(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】フルオロ置換ポルフィリン化合物、該化合物を含む医薬組成物、並びに該化合物を調製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 487/22 20060101AFI20230825BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20230825BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20230825BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230825BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C07D487/22 CSP
A61K31/555
A61K31/375
A61K45/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020517334
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(86)【国際出願番号】 US2018052826
(87)【国際公開番号】W WO2019067523
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-24
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502363490
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】バティニック-ハベルレ,イネス
(72)【発明者】
【氏名】トブマシャン,アルタック
(72)【発明者】
【氏名】スパソジェヴィック,アイヴァン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/080881(WO,A1)
【文献】特表2012-506425(JP,A)
【文献】特開平02-138280(JP,A)
【文献】特表2020-502280(JP,A)
【文献】Artak TOVMASYAN et al.,Anticancer therapeutic potential of Mn porphyrin/ascorbate system,Free Radical Biology & Medicine,2015年,vol.89,p.1231-1247
【文献】上瀧 萌など,ビタミンCの抗がん剤としての有効性-がん細胞におけるアスコルビン酸の毒性作用機序-,ビタミン,2013年,87(3),p.159-163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/22
A61K 31/555
A61K 31/375
A61K 45/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の化合物
【化1】
ここで、
R
1は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたC3~C8の直鎖又は分岐されたアルキル、又は、2-フルオロエチルであり、且つ、
Xはハロゲンイオン、PF
6、トシレート、ベシレート、又はメシレートである。
【請求項2】
前記化合物が、下記の式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、又は式(X)で表される構造を有する、請求項1に記載の化合物、
【化2】
ここで、Xはハロゲンイオン、PF
6、トシレート、ベシレート、又はメシレートである。
【請求項3】
医薬的に許容される担体中に、請求項1又は2に記載の化合物を含む組成物であって、上記組成物中の全メタロポルフィリンの少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99重量パーセントが、前記の式
(I
)、式
(II
)、式
(III
)、式
(IV
)、式
(V
)、式
(VI
)、式
(VII
)、式
(VIII
)、式
(IX
)、又は式
(X
)の化合物からなる、前記組成物。
【請求項4】
アスコルベートをさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
対象における腫瘍増殖を阻害する及び/又は癌を処置する剤であって、腫瘍成長阻害及び/又は処置の有効量で、請求項1若しくは2に記載の化合物又は請求項3記載の組成物を含む、前記剤。
【請求項6】
前記剤が、少なくとも1つの追加の薬剤及び/又は療法と組み合わせて、前記対象に投与される、請求項5に記載の剤。
【請求項7】
前記少なくとも1つの追加の薬剤及び/又は療法が、アスコルベートの投与、及び/又は放射線療法及び/又は化学療法を含む、請求項6に記載の剤。
【請求項8】
前記対象が、ヒトである、請求項5~7のいずれか1項に記載の剤。
【請求項9】
前記癌が、乳癌又は前立腺癌である、請求項5~8のいずれか1項に記載の剤。
【請求項10】
前記化合物が、0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記対象に投与される、及び/又は、前記化合物がアスコルベートと共に前記対象に投与され、該アスコルベートが、0.1mg/kg~5g/kgの量で存在する、請求項5~9のいずれか1項に記載の剤。
【請求項11】
対象における腫瘍増殖を阻害する及び/又は癌を処置する組成物であって、腫瘍成長阻害及び/又は処置の有効量で該組成物を含む、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項12】
請求項5に記載の剤を含むキットであって、少なくとも1つの追加の薬剤をさらに含む、前記キット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの追加の薬剤がアスコルベートである、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記アスコルベートが0.1mg/kg~5g/kgの量で前記対象に投与される、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記対象が、ヒトである、請求項12~14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
前記癌が、乳癌又は前立腺癌である、請求項12~15のいずれか1項に記載のキット。
【請求項17】
前記化合物が、0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記対象に投与される、請求項12~16のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
前記化合物が、少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせて、前記対象に投与される、請求項12に記載のキット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの追加の薬剤がアスコルベートを含み、及び該少なくとも1つの追加の薬剤が放射線療法及び/又は化学療法と組合わせて投与される、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
アスコルベートが、0.1mg/kg~5g/kgの量で前記対象に投与される、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記対象が、ヒトである、請求項12~20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
前記癌が、乳癌又は前立腺癌である、請求項12~21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
前記化合物が、0.05mg/kg~1mg/kgの量で前記対象に投与される、請求項12~22のいずれか1項に記載のキット。
【請求項24】
放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する剤であって、請求項1若しくは2に記載の化合物又は請求項3に記載の組成物を含み、前記剤が、放射線及び/又は化学療法の曝露の前、その期間中及び/又はその後に前記対象に投与される、前記剤。
【請求項25】
前記化合物が、0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記対象に投与される、請求項24に記載の剤。
【請求項26】
アスコルベートが、0.1mg/kg~5g/kgの量で前記対象に投与される、請求項24又は25に記載の剤。
【請求項27】
前記化合物及び/又はアスコルベートが、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される30分~4日前又は1時間~48時間前に、該対象に投与される、請求項5~10及び24~26のいずれか1項に記載の剤。
【請求項28】
前記化合物及び/又はアスコルベートが、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される間に該対象に投与される、及び/又は前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される後に該対象に投与される、請求項5~10及び24~26のいずれか1項に記載の剤。
【請求項29】
前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露された後、前記化合物及び/又はアスコルベートが、1週間当たり、1、2、3、4、5、6又は7回、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12週間投与される、請求項5~10及び24~26のいずれか1項に記載の剤。
【請求項30】
前記対象における放射線誘発性の正常組織の傷害を処置及び/又は予防する、請求項24~29のいずれか1項に記載の剤。
【請求項31】
前記方法が、炎症に起因する及び/又はそれにより引き起こされた対象組織の損傷を処置及び/又は防止する、請求項24~30のいずれか1項に記載の剤。
【請求項32】
放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防するキッ
トであって、請求項1若しくは2に記載の化合物又は請求項3記載の組成物を含み、前記化合物又は組成物が、放射線及び/又は化学療法の曝露の前、その期間中及び/又はその後に前記対象に投与される、前記キット。
【請求項33】
アスコルベートをさらに含み、アスコルベートが、前記対象が放射線及び/又は化学療法の曝露の前、その期間中及び/又はその後に、該対象に投与される、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記化合物が、0.01mg/kg~5mg/kgの量で前記対象に投与される、請求項32又は33に記載のキット。
【請求項35】
アスコルベートが、0.1mg/kg~5g/kgの量で前記対象に投与される、請求項33に記載のキット。
【請求項36】
前記化合物が、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される30分~4日前又は1時間~48時間前に、該対象に投与される、請求項12~22及び32~35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項37】
アスコルベートが、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される30分~4日前又は1時間~48時間前に、該対象に投与される、請求項13、14及び33のいずれか1項に記載のキット。
【請求項38】
前記化合物が、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される間に該対象に投与される、及び/又は前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される後に、該対象に投与される、請求項12~23及び32~35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項39】
アスコルベートが、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される間及び/又はその後に、該対象に投与される、請求項13、14及び33のいずれか1項に記載のキット。
【請求項40】
前記化合物が、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露された後、1週間当たり、1、2、3、4、5、6又は7回投与され、及び/又は前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露された後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12週間投与される、請求項12~23及び32~35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項41】
アスコルベートが、前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露された後、1週間当たり、1、2、3、4、5、6又は7回投与され、及び/又は前記対象が放射線及び/又は化学療法に曝露された後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12週間投与される、請求項33のいずれか1項に記載のキット。
【請求項42】
前記放射線の曝露が、5~100Gyの総線量又は30~90Gyの総線量を含む、請求項19、32~35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項43】
前記対象における放射線誘発性の正常組織の傷害を処置及び/又は予防する為の、請求項12~23及び32~42のいずれか1項に記載のキット。
【請求項44】
炎症に起因する及び/又はそれにより引き起こされた対象組織の損傷を処置及び/又は防止する為の、請求項12~23及び32~43のいずれか1項に記載のキット。
【請求項45】
対象における腫瘍増殖を阻害する及び/又は癌を処置する方法、又は放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する方法を実行する際に使用する為の、又は対象における腫瘍増殖を阻害する及び/又は癌を処置する方法、又は放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する方法を実行する為の医薬品の調製の際に使用する為の、請求項1若しくは2に記載の化合物。
【請求項46】
対象における腫瘍増殖を阻害する及び/又は癌を処置する方法、又は放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する方法を実行する際に使用する為の、又は対象における腫瘍増殖を阻害する及び/又は癌を処置する方法、又は放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する方法を実行する為の医薬品の調製の際に使用する為の、請求項3若しくは4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、2017年9月29日付の出願の米国仮特許出願第62/565,436号の利益及びそれに付与された優先権を主張し、その開示は、参照によってその全体が本明細書に取り込まれる。
【0002】
政府支援の記載
本発明は、米国立衛生研究所により授与された認可番号5-P30-CA14236-29に基づき、政府支援を受けてなされた。政府は、本発明において所定の権利を有する。
【0003】
本発明は、フルオロ置換ポルフィリン化合物、該化合物の製造方法、該化合物を含む医薬製剤の製造方法、及びそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
化合物Mn(III)オルトN-ブトキシエチルピリジルポルフィリン(下記の式001;MnTnBuOE-2-PyP5+と略記されることもある)は公知であり、且つZ.Rajic等,Free Radical Biology & Medicine 53,1828-1834 (2012年)に記載されている。
【0005】
【0006】
式001のXが、Cl-である場合、化合物はMn2又はMnBuOEと略記されうる。すなわち、Mn2又はMnBuOEが言及又は参照される場合、Cl-が該化合物についてのアニオンであることが理解されるべきである。
【0007】
この化合物は、炎症性肺疾患、神経変性疾患、放射線障害、癌、糖尿病、心臓の状態、及び鎌状赤血球症の処置を含む様々な治療活性を有するとして記載されている。一般的にBatinic-Haberle等の米国特許第8,618,089号明細書を参照されたい。
【0008】
国際出願公開番号、国際公開第2010/080881号パンフレットは、一般に、ポルフィリンが、その中で「1以上のフッ素と」置換されうること(例えば、9頁の段落[0048]及び[0049]を参照)を提案する。フッ素は更に、国際公開第2010/080881号パンフレットの10~12頁に記載の表1及び段落[0055]と関連して、非常に多くの他の選択肢と共に記載されている。フルオロポルフィリンの仮想例が、実施例6、7、及び8において、下記の通り提案されている:
【0009】
【0010】
しかしながら、国際公開第2010/080881号パンフレットの実施例6、7、及び8で提案されたフルオロポルフィリン、又は当該事案の為のいずれのフルオロポルフィリン化合物についても、その合成の実際の実施について、上記出願の発明の詳細な説明において全く示されていない。事実、選択的にフッ素化された化合物の調製は、困難且つ複雑な事案として広く知られている。例えば、Wagner等.(2009年) J.Nat.Prod.72,540-553は、「しかしながら、化学的ハロゲン化はしばしば、過酷な反応条件を必要とし、そして望ましくない副生成物の形成を結果としてもたらす」と、要約中で記載している。Liang等.(2013年) Angew.Chem.Int.Ed.52,8214-8264は、「フッ素の有用性については長年評価されているにもかかわらず、フッ素化方法は、なおも一般性、実用性、及び予測性が欠けている。主に、フッ素の電気陰性度が高いこと、及びフッ化物アニオンの水和エネルギーが高いことに起因して、炭素-フッ素結合形成は化学的変換における難問である」と、8215頁に記載している。Amii等.(2013年) Beilstein J.Or.Chem.9,2793-2802は、「有機フッ素化合物の合成は、なおも幾つかの問題、例えばフッ素化試薬の取り扱いや化学反応の制御における困難、にしばしば直面する。更に、フッ素を含む中間体の安定性が低いこと、及び反応の選択性(ケモ、レジオ-、及び/又はステレオ-)が低いことから、フルオロケミカルの合成の進歩を妨げている」と、第2793~2794頁に記載している。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一つの観点において、下記の式Iの化合物が提供される:
【0012】
【化3】
ここで、R
1は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたC1~C8アルキル(例えば、1~17個のフッ素原子で置換されたC1~C8アルキル)であり、且つ、Xはアニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0013】
本発明の一つの観点において、下記の式IIの化合物(MnTFE-2-PyP5+及びMnFEとも云われる)が提供される:
【0014】
【化4】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
式IIの化合物において、XがCl
-である場合、該化合物はMn3と呼ばれうる。従って、Mn3が参照又は言及される場合、Cl
-が該化合物についてのアニオンであると理解されるべきである。
【0015】
本発明の別の観点において、下記の式IIIの化合物(MnTF3Pen-2-PyP5+及びMnF3Penとも云われる)が提供される:
【0016】
【化5】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
式IIIの化合物において、XがCl
-である場合、該化合物はMn4と呼ばれうる。従って、Mn4が参照又は言及される場合、Cl
-が該化合物についてのアニオンであると理解されるべきである。
【0017】
本発明の更なる観点において、下記の式IVの化合物(MnTF3Pr-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0018】
【化6】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0019】
本発明の更なる観点において、下記の式Vの化合物(MnTF3Bu-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0020】
【化7】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0021】
本発明の更なる観点において、下記の式VIの化合物(MnTF5Pen-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0022】
【化8】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0023】
本発明の更なる観点において、下記の式VIIの化合物(MnTF3Hex-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0024】
【化9】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0025】
本発明の更なる観点において、下記の式VIIIの化合物(MnTF5Hex-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0026】
【化10】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0027】
本発明の更なる観点において、下記の式IXの化合物(MnTF7Hex-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0028】
【化11】
ここで、Xは、アニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0029】
本発明の更なる観点において、下記の式Xの化合物(MnTF9Hex-2-PyP5+とも云われる)が提供される:
【0030】
【化12】
ここで、Xはアニオン(例えば、PF
6
-又はCl
-)である。
【0031】
本発明の別の観点において、医薬的に許容される担体中に、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xの化合物を含む組成物であって、上記組成物中の全メタロポルフィリンの少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99重量パーセントが、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xの化合物である、上記組成物が提供される。
【0032】
本発明の別の観点において、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xの化合物を投与することを含む、対象における腫瘍増殖を阻害する方法が提供される。幾つかの観点において、該方法は、追加の薬剤及び/又は療法の投与、例えば、アスコルベートの投与、及び/又は、放射線療法及び/又は化学療法の投与、を含みうる。
【0033】
本発明の別の観点において、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xの化合物を含む組成物を投与することを含む、対象における癌を処置する方法が提供される。幾つかの観点において、該方法は、追加の薬剤及び/又は療法の投与、例えば、アスコルベートの投与、及び/又は、放射線療法及び/又は化学療法の投与、を含みうる。
【0034】
本発明の更なる観点は、放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する方法に向けられており、該方法は、放射線及び/又は化学療法の曝露の前、その期間中及び/又はその後に、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xの化合物、及び任意的に、アスコルベートを対象に投与することを含む。
【0035】
本発明の別の観点は、癌とは無関係でありうる酸化ストレス傷害、例えば、以下のものの限定されるものではないが、皮膚障害、糖尿病、中枢神経系(CNS)損傷、及び/又は心臓関連疾患、を対象において抑制する方法に向けられている。
【0036】
1つの実施態様に関して記載された本発明の観点は、それに関連して特に記載されていないが、種々の実施態様において組み込まれうることに留意されたい。すなわち、全ての実施態様及び/又は任意の実施態様の特性は、任意のやり方及び/又は組み合わせで併用されることができる。本出願人は、任意の他の1以上の請求項の任意の特性に従属し、及び/又はそれを組み込む為に、そのような様式で出願当初特許請求されなかったが、当初出願された任意の請求項を修正することができる権利を含む、当初出願された任意の請求項に変更を加える権利及び/又は新たな任意の請求項を提出する権利を留保する。本発明のこれらの及び他の目的及び/又は観点は、以下に記載された明細書において詳細に説明される。本発明の更なる特性、有利点、及び詳細は、下記の図面及びそれに続く好ましい実施態様の詳細な記載を読むことによって当業者によって理解されるであろうが、そのような記載は本発明の単なる例示にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、フッ素化及び非フッ素化のMnポルフィリンの開発を示す図である。アルキル、MnTE-2-PyP
5+(Mn1(それはアニオンとしてCl
-を有する)且つMnEとも云われる)、MnTnHex-2-PyP
5+、及びアルコキシアルキルMnTnBuOE-2-PyP
5+(Mn2)は、第1世代、第2世代、及び第3世代の化合物である。改善された特性を有する第4世代の新しいフッ素化(F)化合物、MnTFE-2-PyP
5+(Mn3)及びMnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)、が開発された。酸化還元特性(E
1/2、及びlog(k
cat(O
2
-)))は、それらが優れた酸化還元特性を保持し、一方、バイオアベイラビリティー及び安全性/毒性プロファイルを改善したことを示す。
【
図2】
図2は、MnTnBuOE-2-PyP
5+(Mn2、MnBuOEとも云われる)とMnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4、MnF
3Penとも云われる)との抗癌効果を示す図である。メスのBalb/cマウスが、100万個の細胞を皮下(側腹部上)に注射された。腫瘍が平均60~80mm
3の体積に達したときに、2種類のMnポルフィリン、BMX-001(MnTnBuOE-2-PyP
5+及びMnTnF
3Pen-2-PyP
5+)が、0.2mg/kg/日で皮下に注射され、そして以後毎日継続された;用量は非常に低く、臨床的に意義があり、且つMnポルフィリンの触媒能力を示す。また、アスコルベート(Asc)の注射が、最初の6日間、4g/kg/日で、そして次に試験終了の24時間前までに1g/kg/日で開始した。Mnポルフィリンの初回注射の24時間後に、放射線が、3日間、1日当たり2.5Gyで開始した。フラクション化された放射線処置体制が、臨床シナリオをより良好に反映させる為に使用された。MnPの効果に対する放射線及びアスコルベートそれぞれの寄与を見分けることができるように、臨床的用量との比較が容易である線量よりも低い放射線(RT)線量が使用された。薬物の注射は、毎日継続された。マウスが平均約2000mm
3の体積に達したときに試験が完了されると、マウスは絶命処置を受け、そして腫瘍、反対側の脚に由来する正常な筋肉、及び肝臓が集められ、そしてMnポルフィリンのレベルがLCMS/MSによって分析された。
【
図3】
図3は、マンガンポルフィリン単独で、又は放射線(RT)とアスコルベート(Asc)との組み合わせで処置されたPC3細胞のクローン原性生存率を示す図である。侵襲性前立腺腫瘍PC-3細胞が、PBS、MnTE-2-PyP
5+(Mn1)、又はMnTFE-2-PyP
5+(Mn3)で、0.1μM、0.5μM、及び1μMの用量を用いて、一晩処置された。翌日、各処置群の半分が、0.5mMのアスコルベート中で1時間インキュベートされ、次に、擬似照射された、又は2Gy/分の線量率で1GyのX線(UNMCで、Rad Source RS-2000 X線照射装置)に曝露された。放射線処置の直後に、細胞がトリプシン処理され、分離され、そして計測された。各サンプルは、段階的に稀釈され、そして3回の技術的反復実験において、500個細胞/ウェルで、6ウェルプレート中に播種された。該細胞は、11日間増殖状態に置かれ、次に70%EtOHを用いて固定され、そして0.5%クリスタルバイオレット及び25%メタノール中で染色された。50個以上の細胞を有するコロニーが計測され、そして播種された細胞のうち、生存フラクションとして報告され、同一密度での未処置細胞の播種効率に標準化された。これらの実験が、3回繰り返され、そして平均値及びSEMが報告された。
【
図4】
図4は、現在、臨床試験中の非フッ素化化合物MnTnBuOE-2-PyP
5+(Mn2)よりもフッ素化MnTFE-2-PyP
5+(Mn3)の優れた特性、及びアスコルベートの酸化を触媒するMnPの、スペクトル的に評価された能力を示す図である。Mn3は、下記を有する:(パネルA)マウス毒性が約1/10に低下;(パネルB)SODの模倣に関して大幅に改善された酸化還元活性;(パネルC)アスコルベート(Asc)酸化(H
2O
2生成を結果として生じ、その後シグナル伝達タンパク質のシステイン変性においてそれが利用され、これにより酸化ストレスに影響を及ぼすプロセス)に関しての増加された触媒能力;(パネルD)MnP/Ascは好気条件下で循環したが、それによって酸素がスーパーオキシドへの還元を通じて消費され、それは更にH
2O
2に変わる。アスコルベートの酸化速度が、好気条件([O
2]=0.255mM)下、25±1℃及び0.05Mのリン酸塩又はトリスバッファーを用いて維持されたpH7.8において、10μMのMnP及び1mMのAscを用いて測定された。フッ素化化合物Mn3は、MnP投与を頻繁に制限する低血圧症は10倍低いことを示す。
【
図5】
図5は、アスコルベートの初期酸化速度を決定することによりスペクトル的に評価された、アスコルベートの酸化(その後過酸化水素形成を形成し、ひいては腫瘍を殺傷する)を触媒するMnPの能力を示す図である。MnP/Ascは好気条件下で循環し、それによってスーパーオキシドへの還元及びその後続するH
2O
2への還元を通じて酸素が消費される。アスコルベート酸化速度が、好気条件([O
2]=0.255mM)下、25±1℃で、及び0.05Mのリン酸塩又はトリスバッファーのいずれかを用いて維持されたpH7.8において、10μMのMnP及び1mMのAscを用いて測定された。縞模様のバーは、フッ素化化合物、モノフルオロエチル化MnTFE-2-PyP
5+(MnFE、Mn3)とエチル化MnTE-2-PyP
5+(MnE、Mn1)、及びトリフルオロペンチル化MnTFe
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)とペンチル化MnTnPen-2-PyP
5+に対応する。非フルオロ化合物はフルオロ類似体の前に記載されている。
【
図6】
図6は、フルオロ-MnP及びその非フッ素化類似体の親油性を示す図である。フッ素化は、TLC保持因子、R
f(化合物のパス/溶媒のパス)を用いて記載されている通り、MnPの親油性を高める。R
fは、上述の通り、アセトニトリル:KNO
3(飽和):水=8:1:1を用いてシリカゲルプレート上で得られた(Tovmasyan A,Carballal S,Ghazaryan R,Melikyan L,Weitner T,Maia CG,Reboucas JS,Radi R,Spasojevic I,Benov L,and Batinic-Haberle I.Rational Design of Superoxide Dismutase (SOD) Mimics:The Evaluation of the Therapeutic Potential of New Cationic Mn Porphyrins with Linear and Cyclic Substituents.Inorg Chem 53:11467-83,2014年)。R
fが大きいほど、化合物は親油性である。
【
図7】
図7は、腫瘍、筋肉、及び肝臓における、フルオロ(MnTFE-2-PyP
5+、MnFE、Mn3)及び非フルオロMnポルフィリン(MnTE-2-PyP
5+、MnE、Mn1、及びMnTnBuOE-2-PyP
5+、MnBuOE、Mn2)のバイオアベイラビリティーを示す図である。極性及び親油性の差異から生じるバイオアベイラビリティー及び反応性の劇的な差異は、治療効果に影響を及ぼす。データは、
図1及び
図7と同一の実験計画(但し、全てのMnPが
図1では0.2mg/kg、及び
図7では2mg/kgで投与される点が唯一の差異である)が使用された側腹部sc 4T1マウス試験から得られる。
【
図8】
図8は、マウス側腹部4T1乳癌モデルにおける、MnTFE-2-PyP
5+(MnFE、Mn3)とMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)とMnTE-2-PyP
5+(MnE、Mn1)の抗癌効果を示す図である。条件は、Mnポルフィリンが2mg/kgで投与される点を除き、
図1と同一である。メスのBalb/cマウスが、100万個の細胞を皮下(側腹部上)に注射された。腫瘍が平均60~80mm
3の体積に達したときに、2種類のMnポルフィリン、BMX-001(MnTnBuOE-2-PyP
5+)及びMnTnFE-2-PyP
5+、が、2mg/kg/日で皮下に注射され、そして以後毎日継続された;用量は非常に低く、臨床的に意義があり、且つMnポルフィリンの触媒能力を示す。また、アスコルベート(Asc)の注射が、最初の6日間、4g/kg/日で、次に試験終了の24時間前まで1g/kg/日で開始された。Mnポルフィリンの初回注射後24時間後、放射線が、3日間、1日当たり2.5Gyで開始した。フラクション化された放射線処置体制が、臨床シナリオをより良好に反映させる為に使用された。MnPの効果に対する放射線及びアスコルベートそれぞれの寄与を見分けることができるように、臨床的用量との比較が容易である線量よりも低い放射線(RT)線量が使用された。薬物の注射は、毎日継続された。マウスが平均約2000mm
3の体積に達したときに試験が完了されると、マウスは絶命処置を受け、そして腫瘍、反対側の脚に由来する正常な筋肉、及び肝臓が集められ、そしてMnポルフィリンのレベルがLCMS/MSによって分析された。
【
図9】
図9は、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)対MnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)についての経時的な平均血圧のグラフを示す図である。
【
図10】
図10は、MnPの推定された治療指数TIを示す図である。その治療指数を重畳的に定義するMnポルフィリンの特性(任意の単位で与えられる):SOD様活性、親油性、及び毒性。親油性フッ素化類似体MnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)に対して、非フッ素化リード薬物、MnTnHex-2-PyP
5+(MnHex)、及びアルコキシアルキルポルフィリンMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)、が比較される。
【
図11-1】
図11は、1mg/kgの用量で投与された場合の血漿及び種々の臓器におけるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の7日間にわたる薬物動態学的プロファイルを示す図である。可能な限り、MnF
3PenのPKプロファイルが、現在2つの臨床試験中の薬物であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と比較された。
【
図11-2】
図11は、1mg/kgの用量で投与された場合の血漿及び種々の臓器におけるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の7日間にわたる薬物動態学的プロファイルを示す図である。可能な限り、MnF
3PenのPKプロファイルが、現在2つの臨床試験中の薬物であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と比較された。
【
図11-3】
図11は、1mg/kgの用量で投与された場合の血漿及び種々の臓器におけるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の7日間にわたる薬物動態学的プロファイルを示す図である。可能な限り、MnF
3PenのPKプロファイルが、現在2つの臨床試験中の薬物であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と比較された。
【
図11-4】
図11は、1mg/kgの用量で投与された場合の血漿及び種々の臓器におけるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の7日間にわたる薬物動態学的プロファイルを示す図である。可能な限り、MnF
3PenのPKプロファイルが、現在2つの臨床試験中の薬物であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と比較された。
【
図11-5】
図11は、1mg/kgの用量で投与された場合の血漿及び種々の臓器におけるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の7日間にわたる薬物動態学的プロファイルを示す図である。可能な限り、MnF
3PenのPKプロファイルが、現在2つの臨床試験中の薬物であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と比較された。
【
図11-6】
図11は、1mg/kgの用量で投与された場合の血漿及び種々の臓器におけるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の7日間にわたる薬物動態学的プロファイルを示す図である。可能な限り、MnF
3PenのPKプロファイルが、現在2つの臨床試験中の薬物であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と比較された。
【
図12】
図12は、異なるMnP:MnTE-2-PyP
5+(MnE、Mn1)、MnTnHex-2-PyP
5+(MnHex)、MnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)、及びMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)の、異なる投与経路を用いた、脳への蓄積を示す図である。MnF
3Penは、そのより極性のフッ素原子に起因して、MnBuOEのレベルよりも最大50%低い(経路依存的に)レベルで脳内に蓄積する。
【
図13】
図13は、放射線により影響を受けたラットの勃起機能を示す図である。グラフは、対照群、並びにRT(放射線)、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)、RT+Mn4(放射線+Mn4)、及びRT+Mn4/Asc(放射線+Mn4+アスコルベート)の各処置群の勃起事象(erectile events)を示す。Mn4投与は、RTの前24時間において開始した。Mn4が、0.5mg/kgで、最初の4週間は毎日(週末を除く)、そして次に、次の5週間は1週間に2回、sc投与された。20Gyの単回RT線量が定位的に投与された。アスコルベートが、1g/kgで、最初の3日間は毎日、次に、1週間に2回投与された。Mn4は、アスコルベートの存在及び非存在下で、放射線誘発性の勃起不全を完全に予防した。
【
図14】
図14は、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)が、前立腺組織に対して放射線(RT)損傷を抑制することを示す図である。実験条件は
図13の凡例に示されている。アスコルベートの添加は、Mn4及びRTの存在下で、前立腺組織に対して無毒性であった。組織はH&Eで染色された。
【
図15-1】
図15は、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)による前立腺の放射線保護-組織病理学を示す図である。対照群(パネルA)及びMn4単独で処置された群(パネルB)と比較して、放射線(RT)単独(パネルC)、RT及びMn4(パネルD)、並びにRT、Mn4、及びAsc(パネルE)の各処置を用いたラットの前立腺組織において、形態的変化が、100倍の倍率下で見られることができる。Mn4の投与がRTの24時間前に開始された。Mn4が、0.5mg/kgで、最初の4週間は週末を除いて毎日、そして次に、次の5週間は1週間に2回、sc投与された。20Gyの単回RT線量が投与された。アスコルベートが、1g/kgで、最初の3日間は毎日、次に、1週間に2回投与された。
【
図15-2】
図15は、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)による前立腺の放射線保護-組織病理学を示す図である。対照群(パネルA)及びMn4単独で処置された群(パネルB)と比較して、放射線(RT)単独(パネルC)、RT及びMn4(パネルD)、並びにRT、Mn4、及びAsc(パネルE)の各処置を用いたラットの前立腺組織において、形態的変化が、100倍の倍率下で見られることができる。Mn4の投与がRTの24時間前に開始された。Mn4が、0.5mg/kgで、最初の4週間は週末を除いて毎日、そして次に、次の5週間は1週間に2回、sc投与された。20Gyの単回RT線量が投与された。アスコルベートが、1g/kgで、最初の3日間は毎日、次に、1週間に2回投与された。
【
図15-3】
図15は、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)による前立腺の放射線保護-組織病理学を示す図である。対照群(パネルA)及びMn4単独で処置された群(パネルB)と比較して、放射線(RT)単独(パネルC)、RT及びMn4(パネルD)、並びにRT、Mn4、及びAsc(パネルE)の各処置を用いたラットの前立腺組織において、形態的変化が、100倍の倍率下で見られることができる。Mn4の投与がRTの24時間前に開始された。Mn4が、0.5mg/kgで、最初の4週間は週末を除いて毎日、そして次に、次の5週間は1週間に2回、sc投与された。20Gyの単回RT線量が投与された。アスコルベートが、1g/kgで、最初の3日間は毎日、次に、1週間に2回投与された。
【
図16】
図16は、H
2O
2源の存在下で、カチオン性のMn(III)Nで置換されたピリジルポルフィリンで、MnP、の腫瘍増殖に対する効果の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、本発明の実施態様が示されている添付図面を参照して、以下により詳細に記載される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されうるが、本明細書に記載されている実施態様に限定されるものと解釈されるべきでない;むしろ、これらの実施態様は、本開示が網羅的且つ完全であり、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝達えるように提供される。
【0039】
本明細書において本発明の詳細な説明で使用される用語は、特定の実施態様のみを記載することを目的とし、且つ本発明を制限するように意図されていない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途に明示しない限り、複数形を含むことが意図される。
【0040】
別途定義されていない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。用語、例えば一般的に使用される辞書において定義される用語、は本出願及び関連する技術の文脈におけるその意味と整合する意味を有するものと解釈されるべきであり、且つ本明細書でそのように明示的に定義される場合を除き、理想的な意味合い又は過剰に形式張った意味合いで解釈されるべきでないと更に理解される。本明細書において本発明の説明で使用される用語は、特定の実施態様のみについて記載することを目的とし、且つ本発明を制限するようには意図されない。本明細書に記載されている全ての公開資料、特許出願、特許、及び他の参考資料は、参照によってその全体が取り込まれている。用語内で矛盾がある場合、本明細書が支配する。
【0041】
本明細書で使用される場合、語「及び/又は」は、ありとあらゆる可能な組み合わせ、又は関連するリスト化されている項目のうちの1以上を含み、並びに二者択一(「又は」)で解釈される場合、組み合わせの欠如を含む。
【0042】
文脈がそうでないことを示さない限り、本明細書に記載されている本発明の様々な特性は、任意の組み合わせで使用されることができることが特に意図される。更に、本発明はまた、本発明の幾つかの実施態様において、本明細書に記載されている任意の特性又は特性の組み合わせが、除外又は省略されることができることが意図される。例として、明細書が、複合物が要素A、B、及びCを含むものと述べている場合、A、B、若しくはCのいずれか又はそれらの組み合わせが省略及び除かれることができるとことが特に意図される。
【0043】
本明細書で使用される場合、移行句「~から実質的になる」(及び、それらの文法的変形形態)は、列挙された材料又は工程、及び請求項に係る発明の「1以上の基本的且つ新規特徴に顕著に影響を及ぼさないもの」を包含するものとして解釈されるべきである。In re Herz、537 F.2d 549、551-52、190 U.S.P.Q.461、463(CCPA 1976)(原著において強調されている)を参照;MPEP §2111.03も参照。従って、語「~から実質的になる」が本明細書で使用される場合、「~を含む」と同等であると解釈されるべきでない。
【0044】
本明細書で使用される場合、語「約」は、測定可能な数値、例えば量又は濃度等、を参照する場合、特定の数値、並びに特定の数値の±10%、±5%、±1%、±0.5%の変動、又は±0.1%の変動さえも包含するように意図されている。例えば、Xが測定可能な数値である場合、「約X」は、X、並びにXの±10%、±5%、±1%、±0.5%の変動、又は±0.1%の変動さえも含むように意図されている。測定可能な(measureable)数値について本明細書で示される範囲は、その中の任意の他の範囲及び/又は個々の数値を含みうる。
【0045】
本明細書で使用される場合、語「増加する(increase)」、「増加する(increases)」、「増加した(increased)」、「増加すること(increasing)」、及びそれらの類似語は、所定のパラメーター又は値における、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、又はそれ超の上昇を示す。
【0046】
本明細書で使用される場合、語「低下する(reduce)」、「低下する(reduces)」、「低下した(reduced)」、「低下(reduction)」、「阻害する(inhibit)」、及びそれらの類似語は、所定のパラメーター又は値における、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の減少を云う。
【0047】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される」とは、化合物、アニオン、又は組成物が、疾患の重症度及び処置の必要性に照らして、不当に有害な副作用無しに、本明細書に記載されている処置を達成する為に対象に投与する為に好適であることを意味する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「アルキル」又は「アルキル基」は、完全に飽和した直鎖状(すなわち、非分岐状)、分岐状、又は環状の炭化水素鎖を意味する。幾つかの実施態様において、アルキル基は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子(例えば、C1~4、C2~4、C3~4、C1~5、C2~5、C3~5、C1~6、C2~6、C3~6、C2~7、C1~8、C4~8、C4~20、C6~10、C6~20、C8~10、C8~20等)を包含する。幾つかの実施態様において、アルキル基は1~8個の炭素原子を含む。幾つかの実施態様において、アルキル基は1~6個の炭素原子を含む。幾つかの実施態様において、アルキル基は2~8個の炭素原子を含む。幾つかの実施態様において、アルキル基は2~6個の炭素原子を含み、及び幾つかの実施態様において、アルキル基は1~4個の炭素原子を含む。幾つかの実施態様において、語「アルキル」又は「アルキル基」は、完全に飽和した直鎖状(すなわち、非分岐状)又は分岐状の炭化水素鎖を意味する。特定の実施態様において、語「アルキル」又は「アルキル基」とは、炭素環式化合物としても知られているシクロアルキル基を云う。アルキル基の非限定的な例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、シクロプロピル、及びシクロヘキシルを包含する。
【0049】
別途に記載されない限り、本明細書で表される構造は、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何学的(又は高次構造的)構造形態;例えば、不斉中心毎にR及びSコンフィギュレーション、(Z)及び(E)二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)配座異性体、を包含することを意味される。それ故に、本化合物の単一の立体化学的異性体、並びにエナンチオマーの、ジアステレオマーの、及び幾何学的(又は高次構造的)な混合物は、本発明の範囲内である。別途に記載されない限り、本発明の化合物の全ての互変異性型は本発明の範囲内である。
【0050】
「~を処置する」、「~を処置すること」、又は「~の処置」(及び、それらの文法的変形形態)は、本明細書で使用される場合、対象に利益を付与する任意の種類の処置を指し、且つ対象の状態の重症度が抑えられ、少なくとも部分的に改善され若しくは良化すること、及び/又は少なくとも1つの臨床症状(例えば、癌、及び/又は放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられた症状)における若干の軽減、緩和、若しくは減少が達成され、及び/又は該症状の進行に遅延があることを意味しうる。幾つかの実施態様において、癌、及び/又は放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられた症状の重症度は、本発明の方法が存在しない場合の症状の重症度と比較して、対象において抑えられうる。
【0051】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、処置上有効な量で投与されうる。本明細書で使用される場合、「処置上有効な」量は、対象を(本明細書で定義された通り)処置する為に十分な量である。当業者は、何らかの利益が該対象に提供される限り、治療効果が完全又は治癒的である必要はないことを理解するであろう。幾つかの実施態様において、処置上有効な量は、本発明の組成物を投与することによって達成されうる。
【0052】
語「~を予防する」、「~を予防すること」、及び「予防」(並びに、それらの文法的変形形態)は、本発明の方法が存在しない場合に生ずるものと比較して、臨床症状(例えば、癌、及び/又は放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられた症状)の発症の回避、減少、及び/又は遅延、及び/又は症状発現時のその重症度の抑制を云う。該予防は、完全にすることができ、例えば、症状が全く認められない。該予防はまた、対象における症状の発生及び/又は発現の重症度が、本発明の方法が存在しない場合に生ずるものよりも低くなるように、部分的であることができる。
【0053】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、予防上有効な量で投与されうる。本明細書で使用される場合、「予防上有効な」量は、対象における臨床症状(例えば、癌、及び/又は放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられた症状)を(本明細書で定義される通り)予防する為に十分な量である。当業者は、予防のレベルは、何らかの利益が該対象に提供される限り、完全である必要はないことを理解するであろう。幾つかの実施態様において、予防上有効な量は、本発明の組成物を投与することによって達成されうる。
【0054】
本発明は、獣医学的用途及び医学的用途の両方において使用を見出す。本発明の方法で処置されるのに好適な対象は、哺乳動物対象を含むが、これに限定されない。本発明の哺乳動物は、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯類(例えば、ラット及びマウス)、ウサギ、霊長類(例えば、類人猿及びヒト)、非ヒト霊長類(例えば、サル、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ)等、及び子宮内の哺乳動物を含むが、これらに限定されない。本発明に従い処置される必要がある任意の哺乳動物の対象が好適である。男女及び任意の発達段階(すなわち、新生児、乳児、小児、未成年者、成人)にあるヒト対象が、本発明に従い処置されうる。本発明の幾つかの実施態様において、該対象は哺乳動物であり、且つ特定の実施態様において、該対象はヒトである。ヒト対象は、胎児、新生児、乳児、小児、未成年者、成人、及び高齢の対象、並びに妊娠した対象を含む、全ての年齢の男性及び女性の両方を包含する。本発明の特別な実施態様において、該対象はヒト未成年者及び/又は成人である。
【0055】
本発明の方法はまた、獣医学の目的の為に及び/又は薬物スクリーニング且つ薬物開発の目的の為に、動物の対象、特に哺乳動物の対象、例えばマウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜、及びウマ、において実施されうる。
【0056】
幾つかの実施態様において、該対象は、本発明の方法「を必要とする」又は「それらを必要とする」、例えば、該対象は癌に典型的に関連付けられた所見を有する、癌を有する疑いがある、及び/又は該対象は癌を有する。
【0057】
本明細書に記載されているフルオロ置換ポルフィリン(例えば、式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xの化合物)及びフルオロ置換ポルフィリンを含む組成物は、ヒト及び他の哺乳動物の対象における何らかの様々な状態、例えば炎症性肺疾患、神経変性疾患、放射線損傷、癌、糖尿病、心臓、及び心血管系の状態及び損傷、鎌状赤血球症等を含むがこれらに限定されない状態、を処置する為に使用されうる。一般的に、Batinic-Haberle等の米国特許第8,618,089号明細書を参照。
【0058】
本発明に従うフルオロ置換ポルフィリンにより処置されうる他の状態は、中枢神経系の損傷(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic lateral sclerosis)、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)、パーキンソン病等)、脳卒中、脊髄損傷、虚血/再潅流損傷、関節炎、自己免疫疾患、糖尿病、モルヒネ耐性、薬物依存/中毒、及び炎症状態を含みうるが、これらに限定されない。
【0059】
幾つかの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における、放射線及び/又は化学療法の曝露に関連付けられる1以上の副作用を処置及び/又は予防する為に使用されうる。幾つかの実施態様において、放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中及び/又はその後に、対象における組織の損傷を処置及び/又は予防する方法が提供される。本発明の方法は、放射線及び/又は化学療法の曝露の前、その期間中及び/又はその後に、本発明のフルオロ置換ポルフィリンを対象に投与すること、並びに任意的に、アスコルベートを投与すること(例えば、同時に又は逐次的に)を含みうる。本発明の方法は、対象における放射線誘発性の正常組織の損傷を処置及び/又は予防しうる。放射線誘発性の正常組織の損傷は、慣用的な処置及び/又は本発明の方法が存在しない場合と比較して、対象において、少なくとも5%以上低下されうる。本明細書で使用される場合、「正常組織」とは、非癌性である組織を意味する。「正常組織」内の細胞は、正常な速度で分裂しうる。幾つかの実施態様において、該方法は、炎症に起因する及び/又はそれにより引き起こされた正常組織の損傷を処置及び/又は防止しうる。幾つかの実施態様において、本発明の方法は、対象における放射線誘発性の勃起不全を処置及び/又は予防しうる。
【0060】
幾つかの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、下記の式Iによって表される構造を有する:
【0061】
【化13】
ここで、
R
1は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたC1~C8アルキル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17個のフッ素原子で置換されたC1~C8アルキル)であり、且つ、
Xは、アニオン(例えば、ハロゲンイオン(例えば、塩素イオンなど)、PF
6、トシレート、ベシレート、及び/又はメシレート)である。
【0062】
幾つかの実施態様において、R1は、1~Y個のフッ素原子で置換されたC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、又はC8アルキル基であり、ここで、Yはアルキル基内の炭素原子の数を2倍して1を加えることによって決定される。従って、R1が、C2アルキル基である場合、それは、1、2、3、4、又は5個のフッ素原子で置換されうる(例えば、2×2=4+1=5)。
【0063】
幾つかの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、下記の式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、又は式Xによって表される構造を有する:
【0064】
【化14】
ここで、Xは、本明細書に記載されているアニオンである。
【0065】
本発明に従うフルオロ置換ポルフィリンは、1以上のフッ素を有しうる。理論に束縛されることは望まないが、フルオロ基の存在は、本発明の化合物及び組成物の薬物輸送及び効力を増強しうる。
【0066】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、それにコンジュゲートされた様々な活性な薬剤を有する。例えば、抗癌剤、抗炎症剤、鎮痛薬(例えば、モルヒネ)、ニトロキシド、アミノ酸、ペプチド、ペプチド模倣物、抗体、脂質、又は糖が、フルオロ置換ポルフィリンにコンジュゲートされうる。
【0067】
更に、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、例えば18Fで放射線標識されうる。次に、該放射線標識された化合物は、例えば陽電子放出断層撮影法(PET:Positron Emission Tomography)で、フルオロ置換ポルフィリンの生体分布を決定する為に使用されうる。
【0068】
本発明の化合物は、様々な塩又は溶媒和の形態で得られうる。塩として、医薬的に許容される塩又は原材料として利用可能な塩が使用される。加えて、全ての立体異性体、エナンチオマー、及びジアステレオマーが企図される。
【0069】
幾つかの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、(例えば、非フルオロ置換ポルフィリンと比較して)高められた親油性を有しうる。親油性は、薄層クロマトグラフィーによって測定されることができる。一群の化合物の相対的親油性は、所与の溶媒系において決定されることができる。親水性ポルフィリンは、ゼロに近い保持係数(Rf:Retention Factor)を有し、一方、より親油性のポルフィリンは、より大きなRf値を有する。本発明のフルオロ置換ポルフィリンは好適には、アセトニトリル:水:KNO3(飽和水溶液)(8:1:1)の溶媒系においてゼロ超の親油性を有する。代替的には、親油性は、標準的なオクタノール/水分配係数(log P)によって定量化されうる。幾つかの実施態様において、親油性フルオロ置換ポルフィリンは、その親水性類似体よりも高いバイオアベイラビリティーを有しうる。加えて、親油性フルオロ置換ポルフィリンは、親水性類似体と比較して、イン・ビボ(in vivo)での高められた細胞内蓄積及び/又は細胞内取り込み及び/又は効力を有しうる。更に、他の実施態様において、親油性フルオロ置換ポルフィリンは、異なる細胞コンパートメント、例えばミトコンドリア(mitochrondria)又は核、を選択的に目標対象としうる。代替的には、他の関連する細胞/ミトコンドリア(mitochrondia)生存率アッセイ(例えば、MTTアッセイ)が使用されうる。
【0070】
フルオロ置換ポルフィリンは、様々な状態、例えば酸化ストレス傷害に少なくとも部分的に起因する状態(過剰なレベルの活性酸素種及び活性窒素種に起因する損傷)を含む状態、を処置する為に使用されうる。他の実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、酸化ストレスを低下させうる。ポルフィリンは、有効な機能的触媒性抗酸化剤、酸化還元シグナル伝達経路のモジュレーター、強力な放射線保護剤、及び抗癌剤である。やはり理論に束縛されることは望まないが、ポルフィリンの酸化防止特性は、活性酸素種及び活性窒素種(ROS/RNS:reactive oxygen and nitrogen species)の調節を介して酸化還元活性転写因子を制御する為のそれらの能力、及び/又はそれらの種を直接的に除去することによって生物学的損傷を軽減する為の能力に起因すると考えられている。最新の証拠は、Mnポルフィリンの見方を若干変化させている。理論に束縛されることは望まないが、+2、+3、+4、及び/又は+5の酸化状態にあるMnが関与するMnポルフィリンの生物学的に関連する酸化還元化学により、Mnポルフィリンは、還元反応(すなわち、古典的な抗酸化反応)を受けるだけでなく、酸化反応をまた受けることができる。生物学的に非常に関連する酸化は、転写因子のタンパク質を含む異なるタンパク質のシステインの酸化である。転写因子のそのような酸化的変性は、それによりそれらの活性化に影響を及ぼし得、ひいては細胞増殖及びアポトーシスプロセスに影響を及ぼしうる。
【0071】
幾つかの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、非フルオロ置換類似体と比較された場合に、アスコルベートの酸化において改善された(例えば、統計的に有意な増加)特徴を提供する。Mnフルオロ置換ポルフィリンがイン・ビボ(in vivo)で受けうる重要な反応は、細胞性還元物質、例えばアスコルベート及びチオール、を含む。アスコルベートを伴うMnポルフィリンの循環が関与する反応は、細胞傷害性の過酸化水素の生成を引き起こし、それは、引き続きグルタチオンと共にMnポルフィリンによって使用され、シグナル伝達タンパク質のシステイン酸化を触媒し、それによってそれらの転写を修正する。チオールとの直接的循環がまた可能でありうる。しかしながら、Mnポルフィリンによる反応種の直接的除去は除外されることができない。
【0072】
本発明に従うフルオロ置換ポルフィリンによって処置されうる病理学的状態は、中枢神経系の損傷(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic lateral sclerosis)、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)、パーキンソン病等)、脳卒中、脊髄損傷、癌、虚血/再潅流傷害、心血管系損傷、関節炎、鎌状赤血球症、放射線損傷、自己免疫疾患、糖尿病、モルヒネ耐性、薬物依存/中毒、及び炎症状態を包含するが、これらに限定されない。
【0073】
幾つかの実施態様において、本発明に従うフルオロ置換ポルフィリンは、癌、例えば、これらに限定されないが、肺、乳房、脳、皮膚、頭頸部、前立腺、膵臓、胃腸、及び結腸、における抗癌剤として使用する為に好適である。理論に束縛されることは望まないが、フルオロ置換ポルフィリンの抗癌活性は、酸化ストレス、従ってNF-kB、Nrf2/Keap1、HIF/VEGF/NOS、MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)、ホスファターゼ2A、ミトコンドリア呼吸複合体I及びIII、及び/又は解糖経路のタンパク質に対するフルオロ置換ポルフィリンの酸化還元に基づく効果に起因すると考えられている。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、腫瘍内の血管新生を抑制する。
【0074】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、放射線療法、温熱療法、化学療法、及び疼痛管理、例えばモルヒネ耐性の逆転、における強力なアジュバントでありうる。他の実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、1以上の抗癌剤(例えば、Gleevac(登録商標)、シスプラチン、タキソール、ビンクリスチン、パクリタキセル、テモゾロミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、スタチン、メルファラン、フルダラビン、カンプトテシン、VEG,VEGFr,EGF,ERGFrに対するモノクロナール及びポリクロナール抗体、アスコルベート等)、抗炎症剤(例えば、シクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenaase)阻害剤、NOS阻害剤、NADPHオキシダーゼ阻害剤等)、鎮痛薬(例えば、モルヒネ、コデイン、アスピリン、アセトアミノフェン(acetominaphen)、イブプロフェン等)、及び/又は療法(例えば、放射線療法、温熱療法、及び疼痛管理、例えばモルヒネ耐性の逆転)と共に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、アスコルベートと共に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、放射線療法と共に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、化学療法と共に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、2つ以上の他の活性な薬剤及び/又は療法と共に投与されうる、例えば、放射線及び/又は化学療法と共に、アスコルベートと投与されうる。PD-L1/PD-1阻害剤との組み合わせ、及び天然化合物、例えばフラボノイド、との組み合わせがまた使用されうる。
【0075】
放射線療法は、任意の好適なタイプの療法、典型的に電離照射療法、及び一般的に対外ビーム放射線療法でありうる。そのような療法は、任意の好適な線量、例えば10、20、又は40Gray~60、80、又は100Gray、でありうるが、単回線量として投与される、又は分割された一連の線量で投与される。本発明を実施する際に使用する為の好適な種類の電離照射は、光子照射(例えば、X線及びγ線照射)及び粒子照射(例えば、電子、プロトン、ニュートロン、炭素イオン、α粒子、及びβ粒子照射)を包含する。
【0076】
本発明の幾つかの実施態様に従うと、該対象は放射線に曝露されうる;例えば該対象は、約5~約100Gyの総線量又は約30~約90Gyの総線量を受けうる。幾つかの実施態様において、該対象は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150Gy、又はそれ超の総線量に曝露されうる。幾つかの実施態様において、該対象は、放射線療法を受けている、及び/又は投与されうる。放射線療法は、1週間に5日、1~10週間投与される少なくとも1つの放射線処置を含みうる。当業者が理解するように、放射線療法は、所定の期間(例えば、1~10週間)に及び得、且つ該対象に対して連続的には投与され得ず、むしろ断続的に投与されうる。
【0077】
本発明の幾つかの実施態様に従うと、該対象は、化学療法を受けている、及び/又は投与されうる。化学療法の例は、シスプラチン、テモゾラミド(temozolamide)、タモキシフェン、トラスツズマブ、フルオロウラシル(例えば、5フルオロウラシル(5FU))、マイトマイシン-C、及び/又はFOLFOXを含むが、これらに限定されない。該方法及び/又はフルオロ置換ポルフィリンは、腫瘍制御及び/又は癌処置(例えば、化学療法)に対して妨害し得ない。当業者が理解するように、化学療法は、所定の期間(例えば、1~10週間)に及び得、且つ該対象に対して連続的には投与され得ず、むしろ断続的に投与されうる。
【0078】
本発明のフルオロ置換ポルフィリンが、1以上の抗癌剤及び/又は療法と組み合わせて投与される場合、相乗的効果が見られうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、抗癌剤にコンジュゲートされてもよい。他の実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、抗癌剤にコンジュゲートされていなくてもよい。抗癌剤にコンジュゲートされているフルオロ置換ポルフィリンが第2の抗癌剤と組み合わせて投与される場合、該第2の抗癌剤は、コンジュゲートされた抗癌剤と同じであってもよく又は異なっていてもよい。
【0079】
幾つかの実施態様において、本発明の方法は、該対象にアスコルベートを投与することを含む。アスコルベートは、約0.1mg/kg~約5g/kg、及び幾つかの実施態様において、約0.1mg/kg~約10mg/kg又は約0.1g/kg~約2g/kgの量で該対象に投与されうる。幾つかの実施態様において、アスコルベートは、約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、若しくは1000mg/kg、又は約0.01、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、若しくは5g/kgの量で該対象に投与されうる。アスコルベートは、放射線及び/又は化学療法の曝露の前、その期間中及び/又はその後に該対象に投与されうる、及び/又は本発明のフルオロ置換ポルフィリンと同時及び/又は逐次的に投与されうる。
【0080】
幾つかの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、該対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される約30分~約4日前、例えば、該対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される約1時間~約3日前、約4時間~約2日前、又は約12時間~約48時間前に、該対象に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、該対象が放射線及び/又は化学療法に曝露される約30、45、若しくは60分、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、若しくは96時間前に、該対象に投与されうる。
【0081】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、放射線及び/又は化学療法の曝露の期間中、及び/又は該対象が放射線及び/又は化学療法に曝露された約30分~約4日後、例えば放射線及び/又は化学療法の曝露された約1時間~約3日後、約4時間~約2日後、若しくは約12時間~約48時間後において、該対象に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、放射線及び/又は化学療法の曝露された約30、45、若しくは60分後、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、若しくは96時間後に、該対象に投与されうる。
【0082】
フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、1週間当たり1以上の回数(例えば、1週間当たり、1、2、3、4、5回、又はそれ超の回数)、該対象に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、1週間当たり、2回若しくは3回、又は2日若しくは3日毎に該対象に投与されうる。幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、放射線及び/又は化学療法への初回曝露(例えば、放射線及び/又は化学療法の初回処置)の後、1週間に2回若しくは3回、又は2日若しくは3日毎に投与されうる。
【0083】
フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、放射線及び/又は化学療法への初回曝露(例えば、放射線及び/又は化学療法の初回処置)後、1以上の回数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50回、又はそれ超の回数、該対象に投与されうる。幾つかの実施態様において、該対象は、放射線療法及び/又は化学療法を受けており、且つフルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートが、放射線療法及び/又は化学療法のコース全体を通じて、例えば放射線療法及び/又は化学療法のコース期間中に1以上の回数、投与される。
【0084】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートは、放射線及び/又は化学療法への最終曝露(例えば、放射線及び/又は化学療法の最終処置)後1以上の回数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50回、又はそれ超の回数、投与されうる。幾つかの実施態様において、該対象は、放射線療法及び/又は化学療法の最終処置をすでに受けており、且つフルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートが、該放射線療法及び/又は化学療法の最終処置の後に、1以上の回数、投与される。幾つかの実施態様において、放射線及び/又は化学療法への最終曝露(例えば、放射線及び/又は化学療法の最終処置)後に、フルオロ置換ポルフィリン及び/又はアスコルベートが、1週間に2回若しくは3回、又は2日若しくは3日間毎に1~8週間投与される。
【0085】
幾つかの実施態様において、細胞が、酸化ストレスを低下させる為に有効な量のフルオロ置換ポルフィリンと接触される。好適には、酸化ストレスの該低下は、活性酸素種及び/又は活性窒素種の量の低下、又は生体分子、例えばタンパク質、糖、核酸、若しくは脂質、の酸化的変性の増加を測定することによって測定されることができる。語「細胞に接触させること」は、イン・ビトロ(in vitro)又はイン・ビボ(in vivo)で(すなわち、対象、例えばヒト、ウサギ、ネコ、及びイヌを含む哺乳動物、において)細胞に接触させることを意味する為に使用される。幾つかの実施態様において、該細胞は、フルオロ置換ポルフィリンの対象への投与の結果として接触されうる。
【0086】
本発明に従うフルオロ置換ポルフィリンの有効量は、処置される対象の特定の状態、処置される対象の年齢及び身体状態、該状態の重症度、処置期間、同時療法の性質、投与経路、利用される特定の医薬的に許容される担体、並びに担当医師の知識及び専門技術内の同様の要因等に応じて変化する。例えば、全身投与用の本発明のフルオロ置換ポルフィリンの有効量は、体重1kg当たり約0.01mg~約100mg、体重1kg当たり約0.1mg~約100mg、約0.2mg/kg~約4mg/kg、約0.2mg/kg~約2mg/kgであり得、且つ幾つかの実施態様において、1日に体重1kg当たり約1mg~約50mgでありうる。経皮的投薬量は、薬物動態及び経皮的製剤における当業者にとって公知の技術に基づき、類似の血清又は血漿レベルを達成するように設計される。全身投与における血漿レベルは、0.001~100マイクログラム/mL、より好ましくは0.01~50マイクログラム/mL、及び最も好ましくは0.1~10マイクログラム/mL、の範囲内であると予想される。これらの投薬量は1日の投与頻度に基づくが、本発明のフルオロ置換ポルフィリンはまた、他の間隔、例えば1日2回、1週間に2回、1週間に1回、又は1ヶ月に1回、で投与されうる。本発明のフルオロ置換ポルフィリンは、連続モード、例えば浸透圧ポンプを使用して投与されうる。1つの実施態様において、該ポルフィリンは、負荷量を規定する為により高用量でより高頻度で(例えば、毎日)当初投与され得、継続してより低用量且つより低頻度で投与される。当業者は、他の投与間隔に好適な有効量を計算することができる。例えば、様々なフルオロ置換ポルフィリンのイン・ビボ(in vivo)での有効性が、該フルオロ置換ポルフィリンの酸化防止能力及びそのフルオロ置換ポルフィリンのバイオアベイラビリティーの両方によって影響される。
【0087】
追加の1以上の活性な薬剤及び/又は療法が、本発明のフルオロ置換ポルフィリンと同時又は逐次的に投与されうる。逐次的な投与は、本発明のフルオロ置換ポルフィリンの前又は後の投与を含む。幾つかの実施態様において、追加の1以上の活性な薬剤及び/又は療法が、本発明のフルオロ置換ポルフィリンと同一の組成物で投与されることができる。他の実施態様において、追加の活性な薬剤及び/又は療法と本発明のフルオロ置換ポルフィリンとの投与の間に、時間間隔がありうる。
【0088】
幾つかの実施態様において、本発明の化合物と共に追加の治療剤(例えば、アスコルベート)を投与することは、他の治療剤のより低い用量をより長期間投与されるようにすることができる。幾つかの実施態様において、アスコルベートを投与することは、対象の腫瘍の放射線増感及び/又は化学的増感を高め得、それは放射線及び/又は化学療法の投与量の低減を可能にしうる。
【0089】
幾つかの実施態様において、フルオロ置換ポルフィリンは、医薬的に許容される組成物で、例えば医薬的に許容される担体中又はそれと共に投与される。
【0090】
組成物は、本発明のフルオロ置換ポルフィリンのアイソフォームのうちの1以上を含みうる。ラセミ体が存在する場合い、各エナンチオマー又はジアステレオマーは個別に用いられうる、又はそれらは任意の割合で組み合わせられうる。互変異性体が存在する場合、全てのありうる互変異性体が特に検討される。アトロプ異性体が存在する場合、それぞれは個別に使用されうる、又は任意の割合で組み合わせられうる。幾つかの実施態様において、単一のアイソフォーム又はアトロプ異性体が使用され得、それは、組成物内のフルオロ置換ポルフィリン又はメタロポルフィリン(metaloporyphyrin)全体の重量の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ超を含みうる。
【0091】
本発明に従って使用する為の医薬組成物は、1以上の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用して慣用的な様式で処方化されうる。従って、フルオロ置換ポルフィリンは、例えば、固体投与、点眼薬、局所用オイルベース製剤中、注射、吸入(口腔又は鼻腔経由)、インプラント、又は経口、バッカル、非経口、若しくは直腸投与により投与する為に処方化されうる。技術及び処方は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" (Meade Publishing Co.,Easton,Pa.)に一般的に見出されうる。
【0092】
本発明のフルオロ置換ポルフィリン(成分A)が投与されるであろう経路、及び組成物の形態は、使用されるべき担体(成分B)の種類を規定するだろう。該組成物は例えば、全身投与(例えば、経口、直腸、鼻腔、舌下、バッカル、インプラント、又は非経口)、又は局所投与(例えば、皮膚への局所的適用、リポソーム送達システム、又はイオン導入)に好適な様々な形態でありうる。
【0093】
全身投与用の担体は典型的には、a)希釈剤、b)潤滑剤、c)結合剤、d)崩壊剤、e)着色剤、f)着香剤、g)甘味料、h)抗酸化剤、j)保存剤、k)滑剤、m)溶媒、n)懸濁剤、o)湿潤剤、p)界面活性剤のうちの少なくとも1つ、それらの組み合わせ等を含む。全ての担体は、全身用組成物において任意的である。
【0094】
配合物a)は希釈剤である。固体投与剤形の為の好適な希釈剤は、糖、例えばグルコース、ラクトース、デキストロース、及びスクロース;ジオール、例えばプロピレングリコール;炭酸カルシウム;炭酸ナトリウム;糖アルコール、例えばグリセリン、マンニトール、及びソルビトール、を包含する。全身用又は局所用組成物内の配合物a)の量は典型的には、約50~約90%である。
【0095】
配合物b)は潤滑剤である。固体投与剤形の為の好適な潤滑剤は、固体潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、並びにそのマグネシウム塩及びカルシウム塩、硫酸カルシウムを含む固体潤滑剤;並びに液体潤滑剤、例えばポリエチレングリコール;並びに、植物油、例えばピーナッツオイル、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーンオイル、及びカカオ属オイル、により例示される。全身用又は局所用組成物内の配合物b)の量は典型的には、約5~約10%である。
【0096】
配合物c)は結合剤である。固体投与剤形の為の好適な結合剤は、ポリビニルピロリドン;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;スターチ、例えばコーンスターチやポテトスターチ;ゼラチン;トラガント;並びにセルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム、を包含する。全身用組成物内の配合物c)の量は典型的には、約5~約50%である。
【0097】
配合物d)は崩壊剤である。固体投与剤形の為の好適な崩壊剤は、寒天、アルギン酸及びそのナトリウム塩、発泡性の混合物、クロスカルメロース(croscarmelose)、クロスポビドン(crospovidone)、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、並びにイオン交換樹脂を包含する。全身用又は局所用組成物内の配合物d)の量は典型的には、約0.1~約10%である。
【0098】
固体投与剤形の為の配合物e)は、着色剤、例えばFD&C色素、である。使用される場合、全身用又は局所用組成物内の配合物e)の量は典型的には、約0.005~約0.1%である。
【0099】
固体投与剤形の為の配合物f)は、着香剤、例えばメントール、ハッカ油、及び/又はフルーツフレーバー、である。全身用又は局所用組成物内の配合物f)の量は、使用される場合、典型的には、約0.1~約1.0%である。
【0100】
固体投与剤形の為の配合物g)は、甘味料、例えばアスパルテーム及び/又はサッカリン、である。全身用又は局所用組成物内の配合物g)の量は典型的には、約0.001~約1%である。
【0101】
配合物h)は、抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシアニソール(「BHA」)、ブチル化ヒドロキシトルエン(「BHT」)、及び/又はビタミンE、である。全身用又は局所用組成物内の配合物h)の量は典型的には、約0.1~約5%である。
【0102】
配合物j)は、保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン、及び/又は安息香酸ナトリウム、である。全身用又は局所用組成物内の配合物j)の量は典型的には、約0.01~約5%である。
【0103】
固体投与剤形の為の配合物k)は、滑剤、例えば二酸化ケイ素、である。全身用又は局所用組成物内の配合物k)の量は典型的には、約1~約5%である。
【0104】
配合物m)は、溶媒、例えば水、等張性食塩水、エチルオレエート、グリセリン、ヒドロキシル化されたひまし油、及び/又はアルコール(例えば、エタノール)、及びリン酸バッファー溶液、である。全身用又は局所用組成物内の配合物m)の量は典型的には、約0~約100%である。
【0105】
配合物n)は懸濁剤である。好適な懸濁剤は、Avicel(登録商標)RC-591(Philadelphia、PAのFMC Corporationから)及び/又はアルギン酸ナトリウムを包含する。全身用又は局所用組成物内の配合物n)の量は典型的には、約1~約8%である。
【0106】
配合物o)は、界面活性剤、例えばレシチン、ポリソルベート80、及びラウリル硫酸ナトリウム、並びにWilmington、DelawareのAtlas Powder CompanyからのTWEEN(登録商標)、である。好適な界面活性剤は、C.T.F.A.Cosmetic Ingredient Handbook,1992年,pp.587-592;Remington's Pharmaceutical Sciences,15th Ed.1975年,pp.335-337;及びMcCutcheon's Volume 1,Emulsifiers & Detergents,1994年,North American Edition,pp.236-239で開示されているものを包含する。全身用又は局所用組成物内の配合物o)の量は典型的には、約0.1%~約5%である。
【0107】
全身用組成物内の成分A及びBの量は、調製される全身用組成物の種類、成分Aについて選択された個々の誘導体、及び成分Bの配合物に応じて変化するけれども、一般的に、該システム組成物は、約0.01%~約50%の成分A、及び約50%~約99.99%の成分Bを含む。
【0108】
非経口投与の為の組成物は典型的には、約0.01~約10%の本発明のフルオロ置換ポルフィリン、並びにa)希釈剤とm)溶媒とを含む約90~約99.99%の担体を含む。1つの実施態様において、希釈剤a)はプロピレングリコールを含み、且つm)はエタノール又はエチルオレエートを含む。
【0109】
経口投与の為の組成物は、様々な投与剤形を有しうる。例えば、固体形態は、錠剤、カプセル、顆粒、及びバルク粉末を包含する。これらの経口投与剤形は、安全且つ有効な量、通常少なくとも約5%、及びより特には約25%~約50%、の成分Aを含む。経口投与組成物は更に、約50~約95%、及びより特には約50~約75%、の成分Bを含む。
【0110】
錠剤は、圧縮され、すりこみ錠剤であり、腸溶性コーティングされ、糖コーティングされ、フィルムコーティングされ、又は複合圧縮されることができる。錠剤は典型的には、成分A、並びに、a)希釈剤、b)潤滑剤、c)結合剤、d)崩壊剤、e)着色剤、f)着香剤、g)甘味料、k)滑剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される配合物を含む担体である成分Bを含む。特定の希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース、及びセルロースを包含する。特定の結合剤は、スターチ、ゼラチン、及びスクロースを包含する。特定の崩壊剤は、アルギン酸及びクロスカルメロースを包含する。特定の潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びタルクを包含する。特定の着色剤は、外観目的で添加されることができるFD&C染料である。チュアブル錠は好ましくは、g)甘味料、例えばアスパルテーム及びサッカリン、又はf)着香剤、例えばメントール、ハッカ油、フルーツフレーバー、又はそれらの組み合わせ、を含む。
【0111】
カプセル(インプラント、時間放出型及び徐放性製剤を含む)は典型的には、ゼラチンを含むカプセル中に、成分A1及び上記された1以上のa)希釈剤を含む担体を含む。顆粒は典型的には、成分Aを含み、及び更に、好ましくは、流動特性を改善する為に、k)滑剤、例えば二酸化ケイ素、を含む。インプラントは、生分解性又は非生分解性のタイプのインプラントとすることができる。インプラントは、任意の公知の生体適合性製剤を用いて調製されうる。
【0112】
経口組成物の為の、担体内の配合物の選択は、本発明の目的の為の重要でない二次的な検討事項、例えば味、コスト、及び長期保存性、に依存する。当業者は、過度な実験を行うこと無しに、適切な配合物を選択する方法を知っている。
【0113】
固体組成物はまた、成分Aが、望ましい適用の近傍の胃腸管において、又は所望の作用を引き延ばす為に様々なポイント及び時刻において放出されるように、典型的にはpH又は時間依存性のコーティングを用いて、慣用の方法によってコーティングされうる。該コーティングは典型的には、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、EUDRAGIT(登録商標)コーティング(DarmstadtのRohm & Haas G.M.B.H.,ドイツ,から入手可能)、ワックス、及び/又はシェラックからなる群から選択される1以上の成分を含む。
【0114】
経口投与の為の組成物はまた、液状形態を有することができる。例えば、好適な液状形態は、水性溶液、エマルジョン、懸濁物、非発泡性顆粒から再構成される溶液、非発泡性顆粒から再構成される懸濁物、発泡性顆粒から再構成される発泡性調製物、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ等を包含する。液体の経口投与される組成物は典型的には、成分A、並びに成分B、すなわちa)希釈剤、e)着色剤、f)着香剤、g)甘味料、j)保存剤、m)溶媒、n)懸濁剤、及びo)界面活性剤からなる群から選択される配合物を含む担体、を含む。経口液体組成物は好ましくは、e)着色剤、f)着香剤、及びg)甘味料からなる群から選択される1以上の配合物を含む。
【0115】
フルオロ置換ポルフィリンを対象に全身送達する為に有用である他の組成物は、舌下、バッカル、及び鼻腔内投与剤形を包含する。そのような組成物は典型的には、1以上の可溶性充填物質、例えばa)希釈剤、例えばスクロース、ソルビトール、及びマンニトールを含む希釈剤;並びにc)結合剤、例えばアカシア、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。そのような組成物は更に、b)潤滑剤、e)着色剤、f)着香剤、g)甘味料、h)抗酸化剤、及びk)滑剤を含みうる。
【0116】
本発明の1つの実施態様において、本発明のフルオロ置換ポルフィリンが局所的に投与される。
【0117】
皮膚に対して局所的に適用されることができる局所用組成物は、任意の形態、例えば固体、溶液、オイル、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、リーブオン式及びリンスアウト式のヘアコンディショナー、ミルク、クレンザー、保湿剤、スプレー、皮膚パッチ等を含む形態、でありうる。局所用組成物は、成分A(上記フルオロ置換ポルフィリン)及び成分B(担体)を含む。成分Bは更に、1以上の任意的な成分を含みうる。
【0118】
局所用組成物内の各成分の正確な量は、様々な要因に依存する。局所用組成物に添加される成分Aの量は典型的に、ナノモル(nM)単位で表される成分AのIC50に依存する。例えば、医薬のIC50が45nMである場合、成分Aの量は、約0.04~約4%である。医薬のIC50が100nMである場合、成分Aの量は、約0.08~約8%である。医薬のIC50が1000nMである場合、成分Aの量は、約0.8~約80%である。成分Aの量が、上記で規定された範囲外にある(すなわち、下回る)場合、処置の有効性は低下されうる。当業者は、IC50を計算及び理解している。該組成物の残りの部分(最大100%)は、成分Bである。
【0119】
成分Aと共に使用される担体の量は、医薬の単位用量当たりの投与の為に、実用的な量の組成物を提供する為に十分である。本発明の方法において有用な投与剤形を作製する為の技術及び組成物は、下記の参考資料に記載されている:Modern Pharmaceutics,Chapters 9 and 10,Banker & Rhodes,eds.(1979年);Lieberman等,Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets (1981年);及びAnsel,Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,2nd Ed.,(1976年)。
【0120】
成分Bは、単一の配合物又は2以上の配合物の組み合わせを含みうる。局所用組成物では、成分Bは、局所用担体を含む。好適な局所用担体は、リン酸緩衝食塩水、等張性水、脱イオン水、単官能基のアルコール、対称性アルコール、アロエベラ(Aloe vera)ゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びEオイル、鉱物油、プロピレングリコール、PPG-2ミリスチルプロピオネート、ジメチルイソソルビド、ひまし油、それらの組み合わせ等からなる群から選択される1以上の配合物を含む。より特には、皮膚に適用する為の担体として、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、及び水、並びによりいっそう特には、リン酸緩衝食塩水、等張性水、脱イオン水、単官能基のアルコール、及び対称性アルコールを包含する。
【0121】
局所用組成物の担体は更に、q)エモリエント、r)噴霧剤、s)溶媒、t)保湿剤、u)増粘剤、v)粉末、w)香料、x)顔料、及びy)保存剤からなる群から選択される1以上の配合物を含みうる。
【0122】
配合物q)はエモリエントである。皮膚に基づく局所用組成物中の配合物q)の量は典型的に、約5~約95%である。好適なエモリエントは、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレエート、グリセリルモノステアレート、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミンクオイル、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン-2-オール、イソセチルアルコール、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジ-n-ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ココナッツオイル、ラッカセイ油、ひまし油、アセチル化ラノリンアルコール、石油、鉱物油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、及びそれらの組み合わせを包含する。皮膚用の特定のエモリエントは、ステアリルアルコール及びポリジメチルシロキサンを包含する。
【0123】
配合物r)は噴霧剤である。局所用組成物内の配合物r)の量は典型的に、約0~約95%である。好適な噴霧剤は、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、亜酸化窒素、及びそれらの組み合わせを包含する。
【0124】
配合物s)は溶媒である。局所用組成物内の配合物s)の量は典型的に、約0~約95%である。好適な溶媒は、水、エチルアルコール、塩化メチレン、イソプロパノール、ひまし油、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせを包含する。特定の溶媒は、エチルアルコール及びホモトピックアルコール(homotopic alcohol)を包含する。
【0125】
配合物t)は保湿剤である。局所用組成物内の配合物t)の量は典型的に、0~95%である。好適な保湿剤は、グリセリン、ソルビトール、2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、ジブチルフタレート、ゼラチン、及びそれらの組み合わせを包含する。特定の保湿剤は、グリセリンを包含する。
【0126】
配合物u)は増粘剤である。局所用組成物内の配合物u)の量は典型的に、約0~約95%である。
【0127】
配合物v)は粉末である。局所用組成物内の配合物v)の量は典型的に、0~95%である。好適な粉末は、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、スターチ、ガム、コロイド状二酸化ケイ素、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアンモニウムスメクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学的に変性されたケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機的に変性されたモンモリロナイト粘土、水和ケイ酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、モノステアリン酸エチレングリコール、及びそれらの組み合わせを包含する。
【0128】
配合物w)は香料である。局所用組成物内の配合物w)の量は典型的に、約0~約0.5%、特に約0.001~約0.1%、である。
【0129】
配合物x)は顔料である。皮膚に適用する為の好適な顔料は、無機顔料、有機レーキ顔料、真珠光沢顔料、及びそれらの混合物を包含する。本発明において有用な無機顔料は、カラーインデックスにおいて参照番号Cl77,891でコード化されているルチル又はアナターゼ型二酸化チタン;参照番号Cl77,499、77,492、及び77,491でコード化されている黒色、黄色、赤色、及び褐色酸化鉄、マンガンバイオレット(Cl77,742)、ウルトラマリンブルー(Cl77,007)、酸化クロム(Cl77,288)、クロム水和物(Cl77,289)、及びフェリックブルー(Cl77,510)、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものを包含する。
【0130】
本発明において有用な有機顔料及びレーキは、D&CレッドNo.19(Cl45,170)、D&CレッドNo.9(Cl15,585)、D&CレッドNo.21(Cl45,380)、D&CオレンジNo.4(Cl15,510)、D&CオレンジNo.5(Cl45,370)、D&CレッドNo.27(Cl45,410)、D&CレッドNo.13(Cl15,630)、D&CレッドNo.7(Cl15,850)、D&CレッドNo.6(Cl15,850)、D&CイエローNo.5(Cl19,140)、D&CレッドNo.36(Cl12,085)、D&CオレンジNo.10(Cl45,425)、D&CイエローNo.6(Cl15,985)、D&CレッドNo.30(Cl73,360)、D&CレッドNo.3(Cl45,430)、コチニールカーマインに基づく色素又はレーキ(Cl75,570)、及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを包含する。
【0131】
本発明において有用な真珠光沢顔料は、白色真珠光沢顔料、例えば酸化チタンでコーティングされたマイカ、オキシ塩化ビスマス、有色真珠光沢顔料、例えば酸化鉄を含むチタンマイカ、フェリックブルーを含むチタンマイカ、酸化クロム等、上記したタイプの有機顔料を含むチタンマイカ、及びオキシ塩化ビスマスに基づく顔料、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるものを包含する。局所用組成物内の顔料の量は典型的に、約0~約10%である。
【0132】
成分Aは、成分A、上記された全身用若しくは局所用の組成物、又はその両方、及び案内書、指示書、又はその両方を含むキットに含まれ得、該キットの使用が哺乳動物(特にヒト)における美容上及び医学上の状態の処置を提供する。該案内書及び指示書は、言葉、画像、又はその両方の形態等でありうる。加えて又は代替的に、該キットは、医薬、組成物、又はその両方、並びに好ましくは哺乳動物(例えば、ヒト)における美容上及び医学上の状態を処置又は予防する利益を有する医薬の又は組成物の適用方法に関する案内書、指示書、又はその両方を含みうる。
【0133】
本発明は、下記の非限定的な実施例においてより詳細に説明される。
【実施例】
【0134】
実施例1~2:対称的にメソ置換されたカチオン性N-フルオロアルキルピリジルポルフィリンの合成
反応は、これまでに記載され(Tovmasyan等.(2013年) Inorg Chem 52:5677-5691)且つ以下で更に修正され及び記載されている通りの方法に従って実施される。全体的な合成は、下記の3つの主要なステップからなる(スキーム1~2)。
【0135】
【化15】
スキーム1。対称的にメソ置換されたカチオン性N-フルオロアルキルピリジルポルフィリンの合成(ステップ1~2)。
【0136】
ステップ1:フルオロアルキルトシレートの調製。フルオロアルキルトシレート(2-フルオロエチルp-トルエンスルホネート又は5,5,5-トリフルオロペンチルp-トルエンスルホネート)が、以前に公表された本発明者等の方法に従って合成された(Tovmasyan等.(2013年) Inorg Chem 52,5677-5691;Rajic等.(2012年) Free Radic Biol Med 52,1828-1834)。簡単に云うと、フルオロアルコールがピリジンに溶解され、そして氷浴中(NaClを用いて調製)、-5℃~-10℃で10分間撹拌された。p-トルエンスルホニルクロリド(アルコールに等モル)が、少量ずつ添加され、そして-5℃で5時間撹拌された。反応の進行は、1:5=酢酸エチル:ヘキサン溶媒系を使用するTLCによって追跡された。水(2×容量)が反応混合物に添加され、そして形成された沈潜物を溶解する為に10分間撹拌された。有機層が混合物から分離され、そして2MのHCl(1×容量、4回)で洗われた。次に、有機層がNaHCO3の水性溶液を用いて中和され、そしてNa2SO4上で乾燥された。この方法は定量的収率をもたらした。
【0137】
ステップ2:N-四級化。N-四級化(フルオロアルキル化)が、類似のアルキル誘導体について以前に記載された通りに行われた(Batinic-Haberle等.(2002年) Journal of the Chemical Society,Dalton Transactions 2689-2696)。簡単に云うと、ポルフィリンリガンド(H2T-2-PyP)の溶液に、フルオロアルキルp-トルエンスルホネート(2-フルオロエチルp-トルエンスルホネート又は5,5,5-トリフルオロペンチルp-トルエンスルホネート)が、モル比で300倍過剰に添加され、そして無水DMF中、115℃で撹拌された。反応の進行過程は、移動相として1:1:8=KNO3(飽和):H2O:CH3CNを使用するTLCにより追跡された。N-四級化は、H2TFE-2-PyP4+及びH2TF3Pen-2-PyP4+それぞれについて、41及び47時間後に完了した。完了したら、反応混合物がジエチルエーテルによって沈殿され、ジエチルエーテル/アセトン混合物(1/3v/v)で洗われ、そして空気乾燥された。沈殿物が水に溶解され、冷蔵庫中4℃で1時間保管され、そして次に、平滑なろ紙を介してろ過された。ポルフィリンが、NH4PF6塩を添加することによって、PF6
-塩として溶液から沈殿された。沈殿物が濾過され、そして無水ジエチルエーテルを用いて徹底的に洗われた。次に、乾燥された沈殿物がアセトンに溶解され、そしてトリオクチルモノメチルアンモニウムクロリドの飽和アセトン溶液の添加によって、塩化物塩として沈殿処理された。沈殿物は、アセトンを用いて徹底的に洗われ、そして減圧乾燥された。
【0138】
難点:フルオロアルキル化反応は、一般的に、より低速で進むことが示され、それは、四級化反応中に形成されたフルオロアルキルカルボカチオンの安定性が、アルキルと比較して低いことに起因する可能性が極めて高い。そのため、N-フルオロエチル化反応は、N-エチル化と比較してゆっくりと進行した。ピリジル窒素のトリフルオロエチル化は、トシレート及びヨウ化物の両方を用いてテストされ、最低限度でしか進行せず、検出可能な収率はなかった。
【0139】
【化16】
スキーム2。対称的にメソ置換されたカチオン性N-フルオロアルキルピリジルポルフィリンの合成(ステップ3.1及び3.2)。
【0140】
ステップ3:金属化。カチオン性のN-置換ポルフィリンリガンドの金属化は、2つの明確に異なる条件:アルカリ性(ステップ3.1。5,10,15,20-テトラ(Mn(III)5’,5’,5’-トリフルオロペンチルピリジニウム-2-イル)ポルフィナト五塩化物;MnTF3Pen-2-PyP5+、Mn4)、及び酸性(ステップ3.2。Mn(III)5,10,15,20-テトラ(2-フルオロエチルピリジニウム-2-イル)ポルフィナト五塩化物;MnTFE-2-PyP5+、Mn3)で、水性溶液中で行われる。
【0141】
ステップ3.1。MnTF3Pen-2-PyP5+:(1MのNaOHで)pH約11に調整された1.5mMのH2TF3Pen-2-PyP4+の溶液に、モル比として20倍過剰のMnCl2×4H2Oが添加され、そして75℃で撹拌された。金属化反応の過程は、移動相として1:1:8=KNO3(飽和):H2O:CH3CNを使用するシリカゲルTLCプレート上で追跡された。加えて、約350nmでのUV光の下、無金属ポルフィリンの蛍光の喪失が確認された。金属化反応が完了した後(約3.5時間)、溶液は最初に粗い濾紙を通じて、そして次に微細な濾紙を通じて濾過された。Mnポルフィリンが、NH4PF6の飽和水性溶液によりPF6
-塩として、そして引き続きテトラブチルアンモニウムクロリドにより塩化物塩として沈殿した。アルキル化セクションにおいてフリーリガンドについて記載されている通り、Mnポルフィリンの単離及び精製が行われた(上記ステップ1を参照)。加えて、低分子量Mn複合体の完全除去及び調製物の高純度を保証する為に、沈殿手順全体がもう一度繰り返された(上記ステップ2を参照)。以前に記載されている方法は定量的収率を与えた(Tovmasyan等.(2013年) Inorg Chem 52:5677-5691;Tovmasyan等.(2011年).Dalton Trans 40,4111-4121)。
【0142】
ステップ3.2。MnTFE-2-PyP5+:(1MのHClで)pH約2に調整された1.5mMのH2TFE-2-PyP4+の溶液に、モル比として20倍過剰のMnCl2×4H2Oが添加され、そして75℃で撹拌された。金属化反応の過程は、上記のMnTF3Pen-2-PyP5+と同様に追跡された。金属化反応が完了した後(約68時間)、溶液は冷却され、そして反応混合物のpHはpH約6まで高められた。次に、該溶液は、最初に粗い濾紙を通じて、次に微細な濾紙を通じて濾過され、そしてMnTF3Pen-2-PyP5+と同様に操作された。この方法は定量的収率を与えた。
【0143】
難点:H2TFE-2-PyP4+ポルフィリンの金属化反応がアルカリ性条件下で実施された場合に、1以上のフッ素原子の喪失/ヒドロキシル基による置換に最初に起因する様々な副産物が認められた。形成された場合、不純物はポルフィリン型であり、且つスケールアップ合成ではクロマトグラフ分離は禁止されるようにするので、目標化合物の精製は、製品の工業的調製において困難を生じる。pH約2での酸性条件下で反応を行うことによって、望ましくない生成物の形成が阻止される。しかしながら、後者の条件は、化合物の単離/精製の更なるステップにおいて困難を生じる。化合物の沈殿は、そのような低下したpHの下では生ずることがなく、従って、pH約6~pH約11に予め上げておくことが、より良好な沈殿/精製の為に必要とされる。
【0144】
比較例A
Mn(III)メソ-テトラキス(トリフルオロエチルピリジニウム-2-イル)ポルフィリンは合成できない
スキームIAに示されている通り、-CH2CH3のメチル基内の3個の水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素化MnTE-2-PyP5+を合成することが当初提案された。しかしながら、H2T-2-PyPを(2,2,2-トリフルオロエタン)フェニルヨードニウムトリフレートを用いてフルオロアルキル化することによって(Umemoto and Gotoh (1987年) Bull.Chem.Soc.Jpn.60,3307-3313;Umemoto and Gotoh (1991年) Bull.Chem.Soc.Jpn.64,2008-2010)、無水DMF中、50℃で且つ湿気から保護された状態で、この化合物の合成を試みたが、所望の生成物を得ることができなかった。
【0145】
【0146】
フッ素は、周期表内で最も電気陰性の元素であり、且つその電気陰性度はその化学を制御し且つその合成オプションを制限する。
【0147】
様々な他の方法が採用されて、ピリジル環のオルト位でトリフルオロエチル置換基を有する、スキームIAのポルフィリンを合成することが試みられた。メソ-テトラキス(2-ピリジル)ポルフィリンと、アルキル化剤である2,2,2-トリフルオロエチルp-トルエンスルホネート及び2,2,2-トリフルオロエチルヨージド(ポルフィリン内のピリジル窒素の四級化において最も一般的に使用されている試薬)との相互作用は、所望の生成物を生成しなかった。オルトピリジル-ポルフィリンと比較して、それよりも立体障害が小さいメタポルフィリン異性体(メソ-テトラキス(3-ピリジル)ポルフィリン)の反応がまた、予想された生成物をも結果として生じなかった。代替経路、すなわち、様々なアルキル化試薬による、メタロポルフィリン、例えばMn(III)メソ-テトラキス(2-ピリジル)ポルフィリン、の四級化は、遊離塩基ポルフィリンが関係する反応と比較して、それよりもはるかに低い速度で進行した。それ故に、そのような反応は非生産的である。本発明者等はまた、2,2-ジフルオロエチル置換基を有するポルフィリンを合成することを試みたが、まだ成功していない。115℃で4日間撹拌した後、反応は完了しなかった。これらの様々な試みは、慣用的な手段に従って、スキームIAに記載された通りのメソ-テトラキス(2,2,2-トリフルオロエチルピリジニウム-2-イル)ポルフィリンを調製することが非現実的であることを示す。
【0148】
幾つかのフッ素原子の電子求引効果は、窒素とエチルカルボカチオンとの間の結合を確立させない。その上、ピリジル鎖のオルト位における3個のフッ素原子は、ベータピロール水素に対して立体障害を惹起し、それは更に、反応がかなりの程度生ずることを妨げる。
【0149】
しかしながら、エチル鎖内の1個の水素原子のみのフッ素原子での置換は、ピリジル-ポルフィリンの完全な四級化を実現することを可能にした。純粋な化合物が単離され、そして種々の動物及び細胞癌モデルで使用された。このモノフルオロエチル化反応は、その非フッ素化エチル類似体と比較して、それよりも極めて低い速度で進行したことが留意されるべきである。
【0150】
比較例B
Mn(III)メソ-テトラキス(トリフルオロエトキシブチルピリジニウム-2-イル)ポルフィリンは合成できない
また、酸素原子の位置が、スキームIIAに示されている生成物を合成する為の能力にどのように影響を及ぼすかについてこれまでに理解されている。しかしながら、窒素原子に隣接している短いエチル鎖と酸素原子の反対側にあるブチル鎖とを有する化合物のみが作られることができる。例えば、MnTnBuOE-2-PyP5+(式001)を参照。
【0151】
【0152】
スキームIIAに示されている通り、-CH2CH2CH2OCH2CH3のメチル基内の3個の水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素化MnTnPrOH-3-PyP5+を合成することが当初提案された。しかしながら、水素化リチウム(10等量)を用いたアルコールの脱プロトン化によりMnTnPrOH-3-PyP5+のアルコキシド誘導体を調製し、これを(2,2,2-トリフルオロエタン)フェニルヨードニウムトリフレートを用いてフルオロアルキル化することによって(Umemoto and Gotoh (1987年) Bull.Chem.Soc.Jpn.60, 3307-3313;Umemoto and Gotoh (1991年) Bull.Chem.Soc.Jpn.64,2008-2010)、無水DMF中、50℃で24時間加熱し且つ湿気から保護された状態で、この化合物の合成を試みたが、所望の生成物を得ることができなかった。
【0153】
その上、窒素原子に隣接するブチル鎖がスキームIIAの化合物内にある通り、窒素原子に隣接するブチル鎖は、環の再配列を可能にし、且つ4つのエトキシブチル鎖の代わりに、窒素原子上に異なる数のエチル鎖を有する一連の種を結果として生じる。そのような再配列に関連付けられた問題は、Rajic Z,Tovmasyan A,de Santana OL,Peixoto IN,Spasojevic I,do Monte SA,Ventura E,Reboucas JS,and Batinic-Haberle I.Challenges encountered during development of Mn porphyrin-based,potent redox-active drug and superoxide dismutase mimic,MnTnBuOE-2-PyP5+,and its alkoxyalkyl analogues.J Inorg Biochem 169:50-60,2017年に記載されている。従って、慣用の方法に従って、スキームIIAに示される構造を合成することは不可能である。
【0154】
最終調製物内で様々な化合物の形成を制御するそのような問題に加えて、鎖の末端部にある3個のフッ素原子の影響は、合成及び金属化ステップに有害な影響を有しうる。酸素原子の反対側から(窒素原子から、及びフッ素原子から)の2つの強い電子求引効果はエーテル結合を不安定化させ、且つポルフィリン及びそのMn複合体の形成を妨げる。最終的に、本発明者等の現在の知識に基づき、極性の酸素原子と共に極性のフッ素原子を有するそのような分子を設計は、親油性の低下、それ故に低下したバイオアベイラビリティーで終わる。バイオアベイラビリティーに関するMnTnBuOE-2-PyP5+が有する問題点が経験されているが、完全には理解されていない-例えば、皮下に投与された場合(一方、ヘキシル類似体であるMnTnHex-2-PyP5+は投与される)、脳卒中モデルにおいて保護を提供しない。しかしながら、その酸化還元特性は、脳室内に投与される場合に、脳卒中モデルにおいて、それが防御性となることを可能にする。
【0155】
構造IIAと関連する上記全ての考察は、最近5年にわたり得られ、しかし構造が提案されたときは入手不可能であった酸素誘導体化Mnポルフィリンの合成における本発明者等の多岐にわたる知識に基づき可能となる。本発明者等によっても、また他者のいずれによっても構造IIA7、すなわちトリフルオロペンチル化合物であるMnTF3Pen-2-PyP5+(式III)、は、それが十分な親油性を有し且つGMPスケールで容易に合成することができるように設計された。
【0156】
実施例3:フルオロMnPと非フルオロMnPのイン・ビボ(in vivo)での効果
表1は、フッ素化MnP及びその非フッ素化類似体の特性をリスト化している。これらは、そのイン・ビトロ(in vitro)及びイン・ビボ(in vivo)での作用を制御する主要な特性である。
【0157】
表1.Mn複合体の物理的及び化学的特性。フッ素化化合物及び類似の非フッ素化MnPについての値がリスト化されている:標準水素電極NHE(normal hydrogen electrode)に対する、MnIIIP/MnIIP酸化還元対の金属中心還元電位として表される酸化還元特性E1/2(mV);MnIIIP/MnIIP酸化還元対を使用して、初期速度として表されるアスコルビン酸を酸化する為の能力vo(Asc)ox;Rfとして表される親油性-溶媒が1:1:8,KNO3(飽和):H2O:アセトニトリル,であるところの、シリカプレート上のMnPパスの溶媒パスに対する比;log(kcat(O2
-))として表される、O2
-不均一化の触媒反応におけるSOD酵素を模倣する能力。
【0158】
【0159】
これまで実施されたあらゆる試験において、フルオロ置換ポルフィリンは、その非フッ素化対応物よりも優れた特徴を示した。
【0160】
MnTF
3Pen-2-PyP
5+(式III、MnF
3Pen、Mn4)及びMnTnBuOE-2-PyP
5+(式001、MnBuOE、Mn2)(両方とも類似したSOD様の活性及びバイオアベイラビリティーを有する)が、単独と、アスコルベート及び/又は放射線療法の組み合わせとで比較され且つ
図2に示されたところのマウス乳房腫瘍放射線及び化学的増感試験。
図2に示された最後の2つのデータシリーズ(●及び●)は、Mnポルフィリン、放射線、及びアスコルベートの三つを組み合わせた結果としての腫瘍増殖阻害を表す。これらのデータは、MnTF
3Pen-2-PyP
5+をアスコルベート及び放射線療法との三つの組み合わせが、MnTnBuOE-2-PyP
5+をアスコルベート及び放射線療法と同様に三つを組み合わせたときと比較した場合に、より大きな腫瘍増殖阻害を結果として生じることを示す。両化合物は、アスコルベートの酸化及び細胞傷害性過酸化物生成を触媒する為の類似する能力を有し、且つ類似した親油性がある。極性の差異が重要な役割を演じている生体分子、例えばアスコルベート、に対するそのバイオアベイラビリティー及び反応性を理解すること無しに、このような有利な効果は期待されなかったであろう。また、そのような差異は、それらの化合物の水溶性化学及び多様な物理特性にのみ基づいて予期されることができなかった。そのような効果は、それらの分子の極性の差異に起因する可能性がある:4個の極性酸素原子に対する12個のフッ素原子の強い極性。
図2における試験は、MnPが2mg/kgでsc注射された
図8のデータと比較して、1/10の低用量-0.2mg/kgのMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)、及びMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)(RT及びアスコルベートと併用)、並びに増殖した4T1乳房腫瘍を用いて行われた。強い腫瘍抑制が、三つの組み合わせで認められた。等しく親油性であるにもかかわらず、MnTnBuOE-2-PyP
5+よりもMnTF
3Pen-2-PyP
5+のより高い有効性が認められた。注目すべきことに、MnTF
3Pen-2-PyP
5+は、ラット及びマウス試験において、MnTnBuOE-2-PyP
5+よりも低い毒性を示した。
【0161】
実施例4:放射線耐性前立腺癌細胞株におけるMnTFE-2-PyP
5+
の抗癌効果
図3は、放射線耐性前立腺癌細胞株(PC3)の殺傷におけるMnTFE-2-PyP
5+(Mn3、
図1、式II)の有効性試験から得られた結果を、その非フッ素化類似体であるMnTE-2-PyP
5+(Mn1、
図1)と比較して表す。実施例3に記載されたMnTF
3Pen-2-PyP
5+及びMnTnBuOE-2-PyP
5+の比較で示された結果と同様に、MnTFE-2-PyP
5+とアスコルベート及び放射線療法との三つの組み合わせは、MnTE-2-PyP
5+の三つの組み合わせよりも、放射線耐性前立腺癌細胞株に対して優れた細胞毒性を示し、それは極性の差異が重要な役割を演じている生体分子、例えばアスコルベート、に対する反応性の理解すること無しに期待されなかったであろう(
図5及び表1)。フルオロポルフィリンは、非フルオロ類似体よりもイン・ビボ(in vivo)での分布が少ないが(
図6)、より大きな治療効果を生み出す動力学的長所を有すると思われる。
【0162】
実施例5~7
フッ素化類似体と非フッ素化類似体との更なる比較
図1は、Mnポルフィリンに基づく治療薬の開発を示す。
図4は、フッ素化MnTFE-2-PyP
5+(Mn3)の、その非フッ素化類似体であるMnTnBuOE-2-PyP
5+(Mn2)よりも優れた特性を記載する。一般的に、フッ素化類似体は、アスコルベートの酸化及び過酸化物の形成の、より有望な触媒である。重要なことに、MnTFE-2-PyP
5+は、iv投与された場合に、血圧低下を引き起こさず、一方、非フッ素化MnTnBuOE-2-PyP
5+はそれを引き起こす(
図4)。同じことが、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(Mn4)とMnTnBuOE-2-PyP
5+(Mn2)との場合も同じである(
図9)。これは、非常に簡便に、フルオロ類似体をiv投与することを可能にする。
図5は、アスコルベートの酸化の初期速度の決定を介して評価された、アスコルベートの酸化を触媒する(続いて、腫瘍をひいては殺傷する過酸化水素の形成する)様々なMnPの能力を示す。フッ素化は、アスコルベート酸化速度において顕著な増加を誘発し、それは細胞傷害性の過酸化水素の形成の速度に対応し、ひいては腫瘍細胞を殺傷するMnPの能力に対応することに留意されたい。4T1マウス試験において、MnTF
3Pen-2-PyP
5+の腫瘍細胞を殺傷する改善された能力が、MnTnBuOE-2-PyP
5+と比較して
図2に示されている。MnTFE-2-PyP
5+(Mn3)の腫瘍細胞を殺傷する能力が、MnTE-2-PyP
5+(Mn1)よりも高いことがまた、同一種類のマウスの実験で判っている。
図6は、フルオロ-MnP及びその非フッ素化類似体の親油性を示す。親油性は、Mnポルフィリンの治療有効性を制御する第2の重要な因子(好ましい酸化還元特性に次いで)である。
【0163】
図7は、腫瘍、筋肉、及び肝臓におけるフルオロ化合物のバイオアベイラビリティーを示す。常識及び初期の知見に反して、同様に親油性であるものの、イン・ビトロ(in vitro)及びイン・ビボ(in vivo)での生体分子との極性相互作用に起因して(それらの過剰な極性の結果として)、フルオロ化合物(例えば、フッ素化Mnポルフィリン)は、非フッ素化Mnポルフィリンと同一のレベルで、イン・ビボ(in vivo)で蓄積しない。細胞内生体分子とのその反応が動力学的に促進されることになお起因して、フルオロ化合物は、より大きな治療効果を生み出す。それは、MnTE-2-PyP
5+(MnE、Mn1)とMnTFE-2-PyP
5+(MnFE、Mn3、式II)の場合に当てはまる。全ての臓器(筋肉、腫瘍、及び肝臓)において、MnTBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)が、より高いレベルにあり、次いでMnTE-2-PyP
5+及びMnTFE-2-PyP
5+が続くが、MnTFE-2-PyP
5+は、MnTE-2-PyP
5+よりも若干大きな効果を生み出し、一方、BMX-001(MnTnBuOE-2-PyP
5+)よりも毒性は低い。腫瘍の増殖抑制は、親水性で極性のMnTFE-2-PyP
5+の場合、親油性であるMnTnBuOE-2-PyP
5+と類似しているか又はそれより大きいが、MnTFE-2-PyP
5+の分布は腫瘍内で約1/3に過ぎないものの(
図7)、しかしアスコルベートの酸化において、MnTnBuOE-2-PyP
5+よりも2倍高い速度定数を有する(
図4及び
図5、表1)。y軸及びx軸は、同一スケールであることに留意されたい。
【0164】
図8は、RTとアスコルベートとの組み合わせにおけるMnポルフィリンの抗癌効果を示す。全ての条件は、Mnポルフィリンが2mg/kgでsc注射されたことを除き、
図2と同一である。
【0165】
フルオロ置換Mnポルフィリンにより示される治療効果は、その親油性、極性、及び酸化還元特性の高度に複雑な相互作用;そのバイオアベイラビリティーに影響を及ぼしうる親油性及び極性の相互作用の結果であるので、該治療効果が予期されることができなかった。それらの全てのパラメーターは、フルオロ置換Mnポルフィリンと、その作用に決定的に関与する重要な生体分子、例えばアスコルベート、H
2O
2、グルタチオン、及びタンパク質チオール、との反応の動力学及び熱力学に影響を及ぼすことができる。注目すべきことに、バイオアベイラビリティーと親油性は、他のMn N-アルキルピリジルポルフィリンで本発明者等が早期に確立した傾向に従わない。すなわち、フルオロ置換Mnポルフィリンは、非フルオロ置換Mnポルフィリンと同一の親油性を有するポルフィリンでありうるが、しかしその分布は
図7に示されている通り、非常に異なりうると言える。なおもそのような差異に加えて、フルオロ置換Mnポルフィリンがその作用機序に関与する分子と相互作用する際の動力学は、その治療効果を制御する。その上、親水性のMnTFE-2-PyP
5+(Mn3)は腫瘍において最低レベルの分布であるが、それでもなお、親油性であるMnTnBuOE-2-PyP
5+及び腫瘍内で最高の蓄積を示す親水性であるMnTE-2-PyP
5+(Mn1)よりも有効である(アスコルベートの酸化速度が最も高い)。
【0166】
実施例8
放射線誘発性損傷へのフッ素化Mnポルフィリンの適用
本明細書において、本発明者等は、Mnポルフィリンに基づく治療薬の新規のクラスメンバーであるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnTF
3Pen、Mn4)を調査した(
図1)。極性のフッ素原子を導入することにより周辺部の置換基を修飾してもなお、MnPの酸化還元活性をサポートする主要な構造特性を維持した。
図10は、MnPの推定される治療指数TIを示す。その治療指数を重畳的に定義するMnポルフィリンの特性(任意の単位で与えられる):SOD様活性、親油性、及び毒性。非フッ素化リード薬物であるアルキルMnTnHex-2-PyP
5+(MnTnHex)及びアルコキシアルキルポルフィリンMnTnBuOE-2-PyP
5+(MnBuOE、Mn2)と親油性フッ素化類似体であるMnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen)とが比較される。野生株大腸菌(E.coli)の好気的増殖-臨床的潜在能力を有する化合物を同定する為に20年にわたり使用されている単純だが正確なアッセイ法に基づき、毒性が評価される。MnTF
3Penはより親油性で且つより有効であり、一方、2つの非フッ素化親油性類似体よりも低毒性である。本発明者等は、この類似体のフッ素化が、非フッ素化であるMnTF
3Penに相対的にその親油性を高めることを実証した。
【0167】
Mnポルフィリンは、乳房腫瘍を放射線感受性且つ化学感作性にする。放射線保護剤及び放射線増感剤としてのMnPの作用におけるアスコルベート(ビタミンC)の役割が調査された。試験は、乳癌について、アスコルベートが、MnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnTF
3Pen、Mn4)及び放射線(RT)の両方に対する強力な腫瘍増感物質であることを示した(
図2)。MnP/Ascは、癌細胞に対して毒性であり、その増殖を無力化するが、しかし異なる種類の正常細胞に対して無毒性であることがまた実証され且つ報告されている。
【0168】
A.最大耐用量(MTD:Maximal tolerable dose)試験
MnTF3Pen-2-PyP5+(Mn4)及びアスコルベートの最大耐用量(MTD)の分析が、MnTF3Pen-2-PyP5+について0.25、1、1.25、2、2.5、4、及び5mg/kgの皮下注射、並びにアスコルベートについて0.1、0.5、1、及び1.5g/kgの腹腔内注射を用いて行われた。次に、本発明者等が完全に安全であるとして識別した用量が2週間投与された。また、MnTF3Pen-2-PyP5+とアスコルベートの組み合わせがテストされた。MnTF3Pen-2-PyP5+の0.5mg/kg超の用量は、筋緊張低下症(hypotonia)及び腰高歩行(reluctance to ambulate)として表される若干の毒性を惹起すると思われる。従って、本発明者等は、複数回投与について安全且つ無毒性のMTD用量と思われる0.5mg/kgを用いて継続することを決定した。1.5mg/kgのアスコルベートはストレスの軽微な兆候を示し、従って1g/kgがMTDとして選択された。
【0169】
B.薬物動態学(PK:Pharmacokinetic)試験
MnTF3Pen-2-PyP5+(MnF3Pen、Mn4)の包括的なPK試験が、1mg/kgにおいて行われた。該用量は良好な忍容性であり、且つPKプロファイルがそのような用量で本発明者等によってすでに得られていたMnTnBuOE-2-PyP5+(MnBuOE、Mn2)との比較を可能にした。3匹のラットが、各時点で使用された。下記の時点:30分、1、2、6、24時間、並びに3日及び7日でテストされた。臓器の血液含有物、それ故に臓器の血液含有物によるその妨害を除去する為に、ラットがPBSを用いて灌流処置された後に、組織が得られた。6時間後、追加のラット3匹が潅流の効果を評価する為に使用された。血漿に加えて、下記の臓器が分析された:肝臓、腎臓、前立腺、ペニス、睾丸、直腸、膀胱、及び脳。本発明者等はMnポルフィリンが肝臓内に最高レベルで蓄積するためこの臓器を採取し、次に、肝臓は、血漿及び他の臓器内で薬物のレベルを維持する貯蔵所として機能する。Mnポルフィリンの毒性が脳中にそのレベルで見られたので、本発明者等はまた脳を採取した。可能な限り、MnBuOEとの比較が行われた。血漿及び臓器のMnTF3Pen-2-PyP5+(MnF3Pen、Mn4)レベルの分析が、Leu等."CNS bioavailability and radiation protection of normal hippocampal neurogenesis by a lipophilic Mn porphyrin-based superoxide dismutase mimic,MnBuOE." Redox Biology Redox Biology 2017年,Volume 12,August 2017年,Pages 864-871に記載されている通り、LC-MS/MSを用いて行われた。MnBuOEが、内部標準として使用された。
【0170】
全てのPKデータが
図11に示されている。データは、MnBuOEよりもMnF
3Penの肝臓において少ない蓄積を示し、それは、全身毒性は低めであるが、しかし血漿半減期は長めであることを示す。脳内へのその蓄積(
図12)は、別の試験で見出されたMnBuOEと類似している。
【0171】
MnF3Penは、100nMよりも高いレベルで、関心のある組織内に蓄積する。Mn4の最高Cmaxが、膀胱(450nM)において、引き続きペニス(250nM)、睾丸(190nM)、前立腺(150nM)、及び直腸(105nM)において認められた。この結果及び以前の試験結果に基づき、該レベルは、MnF3Penによる正常組織の放射線保護効果を正当化するのに十分である。レベルは、唾液腺中のレベルよりも高く、且つ舌中のレベルとほぼ同じである。MnBuOEによる唾液腺及び口腔粘膜(舌を含む)の放射線保護は、マウス試験において示された。
【0172】
C.有効性試験-勃起機能及び前立腺の放射線保護
ラットの体重が毎週追跡された。全ての群のラットは、同様のペースで体重を増やした。加えて、ラットは、健康状態の他の兆候に関して注意深く監視された。その健康状態に対するRT/Asc療法の悪影響は見られなかった。
【0173】
実験計画
MnTF
3Pen-2-PyP
5+(MnF
3Pen、Mn4)。1群当たり10匹のラットが試験された。MnF
3Penが、0.5mg/kgで、最初の4週間は週末を除く毎日、そして次に、次の5週間は1週間に2回、sc投与された。用量の低減が、全組織からの全カチオン性Mnポルフィリンのクリアランスが低いこと(本発明者等の試験では約1~2週間)に起因した(
図11)。
【0174】
放射線。20Gyの単回照射線量が、画像ガイド式小動物ラジエーターを使用して定位的に照射された。
【0175】
アスコルベート。アスコルベートが、1g/kgで、最初の3日間は毎日、次に、1週間に2回投与された。
【0176】
アポモルヒネ。0.1mg/kgで使用された(6週目及び9週目で)。
【0177】
勃起不全
以前の研究に基づき、勃起不全が9週間で評価された。データは、Mn4(MnF
3Pen-2-PyP
5+)が放射線誘発性の勃起不全を完全に予防することを明らかに示す(
図13)。その上、
図13に示されている通り、Mn4は、アスコルベートの非存在下又は存在下で放射線誘発性の勃起不全を完全に予防する。Mn4の投与は、RTの24時間前に開始された。Mn4は、0.5mg/kgで、最初の4週間、週末を除く毎日、そして次に、次の5週間、1週間に2回、sc投与された。20Gyの単回RT線量が投与された。アスコルベートは、1g/kgで、最初の3日間、毎日、次に、1週間に2回投与された。Mn4は、アスコルベートの存在下又は非存在下で、放射線誘発性の勃起不全を完全に予防する。アスコルベートの追加は、無毒性あった。
【0178】
Mn4は、勃起機能に対する放射線誘発性の損傷を完全に予防する強力な放射線保護剤である。その上、初めて、本発明者等は、アスコルベートが、MnP及び放射線(両方ともH
2O
2の供給源)と共に投与された場合に、正常組織に対して毒性を惹起しないことをここに示す(
図14及び
図15)。対照的に、そのような治療戦略を用いることで、腫瘍増殖の抑制及び腫瘍細胞に対する細胞毒性が見られた。正常組織及び腫瘍組織に対するMnP/Asc/RTの効果のそのような相違の理由は、H
2O
2の異なるレベルに依拠する。そのようなデータの意義は、Mn4の放射線保護特性を損なうことなしに、より高用量のアスコルベートが、腫瘍の放射線及び化学的増感を高める為に使用されることができるという事実に依拠する。
【0179】
前立腺の放射線保護
組織が保存され、そのうちの半分はホルマリン漬けとし、別の半分は種々の分析の為に急速凍結された。前立腺は直接放射線照射される唯一の組織であり、且つ陰茎機能は放射線損傷を受けることが公知であった。事実、前立腺組織に変化が認められ、そして
図14及び
図15において定量化されている。Mn4は、有意な前立腺組織の放射線保護を示した。しかしながら、Mn4は、放射線照射されない組織の制御に関する膀胱及び直腸の病理学に対しても、一切変化をもたらさなかった。
【0180】
正常な前立腺での形態学的知見は以下の通りである:
・RT群:ほとんどの腺が大型の奇怪核及び凝縮核を示した
・RT+Mn4+Asc群:局所的な腺が幾つかの大型の奇怪核を呈し、幾つかの細胞が肥大した不規則な核及び明らかな核小体を示した
・RT+Mn4+Asc群:幾つかの細胞が肥大した核及び明らかな核小体を示した。
【0181】
陰茎組織の放射線保護
H&E染色法は、陰茎組織に、線維化した変化が存在した可能性があることを示す。従って、本発明者等は更に、そのような組織を、マッソントリクロームを用いて染色し、線維化の範囲を定量化し、分析は進行中である。
【0182】
メカニズム研究
最近の2年間で、Mnポルフィリンの異なる効果の理解において、本発明者等は大幅な進歩を遂げ、それらは
図16に要約されている。本発明者等は、Mnポルフィリンが正常組織中よりも腫瘍中に最大1桁大きいレベルで蓄積することを示した。過酸化物除去酵素が機能不全していることに起因して、腫瘍は、正常組織と相対的に高レベルの反応性種(RS:reactive species)(酸化ストレス)を有することが十分に文書化されている。高RS(主として長寿命のH
2O
2)及び高レベルのMnPは、タンパク質システインの酸化的変性における反応物質である。その量が多いほど、タンパク質の酸化の程度は大きくなり、ひいてはアポトーシス経路及び増殖経路に与える影響も大きくなる。本発明者等は、酸化還元プロテオミクスを使用して、非常に多くのタンパク質が酸化的に変性される、すなわちS-グルタチオン化される、ことを示した。主に酸化されるのはNF-kBであり、次に、MAPKキナーゼ(p38、JNK、ERK、AKT)、Nrf2/Keap1、及びホスファターゼ2Aが続く。そのような全てのタンパク質は、そのシステインの酸化を介してシグナル伝達経路に作用する-すなわち、それを活性化させる又は抑制する、ので、該タンパク質は重要である。本発明者等は、MnPがH
2O
2及びGSHの存在下でそのようなシステインを触媒的に酸化させることを示した。NF-kBが主に酸化され、そして、次に不活性化され、アポトーシスが促進される。MnPによるシステイン酸化の触媒反応は、本質的にMnPのグルタチオン過酸化物様の活性である。本発明者等は、GPxを模倣する種々のMnPの能力を定量化した。MnTE-2-PyP
5+、MnTnBuOE-2-PyP
5+、MnTFE-2-PyP
5+、及びMnTF
3Pen-2-PyP
5+の酸化還元特性(それは、正常組織を放射線保護し、一方、腫瘍を放射線増感する為のそれらの能力に関連する)は、いずれも表1にリスト化されている。MnTF
3Pen-2-PyP
5+は、MnTnBuOE-2-PyP
5+と同様に酸化還元活性を有することが明らかである。
【0183】
正常組織におけるMnP及びH
2O
2のかなる低いレベルは、NF-kBの軽微な不活性化を結果として生じ、それは、ひいては炎症の抑制及び正常組織の治癒を結果として生じる(腫瘍と正常組織に対するMnP/RT/Ascの種々の影響に対する詳細について、
図13を参照)。
【0184】
図16は、H
2O
2供給源の存在下で、腫瘍増殖に対するカチオン性MnPの効果を示す。腫瘍は、下方制御された過酸化物除去酵素又は不活性の過酸化物除去酵素に起因して、酸化ストレス下にある。そのような腫瘍環境は、放射線、化学療法により、又はMnPがアスコルベート、すなわちH
2O
2の主要な供給源、と共に一緒に投与される場合に、更に高められる。MnPの多量の腫瘍蓄積は更に、腫瘍内でのタンパク質システインの高効率の酸化的変性に寄与し、それは、ひいては腫瘍増殖抑制を結果として生じる。機能的過酸化物除去酵素、従って正常組織における低いH
2O
2レベル且つ正常組織における少ないMnP蓄積、に主に起因して、抗アポトーシスプロセスが好まれる。本発明者等のプロテオミック試験は、4T1乳癌細胞がMnP/Ascを用いて処置された場合に、MnP/H
2O
2/GSH作用の主要な標的として、NF-κBのS-グルタチオン付加を識別した。癌細胞内のS-グルタチオン付加及びGSSG/2GSH比に関する本発明者等の最近のデータは、NF-kBに対するそのような影響(それは、NF-kBの不活性化を結果として生じる)を裏付ける。あらゆる特定の理論に束縛されることを望まないが、NF-κBの大幅な不活性化は、アポトーシスプロセスを促進し、そして腫瘍増殖の抑制に大いに寄与する。正常組織における極めて機能的な内因性抗酸化性の防御を与えられると、NF-κB酸化の低い収率、及び後続のその不活性化の低い程度が、MnPのレベルが低いこととあいまって、正常組織の治癒を結果として生じる。正常組織におけるNF-κBのレベルでの効果は、糖尿病及び脳卒中、一方、癌ではリンパ腫及び多発性骨髄腫細胞試験並びに神経膠腫動物試験を用いて、NF-κBに対する作用と共に文書化されている。Nrf2のレベルでの効果は、放射線照射された正常な造血幹細胞で示唆されている。
【0185】
Mn4は、勃起機能に対する放射線誘発性の損傷を完全に予防することができる強力な放射線保護剤である(
図13)。アスコルベートは、MnP及び放射線(両方ともH
2O
2の供給源)と共に投与される場合に、勃起機能に対する毒性を惹起しない(
図13)。本発明者等が本明細書で適用したMnP及びアスコルベートの用量は、腫瘍増殖を抑制する為に通常適用され、且つ臨床的に意義のある用量と同一である-すなわち、臨床試験においてヒト対象で現在使用されている用量と類似している。Mn4は、前立腺(その組織は20Gyの単回線量照射に直接的に曝露された)を放射線保護する(
図14及び
図15)。アスコルベートは、RT及びアスコルベートと共に投与された場合、前立腺組織に対して毒性を惹起しなかった(
図13、
図14、及び
図15)。
【0186】
Mn4は、0.1μM超のレベルで関心のある全ての組織内に蓄積する;そのようなレベルはMn4の放射線保護効果を正当化する(
図11)。約1μMの最高レベルが肝臓内で見られたが、それは、他の組織内でMnPの一定レベルを維持する為のデポとして役立つ。薬物の遅いクリアランスに起因して、本発明者等は、十分に高い組織レベルを構築する為に、RT後の4週間、Mn4を毎日投与し、その後、1週間に2回の投与を継続した。本発明者等は、アスコルベートを、毎日、3日間、次に、1週間当たり2回、送達した。
【0187】
逆に、腫瘍増殖抑制及び腫瘍細胞に対する細胞毒性が、Mn1及びMn3について報告された(
図3)。正常組織及び腫瘍組織に対するMnP/Asc/RTのそのような異なる効果は、H
2O
2及びMnPの種々のレベル(それらのいずれのレベルも、腫瘍においてはるかに高い)に依拠する(
図16を参照)。
【0188】
特に重要なことは、より高用量のアスコルベートが、Mn4の放射線保護特性を損なうこと無しに、腫瘍の放射線感受性且つ化学感作性を高める為に使用されることができる(RT及び化学療法の投与量の低下を可能にする)ことをデータが実証した点である。
【0189】
上記は本発明の例示であり、本発明を制限するものとして解釈されない。本発明は下記の特許請求の範囲によって定義されるが、但し特許請求の範囲の等価物もそれに包含される。本明細書で引用された全ての刊行物、特許出願、特許、特許公開、及び他の参考文献は、参照が示されている及び/又は段落に関連する教示の為に、参照によってその全体が取り込まれる。