(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ポンプディスペンサー
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20230825BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20230825BHJP
【FI】
B65D47/34 100
B05B11/00 102B
(21)【出願番号】P 2018204517
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390028196
【氏名又は名称】キャニヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】湯田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】森谷 始旦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 実智昭
(72)【発明者】
【氏名】赤築 充昭
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特公昭31-010693(JP,B1)
【文献】特開2013-001455(JP,A)
【文献】特開2010-184182(JP,A)
【文献】特開2009-196642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/34
B65D 83/00
B05B 11/00
B05B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取付け可能であり、片手で把持されてトリガーが押し下げ操作可能にされ、トリガーに連動するピストンの移動によって容器の内容液がノズルの流路を経由して吐出口から吐出されるポンプディスペンサーであって、
容器におけるボディのボディ本体部からノズルに対する反対側である後方に延出し、使用者の片手により保持可能にされる取手部を有するとともに、
容器におけるボディのボディ本体部の前側における左右両側部に枢着されてその枢着部を回転中心として上下方向に回動可能にされるとともに、該ボディ本体部の後方に向けて上記取手部の上側に延出した部分の上に使用者の親指を置いて押し下げ可能にされるトリガーを有し、
ノズルの流路が、吐出口に近接する
先端側流路と該吐出口から遠い基端側流路のそれぞれを直線状にし、それらの基端側流路と先端側流路を直に連通させ、先端側流路の流路面積
が基端側流路の流路面積に比して小さく設定されるとともに、基端側流路の流路長
が先端側流路の流路長に比して長く設定され、
前記ポンプディスペンサーが取付けられた容器を正立させた状態で、該ノズルの先端側流路が水平に設定されるポンプディスペンサー。
【請求項2】
前記ポンプディスペンサーが取付けられた容器を正立させた状態で、該ノズルの基端側流路が先端側に向けて上向きに傾斜して設定される請求項1に記載のポンプディスペンサー。
【請求項3】
前記ノズルは、先端側流路を形成する先端側筒状体と先端側流路を形成する基端側筒状体とを具備する筒状体から形成され、先端側筒状体は基端側筒状体とは別部材で形成されている請求項1又は2に記載のポンプディスペンサー。
【請求項4】
前記ノズルの先端部に、凸状に湾曲した先端面を備える請求項1乃至3のいずれかに記載のポンプディスペンサー。
【請求項5】
前記ノズルの先端部に、該ノズルにおける先端側流路の中心軸を含む断面視で、該先端側流路を備える筒状体の外径よりも外方に張り出した先端面を備える請求項1乃至4のいずれかに記載のポンプディスペンサー。
【請求項6】
前記ノズルにおける先端側流路の中心軸を含む断面視で、前記先端面の外周縁に引いた接線が、前記筒状体の外径から立上る立上り壁と鋭角に交差する請求項5に記載のポンプディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
容器の内容液を吐出するポンプディペンサーとして、特許文献1に記載の如く、容器に取付け可能であり、片手で把持されてトリガーが押し下げ操作可能にされ、トリガーに連動するピストンの移動によって容器の内容液がノズルの流路を経由して吐出口から吐出されるようにしたものがある。
【0003】
このポンプディスペンサーによれば、容器に着脱できる計量キャップを利用し、容器の内容液を計量キャップによって計量して吐出するものに比して、計量キャップを用いずに片手操作で吐出口から吐出される内容液を、狙っている吐出先へ定量吐出でき、内容液の計量作業性、吐出作業性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプディスペンサーにあっては、吐出口から吐出される内容液の吐出流量(g/秒)は、少量ずつ吐出させる場合や、多量の内容液を一気に吐出させる場合のように、吐出先や吐出目的によって大きく異なる。
【0006】
しかしながら、従来のポンプディスペンサーでは、同じポンプディスペンサーを用いて吐出流量を大きく異ならせて吐出すると、使用者によってはトリガーの押し下げ操作力を微調整しずらいことがあった。
【0007】
例えば吐出流量が小さ目で適度な押し下げ操作力に設定されたポンプディスペンサーでは、大き目の吐出流量を実現しようとすると、必要になる押し下げ操作力が過大となってトリガーを高速で押し下げ操作しずらく、一気に吐出しにくい。
【0008】
他方、例えば吐出流量が大き目で適度な押し下げ操作力に設定されたポンプディスペンサーでは、小さ目の吐出流量を実現しようとすると、必要になる押し下げ操作力が過小となってトリガーを一定の低速でゆっくり押し下げ操作しずらく、容器の内容液を少量ずつ吐出しにくい。
【0009】
本発明の課題は、ポンプディスペンサーにおいて、吐出流量の大小にかかわらず、トリガーの押し下げ操作力を容易に調整可能にし、また吐出口から吐出される内容液の吐出流量を安定的に調整することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、容器に取付け可能であり、片手で把持されてトリガーが押し下げ操作可能にされ、トリガーに連動するピストンの移動によって容器の内容液がノズルの流路を経由して吐出口から吐出されるポンプディスペンサーであって、容器におけるボディのボディ本体部からノズルに対する反対側である後方に延出し、使用者の片手により保持可能にされる取手部を有するとともに、容器におけるボディのボディ本体部の前側における左右両側部に枢着されてその枢着部を回転中心として上下方向に回動可能にされるとともに、該ボディ本体部の後方に向けて上記取手部の上側に延出した部分の上に使用者の親指を置いて押し下げ可能にされるトリガーを有し、ノズルの流路が、吐出口に近接する先端側流路と該吐出口から遠い基端側流路のそれぞれを直線状にし、それらの基端側流路と先端側流路を直に連通させ、先端側流路の流路面積が基端側流路の流路面積に比して小さく設定されるとともに、基端側流路の流路長が先端側流路の流路長に比して長く設定され、前記ポンプディスペンサーが取付けられた容器を正立させた状態で、該ノズルの先端側流路が水平に設定されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポンプディスペンサーにおいて、吐出流量の大小にかかわらず、トリガーの押し下げ操作力を容易に調整可能にし、また吐出口から吐出される内容液の吐出流量を安定的に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はポンプディスペンサーを示し、トリガーが押し下げられる前の状態を示す断面図である。
【
図2】
図2はポンプディスペンサーを示し、トリガーを押し下げ中の状態を示す断面図である。
【
図3】
図3はポンプディスペンサーを示す正面図である。
【
図6】
図6はポンプディスペンサーの実験結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポンプディスペンサーAは、
図1乃至
図3に示す如く、容器1に取付け可能であり、片手で把持されてトリガー50が押し下げ操作可能にされ、トリガー50に連動するピストン61の移動によって容器1の内容液がノズル22の流路24を経由して吐出口25から吐出される。
【0014】
尚、本明細書において、上下前後とは、ポンプディスペンサーAが取付けられた容器1を正立させた状態で、トリガー50の側を「上方」、容器1の側を「下方」といい、ノズル22の側を「前方」、ノズル22の反対側(例えば、後述する取手部12の側)を「後方」といい、それらの上下方向と前後方向の両方に直交する方向を「左右方向」というものとする。
【0015】
ポンプディスペンサーAは、ボディ10、ノズル構造体20、シリンダー構造体30、キャップ40、トリガー50、ピストン構造体60、ピストンシャフト70を有する。
【0016】
ポンプディスペンサーAは、容器1に取付けられた状態で、容器1の後方に位置するものとなる取手部12をボディ10のボディ本体部11から延出して備える。
【0017】
ノズル構造体20は、ボディ10のボディ本体部11に上方から嵌着して固定されるノズルベース部21と、このノズルベース部21から前方に延出されてノズル22を形成する筒状体23を有する。ノズル22は、筒状体23の内径部を容器1の内容液のための丸孔状流路24とし、この流路24の前端部に前方に向けて開口する吐出口25を備える。
【0018】
ノズル構造体20のノズルベース部21は後述するピストン61及びSバルブ90のためのピストン・バルブケース26を内蔵して備え、ピストン・バルブケース26の内部空間を上述の流路24に連通可能にしている。
【0019】
シリンダー構造体30は、ボディ10のボディ本体部11に下方から嵌着して固定されるシリダー本体部31を備える。シリンダー構造体30は、シリンダー本体部31の下部にシリンダー32、Fバルブ収容部33、チューブ接続部34を順に連設して備える。シリダー本体部31、シリンダー32、Fバルブ収容部33及びチューブ接続部34は、それらの直径をシリンダー本体部31からチューブ接続部34の側に向けて順に段階状に小径化した多段筒状をなすものとされている。
【0020】
キャップ40は、ポンプディスペンサーAを容器1に取付けるものであり、シリンダー構造体30におけるシリンダー本体部31の外周に装填され、上端部に内向きに形成された係止部41が、シリンダー本体部31の下端部に外向きに形成されたリブ31Aに上側から係止される。キャップ40の下端部に設けためねじ部42が容器1の口部に螺着されるとき、シリンダー本体部31のリブ31Aがパッキン31Bを介して容器1の口部端面に締結される。
【0021】
シリンダー構造体30のチューブ接続部34の内周(外周でも可)にはチューブ35が接続される。チューブ35は、ポンプディスペンサーAが取付けられた容器1の内部にその底部(不図示)まで浸漬され、容器1の内容液を導通可能にする。
【0022】
トリガー50は、ボディ10のボディ本体部11の前側における左右両側部に枢着され、その枢着部を回転中心として上下方向に回動可能にされる。即ち、トリガー50の前後方向に沿って延びる長手方向の前側端における左右両側部に設けた不図示の枢軸部がボディ本体部11に形成してある不図示の孔部に挿入されて枢着されるものになる。トリガー50が枢着される枢軸部は、後述する基端側流路101の側部に位置している。これによりトリガー5の押し下げ操作性が良好となる。また、
図1のように、枢軸部が基端側流路101における先端側寄りに設けられることにより、押し下げ操作性が一層良好となる。
【0023】
ピストン構造体60は、ノズル構造体20のピストン・バルブケース26の内周面及びシリンダー構造体30のシリンダー32の内周面を上下に摺動するピストン61を有する。
【0024】
ピストンシャフト70は、ノズル構造体20におけるノズルベース部21の上方部において、トリガー50の長手方向の中間部の下面に設けた凹部52に下側から衝合して支持される突起部71を有する。また、ピストンシャフト70は、ノズル構造体20におけるノズルベース部21の下端側において、ノズル構造体20のノズルベース部21及びピストン・バルブケース26の外周に装填されるとともに、ピストン61に上方から衝合する筒状スカート部72を有する。ピストンシャフト70は、ノズル構造体20におけるノズルベース部21の左右両側において、突起部71とスカート部72をつなぐ不図示の連結部を備える。即ち、ピストンシャフト70の一方端はトリガー50に衝合し、他方端はピストン61に衝合している。
【0025】
ポンプディスペンサーAは、容器1の内容液をノズル構造体20の流路24に導く液流路を開閉するために、シリンダー構造体30におけるシリンダー32及びFバルブ収容部33の内部にFバルブ(ファーストバルブ)80を配置するとともに、ノズル構造体20におけるピストン・バルブケース26の内部にSバルブ(セカンドバルブ)90を配置している。Fバルブ80は、通常、上端バルブ81をピストン61に設けた弁座61Vに上方から当接し、下端バルブ82をFバルブ収容部33の底部に設けた開口部33Vに上方から当接している。Sバルブ90は、通常、ピストン・バルブケース26の軸方向中間部に設けた弁座26Vに上方から当接している。そして、Fバルブ80の上端バルブ81と下端バルブ82をつなぐ弁軸83まわりに配置されたばね84が、ピストン61と下端バルブ82との間に介装される。ばね84は、コイル状の圧縮ばねからなる。
【0026】
以下、ポンプディスペンサーAの作動について説明する。
(1)使用前のポンプディスペンサーAは、ばね84の力がピストン61、ピストンシャフト70を介してトリガー50を上限位置に設定し、Fバルブ80の上端バルブ81がピストン61の弁座61Vに当接して該弁座61Vをシールし、Sバルブ90がピストン・バルブケース26の弁座26Vに当接して該弁座26Vをシールしており、容器1の内容液がノズル構造体20の吐出口25に流出しない。
【0027】
(2)ボディ10の取手部12とトリガー50を握り、トリガー50を押し下げる。このとき、使用者は、4本(或いは人によっては1~3本)の指を取手部12に引っ掛ける状態で、親指(或いは人差し指及び中指)を立てて該親指をトリガー50の上に置くことで、ポンプディスペンサーAを片手で保持し、トリガー50を下方に押し下げできる。
【0028】
尚、ボディ10の取手部12とトリガー50は、片方の手だけで把持するものに限らず、一方の手で取手部12を把持してポンプディスペンサーAを保持し、他方の手でトリガー50を下方に押し下げても良い。
【0029】
トリガー50の押し下げにより、ピストンシャフト70の突起部71が押され、ピストンシャフト70は押し下げられ下方に移動する。トリガー50が押し下げられた直後、トリガー50の押し下げストロークがピストンシャフト70を介してピストン61を押し下げ、シリンダー32内の液圧が昇圧されるとともに、Fバルブ80の上端バルブ81とピストン61の弁座61Vとのシールが開放される。また、Fバルブ80の下端バルブ82がFバルブ収容部33の底部の開口部33Vを閉鎖する。尚、トリガー50によるピストンシャフト70の押し下げでピストン61は押し下げられるが、ノズル構造体20は移動せず、ノズル22の高さ位置は変動しない。
【0030】
(3)トリガー50の押し下げ中、ピストン61が更に押し下げられると、シリンダー32内の液がピストン61の弁座61Vからピストン・バルブケース26内に入ってSバルブ90を押し上げ、Sバルブ90とピストン・バルブケース26の弁座26Vとのシールが開放される。
【0031】
(4)トリガー50が更に押し下げられ、ピストン61が更に押し下げられると、シリンダー32内の液がピストン・バルブケース26内の液流路を通ってノズル22の流路24を流れ、吐出口25から外方へ吐出される。
【0032】
(5)トリガー50が押し下げストロークの下限位置でピストン61の下端がシリンダー32内の底部に衝合すると、ピストン61を更に押し下げることができず、ノズル22の吐出口25からの液の吐出が停止する。
【0033】
(6)使用者がトリガー50の上から指を離した直後、ばね84がピストン61を押し上げ、これによって生ずるシリンダー32及びピストン・バルブケース26内の負圧がSバルブ90をピストン・バルブケース26の弁座26Vに向けて引き込む。このとき、ノズル22の流路24内に滞留していた液は、Sバルブ90の引き込みの移動によってピストン・バルブケース26内に吸引される(バックサクション)。その後、Sバルブ90はピストン・バルブケース26の弁座26Vに当接して該弁座26Vをシールする。
【0034】
(7)(6)にてばね84がピストン61を上に押し上げると同時に、Fバルブ80の下端バルブ82が上に引っ張られ、Fバルブ収容部33の底部の開口部33Vが開放される。チューブ35を通して容器1内の内容液がFバルブ収容部33、シリンダー32内に流れ込む。
【0035】
(8)ばね84の戻し終了時、ピストン61が上に押し上げられ、Fバルブ80と接触し、シールされる。容器1内からシリンダー32への液の流れ込みが停止する。次の吐出準備が完了する。
【0036】
しかるに、ポンプディスペンサーAは、トリガー50の押し下げ操作力を使用者によって容易に微調整可能にし、吐出口25から吐出される内容液の吐出流量を安定的に微調整可能にするため、以下の構成を具備する。
【0037】
即ち、ポンプディスペンサーAにおいて、ノズル22の流路24は、
図4に示す如く、吐出口25に近接する先端側流路の流路面積a2を、該吐出口25から遠い基端側流路101の流路面積a1に比して小さく設定(a2<a1)とともに、基端側流路101の流路長L1を先端側流路102の流路長L2に比して長く設定されている(L1>L2)。
【0038】
尚、本実施形態では、ノズル22を形成する筒状体23が、基端側筒状体110と先端側筒状体120とからなるものとされ、基端側筒状体110の内径部を基端側流路101とし、先端側筒状体120の内径部を先端側流路102としている。先端側流路102を形成する先端側筒状体120は、先端側流路102を形成する基端側筒状体110とは別部材で構成されており、先端側筒状体120の基端部に設けた筒状接続部121が、基端側筒状体110の先端部に嵌着されて固定される。尚、先端側筒状体120と基端側筒状体110は一体的に成形されていても良い。
【0039】
また、ポンプディスペンサーAが取付けられた容器1を正立させた状態で、ノズル22の上述した先端側流路120の中心軸c2(
図4)は、水平方向に対して±10度以下が好ましく、±5度以下が好ましく、水平であることが好ましい。ここで水平とは、水平方向に対して±3度以下であることを示す。本実施形態では、先端側流路120の中心軸cは水平に設定されている。
【0040】
また、ポンプディスペンサーAが取付けられた容器1を正立させた状態で、ノズル22の基端側流路101の中心軸c1(
図4)は、先端側に向けて上向きに傾斜していることがノズル22の吐出口25からの液だれ防止の観点から好ましく、水平方向に対して3度以上30度以下が好ましく、5度以上20度以下が更に好ましい。
【0041】
また、ノズル22の先端部は、
図5に示す如く、凸状に湾曲した先端面130を備える。この先端面130は、先端側流路102の中心軸cを含む断面視で、先端側流路102を備える先端側筒状体120の外径よりも外方に張り出している。本実施形態において、先端面130は、半径rの凸状円弧面をなす。
【0042】
また、ノズル22の先端面130にあっては、
図5に示す如く、先端側流路102の中心軸cを含む断面視で、該先端面130の外周縁131に引いた接線tが、先端側筒状体120の外径から立上る立上り壁122と鋭角θに交差するものとしている。本実施形態の立上り壁122は、先端側筒状体120の外径に連続する円弧面122Aと、該円弧面122Aの外方端に連続して該先端側筒状体120の外径に直交する垂直面122Bとからなり、先端面130の外周縁131に引いた接線tが垂直面122Bに対して鋭角θをなす。
【0043】
従って、ポンプディスペンサーAによれば、以下の作用効果を奏する。
(a)ノズル22の流路24が、吐出口25に近接する先端側流路102の流路面積a2を、該吐出口25から遠い基端側流路101の流路面積a1に比して小さく設定される(a2<a1)とともに、基端側流路101の流路長L1を先端側流路102の流路長L2に比して長く設定される(L1>L2)ものとした。従って、基端側流路101及び先端側流路102からなる流路24の流路面積がその全長に渡って大流路面積a1からなるものに比して、ノズル22の吐出口25から吐出される内容液を先端側流路102の小流路面積a2が規定する細目の液幅で安定的に吐出することができる。このとき、大流路面積a1で流路抵抗が小さい基端側流路101の流路長L1を、小流路面積a2で流路抵抗が大きい先端側流路102の流路長L2より長くしたから、基端側流路101及び先端側流路102からなる流路24の流路抵抗を一層確実に小さくできる。
【0044】
これにより、ポンプディスペンサーAにおいて、吐出流量の大小にかかわらず、トリガー50を押し下げ操作する使用者の手や指に作用する押し下げ抵抗が適度に軽減されるものになり、トリガー50の押し下げ操作力を使用者によって容易に調整でき、また吐出口25から吐出される内容液の吐出流量を安定的に調整できる。
【0045】
ここで、例えばポンプディスペンサーAの内容液が液体洗剤の場合、吐出流量が小さ目の場合としては、ポンプディスペンサーAの吐出先として衣類のエリ・ソデ等が挙げられる。本実施形態のポンプディスペンサーAによれば、エリ・ソデ等の細長い汚れに対して、細目の液幅の内容液をそれらのエリ・ソデ等に連続状に塗布できる。
【0046】
また、吐出流量が大き目の場合としては、ポンプディスペンサーAの吐出先として衣類の大きな面積の汚れや、洗濯機の洗濯槽等が挙げられる。本実施形態のポンプディスペンサーAによれば、大きな面積の汚れや、洗濯機の洗濯槽に対して、使用者の手や指に過大な押し下げ負荷をかけ過ぎずに該トリガー50を高速で押し下げ操作可能にして、一気に吐出をすることができる。特に洗濯機の洗剤ケース等の狭い箇所に対して、高速の吐出速度で狙った吐出先に向けて精度良く吐出される。
【0047】
このとき、例えば、小流路面積a2は大流路面積a1に対して、5~60%が好ましく、10~30%が一層好ましい。流路長L1は流路長L2に対して、3~10倍が好ましく、6~8倍が一層好ましい。
【0048】
(b)前記ポンプディスペンサーAが取付けられた容器1を正立させた状態で、該ノズル22の先端側流路102が水平に設定された。ディスペンサー付き容器1を片手で持ち、ノズル22を吐出先に向けて下向き吐出するとき、ノズル22を吐出先に向けて延長させるような姿勢に位置付け易く、吐出口25から吐出された内容液を狙った吐出先に吐出し易くなる。
【0049】
(c)前記ポンプディスペンサーAが取付けられた容器1を正立させた状態で、該ノズル22の基端側流路101が先端側に向けて上向きに傾斜して設定された。これにより、ノズル22の吐出口25から内容液を吐出した際の該吐出口25における液だれを防止できる。また、ノズル22の先端側流路102が水平に設定されたとともに、基端側流路101が先端側に向けて上向きに傾斜して設定されたため、下向き吐出するとき内容液を狙った吐出先に一層吐出し易くなる。
【0050】
(d)前記ノズル22を形成する筒状体23は、先端側流路102を形成する先端側筒状体120と、先端側流路102を形成する基端側筒状体110とからなる。先端側筒状体120は、基端側筒状体110とは別部材で形成された。先端側筒状体120の変更が容易となり、内容液の種類に応じ、基端側流路101に対する先端側流路102の流路長L2及び流路面積a2の調整がし易くなる。
【0051】
(e)前記ノズル22の先端部に、凸状に湾曲した先端面130を備えた。ノズル22の吐出口25から内容液を吐出した際の該吐出口25における液だれを防止できる。
【0052】
(f)前記ノズル22の先端部に、該ノズル22における先端側流路102の中心軸cを含む断面視で、先端側流路102を備える先端側筒状体120の外径よりも外方に張り出した先端面130を備えた。ノズル22の吐出口25から内容液を吐出した後の該吐出口25における液切れ性を向上できる。
【0053】
(g)前記ノズル22における先端側流路102の中心軸cを含む断面視で、前記先端面130の外周縁131に引いた接線tが、前記先端側筒状体120の外径から立上る立上り壁122と鋭角θに交差するものにした。ノズル22の吐出口25から内容液を吐出した後の該吐出口25における液切れ性を一層向上できる。
【0054】
以下、液体洗剤を吐出するポンプディスペンサーAの大流路面積a1、小流路面積a2、流路長L1、L2を変更した、本発明の実施例1、比較例1、比較例2の実験結果について説明する(
図6)。評価1として、各ポンプディスペンサーAが吐出した液体洗剤の衣類への塗布状態を評価し、評価2として、各ポンプディスペンサーAを一気に押し下げて液体洗剤を吐出したときの比較例1における押し下げ操作力をF=100%として評価した。液体洗剤としては、花王株式会社製のウルトラアタックNeoを用いた。
【0055】
実施例1は、a1<a2(a1=9.6mm
2、a2=1.8mm
2)、L1>L2(L1=38mm、L2=5mm)であり、評価1(塗布状態)については
図6(A)に示したように細目の一定液幅で連続状をなすものになり、評価2(押し下げ操作力)についてはF=110%となり、過大とはならず、適度な操作力となった。
【0056】
比較例1は、先端側流路と基端側流路とは同じ流路面積であり、a1=a2(a1=a2=9.6mm
2)であり、ノズルの流路長は43mmである。評価1(塗布状態)については
図6(B)に示したように太目の不連続状になった。評価2(押し下げ操作力)についてはF=100%であった。
【0057】
比較例2は、a1、a2を実施例1と同じにし、L1とL2をL1=L2=21.5mmとした。評価1(塗布状態)については
図6(C)に示す如くに細目の不連続状になった。評価2(押し下げ操作力)についてはF=140%になり、過大になった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、ポンプディスペンサーにおいて、吐出流量の大小にかかわらず、トリガーの押し下げ操作力を容易に調整可能にし、また吐出口から吐出される内容液の吐出流量を安定的に調整することができる。
【符号の説明】
【0059】
A ポンプディスペンサー
1 容器
22 ノズル
23 筒状体
24 流路
25 吐出口
50 トリガー
61 ピストン
101 基端側流路
102 先端側流路
110 基端側筒状体
120 先端側筒状体
122 立上り壁
130 先端面
131 外周縁
a1、a2 流路面積
L1、L2 流路長