(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 14/073 20060101AFI20230825BHJP
C07D 265/16 20060101ALI20230825BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230825BHJP
C08L 61/34 20060101ALI20230825BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08G14/073
C07D265/16
C08K5/00
C08L61/34
C08L101/02
(21)【出願番号】P 2017522482
(86)(22)【出願日】2015-10-22
(86)【国際出願番号】 US2015056802
(87)【国際公開番号】W WO2016069358
(87)【国際公開日】2016-05-06
【審査請求日】2018-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2014-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, ラム ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コーエン, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, マナ
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤井 勲
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-072319(JP,A)
【文献】特開2011-057961(JP,A)
【文献】特開昭60-155234(JP,A)
【文献】米国特許第4501864(US,A)
【文献】特表2007-512423(JP,A)
【文献】特開2011-184552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/04 - 59/62
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C07D261/00 - 273/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数のベンゾオキサジン化合物を製造するための方法において、
(i)少なくとも1個の第1級アミノ基を含む芳香族アミンを、アルキルホルムセル
と反応させてアルコキシメチル中間体を生成させ、ついで(ii)アルコキシメチル中間体を-OH基に対してオルト位に少なくとも1個の水素を含む少なくとも一つのフェノール化合物と反応させ
て、ベンゾオキサジン化合物を含む反応生成物を形成することを含み、
アルキルホルムセルがROCH
2OHを含み、RがC1~C12の直鎖、分枝鎖、非環式又は環式の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基から選択される、方法。
【請求項2】
芳香族アミンが、式I、II及びIII:
{上式中、a=1又は2;b=0~50であり;
式IIIにおいて、XとYは、直接結合、O、S、SO
2、P=O、(Ph)P=O、OP(=O)O、C=O、置換又は未置換アルキレン、置換又は未置換アルキリデン、オキソアルキレン、置換又は未置換の脂環式又は芳香族基から独立して選択される連結基であり、Phはフェニルであり;ZはH又はNH
2であり;R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一か又は異なり、水素、ハロゲン、C1~C20炭素原子の置換又は未置換アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ、カルボキシル、シアノ、アリール、アラルキル又はアリールオキシ基から独立して選択され、場合によっては、R
5とR
6は一緒になって、及び/又はR
7とR
8が一緒になって、環中にO、N又はS原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和縮合炭素環の一部であり;
式IIにおいて、a=1の場合、Xは式IIIに対して定義した通りであり、a=2の場合、Xは次のもの:
の一つである}によって表される構造から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フェノールが、次の式IV、V及びVI:
{上式中、a=1又は2;b=0~50であり;
式VIにおいて、XとYは、直接結合、O、S、SO
2、P=O、(Ph)P=O、OP(=O)O、C=O、置換又は未置換アルキレン、置換又は未置換アルキリデン、オキソアルキレン、置換又は未置換の脂環式又は芳香族基から独立して選択される連結基であり、Phはフェニルであり;Z’はH又はOHであり;R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一か及び/又は異なり、水素、ハロゲン、C1~C20炭素原子の置換又は未置換アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ、カルボキシル、シアノ、アリール、アラルキル又はアリールオキシ基から独立して選択され、場合によっては、R
5とR
6及び/又はR
7とR
8は一緒になって、環中にO、N又はS原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和の縮合炭素環の一部であり;但し、各フェノール性OHは、芳香環に少なくとも1個のオルト水素を有し;
式Vにおいて、a=1の場合、Xは式VIに対して定義した通りであり、a=2の場合、Xは次のもの:
の一つである}によって表される構造から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルコキシメチル中間体が式VII:
(上式中、x=0~10及びy=1~10であり;好ましくはx=0~5及びy=1~5であり;より好ましくはx=0~2及びy=1~3であり;R’=H又はR;R=C1~C12直鎖、分枝鎖、非環式又は環式の飽和又は不飽和基;Arは、式I、II又はIIIのアミンの芳香族残基部分である)によって表される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応の反応が、芳香族アミン、アルキルホルムセル、及びフェノール化合物を混合し、ついで得られた混合物を加熱することによって実施される、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
アルキルホルムセルがメチルホルムセルである、請求項1から
5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
フェノール化合物が
(上式中、n=1~50)
から選択される、請求項1から
6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
アミン化合物が
から選択される、請求項1から
7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
芳香族アミン、アルキルホルムセル、及びフェノールの相対量が、芳香族アミンの各モルに対して、約1.5~約20モル、又は約2~約20モル、又は約2~約10モルのアルキルホルムセルと、約0.8~約1.25モルの一価フェノール又は約0.4~約0.625モルの二価フェノール(又はビスフェノール)が存在するような量である、請求項1から
8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
フェノールとのアルコキシメチル中間体化合物の反応がバッチ法又は連続法で実施される、請求項
1、
4、
6から
9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応がアルコール、ジアルキルケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ジアルキルエーテル、環状エーテル及びそれらの組み合わせから選択される溶媒の存在下で実施される、請求項1から
10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応がメタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、n-ヘプタン、n-オクタン、トルエン又はキシレンから選択される溶媒の存在下で実施される、請求項1から
11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
芳香族アミンをアルキルホルムセルと、アルコキシメチル中間体化合物又はアルコキシメチル中間体化合物の混合物を形成するように芳香族アミンを消費するのに十分な時間、反応させることを含み、アルコキシメチル中間体が式VII:
(上式中、x=0~10及びy=1~10であり;好ましくはx=0~5及びy=1~5であり;より好ましくはx=0~2及びy=1~3であり;R’=H又はR;R=C1~C12直鎖、分枝鎖、非環式又は環式の飽和又は不飽和基;Arは、式I、II又はIIIのアミンの芳香族残基部分である)によって表される
、一又は複数のベンゾオキサジン化合物を製造するための合成方法。
【請求項14】
芳香族アミンが、式I、II及びIII:
{上式中、a=1又は2;b=0~50であり;
式IIIにおいて、XとYは、直接結合、O、S、SO
2、P=O、(Ph)P=O、OP(=O)O、C=O、置換又は未置換アルキレン、置換又は未置換アルキリデン、オキソアルキレン、置換又は未置換の脂環式又は芳香族基から独立して選択される連結基であり、Phはフェニルであり;ZはH又はNH
2であり;R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一か又は異なり、水素、ハロゲン、C1~C20炭素原子の置換又は未置換アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ、カルボキシル、シアノ、アリール、アラルキル又はアリールオキシ基から独立して選択され、場合によっては、R
5とR
6は一緒になって、及び/又はR
7とR
8が一緒になって、環中にO、N又はS原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和の縮合炭素環の一部であり;
式IIにおいて、a=1の場合、Xは式IIIに対して定義した通りであり、a=2の場合、Xは次のもの:
の一つである}によって表される構造から選択され、
アルコキシメチル中間体化合物が、次の式:
(上式中、x=0~10及びy=1~10であり;好ましくはx=0~5及びy=1~5であり;より好ましくはx=0~2及びy=1~3であり;R’=H又はRであり;R=C1~C12直鎖、分枝鎖、非環式又は環式の飽和又は不飽和基;Arは、式I、II又はIIIのアミンの芳香残基部分である)によって表される、請求項
13に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
ベンゾオキサジンは重要なクラスの熱硬化性樹脂である。このクラスの化合物は、航空宇宙産業及び自動車産業を含む幾つかの利用分野において、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂及び他の熱硬化性樹脂の代替品として、主にこれら樹脂によってもたらされる多くの利点のため、大きな関心を集めている。これらの利点には、比較的長い保存可能期間、分子設計の柔軟性、低コスト、高いガラス転移温度(Tg)、高いモジュラス、比較的低い粘度、良好な難燃性、低い吸湿性、硬化中に放出される副生成物がないこと、及び硬化時の非常に低い収縮性が含まれる。更に、ベンゾオキサジンは、加熱すると自己硬化することができる。すなわち、追加の硬化剤を必要としない。加えて、芳香族アミンベースのベンゾオキサジンは、ポリベンゾオキサジンの分子量を構築するため及び/又は架橋部位を提供するための付加的な部位を芳香族アミン上に提供する。
【0002】
ベンゾオキサジンを合成するための従来のアプローチでは限定された成功しかもたらされておらず、商業的規模でベンゾオキサジンを製造するための効率的な方法が商業的に尚も必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】本開示の一実施態様に従ってベンゾオキサジンの合成を実施するためのマイクロリアクターシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
(詳細な説明)
ベンゾオキサジンは、アミンを過剰のパラホルムアルデヒド及びフェノールと反応させることによって合成することができる。一つのアプローチは、アミン、パラホルムアルデヒド及びフェノールを一緒に混合し、溶媒の非存在下で加熱してベンゾオキサジンを生成させる、米国特許第5543516号に開示されているような無溶媒法である。
【0005】
ベンゾオキサジンの広く受け入れられている生成機構は、以下のスキーム1に示すように2工程で起こる。
【0006】
第1工程において、アミンがパラホルムアルデヒドと反応してヘキサヒドロトリアジン構造(トリアザ中間体とも呼ばれる)を形成する。そして第2工程において、この中間体はフェノール及びパラホルムアルデヒドと反応してベンゾオキサジン構造を生成する。この機構は、トリアザ中間体を実際に分離し、ついで、分離されたトリアザ中間体をメタ-クレゾールと更に反応させて、スキーム1に示されるベンゾオキサジンを形成することによって確立されうる(例えば、Macromol. Chem. Phys. 200, 1745 (1999);Angelo G. Giumanini,及びGiancarlo Verardo, Journal fur. prakt. Chemie, Vol 327, p739 (1985);R. Andreu, J. A. Reina及び J. C. Honda, Journal of Polymer Science, Part A; Polymer Chemistry, Vol. 46, p3353 (2008);R. Andreu, M. A. Espinosa, M. Galia, V. Cadiz, J. C. Ronda及びJ. A. Reina, Journal of Polymer Science, Part A; Polymer Chemistry, Vol. 44, p1529 (2006);R. Andreu, J. A. Reina及びJ. C. Ronda Journal of Polymer Science, Part A; Polymer chemistry, p6091 (2008)を参照)。
【0007】
熱硬化用途に使用されるベンゾオキサジンの大部分は、単官能性芳香族アミンと二官能性フェノール(又はビスフェノール)に基づいている。多様な利用可能なビスフェノールは、特殊用途のためにポリベンゾオキサジンを仕立てる分子設計において大きな機会を提供する。しかし、膨大な数の芳香族ジアミン及びモノフェノールが市販されているという事実にもかかわらず、二官能性芳香族アミン(又は芳香族ジアミン)及び単官能性フェノールから誘導されたモノマーはごく少数しか報告されていない。その理由は、文献に報告されているように、芳香族ジアミンとホルムアルデヒドの縮合から形成される安定なトリアザ網目構造の形成が、ベンゾオキサジン生成のために続くフェノールとの反応を抑制するためである。このようなトリアザ網目構造はしばしば不溶性ゲルである。加えて、Tarek Agag, Lin Jin, Hatsuo Ishida, Polymer, 50 (2009), p5940-5944に開示されているように、他の縮合副反応が起こりうる。多種多様な市販の芳香族ジアミンを用いた芳香族ジアミンベースのベンゾオキサジン合成が成功すれば、ベンゾオキサジンの分子設計の柔軟性が増し、よってその利用性が拡大する可能性があることが指摘されている。
【0008】
IshidaとLiuはまた「トリアザ環中間体は、芳香族ジアミンのような比較的不溶性のジアミンが使用されると、無限の分子量に近い沈殿物を形成するので、特に問題となりうる。従って、この沈殿した固形物の分解が律速工程になる。この相分離した固形物の取り扱いは更なる困難をもたらす」と述べた(Hatsuo Ishida及びJin-Ping Liu, Chapter 2, p86 “Handbook of Benzoxazine Resins” Hatsuo Ishida及びTarek Agag編, 2011, Elsevier publication)。
【0009】
よって、芳香族ジアミンが基質として使用されると、Jeannette等, Science vol. 344, p732 (2014)において報告されているように、高分子ヘキサヒドロトリアジン構造の生成に至ることは驚きではなく、そこでは、以下のスキーム2に示されるように、リサイクル可能な熱硬化性ヘキサヒドロトリアジンポリマーが4,4’-オキシジアニリンとパラホルムアルデヒドの縮合から調製される。
【0010】
芳香族ジアミンを用いてベンゾオキサジンを生成させる課題を解決する最近の報告がある。一つのアプローチでは、Ching Hsuan Lin, Sheng Lung Chang, Chau Wei Hsieh, Hao Hsin Lee, Polymer, 49, 1220 (2008)による論文において報告されているように、芳香族ジアミンからのビス-ベンゾオキサジン構造は、以下のスキーム3に示されているように3工程で製造される:先ず、DMF溶媒中でオルト-ヒドロキシベンズアルデヒドを芳香族ジアミンと反応させてジイミン構造を生成させ、これを分離し、ついでNaBH4及びエタノールで還元する。最終工程で、得られたジアミンジヒドロキシ化合物をクロロホルム中のホルムアルデヒドと反応させて、最終的なビス-ベンゾオキサジン構造を生成させる。
【0011】
このプロセスは3工程を含み、フェノール環の置換を伴う異なるベンゾオキサジンを合成するためには様々な置換オルト-ヒドロキシベンズアルデヒドを必要とするが、置換オルト-ヒドロキシベンズアルデヒド化合物は商業的規模では容易には入手できないため、範囲は限定されている。
【0012】
最近になって、上記プロセスは、Sheng Lung Chang及びChing Hsuan Lin , Journal of Polymer Science, Part A; Polymer chemistry, p2430 (2010)に報告されているように改良されており、オルト-ヒドロキシベンズアルデヒドが、DMAC溶媒及び還元用のPd/C-水素中、還元条件下でジアミンと反応させられる(以下のスキーム4)。得られたジアミンは分離されないでホルムアルデヒドと反応させられて、芳香族ジアミンからビスベンゾオキサジンが生成される。これは、ワンポット法として以前のプロセスよりも改善されているが、フェノール環に置換を伴う異なるベンゾオキサジンを合成するために必要とされる置換オルト-ヒドロキシベンズアルデヒド化合物が商業的規模では容易には入手できないため、範囲がまた限られている。
【0013】
更に別のアプローチでは、芳香族ジアミン、フェノール及びパラホルムアルデヒドの反応が、ジャーナルPolymer, 50, 5940 (2009)に報告されているように、高温でキシレンのような非極性溶媒中で実施される。しかしながら、このプロセスは依然として不溶性ポリ(トリアザ)構造をもたらし、ベンゾオキサジンの合成における中間体としての不溶性トリアザ網目構造の形成の問題は完全には対処されていない。
【0014】
上記アプローチは限られた成功しか達成しておらず、よって、入手可能なベンゾオキサジン樹脂の数を増加させ、その熱硬化性用途を拡大することができる芳香族ジアミン及びフェノールをベースとするベンゾオキサジンを製造するための効率的な合成方法が依然として商業的に必要である。本開示は、ベンゾオキサジン合成に関連する課題に対する解決手段を提供する。
【0015】
上で検討した先行技術に鑑みると、芳香族ジアミンからのベンゾオキサジンの調製に関連した課題の根本原因は、不溶性中間体ヘキサヒドロトリアジン(トリアザ)誘導体の生成であることが判明した。而して、驚くべきことに、中間体ヘキサヒドロトリアジン(トリアザ)誘導体の生成がほぼ排除できることが発見された。本開示は、ヘキサヒドロトリアジン(トリアザ)誘導体の介在なしにベンゾオキサジンを製造するための新規方法に関する。芳香族アミンと、当該分野で伝統的に実施されていたようなパラホルムアルデヒド又はホルマリンの代わりにアルキルホルムセルとの反応が、ヘキサヒドロトリアジン(トリアザ)中間体よりも低い分子量及び高い溶解度を有する、フェノールと効果的に更に反応して最終反応生成物としてベンゾオキサジン化合物を首尾よく生成させうるN-メトキシメチル及びその類似中間体の生成をもたらすことが発見された。この新しい方法では、ヘキサヒドロトリアジン(トリアザ)誘導体の生成は観察されない。従って、この方法は、製造コストにおいて経済的効果をもたらし、更に、全ての芳香族モノアミン、芳香族ジアミン又は芳香族ポリアミンに適用することができ、よって商業的規模で多種多様なベンゾオキサジンへのアクセスを開く。
【0016】
本開示によるベンゾオキサジンの合成は、少なくとも1個の第1級アミノ基を含む芳香族アミンとアルキルホルムセル及び少なくとも一つのフェノール化合物との反応を含む。該反応から誘導されたベンゾオキサジン反応生成物は、少なくとも一つのベンゾオキサジン単位(ベンゼン環にペンダントしたオキサジン環を含む)を含む化合物である。合成することができるベンゾオキサジン化合物には、単官能性及び多官能性ベンゾオキサジンモノマー及びオリゴマーが含まれる。
【0017】
本開示の一実施態様によれば、ベンゾオキサジン化合物は、最初に芳香族アミンをアルキルホルムセルと反応させてアルコキシメチル中間体化合物を生成させることによって生成される。続いて、中間体化合物を、OH基に対してオルト位置に少なくとも1個の水素を含むフェノールと反応させてベンゾオキサジン化合物を生成させる。
【0018】
別の実施態様では、ベンゾオキサジン化合物は、芳香族アミン、アルキルホルムセル、及びフェノールを混合し、反応を行わせるために得られた混合物を加熱することによって同時に反応させることによって生成される。
【0019】
(芳香族アミン)
幾つかの実施態様では、芳香族アミンは、式I、II及びIIIによって表される次の一般構造:
{上式中、a=1又は2;b=0~50であり;
式IIIにおいて、XとYは、直接結合、O、S、SO
2、P=O、(Ph)P=O、OP(=O)O、C=O、置換又は未置換アルキレン、置換又は未置換アルキリデン、オキソアルキレン、置換又は未置換の脂環式又は芳香族基から独立して選択される連結基であり、Phはフェニルであり;ZはH又はNH
2であり;R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一か又は異なり、水素、ハロゲン、C1~C20炭素原子の置換又は未置換アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ、カルボキシル、シアノ、アリール、アラルキル又はアリールオキシ基から選択され、場合によっては、R
5とR
6は一緒になって、及び/又はR
7とR
8は一緒になって、環中にO、N又はS原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和の縮合炭素環の一部であり;
式IIにおいて、a=1の場合、Xは式IIIに対して定義した通りであり、a=2の場合、Xは次のもの:
の一つである}を含む。
【0020】
適切な芳香族アミンには、モノアミンな並びにリアミンが含まれる。芳香族モノアミンの例には、
が含まれる。
【0021】
【0022】
【0023】
(フェノール)
幾つかの実施態様では、フェノールは、次の式IV、V及びVIによって表される構造:
{上式中、a=1又は2;b=0~50であり;
式VIにおいて、XとYは、直接結合、O、S、SO
2、P=O、(Ph)P=O、OP(=O)O、C=O、置換又は未置換アルキレン、置換又は未置換アルキリデン、オキソアルキレン、置換又は未置換の脂環式又は芳香族基から独立して選択される連結基であり、Phはフェニルであり;Z’はH又はOHであり;R
5、R
6、R
7及びR
8は、同一か及び/又は異なり、水素、ハロゲン、C1~C20炭素原子の置換又は未置換アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ、カルボキシル、シアノ、アリール、アラルキル又はアリールオキシ基から独立して選択され、場合によっては、R
5とR
6及び/又はR
7とR
8は一緒になって、環中にO、N又はS原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和縮合炭素環の一部であり;但し、各フェノール性OHは、芳香環に少なくとも1個のオルト水素を有し;
式Vにおいて、a=1の場合、Xは式VIに対して定義した通りであり、a=2の場合、Xは次のもの:
の一つである}を含む。
【0024】
よって、適切なフェノールには、モノフェノール及びポリフェノール化合物が含まれる。モノフェノール化合物の幾つかの特定の例には、
が含まれる。
【0025】
適切なビスフェノール化合物の例には、
が含まれる。
【0026】
適切なトリスフェノール化合物の例には、
が含まれる。
【0027】
また適切なものは次の式によって表されるポリフェノール化合物である:
(ここで、上記ポリフェノール化合物に対してn=1~50)。
【0028】
(アルキルホルムセル)
アルキルホルムセルは、ここでは、アルコキシメタノールROCH2OHを含む化合物群として定義される。アルキルホルムセルのR基は、C1~C12の直鎖、分枝鎖、非環式又は環状の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基から選択され;好ましくはR=C1~C4アルキル基であり、最も好ましくはR=メチルである。商業的に入手可能なアルキルホルムセルの特定の例には、メチルホルムセル(メトキシメタノール、CAS登録番号4461-52-3)及びブチルホルムセル(ブトキシメタノール、CAS登録番号3085-35-6)(Celanese)が含まれる。
【0029】
(アルコキシメチル中間体)
芳香族アミンとアルキルホルムセルの反応生成物であるアルコキシメチル中間体化合物は、次の式VII:
(上式中、x=0~10及びy=1~10であり;好ましくはx=0~5及びy=1~5であり;より好ましくは、x=0~2及びy=1~3であり;R’はH又はRであり;RはC1~C12の直鎖、分枝鎖、非環式又は環式の飽和又は不飽和基から選択され;Arは、式I、II又はIIIのアミンの芳香族残基部分である)によって表される。
【0030】
(化学量論)
上で検討されたベンゾオキサジンを生成させる反応において、反応物質の化学量論は次の通りでありうる:芳香族アミン(NH2)1モルにつき、約1.5~約20モル、又は約2~約20モル、又は約2~約10モルのアルキルホルムセル;及び約0.8~約1.25モルの一価フェノール又は約0.4~約0.625モルの二価フェノール(ビスフェノール)。
【0031】
(プロセス条件)
一実施態様では、フェノールと芳香族アミンが最初に室温(20℃~26℃)で混合される。ついで、発熱反応が十分に制御され、好ましくは、温度が加熱なしで50℃~60℃の範囲に制御されるように、アルキルホルムセルが混合物に徐々に加えられる。次に、得られた反応混合物が還流温度で還流させられるが、還流温度は溶媒に応じて変化し得、反応混合物は、蒸発した溶媒を回収しながら反応を完了させるために所定の時間、不活性雰囲気下、例えば窒素下に置かれる。適切な溶媒には、アルコール、ジラキルケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ジアルキルエーテル、環状エーテル、又はそれらの組み合わせが含まれる。例示的溶媒には、メタノール、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、n-ヘプタン、n-オクタン、トルエン、及びキシレンが含まれる。還流後、反応生成物をワークアップ手順に付し、これは、反応生成物を有機溶媒に溶解すること;得られた混合物を有機溶媒と水を含む水溶液で希釈すること;水性及び有機層を分離させること;有機溶媒と水を含む水溶液で洗浄することを含む。ワークアッププロセスのための有機溶媒は、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、及び酢酸エチルを含みうる。
【0032】
別の実施態様では、上記プロセスは、還流中に蒸発した溶媒を回収(すなわち除去)することなく実施される。
【0033】
更に別の実施態様では、アルキルホルムセルと芳香族アミンが先ず室温で混合されて、プレリアクト生成物(pre-reacted product)を生成し(すなわち、芳香族アミンの消失が観察されるまで)、上で検討された式VIIのアルコキシメチル中間体を生じさせる。該プレリアクト生成物を分析したところ、一般式VIIの成分の混合物を一般に含んでいた。ついで、フェノールが式VIIの化合物を含むプレリアクト生成物と混合される。得られた反応混合物は還流温度で還流され、その間、混合物は反応を完了させる所定の時間、不活性雰囲気、例えば窒素下に置かれる。ついで、反応生成物は、上述のようなワークアッププロセスを経て、ベンゾオキサジンモノマーが得られる。ある場合には、反応生成物は、少量の他の副生成物又は不純物を含んでいてもよい。
【0034】
更に別の実施態様では、芳香族アミンとアルキルホルムセルから生成されたN-アルコキシメチル中間体は、それが生成された後に分離される。分離されたN-アルコキシメチル中間体は、その後、ベンゾオキサジンの合成における反応物質として、又は全く異なる合成において、後で使用されうる。例えば、N-アルコキシメチル中間体は、熱硬化性樹脂又はコーティング用途のための架橋剤として使用することができる。
【0035】
(マイクロリアクタープロセス)
ここに開示された反応は、マイクロリアクター技術を使用して実施することができる。図面FIGUREは、一般的に連続フローモードで作動する例示的マイクロリアクターシステムを示す。高圧高容量シリンジポンプであるポンプAは、溶液A(例えば、予め調製されたアルキルホルムセル中間体)で充填され、第2の類似のシリンジポンプであるポンプBは、溶液B(例えば、フェノール)で充填される。これらのポンプは三元スタティックミキサーに連結され、その出口はステンレス鋼製反応コイル(例えば1/16”OD×0.04”ID×10メートル配管)に接続され、ついで背圧調整器及び短い出口ラインに接続される。全ての接続配管は、反応コイルに使用されているものと同じ材料製である。反応コイルの出口から出口ラインの終端までの配管は、加熱テープでヒートトレースされ、(例えばグラスウールで)断熱され、温度制御装置を使用して所望の温度に保たれる。反応コイルは、反応させるのに適した温度範囲に維持された加熱媒体(例えば、油浴)中に浸漬される。
【0036】
典型的な反応条件では、反応物質の所望のモル比及び反応コイル中の滞留時間を与えるように、ポンプA及びBに対して流量が調節される。典型的には、システムが滞留時間の2倍で平衡化された後にサンプルが採取され、ついで、サンプルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)、及び核磁気共鳴(NMR)によって分析される。
【0037】
(ベンゾオキサジンの利用性)
ここに開示されるベンゾオキサジン化合物は、開環重合を介して容易に重合する。そのような重合は、通常、(カチオン開始剤を使用して)カチオン的に又は熱的に開始される。
【0038】
更に、本開示のベンゾオキサジン化合物は、他のベンゾオキサジンモノマー又はオリゴマー又は他の熱硬化性樹脂と混合されて、所望の特性を有するポリマーブレンドを形成しうる。ベンゾオキサジン化合物とのブレンドに使用されうる他の熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、ビスマレイミド(BMI)、ホルムアルデヒド縮合樹脂、例えばホルムアルデヒド-フェノール樹脂、シアネートエステル、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
上で検討されたベンゾオキサジンブレンドは、樹脂フィルム(例えば接着フィルム、表面フィルム)又は繊維強化複合材料(例えばプリプレグ)の製造に適した硬化性組成物を形成するために触媒及び強化剤のような追加の成分と組み合わせられうる。
【0040】
ベンゾオキサジンモノマー/オリゴマーと他の熱硬化性樹脂のブレンドは、プリプレグ成形及び樹脂注入のような標準的な複合体製造技術を使用する複合体製造に適した特性を有する硬化性樹脂組成物を形成するように配合することができる。
【実施例】
【0041】
以下の全ての実施例において、「当量」は、使用される芳香族アミンのモルに基づくモル比を指す。
HPLCは高速液体クロマトグラフィーである。
LCMSは、液体クロマトグラフィー質量分析法である。
GCMSはガスクロマトグラフ質量分析法である。
HPSECは高性能サイズ排除クロマトグラフィーである。
NMRは核磁気共鳴分光法である。
DSCは示差走査熱量測定である。
TLCは薄層クロマトグラフィーである。
【0042】
実施例1
パラホルムアルデヒドを使用する単官能性ベンゾオキサジンの合成(従来法)
単官能性ベンゾオキサジン(構造1及び2)を、以下に示される従来の反応に基づいて合成した。
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに、1当量のm-トルイジン、1.05当量のm-クロロフェノール、及び3.5当量のパラホルムアルデヒドを加えた。この段階で発熱が観察された。反応混合物を撹拌し、温度を徐々に上げた。およそ65℃で、急激な発熱(別の発熱)が観察され、反応温度が65℃から95℃に上昇した。5時間後、出発物質に起因するピークはHPLCでもはや観察されなかった。加熱を更に1時間続けたが、HPLCでの変化は観察されなかった。加熱を中止し、混合物を、希釈剤/溶媒としてのトルエンと共に反応混合物を分離漏斗に移し、50mLの5%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄することを含む標準的なワークアップ手順に供した。しかしながら、破砕不能なエマルションが形成され、反応混合物を廃棄する結果となった。このように、従来の手順では急激な発熱が生じ、エマルションの問題により生成物の分離が困難であった。
【0043】
実施例2
パラホルムアルデヒドと分離手順を使用する単官能性ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに、50g(1当量)のm-トルイジン、66g(1.05当量)のm-クロロフェノール及び55g(3.5当量)のパラホルムアルデヒドを加えた。この段階で発熱が観察された。混合物を撹拌し、温度を徐々に上げた。およそ65℃で、急激な発熱が観察され、反応温度が65℃から95℃に上昇した。5時間後、出発物質に起因するピークはHPLCでもはや観察されなかった。加熱を更に1時間続けたが、HPLCでの変化は観察されなかった。加熱を中止し、混合物を、最初に100mLのジクロロメタンに溶解し、分液漏斗に移し、ついで50mLのメタノール及び15mLの水で希釈することによってワークアッププロセスに供した。内容物を混合し、層を分離させた。下層をメタノール/水(50mL/15mL)溶液で2回洗浄した後、溶媒を減圧下で除去して、2種類の異性体ベンゾオキサジン構造1及び2と幾らかのオリゴマーを褐色の濃厚な液体として得て、これをLCMS、NMR、及びHPSECにより特徴付けした。新しいワークアップ手順は分離問題を解決したが、反応段階中の急激な発熱は残った。
【0044】
実施例3
メチルホルムセルと分離手順を使用する単官能性ベンゾオキサジンの合成
実施例1に開示されるような単官能性ベンゾオキサジン構造1及び2を、本開示の一実施態様に従ってメチルホルムセルを使用して調製した。
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに、50g(1当量)のm-トルイジン及び66g(1.05当量)のm-クロロフェノールを加えた。混合物を室温で15分間撹拌した。この段階で、100mL(3.5当量)のメチルホルムセル(55%ホルムアルデヒド、10%水及び35%メタノールのpH5~6の溶液を含むMomentive Specialty Chemicals社により供給されるMethaform 55A)を、発熱反応が十分に制御されるように徐々に加え、温度を55℃~60℃に上昇させた。メチルホルムセルの添加が完了したところで、Dean-Stark装置を使用してメタノールを回収しながら、110℃に維持した油浴を使用して反応混合物を5時間加熱還流した。加熱を中止し、反応混合物を最初に100mLのジクロロメタンに溶解し、その混合物を分液漏斗に移し、ついで、分離した生成物を50mLのメタノール及び15mLの水で希釈することによって混合物のワークアップ手順を行った。内容物を混合し、有機層と水性層を分離させる。下層をメタノール/水(50mL/15mL)で2回洗浄し、ついで溶媒を減圧下で除去して、構造1及び2の2種の異性体ベンゾオキサジンと幾らかのオリゴマーの混合物を褐色の濃厚な液体として得た。この手順は、パラホルムアルデヒドの使用に伴う急激な発熱の問題を解決し、分離プロセスは成功した。
【0045】
実施例4
反応中にメタノールを除去しないでメチルホルムセルを使用する単官能性ベンゾオキサジンの合成
Dean-Stark装置を使用せず、反応過程中にメタノールを除去しなかったことが異なるが、実施例3に記載の反応を繰り返した。上記の反応生成物のワークアップにより、幾らかのオリゴマーと共に構造1及び2のベンゾオキサジンモノマーを含む生成物混合物が得られた。この生成物混合物は実施例3において合成されたものと同様であった。
【0046】
実施例5
m-トルイジンをメチルホルムセルと予備反応させることによる単官能性ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに、90mL(3当量)のメチルホルムセルを加えた。このフラスコに、50g(1.0当量)のm-トルイジンを、発熱を効果的に制御しながら室温で滴下して加えた。混合物を室温で約120分間撹拌し、N-メトキシメチル中間体を含むプレリアクト生成物(「プレリアクト」)を生成させた。66g(1.05当量)のm-クロロフェノールを激しく撹拌しながらプレリアクト生成物に滴下して加えた。添加速度は、外部加熱なしで反応温度を40℃~50℃に制御するように調整した。ついで、反応混合物を約90℃(110℃に維持された油浴を使用)に加熱し、出発物質の消失と所望の反応生成物の生成についてHPLCにより反応の進行をモニターした。3~4時間後、加熱を中止し、混合物を実施例3に記載されたワークアッププロセスに供して、オレンジ色の高粘性液体を得、これはLCMS及びHPSECにより、幾らかのオリゴマーと共に構造1及び2のベンゾオキサジンを含んでいると特徴付けられた。
【0047】
実施例6
ベンゾオキサジンを製造するためのマイクロリアクター/フローリアクタープロセス
(プレリアクト調製)
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに3.5当量のメチルホルムセルを加えた。1.0当量のm-トルイジンを室温でフラスコに滴下して加えた。混合物を室温で約120分間撹拌した。この段階で、N-メトキシメチル中間体を含むプレリアクト生成物が生成された。
【0048】
(ポンプへの供給)
2基の高圧高容量シリンジポンプ(ポンプA及びB)を三元スタティックミキサーに接続した(
図1に示される)。スタティックミキサーの排出口を、ステンレス鋼製反応コイル(1/16”OD×0.04”ID×10メートル配管)に接続し、ついでステンレス鋼製背圧調整器と短い排出ラインに接続した。全ての配管は反応コイルと同じステンレス鋼製であった。反応コイルの排出口から排出ラインの終端までの配管を加熱テープでヒートトレースし、グラスウールで断熱し、温度制御装置を使用して45℃に維持した。シリコン流体が充填された最初は75℃の油浴の油中に反応コイルを浸漬した。ポンプAに294.84gのN-メトキシメチル中間体を、ポンプBに135.8gのm-クロロフェノールを充填し、各ポンプのヘッドスペース空気を除去した。
【0049】
【0050】
任意の特定条件下で定常状態に達したところで、代表的なサンプルを採取し、そのサンプルを、実施例3に記載した標準的なワークアッププロセスの後、HPLC、LCMS、SEC及びNMRを使用して分析した。この分析により、構造1及び2のベンゾオキサジンと幾らかのオリゴマーの生成を確認した。
【0051】
実施例7
バッチリアクタープロセスとマイクロリアクター/フローリアクタープロセスの結果の比較
実施例5に記載の合成方法(サンプル#1及び2)に従い、また実施例6に記載のマイクロリアクタープロセス(サンプル#3~8)を使用して、ベンゾオキサジンサンプルを調製した。次の表2は、HPSEC及びLCMS分析に基づく結果をまとめたものである。この結果は、マイクロリアクターはベンゾオキサジンの製造に効率的に使用することができ、より短時間でより多くの処理量を達成する効果を有していることを実証している。
【0052】
実施例8
メチルホルムセルを使用する単官能性ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに45g(~3当量)のメチルホルムセルを加えた。27g(0.25M)のm-トルイジンを室温でフラスコに滴下して加えた。混合物を室温で約120~180分間(又はm-トルイジンの消費とプレリアクト生成物の生成が観察されるまで)撹拌した。42g(0.27M)のt-ブチルフェノールを激しく撹拌しながら15分かけて少しずつ加えた。発熱は観察されず、t-ブチルフェノールの添加中の反応温度は約20℃であった。ついで、反応混合物を(110℃に維持された油浴を使用して)約90℃に加熱し、反応の進行を、TLC及びHPLCによって、出発物質の消失と所望の生成物の生成についてモニターした。6時間後、加熱を中止し、混合物を標準的なワークアップ手順に供した。すなわち、反応混合物を100mLのジクロロメタンと50mLのメタノールを含む分液漏斗に移し、この溶液に15mLの水を加え、続いて最上層を除去し;底層をメタノール/水混合物(50mL/15mL)で3回洗浄し;ついで有機底層をブライン溶液で洗浄し、MgSO
4を使用して乾燥させ、濾過し;ジクロロメタンを減圧下で除去して、オレンジ色の高粘性液体を得、これをNMR及びLCMSに基づいて構造式3のベンゾオキサジン化合物であると特徴付けた。生成された最終生成物の重量は57gm(収率%=81%)であった。
【0053】
実施例9
メチルホルムセルを使用する二官能性ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコに325g(2当量)のm-トルイジンと450g(1.05当量)のDABA(ジアリルビスフェノール-A)を加えた。その混合物を室温で約15分間撹拌した。次に、450mL(5.5当量)のメチルホルムセルを激しく撹拌しながら滴下して加えた。反応は発熱性であったが、添加速度を調節して、外部加熱なしで反応温度を50℃~60℃に制御した。ついで、反応混合物を(110℃に維持した油浴を使用して)約85℃~100℃に加熱し、反応の進行を、出発物質の消失と所望の生成物の生成についてHPLCによりモニターした。5時間後(m-トルイジンのピークがもはや観察されず、ほぼ全てのメタノールが留去したところで)、加熱を中止し、混合物を標準的なワークアップ手順に供した。反応混合物を1Lのジクロロメタンと共に分液漏斗に移し、250mLのメタノールと75mLの水で洗浄し、続いて上層を除去した。生成物を含んでいる底層をメタノール/水混合物(250mL/75mL)で2回洗浄した。ついで、有機層をブライン溶液で洗浄し、乾燥させ、濾過し、ジクロロメタンを減圧下で除去して淡黄色の高粘性液体を得、これを、LCMSによって構造4の二官能性ベンゾオキサジンを唯一の主要成分として含むと特徴付けた。
【0054】
実施例10
メチルホルムセルを使用する二官能性ベンゾオキサジンの合成
還流冷却器、Dean-Starkトラップ、オーバーヘッドスターラー、熱電対、滴下漏斗及びN
2注入口を備えた四つ口の3L丸底フラスコに360mL(6.0モル)のメチルホルムセルを充填した。次に、216g(2.0モル)のm-トルイジンを、滴下漏斗を通して撹拌しながら滴下して加えた。発熱反応が観察されたが、m-トルイジン添加の速度を制御して、反応混合物の温度を40℃未満に保った。m-トルイジンの添加後、反応混合物を40℃で2時間撹拌した。次に、230g(1.0モル)のビスフェノール-A(BPA)を撹拌しながら40℃で40分間かけて15gずつ加えた。BPAの添加後、反応物を80~85℃で6時間撹拌した。加熱を止め、反応混合物を50℃に冷却した。
【0055】
続いて、反応混合物を標準的なワークアップ手順に供した。900mLの塩化メチレンを反応混合物に加え、20分間撹拌した。ついで、220mLの水と215mLのメタノールを加え、15分間撹拌した。反応混合物を2Lの分液漏斗に移し、水性層と有機層を分離させた。反応生成物を含んでいた底部有機層を、水性層を除去することによって分離した。有機層をメタノール/水混合物(220mL/215mL)で2回洗浄した。溶媒を真空下で除去して、400g~430g(収率82~88%)のm-ビス-BPA-ベンゾオキサジン構造5を琥珀色の液体として得た。ベンゾオキサジン化合物をLC-MSにより分析したところ490.65g/molのMWを有していた。
【0056】
実施例11
メチルホルムセルを使用する三官能性ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、Dean-Starkトラップ、滴下漏斗及びN
2注入口を備えた四つ口の1L丸底フラスコ中で、324mL(9.00当量)のメチルホルムセルを100mLのMIBK(メチルイソブチルケトン)と混合した。この混合物に、186mL(3.00当量)のアニリンを滴下して加えた。反応混合物を周囲温度で3時間撹拌し、ついで200g(1.02当量)のトリス-フェノールを、粉末漏斗を通してバルクで添加した。反応物を9.5時間還流させ、約130mLの凝縮物をDean-Starkトラップを介して除去した。加熱を止め、反応生成物を周囲温度まで冷却した。
【0057】
続いて、反応生成物を標準的なワークアップ手順に供した。200mLのジクロロメタンを反応物に加え、1時間撹拌した。次に、得られた混合物を2Lの分液漏斗に移した。100mLのメタノールを分液漏斗中の混合物に加え、激しく振盪した。30mLの脱イオン(DI)水を分液漏斗に加え、激しく振盪している間に形成されるエマルジョンの分解を助けた。上部の水性層を除去して捨て、底部層を分液漏斗に戻した。このメタノール/水処理工程この工程を更に3回繰り返した後、100mLの水と200mLのブライン溶液で連続抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去して粘性液体状の反応生成物を得た。
【0058】
続いて、ワークアップ手順を実施した。得られた粘性液体を、100mLのジクロロメタンを使用して再溶解させた。この溶液を1Lビーカー中の500mLのメタノール中に注ぎ、オーバーヘッドスターラーで撹拌して白色ペースト状の沈殿物を得た。溶媒をデカントし、更なるメタノールを加え、更に撹拌した。再び、溶媒をデカントした。このメタノール処理をもう一回繰り返し、物質を周囲温度の真空オーブン中で乾燥させて、残留塩化メチレン/メタノールを除去し、379.8g(収率90%)の反応生成物を固形物形態で得た。反応生成物は、TLC、LC-MS及びNMRにより、MWが657.81g/molの主に構造6の三官能性ベンゾオキサジンであると特徴付けした。
【0059】
実施例12
メチルホルムセルを使用する三官能性ベンゾオキサジンの合成
81mLのメチルホルムセル(1.48モル)を、還流冷却器、熱電対、オーバーヘッドスターラー及び窒素注入口を備えた四つ口の丸底フラスコに加えた。そのフラスコに54g(0.5モル)のm-トルイジンを滴下して加えた。ついで、溶液を室温で2時間撹拌した。m-トルイジンの消失がTLCによって観察された。この段階で、固体の1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを少しずつ加えた。ついで、反応混合物を加熱還流させた。反応をHPLCによってモニターしたところ、一つの主要生成物ピークが示された。反応混合物を冷却し、ついで塩化メチレンで反応混合物を希釈することによって、上記の実施例11で説明したようなワークアップ手順に供した。ついで、得られた溶液をメタノール/水混合物で洗浄した。(反応生成物を含んでいた)塩化メチレン層をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残留物をメタノールで処理して白色固形物を得、これを濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させた。得られた固形物をLCMS及びNMR分光法によって特徴付けしたところ、699g/モルの分子量を有する主要成分として構造7の三官能性ベンゾオキサジンが示された。
【0060】
実施例13
メチルホルムセルとt-ブチルフェノールからの4,4’-DDSに基づくビスベンゾオキサジンの調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口の丸底フラスコに45g(0.8M)のメチルホルムセルを加えた。このフラスコに、室温で、4,4’-DDS(31g;0.12M)を15分かけて少しずつ加えた。混合物を室温で約120~180分間(4,4’-DDSの消費が観察されるまで)撹拌した。混合物を50℃に加熱し、4時間撹拌した。t-ブチルフェノール(42g;0.27M)を激しく撹拌しながら15分かけて少しずつ加えた。発熱は観察されなかった。ついで、反応混合物を約90℃(油浴温度110℃)に加熱し、反応の進行をTLCによってモニターした。8時間後、加熱を中止し、混合物を次のようにしてワークアップした。
【0061】
(ワークアップ手順)
150mlのメタノールを反応混合物に添加したところ、生成物の沈殿を生じた。生成物を濾過し、減圧下で乾燥させた。サンプルのNMR及びHPLC分析を実施した。濾過した生成物の重量は31g(収率%=55%)であった。母液もまた幾らかの生成物を含んでいた。
【0062】
実施例14
メチルホルムセルとの4,4’-DDSの反応とN-メトキシメチル中間体の分離
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた500mLの四つ口丸底フラスコに60gのメチルホルムセルを加えた。内容物を撹拌しながら50℃に加熱した。このフラスコに、30gの4,4’-DDSを15分かけて少しずつ加えた。約80mLのメタノールを4,4’-DDSの添加中に加えた。温度を60℃に上げ、2時間保持した。ついで、混合物を4時間加熱還流した。ついで、冷却し、生じた沈殿物を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させて31.6gの生成物を得、これを、LCMSにより主にN,N’-テトラ(メトキシメチル)-4,4’-DDS誘導体からなると特徴付けた。濾液を濃縮して、主にN,N’-テトラ(メトキシメチル)-4,4’-DDSとメトキシメチル基の一つに更なるCH
2単位を含む少量成分からなるとLCMSによって特徴付けた更なる生成物19.6gを得た。
【0063】
実施例15:
メチルホルムセルとt-ブチルフェノールからのAPB-133に基づくビス-ベンゾオキサジンの調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口の丸底フラスコに60gのメチルホルムセルを加えた。このフラスコに、室温で0.125MのAPB-133[1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン](36.5g)を少しずつ加えた。この段階で混合物の粘度が増加するので、150mlのメタノールを加えた。混合物を室温で約120~180分間(APBの消費がTLCにより観察されるまで)撹拌した。42gのt-ブチルフェノール(0.27M)を激しく撹拌しながら15分かけて少しずつ加えた。発熱は観察されなかった。更に100mlのメタノールを加えた。ついで、反応混合物を約90℃(油浴温度110℃)に加熱し、反応の進行をTLCによってモニターした。その後、Dean-Stark装置を使用して、100mlのメタノールを反応混合物から除去した。6時間後、加熱を中止し、混合物を、標準手順を使用してワークアップした。
【0064】
(ワークアップ手順)
反応混合物を、300mLのジクロロメタンと100mLのメタノールと共に分液漏斗に入れた。この溶液に、100mLの水を加え、続いて上層を除去した。底層をメタノール水混合物で3回処理した。ついで、有機層をブライン溶液で洗浄し、MgSO4を使用して乾燥させ、濾過した。ジクロロメタンを減圧下で除去して、オレンジ色の高粘性液体を得た。生成された生成物の重量は65g(収率%=81%)であり、これは、LCMSによってAPB-133に基づく所望のビス-ベンゾオキサジンであると特徴付けられた。
【0065】
実施例16
メチルホルムセルとm-クレゾールからのAPB-133に基づくビス-ベンゾオキサジンの調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた四つ口の丸底フラスコに120g(~8当量)のメチルホルムセルを加えた。メチルホルムセルを50℃に予熱してから、73g(0.25M)のAPB-133を少しずつ添加した。混合物を50℃で約120分間(APBの消費がTLCにより観察されるまで)撹拌した。58.4gのm-クレゾール(0.54M)を、激しく撹拌しながら15分間かけて滴下して加えた。ついで、反応混合物を約90℃(油浴温度110℃)に加熱し、反応の進行をTLCによってモニターした。6時間後、加熱を中止し、標準的な手順を使用して混合物をワークアップした。
【0066】
(ワークアップ手順)
反応混合物を300mLのジクロロメタンと100mLのメタノールと共に分液漏斗に入れ、この溶液に100mLの水を加え、続いて上層を除去した。底層をメタノール水混合物で3回処理した。ついで、有機層をブライン溶液で洗浄し、真空下で乾燥させた。生成された生成物の重量は160gであった。
【0067】
実施例17:
メチルホルムセルとt-ブチルフェノールを使用するメチレンジアミン(MDA)ベースのビス-ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、還流冷却器、Dean-Starkトラップ、熱電対及びN
2注入口を備えた四つ口の1L丸底フラスコに160mL(8.0当量)のメチルホルムセルを加え、50℃まで加熱した。この溶液に、74.8g(1.0当量)の4,4’-メチレンジアニリン(MDA)を、絶え間なく撹拌しながら粉末漏斗を介して8.0gずつ加える。50mLのMIBKを共溶媒として加えた。TLC上のMDAスポットが消失するまで、反応物を50℃で10時間加熱した。サンプルを採取し、LCMSにより分析した。LCMSにより、N-メトキシメチル中間体の生成を確認した。ついで、119.1g(2.1当量)のt-ブチルフェノール(TBP)を反応物ロットに加え、メタノール/水/MIBK混合物をDean-Starkトラップで連続的に除去しながら6時間還流させた。生成物の生成をTLCでモニターし、LCMSにより確認した。生成物を分離して、メタノール中で沈殿させることにより198g(収率99%)を得た。
【0068】
実施例18
メチルホルムセルを使用する単官能性ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、Dean-Starkトラップ及びN
2注入口を備えた四つ口の500mL丸底フラスコに室温で89.0mL(4.0当量)のメチルホルムセルを加えた。このフラスコに、50.0g(1.0当量)のパラ-アニシジンを約10gずつ10~15分かけて添加した。パラアニシジン添加時に発熱(19℃→37℃)が観察され、反応混合物の色がオリーブグリーンに変わった。反応物を50℃に5時間加熱した。この時点で、サンプルを採取し、LCMSによって分析した。LCMSにより、N-メトキシメチル中間体の生成が確認された。この混合物に、61.0g(1.0当量)のtert-ブチルフェノール(TBP)をロットで加えた。TBP添加時に反応物がワイン色に変化し、ついで白色沈殿物が生成され始めた。反応物を3時間還流させ;約35mLのMeOH/水をDean-Starkトラップにより除去した。100mLのMIBKを反応物に添加し、3時間還流させた。反応の完了をTLCでモニターした。反応物を室温まで冷却した。約100mLのMeOHを加えて生成物を白色沈殿物として得た。それを濾過し、冷メタノールで3~4回洗浄し、真空下で乾燥させた。生成物の構造をNMR及びLCMSにより確認した。
【0069】
実施例19
メチルホルムセルを使用するビス-ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、熱電対、還流冷却器、Dean-Starkトラップ及びN
2注入口を備えた四つ口の1L丸底フラスコに室温で114mLのメチルホルムセルを加えた。このフラスコに、52.1g(1.0当量)の4,4’-オキシジアニリン(ODA)を約10gずつ10~15分間かけて添加した。反応物を50℃に5時間加熱した。この時点で、サンプルを採取し、LCMSによって分析した。LCMSデータにより、N-メトキシメチル中間体の生成が確認された。この混合物に、56.3g(2.0当量)のm-クレゾールを、滴下漏斗を介して添加した。反応混合物を加熱還流した。Dean-Stark装置を介して10mLのMeOH/水留出物を除去すると、白色固形物が生成した。200mLのMIBKを反応混合物に加え、Dean-Starkトラップを使用して更に留出物を除去しながら合計6時間還流させた。反応の完了をTLCによってモニターした。反応混合物を室温に冷却した。約100mLのMeOHを添加すると白色の沈殿が生じ、これを濾過し、冷メタノールで3~4回洗浄し、真空下で乾燥させた。ビス-ベンゾオキサジン生成物の構造をNMR及びLCMSにより確認した。
【0070】
実施例20
メチルホルムセルとt-ブチルフェノールを使用するメチレンジアミン(MDA)ベースのビス-ベンゾオキサジンの合成
オーバーヘッドスターラー、還流冷却器、Dean-Starkトラップ、熱電対及びN
2注入口を備えた四つ口の1L丸底フラスコに160mL(8.0当量)のメチルホルムセルを加え、50℃まで加熱した。この溶液に、74.8g(1.0当量)の4,4’-メチレンジアニリン(MDA)を、絶え間なく撹拌しながら粉末漏斗を介して8.0gずつ添加した。50mLのMIBKを共溶媒として加えた。TLC上のMDAスポットが消失するまで、反応混合物を50℃で10時間加熱した。サンプルを採取し、LCMSにより分析した。LCMSにより、N-メトキシメチル中間体の生成が確認された。ついで、119.1g(2.1当量)のt-ブチルフェノール(TBP)を反応混合物ロットに加え、Dean-Starkトラップを介してメタノール/水/MIBK混合物を連続的に除去しながら6時間還流させた。生成物の生成をTLCによってモニターし、LCMSにより確認した。生成物を分離して、メタノール中で沈殿させることにより198g(収率99%)を得た。
【0071】
ここで開示された範囲は包括的で、独立して組み合わせ可能であり、端点と全ての中間値を範囲内に含む。例えば、「1%~10%」の範囲は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%並びに中間値、例えば1.1%、1.2%、1.3%等を含む。
【0072】
様々な実施態様がここに記載されているが、ここに開示された要素の様々な組み合わせ、ここに開示された実施態様の変形が当業者によってなされてもよく、本開示の範囲内であることが明細書から理解されるであろう。加えて、本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料をここに開示された実施態様の教示に適合させるために、多くの変更が行われてもよい。従って、特許請求の範囲に記載された発明は、ここに開示された特定の実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明は、添付の特許請求の範囲に入る全ての実施態様を含むことが意図される。