(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリートパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/04 20060101AFI20230825BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20230825BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
E04C2/04 C
E04C2/04 E
E04C2/26 Z
E04C2/30 J
(21)【出願番号】P 2019141893
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】木全 瑛二
(72)【発明者】
【氏名】戸田 忠秀
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】永野 顕
(72)【発明者】
【氏名】川村 智宏
(72)【発明者】
【氏名】平野 竜行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】庄司 健一
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-334718(JP,A)
【文献】特開平08-207024(JP,A)
【文献】特開平06-099414(JP,A)
【文献】特開平09-131712(JP,A)
【文献】特開平11-188809(JP,A)
【文献】特開平10-205053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/04,2/26,2/30
B28B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方に隙間のある部位が形成された隆起部を前面側に有するレリーフ板と、
該レリーフ板の背面側に設けられた補強コンクリート層とを具備したプレキャストコンクリートパネル
の製造方法であって、
前記レリーフ板をその前面が上を向くように載置し、前記隙間に間詰材を詰めた状態で該レリーフ板の上側に保護モルタル層を形成した後、上下反転し、該レリーフ板の背面側に前記補強コンクリート層を設け、その後、前記保護モルタル層を除去し、
前記保護モルタル層の形成は、前記レリーフ板の前面を保護用フィルムで覆い、該保護用フィルムの表側から前記隙間に間詰材を詰め、さらにその表側に脱型用フィルムを被せた状態で行うプレキャストコンクリートパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、外装に用いられるプレキャストコンクリートパネルの製造方法に関し、また、歴史的建造物等に用いられている外装のプレキャスト化に用いて好適なプレキャストコンクリートパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歴史的建造物の外装を保存する場合、その外装が石積み擁壁等、複数のピースからなるものであれば、ピース毎にナンバリングした後、その外装を解体・分解し、各ピースに付したナンバーを基に組み上げて元の形状に復原する手法がとられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、斯かる手法では、ピースの数が多くなるほど、ナンバリングや各ピースの管理が煩雑化し、復原後の形状が復原前から変わり易くなる懸念もある。また、これとは反対に、ピースの数が少なくても、例えばそのピースの一つに、迫力や優美性等を持たせることを重視したため、あわせて破損し易い構造をも有することとなった巨大なレリーフ板が含まれていると、その取り扱いは困難化することとなり、そうしたレリーフ板については、新しく別素材(GRCやFRP)で再現する手法がとられるが、この手法では、元の外装を復原活用することができない。
【0004】
本発明者らは、こうした点に鑑み、種々検討を重ねた結果、上記のようなレリーフ板についても、その復原活用をすることができる技術を得るに至った。また、この技術は、歴史的建造物の保存に留まらず、プレキャストコンクリートパネルに広く適用できることを見出した。
【0005】
本発明は、その破損のし易さから従来のプレキャストコンクリートパネルでは採用不可能であった迫力や優美性等をレリーフ板に持たせることができる上、そうしたレリーフ板を有する歴史的建造物の復原活用にも資するプレキャストコンクリートパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプレキャストコンクリートパネルの製造方法は、後方に隙間のある部位が形成された隆起部を前面側に有するレリーフ板と、該レリーフ板の背面側に設けられた補強コンクリート層とを具備したプレキャストコンクリートパネルの製造方法であって、前記レリーフ板をその前面が上を向くように載置し、前記隙間に間詰材を詰めた状態で該レリーフ板の上側に保護モルタル層を形成した後、上下反転し、該レリーフ板の背面側に前記補強コンクリート層を設け、その後、前記保護モルタル層を除去し、前記保護モルタル層の形成は、前記レリーフ板の前面を保護用フィルムで覆い、該保護用フィルムの表側から前記隙間に間詰材を詰め、さらにその表側に脱型用フィルムを被せた状態で行う(請求項1)。
【0007】
【0008】
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、その破損のし易さから従来のプレキャストコンクリートパネルでは採用不可能であった迫力や優美性等をレリーフ板に持たせることができる上、そうしたレリーフ板を有する歴史的建造物の復原活用にも資するプレキャストコンクリートパネルの製造方法が得られる。
【0010】
すなわち、本願の各請求項に係る発明のプレキャストコンクリートパネルでは、後方に隙間のある部位を持つ立体的な形状を呈する隆起部により、従来のプレキャストコンクリートパネルでは採用不可能であった迫力や優美性等をレリーフ板に持たせることができ、ひいてはこのプレキャストコンクリートパネルを備えた建物のグレード向上に寄与する。
【0011】
請求項1に係る発明のプレキャストコンクリートパネルの製造方法では、レリーフ板の前面を下側にし、背面を上側にした状態で、レリーフ板の背面側に補強コンクリート層を設けるので、補強コンクリート層を打設等により容易に設けることができ、しかもこの際、レリーフ板から下方に突出し、レリーフ板及び補強コンクリート層等の重量を受けることになる隆起部の破損は、これを覆う保護モルタル層と隙間に詰めた粘土とによって確実に防止することができる。
【0012】
請求項1に係る発明のプレキャストコンクリートパネルの製造方法では、保護モルタル層を形成する際に、隙間に詰める粘土がレリーフ板に付着することは保護用フィルムによって防止され、また、粘土と保護モルタル層との間には脱型用フィルムが存在するので、粘土が保護モルタル層の形成を阻害することがなく、しかも最終的に不要となる保護モルタル層をレリーフ板から簡単に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)及び(B)は、本発明の一実施の形態に係るプレキャストコンクリートパネルの製造方法におけるレリーフ板の採取工程の構成を概略的に示す説明図である。
【
図2】(A)~(G)は前記プレキャストコンクリートパネルの製造方法の工程を概略的に示す説明図である。
【
図3】(A)~(G)は前記プレキャストコンクリートパネルの製造方法におけるアンカー材の設置工程を概略的に示す説明図である。
【
図4】(A)及び(B)は前記プレキャストコンクリートパネルの製造方法における補強コンクリート形成工程を概略的に示す説明図である。
【
図5】(A)~(G)は前記プレキャストコンクリートパネルの製造方法の変形例の工程を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1~
図2に示すプレキャストコンクリートパネルの製造方法は、既存建物からその外装に用いられている例えば複数のテラコッタタイルからなるレリーフ板1(
図1(A)参照)を採取し、このレリーフ板1を利用して外装用のプレキャストコンクリートパネルP(
図2(G)参照)を製造するためのものであり、具体的には以下の工程(A1)~(A8)を実施する。
【0016】
すなわち、
図1(A)に示すように、既存建物において、外装に用いられているレリーフ板1は、その背面側に設けられた既存支持層(例えば既存のトロ詰モルタル層)2と一体化された状態で、図外の既存建物躯体(例えば鉄筋コンクリート梁)に保持されている。
【0017】
(A1)斯かる既存建物において、レリーフ板1の採取は、
図1(B)に示すように、既存支持層2の背面側に後施工アンカー3を設置した状態でモルタルを打設して補強躯体4を構築し、この補強躯体4に一部が埋設した後施工アンカー3と吊用鉄骨5を固定し、その後、ワイヤーソー等で切断したレリーフ板1を吊用鉄骨5ごと吊り上げ、搬出して行う。なお、レリーフ板1が大型の場合は、複数に切断し、個別に搬出すればよい。
【0018】
(A2)採取したレリーフ板1につき、周辺のレリーフ板1以外の不要部分を除去する。なお、この除去前に、万が一に備え、レリーフ板1表面を3Dスキャンし、形状をデータ化する。
【0019】
(A3)レリーフ板1の前面を保護用フィルム6で覆い(覆う前に必要であれば前面を清掃等しておく)、レリーフ板1の隆起部7において後方(
図2(A)では下方)に隙間7aがある場合、後工程における隆起部7の破損防止のため、保護用フィルム6の表(前)側からその隙間7aに間詰材8を詰め、さらにその表側に脱型用フィルム9を被せた状態(脱型用フィルム9が保護用フィルム6及び間詰材8を覆う状態)にする(
図2(A)及び(B)参照)。
【0020】
ここで、保護用フィルム6、脱型用フィルム9にはそれぞれ、例えばゴム系の伸縮性フィルムを用いることが考えられる。
【0021】
また、間詰材8は、隆起部7の破損防止のために、隙間7aの形状に沿う追随性・可塑性を有し、割れたりせず、乾燥し難く固くなり難いものが好ましく、具体的には、油粘土のような粘土を用いることができる。
【0022】
(A4)その前面が上を向くように載置したレリーフ板1の周囲(側方)に型枠10を設置し、また、レリーフ板1、既存支持層2及び補強躯体4を上下及び型枠10の外側(側方)から囲む補強鋼材11を設置し、補強鋼材11によって型枠10を外側から支持した状態で、その中のレリーフ板1表面にモルタル(例えばバサモルタル等)を充填し、表面形状を保護するための保護モルタル層12を形成する(
図2(C)参照)。
【0023】
ここで、補強鋼材11は、レリーフ板1等の下側に位置する水平面形成部13aと、同上側に位置する水平面形成部13bと、上下の水平面形成部13a、13bを繋ぎ、レリーフ板1等の側方に位置する側面形成部13cとを構成するように設けてあり、具体的には、水平面形成部13a、13bは井桁状に補強鋼材11(後述の形鋼11a、11b)を組んで構成し、側面形成部13cはレリーフ板1等を囲むように複数の補強鋼材11で構成してある。
図2(C)の例では、水平面形成部13a、13bにおいてレリーフ板1等に接する内側の補強鋼材11にはH形鋼(あるいはI形鋼)11aを、外側の補強鋼材11bには溝形鋼を用い、側面形成部13cには山形鋼11cを用いている。なお、吊用鉄骨5の一部または全部を補強鋼材11として利用してもよい。
【0024】
(A5)保護モルタル層12の養生後、
図2(D)に示すように、レリーフ板1を保護モルタル層12が下になるように補強鋼材11ごと上下反転し(ひっくり返し)、その後、補強鋼材11を一部解体し、レリーフ板1が出てくる(露出する)までその背面の補強躯体4及び既存支持層2を斫る等により除去する(
図2(E)参照)。
【0025】
(A6)露出したレリーフ板1にその背面側からコンクリート打ち込み用のアンカー材(例えばシアコネクタ等のアンカー金物)14を設置する(
図2(E)参照)。なお、次工程でのレリーフ板1側へのノロ漏れ防止のため、レリーフ板1を構成するタイルのジョイント部の隙間にはセメント系の固練りした材料をコテで押し込む、タイル自体のひび割れ部分や砕けて隙間ができている部分はエポキシ樹脂接着剤で埋める、などする。
【0026】
ここで、アンカー材14の設置について詳述すると、例えば、
図3(A)に示すように、レリーフ板1を構成するタイルの裏足部1a(本例では略網目状のリブ構造を呈する)のマス目(凹入部)に既存支持層2が充填され、新規コンクリートの入る隙間が無いような場合は、マス目に充填された既存支持層2の部分に穴15を開け、その穴15に溶剤の入ったカプセル16を挿入し(
図3(B)参照)、そこに金ねじや異形鋼棒等のアンカー材14を打ち込んでカプセル16を破壊し、溶剤の化学反応を起こさせてアンカー材14を固定するケミカルアンカー(登録商標)を採用することが考えられる(
図3(C)参照)。
【0027】
また、
図3(D)に示すように、タイルの裏足部1aのマス目が完全に露出している場合や大きな隙間を有しており、そのマス目への新規コンクリートの打設だけでタイルへのアンカー材14の付着が期待できる場合は、
図3(E)に示すように、タイルの裏足部1aのマス目内にアンカー材14の先端側を挿入配置しておくことが考えられる。なお、裏足部1aのマス目に残存する既存支持層2に脆弱な部分が存在する場合には、アンカー材14の挿入配置が可能となるようにその脆弱な部分及び必要に応じてその周辺まで適宜取り除けばよい。
【0028】
図3(F)に示すように、リブ構造の裏足部1aにその厚み方向に延びるアンカー用の貫通孔1bが開いている場合は、先端側を折り曲げたアンカー材14を貫通孔1bに挿入し、エポキシ樹脂接着剤等で固定しておくことが考えられる。
【0029】
図3(A)~(F)の方法で配するアンカー材14の他に、略網目状のリブ構造の裏足部1aにおいて、交差部等の厚みのある部分に直接捻じ込むアンカー材14を併用する(
図3(G)参照)。
【0030】
なお、上述したアンカー材14の捻じ込み等を行う上で、レリーフ板1の健全性確認は必須であり、そのために、例えば上記工程(A2)において、150mm×100mm×50mm程度のピースをレリーフ板1から採取し、このピースを用いて強度確認試験を行っておく。
【0031】
(A7)レリーフ板1の背面側にアンカー材14を埋めるように補強コンクリート層(新築プレストレストコンクリート板)15を形成する(
図2(F)参照)。
【0032】
ここで、
図4(A)及び(B)に示すように、補強コンクリート層15を構成する鉄筋16は、溶接と結束併用でメッシュ状に組み、レリーフ板1の一番高いところを基準としてその面から版厚を設定して、表裏共に所定厚さt(例えば30mm)の被りとする。レリーフ板1側には、例えばプラスチック製のドーナツスペーサー17等を下端鉄筋16に組み込んでおいて、レリーフ板1の上に直に載せる。
【0033】
(A8)補強コンクリート層15の養生後、
図2(G)に示すように、レリーフ板1を保護モルタル層12が上になるように補強鋼材11ごと上下反転し(ひっくり返し)、保護モルタル層12、補強鋼材11、型枠10等を撤去する。以上で、プレキャストコンクリートパネルPが完成する。
【0034】
次に、上記プレキャストコンクリートパネルPの設置について説明する。この設置は、例えば以下の工程(A9)~(A11)を実施して行う。
【0035】
(A9)例えば工場等で完成したプレキャストコンクリートパネルPを現場に搬入する。
【0036】
(A10)プレキャストコンクリートパネルPを鉄骨梁(図示していない。コンクリート梁等でもよい)に取り付ける。なお、この取り付けは、例えば、プレキャストコンクリートパネルP及び鉄骨梁の両方に取付金物を設けておき、その取付金物どうしをボルト等で固定するといったことが考えられる。
【0037】
(A11)レリーフ板1が大型であり、複数のプレキャストコンクリートパネルPを並べて設置することによりレリーフ板1を復原する場合は、パネルP間の目地を復原補修する。以上で、プレキャストコンクリートパネルPの設置が完了する。
【0038】
上記工程(A1)~(A8)により完成するプレキャストコンクリートパネルPは、
図2(G)に示すように、後方に隙間7aのある部位が形成された隆起部7を前面側に有するレリーフ板1と、レリーフ板1の背面側に設けられた補強コンクリート層15とを具備したものとなり、後方に隙間7aのある部位を持つ立体的な形状を呈する隆起部7により、従来のプレキャストコンクリートパネルでは採用不可能であった迫力や優美性等をレリーフ板1に持たせることができ、ひいてはこのプレキャストコンクリートパネルPを備えた建物のグレード向上に寄与する。
【0039】
また、本例のプレキャストコンクリートパネルPの製造方法では、上記工程(A5)においてレリーフ板1の前面を下側にし、背面を上側にした状態で、工程(A7)においてレリーフ板1の背面側に補強コンクリート層15を設けるので、補強コンクリート層15を打設等により容易に設けることができ、しかもこの際、レリーフ板1から下方に突出し、レリーフ板1及び補強コンクリート層15等の重量を受けることになる隆起部7の破損は、これを覆う保護モルタル層15と隙間7aに詰めた間詰材8とによって確実に防止することができる。加えて、本例のプレキャストコンクリートパネルPの製造方法では、上記のような隙間7aを持ったレリーフ板1を有する歴史的建造物の復原活用にも資する。
【0040】
さらに、本例のプレキャストコンクリートパネルPの製造方法では、工程(A4)において保護モルタル層12を形成する際に、隙間7aに詰める間詰材8がレリーフ板1に付着することは保護用フィルム6によって防止され、また、間詰材8と保護モルタル層12との間には脱型用フィルム9が存在するので、間詰材8が保護モルタル層12の形成を阻害することがなく、しかも最終的に不要となる保護モルタル層12を工程(A8)においてレリーフ板1から簡単に除去することが可能となる。
【0041】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0042】
上記工程(A1)では、レリーフ板1、既存支持層2、補強躯体4及び吊用鉄骨5を一体化した状態で搬出するが、例えば、一体化されたレリーフ板1及び既存支持層2が十分な強度を有する場合は、補強躯体4を構築せず、吊用鉄骨5に適宜の手段によりレリーフ板1及び既存支持層2を固定して搬出するようにしてもよい。また、既存支持層2の一部または全部を除去した状態で後施工アンカー3及び補強躯体4を設置・構築するようにしてもよく、当初より既存支持層2が存在していない場合にはレリーフ板1の背面側に後施工アンカー3及び補強躯体4を設置・構築すればよい。
【0043】
上記工程(A3)では、
図2(B)に示すように、隙間7aのみに間詰材8を詰めているが、これに限らず、例えば間詰材8をレリーフ板1の表面全体を覆うように詰め、レベリングを行う(平らにする)ようにしてもよい。
【0044】
上記工程(A1)~(A8)では、既存建物から採取したレリーフ板1を用いてプレキャストコンクリートパネルPを製造しているが、これに限らず、新設のレリーフ板1を用いてプレキャストコンクリートパネルPを製造してもよい。具体的には以下の工程(B1)~(B8)を実施する。
【0045】
(B1)
図5(A)に示すように、補強鋼材11によって構成した水平面形成部13a(
図2(C)参照)の上にレベル調整材21を配置し、その周囲を型枠10で囲み、必要に応じ、型枠10の外側に型枠10を支持するための補強鋼材11を設置する。
【0046】
(B2)
図5(B)に示すように、レベル調整材21の上にレリーフ板1を構成する複数のタイル(例えばテラコッタタイル)Tを敷設する。なお、タイルTは、その前面が上を向くようにレベル調整材21上に載置する。なお、後工程でレベル調整材21を除去する際の手間を考えると、タイルTとレベル調整材21とは一体化しないのが好適であるが、例えば接着力の比較的小さい接着テープや接着剤等を用いて両者T,21を仮止めするようにしてもよい。
【0047】
ここで、レベル調整材21は、敷設した状態の複数のタイルTが所望のレリーフ板1を形成するように各タイルTのレベルを調整するためのものであり、例えば砂型、プラスチック板、ブロック等、適宜の材料・部材で構成することができる。
【0048】
(B3)上記工程(A3)と同様に、全タイルTによって構成するレリーフ板1の前面を保護用フィルム6で覆い(覆う前に必要であれば前面を清掃等しておく)、レリーフ板1の隆起部7において後方(
図5(B)では下方)に隙間7aがある場合、後工程における隆起部7の破損防止のため、保護用フィルム6の表(前)側からその隙間7aに間詰材8を詰め、さらにその表側に脱型用フィルム9を被せた状態(脱型用フィルム9が保護用フィルム6及び間詰材8を覆う状態)にする(
図5(B)及び(C)参照)
【0049】
(B4)上記工程(A4)と同様に、各タイルT及びレベル調整材21を上下及び型枠10の外側(側方)から補強鋼材11で囲み、補強鋼材11によって型枠10を外側から支持した状態で、その中のレリーフ板1表面にモルタル(例えばバサモルタル等)を充填し、表面形状を保護するための保護モルタル層12を形成する(
図5(C)参照)。
【0050】
(B5)保護モルタル層12の養生後、
図5(D)に示すように、レリーフ板1を保護モルタル層12が下になるように補強鋼材11ごと上下反転し(ひっくり返し)、その後、補強鋼材11を一部解体し、レリーフ板1の背面側のレベル調整材21を除去する(
図5(E)参照)。
【0051】
(B6)露出したレリーフ板1にその背面側からコンクリート打ち込み用のアンカー材(例えばシアコネクタ等のアンカー金物)14を設置する。なお、次工程でのレリーフ板1側へのノロ漏れ防止のため、レリーフ板1を構成するタイルTのジョイント部の隙間にはセメント系の固練りした材料をコテで押し込むなどする(
図5(E)参照)。
【0052】
(B7)上記工程(A7)と同様に、レリーフ板1の背面側にアンカー材14を埋めるように補強コンクリート層(新築プレストレストコンクリート板)15を形成する(
図5(F)参照)。
【0053】
(B8)上記工程(A8)と同様に、補強コンクリート層15の養生後、
図5(G)に示すように、レリーフ板1を保護モルタル層12が上になるように補強鋼材11ごと上下反転し(ひっくり返し)、保護モルタル層12、補強鋼材11、型枠10等を撤去する。以上で、プレキャストコンクリートパネルPが完成する。
【0054】
なお、本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 レリーフ板
1a 裏足部
1b 貫通孔
2 既存支持層
3 後施工アンカー
4 補強躯体
5 吊用鉄骨
6 保護用フィルム
7 隆起部
7a 隙間
8 間詰材
9 脱型用フィルム
10 型枠
11 補強鋼材
11a H形鋼
11b 溝形鋼
11c 山形鋼
12 保護モルタル層
13a 水平面形成部
13b 水平面形成部
13c 側面形成部
14 アンカー材
15 補強コンクリート層
16 鉄筋
21 レベル調整材
P プレキャストコンクリートパネル
T タイル