプラチン又はシスプラチン)、タキサン類(例えば、パクリタキセル又はドセタキセル)又はそれらの任意の組合せが含まれる。免疫療法剤には、限定されるものではないが、免疫チェックポイント阻害薬(例えば、PD-L1/PD-1阻害薬又はCTLA-4阻害薬)、腫瘍特異的標的化抗体(例えば、リツキシマブ又はハーセプチン)又はそれらの任意の組合せが含まれる。
【0092】
或る特定の好ましい実施の形態では、CVB1及び/又はその改変形は被験体の体重1kg当たり1pfu~1×1015pfuの任意の量で投与することができ、例えば、CVB1及び/又はその改変形は被験体の体重1kg当たり少なくとも1×103pfu、少なくとも1×104pfu、1×105pfu、1×106pfu、少なくとも1×107pfu、少なくとも1×108pfu、少なくとも1×109pfu、少なくとも1×1010pfu、少なくとも1×1011pfu、又は少なくとも1×1012pfuの量で投与され得る。或る特定の好ましい実施の形態では、本明細書に記載される核酸分子は被験体の体重1kg当たり3×1010~3×1014のウイルスゲノムコピーのいずれかの量で投与され得る。或る特定の好ましい実施の形態では、本明細書に記載されるCVB1及び/又はその改変形又は核酸分子は1日3回、1日2回、1日1回、2日毎に1回又は週に1回投与することができ、任意に上述の投与計画は、必要に応じて毎週又は毎月繰り返すことができる。
【0093】
或る特定の好ましい実施の形態では、上記方法は追加療法を施すことを更に含む。この追加療法は外科手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法又は遺伝子療法等の腫瘍に関して知られている任意の療法であり得る。この追加療法は上記方法を施す前に、それと同時に又はその後に施すことができる。
【0094】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0095】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。
【0096】
第3の態様では、本発明はまた、第1の態様若しくは第2の態様で規定されるCVB1及び/又はその改変形、又は第1の態様若しくは第2の態様で規定される核酸分子を含む医薬組成物に関する。
【0097】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は、医療技術分野で知られる任意の形で存在し得る。例えば、医薬組成物は、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、ロゼンジ剤、坐剤、注射剤(注射液、凍結乾燥粉末を含む)及び他の形態であり得る。幾つかの実施の形態では、医薬組成物は、注射液又は凍結乾燥粉末である。
【0098】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は薬学的に許容可能な担体又は添加剤を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は安定剤を含む。
【0099】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は、任意に、追加の薬学的活性剤を更に含む。好ましい実施の形態では、追加の薬学的活性剤は追加の腫瘍溶解性ウイルス、化学療法剤又は免疫療法剤等の抗腫瘍活性を有する薬剤である。
【0100】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は被験体における腫瘍の治療のために使用される。
【0101】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0102】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。
【0103】
第4の態様では、本発明はまた、医薬として使用される、第1の態様若しくは第2の態様で規定されるCVB1及び/又はその改変形、又は第1の態様若しくは第2の態様で規定される核酸分子に関する。
【0104】
第5の態様では、本発明は、野生型CVB1と比較して、5’UTRの内部リボソーム進入部位(IRES)配列がヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列と置き換えられている、改変CVB1を提供する。
【0105】
或る特定の好ましい実施の形態では、ヒトライノウイルス2(HRV2)の内部リボソーム進入部位配列は配列番号2に示されている。
【0106】
或る特定の好ましい実施の形態では、野生型CVB1のゲノム配列は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、野生型CVB1のゲノム配列は、配列番号12に示されるヌクレオチド配列である。
【0107】
或る特定の好ましい実施の形態では、野生型CVB1のcDNA配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、野生型CVB1のcDNA配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列である。
【0108】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1はまた、外因性核酸を含む。
【0109】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、サイトカイン(例えば、GM-CSF、好ましくはヒトGM-CSF)又は抗腫瘍タンパク質若しくはポリペプチド(例えば、PD-1又はPD-L1に対するscFv、好ましくはヒトPD-1又はPD-L1に対するscFv)をコードする。或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、改変CVB1のゲノムの5’UTRとVP4遺伝子との間、又はVP1遺伝子と2A遺伝子との間に挿入される。
【0110】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、マイクロRNA(miRNA)(例えば、miR-133又はmiR-206)の標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、マイクロRNAの標的配列は、改変CVB1のゲノムの3’非翻訳領域(3’UTR)に挿入される。
【0111】
或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、上記の1つ以上(例えば、2つ、3つ又は4つ)のマイクロRNAの標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、外因性核酸は、miR-133及び/又はmiR-206の標的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、miR-133の標的配列は、配列番号3に示されている。或る特定の好ましい実施の形態では、miR-206の標的配列は、配列番号4に示されている。
【0112】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、上記の外因性核酸の少なくとも1つの挿入を含む。
【0113】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のゲノム配列は、配列番号13に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のゲノム配列は、配列番号13に示されるヌクレオチド配列である。
【0114】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のcDNA配列は、配列番号8に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1のcDNA配列は、配列番号8に示されるヌクレオチド配列である。
【0115】
或る特定の好ましい実施の形態では、改変CVB1は、被験体における腫瘍を治療するために又は被験体における腫瘍を治療するための医薬を製造するために使用される。
【0116】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は甲状腺癌である。
【0117】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0118】
第6の態様では、本発明は、核酸分子であって、以下:
(1)第5の態様に記載される改変CVB1のゲノム配列又はcDNA配列と、
(2)ゲノム配列又はcDNA配列の相補的配列と、
から選択される配列を含む、核酸分子を提供する。
【0119】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、上記の改変CVB1のゲノム配列若しくはcDNA配列又は上記ゲノム配列若しくは上記cDNA配列の相補的配列からなる。
【0120】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は上記の改変CVB1のゲノム配列を有する。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子はRNAである。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、配列番号13に示されるヌクレオチド配列を有する。
【0121】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載される改変CVB1のゲノム配列若しくはcDNA配列、又は上記ゲノム配列若しくは上記cDNA配列の相補的配列を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)である。或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、本明細書に記載される改変CVB1のcDNA配列、又は上記cDNA配列の相補的配列を含むベクター(例えば、クローニングベクター又は発現ベクター)である。
【0122】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、改変CVB1のゲノム配列の相補的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、相補的配列は、以下:
(1)配列番号13に示されるヌクレオチド配列と、
(2)配列番号13に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
から選択されるヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0123】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、上記の改変CVB1のcDNA配列の相補的配列を含む。或る特定の好ましい実施の形態では、相補的配列は、以下:
(1)配列番号8に示されるヌクレオチド配列と、
(2)配列番号8に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列と、
から選択されるヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0124】
或る特定の好ましい実施の形態では、核酸分子は、被験体における腫瘍を治療するために又は被験体における腫瘍を治療するための医薬を製造するために使用される。
【0125】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は甲状腺癌である。
【0126】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0127】
第7の態様では、本発明は、第5の態様による改変CVB1又は第6の態様による核酸分子を含む医薬組成物に関する。
【0128】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は、医療技術分野で知られる任意の形で存在し得る。例えば、医薬組成物は、錠剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、ロゼンジ剤、坐剤、注射剤(注射液、凍結乾燥粉末を含む)及び他の形態であり得る。幾つかの実施の形態では、医薬組成物は、注射液又は凍結乾燥粉末である。
【0129】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は薬学的に許容可能な担体又は添加剤を更に含む。或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は安定剤を含む。
【0130】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は、任意に、追加の薬学的活性剤を更に含む。好ましい実施の形態では、追加の薬学的活性剤は追加の腫瘍溶解性ウイルス、化学療法剤又は免疫療法剤等の抗腫瘍活性を有する薬剤である。
【0131】
或る特定の好ましい実施の形態では、医薬組成物は、被験体における腫瘍を治療するために使用される。
【0132】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は甲状腺癌である。
【0133】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0134】
第8の態様では、本発明はまた、被験体における腫瘍を治療するための、又は被験体における腫瘍を治療するための医薬の製造のための、第5の態様による改変CVB1又は第6の態様による核酸分子の使用に関する。
【0135】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は甲状腺癌である。
【0136】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【0137】
第9の態様では、本発明はまた、腫瘍を治療する方法であって、治療を必要とする被験体に、有効量の第5の態様に記載される改変CVB1又は有効量の第6の態様に記載される核酸分子を投与する工程を含む、方法に関する。
【0138】
或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、結腸直腸癌、胃癌、肺癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、黒色腫、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、リンパ腫、骨肉腫、前立腺癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、舌癌、鼻咽頭癌、鼻中隔の扁平上皮癌、咽頭扁平上皮癌、下顎腺の扁平上皮癌、喉頭癌、甲状腺癌、甲状腺管癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は、肺癌、食道癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膵臓癌、舌癌、腎臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、及び膀胱癌から選択される。或る特定の好ましい実施の形態では、腫瘍は甲状腺癌である。
【0139】
或る特定の好ましい実施の形態では、前記被験体は、ヒト等の哺乳動物である。
【発明の効果】
【0140】
従来技術と比較して、本発明の技術的解決策は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0141】
本出願の発明者らは、CVB1が幅広いスペクトルの腫瘍死滅活性を有することを初めて見出した。この知見に基づき、本発明は、より高い腫瘍死滅活性及び腫瘍特異性を有するため、腫瘍の治療に単独で使用することができ、また従来の腫瘍治療のための補助的方法として又は他の治療方法がない場合の治療方法として使用することもできる、CVB1ベースの腫瘍溶解性ウイルスを更に提供する。
【0142】
本発明によるCVB1又はその改変形は、正常細胞に対してほとんど又は全く効果を有さず、被験体(例えば、ヒト)に安全に投与することができる。したがって、本発明によるCVB1又はその改変形は、大きな臨床的価値を有する。
【0143】
本発明の実施形態を添付の図面及び以下の実施例と併せて詳細に説明するが、当業者であれば、添付の図面及び以下の実施例は本発明の範囲を限定するのではなく、本発明を例示するためにのみ使用されることを理解するであろう。本発明の様々な対象及び有利な態様は、当業者には以下の図面の詳細な説明及び好ましい実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【
図1A】
図1A~
図1Dは、実施例2におけるヒト膵管上皮細胞系統hTERT-HPNE、ヒト鼻咽頭癌細胞系統CNE、ヒト肝臓癌細胞系統HepG2、ヒト子宮内膜癌細胞系統Ishikawa、ヒト乳癌細胞系統BT-474、ヒト非小細胞肺癌細胞系統EBC-1、ヒト喉頭癌細胞系統HEp-2、ヒト舌癌細胞系統SCC-25、ヒト結腸直腸癌細胞系統HT-29、ヒト卵巣癌細胞系統A2780、ヒト膵臓癌細胞系統AsPC-1及びヒト前立腺癌細胞系統DU145に対する野生型CVB1のin vitro死滅実験の顕微鏡写真を示す図であり、ここで、MOCKは、ウイルスに感染していない細胞を表す。これらの結果は、CVB1が、感染多重度(MOI)1で感染の72時間後に、ヒト腫瘍細胞系統CNE、HepG2、Ishikawa、BT-474、EBC-1、HEp-2、SCC-25、HT-29、A2780、AsPC-1及びDU145に対して顕著な腫瘍溶解効果を示したが、ヒト非腫瘍細胞hTERT-HPNEに対しては効果を有しなかったことを示している。
【
図2】実施例2におけるin vitro転写法により得られた野生型CVB1ウイルスゲノムRNAの1つの試料の電気泳動図を示す図である。
【
図3】実施例2におけるヒト子宮頸癌細胞系統Helaに対する野生型CVB1ウイルスゲノムRNAの死滅効果を示す図である。これらの結果は、CVB1ゲノムRNAでトランスフェクションされたHela細胞がほぼ完全に溶解され、トランスフェクションの48時間後に死に至ることを示している。
【
図4-1】
図4A~
図4Iは、本発明の実施例3におけるヒト乳癌細胞系統BcaP37(A)、ヒト非小細胞肺癌細胞系統A549(B)及びSPC-A-1(C)、ヒトバーキットリンパ腫細胞系統Raji(D)、ヒト子宮内膜癌細胞系統Ishikawa(E)及びHEC-1-B(F)、ヒト子宮頸癌細胞系統Hela(G)及びC-33A(H)、並びにヒト神経膠腫細胞系統GBM(I)に対する野生型CVB1のin vivo抗腫瘍実験の結果を示す図である。これらの結果は、チャレンジ実験群では、腫瘍量当たり10
6のTCID50のCVB1が、2日毎に腫瘍内注射されることを示している。合計5回の処理後に、SCIDマウスにおけるBcaP37細胞、A549細胞、SPC-A-1細胞、Raji細胞、Ishikawa細胞、HEC-1-B細胞、Hela細胞、C-33A細胞又はGBM細胞の皮下接種によって形成された腫瘍の成長は大幅に遅くなって停止し、腫瘍は更には溶解されて消失した。それに対して、腫瘍溶解性ウイルスの処理をしていないネガティブ群(CTRL)の腫瘍は通常の成長を維持し、その腫瘍体積はチャレンジ群の腫瘍よりも有意に大きかった。
【
図5】実施例3におけるヒト神経膠腫細胞系統GBMに対するCVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF及びCVB1-Anti-PD-1のin vivo抗腫瘍実験の結果を示す図である。これらの結果は、チャレンジ実験群では、腫瘍量当たり10
6のTCID50のCVB1又はその改変形が、2日毎に腫瘍内注射されることを示した。10日間にわたる合計5回の処理後に、SCIDマウスにおけるGBM細胞の皮下接種によって形成された腫瘍の成長は停止し、腫瘍は更には溶解されて消失した。それに対して、腫瘍溶解性ウイルスの処理をしていないネガティブ群(CTRL)の腫瘍は通常の成長を維持し、その腫瘍体積はチャレンジ群の腫瘍よりも有意に大きかった。
【発明を実施するための形態】
【0145】
配列情報
本発明に関係する配列の一部の情報を以下の表1に示す。
【0146】
【0147】
本発明を実施するための具体的なモデル
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明するが、これらの実施例は、本発明を例示することを意図するものである(本発明を限定することを意図するものではない)。
【0148】
特段の指示がない限り、本発明で使用される分子生物学実験方法及びイムノアッセイは、基本的にJ. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989及びFM Ausubel et al., Short Protocols in Molecular Biology, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1995を参照した。制限酵素の使用は、製品の製造業者により推奨される条件に従った。実施例に具体的な条件が示されていない場合には、慣用の条件又は製造業者により推奨される条件に従うべきである。製造業者が示されていない使用される試薬又は機器は全て、市販される慣用の製品であった。当業者は、実施例が本発明を例として説明し、本発明の特許請求の範囲を限定することを意図しないことを認識している。本明細書で挙げられる全ての刊行物及び他の参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【実施例】
【0149】
実施例1:CVB1及びその改変形の取得及び準備
1.1 患者の臨床検体からのエンテロウイルスCVB1の分離
(1)患者の咽頭スワブ及び肛門スワブは、中国廈門市の疾病管理予防センター(Center for Disease Control and Prevention of Xiamen City, China)に由来し、アフリカミドリザル腎臓細胞(Vero細胞;ATCC(商標)番号:CCL-81(商標))は、中国国立感染病診断ワクチン開発研究所(National Institute of Diagnostics and Vaccine Development in Infectious Diseases)(廈門大学、中国)によって保管され、10%ウシ胎児血清、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを補充したMEM培地中で培養された。
【0150】
(2)試料処理:患者の咽頭スワブ及び肛門スワブを、検体保存溶液中で十分に撹拌して、スワブに付着したウイルス及びウイルス含有細胞を洗い流した後に、検体保存溶液を4000rpm及び4℃で30分間にわたり高速遠心分離にかけた。
【0151】
(3)接種及び観察:
A.Vero細胞を、24ウェルプレートに1×105細胞/ウェルで播種した。成長培地(10%ウシ胎児血清と、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンとを含有するMEM培地)を吸引し、1mLの維持培地(2%ウシ胎児血清と、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンとを含有するMEM培地)を各ウェル中に加えた。次いで、ネガティブコントロールウェルを除き、各ウェルに50μLの試料上清を接種し、各ウェルをインキュベーターにおいて37℃、5%CO2で培養した。
【0152】
B.細胞を顕微鏡下で1週間にわたり毎日観察し、接種されたウェルにおける特異的な細胞変性効果(CPE)の発生を記録した。
【0153】
C.接種されたウェル中の細胞にエンテロウイルス特異的な細胞変性効果が7日以内に現れたら、細胞及び上清を回収して-80℃で凍結させた。CPEが7日後に現れなかったら、それらの細胞を盲継代した。
【0154】
D.CPEが6回の盲継代の間に現れたら、細胞及び上清を回収して-80℃で凍結させた。6回の盲継代後にCPEが現れなかったら、それらの細胞は陰性と決定した。
【0155】
(4)ウイルスの分離及びクローニング:
RT-PCR(Hou et al., Virus Res 2015, 205: 41-44)及び特定の抗体に基づく酵素結合免疫スポットアッセイ(ELISPOT)(Yang et al. Clin Vaccine Immunol 2014, 21(3): 312-320)によって、臨床検体から分離されたウイルスを特定し、コクサッキーウイルスB群1型陽性培養物を選択して、少なくとも3回のクローニング実験を行った。各実験で限界希釈法によって得られたウイルスクローンもまた、RT-PCR及びELISPOTによって特定し、コクサッキーウイルスB群1型陽性クローンを選択して後続回のクローニングに供した。成長生存力の強い単一のコクサッキーウイルスB群1型株を、腫瘍溶解性ウイルスの候補株として選択した。
【0156】
1.2 感染性クローニング及び逆遺伝学技術に基づくCVB1及びその改変形のレスキュー株の取得
この実施例は、逆遺伝学技術により本発明で使用されるCVB1及びその改変形をどのようにして取得するかを示すために、一例として野生型CVB1(配列番号1)を使用した。具体的な方法は以下の通りとした。
【0157】
(1)ウイルス感染性クローンの構築:野生型CVB1(CVB1-WTと呼称される)のcDNA配列は配列番号1に示されており、そのゲノムRNA配列は配列番号12に示されており、又は遺伝子挿入若しくは置換は、野生型CVB1のcDNA(配列番号1)を基礎とした。以下の改変形が含まれる。
【0158】
改変形1:野生型CVB1の内部リボソーム進入部位配列をヒトライノウイルス2の内部リボソーム進入部位配列(配列番号20に示されるDNA配列を有する)に置き換えることで、配列番号13として示されるゲノムRNA配列を有する組み換えウイルス(CVB1-HRV2と呼称される)のcDNA(配列番号8)を得た。
【0159】
改変形2:miR-133標的配列(配列番号17に示されるDNA配列を有する)及びmiR-206標的配列(配列番号18に示されるDNA配列を有する)のタンデム配列(配列番号19に示されるDNA配列を有する)を野生型CVB1のcDNA(配列番号1)の3’非翻訳領域の7303bpから7304bpの間に挿入することで、配列番号14として示されるゲノムRNA配列を有する組み換えウイルス(CVB1-miR133&206Tと呼称される)のcDNA(配列番号9)を得た。
【0160】
改変形3:ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)遺伝子(配列番号6)を野生型CVB1のcDNA(配列番号1)のVP1遺伝子と2A遺伝子との間に挿入することで、配列番号15として示されるゲノムRNA配列を有する組み換えウイルス(CVB1-GM-CSFと呼称される)のcDNA(配列番号10)を得た。
【0161】
改変形4:ヒトプログラム死受容体1に対する一本鎖抗体(Anti-PD-1 scFv)をコードする配列(配列番号7)を野生型CVB1のVP1遺伝子と2A遺伝子との間に挿入することで、配列番号16として示されるゲノムRNA配列を有する組み換えウイルス(CVB1-Anti-PD-1と呼称される)のcDNA(配列番号11)を得た。
【0162】
上記5つの腫瘍溶解性ウイルスのcDNA配列(配列番号1、配列番号8~配列番号11)を、全遺伝子合成のために遺伝子合成会社(Shanghai Shenggong Bioengineering Co., Ltd.社)に送り、pSVAプラスミド(Hou et al. Human, Virus Res 2015, 205: 41-44)へとライゲーションすることで、CVB1又はその改変形(すなわち、CVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF及びCVB1-Anti-PD-1)の感染性クローニングプラスミドを得た。
【0163】
(2)プラスミドミニキット及び大腸菌DH5αコンピテント細胞は、Beijing Tiangen Biochemical Technology Co., Ltd.社から購入し、Hela細胞(ATCC(商標)番号:CCL-2(商標))及びヒト横紋筋肉腫細胞(RD細胞;ATCC(商標)番号:CCL-136(商標))は、中国国立感染病診断ワクチン開発研究所(廈門大学、中国)によって維持され、10%ウシ胎児血清と、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンとが添加されたDMEM培地及びMEM培地をそれぞれ用いて培養され、トランスフェクション試薬Lipofectamine2000及びOpti-MEMは、Thermo Fisher Scientific社から購入した。
【0164】
(3)上記5つの腫瘍溶解性ウイルスのcDNA配列を含む感染性クローニングプラスミドを、大腸菌DH5αコンピテント細胞へと形質転換し、単クローン株をクローンの成長後に採取して振盪し、プラスミドミニキットを使用してそれらのプラスミドを抽出した後に、シーケンシング分析のために会社(Shanghai Biotech Engineering Co., Ltd.社)に送った。
【0165】
(4)正しい配列を有する感染性クローニングプラスミドとヘルパープラスミドpAR3126とを細胞へと同時トランスフェクションさせることで、ウイルスをレスキューした(Hou et al. Virus Res 2015, 205: 41-44)。Hela細胞をまずはトランスフェクション試薬の使用説明書に従ってトランスフェクションさせた後に、顕微鏡下で観察した。Hela細胞においてCPEが現れたら、細胞及び培養上清を採取し、RD細胞を接種した後に継代培養した。それにより得られたレスキュー株を腫瘍溶解性ウイルスの候補株として使用することができる。
【0166】
実施例2:CVB1及びその改変形のin vitro抗腫瘍実験
2.1 使用されるウイルス及び細胞系統
(1)ウイルス:この実施例では、実施例1に示されるCVB1-WT(配列番号12)、CVB1-HRV2(配列番号13)、CVB1-miR133&206T(配列番号14)、CVB1-GM-CSF(配列番号15)及びCVB1-Anti-PD-1(配列番号16)並びに野生型コクサッキーウイルスB群3型株(以下で、CVB3-WTと呼称される;GenBankデータベースのアクセッション番号:KY286529.1)を使用した。
【0167】
(2)細胞系統:ヒト横紋筋肉腫細胞RD(ATCC(商標)番号:CCL-136(商標))、ヒト結腸直腸癌細胞系統SW1116(ATCC(商標)番号:CCL-233(商標))、SW480(ATCC(商標)番号:CCL-228(商標))及びHT-29(ATCC(商標)番号:HTB-38(商標))、ヒト胃癌細胞系統AGS(ATCC(商標)番号:CRL-1739(商標))、SGC7901(CCTCC寄託番号:GDC150)、BGC823(CCTCC寄託番号:GDC151)及びNCI-N87(ATCC(商標)番号:CRL-5822(商標))、ヒト食道癌細胞系統TE-1(中国科学院上海生物科学研究所細胞資源センター(Cell Resource Center, Shanghai Institute for Biological Sciences, Chinese Academy of Sciences)から購入、番号3131C0001000700089)、ヒト小細胞肺癌細胞系統DMS114(ATCC(商標)番号:CRL-2066(商標))、ヒト非小細胞肺癌細胞系統SPC-A-1(CCTCC寄託番号:GDC050)、NCI-H1975(ATCC(商標)番号:CRL-5908(商標))、NCI-H1299(ATCC(商標)番号:CRL-5803(商標))、A549(ATCC(商標)番号:CCL-185(商標))、NCI-H661(ATCC(商標)番号:HTB-183(商標))、EBC-1(Thermo Fisher Scientific社、カタログ番号:11875101)及びNCI-H1703(ATCC(商標)番号:CRL-5889(商標))、ヒト肝臓癌細胞系統C3A(ATCC(商標)番号:CRL-10741(商標))、HepG2(ATCC(商標)番号:HB-8065(商標))、SMMC7721(中国医学科学院基礎医学研究所基礎医学細胞センター(Basic Medical Cell Center, Institute of Basic Medical Sciences, Chinese Academy of Medical Sciences)から購入、番号:3111C0001CCC000087)、BEL7402(CCTCC寄託番号:GDC035)、BEL7404(中国科学院上海生物科学研究所細胞資源センターから購入、番号:3131C0001000700064)、Huh7(CCTCC寄託番号:GDC134)及びPLC/PRF/5(ATCC(商標)番号:CRL-8024(商標))、ヒト卵巣癌細胞系統SKOV3(ATCC(商標)番号:HTB-77(商標))及びCaov3(ATCC(商標)番号:HTB-75(商標))、ヒト子宮内膜癌細胞系統Hec-1-A(ATCC(商標)番号:HTB-112(商標))、Hec-1-B(ATCC(商標)番号:HTB-113(商標))及びIshikawa(ECACC番号99040201)、ヒト子宮頸癌細胞系統Hela(ATCC(商標)番号:CCL-2(商標))、Caski(ATCC(商標)番号:CRL-1550(商標))及びC-33A(ATCC(商標)番号:HTB-31(商標))、ヒト黒色腫細胞系統SK-MEL-1(ATCC(商標)番号:HTB-67(商標))及びMeWo(ATCC(商標)番号:HTB-65(商標))、ヒト乳癌細胞系統BcaP37(CCTCC寄託番号:GDC206)、BT-474(ATCC(商標)番号:HTB-20(商標))及びMDA-MB-231(ATCC(商標)番号:HTB-26(商標))、ヒト腎臓癌細胞系統A-498(ATCC(商標)番号:HTB-44(商標))及び786-O(ATCC(商標)番号:CRL-1932(商標))、ヒト膵臓癌細胞系統Capan-2(ATCC(商標)番号:HTB-80(商標))、AsPC-1(ATCC(商標)番号:CRL-1682(商標))、SW1990(ATCC(商標)番号:CRL-2172(商標))、HPAF-2(ATCC(商標)番号:CRL-1997(商標))及びCFPAC-1(ATCC(商標)番号:CRL-1918(商標))、ヒト骨肉腫細胞系統U2OS(ATCC(商標)番号:HTB-96(商標))、ヒト前立腺癌細胞系統DU145(ATCC(商標)番号:HTB-81(商標))及びLNCap(ATCC(商標)番号:CRL-1740(商標))、ヒト神経膠腫細胞系統GBM(患者の腫瘍組織から分離された原発腫瘍細胞系統)、ヒト神経芽腫細胞系統SH-SY5Y(ATCC(商標)番号:CRL-2266(商標));ヒト舌扁平上皮癌細胞系統CAL27(ATCC(商標)番号:CRL-2095(商標))及びSCC-25(ATCC(商標)番号:CRL-1628(商標))、ヒト鼻咽頭癌細胞系統CNE(中国医学科学院基礎医学研究所基礎医学細胞センターから購入、番号:3131C0001000700013)、ヒト鼻中隔扁平上皮癌細胞系統RPMI 2650(ATCC(商標)番号:CCL-30(商標))、ヒト喉頭癌細胞系統HEp-2(ATCC(商標)番号:CCL-23(商標))、ヒト甲状腺癌細胞系統SW579(中国国立感染病診断試薬ワクチン開発研究センター(National Engineering Research Center for Diagnostic Reagents and Vaccines for Infectious Disease)によって保管されている)及びヒト甲状腺管癌細胞系統TT(ATCC(商標)番号:CRL-1803(商標))、ヒト膀胱癌細胞系統J82(ATCC(商標)番号:HTB-1(商標))及び5637(ATCC(商標)番号:HTB-9(商標))、ヒトバーキットリンパ腫細胞系統Daudi(ATCC(商標)番号:CCL-213(商標))及びRaji(ATCC(商標)番号:CCL-86(商標));ヒト膵管上皮細胞系統hTERT-HPNE(ATCC(商標)番号:CRL-4023(商標))、ヒト皮膚ケラチノサイト細胞系統HaCat(CCTCC、寄託番号:GDC106)、ヒト胎児肺線維芽細胞系統MRC-5(ATCC(商標)番号:CCL-171(商標))、ヒト包皮線維芽細胞系統HFF-1(ATCC(商標)番号:SCRC-1041(商標))、ヒト前立腺間質細胞系統WPMY-1(ATCC(商標)番号:CRL-2854(商標))、ヒト臍帯静脈内皮細胞系統HUVEC(Thermo Fisher Scientific社、カタログ番号:C01510C)及び分化したヒト肝前駆細胞系統HepaRG(初代肝細胞の特徴を有する;Thermo Fisher Scientific社、カタログ番号:HPRGC10)を含むヒト正常細胞系統。上記細胞は全て中国国立感染病診断ワクチン開発研究所(廈門大学、中国)によって保管された。HepaRG細胞はWME培地(1.5%DMSOを添加)中で培養され、AGS及びTTはF-12K培地中で培養され、SH-SY5YはDMEM:F12(1:1)培地中で培養され、CFPAC-1はIMDM培地中で培養され、RD、C-33A、EBC-1、SK-MEL-1、J82及びDU145はMEM培地中で培養され、Raji、Daudi、5637、786-O、TE-1、Caski、NCI-H1299、NCI-H1703、NCI-H1975、NCI-H661、SGC7901、BGC823、SW1116、HEp-2及びLNCapはRPMI-1640培地中で培養され、その他の細胞はDMEM培地中で培養された。これらの全ての培地には10%ウシ胎児血清、グルタミン及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充した。上記の全ての細胞は37℃及び5%CO2の標準条件下で培養した。
【0168】
2.2 ウイルスの培養
10%ウシ胎児血清、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含有するMEM培地、37℃、5%のCO2、並びに飽和湿度の培養条件下で、RD細胞を10cmの細胞培養プレート上に均等に播種した。細胞コンフルエンスが90%以上に達したら、細胞培養培地を無血清MEM培地と交換し、各プレートに107のTCID50のCVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF又はCVB1-Anti-PD-1を接種した。24時間の連続培養後にCVB1又はその改変形はRD細胞内で増殖し、細胞内でCPEを生じた。90%を超える細胞が収縮して丸くなり、粒状性の増加を示し、剥離して溶解されたら、細胞及びそれらの培養上清を採取した。3回のサイクルの凍結融解後に、培養上清を回収して、4000rpm、10分及び4℃の遠心分離条件下で遠心分離をすることで、細胞片を除去した。最後に上清を0.22μmの使い捨てフィルター(Millipore社)で濾過して、全ての細胞片及び他の不純物を除去した。
【0169】
2.3 ウイルス力価の決定
RD細胞を、96ウェルプレートに104細胞/ウェルの細胞密度でコーティングした。細胞が接着した後に、実施例2.2で得られたウイルス溶液を、10倍から始めて無血清MEM培地で10倍の勾配希釈に供した。50μlの希釈されたウイルスを細胞が入ったウェルに加えた。7日後に、CPEが現れたウェルを観察して記録し、引き続きKarber法を使用して計算した。ここで、計算式は、lgTCID50=L-D(S-0.5)
(式中、L:最高希釈の対数、D:希釈の対数間の差、S:陽性のウェルの割合の合計)であった。それにより計算されたTCID50の単位はTCID50/50μlであり、これはTCID50/mlへと変換されるべきである。
【0170】
2.4 ウイルスのin vitro抗腫瘍実験
ヒト腫瘍細胞及び正常細胞を96ウェルプレートへと104細胞/ウェルで接種した。細胞が接着した後に、各ウェル中の培地を対応する無血清の細胞培養培地と交換し、ウイルスを、それぞれ10、1、0.1及び0.01のMOIで接種した。その後、細胞のCPEを顕微鏡により毎日観察した。
【0171】
図1A~
図1Dは、ウイルスに感染させていない(ネガティブコントロール群、Mock)又はMOI=1でCVB1-WTにより72時間処理されたヒト膵管上皮細胞系統hTERT-HPNE、ヒト鼻咽頭癌細胞系統CNE、ヒト肝臓癌細胞系統HepG2、ヒト子宮内膜癌細胞系統Ishikawa、ヒト乳癌細胞系統BT-474、ヒト非小細胞肺癌細胞系統EBC-1、ヒト喉頭癌細胞系統HEp-2、ヒト舌癌細胞系統SCC-25、ヒト結腸直腸癌細胞系統HT-29、ヒト卵巣癌細胞系統A2780、ヒト膵臓癌細胞系統AsPC-1及びヒト前立腺癌細胞系統DU145の顕微鏡写真を示した。これらの結果により、感染多重度(MOI)1での感染の72時間後に、ウイルス感染群において腫瘍細胞数の大幅な減少、顕著な収縮及び溶解等が検出されるが、Mock群の非腫瘍細胞と比較すると、ウイルスに感染した非腫瘍細胞は細胞形態にほとんど変化を示さないことが示された。上記結果により、CVB1がヒト鼻咽頭癌細胞系統CNE、ヒト肝臓癌細胞系統HepG2、ヒト子宮内膜癌細胞系統Ishikawa、ヒト乳癌細胞系統BT-474、ヒト非小細胞肺癌細胞系統EBC-1、ヒト喉頭癌細胞系統HEp-2、ヒト舌癌細胞系統SCC-25、ヒト結腸直腸癌細胞系統HT-29、ヒト卵巣癌細胞系統A2780、ヒト膵臓癌細胞系統AsPC-1及びヒト前立腺癌細胞系統DU145に対して顕著な腫瘍溶解効果を示すが、ヒト膵管上皮細胞系統hTERT-HPNE等の非腫瘍細胞に対しては効果を有しないことが示された。
【0172】
Cell Counting Kit-8(CCK-8キット;Shanghai Biyuntian Biotechnology Co., Ltd.社)を使用して、72時間のウイルス感染及び培養後の細胞生存率を検出した。具体的な方法は以下の通りであった。
【0173】
接着細胞については、96ウェル細胞培養プレート中の元の培地を直接廃棄し、懸濁細胞については、96ウェル細胞培養プレート中の元の培地は遠心分離後に慎重に廃棄し、その後に、ウェル毎に100μlの新鮮な無血清培地を加えた。10μlのCCK-8溶液を、細胞が接種された各ウェルに添加し、また等量のCCK-8溶液をネガティブコントロールとしてブランク培養培地に添加し、引き続き細胞培養インキュベーター中、37℃で0.5時間~3時間インキュベートした。マイクロプレートリーダーを使用して吸光度を450nmで、それぞれ0.5時間、1時間、2時間、3時間で検出し、吸光度が適切な範囲内であった時点を細胞生存率のための参照として選択した。各種類の細胞に対するCVB1-WTのCCK-8試験結果を表2に示した。ここで、「-」は、ウイルス処理後の細胞生存率がMOCK群の細胞生存率と有意に異ならないことを示し、「+」は、ウイルス処理後に、細胞数が減少し、生存率が依然として50%を超えているが、MOCK群の生存率とは有意に異なることを示し、「++」は、ウイルス処理後の細胞生存率が50%未満であり、MOCK群の細胞生存率とは有意に異なることを示した。
【0174】
細胞生存率の計算は、
細胞生存率(%)=(試験群の読取値-ネガティブ群の読取値)/(ポジティブ群の読取値-ネガティブ群の読取値)×100%
である。
【0175】
【0176】
【0177】
備考:「-」は、ウイルス処理群とMOCK群との間の細胞生存率に有意差がないことを示し、「+」は、ウイルス処理後に、細胞数が減少し、生存率が50%を超えているが、MOCK群の生存率とは有意に異なることを示し、「++」は、ウイルス処理後の細胞生存率が50%未満であり、MOCK群の細胞生存率とは有意に異なることを示した。
【0178】
表2から、CVB1-WTが見つけ出された腫瘍細胞のほとんどに対して死滅効果を有したことが分かる。特に、該ウイルスは結腸直腸癌細胞系統、胃癌細胞系統、肺癌細胞系統、肝臓癌細胞系統、子宮頸癌細胞系統、子宮内膜癌細胞系統、膵臓癌細胞系統、前立腺癌細胞系統、鼻咽頭癌細胞系統、舌癌細胞系統、喉頭癌細胞系統、神経膠腫細胞系統及び神経芽細胞腫細胞系統に対して顕著な死滅効果を有した。一方で、該ウイルスは、ヒト胎児肺線維芽細胞系統MRC-5、ヒト包皮線維芽細胞系統HFF-1、ヒト皮膚ケラチノサイト細胞系統HaCat、ヒト前立腺間質細胞系統WPMY-1及びヒト臍帯静脈内皮細胞系統HUVECを含む試験された非腫瘍細胞系統に対してほぼ無毒であったが、但し、MOI=10ではヒトの正常な膵管上皮細胞系統hTERT-HPNE及び分化したヒト肝前駆細胞系統HepaRGに対して或る一定の毒性を有した。
【0179】
特に、特定の腫瘍に対して或る一定の死滅活性を有することが報告された野生型コクサッキーウイルスB群3型株(CVB3-WT;GenBankデータベースのアクセッション番号:KY286529.1)及びCVB1-WTはコクサッキーウイルスに属するが、2つの株間のゲノム全体のヌクレオチドの相同性はわずか72.8%であり、コーディング領域のヌクレオチドの相同性はわずか71%であり、つまり、これらの株は2つの完全に異なるウイルスであることに注目すべきである。特に、本発明者らは、異なるタイプの腫瘍細胞に対してCVB1-WT及びCVB3-WTの死滅効力を比較することによって、CVB1が、CVB3と比較して顕著に優れた腫瘍死滅効果を有し、見つけ出された腫瘍細胞のほとんどに対して少なくとも数十倍、又は更には数百倍の死滅活性を有することを見出した(表3)。このことから、本発明のCVB1は、比較的低用量でより強力な抗腫瘍活性を生ずることができ、それにより治療効力を保証しつつも投与の安全性を大きく改善することができるため、抗腫瘍治療に特に適していることが分かる。
【0180】
【0181】
備考:「-」は、ウイルス処理群とMOCK群との間の細胞生存率に有意差がないことを示し、「+」は、ウイルス処理後に、細胞数が減少し、生存率が50%を超えているが、MOCK群の生存率とは有意に異なることを示し、「++」は、ウイルス処理後の細胞生存率が50%未満であり、MOCK群の細胞生存率とは有意に異なることを示した;EC50(有効用量の半分)は、本明細書では、細胞生存率が50%に低下するウイルスのMOIを指し、効力の倍数は、本明細書では、特定の細胞に対するCVB1及びCVB3の腫瘍溶解効力の倍数、つまりEC50比を指す。
【0182】
さらに、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF及びCVB1-Anti-PD-1のin vitro抗腫瘍実験の結果は、CVB1の上述の改変形の全てが、見つけ出された腫瘍細胞に対する野生型CVB1の親株の死滅効果を維持し、結腸直腸癌細胞系統、胃癌細胞系統、肺癌細胞系統、肝臓癌細胞系統、子宮頸眼細胞系統、子宮内膜癌細胞系統、膵臓癌細胞系統、前立腺癌細胞系統、鼻咽頭癌細胞系統、舌癌細胞系統、喉頭癌細胞系統、神経膠腫細胞系統及び神経芽細胞腫細胞系統に対する野生型CVB1の親株の顕著な死滅効果を維持することを示した。ここで、ヒト結腸直腸癌細胞系統SW480、ヒト胃癌細胞系統AGS、ヒト子宮内膜癌細胞系統Ishikawa系統及びヒト神経膠腫細胞系統GBMに対する腫瘍溶解活性のCCK-8検出の結果を表4に示した。
【0183】
特に、CVB1-HRV2は、CVB1-WTが弱い死滅活性を示した幾つかの腫瘍細胞に対して顕著な死滅活性を有し、顕著な有益な技術的効果をもたらすことに注目すべきである。ここで、ヒト甲状腺癌細胞系統SW579に対する腫瘍溶解活性のCCK-8検出の結果を表5に示した。
【0184】
【0185】
備考:「-」は、ウイルス処理群とMOCK群との間の細胞生存率に有意差がないことを示し、「+」は、ウイルス処理後に、細胞数が減少し、生存率が50%を超えているが、MOCK群の生存率とは有意に異なることを示し、「++」は、ウイルス処理後の細胞生存率が50%未満であり、MOCK群の細胞生存率とは有意に異なることを示した。
【0186】
【0187】
備考:「-」は、ウイルス処理群とMOCK群との間の細胞生存率に有意差がないことを示し、「+」は、ウイルス処理後に、細胞数が減少し、生存率が50%を超えているが、MOCK群の生存率とは有意に異なることを示し、「++」は、ウイルス処理後の細胞生存率が50%未満であり、MOCK群の細胞生存率とは有意に異なることを示した。
【0188】
2.5 馴化のためのCVB1の連続継代
この実施例では、或る特定の腫瘍細胞における馴化のためにCVB1を連続継代することで、腫瘍細胞に対する死滅活性が高められた株を得た。
【0189】
野生型エンテロウイルスCVB1を、CVB1の腫瘍溶解効果があまり大きくなかったヒト骨肉腫細胞系統U2OS、ヒト甲状腺癌細胞系統SW579及びヒト膀胱癌細胞系統J82における馴化のために連続継代した。具体的な方法は以下の通りであった。
【0190】
上記腫瘍細胞の1種類を10cmの細胞培養プレート上に均等に播種した。培養条件は10%ウシ胎児血清、グルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを含有する対応する細胞培養培地、37℃、5%のCO2、飽和湿度であった。細胞コンフルエンスが90%以上に達したら、細胞培養培地を無血清細胞培養培地と交換し、各プレートに107のTCID50のCVB1ウイルスを接種し、培養環境を33℃、5%のCO2、飽和湿度に変更した。CVB1が腫瘍細胞内で増殖し、細胞内にCPEが引き起こされたら(最長3日間の感染後)、細胞及びそれらの培養上清を採取した。3回のサイクルの凍結融解後に、遠心分離を4℃にて4000rpmで10分間行った。遠心上清を採取し、90%より高いコンフルエンスの新しい腫瘍細胞上に加えることで、1回のウイルスの継代が完了した。継代をこのように11回以上繰り返し、RD細胞におけるウイルス力価測定のために、各回の継代のウイルス溶液の一部を採取した。具体的な方法は実施例2.3を参照した。一般的に、ウイルス複製能力は世代が増すにつれ増加すると考えられる。比較的高い感染力価に達し、ウイルス複製が腫瘍細胞において安定した場合に、その腫瘍細胞に馴化されたCVB1株が得られた。
【0191】
引き続き、実施例2.4に記載されるin vitro抗腫瘍実験法により、ヒト腫瘍細胞U2OS、SW579又はJ82を96ウェルプレートに104細胞/ウェルで接種した。細胞が接着した後に、各ウェル中の培地を対応する無血清の細胞培養培地と交換し、その後に37℃で30分間インキュベートし、次いで、上記種類の細胞の各々について馴化された連続継代されたCVB1株(ウイルス力価はRD細胞で検出された)を、それぞれ10、1、0.1及び0.01のMOIで接種した。引き続き、細胞のCPEを顕微鏡で毎日観察し、ウイルスの感染及び培養の72時間後にCCK-8法を使用して細胞生存率を検出した。
【0192】
これらの結果を表6に示した。CVB1が不十分な腫瘍溶解効果を有する種類の腫瘍細胞における野生型CVB1の連続継代後に、腫瘍細胞に対するその死滅活性は大幅に高められ、こうして上述の連続継代法によって、腫瘍細胞に対する腫瘍溶解効果が高められたCVB1馴化株を得ることができることが指摘される。
【0193】
【0194】
備考:「-」は、ウイルス処理群とMOCK群との間の細胞生存率に有意差がないことを示し、「+」は、ウイルス処理後に、細胞数が減少し、生存率が50%を超えているが、MOCK群の生存率とは有意に異なることを示し、「++」は、ウイルス処理後の細胞生存率が50%未満であり、MOCK群の細胞生存率とは有意に異なることを示した。
【0195】
2.6 CVB1のゲノムRNAの腫瘍溶解効果の評価
この実施例では、CVB1の精製されたゲノムRNAを或る特定の種類の腫瘍細胞にトランスフェクションさせることにより、大量のCVB1の感染性の生ウイルスが産生されるため、該腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0196】
ウイルスのゲノムRNAを、まずはin vitro転写によって得た。この方法は、例えばHadac E M, Kelly E J and Russell S J. Mol Ther, 2011, 19(6): 1041-1047に見出すことができる。具体的には、実施例1で得られた野生型CVB1の感染性クローニングプラスミドを線状化し、線状化されたプラスミドを、MEGAscript(商標)T7 Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific社、AM1333)を用いるin vitro転写のための鋳型として使用することで、大量のウイルスRNAを産生させた。そして得られたウイルスRNAを、MEGAclear(商標)Transcription Clean-Up Kit(Thermo Fisher Scientific社、AM1908)を使用して後続使用のために精製した。1つの試料のRNA電気泳動図を
図2に示した。
【0197】
引き続き、実施例2.4に記載されるin vitro抗腫瘍実験の方法に従って、ヒト子宮頸癌腫瘍細胞系統Helaを、24ウェルプレートに105細胞/ウェルで接種した。細胞が接着した後に、各ウェル中の培地を、対応する無血清の細胞培養培地と交換し、その後に37℃で30分間インキュベートした。次いで、トランスフェクション試薬Lipofectamine(商標)2000(Thermo Fisher Scientific社、11668019)を使用して、Hela細胞に1ウェル当たり1μgで精製されたウイルスRNAをトランスフェクションさせ、ネガティブコントロール群には無関係のRNA核酸分子をトランスフェクションさせた。引き続き、細胞のCPEを顕微鏡により毎日観察した。
【0198】
これらの結果は、トランスフェクションの約8時間後にCVB1のゲノムRNAがトランスフェクションされたHela細胞にCPEが現れ始め、その後に、細胞変性が徐々に増加することを示した。48時間後に、CCK8法を使用して生存率を測定した。Hela細胞は、ほとんど全てが死滅して溶解された。そして感染の0時間後及び48時間後のHela細胞の顕微鏡写真を
図3に示した。培養上清を新しいHela細胞へと接種すると、CPEが素早く生じた。これらの結果により、CVB1の核酸による直接投与も優れた死滅活性を有し、腫瘍の治療に使用することができることが示された。
【0199】
実施例3:CVB1及びその改変形のin vivo抗腫瘍実験
3.1 ウイルス、細胞系統及び実験動物
(1)ウイルス:この実施例では、実施例1に示されるCVB1-WT(配列番号12)、CVB1-HRV2(配列番号13)、CVB1-miR133&206T(配列番号14)、CVB1-GM-CSF(配列番号15)及びCVB1-Anti-PD-1(配列番号16)を使用した。ウイルス培養及びウイルス力価の決定方法については、それぞれ実施例2.2及び実施例2.3を参照のこと。
【0200】
(2)細胞系統:ヒト乳癌細胞系統BcaP37(CCTCC寄託番号:GDC206)、ヒト非小細胞肺癌細胞系統A549(ATCC(商標)番号:CCL-185(商標))及びSPC-A-1(CCTCC寄託番号:GDC050)、ヒトバーキットリンパ腫細胞系統Raji(ATCC(商標)番号:CCL-86(商標))、ヒト子宮内膜癌細胞系統Ishikawa(ECACC番号99040201)及びHEC-1-B(ATCC(商標)番号:HTB-113(商標))、ヒト子宮頸癌細胞系統Hela(ATCC(商標)番号:CCL-2(商標))及びC-33A(ATCC(商標)番号:HTB-31(商標))、並びにヒト神経膠腫細胞系統GBM(患者の腫瘍組織から分離された原発腫瘍細胞系統)。RPMI-1640培地を用いてRajiを培養すること及びMEM培地を用いてC-33Aを培養することを除いて、上記細胞はDMEM培地を用いて培養され、上記培地には10%ウシ胎児血清、グルタミン及びペニシリン-ストレプトマイシンを補充した。上記の全ての細胞は37℃及び5%CO2の標準条件下で培養した。
【0201】
(3)実験動物:6週齢~8週齢の雌のC.B17 SCIDマウスは、Shanghai Silaike Experimental Animal Co., Ltd.社から得られ、これらのマウスは廈門大学の実験動物センター及び倫理委員会により承認されたプロトコルに従ってSPF条件下で飼育された。
【0202】
3.2 ウイルスのin vivo抗腫瘍実験
SCIDマウスにおける皮下腫瘍形成のために使用された腫瘍細胞を0.01%のトリプシンで消化し、次いで10%のウシ胎児血清を含む細胞培養培地を使用して再懸濁して、単一細胞懸濁液にした。その懸濁液の細胞密度を計数した。細胞を1000gで3分間の遠心分離により沈殿させた後に、細胞を適切な容量のPBSで再懸濁して、約106細胞/100μl(PBS)~107細胞/100μl(PBS)の濃度に到達させた。腫瘍細胞を注射器でSCIDマウスの背部に106細胞/100μl(PBS)/部位~107細胞/100μl(PBS)/部位で皮下接種した。腫瘍細胞が約14日~21日後にSCIDマウスの皮下で約100mm3の腫瘍量を形成したら、担癌のSCIDマウスを実験群(CVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF又はCVB1-Anti-PD-1を投与する)及びネガティブコントロール群に無作為に分けた。ここで各群には4匹の動物(n=4)が含まれる。106のTCID50/100μl(無血清培地)/腫瘍量での腫瘍溶解性ウイルス(CVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF又はCVB1-Anti-PD-1)又は同等量の無血清培地を、合計5回の処理につき2日毎に腫瘍内注射した。腫瘍サイズをノギスで計測し、2日毎に記録した。腫瘍サイズの計算方法は以下の通りであった。
腫瘍サイズ(mm3)=腫瘍の長さの値×(腫瘍の幅の値)2/2
【0203】
上記の6種の腫瘍に対するCVB1-WTの処理結果を、それぞれ
図4A~
図4Iに示した。これらの結果は、CVB1-WTのチャレンジ後に、BcaP37(A)、A549(B)、SPC-A-1(C)、Raji(D)、Ishikawa(E)、HEC-1-B(F)、Hela(G)、C-33A(H)及びGBM(I)の見つけ出さた腫瘍の成長が徐々に遅くなって停止し、更に腫瘍は溶解して消失するが、それに対して、ネガティブ群(CTRL)の腫瘍は正常な成長を維持し、その腫瘍サイズは実験群の腫瘍サイズよりも有意に大きいことを示した。
【0204】
図5は、GBM腫瘍モデルを10日間にわたりCVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF又はCVB1-Anti-PD-1で処理した後に得られた結果を示した。これらの結果は、それぞれCVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF及びCVB1-Anti-PD-1で処理した後に、腫瘍溶解性ウイルスで処理されていないネガティブコントロール群と比較して腫瘍体積が有意に減少し、更にはほとんど消失し、5種の腫瘍溶解性ウイルスで処理した後の腫瘍体積の減少の程度は同様であったことを示した。上記の結果は、CVB1-WT、CVB1-HRV2、CVB1-miR133&206T、CVB1-GM-CSF及びCVB1-Anti-PD-1の全てがin vivoで顕著で好ましい抗腫瘍活性を示すことを示した。
【0205】
本発明の具体的な実施形態を詳細に説明したが、当業者は、公開されているあらゆる教示に基づいて、その詳細に対して様々な修正及び変更を加えることができ、これらの変更が本発明の範囲内であることを理解するであろう。本発明の全体は、添付の特許請求の範囲及びそれらのあらゆる等価物によって与えられる。
【配列表】