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特許7336813レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または進行抑制用の薬学組成物
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  • 特許-レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または進行抑制用の薬学組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または進行抑制用の薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230825BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230825BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230825BHJP
   A61K 31/198 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K47/34
A61P25/14
A61K31/198
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022505286
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 KR2020010023
(87)【国際公開番号】W WO2021020885
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/879,574
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2020-0094783
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505404220
【氏名又は名称】ペプトロン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ホ イル
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/075901(WO,A1)
【文献】BADAWI, G.A. et al.,Neurotox Res,2019年01月23日,Vol. 35,pp. 635-653
【文献】ABUIRMEILEH, A. et al.,J Pharm Pharmacol,2012年,Vol. 64,pp. 637-643
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61K 38/00
A61K 47/00
A61K 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GLP-1受容体アゴニスト(Glucagon-like peptide-1 receptor agonist)の放出制御型製剤を含み、
前記GLP-1受容体アゴニストは、エキセンジン-4またはエキセナチドであり、
前記放出制御型製剤は、前記GLP-1受容体アゴニストおよび生分解性高分子を含み、
前記生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチドとグリコリドの共重合体であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン及びポリアルキルカーボネートからなる群より選択される高分子、前記高分子のうちの2種以上の共重合体又は混合物、前記高分子とポリエチレングリコールとの共重合体、及び前記高分子又は共重合体と糖が結合した高分子-糖複合体からなる群より選択される、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または予防用薬学組成物。
【請求項2】
前記放出制御型製剤は、前記GLP-1受容体アゴニストおよび生分解性高分子を含むコアと、前記コアのコーティング層とを含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記治療は、前記レボドパ誘発性ジスキネジアの症状が改善されること、または前記症状が悪化しないことである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記予防は、レボドパの投与にもかかわらず前記レボドパ誘発性ジスキネジアが発症しないようにすること、または遅延発症するようにすることである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
異常不随意運動(abnormal involuntary movements, AIMs)を改善する効果がある、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
レボドパとの併用投与が可能である、請求項1に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または進行抑制用の薬学組成物、および前記薬学組成物でレボドパ誘発性ジスキネジアを治療または進行抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(Parkinson's disease、PD)は、大脳基底核の線条体-黒質のドーパミン神経系(dopaminergic neuron)の退行による神経疾患であり、動作緩慢、筋強剛、振戦、姿勢反射障害などの行動障害の症状を伴う疾患である(Fahn,2003)。パーキンソン病の薬物療法としては、一次的にドーパミンアゴニストまたはドーパミンの前駆体であるL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)療法が主に行われている(Olanow et al.,2001)。しかし、パーキンソン病動物モデルにおけるL-DOPAの長期投与は、活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の形成および下流遺伝子/タンパク質(downstream gene/protein)の発現の変化によって神経毒性を引き起こす。また、パーキンソン病患者におけるL-DOPAの長期投与は、薬効の低下だけでなく、ジスキネジア(dyskinesia)、運動症状の変動(motor fluctuation)および他の合併症を引き起こす(Jankovic,2005)。
【0003】
ジスキネジア(dyskinesia)は、運動筋肉での逆流性波動による混乱を招いて異常な動きを示す副作用であり、L-DOPA治療を開始して4~5年目の患者の40%、9~15年目の患者の90%に症状が表れることが報告されている(Nutt,1990;Quinn,1995)。このジスキネジアは、脳中のL-DOPAの濃度が最も高いときに反応して現れることから、ピークドーズジスキネジア(peak-dose dyskinesia)と呼ばれている(Olanow et al.,2004)。
【0004】
レボドパ誘発性ジスキネジア(Levodopa-Induced Dyskinesia、LID)の機序は正確には知られていないが、ドーパミンの減少による線条体のドーパミンD1及びD2受容体感受性の増加が一つの原因として挙げられている。このドーパミンD1及びD2受容体感受性の増加は、ドーパミン濃度の急激な変化を引き起こす。パーキンソン病動物モデルでは、ドーパミンD1及びD2アゴニスト(agonist)を長期投与すると、ジスキネジアが発現している(Berke et al.,1998)。
【0005】
また、レボドパ誘発性ジスキネジアは、ドーパミン神経が破壊された線条体における遺伝子およびタンパク質の発現と関連がある。特に、多くの研究では、線条体のΔFosBタンパク質の発現と細胞外シグナル制御リン酸化酵素(extracellular signal-regulated kinase 1/2,ERK 1/2)のリン酸化が大きく関連していることが報告されている(Andersson et al.,2001;Pavσn N. et al.,2006)。
【0006】
6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)を用いたパーキンソン病動物モデルにL-DOPAを長期投与すると、ΔFosBタンパク質の発現とともにジスキネジアが現れるという研究が報告されている(Andersson et al.,1999)。最近では、ERK1/2のリン酸化がジスキネジアによるΔFosBタンパク質の発現の増加と関連があるという研究が報告されている(Pavσn N.et al.,2006)。また、6-OHDA誘導パーキンソン病動物モデルにおける生理食塩水(saline)の投与はERK1/2リン酸化に影響を与えないので、L-DOPA投与によるERK1/2リン酸化はジスキネジアの深刻化程度を示すAIMs(Abnormal involuntary movements,AIMs)の発現と関連があることが報告されている(Westin et al.,2007)。
【0007】
一方、GLP-1受容体は、げっ歯類の脳(Jin et al.,1988;Shughrue et al.,1996;Jia et al.,2015)及び人間の脳(Wei,Mojsov 1995;Satoh et al.,2000)のいずれにも存在する。分布の化学構造は、視床下部(hypothalamus)、視床(thalamus)、脳幹(brainstem)、側頭葉(lateral septum)、脳弓下器官(subfornical organ)および一般にほとんどのペプチド受容体が位置している全ての脳室周囲器官(circumventricular areas)である最後野(area postrema)に主に限定されていることが示されている。
【0008】
さらに、より低い密度ではあるが、GLP-1に対する特異的結合部位は、尾状(caudate)、被殻(putamen)、大脳皮質(cerebral cortex)および小脳(cerebellum)全般にわたって検出された(Campos et al.,1994;Calvo et al.,1995;Goke et al.,1995)。先行文献では、GLP-1受容体がフェレット(Mustela putorius furo)の扁桃体(amygdala)、小脳、前頭皮質(frontal cortex)、海馬、視床下部、中脳、髓質(medulla)、脳橋(pons)、線条体、視床(thalamus)および側頭皮質(temporal cortex)で発現されることを証明した(Lu et al.,2014)。脳でのGLP-1受容体の発現レベルは老化の影響を受けない。
【0009】
さらに、GLP-1は認知および行動と関連があることが知られている(During et al.,2003)。多くの研究では、GLP-1受容体アゴニストを、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、外傷性脳損傷、脳卒中および末梢神経症を含む変性脳疾患の新しい治療薬として提案している。しかし、前記変性脳疾患の治療における実質的な障害は、血液脳関門(blood-cerebral barrier,BBB)を横切って中枢神経系へ薬物を送達することである。
【0010】
例えば、GLP-1は1~2分の短い半減期を有し、GLP-1の不活性化に耐性を与えてGLP-1の半減期を約2日まで増加させるように生成されたGLP-1-トランスフェリン融合タンパク質(GLP-1-Tf)はBBBを超えることができない(Kim et al.,2010;Martin et al.,2012)。
【0011】
エキセンジン-4は、GLP-1-Tfと比較してロタロッド性能を改善することが示されており(Martin et al.,2012)、進入速度は制限的であるが血中から脳内に入ることが知られている(Kastin AJ et al.,2003)。また、エキセンジン-4は、治療後7日間毎日提供された場合でも、パーキンソン病のMPTPマウスモデルにおいて神経保護を提供するのに効果的ではないことが示されている(Liu et al.,2015)。
【0012】
そこで、パーキンソン病の治療において、長期間のL-DOPA療法が誘発する異常不随意運動を治療、進行抑制または改善するためにはより多くの研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または予防用薬学組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または予防方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、GLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤を含むレボドパ誘発性ジスキネジアの治療または予防用の薬学組成物を提供するものである。
【0016】
本発明のGLP-1受容体アゴニスト(Glucagon-like peptide-1 receptor agonist)は、GLP-1類似体(analogue)を含み、より具体的には、エキセンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、リキシセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、エフペグレナチド、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の放出制御型製剤は、GLP-1受容体アゴニスト及び生分解性高分子を含むコアと、前記コアのコーティング層とを含んで構成することができる。
【0018】
本発明の生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチドとグリコリドの共重合体であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン及びポリアルキルカーボネートからなる群より選択される高分子であるか、または前記高分子のうちの2種以上の共重合体又は混合物、前記高分子とポリエチレングリコールとの共重合体、及び前記高分子又は共重合体と糖が結合した高分子-糖複合体からなる群より選択されるものであってもよい。
【0019】
本発明で「治療」とは、レボドパ誘発性ジスキネジアの症状が改善されること、または症状がそれ以上悪化しないことを含む概念である。
【0020】
本発明で「予防」とは、レボドパの投与にもかかわらずレボドパ誘発性ジスキネジアが発症しないようにすること、または遅延発症するようにすることを含む概念である。
【0021】
本発明の薬学組成物は、異常不随意運動(abnormal involuntary movements,AIMs)を改善する効果がある。また、本発明の薬学組成物は、レボドパと併用投与したとき、レボドパの長期服用による副作用を軽減する効果がある。
【0022】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジア患者に治療的に有効な量のGLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤を投与するステップを含む、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療方法を提供する。
【0023】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジアが発症していないパーキンソン病患者に予防的に有効な量のGLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤を投与するステップを含む、レボドパ誘発性ジスキネジアの予防方法を提供する。
【0024】
本発明の治療または予防方法において、レボドパ誘発性ジスキネジア患者およびレボドパ誘発性ジスキネジアが発症していないパーキンソン病患者は、いずれもレボドパを投与されている患者であってもよい。
【0025】
本発明の治療または予防方法において、GLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤は、レボドパと同時にまたはレボドパの投与後に投与することができる。
【0026】
本発明の治療方法において、有効成分の治療的に有効な量は0.01μg/kg/day~100μg/kg/dayであってもよい。
【0027】
本発明の予防方法において、有効成分の予防的に有効な量は0.01μg/kg/day~100μg/kg/dayであってもよい。
【0028】
本発明の治療または予防方法において、GLP-1受容体アゴニストは、GLP-1類似体を含み、より具体的には、エキセンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、リキシセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、エフペグレナチド、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明の治療または予防方法において、放出制御型製剤は、前記GLP-1受容体アゴニストおよび生分解性高分子を含むコアと、前記コアのコーティング層とを含んで構成することができる。
【0030】
本発明の治療または予防方法において、生分解性高分子は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ラクチドとグリコリドの共重合体であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン及びポリアルキルカーボネートからなる群より選択される高分子、前記高分子のうちの2種以上の共重合体又は混合物、前記高分子とポリエチレングリコールとの共重合体、及び前記高分子又は共重合体と糖が結合した高分子-糖複合体からなる群より選択されるものであってもよい。
【0031】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療薬の製造における、GLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤の用途を提供するものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、レボドパ誘発性ジスキネジアの治療または予防用の薬学組成物に関するものである。本発明のGLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤は、レボドパと併用投与したとき、レボドパの長期服用による深刻な副作用を軽減する効果があり、レボドパによる異常不随意運動を減少させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一例によるGLP-1受容体アゴニストの放出制御型製剤(PT320)の薬物処理スケジュールを経時的に示す図である。
図2図2は、6-OHDAで病変が誘発されたラットにおいて、本発明の一例によるGLP-1受容体アゴニストの放出制御型製剤(PT320)処理によるAIMs減少効果を確認したグラフである。
図3図3は、線条体内において、本発明の一例によるGLP-1受容体アゴニストの放出制御型製剤(PT320)処理によって正常化されたドーパミン(DA)の交換率(turnover)を確認したグラフである。
図4図4は、LIDが誘発されたラットにおいて、本発明の一例によるGLP-1受容体アゴニストの放出制御型製剤(PT320)処理によって時間依存的にAIMsが減少する効果を確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、GLP-1受容体アゴニストまたはその放出制御型製剤を含むレボドパ誘発性ジスキネジアの治療または予防用の薬学組成物を提供するものである。
【0035】
前記GLP-1受容体アゴニスト(Glucagon-like peptide-1 receptor agonist)は、GLP-1類似体(analogue)を含み、より具体的には、エキセンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、リキシセナチド、デュラグルチド、アルビグルチド、エフペグレナチド、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記「放出制御型製剤」とは、GLP-1受容体アゴニストの初期放出量を効果的に制御することで薬物の持続的かつ十分な放出を可能とする、生体利用率に優れた製剤を意味する。
【0037】
前記レボドパ誘発性ジスキネジアは、レボドパによって誘発される異常不随意運動であり、四肢や体間で発生する舞蹈性無定位運動(choreoathetosis)の形態やジストニア(dystonia)の様相を示す。前記のような症状は、レボドパを長期使用した患者にしばしば発生し、重症の場合には日常生活に深刻な障害をもたらす副作用である。
【0038】
前記の用語「治療」とは、レボドパ誘発性ジスキネジアの症状が改善されること、またはそれ以上悪化しないことを含むあらゆる行為を言う。
【0039】
前記の用語「予防」とは、レボドパの投与にもかかわらずレボドパ誘発性ジスキネジアが発症しないようにすること、または遅延発症するようにすることを含むあらゆる行為を言う。
【0040】
前記の用語「投与」とは、適当な方法で個体に所定の物質を導入することを意味する。「個体」とは、レボドパの投与によってレボドパ誘発性ジスキネジアが発症しているか、または発症する可能性があるヒトを含む、マウス、ラット、家畜等のあらゆる動物を意味する。具体例としては、ヒトを含む哺乳動物であってもよい。
【0041】
本発明の薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟膏剤、粉末又は飲料の形態であってもよく、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型製剤、外用剤、坐剤及び注射剤の形態に製剤化して使用できる。
【0042】
本発明の薬学組成物の製剤は、薬学的に許容可能な担体と混合して様々に製造することができる。例えば、経口投与時には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハーなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは複数回投薬の形態に製造することができる。さらに、本発明の薬学組成物の製剤は、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに製造することができる。
【0043】
本発明の薬学組成物は、有効成分を単独に含むか、または1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。
【0044】
薬学的に許容可能な担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。
【0045】
製剤化のための担体、賦形剤および希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート、鉱物油、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、または防腐剤などであってもよい。
【0046】
本発明の薬学組成物の投与経路は、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸であってもよく、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の薬学組成物は経口または非経口で投与することができ、非経口経路で投与することが好ましい。非経口投与時には、皮膚外用または腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、または胸部内注射の注入方式を選択することができる。
【0048】
本発明の薬学組成物の投与量は、患者の年齢、状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能である。例えば、本発明の薬学組成物は、1日0.0001mg~1,000mg/kgまたは0.001mg~500mg/kgを投与し、有効成分量を基準に0.01~100μg/kg/day、好ましくは0.1~10μg/kg/dayとなるように投与することができる。
【0049】
本発明の薬学組成物は、1日1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
本発明で「放出制御型製剤」とは、GLP-1受容体アゴニストおよび生分解性高分子を含むコアと、前記コアのコーティング層とを含むものである薬学組成物を意味する。
【0051】
前記「生分解性高分子」は体内への投与時に徐々に分解されて排出され、人体に無害な高分子を総称するものであり、ポリラクチド(Polylactide、PLA)、ポリグリコリド(Polyglycolide、PGA)、ラクチドとグリコリドの共重合体であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(Polylactide-co-glycolide,PLGA)、ポリオルトエステル(Polyorthoester)、ポリアンヒドリド(Polyanhydride)、ポリヒドロキシ酪酸(Polyhydroxybutyric acid)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)、及びポリアルキルカーボネート(Polyalkylcarbonate)からなる群より選択される1種以上の高分子、および前記高分子とポリエチレングリコール(Polyethylenglycol,PEG)との共重合体を含み、前記1種以上の高分子は共重合体または単純混合物の形態であってもよい。
【0052】
前記生分解性高分子の中でも、特にPLA、PGA、PLGA等のポリエステル系のものは体内で加水分解され、人体に無害な乳酸とグリコール酸で代謝され、生体適合性および安定性が認められた物質である。また、生体分解速度も高分子の分子量、両単量体の割合、水親和性などによって、短くは1~2週から長くは1~2年まで多様に調整することができ、既に米国FDAをはじめ数十カ国で許可されて商用化されている高分子物質であり、本発明に好ましく用いることができる。本発明では、特にPLGAとPLAなどのポリエステル系の高分子をより好ましく用いることができる。
【0053】
他の態様において、前記生分解性高分子は、ポリラクチド(Polylactide,PLA)、ポリグリコリド(Polyglycolide,PGA)、ラクチドとグリコリドの共重合体であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(Polylactide-co-glycolide、PLGA)、ポリオルトエステル(Polyorthoester)、ポリアンヒドリド(Polyanhydride)、ポリヒドロキシ酪酸(Polyhydroxybutyric acid)、ポリカプロラクトン(Polycaprolactone)およびポリアルキルカーボネート(Polyalkylcarbonate)からなる群より選択される1種の高分子又は2種以上の共重合体、及び前記高分子とポリエチレングリコール(Polyethylenglycol,PEG)との共重合体からなる群より選択される1種以上の高分子と糖との複合体(以下、「高分子-糖複合体」)であってもよい。
【0054】
本発明で高分子-糖複合体は、前記のような高分子が糖のヒドロキシ基の位置に置換されている形態を意味する。前記糖は、1個以上、好ましくは1~8個のサッカライド単位を含み、各サッカライド単位は3~6個のヒドロキシ基を有するものである、モノサッカライドまたはポリサッカライドであるか、または直鎖構造を有し、3~6個のヒドロキシ基を含む分子量20,000以下の糖アルコール類であってもよい。前記糖アルコール類は、マンニトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、リビトール及びキシリトールなどを含むことができる。高分子は、前記糖中に存在するヒドロキシ基のうちの3個以上に結合する。
【0055】
また、前記生分解性高分子は粘度の制限なしに使用できるが、粘度が低すぎると、薬物を効果的に保護できず薬物の初期放出量が多くなり、粘度が高すぎると、薬物の全体的な放出量が低くて生体利用率が低くなる。そのため、固有粘度は0.1~0.5dL/gであることが好ましい。
【0056】
前記コーティング物質は、初期薬物の過剰な放出を防ぎ、生体利用率を高める目的で使用され、本発明による放出制御型製剤では外部に形成されたコーティング層の形態で存在する。
【0057】
前記コーティング物質は、塩基性アミノ酸、ポリペプチドおよび有機窒素化合物からなる群より選択される1種以上のものであってもよい。前記塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン及びそれらの誘導体を含む。前記ポリペプチドは、アルギニン、リジン及びヒスチジンからなる群より選択される1種以上を含むアミノ酸2~10個、好ましくは2~5個のポリペプチドであってもよい。前記ポリペプチドは、全アミノ酸の数のうち、酸性アミノ酸の数に比べて塩基性アミノ酸の数が多くて塩基性を示すものであってもよい。
【0058】
本発明の放出制御型製剤は様々な方法により製造することができ、微粒球の製造過程中または製造後にコーティング物質水溶液に懸濁させて微粒球の表面をコーティング物質でコーティングすることによって本発明の徐放性微粒球を製造することができる。本発明による微粒球の製造方法では、二重乳化蒸発法(W/O/W法)、単一乳化蒸発法(O/W法)、相分離法、噴霧乾燥法などを用いることができる。
【0059】
より詳細には、本発明のエキセナチド含有徐放性微粒球の製造方法は、エキセナチドと生分解性高分子を混合してW/O型のエマルジョンまたは均質混合物を生成するステップと、前記エマルジョンまたは均質混合物をコーティング物質水溶液に適用してエマルジョン化し、コーティング層を形成するステップとを含むことができる。
【0060】
より具体的には、二重乳化蒸発法を用いる場合、本発明の製造方法は、エキセナチド水溶液と生分解性高分子が溶解された有機溶媒を混合し、エマルジョン化して一次エマルジョン(W/O)を形成するステップと、前記エマルジョンをコーティング物質水溶液に懸濁し、W/O/W型のエマルジョンを形成し、それを加温して有機溶媒を除去して硬化するステップと、前記硬化した微粒球を回収して水洗し、凍結乾燥するステップとを含むことができる。前記有機溶媒としては、前記生分解性高分子を溶解し、水溶液と混合してエマルジョンを形成できる全ての有機溶媒を使用することができ、例えば、酢酸、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド及びメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0061】
この場合、コーティング物質は二次水相(W/O/W型のエマルジョンの外部水相)に含まれ、有機溶媒が除去されて乾燥されると、エキセナチドと生分解性高分子の外部にコーティング層を形成することになる。また、単一乳化蒸発法を用いる場合、本発明の製造方法は、生分解性高分子とエキセナチドを有機溶媒に溶解して均一混合物を調製するステップと、前記均一混合物にコーティング物質水溶液を添加してエマルジョンを調製し、加温し、有機溶媒を除去して硬化するステップと、前記硬化した微粒球を回収して水洗し、凍結乾燥するステップとを含むことができる。
【0062】
前記有機溶媒は生分解性高分子とエキセナチドを均一に混合することができ、水溶液と混合してエマルジョンを形成できる全ての有機溶媒を使用することができる。例えば、炭素数1~5のアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の溶媒とクロロホルム、エチルアセテート、メチルエチルケトン、およびメチレンクロライドからなる群より選択される1種以上の溶媒との混合溶媒、さらに好ましくは、メタノールとメチレンクロライドの混合溶媒を使用することが好ましい。この場合には、前記生分解性高分子とエキセナチドの均一混合物をエマルジョン化し、有機溶媒を除去するための水溶液にコーティング物質を添加することにより、最終的に得られる微粒球の表面にコーティング層が形成されることになる。
【0063】
また、単一乳化蒸発法を用いる場合、本発明の製造方法は、生分解性高分子とエキセナチドを有機溶媒に溶解して均一混合物を調製するステップと、前記均一混合物にコーティング物質水溶液を添加してエマルジョンを調製し、加温し、有機溶媒を除去して硬化するステップと、前記硬化した微粒球を回収して水洗し、凍結乾燥するステップとを含むことができる。
【0064】
前記有機溶媒としては、生分解性高分子とエキセナチドを均一に混合させることができ、水溶液と混合してエマルジョンを形成できる全ての有機溶媒を使用することができる。例えば、炭素数1~5のアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の溶媒とクロロホルム、エチルアセテート、メチルエチルケトン、およびメチレンクロライドからなる群より選択される1種以上の溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。この場合には、前記生分解性高分子とエキセナチドの均一混合物をエマルジョン化し、有機溶媒を除去するための水溶液にコーティング物質を添加することにより、最終的に得られる微粒球の表面にコーティング層が形成されることになる。他の態様では、本発明のエキセナチド含有徐放性微粒球の製造方法は、エキセナチドと生分解性高分子を混合してエマルジョンまたは均質混合物を生成するステップと、前記で得られたエマルジョンまたは均質混合物を粉末化して一次微粒球を製造するステップと、前記で得られた一次微粒球をコーティング物質水溶液に懸濁し、コーティング層を形成するステップとを含む。前記粉末化の方法は制限されず、関連する技術分野で通常使用される全ての粉末化方法を使用することができ、例えば、相分離法または噴霧乾燥法を使用できる。
【0065】
より具体的には、前記粉末化に相分離法を用いる場合、本発明の製造方法は、エキセナチド水溶液と高分子が溶解された有機溶媒を混合してエマルジョンを調製するステップ、またはエキセナチドと高分子を混合溶媒と混合して均一混合液を調製するステップと、ここにシリコーンオイルなどのオイルを加えて一次微粒球を製造するステップと、前記一次微粒球を生分解性高分子の非溶媒、例えば炭素数1~5のアルコールと炭素数1~12のアルカンの混合溶媒、好ましくはエタノールとヘプタンの混合溶媒を加えて前記微粒球から有機溶媒を除去して硬化するステップと、得られた微粒球をコーティング物質水溶液に懸濁してコーティング層を形成するステップと、前記コーティング層が形成された微粒球を回収して洗浄、凍結乾燥するステップとを含むことができる。
【0066】
前記有機溶媒は、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド、およびメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくはメチレンクロライドであってもよい。また、前記混合溶媒は、炭素数1~5のアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、及びn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の溶媒とクロロホルム、エチルアセテート、メチルエチルケトン、およびメチレンクロライドからなる群より選択される1種以上との混合溶媒であってもよく、好ましくはメタノールとメチレンクロライドの混合溶媒であってもよい。
【0067】
また、噴霧乾燥法を用いる場合、本発明の製造方法は、エキセナチド水溶液と高分子が溶解された有機溶媒を混合してエマルジョンを調製するステップ、またはエキセナチドと高分子を単一溶媒又は混合溶媒と混合して均一な溶液を調製するステップと、前記溶液又はエマルジョンを噴霧乾燥して一次微粒球を製造するステップと、前記で得られた一次微粒球をコーティング物質水溶液に懸濁してコーティング層を形成するステップと、得られたコーティング微粒球を水洗および凍結乾燥するステップとを含むことができる。
【0068】
前記有機溶媒は、クロロホルム、エチルアセテート、メチレンクロライド、およびメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上であってもよく、好ましくはメチレンクロライドであってもよい。また、前記単一溶媒は、氷酢酸またはギ酸からなる群より選択される1種以上であってもよい。前記混合溶媒は、炭素数1~5のアルコール、氷酢酸、ギ酸、ジメチルスルホキシド、およびn-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の溶媒とクロロホルム、エチルアセテート、メチルエチルケトン、及びメチレンクロライドからなる群より選択される1種以上との混合溶媒であってもよい。
【0069】
本発明の製造方法は、通常の方法で保護コロイド物質を添加するステップをさらに含むことができる。具体例として、前記保護コロイド物質は、微粒球にコーティング物質をコーティングする際に添加することができる。本発明による製造方法で用いられる前記水相に溶解されたコーティング物質またはコーティング物質水溶液は、0.01M~1Mの濃度で使用し、より好ましくは0.1M~0.5Mの濃度で使用することができる。コーティング物質水溶液の濃度が前記範囲よりも低いと、微粒球の表面にコーティング物質を十分にコーティングすることができず、前記範囲よりも高いと、コーティング物質の過飽和溶液となり、飽和状態溶液での初期放出抑制効果と比較してさらに改善されるものではないので、本発明の微粒球の製造に使用されるコーティング物質の濃度は前記範囲とすることが好ましい。
【0070】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明することとする。
【0071】
実施例1.SR-エキセナチド(PT320)の製造
本発明のエキセナチド含有放出制御型製剤(PT320)は、二重乳化法(W/O/W法)、単一乳化法(O/W法)、相分離法、噴霧乾燥法(韓国特許第10-0805208号及び国際公開特許PCT/US2017/057606を参照)などによって製造可能である。本実施例では、噴霧乾燥法によってエキセナチド含有放出制御型製剤(PT320)を製造した。
【0072】
生分解性高分子であるRG502Hの4.850gとエキセナチドアセテート(Polypeptide Laboratory、USA)の0.150gを氷酢酸97mlに均一に溶解した。製造した溶液を、ピストンポンプを用いて、超音波ノズル(Sono-tek,120kHz)付き噴霧乾燥機(SODEVA,France)に1.5ml/分の流速で供給しながら180℃の乾燥空気を供給して微粒球を得た。それをそれぞれ保護コロイドとして1%(W/V)ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol,Gohsenol,EG-50)を含有する0.5Mリジン水溶液に懸濁して3時間攪拌した後、回収し、蒸留水で洗浄し、凍結乾燥して製剤を得た。
【0073】
前記工程により得られた粉末状のPT320の125mgに1.25mlの希釈剤(0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム、5.0%のD-マンニトール及び0.1%のTween 80(pH6.66)を含む。)を添加し、PT320希釈液(diluent)を得た。それを使用して実験動物モデルに投与した。
【0074】
実施例2.レボドパ誘発性ジスキネジアの進行抑制効果の確認
本実施例では、SR-エキセナチド(PT320)がレボドパ誘発性ジスキネジアを進行抑制する効果を有するか確認した。
【0075】
実施例2-1.SR-エキセナチド(PT320)およびL-DOPAの投与経路および投与量
PT320およびL-DOPA薬物処理スケジュールを図1に示す。図1に示すように、まず6-OHDAを10分間0.25μl/分で右内側前脳束(medial forebrain bundle)に注射して病変を誘導し、それから22日間L-DOPAまたはL-DOPA+PT320を処理した。
【0076】
L-DOPAは、ベンセラジド(15mg/kg)と共に食塩水に溶解して腹腔内注射(i.p.)で6mg/kg/dayを投与した。PT320(100mg/kg、containing 2mg/kg Exenatide)は、L-DOPA投与1時間前に週1回(計3回)皮下注射(s.c.)した。これにより、薬物処理によるレボドパ誘発性ジスキネジアの進行抑制効果を確認した。
【0077】
実施例2-2.異常不随意運動(Abnormal involuntary movement、AIMs)の評価
clear Perspex boxes(22cm×34cm×20cm)に全ての実験動物を位置させ、各々のラットに対して、L-DOPA投与3時間後(Off-medication状態)から30分間隔で1分間、下記表1の4つの類型を観察した。各類型を下記表1の基準に従い1~4のスコアで評価し(1=30秒未満存在する;2=30秒以上存在する;3=1分間ずっと存在するが、外部刺激によって抑制される;4=1分間ずっと存在するが、外部刺激によって抑制されない)、図2に示す。ここで、ALOスコアは項目2~4の合計を意味し、ALO累積スコアが10よりも低い動物は評価対象から除外した。
【0078】
【表1】
【0079】
AIMsの評価対象となる4つの類型
【0080】
図2に示すように、6-OHDAで病変が誘導されたラットにPT320を処理した場合は、L-DOPAを単独処理した場合に比べて4つの行動の評価スコアがいずれも低かった。このことから、本発明の一例によるGLP-1受容体アゴニストの放出制御型製剤(PT320)は、AIMsを減少させる組成物であることが確認できた。
【0081】
実施例2-3.ドーパミン変化量の測定
線条体内において、本発明の一例によるGLP-1受容体アゴニストの放出制御型製剤(PT320)処理により変化したドーパミン(DA)、ドーパミン代謝体(DA metabolites)、ドーパミン交換率(turnover)をHPLCで測定した。
【0082】
前記実施例2-2において行動評価が終ったラットの脳を用いて、病変部位および病変のない部位の組織を0.1N過塩素酸(HClO4)で均質化した。次いで、4℃で13,000rpmで30分間遠心分離して上清液(50μl)を取った後、過塩素酸(1:4、v/v)に希釈してHPLCに注入した。DA及びDA代謝体の組織濃度は、HPLCに連結されたcoulometric detection systemにより分析した。HPLC移動相は、脱イオン水にメタノール(7%)、モノナトリウムホスファート(NaH2PO4、70mM)、トリエチルアミン(100μl/l)、EDTA(0.1mM)、ナトリウムオクチルスルフェート(100mg/l)を含んでオルトリン酸でpH4.2となるように調整して使用した。前記移動相を用いて、1.2ml/分の流速でHPLCカラム(Hypersyl、C18、15cm×4.6mm、particle size 5μm)により分析した。
【0083】
図3に示すように、6-OHDAで病変が誘導されたラットにPT320を処理した場合、線条体内のDA交換率は6-OHDA病変によって向上したが、PT320はDA交換率が正常化されたことを確認することができた。
【0084】
実施例3.レボドパ誘発性ジスキネジアの治療効果の確認
本実施例では、SR-エキセナチド(PT320)のレボドパ誘発性ジスキネジアの治療効果を確認するために、異常不随意運動(Abnormal involuntary movements,AIMs)を評価した。
【0085】
実施例3-1.動物モデルの構築
AIMsの評価のために、実験動物モデルを以下のように構築した。すべての実験動物は、IACUCの承認およびKFDAのガイドラインに従って取り扱った。
【0086】
まず、6-7週齢のSDラット(オス、Koatech、韓国、Total N=30(n=10 per group))を温度22±1℃、湿度30-50%で一般的な明暗周期(7:00-20:00)の条件下で順応させた。その後、SDラットにパーキンソン病を誘導するために、麻酔後にHamiltonシリンジを用いて、10分間0.25μl/分で内側前脳束(medial forebrain bundle)に6-ヒドロキシドーパミン(2.5μl at a concentration of 3μg/μl dissolved in 0.1% ascorbic acid in sterile water)を単独注入した。
【0087】
手術後(1週目または2週目)、病変誘導されたラットに対して、アポモルヒネ塩酸塩(0.5mg/kg、i.p.)誘導性回転検査(apomorphine hodrochlororide-induced rotation test)を行った。次の実験のために、非病変部側に全身回転率が1分当たり7回(7 full body turns/min)以上を示す全ての動物に対してスクリーニングを行った。選択した動物を用いて、1日1回10mg/kg L-DOPA(i.p.)および15mg/kgベンセラジド(i.p.)を処理した対照群、および対照群と同じ条件でPT320実験群を構築した。特に前記実験群の場合には、PT320を先に投与して1時間後にL-DOPAおよびベンセラジドを投与した。
【0088】
【表2】
【0089】
グループ別の投与容量および条件
【0090】
実施例3-2.異常不随意運動(Abnormal involuntary movement、AIMs)の評価
AIMsは、PT320処理後に週1回ずつ、実験が終了する6週目まで評価した。評価方法は、実施例2-2と同様の方法で行った。この評価方法による最終的なAIMsの算出結果は図4に示す。
【0091】
図4に示すように、本実験から、SR-エキセナチド(PT320)は、レボドパ誘発性ジスキネジアが誘導された実験動物モデルにおいて時間依存的に治療効果を示すことを確認することができた。
図1
図2
図3A
図3B
図4