(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23C 99/00 20060101AFI20230825BHJP
F23R 3/18 20060101ALI20230825BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20230825BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20230825BHJP
F23D 14/58 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F23C99/00 315
F23R3/18
F23R3/28 D
F23R3/42 A
F23D14/58 A ZAB
(21)【出願番号】P 2018247952
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合研究機構「水素利用等先導研究開発事業/大規模水素利用技術の研究開発/水素ガスタービン燃焼技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】餝 雅英
(72)【発明者】
【氏名】岡田 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 和樹
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522533(JP,A)
【文献】実開昭54-126239(JP,U)
【文献】特開2000-074372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23R 3/18
F23R 3/28
F23R 3/42
F23D 14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に燃焼室を形成する燃焼筒と、
同心状に配置された複数の環状燃料噴射ユニットを有する、前記燃焼室に燃料ガスと空気を噴射する燃料噴射器と、
を備え、
各環状燃料噴射ユニットは、
外周面および/または内周面に開口する、周方向に並べて配置された複数の燃料噴射孔を有する環状燃料噴射部材と、
前記環状燃料噴射部材の各燃料噴射孔から噴射される燃料ガスに対して空気を案内する複数の空気ガイド溝を有する環状空気ガイド部材と、
を有し、
前記燃料噴射器は、少なくとも1つの前記環状燃料噴射ユニットのガス通路を周方向に等間隔に隔離する、径方向に延びる複数の周方向隔離壁、および少なくとも2つの隣り合う前記環状燃料噴射ユニット間を径方向に隔離する、周方向に延びる径方向隔離壁の少なくとも一方の隔離壁を有する、
燃焼装置。
【請求項2】
内側に燃焼室を形成する燃焼筒と、
同心状に配置された複数の環状燃料噴射ユニットを有する、前記燃焼室に燃料ガスと空気を噴射する燃料噴射器と、
を備え、
各環状燃料噴射ユニットは、
外周面および/または内周面に開口する、周方向に並べて配置された複数の燃料噴射孔を有する環状燃料噴射部材と、
前記燃料噴射孔よりも空気の流れ方向における上流側に配置され、前記環状燃料噴射部材の各燃料噴射孔から噴射される燃料ガスに対して空気を案内する複数の空気ガイド溝を有する環状空気ガイド部材と、
を有し、
前記環状空気ガイド部材から空気の流れ方向における
下流側に突設されて、少なくとも1つの前記環状燃料噴射ユニットのガス通路を周方向に等間隔に隔離する、径方向に延びる複数の周方向隔離壁、および、前記環状空気ガイド部材から前記
下流側に突設されて、少なくとも2つの隣り合う前記環状燃料噴射ユニット間を径方向に隔離する、周方向に延びる径方向隔離壁の少なくとも一方の隔離壁を備える、
燃焼装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃焼装置において、少なくとも最外周に配置された前記環状燃料噴射ユニットに、複数の前記周方向隔離壁が設けられている燃焼装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の燃焼装置において、
前記周方向隔離壁が設けられる場合、当該周方向隔離壁は、少なくとも前記燃料噴射孔よりも空気の流れ方向における下流側に設けられており、
前記径方向隔離壁が設けられる場合、当該径方向隔離壁は、少なくとも前記燃料噴射孔よりも前記下流側に設けられている燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてガスタービンエンジンに使用される燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆる低炭素社会の実現に向けて、燃料に水素を利用するガスタービンエンジンが提案されている。もっとも、水素を含有する燃料のような燃焼速度が大きい燃料では、燃焼温度が高くなることからNOxが発生しやすい。また、燃焼速度が大きい燃料を燃焼させる場合は燃焼室で発生した火炎がバーナ側に戻ってくる逆火現象が生じ易い。
【0003】
水素のような高反応性のガスを燃料として利用しながら、低NOx燃焼および逆火防止を実現するための燃焼装置として、燃料を噴射する複数の環状部材を同心状に配置し、各環状部材に設けられた多数の燃料噴射孔から径方向に、燃料を分散させて噴射し、かつ燃料噴射孔から噴射された燃料にほぼ直交する方向に、燃焼室側に向けて空気を流す構成の燃料噴射器を用いるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造を有する燃焼装置によれば、燃料の多点噴射によって局所的な高温燃焼の発生が抑制されるので低NOx燃焼が可能になる。さらに、径方向に噴射された燃料に、燃焼室側に向けて空気が供給されることによって、逆火現象の発生が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された燃焼装置では、燃料噴射器が全体として平板状に近い形状を有していることから、燃焼振動が発生しやすい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、燃焼速度の大きい燃料を利用する燃焼装置において、低NOx燃焼および逆火防止を実現し、かつ燃焼振動を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る燃焼装置は、
内側に燃焼室を形成する燃焼筒と、
同心状に配置された複数の環状燃料噴射ユニットを有する、前記燃焼室に燃料ガスと空気を噴射する燃料噴射器とを備えており、
各燃料噴射ユニットは、
外周面および/または内周面に開口する、周方向に並べて配置された複数の燃料噴射孔を有する環状燃料噴射部材と、
前記環状燃料噴射部材の各燃料噴射孔から噴射される燃料ガスに対して空気を案内する複数の空気ガイド溝を有する環状空気ガイド部材と、
を有し、
少なくとも1つの前記環状燃料噴射ユニットのガス通路を周方向に等間隔に隔離する、径方向に延びる複数の周方向隔離壁、および少なくとも2つの隣り合う前記環状燃料噴射ユニット間を径方向に隔離する、周方向に延びる径方向隔離壁の少なくとも一方の隔離壁を備えている。
【0008】
この構成によれば、複数の環状燃料噴射部材と環状空気ガイド部材を備えることによって、低NOx燃焼と逆火防止が実現できる。さらに、環状燃料噴射ユニットを周方向または径方向に隔離する隔離壁を設けることによって火炎の移動が制限されるので、燃焼振動の発生が抑制される。
【0009】
本発明の一実施形態において、少なくとも最外周に配置された前記環状燃料噴射ユニットに、複数の前記周方向隔離壁が設けられていてもよい。この構成によれば、最も燃焼振動が発生し易い最外周の環状燃料噴射ユニットにおいて火炎の周方向の移動を制限することにより、効果的に燃焼振動を抑制することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記周方向隔離壁および前記径方向隔離壁は、少なくとも前記燃料噴射孔よりも下流側に設けられていてもよい。この構成によれば、火炎が存在する部分に隔離壁を設けることによって、効果的に燃焼振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る燃焼装置によれば、低NOx燃焼および逆火防止を実現し、かつ燃焼振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃料噴射器が適用されるガスタービンエンジンの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る燃焼装置を示す断面図である。
【
図3】
図2の燃焼装置に使用される燃料噴射器の例を示す斜視図である。
【
図4】
図3の燃料噴射器の一部を拡大して示す正面図である。
【
図5】
図2の燃焼装置に使用される燃料噴射器の環状燃料噴射ブロックを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1に、本発明の一実施形態に係る燃焼装置が適用されるガスタービンエンジン(以下、単に「ガスタービン」と称する。)GTの概略構成を示す。ガスタービンGTは、導入した空気を圧縮機1で圧縮して燃焼装置3に導き、燃料を燃焼装置3内に噴射して燃焼させ、得られた高温高圧の燃焼ガスGによりタービン5を駆動する。燃焼装置3は、例えば、ガスタービンGTの軸心の周りに環状に複数個配置されるキャン型の燃焼装置である。タービン5は圧縮機1に回転軸7を介して連結されており、タービン5によって圧縮機1が駆動される。このガスタービンGTの出力により、航空機のロータまたは発電機などの負荷Lを駆動する。以下の説明において、ガスタービンGTの軸心方向における圧縮機1側を「前側」と呼び、タービン5側を「後側」と呼ぶ。
【0015】
図2に示すように、燃焼装置3は、内側に燃焼室11を形成する燃焼筒13と、燃焼室11に燃料ガス(以下、単に「燃料」という。)Fと空気Aを噴射する燃料噴射器15とを備えている。燃料噴射器15は、燃焼筒13の頂部(最上流部)13aに取り付けられている。燃料噴射器15から噴射された燃料Fと空気Aに、燃焼筒13に設けられた点火装置Pで点火することにより、燃焼室11内に火炎が形成される。これら燃焼筒13および燃料噴射器15は、燃焼装置3の外筒となるほぼ円筒状のハウジングHに同心状に収容されている。
【0016】
本実施形態では、燃焼装置3は空気Aと燃焼ガスGとの流動方向が逆向きの逆流型として構成されている。すなわち、燃焼装置3は、ハウジングHと燃焼筒13および燃焼筒13から前方へ筒状に延びる支持筒17との間に形成された空気導入通路19を有しており、この空気導入通路19は、圧縮機1(
図1)で圧縮された空気Aを、燃焼室11内の燃焼ガスGの流動方向と逆方向に導く。なお、燃焼装置3は、空気Aと燃焼ガスGとの流動方向が同じ向きの軸流型であってもよい。支持筒17の周壁の前端部には、複数の空気導入孔21が周方向に並べて設けられている。空気導入通路19を通って送られてきた空気Aは、空気導入孔21を通って、支持筒17の内方に形成された空気供給通路23に導入され、後方、すなわち燃焼室11の方向へ送られる。
【0017】
図3に示すように、燃料噴射器15は、複数の環状燃料噴射ユニット25を備えている。
図4に示すように、各環状燃料噴射ユニット25は、環状燃料噴射部材27および環状空気ガイド部材29を有している。環状燃料噴射部材27は、外周面および/または内周面に開口する、周方向に並べて配置された複数の燃料噴射孔31を有している。図示の例では、環状燃料噴射部材27は、外周面に開口する複数の外側燃料噴射孔31Aおよび内周面に開口する複数の内側燃料噴射孔31Bを有している。各燃料噴射孔31から燃料Fが噴射される。
【0018】
環状空気ガイド部材29は、環状燃料噴射部材27の各燃料噴射孔31から噴射される燃料Fに対して空気Aを案内する複数の空気ガイド溝33を有する環状部材である。図示の例では、環状燃料噴射部材27の径方向外側に配置されて、各外側燃料噴射孔31Aから噴射される燃料に対して空気を案内する外側環状空気ガイド部材29Aと、環状燃料噴射部材27の径方向内側に配置されて、各内側燃料噴射孔31Bから噴射される燃料に対して空気を案内する内側環状空気ガイド部材29Bとが設けられている。この例では、径方向に隣り合う環状燃料噴射ユニット25,25間で、外周側の環状燃料噴射ユニット25の内側環状空気ガイド部材29Bと内周側の環状燃料噴射ユニット25の外側環状空気ガイド部材29Aとが一体的に形成されている。
【0019】
本実施形態では、
図3に示すように、径寸法が互いに異なる3つの環状燃料噴射ユニット25が、互いに同心状に、かつ燃焼装置3(
図2)と同心状に配置されている。これら複数の環状燃料噴射ユニット25は、その最外周を覆う円筒状の支持カバー35に支持されている。以下の説明では、必要に応じて、3つの環状ユニット25を外周側から順に第1環状燃料噴射ユニット25A~第3環状燃料噴射ユニット25Cと区別して呼ぶ場合がある。なお、環状燃料噴射ユニット25の数は、2つ以上であれば、特に限定されない。
【0020】
図2に示すように、燃焼装置3は、燃料噴射器15の各環状燃料噴射ユニット25の環状燃料噴射部材27に燃料Fを供給可能な複数の燃料供給路を有している。燃料噴射器15には、空気供給通路23の中心部からハウジングHの後方へかけて延びる燃料供給母管39が設けられている。燃料供給母管39と各環状燃料噴射ユニット25とは、互いに独立に分岐する分岐燃料供給管41によって接続されている。燃料供給母管39は、2つの円筒管を同心状に重ねた多管式構造(二重管構造)を有している。内側の燃料供給管の内方空間およびこれに連通する分岐燃料供給管41の内方空間が、第1燃料供給路43を形成し、内外の燃料供給管の間の空間およびこれに連通する分岐燃料供給管41の内方空間が、第2燃料供給路45を形成している。燃料供給母管39内の各燃料供給路43,45には、燃料導入系統ISから燃料が導入される。
【0021】
本実施形態では、第1燃料供給路43を通った燃料は、複数の環状燃料噴射ユニット25のうちの内径側に配置された2つの環状燃料噴射ユニット25B,25Cへ供給され、第2燃料供給路45を通った燃料Fは、第2燃料供給路45に接続された1つの分岐燃料供給管41を介して、複数の環状燃料噴射ユニット25のうち最外径側に配置された1つの環状燃料噴射ユニット25Aへ供給される。
【0022】
なお、燃料供給母管39の多管式構造は、複数の管を用いて互いに独立した複数の燃料供給路を形成できるのであれば、
図2の例に限らない。例えば、1つの大径の母管の中に、これより小径の同一径の複数の燃料供給管を平行に延設した多管式構造でもよい。
【0023】
このような燃料供給構造とすることにより、ガスタービンGTの低負荷(部分負荷)から高負荷(定格負荷)までの出力変化に対して、燃料供給を行う環状燃料噴射ユニット25と燃料供給を行わない環状燃料噴射ユニット25とに分けることにより対応するステージング燃焼が可能となる。本実施形態のように、燃料を燃料噴射器15の複数の環状燃料噴射ユニット25の多数の燃料噴射孔31に分散させて噴射する場合には、すべての環状燃料噴射ユニット25において均一的に燃料供給量を変化させるよりも、作動させる環状燃料噴射ユニット25と作動させない環状燃料噴射ユニット25を選択することによって負荷変動に対応することが、安定的かつ低NOx燃焼のために効果的である。もっとも、燃料噴射器15へ燃料を供給する構造はこの例に限定されない。
【0024】
図5に示すように、環状燃料噴射部材27は、断面外形がほぼ矩形に形成されており、燃焼室11に面する後壁27aが、軸心C方向に垂直となるよう配置されている。環状燃料噴射部材27の内部には環状空間である燃料導入室47が形成されている。図示の例では、燃料噴射孔31は、環状燃料噴射部材27の外周壁27bおよび内周壁27cのそれぞれに、外周壁27bおよび内周壁27cを径方向Rに貫通して、燃料導入室47と環状燃料噴射部材27の外部とを連通させる貫通孔として設けられている。燃料は、環状燃料噴射部材27の前壁27dに接続された燃料供給路(この例では分岐燃料供給管41)から燃料導入室47に供給された後、燃料噴射孔31から噴射される。もっとも、環状燃料噴射部材27の内部構造はこの例に限定されない。なお、燃料噴射孔31は、径方向Rに対して軸心C方向に、-10°から+80°までの範囲で傾斜していてもよい。ここで、径方向Rに対して軸心C方向上流側に燃料噴射孔31が傾斜する場合の傾斜角をマイナスの傾斜角とし、径方向Rに対して軸心C方向下流側に燃料噴射孔31が傾斜する場合の傾斜角をプラスの傾斜角とする。
【0025】
環状燃料噴射部材27から噴射された燃料は、環状空気ガイド部材29によってガイドされた空気と予混合されて燃焼室11へ噴射される。環状空気ガイド部材29は、環状燃料噴射部材27の燃料噴射孔31よりも前側、すなわち空気Aの流れ方向における上流側に配置されている。このように、各燃料噴射孔31から噴射される燃料Fに対して上流から空気Aを軸心C方向に案内するように環状空気ガイド部材29を設けることにより、燃料Fと空気Aとが互いにほぼ直交する向きに交わることとなり、燃料Fと空気Aを均一に混合させることができる。
【0026】
なお、各環状燃料噴射部材27は、外側燃料噴射孔31Aおよび内側燃料噴射孔31Bのいずれか一方の燃料噴射孔のみを有していてもよい。その場合には、環状燃料噴射ユニット25は、環状燃料噴射部材27と、環状燃料噴射部材27に形成された外側燃料噴射孔31Aまたは内側燃料噴射孔31Bに対応する外側環状空気ガイド部材29Aまたは内側環状空気ガイド部材29Bとによって構成される。
【0027】
本実施形態では、
図2に示すように、燃料噴射器15に、周方向隔離壁51および径方向隔離壁53が設けられている。周方向隔離壁51は、環状燃料噴射ユニット25のガス通路55を周方向に等間隔に隔離する、径方向に延びる平板状部材である。周方向隔離壁51は、複数(この例では6つ)設けられている。この例では、最外周の第1環状燃料噴射ユニット25Aにのみ周方向隔離壁51が設けられている。なお、本明細書における環状燃料噴射ユニット25のガス通路55とは、環状燃料噴射ユニット25において空気A,燃料ガスFまたはこれらの混合気が通る空間、具体的には環状空気ガイド部材29から燃焼室11までの間のこれらのガスが通過する領域を指す。
【0028】
径方向隔離壁53は、2つの隣り合う前記環状燃料噴射ユニット25間を径方向に隔離する、周方向に延びる板状部材、換言すれば円筒状部材である。この例では、第1環状燃料噴射ユニット25Aと第2環状燃料噴射ユニット25Bとの間、および第2環状燃料噴射ユニット25Bと第3環状燃料噴射ユニット25Cとの間にそれぞれ1つの径方向隔離壁53が設けられている。
【0029】
周方向隔離壁51は、環状燃料噴射ユニット25における火炎の周方向の移動を制限することによって燃焼振動を抑制する。周方向隔離壁51は、第1環状燃料噴射ユニット25Aに限らず、複数の環状燃料噴射ユニット25のうち少なくとも1つの環状燃料噴射ユニット25に設けられていればよい。もっとも、火炎の周方向移動は最外周の環状燃料噴射ユニット25において最も生じやすいから、少なくとも第1環状燃料噴射ユニット25Aに複数の周方向隔離壁51を設けることによって、効率的に燃焼振動の発生を抑制することができる。
【0030】
径方向隔離壁53は、隣り合う環状燃料噴射ユニット25間での火炎の移動を制限することによって燃焼振動を抑制する。径方向隔離壁53は、必ずしも本実施形態のようにすべての環状燃料噴射ユニット25間に設けられていなくともよく、少なくとも2つの隣り合う環状燃料噴射ユニット25間に設けられていればよい。
【0031】
また、燃料噴射器15に周方向隔離壁51および径方向隔離壁53の両方の隔離壁を設けることによって、極めて効果的に燃焼振動を抑制することができるが、周方向隔離壁51および径方向隔離壁53の少なくとも一方の隔離壁が設けられていれば、燃焼振動抑制の効果を得ることができる。
【0032】
図5に示すように、周方向隔離壁51および径方向隔離壁53は、少なくとも燃料噴射孔31よりも下流側に設けられている。図示の例では、周方向隔離壁51および径方向隔離壁53は、環状空気ガイド部材29の後面から下流側に突設されている。周方向隔離壁51は、具体的には、環状燃料噴射部材27の外周壁に接する外周部51aと、環状燃料噴射部材27の内周壁に接する内周部51bと、外周部51aおよび内周部51bの後方(下流側)で外周部51aと内周部51bとを繋ぐように径方向に延び、かつ環状燃料噴射部材27の後壁27aに接する連接部51cとを有している。換言すれば、周方向隔離壁51は、側面視で、外周部51a、内周部51bおよび連接部51cからなる略U字形状に形成されている。
【0033】
このように、周方向隔離壁51および径方向隔離壁53を、少なくとも燃料噴射孔31よりも下流側、すなわち、火炎が存在する部分に設けることによって、効果的に燃焼振動を抑制することができる。
【0034】
以上説明した、本実施形態に係る燃焼装置3によれば、複数の環状燃料噴射部材27と環状空気ガイド部材25を備えることによって、低NOx燃焼と逆火防止が実現できる。さらに、環状燃料噴射ユニット25を周方向または径方向に隔離する隔離壁51,53を設けることによって火炎の移動が制限されるので、燃焼振動の発生が抑制される。
【0035】
なお、本実施形態では、キャン型の燃焼装置を例として説明したが、他のタイプ、例えばアニュラ型の燃焼装置にも上記構成を適用することができる。
【0036】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
3 燃焼装置
11 燃焼室
13 燃焼筒
15 燃料噴射器
25 環状燃料噴射ユニット
27 環状燃料噴射部材
29 環状空気ガイド部材
29A 外側環状空気ガイド部材
29B 内側環状空気ガイド部材
31 燃料噴射孔
31A 外側燃料噴射孔
31B 内側燃料噴射孔
33 空気ガイド溝
51 周方向隔離壁
53 径方向隔離壁
55 環状燃料噴射ユニットのガス通路