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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】便器装置及び便座装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20230825BHJP
   E03D 11/02 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E03D9/08 Z
E03D9/08 D
E03D11/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019089722
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186531
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康智
(72)【発明者】
【氏名】古閑 一樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-316607(JP,A)
【文献】特開2006-274641(JP,A)
【文献】特開2007-007160(JP,A)
【文献】特開2013-209861(JP,A)
【文献】実開昭63-76078(JP,U)
【文献】特開2018-193852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢を有する便器と、
前記便器に対して開閉可能に設けられた便座と、
前記便器及び前記便座に対して開閉可能に設けられた便蓋と、
前記便器の後方に設けられ、制御機構が収容されているカバーケースと、
前記カバーケースの内部空間と前記便鉢の内側空間との間を移動可能且つ先端部から洗浄水を吐水可能に構成された吐水ノズルと、
前記内部空間と前記内側空間との間を移動可能且つ前記内部空間及び前記内側空間に紫外線を照射可能に構成された紫外線照射器と、
を備え
前記紫外線照射器は、前記吐水ノズルとは別に、前記吐水ノズルの上方に配置されている便器装置。
【請求項2】
前記紫外線照射器は、前記内部空間と前記内側空間との間を移動する移動方向に沿って長尺な紫外線ランプで構成されている、
請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記内部空間に設けられ、前記吐水ノズル及び前記紫外線照射器を収容可能な収容ケースをさらに備える、
請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記紫外線照射器が前記内部空間から前記内側空間に向けて突出し、且つ前記紫外線照射器が点灯しているときには、前記便蓋が閉じている、
請求項1からの何れか一項に記載の便器装置。
【請求項5】
閉状態の前記便蓋において前記便器に対向する面に前記紫外線照射器から出射される紫外線を反射する紫外線反射材が設けられている、
請求項1からの何れか一項に記載の便器装置。
【請求項6】
便鉢を有する便器に対して開閉可能に構成された便座と、
前記便器及び前記便座に対して開閉可能に構成された便蓋と、
前記便器の後方に設置可能に構成され、制御機構が収容されているカバーケースと、
前記カバーケースの内部空間と前記便鉢の内側空間との間を移動可能且つ先端部から洗浄水を吐水可能に構成された吐水ノズルと、
前記内部空間と前記内側空間との間を移動可能且つ前記内部空間及び前記内側空間に紫外線を照射可能に構成された紫外線照射器と、
を備え
前記紫外線照射器は、前記吐水ノズルとは別に、前記吐水ノズルの上方に配置されている便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置及び便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器装置を清潔に保つための工夫が種々提案されている。例えば、特許文献1には、洗浄ノズル(吐水ノズル)を紫外線で殺菌する紫外線照射装置が開示されている。洗浄ノズルは、使用者の局部に向けて洗浄水を吐水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-274641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている紫外線照射装置では、紫外線でノズル収容室(収容ケース)の内部が殺菌されるが、便鉢の内側の表面や便蓋を閉じたときの便鉢の内側空間を殺菌できなかった。つまり、従来の便器装置では、吐水ノズル、吐水ノズルが収容されるカバーケースの内部空間、シャッター、便鉢及び便蓋の表面等のように汚れやカビが付着しやすい領域を全体的に殺菌するのが難しく、清潔度が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、清潔度を高く保つことができる便器装置及び便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便器装置は、便鉢を有する便器と、前記便器に対して開閉可能に設けられた便蓋と、前記便器の後方に設けられ、制御機構が収容されているカバーケースと、前記カバーケースの内部空間と前記便鉢の内側空間との間を移動可能且つ先端部から洗浄水を吐水可能に構成された吐水ノズルと、前記内部空間と前記内側空間との間を移動可能且つ前記内部空間及び前記内側空間に紫外線を照射可能に構成された紫外線照射器と、を備え、前記紫外線照射器は、前記吐水ノズルとは別に、前記吐水ノズルの上方に配置されている。
【0007】
上述の便器装置では、カバーケースの内部空間と便鉢の内側空間の双方に位置で紫外線照射器から紫外線が照射されることによって、便器装置において汚れやカビが付着しやすい領域が全体的に殺菌される。例えば、紫外線照射器がカバーケースの内部空間に位置しているときに点灯した場合は、カバーケースの内部空間が殺菌される。紫外線照射器が便鉢の内側空間に位置しているときに点灯した場合は、便鉢及び便座の内側の表面、及び閉状態の便蓋の下面が殺菌される。このように便器装置において汚れやカビが付着しやすい領域が全体的に殺菌されることによって、従来のようにノズル収容室のみの殺菌を行う便器装置や、便鉢の内側空間のみの殺菌を行う便器装置に比べて清潔度が高まる。
また、紫外線照射器が吐水ノズルの側方に配置される場合に比べて、吐水ノズル及び紫外線照射器の通過領域及び設置スペースの左右方向の大きさが変動せず、大きな設計変更を求められない。また、カバーケースの内部空間から便鉢の内側空間に進出した吐水ノズルの上側の表面は、使用者の局部に略直接対向し、上側以外の表面に比べて水滴や汚物が付着しやすい。吐水ノズルの上方に紫外線照射器が配置されることによって、吐水ノズルの上側以外の表面に比べて上側の表面に紫外線が照射され、吐水ノズルにおいて水滴や汚物が付着しやすい上側の表面が殺菌されるため、清潔度が高まる。
【0008】
本発明の便器装置では、前記紫外線照射器は、前記内部空間と前記内側空間との間を移動する移動方向に沿って長尺な紫外線ランプで構成されていてもよい。
【0009】
上述の便器装置では、紫外線照射器が上述のように長尺な紫外線ランプで構成されているので、点灯時には移動方向及び移動方向を軸芯とする径方向の略全方位に広く紫外線が照射され、広い範囲が効率的に殺菌される。また、紫外線照射器が1つの長尺な紫外線ランプで構成されるので、取り付け交換が容易になる。
【0010】
本発明の便器装置では、前記内部空間に設けられ、前記吐水ノズル及び前記紫外線照射器を収容可能な収容ケースをさらに備えてもよい。
【0011】
上述の便器装置では、吐水ノズルが収容されているときに収容ケースの内側の表面に汚れやカビが付着しやすくなるが、同じ収容ケースに紫外線照射器が収容可能であるため、紫外線照射器が収容ケース内で点灯することによって、収容ケースの内側の表面が殺菌され、清潔度が高まる。
【0014】
本発明の便器装置では、前記紫外線照射器が前記内部空間から前記内側空間に向けて突出し、且つ前記紫外線照射器が点灯しているときには、前記便蓋が閉じていてもよい。
【0015】
上述の便器装置では、便蓋が閉じているので、紫外線照射器がカバーケースの内部空間から便鉢の内側空間に向けて突出し、且つ前記紫外線照射器が点灯しても、便鉢の開口部から紫外線が便器装置の設置空間や使用者に対して不用意に照射されない。
【0016】
本発明の便器装置では、閉状態の前記便蓋において前記便器に対向する面に前記紫外線照射器から出射される紫外線を反射する紫外線反射材が設けられていてもよい。
【0017】
上述の便器装置では、便蓋が閉じた状態で、紫外線照射器がカバーケースの内部空間から便鉢の内側空間に向けて突出し、且つ前記紫外線照射器が点灯したとき、紫外線照射器から出射した紫外線が紫外線反射材によって反射される。このことによって、便鉢の内側空間に効率良く紫外線が照射されるので、便鉢の内側空間が殺菌され、清潔度が高まる。
【0018】
本発明の便座装置は、便鉢を有する便器に対して開閉可能に構成された便座と、前記便器及び前記便座に対して開閉可能に構成された便蓋と、前記便器の後方に設置可能に構成され、制御機構が収容されているカバーケースと、前記カバーケースの内部空間と前記便鉢の内側空間との間を移動可能且つ先端部から洗浄水を吐水可能に構成された吐水ノズルと、前記内部空間と前記内側空間との間を移動可能且つ前記内部空間及び前記内側空間に紫外線を照射可能に構成された紫外線照射器と、を備え、前記紫外線照射器は、前記吐水ノズルとは別に、前記吐水ノズルの上方に配置されている。
【0019】
上述の便座装置は、任意の便器に取り付けられる。取り付けられた便座装置によれば、カバーケースの内部空間と便鉢の内側空間の双方に位置で紫外線照射器から紫外線が照射されることによって、便器装置において汚れやカビが付着しやすい領域が全体的に殺菌される。上述の便座装置を取り付けた便器装置において汚れやカビが付着しやすい領域が全体的に殺菌され、従来に比べて清潔度が高まる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の便器装置によれば、清潔度を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の便器装置の斜視図であり、便蓋が閉じている状態を示す図である。
図2図1に示す便器装置において便蓋が開いている状態を示す図である。
図3図1に示す便器装置の吐水ノズル及び紫外線照射器とこれらの近傍のカバーケースの内部空間を前後方向に沿って見た斜視図であり、吐水ノズル及び紫外線照射器がカバーケースの内部空間に位置している状態を示す図である。
図4図3に示す吐水ノズル及び紫外線照射器の前側の部分が便鉢の内側空間に位置し、吐水ノズル及び紫外線照射器の後側の部分がカバーケースの内部空間に位置している状態を示す図である。
図5図1に示す便器装置における殺菌工程例1のタイミング図である。
図6図1に示す便器装置における殺菌工程例2のタイミング図である。
図7図1に示す便器装置における殺菌工程例3のタイミング図である。
図8】吐水ノズル及び紫外線照射器の移動方向に沿って便鉢の内側空間からカバーケースの内部空間を見たときの吐水ノズルに対する紫外線照射器の相対位置を示す概略図である。
図9図8に示す構成に吐水ノズルが追加された状態を示す概略図である。
図10図9に示す構成に紫外線照射器が追加された状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態の便器装置について、図面を用いて説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態の便器装置100の斜視図である。図1及び図2に示すように、便器装置100は、便器10と、便座21と、便蓋22と、カバーケース25とを備えている。
【0023】
便器10は、便鉢12を有する。便座21は、便器10に対して回転軸11を中心に開閉可能に設けられている。便蓋22は、便器10に対して回転軸11を中心に便座21を介して開閉可能に設けられている。図1では、便座21及び便蓋22が閉状態になっている。図2では、便座21は閉状態になっており、便蓋22は開状態になっている。閉状態の便蓋22は、便座21を介して便鉢12の開口部16を上側から覆う。図1及び図2に示すように、閉状態の便蓋22において便器10に対向する面、即ち便蓋22の下面23には、紫外線反射材70が設けられている。紫外線反射材70の成分としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。なお、前述の成分を含む塗料が下面23に塗布されていてもよい。
【0024】
以下では、使用者が便座21に着座した状態で視線の奥側を「前側」とし、同状態で使用者の背後側を「後側」とし、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向T1という。また、便座21に着座した利用者から見て左側を「左側」とし、右側を「右側」とし、左側と右側とを結ぶ方向を左右方向T2という。また、便器装置100が設置されている床面から離れている側を「上側」とし、床面に近い側を「下側」とし、上側と下側とを結ぶ方向を上下方向T3という。
【0025】
図1及び図2に示すように、便器10の後方にはカバーケース25が設けられている。カバーケース25は、ベースプレート32と、ベースプレート32を覆うカバー24で構成されている。カバーケース25には、不図示の制御機構が収容されている。制御機構は、ベースプレート32上に配置され、使用者の操作によって、又は自動的に、便器装置100の構成要素を作動させ、各種機能を発現させる。例えば、便器装置100では、使用者の操作によって、又は自動的な制御信号によって、使用後に、便器10の上部に設けられたリムの下側周縁を介して便鉢12の上端部の周方向全体から便鉢12の内壁面に洗浄水が供給される。便鉢12に貯留されていた洗浄水5は、汚物等と共に、便鉢12の下端部に接続されている不図示の排水経路及び排水管を通って便器装置100の外部に排出される。
【0026】
図2に示すように、便器装置100は、吐水ノズル35と、紫外線照射器50とをさらに備えている。カバーケース25の前端、且つ左右方向T2の略中央部には、開口部40が形成されている。開口部40は、内部空間29と内側空間14とを連通させる。吐水ノズル35及び紫外線照射器50は、カバーケース25の内部空間29と便鉢12の内側空間14との間を、開口部40を通って移動可能に構成されている。カバーケース25には、開口部40を開閉可能なシャッタ26が設けられている。
【0027】
本実施形態では、吐水ノズル35及び紫外線照射器50は、左右方向T2の略中央部のベースプレート32の上に、左右方向T2に互いに隣り合って配置されている。吐水ノズル35及び紫外線照射器50は、内部空間29から前方に進むにしたがって下降するように、内部空間29から内側空間14へ移動可能に配置されている。以下、吐水ノズル35及び紫外線照射器50が前述のように移動する方向を移動方向T4とする。吐水ノズル35と紫外線照射器50とは、制御機構によって、個別に移動可能に構成され、連動して移動可能にも構成されている。
【0028】
図3及び図4は、吐水ノズル35及び紫外線照射器50とこれらの近傍の内部空間29を前後方向T1に沿って見た斜視図である。図3では、吐水ノズル35及び紫外線照射器50は、内部空間29に位置している。図4では、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の前側の部分は、内側空間14に位置し、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の後側の部分は、内部空間29に位置している。図3及び図4に示すように、吐水ノズル35及び紫外線照射器50は、ガイドレール42,44に載せられている。上述のように、吐水ノズル35及び紫外線照射器50が内部空間29から前方に進むにしたがって下降するように、ガイドレール42,44の少なくとも吐水ノズル35及び紫外線照射器50が載っている載置面は、後端から前方に進むにしたがって下降している。各ガイドレール42,44には、不図示のラックピニオン機構が接続されている。吐水ノズル35及び紫外線照射器50は、ラックピニオン機構によって移動方向T4に沿って移動する。
【0029】
図3及び図4では、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の構造をわかりやすく示すため、シャッタ26については輪郭のみ二点鎖線で図示されている。図3及び図4に示すように、シャッタ26は、シャッタ支持機構27によって支持され、シャッタ支持機構27を介してベースプレート32に取り付けられている。シャッタ26は、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の少なくとも一方が内部空間29から内側空間14に向かって移動して開口部40を通過する際に、開口部40の上方又は下方に回転可能に構成されている。図4には、シャッタ26が開口部40の上方に回転している状態が図示されている。
【0030】
便器装置100の機能の1つとして、使用者の局部を洗浄する機能が挙げられる。吐水ノズル35は、使用者の局部を洗浄するための局部洗浄ノズルとして機能する。図3に示すように、吐水ノズル35の後端部には、給水管36が接続されている。図4に示すように、吐水ノズル35の前端部において上側を向く周面には、複数の吐水口37が形成されている。給水管36を通って吐水ノズル35の内部に供給された洗浄水は、複数の吐水口37から使用者に対して後側斜め下側から前側斜め上側に向けて的確に吐出される。
【0031】
便器装置100の上述の局部洗浄機能とは別の機能として、便器装置100において汚れやカビが付着しやすい領域を殺菌する機能が挙げられる。紫外線照射器50は、汚れやカビが付着しやすい領域を殺菌するために設けられている。図3及び図4に示すように、本実施形態の紫外線照射器50は、移動方向(内部空間と内側空間との間を移動する移動方向)T4に沿って長尺な紫外線ランプ51と、紫外線照射器50の後端部に配置されているソケット52で構成されている。ソケット52には、給電管56が接続され、紫外線ランプ51が着脱可能に接続されている。
【0032】
内部空間29には、吐水ノズル35及び紫外線照射器50を収容可能な収容ケース60が設けられている。収容ケース60には、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の他に、ガイドレール42,44が収容されている。給水管36及び給電管56は、収容ケース60の内外に貫通している。
【0033】
次に、上述の便器装置100において、汚れやカビが付着しやすい領域が殺菌される工程を説明する。何れの殺菌工程においても、便蓋22、シャッタ26が閉状態であり、吐水ノズル35及び紫外線照射器50が内部空間29(即ち、収容ケース60の内部)に位置し、紫外線照射器50が消灯している状態を初期状態として説明する。また、各殺菌工程における便蓋22及びシャッタ26の開閉、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の移動、紫外線照射器50の点灯及び消灯は、カバーケース25に収容されている制御機構によって制御される。
【0034】
[殺菌工程例1:収容ケース60の内側の面の殺菌]
少なくともシャッタ26は閉じており、好ましくは便蓋22も閉じている。シャッタ26及び便蓋22の閉状態が確認された後、紫外線照射器50が点灯する。紫外線照射器50から軸線を中心とする径方向の外側且つ周方向の全体に亘って紫外線が出射される。紫外線照射器50から出射された紫外線は、収容ケース60の内側の面に照射され、収容ケース60の内側の面に付着した汚れやカビを殺菌する。所定の時間が経過した後、紫外線照射器50が消灯する。図5は、本殺菌工程のタイミング図である。本殺菌工程は、例えば1日に1回程度、夜間に行われる。
【0035】
[殺菌工程例2:収容ケース60の内部と内側空間14との間の内部空間29における各部材の殺菌]
少なくとも便蓋22は、閉じている。便蓋22の閉状態が確認された後、シャッタ26が開き、紫外線照射器50が点灯すると共に、内部空間29と内側空間14との間を移動する。紫外線照射器50が点灯した状態での紫外線照射器50の内部空間29と内側空間14との間の紫外線照射器50の移動は、片道1回、往復1回、往復複数回の何れで行われてもよい。所定の時間が経過した後、紫外線照射器50が消灯する。図6は、本殺菌工程のタイミング図であり、紫外線照射器50の内部空間29と内側空間14との間の紫外線照射器50の移動が片道1回であるパターンを示している。本殺菌工程は、例えば1日に1回程度、夜間に行われる。
【0036】
[殺菌工程例3:内部空間29における便鉢12の内側の面の殺菌]
少なくとも便蓋22は、閉じている。便蓋22の閉状態が確認された後、シャッタ26が開き、紫外線照射器50が内部空間29から内側空間14に移動する。内側空間14に到達した紫外線照射器50は点灯し、所定の時間が経過した後、消灯する。図7は、本殺菌工程のタイミング図であり、本殺菌工程は、例えば使用者の使用頻度に応じて適時に行われ、例えば5回の使用後毎に行われてもよく、各使用後に行われてもよい。
【0037】
上述の各殺菌工程において、吐水ノズル35は、紫外線照射器50と連動して移動する、或いは移動方向T4において紫外線照射器50とは互いの先端同士が略同じ位置にあってもよい。移動方向T4において吐水ノズル35が紫外線照射器50と重なる位置にある場合、紫外線照射器50の点灯時には、各殺菌工程の殺菌対象の領域に加えて吐水ノズル35の表面が殺菌される。
【0038】
便器装置100は、上述の殺菌工程を順不同且つ適時に行うことができる。各殺菌工程の直前に別の機能が発揮された場合は、その機能の発揮時における便蓋22及びシャッタ26の開閉状態、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の位置、紫外線照射器50の点灯状態から上述の各殺菌工程に移行できる。
【0039】
例えば、使用者の局部を洗浄した後に、上述の殺菌工程例3、殺菌工程例2、殺菌工程例1が行われる場合について説明する。使用者の局部を洗浄した直後には、便蓋22及びシャッタ26は開状態であり、吐水ノズル35は内側空間14に位置し、紫外線照射器50は内部空間29の収容ケース60内に位置している。使用者が便器装置100から離れたことが確認された後、便蓋22が閉じる。便蓋22が完全に閉じた後、紫外線照射器50が内部空間29から内側空間14に移動し、移動方向T4において吐水ノズル35と略同じ位置に到達した後、点灯する。所定の時間の経過後、紫外線照射器50が点灯した状態で、吐水ノズル35及び紫外線照射器50が内側空間14から内部空間29に移動し、シャッタ26が閉じ、吐水ノズル35及び紫外線照射器50が収容ケース60に収容される。紫外線照射器50は、収容ケース60に収容されてから所定の時間経過後に消灯する。
【0040】
以上説明した本実施形態の便器装置100は、便鉢12を有する便器10と、便器10に対して開閉可能に設けられた便蓋22と、便器10の後方に設けられ、制御機構が収容されているカバーケース25と、内部空間29と内側空間14との間を移動可能且つ先端部から洗浄水を吐水可能に構成された吐水ノズル35と、内部空間29と内側空間14との間を移動可能且つ内部空間29及び内側空間14に紫外線を照射可能に構成された紫外線照射器50と、を備える。これらの構成を備えた便器装置100では、少なくとも内部空間29と内側空間14、加えて移動方向T4の内部空間29と内側空間14との間の任意の位置で紫外線照射器50から紫外線を出射可能である。このことによって、便器装置100によれば、汚れやカビが付着しやすい領域を全体的に殺菌できる。例えば、上述の殺菌工程例1のように、紫外線照射器50が内部空間29に位置しているときに紫外線照射器50を点灯させた場合は、内部空間29及び内部空間29に配置されている各種部材を殺菌できる。上述の殺菌工程例2のように、紫外線照射器50が内部空間29と内側空間14との間に位置しているときに紫外線照射器50を点灯させた場合は、吐水ノズル35の移動領域、即ち内部空間29と内側空間14との間の領域及びこの領域に位置する各種部材を殺菌できる。この場合、内部空間29と内側空間14との間の領域に位置する部材には例えばシャッタ26が含まれ、閉状態のシャッタ26の後側の面も殺菌できる。上述の殺菌工程例3のように、紫外線照射器50が内側空間14に位置しているときに紫外線照射器50を点灯させた場合は、便鉢12及び便座21の内側の表面、及び便蓋22の下面23を殺菌できる。このように便器装置100において汚れやカビが付着しやすい領域が全体的に殺菌されることによって、従来のようにノズル収容室のみの殺菌を行う便器装置や、便鉢の内側空間のみの殺菌を行う便器装置に比べて清潔度を高めることができる。したがって、便器装置100によれば、清潔度を高く保つことができる。
【0041】
本実施形態の便器装置100では、紫外線照射器50が移動方向T4に沿って長尺な紫外線ランプ51で構成されているので、紫外線ランプ51の点灯時には移動方向T4及び移動方向T4を軸芯とする径方向の略全方位に広く紫外線を照射し、広い範囲を効率的に殺菌できる。また、便器装置100によれば、紫外線照射器50を1つの長尺な紫外線ランプ51で構成し、紫外線照射器50のメンテナンスやソケット52への紫外線ランプ51の装着及び交換を容易にできる。
【0042】
本実施形態の便器装置100では、内部空間29に設けられ、吐水ノズル35及び紫外線照射器50を収容可能な収容ケース60をさらに備えている。局部洗浄後の吐水ノズル35が収容されるときに収容ケース60の内側の面に汚れやカビが付着しやすくなるが、同じ収容ケース60に紫外線照射器50が収容された状態で紫外線照射器50を点灯させることによって、収容ケース60の内側の面を殺菌できる。このことによって、便器装置100によれば、内部空間29において局部洗浄後の吐水ノズル35に起因して汚れやカビが発生し得る領域を収容ケース60の内側の領域に抑え、清潔度を効率良く高めることができる。
【0043】
本実施形態の便器装置100では、紫外線照射器50が内部空間29から内側空間14に向けて突出し、且つ紫外線照射器50が点灯しているときには、便蓋22が閉じている。このことによって、便器装置100によれば、紫外線照射器50が点灯しても、便鉢12の開口部16から紫外線が便器装置100の設置空間や使用者に対して不用意に照射されることを防止できる。
【0044】
本実施形態の便器装置100では、便蓋22の下面23に紫外線照射器50から出射される紫外線を反射する紫外線反射材70が設けられている。このことによって、便蓋22が閉じた状態で、紫外線照射器50が内側空間14に位置し、且つ点灯したとき、紫外線照射器50から上方に出射した紫外線が紫外線反射材70によって反射され、内側空間14及び便鉢12の内側の面、局部洗浄後の吐水ノズル35に照射される。したがって、便器装置100によれば、内側空間14及び便鉢12の内側の面、局部洗浄後の吐水ノズル35に効率良く紫外線を照射し、これらの領域及び部材を殺菌し、清潔度を高めることができる。
【0045】
本実施形態の便座装置110は、上述のように便器10に対して開閉可能に構成された便座21と、便器10及び便座21に対して開閉可能に構成された便蓋22と、便器10の後方に設置可能に構成されて制御機構が収容されているカバーケース25と、内部空間29と内側空間14との間を移動可能且つ先端部から洗浄水を吐水可能に構成された吐水ノズル35と、内部空間29と内側空間14との間を移動可能且つ内部空間29及び内側空間14に紫外線を照射可能に構成された紫外線照射器50と、を備える。
本実施形態の便座装置110によれば、便器10に取り付けられることによって、便器装置100と同様に、汚れやカビが付着しやすい領域を全体的に殺菌し、従来のようにノズル収容室のみの殺菌を行う便器装置や便鉢の内側空間のみの殺菌を行う便器装置に比べて清潔度を高く保つことができる。
【0046】
なお、本発明の便器装置は、上述した実施形態の便器装置100に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、本発明の便器装置の各構成要素は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で公知の構成に置換可能である。
【0047】
例えば、上述の実施形態の便器装置100では紫外線照射器50が吐水ノズル35の側方に設けられているが、本発明の便器装置の紫外線照射器は吐水ノズルに対して任意の位置に配置されていてよい。
【0048】
なお、図8に示すように、本発明の便器装置では、紫外線照射器50は吐水ノズル35の上方に配置されていてもよい。図8は、移動方向T4に沿って内側空間14から内部空間29を見たときの吐水ノズル35に対する紫外線照射器50の相対位置を示す概略図である。紫外線照射器50が吐水ノズル35の上方に配置されていることによって、紫外線照射器50が吐水ノズル35の側方に配置される場合に比べて、開口部40や吐水ノズル35及び紫外線照射器50の設置スペース、収容ケース60の左右方向T2の大きさが変動せず、カバーケース25等の大きな設計変更をせずに済む。また、内部空間29から内側空間14に進出した吐水ノズル35の上側の表面は、使用者の局部洗浄中に局部に略直接対向し、上側以外の表面に比べて水滴や汚物が付着しやすい。紫外線照射器50が吐水ノズル35の上方に配置されていることによって、吐水ノズル35の上側以外の表面に比べて上側の表面に紫外線を照射し、吐水ノズル35の上側の表面を良好に殺菌できる。このことによって、便器装置100の清潔度を高めることができる。
【0049】
また、上述の実施形態の便器装置100は使用者の局部洗浄用の吐水ノズル35のみを備えているが、本発明の便器装置は複数の吐水ノズルを備えていてもよい。例えば、本発明の便器装置は局部洗浄用の吐水ノズルに加えて、ビデ機能を有する吐水ノズルを備えていてもよい。図9は、ビデ機能を有する吐水ノズル38が設けられた場合において、移動方向T4に沿って内側空間14から内部空間29を見たときの吐水ノズル35,38に対する紫外線照射器50の相対位置を示す概略図である。図9に示すように、吐水ノズル38が吐水ノズル35の側方に配置され、紫外線照射器50が吐水ノズル35,38の左右方向T2の略中央且つ上方に配置されていてもよい。
【0050】
また、上述の実施形態の便器装置100は1本の紫外線照射器50を備えているが、本発明の便器装置は複数の紫外線照射器を備えていてもよい。例えば、本発明の便器装置は吐水ノズルの上方に配置された紫外線照射器及び吐水ノズルの下方に配置された紫外線照射器を備えていてもよい。図10は、図9に示す吐水ノズル35,38の下方に紫外線照射器53が設けられた場合において、移動方向T4に沿って内側空間14から内部空間29を見たときの吐水ノズル35,38に対する紫外線照射器50,53の相対位置を示す概略図である。図10に示すように、吐水ノズル35,38の上方及び下方の双方に紫外線照射器50,53が配置されることによって、1本の紫外線照射器50のみが配置される場合に比べて、吐水ノズル35,38の表面全体をはじめとする殺菌対象領域に対して強い紫外線を照射し、殺菌対象領域を良好に殺菌できる。このことによって、便器装置100の清潔度をさらに高めることができる。
【0051】
図8から図10に例示したように紫外線照射器50が吐水ノズル38の上方に設けられる場合は、移動方向T4において吐水ノズル38が紫外線照射器50よりも前方に進出可能になっている。移動方向T4において吐水ノズル38が紫外線照射器50よりも前方に進出した状態では、吐水ノズル38から吐出された洗浄水が紫外線照射器50にかからず、使用者の局部にかかり、且つ紫外線照射器50が濡れずに済む。
【0052】
また、上述の実施形態の便器装置100では紫外線照射器50が紫外線ランプ51を備えているが、紫外線照射器50の構成は内部空間29と内側空間14との間を移動可能且つ紫外線を照射可能であれば特に限定されない。例えば、紫外線照射器50は、樹脂製のノズル本体の外周面に複数の紫外線出射チップが配置されているものであってもよい。
【0053】
また、上述の実施形態の便器装置100では便蓋22の下面23に紫外線反射材70が設けられているが、便蓋22が紫外線を透過可能な素材で形成されていれば紫外線反射材70は便蓋22の内部に埋設されていてもよい。便蓋22が紫外線を反射可能な素材で形成されていてもよい。
【0054】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110では紫外線照射器50は吐水ノズル35とは離れて配置されているが、紫外線照射器50は吐水ノズル35に取り付けられていてもよい。例えば、吐水ノズル35の周面に前述の紫外線出射チップが周方向及び軸方向に複数配置されていてもよい。このような構成によれば、吐水ノズル35及び紫外線照射器50の省スペース化を図ることができる。
【0055】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110において、収容ケース60やカバーケース25の内側の面の全体又は所定の一部分に、紫外線反射材70と同様の紫外線反射材が設けられていてもよい。このような構成によれば、紫外線照射器50が収容ケース60の内部や内部空間29で点灯し、紫外線が照射された際に、紫外線を紫外線反射材によって反射させ、収容ケース60及びカバーケース25の内側の面や収容ケース60の内部及び内部空間29を効率良く殺菌し、清潔度を高めることができる。
【0056】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110の制御装置は、紫外線照射器50が点灯しているときには便蓋22を閉じているように制御することに加えて、便蓋22が開いているときには紫外線照射器50を点灯しないように制御してもよい。このような構成によれば、便鉢12の開口部16を通して紫外線照射器50からの紫外線が便器装置100の設置空間や使用者に対して不用意に照射されることを前述のように制御しない場合に比べて確実に防止できる。
【0057】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110に人体検知センサが設けられ、制御装置は人体検知センサが人体即ち使用者を検知している間は紫外線照射器50を点灯しないように制御してもよい。このような構成によれば、使用者が便器装置100や便座装置110を使用している間は紫外線照射器50が点灯せず、紫外線照射器50からの紫外線が使用者に対して不用意に照射されることを前述のように制御しない場合に比べて確実に防止できる。
【0058】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110では、閉状態における便座21の下面、即ち便座21の裏面に紫外線照射器50からの紫外線が照射されてもよい。例えば、使用者が便器装置100や便座装置110を使用してない状態で、制御装置が便蓋22及び便座21を開状態にし、紫外線照射器50を内側空間14で点灯させてもよい。
同様に、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110では、閉状態における便座21の下面、即ち便座21の裏面に紫外線照射器50からの紫外線が照射されてもよい。例えば、使用者が便器装置100や便座装置110を使用してない状態で、制御装置が便蓋22を閉状態又は略半開状態且つ便座21を閉状態にし、紫外線照射器50を内側空間14で点灯させ、紫外線を紫外線反射材70で反射させてもよい。
上述の構成によれば、汚れやカビが付着する可能性がある便座21の下面や上面を清潔にすることができる。
【0059】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110では、吐水ノズル35から吐出される洗浄水に紫外線照射器50からの紫外線が照射されてもよい。このことによって、洗浄水が殺菌される。例えば、吐出口37の周囲に、紫外線の出射方向を吐水ノズル35から吐出される洗浄水のみに向けて紫外線照射器を設け、この紫外線照射器からの紫外線が開口部40に到達しないようにする反射カバー等が設けられていてもよい。
【0060】
また、上述の実施形態の便器装置100及び便座装置110では、吐水ノズル35は、紫外線照射器50と非連動で移動する、或いは移動方向T4において紫外線照射器50とは互いの先端同士が異なる位置にあってもよい。制御装置によって移動方向T4における互いの相対移動位置が異なるように吐水ノズル35と紫外線照射器50の移動が制御されれば、吐水ノズル35の広い範囲に紫外線照射器50からの紫外線を照射できる。このことによって、吐水ノズル35の広い範囲を殺菌し、清潔に保つことができる。
【符号の説明】
【0061】
10…便器
12…便鉢
21…便座
22…便蓋
14…内側空間
25…カバーケース
29…内部空間
35,38…吐水ノズル
50,53…紫外線照射器
60…収容ケース
70…紫外線反射材
100…便器装置
110…便座装置
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
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図10