(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】異方性導電接着フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/00 20060101AFI20230825BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20230825BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20230825BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230825BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20230825BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H01R43/00 H
H01R11/01 501C
C09J7/30
C09J201/00
C09J9/02
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2022501251
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 KR2020005256
(87)【国際公開番号】W WO2021006465
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0083674
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522011285
【氏名又は名称】エイチアンドエス ハイ テック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】H&S HIGHTECH CORP.
【住所又は居所原語表記】(Gwanpyeong-dong) 62-7, Techno 1-ro, Yuseong-gu, Daejeon 34014 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソ キョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】カン サン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウン ビョル
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョ ソプ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ミ ヨン
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/123003(WO,A1)
【文献】特開2018-160461(JP,A)
【文献】特開2014-191892(JP,A)
【文献】特開2015-195198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R11/00-11/32
H01R43/00-43/02
C09J 7/30
C09J 201/00
C09J 9/02
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する回路部材の間に介在され、厚さ方向には互いに対向する回路電極間を電気的に接続すると同時に、面方向には隣り合う回路電極間を電気的に絶縁させる異方性導電接着フィルムの製造方法であって、
導電粒子の粒径より小さい粒径を有するバリア粒子が表面に付着した粘着性フィルムを含むモールドを用意する第1段階と、
前記バリア粒子が付着していない前記粘着性フィルムの表面に前記導電粒子を塗布する第2段階と、
第1接着層が形成されたフィルムを用意し、前記第1接着層の露出した表面を前記導電粒子が付着した前記モールドの表面に付着する第3段階と、
前記フィルムを前記モールドから剥離して、前記導電粒子のみを選択的に分離する第4段階と、
前記導電粒子が付着した前記第1接着層上に低流動性樹脂で形成された第2接着層を塗布する第5段階と、
前記第2接着層上に充填用第3接着層を塗布する第6段階と、を含む、異方性導電接着フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1段階で、前記バリア粒子が付着した領域を露光部とし、前記バリア粒子が付着していない領域を非露光部として、前記粘着性フィルムの表面を露光させることを特徴とする請求項1記載の異方性導電接着フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記バリア粒子の粒径は、前記導電粒子の粒径の10%以上および50%以下であることを特徴とする請求項1記載の異方性導電接着フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記第2接着層は、前記異方性導電接着フィルムの回路接続温度範囲内での最低溶融粘度が500,000cps以上および1,200,000cps以下であることを特徴とする請求項1記載の異方性導電接着フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記粘着性フィルムは、前記バリア粒子の表面張力より低い表面張力を有することを特徴とする請求項1記載の異方性導電接着フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電接着剤を用いた回路接続技術に関し、より詳しくは、互いに対向する2つの回路部材を相互接続するに際して、厚さ方向に対向する2つの電極を電気的に導通させると同時に、面方向には隣り合う電極間に絶縁性を維持できる回路接続用異方性導電接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化および薄型化に伴って、回路部材が高密度化および高精密化している。これによって、微細回路の接続のためには、従来の溶接またははんだ付けなどの方式で対応することが困難になった。このような問題を解決するために、異方性導電接着剤が開発されたが(日本国特許公開昭51-21192号公報)、異方性導電接着剤(Anisotropic Conductive Adhesives)は、硬化樹脂を含む接着成分に導電粒子を配合させ、その含有量を調節することによって、厚さ方向には互いに対向する2つの電極を電気的に導通させると同時に、面方向には隣り合う電極間に絶縁性を維持できる回路接続部材をいう。このような異方性導電接着剤は、ディスプレイ素子、半導体素子などの製造時に、様々な回路部材を電気的に接続および接着させる目的で広く使用されている。
【0003】
なお、近年、電子回路の集積度が増加するのに伴い、電極間ピッチ(Pitch)がますます微細化しており、それによって、回路電極のサイズ(面積)も次第に小型化している。しかも、最近では、身体に付着して使用可能な多様なウェラブルデバイス(Wearable Device)の開発および商用化がさらに加速化している。したがって、電極間ピッチが微細な電子回路および/または柔軟性を有する回路基板に適用される場合にも、回路部材間の電気的接続信頼性を維持できる異方性導電接着剤が切実に要求されている。
【0004】
特に、従来の異方性導電接着フィルムは、接着層を構成する樹脂上に導電粒子が無作為で分散した形態で製造されるが、接続しようとする電極の面積が小さくなり、隣り合う電極間間隔が狭くなるにつれて、電極接続領域に導電粒子の数の少ない領域が存在したり、電極間間隔の間に導電粒子が非常に多く存在するにつれて、隣り合う電極間に電気的導通が発生する問題が引き起こされている。このような問題を解決するために、2次元領域に一定の間隔で導電粒子を配列する必要性が台頭している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、電極間ピッチが微細な電子回路に適用されるに際して、回路部材間の電気的接続信頼性に優れた異方性導電接着フィルムを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されていない他の目的は、下記の記載から明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による異方性導電接着フィルムの製造方法は、互いに対向する回路部材の間に介在され、厚さ方向には互いに対向する回路電極間を電気的に接続すると同時に、面方向には隣り合う回路電極間を電気的に絶縁させる異方性導電接着フィルムの製造方法であって、前記導電粒子の粒径より小さい粒径を有するバリア粒子が表面に付着した粘着性フィルムを含むモールドを用意する第1段階と、前記バリア粒子が付着していない前記粘着性フィルムの表面に前記導電粒子を塗布する第2段階と、第1接着層が形成されたフィルムを用意し、前記第1接着層の露出した表面を前記導電粒子が付着した前記モールドの表面に付着する第3段階と、前記フィルムを前記モールドから剥離して前記導電粒子のみを選択的に分離する第4段階と、前記導電粒子が付着した前記第1接着層上に低流動性樹脂で形成された第2接着層を塗布する第5段階と、前記第2接着層上に充填用第3接着層を塗布する第6段階と、を含んで達成される。
【0008】
前記第1段階で、前記バリア粒子が付着した領域を露光部とし、前記バリア粒子が付着しない領域を非露光部として、前記粘着性フィルムの表面を露光させることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記バリア粒子の粒径は、前記導電粒子の粒径の10%以上~50%以下であることが好ましい。
【0010】
また、前記第2接着層は、前記異方性導電接着フィルムの回路接続温度範囲内での最低溶融点度が500,000cps以上1,200,000cps以下であることが好ましい。
【0011】
また、第1段階で前記粘着性フィルムは、前記バリア粒子の表面張力より低い表面張力を有することが好ましい。
【0012】
他の態様において、本発明は、上述した製造方法によって製造された異方性導電接着フィルムを提供する。
【0013】
また、本発明は、硬化剤を含む第1および第3接着層と、前記第1および第3接着層の間に介在され、内部に導電粒子が含浸され、回路接続温度範囲内での最低溶融粘度が500,000cps以上1,200,000cps以下の低流動性樹脂で形成された第2接着層と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による異方性導電接着フィルムの製造方法を利用すると、導電粒子が個別的に分離した状態を維持しつつ、高密度のレベルまで配列でき、導電粒子が局部領域に凝集するのを効果的に防止でき、また、導電粒子が一定の間隔で規則的に配置されていると共に、高い捕捉率で固定された導電粒子を含む異方性導電接着フィルムを製造できる。したがって、本発明による製造方法によって製造された異方性導電接着フィルムを利用すると、超微細ピッチを有する電子回路およびウェラブルデバイスに採用されるフレキシブル回路基板(FPCB)などに適用する場合にも、電極間の接続抵抗を大きく低減できると共に、導電粒子間の凝集が発生しないので、回路部材の電気的接続信頼性および隣り合う回路電極間の絶縁性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る異方性導電接着フィルムの製造方法を各工程別に概要的に示す工程流れ図である。
【
図2】本発明による製造方法によって製造された異方性導電接着フィルムの断面を概要的に示す断面図である。
【
図3】第1接着層に転写した導電粒子の配列状態を撮影したイメージであり、導電粒子の粒径に対するバリア粒子の相対的粒径によって導電粒子の保持率の変化を確認できる図である。
【
図4】第2接着層に使用される低流動性樹脂による最低溶融粘度の変化を示すグラフである。
【
図5】低流動性樹脂の最低溶融粘度による導電粒子の捕捉率の変化を示すグラフおよび圧痕イメージを共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による異方性導電接着フィルムの製造方法は、互いに対向する回路部材の間に介在され、厚さ方向には互いに対向する回路電極間を電気的に接続すると同時に、面方向には隣り合う回路電極間を電気的に絶縁させる異方性導電接着フィルムの製造方法であって、前記導電粒子の粒径より小さい粒径を有するバリア粒子が表面に付着した粘着性フィルムを含むモールドを用意する第1段階と、前記バリア粒子が付着していない前記粘着性フィルムの表面に前記導電粒子を塗布する第2段階と、第1接着層が形成されたフィルムを用意し、前記第1接着層の露出した表面を前記導電粒子が付着した前記モールドの表面に付着する第3段階と、前記フィルムを前記モールドから剥離して、前記導電粒子のみを選択的に分離する第4段階と、前記導電粒子が付着した前記第1接着層上に低流動性樹脂で形成された第2接着層を塗布する第5段階と、前記第2接着層上に充填用第3接着層を塗布する第6段階と、を含んで達成される。
【0017】
前記第1段階で、前記バリア粒子が付着した領域を露光部とし、前記バリア粒子が付着していない領域を非露光部として、前記粘着性フィルムの表面を露光させることを特徴とする。
【0018】
ここで、前記バリア粒子の粒径は、前記導電粒子の粒径の10%以上~50%以下であることが好ましい。
【0019】
また、前記第2接着層は、前記異方性導電接着フィルムの回路接続温度範囲内での最低溶融粘度が500,000cps以上1,200,000cps以下であることが好ましい。
【0020】
また、第1段階で前記粘着性フィルムは、前記バリア粒子の表面張力より低い表面張力を有することが好ましい。
【0021】
他の態様において、本発明は、上述した製造方法によって製造された異方性導電接着フィルムを提供する。
【0022】
また、本発明は、硬化剤を含む第1および第3接着層と、前記第1および第3接着層の間に介在され、内部に導電粒子が含浸され、回路接続温度範囲内での最低溶融粘度が500,000cps以上1,200,000cps以下の低流動性樹脂で形成された第2接着層と、を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、これを詳細な説明を通じて詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。なお、本発明を説明するに際して、関連した公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にすることができると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0024】
本発明による異方性導電接着フィルムは、互いに対向する回路部材の間に介在され、厚さ方向には互いに対向する回路電極間を電気的に接続すると同時に、面方向には隣り合う回路電極間を電気的に絶縁させる異方性導電接着フィルムをいう。ここで、異方性導電接着フィルムは、熱または光源により硬化可能な電気絶縁性接着層と、該接着層内に分散した電気伝導性導電粒子と、を含んで構成できる。
【0025】
本発明の発明者らは、導電粒子があらかじめ設計された2次元平面上に付着するようにするモールドを活用して硬化性レジンが塗布されたフィルム上に導電粒子の2次元配列を転写する工程を開発することによって、異方性導電接着フィルムの製品特性を最大化できるようにした。また、接着層を構成するレジンの物性を制御して、隣り合う電極間には導電粒子の凝集による電気的導通が発生せず、かつ、対向する電極間に十分な個数の導電粒子が配置されるようにして、電気的導通信頼性を確保できるようにした。
【0026】
以下では、
図1および
図2を参照して、本発明による異方性導電接着フィルムおよびその製造方法について詳しく説明する。
【0027】
[モールドの製造]
導電粒子のパターン化のためにモールドを用意する。ここで、モールド(mold)は、粘着性フィルムで形成され、例えば、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane;PDMS)、ポリエチレン(Polyethylene;PE)、ポリビニルクロリド(Polyvinylchloride;PVC)などの高分子物質を利用できる。モールドは、表面形状の変形が容易なフィルムなどが使用できる。モールドを構成する粘着性フィルムは、以下で説明する異方性導電接着フィルムを構成する接着層が有する接着力より低い値の付着力を有する。また、粘着性フィルムは、別の支持体を設けることなく、常温で固体状態(すなわち、基板またはフィルム形状)の形状を維持できる。
【0028】
上述した粘着性フィルム上に導電粒子が付着する領域を除いた残りの領域にバリア(Barrier)粒子(M)が付着する。ここで、バリア粒子は、シリコン酸化物、ジルコニウム酸化物などの無機粒子が使用できる。また、バリア粒子は、導電粒子より小さい粒径を有する球状粒子であることが好ましい。特にバリア粒子は、導電粒子の粒径の10%以上および50%以下の粒径を有することが好ましい。
図3に示されたように、バリア粒子の粒径が導電粒子の粒径の10%未満である場合、粘着性フィルムに使用されたPDMS樹脂がバリア粒子の上に露出して、所望しない位置に導電粒子が挟み込まれる現象が発生(全体面積の約30%程度で導電粒子の挟み込みおよび凝集現象が発生)する。また、バリア粒子の粒径が導電粒子の粒径の50%を超過する場合、導電粒子が付着する領域(すなわち、バリア粒子が配置されていない領域)が均一に形成されないので、後続する導電粒子の配置工程で導電粒子が粘着性フィルムに保持される保持率が急激に低下(全体面積の約20%程度で導電粒子が保持されない)する
【0029】
なお、バリア粒子は、粘着性フィルム上にあらかじめ設計された領域に選択的に付着するが、この際、バリア粒子が有する硬度によって粘着性フィルムの表面が所定の深さで押圧された状態で配置される。すなわち、バリア粒子は、粘着性フィルムが提供する付着力により単純付着した状態ではなく、バリア粒子が接着性フィルムの表面に配置された後、一定の圧力で押圧される。この際、粘着性フィルムの表面張力は、バリア粒子の表面張力より低い表面張力を有し、したがって、粘着性フィルムが有する低い表面張力によってバリア粒子を広く転着しようとする特性を有する。粘着性フィルムが有する柔軟な表面材質と低い表面張力によって、バリア粒子は、粘着性フィルム上に定められた領域で密着配置されうる。
【0030】
なお、バリア粒子が粘着性フィルムに配置された状態でモールドの上面を露光させてバリア粒子が粘着性フィルムに付着する付着力を増加させる。すなわち、バリア粒子が配置されていない領域(すなわち、導電粒子が付着する領域)を非露光部とし、バリア粒子が配置された領域を露光部とするマスクを用いて、モールドの上面に光を照射する。この際、光が照射された露光部の付着力は、光が照射されない非露光部の付着力より大きくなる。したがって、露光部に位置するバリア粒子は、非露光部に位置する露出領域に配置される導電粒子と比べてさらに強い結合力で粘着性フィルムに付着した状態を維持できる。一例として、PDMSの場合、紫外線に露出時、化学構造のうちメチル部分の損傷が発生し、これを通じて、反応性官能基が粘着性フィルムを構成する高分子に形成される。このような官能基は、メチル基と比べて水素結合などのバリア粒子と付着力を有することができる脱水縮合などを通した化学的共有結合を形成する。
【0031】
[導電粒子の配置]
上記で用意したバリア粒子が配置されたモールド上に導電粒子を塗布する。塗布された導電粒子は、バリア粒子が配置されていない領域にそれぞれ位置する。この際、導電粒子は、露光などを通じて付着力が増加したバリア粒子と比べて弱い付着力で粘着性フィルムに付着する。
【0032】
[導電粒子の転写]
まず、異方性導電接着フィルムの第1接着層Rが形成されたフィルムを導電粒子が配置されたモールド上に付着する。この際、第1接着層の接着力は、バリア粒子が配置された領域(露光部)の付着力より小さく、導電粒子が配置された領域(非露光部)の付着力より大きい付着力を有することが好ましい。このような物性の第1接着層を導電粒子が配置されたモールド上に付着した後、さらに剥離すると、第1接着層上に導電粒子のみを選択的に付着した状態で分離される。また、バリア粒子の粒径は、導電粒子の粒径より小さいので、第1接着層をモールド上に付着するとき、第1接着層がバリア粒子に接触する面積と比べて、第1接着層が導電粒子に接触する面積がさらに大きくなる。したがって、第1接着層が有する接着力の限界と、バリア粒子および導電粒子の粒径の差異によって、モールドに配置された導電粒子のみが選択的に第1接着層に付着して分離できる。
【0033】
[低流動層の形成]
上記で用意した第1接着層上には、導電粒子が一定の位置に2次元的に配列された状態となる。この際、導電粒子の一部は、第1接着層上に含浸された状態であってもよいが、導電粒子の大部分は露出した状態である。導電粒子が露出した第1接着層上に低流動特性を有する樹脂を用いて第2接着層を形成する。ここで、低流動層は、導電粒子が含まれた異方性導電接着フィルムを実際製品に適用するとき、導電粒子の捕捉率を向上させる。すなわち、周辺環境の高い熱により接着層の流動性が高まって、導電粒子の位置が定められた位置から移動して、凝集が発生したり、あるいは、導電粒子が対向する電極間の位置から離脱するのを防止できる。このために、第2接着層に使用する低流動性樹脂は、異方性導電接着フィルムを用いて回路部材を接続するための回路接続温度範囲(一般的に、常温~150℃の温度範囲)内での最低溶融粘度が、少なくとも500,000cps以上1,200,000cps以下であることが好ましい。
【0034】
[上部接着層の形成]
上記で用意した第1および第2接着層を含むフィルム上に第3接着層を形成する。ここで、第3接着層は、第1接着層と共に異方性導電接着フィルムを用いて回路部材を接続するとき、回路部材に設けられた隣り合う電極間の空間を十分に充填させる役割をする。
【0035】
このように用意した異方性導電接着フィルムは、第1接着層、第2接着層および第3接着層の3層構造を有する。ここで、第1接着層および第3接着層は、上記で説明した物性を有する樹脂を用いるものの、各樹脂組成物は、ラジカルにより重合可能な官能基を有する重合性物質および熱または光によりフリーラジカルを発生する硬化剤を含む。また、第2接着層は、低流動層として硬化剤を含まないことが好ましい。ただし、異方性導電接着フィルムを実際製品に適用するとき、対向する回路部材の間に接着フィルムを介在した後に圧着し、この際、第1および第3接着層は、各回路部材間の電極間空隙を緻密に埋めながら硬化し、また、第2接着層は、圧着時に第1または第3接着層内に存在する硬化剤に接触することで、一部分硬化が発生する。
【0036】
なお、第2接着層は、第1および第3接着層の間に介在され、その内部に導電粒子が含浸されていて、特に回路接続温度範囲(略常温~150℃)内での最低溶融粘度が500,000cps以上1,200,000cps以下の低流動性樹脂で形成されることが好ましい。
【0037】
第2接着層に使用される低流動性樹脂は、回路接続温度範囲で溶融粘度(Melt Viscosity)が温度によって変わり(
図4参照)、この際、最低溶融粘度は、回路接続温度範囲内で溶融粘度が最低であるときの粘度をいう。最低溶融粘度は、使用する樹脂の種類、成分、製造方式などによって変わり、本発明の発明者らは、低流動性樹脂の最低溶融粘度によって最終的に製造された異方性導電接着フィルムを用いて回路部材を接続するとき、互いに対向する電極間に導電粒子が捕捉される捕捉率(Capture ratio)が変わることを知見した。
【0038】
低溶融粘度が異なる低流動性樹脂を用いて異方性導電接着フィルムを製造した。実施例1~3に使用された第1~第3接着層は、全部フェノキシ(Phenoxy)系エポキシ樹脂(Epoxy resin)および脂環式エポキシ樹脂(Cycloaliphatic epoxy resin)を用い、ここで、第2接着層は、樹脂のフィルム形成時に工程条件(温度および時間)の変更を通じて最低溶融粘度を調節した。
【0039】
【0040】
図4および
図5を参照すると、第2接着層に使用された低流動性樹脂の回路接続温度範囲内での最低溶融粘度が500,000cps未満の場合、異方性導電接着フィルムに要求される導電粒子の捕捉率を満たさない。すなわち、比較例1(最低溶融粘度100,000cps)の場合、捕捉率が30%以下であり、
図5の圧痕イメージ(A)から確認できるように、使用された低流動性樹脂の低い粘度によって導電粒子が第2接着層内に捕捉された位置で消失される量が多いことが分かる。反対に、他の例として使用された低流動性樹脂の最低溶融粘度が1,200,000cpsを超過する場合、
図5の圧痕イメージ(E)から分かるように、圧痕レベルがほぼ「0」に近い水準になり、これを通じて、導電粒子が回路接続時にほとんど変形されないか、対向する電極間にコンタクトがなされないことが分かる。しかしながら、実施例1~3のように、低流動性樹脂の最低溶融粘度が500,000cps以上および1,200,000cps以下の範囲内である場合、
図5の圧痕イメージ[(B):実施例1の圧痕イメージ/(C):実施例2の圧痕イメージ/(D):実施例3の圧痕イメージ)]を通じて確認できるように、捕捉率85%以上および良好な圧痕物性を示す。
【0041】
上述した異方性導電接着フィルムの製造方法によれば、バリア粒子が配置されたモールドを通じてそれぞれの導電粒子が個別的に定められた位置に配置された状態で第1接着層に転写されるので、微細粒径の導電粒子を2次元平面上に規則的に配置することが容易である。また、バリア粒子が配置されたモールドを構成する粘着性フィルムは、導電粒子が可逆的に付着できる程度の付着力だけを提供し、また、数回繰り返し使用可能である。
【0042】
このような方法によれば、導電粒子が個別的に分離した状態を維持しつつ、高密度のレベルまで配列されうる。また、導電粒子が局部領域に凝集するのを効果的に防止できる。しかも、導電粒子が一定の間隔で規則的に配置されていると共に、高い捕捉率で固定された導電粒子を含む異方性導電接着フィルムを製造できる。したがって、本発明による製造方法によって製造された異方性導電接着フィルムを利用すると、電子装置の電気素子的特性の信頼度を向上させることができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲内で変形された形態に具現することができる。したがって、ここで説明した本発明の実施形態は、限定的な観点でなく、説明的な観点で考慮されなければならず、本発明の範囲は、上述した説明でなく、請求範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるすべての差異点は、本発明に含まれるものと解すべきである。