(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】クロム触媒を用いた気相接触フッ素化
(51)【国際特許分類】
C07C 17/35 20060101AFI20230825BHJP
B01J 23/26 20060101ALI20230825BHJP
B01J 23/92 20060101ALI20230825BHJP
B01J 38/10 20060101ALI20230825BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20230825BHJP
B01J 38/46 20060101ALI20230825BHJP
C07C 17/087 20060101ALI20230825BHJP
C07C 19/08 20060101ALI20230825BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20230825BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230825BHJP
【FI】
C07C17/35
B01J23/26 Z
B01J23/92 Z
B01J38/10 B
B01J38/12 B
B01J38/46
C07C17/087
C07C19/08
C07C21/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018530784
(86)(22)【出願日】2016-12-07
(86)【国際出願番号】 FR2016053236
(87)【国際公開番号】W WO2017103378
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-11-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-13
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥール-ベール, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ガレ, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ピガモ, アン
(72)【発明者】
【氏名】ベンドリンガー, ローラン
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-92141(JP,A)
【文献】国際公開第2014/120493(WO,A1)
【文献】Applied Catalysis B:Environmental、2014年10月8日、Vol.165、p.200~208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07B,B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの塩素原子を有する塩素化C3アルカン又はアルケン化合物を少なくとも1つのフッ素原子を有するフッ素化C3アルカン又はアルケン化合物へとフッ素化するための方法であって:
(a)反応器内において、フッ素化触媒の存在下で、気相中、塩素化
C3アルカン又はアルケン化合物をフッ化水素と接触させてフッ素化
C3アルカン又はアルケン化合物を生成する工程、及び
(b)工程
(a)で使用したフッ素化触媒を再生する工程
を含み、フッ素化触媒を再生する工程(b)が、(c)前記フッ素化触媒を、酸化剤含有ガス流で処理し、酸化フッ素化触媒を形成する工程、及び(d)工程(c)で得られた酸化フッ素化触媒を、還元剤
、HF及び不活性ガスを含むガス混合物で処理する工程を含み;工程
(b)で再生された触媒が、工程
(a)で再利用され、還元剤が、
少なくとも1つの塩素原子を含むC
3
ヒドロハロカーボンであり、工程(d)のガス混合物が、ガス混合物の総体積に基づいて、2から9体積%の還元剤を含
み、不活性ガスが窒素、ヘリウム、アルゴン、又はこれらの混合物より選択される、方法。
【請求項2】
工程(d)が、100℃から450℃の範囲の温度、及び1から100秒の接触時間で、1時間を超える時間にわたって実施される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
塩素化
C3アルカン又はアルケン化合物が、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)、1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)、1,1,3-トリクロロプロペン(HCO-1240za)又は3,3,3-トリクロロプロペン(HCO-1240zf)である、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
フッ素化
C3アルカン又はアルケン化合物が、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3-テトラフルオロ-3-クロロプロパン(HCFC-244fa)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、又は2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
塩素化
C3アルカン又はアルケン化合物からフッ素化
C3アルカン又はアルケン化合物へのフッ素化が:
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ
のフッ素化である、請求項1か
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フッ素化触媒が、オキシフッ化クロム、クロム酸化物、ハロゲン化クロム及びこれらの混合物を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
フッ素化触媒が、Co、Zn、Mn、Mg、V、Mo、Te、Nb、Sb、Ta、Niからなる群より選択される遷移金属の塩;又は亜リン酸塩を含む一又は複数の共触媒を含有する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)の前に実施される活性化工程を含
み、活性化工程がフッ素化触媒を酸素、空気、塩素又は酸素と窒素との混合物から選択される酸化剤を含有するガス流と接触させる第1の工程を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
活性化工程が、第1の工程の後で、第1の工程後に得られるフッ素化触媒を、水素又はC
2-C
6ヒドロハロカーボンである還元剤及び不活性ガスを含有するガス混合物で処理する第2の工程を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)及び(b)が交互に実施される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応器のパージが、工程(b)の前に及び/又は後で実施される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンへとフッ素化するための方法であって:
(a)反応器内において、フッ素化触媒の存在下で、気相中、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンをフッ化水素と接触させて1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンを生成する工程、及び
(b)工程
(a)で使用したフッ素化触媒を再生する工程
を含み、フッ素化触媒を再生する工程(b)が、(c)前記フッ素化触媒を、酸化剤含有ガス流で処理し、酸化フッ素化触媒を形成する工程、及び(d)工程(c)で得られた酸化フッ素化触媒を、還元剤
及びHFを含むガス混合物で処理する工程を含み;工程
(b)で再生された触媒が工程
(a)で再利用され、還元剤が、
少なくとも1つの塩素原子を含むC
3
ヒドロハロカーボンであり、工程(d)のガス混合物が、ガス混合物の総体積に基づいて、2から9体積%の還元剤を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触気相フッ素化法に関する。好ましくは、本発明は、フッ化水素の存在下において塩素化化合物をフッ素化化合物へとフッ素化するための接触気相法に関する。特に、本発明は、再生される触媒の存在下においてフッ素化反応が実施される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン層の保護に関するモントリオール議定書は、クロロフルオロカーボン(CFC)の使用を段階的に廃止することを義務付けた。ハイドロフルオロカーボン(HFC)(例えばHFC-134a)といったオゾン層にやさしい物質がクロロフルオロカーボンに取って代わった。後者の化合物は、地球温暖化を引き起こす温室ガスであることが証明されている。この化合物は、気候変動に関する京都議定書によって規制された。地球的気候変動が引き続き懸念されることにより、オゾン層破壊係数(ODP)及び地球温暖化係数(GWP)が共に高いこの化合物に代わる技術の開発がますます必要とされている。ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、非オゾン層破壊性化合物であり、溶媒、洗浄剤及び伝熱流体としてクロロフルオロカーボン(CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替物として同定されているが、依然として大きなGWPを有する傾向にある。ハイドロフロオロオレフィン(HFO)が、ODPがゼロであり且つGWPの低い代替物候補として同定された。
【0003】
そのため、多数の文献に、HFO-1234yfを含むこのようなHFOを作製するための方法が記載されている。
【0004】
例えば、国際公開第2007/079431号には、ハイドロフルオロプロペンを含む、フッ素化オレフィンの生成方法が開示されている。単一反応又は二以上の反応として広く記載されるこの方法は、式C(X)mCCl(Y)nC(X)m(式中、X、Y及びZの各々は、独立して、H、F、Cl、I又はBrであり、各mは、独立して、1、2又は3であり、nは0又は1である)の化合物の、少なくとも1つの式CF3CF=CHZの化合物へのフッ素化を含む。HFO-1234yfは、HFCO-1233xfを1,1,1,2-テトラフルオロ-2-クロロプロパン(HCFC-244bb)へとフッ素化し、続いて脱塩化水素することにより調製される。HFCO-1233xfは、対応する塩素化前駆体(CCl2=CClCH2Cl)のフッ素化により調製される。
【0005】
EP-A-939071には、多くの可能性の中でも、(極めて長いリストによる)ハロゲン化プロペンの、フッ素化プロペン(リストにHFO-1234yfを含む)への気相フッ素化が開示されている。
【0006】
国際公開第2008/054781号には、任意選択的に触媒の存在下において、ハロプロパン又はハロプロペンとHFとを反応させることにより、様々なフルオロプロパン及びハロフルオロプロペンを生成するための様々な方法が開示されている。この文献は、触媒上、特にCr/Co(98/2)上で、HFの存在下において2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)を反応させることにより、HFO-1234yfを作製するための方法を開示する。反応生成物は、HFO-1234yf及びHFCO-1233xfを含み、後者が主生成物である;他の生成物は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233zd)と、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)及び1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234ze)である。
【0007】
国際公開第2008/002500号には、脱フッ化水素触媒上での1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb)の接触転換による、HFO-1234yfとHFO-1234zeの混合物の作製方法が開示されている。
【0008】
国際公開第2008/040969号には、HCFC-243dbの、HFCO-1233(xf並びにzd)への脱塩化水素、及び脱塩化水素による1,1,1,2-テトラフルオロ-2-クロロプロパン(HCFC-244bb)の形成とその後の所望のHFO-1234yfの形成とを含む後続反応を含む方法が開示されている。前記文献の実施例1には、HFO-1234yfとHFCO-1233xfが少量のHFC-245cbと共に形成される、Zn/二酸化クロム触媒上でのHCFC-243dbとHFとの大気圧下での気相反応が開示されている。
【0009】
国際公開第2009/015317号には、触媒上及び少なくとも1つの安定剤の存在下における、塩素化化合物(1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)又は2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)でありうる)とHFとの気相での反応が開示されている。この方法は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)を得ることを可能にする。
【0010】
米国特許出願公開第2009/0240090号には、式(I)CX2=CClCH2X又は式(II)CX3CCl=CH2又は式(III)CX3CHClCH2Xの化合物(式中、X=F、Cl、Br、I)から出発する、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)の作製方法が開示されている。この方法は三工程を含み、それらの後に精製を行うことができる。この方法は、変換及び収率を高めることを可能にするリサイクル工程を含む。
【0011】
国際公開第2010/123154号は、酸素及びクロム酸化物又はフッ素化クロム酸化物を含む触媒の存在下でHFと反応させることにより、HFCO-1233xfから出発してHFO-1234yfを生成するための方法を目的としている。
【0012】
国際公開第2012/098421号及び同第2012/098422号は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン又は1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパンを接触気相フッ素化して2,2,2,3-テトラフルオロプロペンを生成するための方法に関する。触媒の再生は、酸化剤の存在下において実施される。
【0013】
依然として、特に改善された変換率及び/又は改善された選択性を有する、及び/又はさらに長い期間にわたって有効な、HFO-1234yfといったフルオロオレフィンを作製するための改善された方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0014】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの塩素原子を有する塩素化C3アルカン又はアルケン化合物を少なくとも1つのフッ素原子を有するフッ素化C3アルカン又はアルケン化合物へとフッ素化するための方法を提供し、この方法は:
(a)反応器内において、フッ素化触媒の存在下で、気相中、塩素化化合物をフッ化水素と接触させてフッ素化化合物を生成する工程、及び
(b)工程a)で使用したフッ素化触媒を再生する工程
を含み、フッ素化触媒を再生する工程(b)が、(c)前記フッ素化触媒を、酸化剤含有ガス流で処理し、酸化フッ素化触媒を形成する工程、及び(d)工程(c)で得られた酸化フッ素化触媒を、還元剤及び不活性ガスを含むガス混合物で処理する工程を含み;工程b)で再生された触媒が、工程a)で再利用され、還元剤が、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン及びC1-C10ヒドロハロカーボンからなる群より選択される。
【0015】
本方法は、変換及び反応の選択性を向上させることができる。実際、フッ素化触媒を本発明において必要とされる再生工程に供することにより、特にそのように再生されたフッ素化触媒が工程a)において使用されるとき、副生成物の存在が制限又は回避されることが観察された。
【0016】
別の実施態様では、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン又はこれらの混合物から選択される。好ましくは、還元剤がC1-C10ヒドロハロカーボンであるとき、ガス混合物はHFを含む。
【0017】
好ましい一実施態様では、還元剤はガス状還元剤である。好ましくは、還元剤は、水素又はC1-C10ヒドロハロカーボンからなる群より選択され、特に還元剤は水素及びC2-C6ヒドロハロカーボンからなる群より選択される。
【0018】
好ましい一実施態様では、工程(d)のガス混合物は、ガス混合物の総体積に基づいて、1から10体積%、好ましくは2から9体積%、さらに好ましくは3から7体積%の還元剤を含む。
【0019】
好ましくは、工程(d)からのガス混合物は、水素及び窒素又はアルゴンを含み、好ましくは水素及び窒素からなる;或いは工程(d)からのガス混合物は、C2-C6ヒドロハロカーボン、窒素又はアルゴン及びHFを含み、好ましくは工程(d)からのガス混合物は、C3ヒドロハロカーボン、窒素及びHFを含む。
【0020】
好ましくは、工程(d)は、100℃から450℃の範囲の温度及び1から100秒、好ましくは1から75秒、さらに好ましくは5から50秒の接触時間で、1時間を超える時間、好ましくは1から50時間、特に4から25時間にわたって実施される。
【0021】
好ましい一実施態様では、塩素化化合物は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)、1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)、1,1,3-トリクロロプロペン(HCO-1240za)、3,3,3-トリクロロプロペン(HCO-1240zf)からなる群より選択され;さらに好ましくは、塩素化化合物は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)からなる群より選択される。
【0022】
好ましい一実施態様では、フッ素化化合物は、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3-テトラフルオロ-3-クロロプロパン(HCFC-244fa)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)である。
【0023】
好ましくは、塩素化化合物とフッ素化化合物は異なる。例えば、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)が塩素化化合物であるとき、工程a)で得られるフッ素化化合物は2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)とは異なる。加えて、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)が、工程a)で得られるフッ素化化合物であるとき、工程a)で出発物質として使用される塩素化化合物は2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)とは異なる。
【0024】
好ましい一実施態様では、塩素化化合物のフッ素化化合物へのフッ素化は:
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,2,2,3- ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ
のフッ素化である。
【0025】
好ましい一実施態様では、フッ素化触媒は、オキシフッ化クロム、クロム酸化物、ハロゲン化クロム、及びこれらの混合物を含む。ハロゲン化クロムは、フッ化クロム及び/又は塩化クロムを指す。
【0026】
好ましい一実施態様では、フッ素化触媒は、Co、Zn、Mn、Mg、V、Mo、Te、Nb、Sb、Ta、Niからなる群より選択される遷移金属の塩;又は亜リン酸塩を含む一又は複数の共触媒も含みうる。
【0027】
好ましい一実施態様では、方法は、工程(a)の前に実施される活性化工程を含み、活性化工程は、フッ素化触媒を、酸素、空気、塩素又は酸素と窒素との混合物から選択される酸化剤を含むガス流と接触させる第1の工程を含む。
【0028】
好ましい一実施態様では、活性化工程は、第1の工程の後で、第1の工程後に得られるフッ素化触媒を、水素又はC2-C6ヒドロハロカーボンである還元剤と不活性ガスとを含むガス混合物と接触させる第2の工程も含みうる。
【0029】
好ましい一実施態様では、工程(a)及び(b)は交互に実施されうる。
【0030】
好ましい一実施態様では、工程(a)及び(b)は単一の反応器内で実施される。さらに、本明細書において規定される活性化工程は、本発明の方法による工程(a)及び(b)に使用されるものと同じ反応器内で実施されてもよい。
【0031】
好ましい一実施態様では、工程(b)の前に及び/又は後で、即ちフッ素化反応と再生工程との間及び/又は再生工程の最後とフッ素化反応との間に、そのように再生されたフッ素化触媒を用いて、反応器のパージを実施してもよい。前記パージは、反応器を真空下に維持することによって、又は反応器内に含まれる気相成分を置換するために窒素の流れを反応器内に導入することによって、工程b)の前に又は後で、実施することができる。代替的に、パージは、反応器内に含まれる気相成分を置換するために反応器内に空気又は酸素と窒素の混合物といった酸化剤の流れを導入することにより、工程b)の前に又は後で、実施することができる。パージは、室温から400℃の範囲の温度で;好ましくは大気圧から5バールの範囲の絶対圧力で;及び好ましくは1時間から50時間の範囲の時間にわたって、実施されうる。
【0032】
第2の態様では、本発明は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンへとフッ素化するための方法を提供し、この方法は:
(a)反応器内において、フッ素化触媒の存在下で、気相中、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンをフッ化水素と接触させて1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンを生成する工程、及び
(b)工程a)で使用したフッ素化触媒を再生する工程
を含み、フッ素化触媒を再生する工程(b)が、(c)前記フッ素化触媒を酸化剤含有ガス流で処理して酸化フッ素化触媒を形成する工程、及び(d)工程(c)で得られた酸化フッ素化触媒を、還元剤を含むガス混合物で処理する工程を含み;工程b)で再生された触媒が工程a)で再利用され、還元剤が、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン及びC1-C10ヒドロハロカーボンからなる群より選択される。
【0033】
還元剤、酸化剤、触媒、再生工程及び活性化工程は、本発明の第1の態様に関して上記及び/又は下記に規定される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書において使用される用語「C1-C10ヒドロハロカーボン」は、少なくとも1つのハロゲン原子、好ましくはF又はClを有するC1-C10アルカン、C2-C10アルケン、C2-C10アルキンを指す。好ましくは、C1-C10ヒドロハロカーボンは、少なくとも1つのハロゲン原子、好ましくはF又はClを有するC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンを指す。さらに好ましくは、C1-C10ヒドロハロカーボンは、以下に定義される塩素化化合物、即ち少なくとも1つの塩素原子を有するC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンでありうる。特に、C1-C10ヒドロハロカーボンは、少なくとも1つの塩素原子を含むC3ヒドロハロカーボンである。
【0035】
本発明は、化合物のフッ素化のための方法に関する。驚くべきことに、本フッ素化法に用いられるフッ素化触媒の再生を実施することにより、副生成物の存在を制限又は回避することができることが発見された。
【0036】
したがって、第1の態様において、本発明は、塩素化化合物をフッ素化化合物へとフッ素化するための方法に関する。前記方法は、(a)塩素化化合物を フッ素化触媒の存在下で、気相中、フッ化水素と接触させて、フッ素化化合物を生成する工程、及び(b)工程(a)で用いた前記フッ素化触媒を再生する工程を含む。特に、フッ素化触媒を再生する工程(b)は、(c)前記フッ素化触媒を、酸化剤含有ガス流で処理し、酸化フッ素化触媒を形成すること、及び(d)工程(c)で得られた酸化フッ素化触媒を、還元剤を含むガス混合物で処理することを含む。
【0037】
「塩素化化合物」は塩素原子を有する任意の分子とすることができ、「フッ素化化合物」はフッ素原子を有する任意の分子とすることができる。
【0038】
好ましくは、塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子を有する直鎖状又は分岐状のC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンである。用語「C2-C6アルカン」は、2、3、4、5又は6の炭素原子を有するアルカンを指す。用語「C2-C6アルケン」は、2、3、4、5又は6の炭素原子を有するアルケンを指す。塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子を有する、C2-C5アルカン、好ましくはC2-C4アルカン、さらに好ましくはC3-C4アルカン、最も好ましくはC3アルカンでありうる。塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子を有する、C2-C5アルケン、好ましくはC2-C4アルケン、さらに好ましくはC3-C4アルケン、最も好ましくはC3アルケンでありうる。前記塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子を有しうる。前記塩素化化合物は、1、2、3、4、5、又は6の塩素原子を有しうる。したがって、前記塩素化化合物は、1から6の塩素原子、好ましくは1から5の塩素原子又は2から5の塩素原子を有する、直鎖状又は分岐状のC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンでありうる。本明細書に定義される、少なくとも1つの塩素原子を有する直鎖状又は分岐状のC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンは、塩素原子に加えて一又は複数のハロゲン原子を有してもよく、前記ハロゲン原子はF、I及びBrから選択され;好ましくはFである。好ましい一実施態様では、本明細書に定義される塩素化化合物中のハロゲン原子の総数は、F、Cl、Br及びIから選択される、2から5のハロゲン原子、好ましくは3から5のハロゲン原子、さらに好ましくは4から5のハロゲン原子であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つは塩素原子である。
【0039】
好ましくは、塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子;及び好ましくは0から5のフッ素原子を有するC3アルカン化合物である。塩素化化合物は、1、2、3、4、5、又は6の塩素原子を有するC3アルカン化合物とすることができ;好ましくはフッ素原子を含まないか又は1、2、3、4、若しくは5のフッ素原子を含む。好ましくは、塩素化化合物は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。さらに好ましくは、塩素化化合物は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり、ハロゲン原子のうち、最大で4つがフッ素原子であり、少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。
【0040】
好ましくは、塩素化化合物は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子;及び好ましくは0から3のフッ素原子を有するC3アルケン化合物である。塩素化化合物は、1、2、3、又は4の塩素原子を有するC3アルケン化合物でもよく;好ましくはフッ素原子を含まないか又は1、2、3、若しくは4のフッ素原子を含む。好ましくは、塩素化化合物は、Cl及びFから選択される3又は4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。さらに好ましくは、塩素化化合物は、Cl及びFから選択される3又は4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり、ハロゲン原子のうち、最大で3つがフッ素原子であり、少なくとも1つが塩素原子である。
【0041】
さらに好ましくは、塩素化化合物は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)、1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)、1,1,3-トリクロロプロペン(HCO-1240za)、3,3,3-トリクロロプロペン(HCO-1240zf)からなる群より選択される。
【0042】
特に、塩素化化合物は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)からなる群より選択される。
【0043】
好ましくは、フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子を有する直鎖状又は分岐状のC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンである。フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子を有する、C2-C5アルカン、好ましくはC2-C4アルカン、さらに好ましくはC3-C4アルカン、最も好ましくはC3アルカンでありうる。フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子を有する、C2-C5アルケン、好ましくはC2-C4アルケン、さらに好ましくはC3-C4アルケン、最も好ましくはC3アルケンでありうる。
【0044】
前記フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子、好ましくは少なくとも2つのフッ素原子、さらに好ましくは少なくとも3つのフッ素原子を有する直鎖状又は分岐状のC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンでありうる。フッ素化化合物は、1、2、3、4、又は5のフッ素原子を有しうる。フッ素化化合物は、1から5のフッ素原子、好ましくは2から5のフッ素原子又は3から5のフッ素原子を有しうる。本明細書に定義される少なくとも1つのフッ素原子を有する直鎖状又は分岐状のC2-C6アルカン又はC2-C6アルケンは、フッ素原子に加えて一又は複数のハロゲン原子を有することができ、前記ハロゲン原子はCl、I及びBrから選択され;好ましくはClである。好ましい一実施態様では、本明細書に定義されるフッ素化化合物中のハロゲン原子の総数は、F、Cl、Br及びIから選択される2から5のハロゲン原子、好ましくは3から5のハロゲン原子、さらに好ましくは4から5のハロゲン原子であり;ハロゲン原子のうち、少なくとも1つがフッ素原子であり、好ましくは少なくとも2つがフッ素原子であり、さらに好ましくは少なくとも3つがフッ素原子である。
【0045】
好ましくは、フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子、好ましくは少なくとも2つのフッ素原子、さらに好ましくは少なくとも3つのフッ素原子を有するC3アルカン化合物である。フッ素化化合物は、1、2、3、4、又は5のフッ素原子;及び好ましくは0から5の塩素原子、さらに好ましくは0から4の塩素原子、特に0から3の塩素原子を有するC3アルカンでありうる。好ましくは、フッ素化化合物は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり、ハロゲン原子のうち、少なくとも1つはフッ素原子である。さらに好ましくは、フッ素化化合物は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり、そのうち最大で3、好ましくは最大で2のハロゲン原子が塩素原子であり;少なくとも1つがフッ素原子であり、好ましくは少なくとも2つがフッ素原子であり、さらに好ましくは少なくとも3つがフッ素原子である。
【0046】
好ましくは、フッ素化化合物は、少なくとも1つのフッ素原子、好ましくは少なくとも2つのフッ素原子、さらに好ましくは少なくとも3つのフッ素原子を有するC3アルケン化合物である。フッ素化化合物は、1、2、3、又は4のフッ素原子;好ましくは0から2の塩素原子、さらに好ましくは0から1の塩素原子を有するC3アルケン化合物でありうる。好ましくは、フッ素化化合物は、Cl及びFから選択される4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり、ハロゲン原子のうち、少なくとも1つはフッ素原子である。さらに好ましくは、フッ素化化合物は、Cl及びFから選択される4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり、そのうち、最大で2、好ましくは最大で1のハロゲン原子が塩素原子であり;少なくとも1つがフッ素原子であり、好ましくは少なくとも2つがフッ素原子であり、さらに好ましくは少なくとも3つがフッ素原子である。特に、フッ素化化合物は、フッ素原子である4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物でありうる。フッ素化化合物は、4のハロゲン原子を有し、それら4のうち3がフッ素原子であり、残りのハロゲン原子が塩素原子である、C3アルケン化合物でもよい。
【0047】
さらに好ましくは、フッ素化化合物は、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3-テトラフルオロ-3-クロロプロパン(HCFC-244fa)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze-E)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)及び2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)からなる群より選択される。
【0048】
本方法によれば、塩素化化合物のフッ素化は、フッ素化の度合いの上昇にあり、即ちフッ素化化合物中のフッ素原子の数が、塩素化化合物中のフッ素原子の数より大きい。好ましくは、反応の間に、塩素化化合物中の少なくとも1つのCl置換基がF置換基によって置き換えられる。好ましくは、反応のために選択される塩素化化合物、及びフッ素化反応を介してそれにより得られるフッ素化化合物は、同数の炭素原子を有する。
【0049】
好ましい一実施態様では、塩素化化合物のフッ素化化合物へのフッ素化は:
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,2,2,3- ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(HFO-1234yf)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)へ;
- 2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)へ;
- 1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ;
- 2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)から1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)へ
のフッ素化である。
【0050】
塩素化化合物のフッ素化化合物への変換は、直接的変換(即ち単一の反応工程における又は本質的に一組の反応条件下での)及び間接的変換(即ち複数の反応工程による又は単一組の反応条件を複数用いる)を含む。
【0051】
フッ素化反応は:
- 典型的には3:1から150:1、好ましくは4:1から125:1、さらに好ましくは5:1から100:1のHFモル比;
- 3から100秒、好ましくは4から75秒、さらに好ましくは5から50秒の接触時間;及び
- 大気圧から20バール、好ましくは2から18バール、さらに好ましくは3から15バールの圧力
を用いて実施することができる。
【0052】
工程a)は、200から450℃、好ましくは250℃から400℃、さらに好ましくは280℃から380℃の温度で実施されうる。好ましくは、工程a)の温度は触媒床の温度である。
【0053】
フッ素化反応の間に触媒が早々に非活性化することを防止するために、酸化剤(例えば酸素又は塩素)を、例えば酸化剤+塩素化化合物の混合物に対して0.05から20mol.%、好ましくは0.1から15mol.%、さらに好ましくは0.5から10mol.%、特に1から8mol.%の比で加えることができる。
【0054】
好ましい一実施態様では、本発明の工程(b)によりフッ素化触媒を再生する前に、反応器のパージが実施される。パージは、反応器を真空下に維持することによって、又は本発明の工程(a)が完了した後で窒素の流れを反応器内に導入することによって、実施することができる。
【0055】
好ましい一実施態様では、工程a)及びb)は交互に実施することができる。工程a)が工程b)と交互に行われるとき、各工程の継続時間は50から2000時間、有利には50から1500時間、好ましくは200から1000時間とすることができ、各再生段階の継続時間は10から200時間、好ましくは15から60時間とすることができる。
【0056】
触媒
触媒は、例えば、遷移金属酸化物又はこのような金属の誘導体若しくはハロゲン化物若しくはオキシハロゲン化物を含む金属に基づく触媒とすることができる。使用できる触媒は、オキシフッ化クロム、クロム酸化物、ハロゲン化クロム、フッ化アルミニウム及びオキシフッ化物の、担持触媒又は非担持触媒である。国際公開第2007/079431号、7頁、1-5及び28-32行、EP-A-939071、段落[0022]、国際公開第2008/054781号、9頁22行から10頁34行、国際公開第2008/040969号、請求項1も参照することができ、これらすべては参照により本明細書に包含される。
【0057】
好ましい一実施態様では、フッ素化触媒は、オキシフッ化クロム、クロム酸化物、ハロゲン化クロム、及びこれらの混合物を含む。本発明に使用されるフッ素化触媒は、担持されていても、されていなくともよい。好ましい一実施態様では、オキシフッ化クロム触媒は、その総重量に基づいて、30wt%を上回るフッ素含有量、好ましくは30から45wt%のフッ素含有量を有しうる。代替え的に、オキシフッ化クロム触媒は、その総重量に基づいて、30wt%未満のフッ素含有量を有してもよい。
【0058】
フッ素化触媒は、担持又は非担持の、オキシフッ化クロム、クロム酸化物、ハロゲン化クロム及びこれらの混合物でありうる。
【0059】
好ましい一実施態様では、触媒は、クロム及びニッケルの両方を含む担持された混合触媒である。金属元素に関し、モル比Cr:Niは、一般に0.5から5、例えば0.7から2であり、1の近似値を含む。触媒は、0.5から20wt%のニッケルを含みうる。
【0060】
担持触媒に関する限り、触媒担体は、より高い温度及び圧力でHFと適合性である当技術分野で既知の材料から選択することができる。例えば、フッ素化アルミナ、予備フッ素化活性炭素、グラファイト又はフッ素化グラファイトは、適切な触媒担体である。担体は、好ましくはアルミニウムから作製される。アルミナ、活性アルミナ又はアルミニウム誘導体といった複数の可能な担体が存在する。これら誘導体には、例えば米国特許第4902838号に記載の、又は活性化プロセスにより得られた、ハロゲン化アルミニウム及びアルミニウムのハロゲン化物酸化物が含まれる。国際公開第2009/118628号、特に4頁、30行から7頁、16行までの触媒の開示内容を参照することができ、これらは参照により本明細書に包含される。
【0061】
別の実施態様によれば、本方法は、好ましくは非担持の、高表面積Cr系触媒を使用する。好ましい触媒は、高表面積の非担持クロム酸化物触媒である。
【0062】
本明細書に定義される触媒のいずれもが、少なくとも50m2/g、好ましくは50から300m2/g、さらに好ましくは70から250m2/g、特に100から200m2/gの表面積を有しうる。
【0063】
他の可能な触媒は、亜鉛又は酸化亜鉛を含む二酸化クロム系フッ素化触媒である。亜鉛/二酸化クロム触媒中に存在する亜鉛又は亜鉛の化合物の総量は、約0.01%から約25%、好ましくは0.1%から25%、便利には0.01%から6%の亜鉛とすることができ、いくつかの実施態様では、好ましくは触媒の0.5重量%から25重量%、好ましくは触媒の約1から10重量%、さらに好ましくは触媒の約2から8重量%、例えば触媒の約4から6重量%である。他の実施態様では、触媒は、便利には、0.01%から1%、さらに好ましくは0.05%から0.5%の亜鉛を含む。亜鉛/二酸化クロム触媒は、追加の金属又はその化合物を含みうる。典型的には、追加の金属は、好ましくはニッケル、マグネシウム、アルミニウム及びこれらの混合物から選択される、二価又は三価の金属である。典型的には、追加の金属は、触媒の0.01重量%から約25重量%の量で、好ましくは触媒の約0.01から10重量%の量で存在する。他の実施態様は、少なくとも約0.5重量%又は少なくとも約1重量%の追加の金属を含む。他の触媒は、非晶性二酸化クロム;触媒の0.5から25重量%の亜鉛総量の酸化亜鉛;及び触媒の0.1から2.5重量%の総量の結晶性クロム酸化物からなる二酸化クロム系フッ素化触媒であり;触媒は、EP1877181に開示されるように、担持されるか、又は担持されない。
【0064】
好ましい一実施態様では、触媒は、好ましくは低レベルで、一又は複数の共触媒、例えばCo、Zn、Mn、Mg、V、Mo、Te、Nb、Sb、Ta、P及びNiの塩を含むことができる。好ましい共触媒は、ニッケル、マグネシウム又は亜鉛である。好ましい非担持クロム触媒は、任意選択的に、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、マグネシウム又はマンガンとマグネシウムとの混合物から選択される、含浸、混合粉末などの当技術分野で既知の方法により調製された、低レベルの一又は複数の共触媒を含むことができる。
【0065】
存在するとき、共触媒の量は、1から20wt.%、好ましくは1から10wt.%、さらに好ましくは1から5wt.%の間で変化させることができる。水溶液又は有機溶液からの吸着とそれに続いて行われる溶媒のエバポレーションとった、当技術分野で既知の方法によって共触媒を触媒に加えることができる。この実施態様において好ましい触媒は、共触媒としてニッケル又は亜鉛を含む純粋なクロム酸化物である。代替え的に、共触媒は、完全混和を生成するための粉砕により触媒と物理的に混合することができる。
【0066】
活性化の前に、触媒は、乾燥工程に供してもよい。前記乾燥工程は、乾燥ガス、好ましくは窒素を、触媒上に通すことを含みうる。乾燥工程は、大気圧から20バールまでの圧力で実施することができる。乾燥工程の間の触媒の温度は、約1から100秒、好ましくは約10から40秒の接触時間で、概ね1から50時間、好ましくは5から20時間にわたり、室温から400℃まで、好ましくは約100℃から約300℃の範囲とすることができる。
【0067】
乾燥工程の後、触媒は、よりよいレベルの触媒活性に到達させるために活性化することができる。
【0068】
触媒の活性化
本発明者らは、酸化剤含有ガス流を用いた上記触媒の活性化が、フッ素化法の効率を向上させることを発見した。
【0069】
この活性化法は、二工程で又は単一工程で、1つの活性化剤又は2つの活性化剤を用いて触媒を活性化することを含む。活性化剤の1つは、酸化剤、例えば、酸素又は酸素/窒素混合物又は空気又は塩素である。他の活性化剤は、還元剤を含むガス混合物でありうる。
【0070】
第1の実施態様では、活性化法は、フッ素化触媒を酸化剤含有ガス流と接触させる工程を含む。フッ素化触媒は、酸化剤で処理される。酸化剤は、好ましくは空気、酸素、塩素又は酸素と窒素の混合物から選択される、酸素含有剤とすることができる。酸化剤での処理の間の温度は、好ましくは約1から200秒、好ましくは1から150秒、さらに好ましくは5から100秒の接触時間で;好ましくは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、さらに好ましくは少なくとも4時間、最も好ましくは少なくとも10時間、特に少なくとも15時間の時間にわたり、250から500℃、好ましくは300から450℃、さらに好ましくは350から400℃の範囲とすることができる。したがって、酸化剤での処理は、1から約1500時間、好ましくは2から1000時間、さらに好ましくは4から500時間、最も好ましくは10から200時間、特に15から150時間の時間にわたって実施されうる。
【0071】
別の実施態様では、活性化工程は、フッ素化触媒を、上記に定義された酸化剤含有ガス流と接触させる第1の工程(i)、及び工程(i)の後に得られるフッ素化触媒を、還元剤を含むガス混合物で処理する第2の工程(ii)を含む。
【0072】
還元剤を含むガス混合物は、不活性ガスも含みうる。不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、HF又はこれらの混合物でありうる。代替え的に、不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン又はこれらの混合物を含みうる。ガス混合物は、ガス混合物の総体積に基づいて、1から10体積%、好ましくは2から9体積%、さらに好ましくは3から7体積%の還元剤を含みうる。
【0073】
還元剤は、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン及びC1-C10ヒドロハロカーボンからなる群より選択されうる。好ましくは、還元剤は、水素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン又はC1-C10ヒドロハロカーボンである。特に、還元剤は、C1-C10ヒドロハロカーボン、好ましくは上記に定義された塩素化化合物とすることができる。還元剤は、塩素化化合物であるとき、本方法の工程a)で用いられる塩素化化合物と同じでも異なってもよく、好ましくは本方法の工程a)で用いられるものと同じである。還元剤がC1-C10ヒドロハロカーボン、好ましくは塩素化化合物であるとき、ガス混合物は、窒素、ヘリウム、アルゴン、HF又はこれらの混合物といった不活性ガスを含む。好ましくは、還元剤がC1-C10ヒドロハロカーボン、特にC3ヒドロハロカーボンであるとき、ガス混合物はHFを含む。
【0074】
したがって、還元剤は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子;及び好ましくは0から5のフッ素原子を有するC3アルカン化合物とすることができる。還元剤は、1、2、3、4、5、又は6の塩素原子を有するC3アルカン化合物とすることができ;好ましくはフッ素原子を含まないか又は1、2、3、4、若しくは5のフッ素原子を含む。好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。さらに好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり、ハロゲン原子のうち、最大で4つがフッ素原子であり、少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。
【0075】
好ましくは、還元剤は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子;及び好ましくは0から3のフッ素原子を有するC3アルケン化合物とすることができる。還元剤は、1、2、3、又は4の塩素原子を有するC3アルケン化合物とすることができ;好ましくはフッ素原子を含まないか又は1、2、3、若しくは4のフッ素原子を含む。好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。さらに好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり、ハロゲン原子のうち、最大で3つがフッ素原子であり、少なくとも1つが塩素原子である。
【0076】
さらに好ましくは、還元剤は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)、1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)、1,1,3-トリクロロプロペン(HCO-1240za)、3,3,3-トリクロロプロペン(HCO-1240zf)からなる群より選択される。
【0077】
特に、還元剤は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)からなる群より選択される。
【0078】
第2の工程(ii)の温度は、約100℃から約450℃とすることができる。第2の工程(ii)は、約1から約100秒、好ましくは1から75秒、さらに好ましくは5から50秒の接触時間で;1時間を上回る時間、好ましくは1から50時間にわたって実施することができる。好ましくは、第2の工程(ii)の温度は、約1から約100秒、好ましくは1から75秒、さらに好ましくは5から50秒の接触時間で;1時間を上回る時間、好ましくは1から50時間にわたり、約300から約400℃とすることができる。代替え的に、第2の工程(ii)は、1時間未満にわって実施されてもよい。代替え的に、第2の工程(ii)は、200から300℃の範囲の温度で実施されうる。第2の工程(ii)は、大気圧から5バールの圧力で実施されてもよい。
【0079】
工程(i)及び(ii)の両方を、触媒活性がその最高レベルに達するまで繰り返すことができる。
【0080】
特定の実施態様では、上記に定義される活性化法の前に、触媒を、HFと上記に定義される塩素化化合物との混合物と接触させることができる。接触は、約6から約100時間にわたって(例えば50時間未満にわたって)実施することができる。HF:塩素化化合物のモル比は、約2から約40の範囲とすることができる。塩素化化合物は、その後工程a)のフッ素化反応の間に使用されるものと同じものでよい。代替的に、塩素化化合物は、その後フッ素化反応の間に使用される塩素化化合物とは異なるものでもよい。したがって、この特定の実施態様では、活性化工程は:
(i’)フッ素化触媒を、HFと塩素化化合物とを含む混合物と接触させること:
(ii’)工程(i’)で得られたフッ素化触媒を、酸化剤含有ガス流と接触させること、及び
(iii’)任意選択的に又は非任意選択的に、工程(ii’)の後に得られたフッ素化触媒を還元剤で処理すること
によって実施されうる。
【0081】
各工程は、触媒活性がその最高レベルに達するまで繰り返すことができる。
【0082】
別の実施態様によれば、活性化法は:
(i’’)フッ素化触媒を、HF、酸化剤含有ガス流及び塩素化化合物を含むガス混合物と接触させること、並びに
(ii’)任意選択的に又は非任意選択的に、工程(i’)において得られたフッ素化触媒を還元剤と接触させること
によって実施されうる。
【0083】
酸化剤、塩素化化合物及び還元剤は、上記に定義された通りである。HF、塩素化化合物及び酸化剤の混合物中における酸化剤の割合は、約2から約98mol.%の範囲とすることができる。HF、塩素化化合物及び酸化剤の混合物中における塩素化化合物の割合は、約2から約98mol.%の範囲とすることができる。HF、塩素化化合物及び酸化剤の混合物中におけるHFの割合は、約2から約98mol.%の範囲とすることができる。活性化工程のプロセス条件は、上記に定義される。各工程は、触媒活性がその最高レベルに達するまで繰り返すことができる。
【0084】
工程(i),(ii)、又は(i’),(ii’),(iii’)、又は(i’’),(ii’’)は、交互に、一回、二回又は三回以上繰り返すことができる。
【0085】
触媒の再生
本発明者らはまた、触媒を酸化剤含有ガス流と接触させた後で還元剤と接触させる再生工程に供することにより副生成物の存在を制限できることを見出した。
【0086】
好ましい一実施態様では、本方法のフッ素化触媒の再生(工程b)は:
c)前記フッ素化触媒を酸化剤含有ガス流で処理し、酸化フッ素化触媒を形成すること;及び
d)工程c)において得られた前記酸化フッ素化触媒を、還元剤を含むガス混合物で処理すること
を含む。
【0087】
一実施態様によれば、工程c)において使用される酸化剤は、酸素又は空気又は酸素/窒素混合物又は塩素である。工程c)が空気又は酸素/窒素混合物を用いて実施されるとき、酸素の割合は、酸素+窒素の混合物に対して20から約100mol.%とすることができる。
【0088】
別の実施態様では、工程c)は、酸素又は空気又は酸素/窒素混合物又は塩素及びHFを用いて実施することができる。酸素の割合は、酸素+HFの混合物に対して約2から約98mol.%の範囲、及び酸素+窒素の混合物に対して約20から約100mol.%の範囲とすることができる。
【0089】
工程c)の間の温度は、1から200秒、好ましくは1から150秒、さらに好ましくは5から100秒の接触時間で;1から約1500時間、好ましくは2から1000時間、さらに好ましくは4から500時間、最も好ましくは10から200時間、特に15から150時間、具体的には15から70時間の時間にわたり、250から500℃、好ましくは300から450℃、さらに好ましくは350から400℃、又は325℃から375℃の範囲とすることができる。工程c)は、大気圧から20バール、有利には大気圧から5バール、好ましくは大気圧から3バールの範囲の圧力で実施することができる。好ましい一実施態様では、工程c)の間の温度は、約1から200秒の接触時間での、10から200時間にわたり、大気圧から20バール、好ましくは大気圧から3バールの範囲の圧力で、約250から500℃の範囲とすることができる。特に好ましい一実施態様によれば、工程c)の間の温度は、約5から100秒の接触時間で、15から75時間にわたり、大気圧から20バール、好ましくは大気圧から3バールまでの範囲の圧力で、約325から375℃の範囲とすることができる。
【0090】
工程(d)において使用されるガス混合物は、特に還元剤がC1-C10ヒドロハロカーボン、好ましくは塩素化化合物であるとき、不活性ガスを含みうる。不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、HF又はこれらの混合物でありうる。不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、又はこれらの混合物でありうる。特に、不活性ガスは、HFと窒素との混合物でありうる。具体的には、不活性ガスは、還元剤がC1-C10ヒドロハロカーボン、有利にはC3ヒドロハロカーボン、好ましくは少なくとも1つの塩素原子を有するC3アルカン又はアルケンであるとき、HFと窒素との混合物とすることができる。
【0091】
好ましい一実施態様では、工程(d)のガス混合物は、ガス混合物の総体積に基づいて、1から10体積%、好ましくは2から9体積%、さらに好ましくは3から7体積%の還元剤を含む。
【0092】
好ましい一実施態様では、工程d)は、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン及びC1-C10ヒドロハロカーボンからなる群より選択される還元剤を用いて実施される。好ましくは、還元剤は、水素、ホルムアルデヒド、C1-C6アルカン又はC1-C10ヒドロハロカーボンである。さらに好ましくは、還元剤はC1-C10ヒドロハロカーボンである。特に、還元剤は、上記に定義された塩素化化合物である。具体的には、還元剤は、水素或いは少なくとも1つの塩素原子を有するC3アルカン又はアルケンでありうる。
【0093】
したがって、還元剤は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子;及び好ましくは0から5のフッ素原子を有するC3アルカン化合物とすることができる。還元剤は、1、2、3、4、5、又は6の塩素原子を有するC3アルカン化合物とすることができ;好ましくはフッ素原子を含まないか又は1、2、3、4、若しくは5のフッ素原子を含む。好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。さらに好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4又は5のハロゲン原子を有するC3アルカン化合物であり、ハロゲン原子のうち、最大で4つがフッ素原子であり、少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。
【0094】
好ましくは、還元剤は、少なくとも1つの塩素原子、好ましくは少なくとも2つの塩素原子;及び好ましくは0から3のフッ素原子を有するC3アルケン化合物とすることができる。還元剤は、1、2、3、又は4の塩素原子を有するC3アルケン化合物とすることができ;好ましくはフッ素原子を含まないか又は1、2、3、若しくは4のフッ素原子を有する。好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり;ハロゲン原子のうちの少なくとも1つが塩素原子であり、好ましくは少なくとも2つが塩素原子である。さらに好ましくは、還元剤は、Cl及びFから選択される4のハロゲン原子を有するC3アルケン化合物であり、ハロゲン原子のうち、最大で3つがフッ素原子であり、少なくとも1つが塩素原子である。
【0095】
さらに好ましくは、還元剤は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)、1,1,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230za)、1,3,3,3-テトラクロロプロペン(HCO-1230zd)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)、1,1,3-トリクロロプロペン(HCO-1240za)、3,3,3-トリクロロプロペン(HCO-1240zf)からなる群より選択される。
【0096】
特に、還元剤は、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFCO-1233xf)、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240db)、1,1,2,2,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240aa)、2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン(HCFC-243db)、1,1,2,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xa)、2,3,3,3-テトラクロロ-1-プロペン(HCO-1230xf)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HCFC-244bb)からなる群より選択される。
【0097】
工程d)は、約100℃から約450℃の範囲の温度で実施されうる。好ましくは、工程d)は、300から400℃、特に325℃から375℃の温度で実施されうる。工程d)は、約1から約100秒、好ましくは1から75秒、さらに好ましくは5から50秒の接触時間にわたって実施されうる。好ましくは、工程d)は、1時間を上回る時間、好ましくは1から50時間、特に1から15時間にわたって実施されうる。さらに好ましくは、工程d)は、300から400℃、特に325℃から375℃の温度で、約1から約100秒、好ましくは1から75秒、さらに好ましくは5から50秒の接触時間で、1時間を上回る時間、好ましくは1から50時間、特に1から15時間にわたって実施される。代替え的に、工程d)は、1時間未満にわって実施されてもよい。代替え的に、工程d)は、200から300℃の範囲の温度で実施されうる。工程d)は、大気圧から5バールの範囲の圧力で実施されてもよい。
【0098】
工程c)及びd)の両方は、交互に、一回、二回又は三回以上繰り返すことができる。特に、工程d)は、独立して、一回、二回又は三回以上繰り返すことができ、即ち各工程d)を異なる還元剤を用いて繰り返すことができる。例えば、工程d)は、水素を用いて実施することができ、且つ2-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペンを用いて繰り返すことができる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は本発明を限定することなく説明する。
【0100】
設備機器は、21mmの内径を有するINCONEL(登録商標)600合金及び6mmの内径を有する12mのコイル予熱器から作製された管形反応器を含んでいた。システムは、流動砂浴に浸漬した。反応器は、圧力及び温度コントローラを備えていた。反応物は、事前に混合され、反応器の下部に導入された。
【0101】
反応器を出るガス流は、水スクラッバを通過させた後乾燥させ、サンプリングし、ガスクロマトグラフィーによって分析した。HPモデル5890GCを、すべての実験に使用した。クロマトグラフは、共に熱伝導率検出器(TCD)に接続された、RTX(登録商標)-200カラムとShinCarbonカラム(Restek)とを備えていた。
【0102】
比較実施例1:HFCO-1233xfのフッ素化-還元剤を含むガス混合物による処理なしでのフッ素化触媒の再生
上記設備機器を使用して、HFCO-1233xfの接触気相フッ素化を実施した。反応器に、約130cm3の事前に活性化した市販のクロムバルク触媒を充填した。
【0103】
反応を、P=5バールの一定の絶対圧力で実行し、温度をT=380℃に維持した。無水フッ化水素(HF)、HFCO-1233xf及び空気を継続的に反応器内に導入した。HFCO-1233xfに対するHFのモル比は20であった。HFCO-1233xfに対する酸素(O2)のモル比は0.04であった。接触時間は反応条件下で20秒として計算された。
【0104】
70時間の反応後、HFCO-1233xfの変換が約20%である間に、反応を停止し、13l/h、T=380℃及び大気圧での72時間にわたる空気処理により再生工程を実施した。
【0105】
次いで同じ条件を用いて反応を再開した。
【0106】
HFO-1234yf以外に得られた主生成物はHFC-245cbである。この化合物は、リサイクルして再利用することができ、有用な物質とみなされる。得られた副生成物及びそれらの選択性を以下の表1に示す:
【0107】
【0108】
本発明による実施例2:HFCO-1233xfのフッ素化-還元剤を含むガス混合物による処理を伴うフッ素化触媒の再生
上記設備機器を使用して、HFCO-1233xfの接触気相フッ素化を実施した。反応器に、約130cm3の事前に活性化した市販のクロムバルク触媒を充填した。
【0109】
反応を、P=5バールの一定の絶対圧力で実行し、温度をT=380℃に維持した。無水フッ化水素(HF)、HFCO-1233xf及び空気を継続的に反応器内に導入した。HFCO-1233xfに対するHFのモル比は20であった。HFCO-1233xfに対する酸素(O2)のモル比は0.04であった。接触時間は反応条件下で20秒として計算された。
【0110】
76時間の反応後、HFCO-1233xfの変換が約35%である間に、反応を停止し、
- 5l/h、T=380C及び大気圧での72時間にわたる空気処理,
- T=350℃での5時間にわたるHFCO-1233xf:HF:窒素(14.1g/h,43.1g/h;51l/h)の混合物を用いた処理
により再生工程を実施した。
【0111】
次いで同じ条件を用いて反応を再開した。
【0112】
HFO-1234yf以外に得られた主生成物はHFC-245cbである。この化合物は、リサイクルして再利用することができ、有用な物質とみなされる。得られた副生成物及びそれらの選択性を以下の表2に示す:
【0113】
【0114】
比較実施例3:HFCO-1233xfのフッ素化-還元剤を含むガス混合物による処理なしでのフッ素化触媒の再生
上記設備機器を使用して、HFCO-1233xfの接触気相フッ素化を実施した。反応器に、約130cm3の事前に活性化した市販のクロムバルク触媒を充填した。
【0115】
反応を、P=5バールの一定の絶対圧力で実行し、温度をT=350℃に維持した。無水フッ化水素(HF)、HFCO-1233xf及び空気を継続的に反応器内に導入した。HFCO-1233xfに対するHFのモル比は20であった。HFCO-1233xfに対する酸素(O2)のモル比は0.04であった。接触時間は反応条件下で34秒として計算された。
【0116】
48時間の反応後、反応物の流量を増加させ、新規の接触時間が反応条件下で20秒として計算された。さらに24時間の反応後、HFCO-1233xfの変換が約45%である間に、反応を停止し、7.5l/h、T=350℃及び大気圧での72時間にわたる空気処理により再生工程を実施した。
【0117】
次いで同じ条件(反応条件下で接触時間を20秒として計算)を用いて反応を再開した。
【0118】
HFO-1234yf以外に得られた主生成物はHFC-245cbである。この化合物は、リサイクルして再利用することができ、有用な物質とみなされる。得られた副生成物及びそれらの選択性を以下の表3に示す:
【0119】
【0120】
本発明による実施例4:HFCO-1233xfのフッ素化-還元剤を含むガス混合物による処理を伴うフッ素化触媒の再生
上記設備機器を使用して、HFCO-1233xfの接触気相フッ素化を実施した。反応器に、約130cm3の事前に活性化した市販のクロムバルク触媒を充填した。
【0121】
反応を、P=5バールの一定の絶対圧力で実行し、温度をT=350℃に維持した。無水フッ化水素(HF)、HFCO-1233xf及び空気を継続的に反応器内に導入した。HFCO-1233xfに対するHFのモル比は20であった。HFCO-1233xfに対する酸素(O2)のモル比は0.04であった。接触時間は反応条件下で20秒として計算された。
【0122】
48時間の反応後、HFCO-1233xfの変換が約61%である間に、反応を停止し,
- 5l/h、T=350℃及び大気圧での48時間にわたる空気処理,
- T=325℃での5時間にわたる水素:窒素(1.25l/h;25l/h)の混合物を用いた処理
- 10l/h、T=350℃及び絶対圧力P=1.6barでの24時間にわたる窒素処理
により再生工程を実施した。
【0123】
次いで同じ条件を用いて反応を再開した。
【0124】
HFO-1234yf以外に得られた主生成物はHFC-245cbである。この化合物は、リサイクルして再利用することができ、有用な物質とみなされる。得られた副生成物及びそれらの選択性を以下の表4に示す:
【0125】