(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン
(51)【国際特許分類】
F01D 25/18 20060101AFI20230825BHJP
F16N 7/32 20060101ALI20230825BHJP
F16N 23/00 20060101ALI20230825BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20230825BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
F01D25/18 A
F16N7/32 B
F16N23/00
F01D25/16 E
F02C7/06 D
(21)【出願番号】P 2019157865
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇史
(72)【発明者】
【氏名】前里 晃
(72)【発明者】
【氏名】大▲桑▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】市村 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 拡正
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-089087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174574(US,A1)
【文献】実開平04-124399(JP,U)
【文献】特開2005-061399(JP,A)
【文献】特開2007-138809(JP,A)
【文献】米国特許第05911678(US,A)
【文献】米国特許第04284174(US,A)
【文献】特開2014-163236(JP,A)
【文献】特開平08-178183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/12-25/26
F02C 7/06,7/12-7/18,9/18
F16N 7/32-7/34
F16N 11/00-11/12,39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、
前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置された複数の軸受と、
前記圧縮機から抽気した圧縮空気とオイルとを混在させてオイルミストを生成するオイルミスト生成器と、
前記オイルミスト生成器により生成された前記オイルミストを前記複数の軸受に導く第1供給路と、を有する主潤滑装置と、
前記第1供給路の途中に接続し、ガス源から流出したガスを前記第1供給路との接続箇所に導く第2供給路と、前記第2供給路を通じて前記ガス源から前記接続箇所へガスの供給を開始させる開装置と、
前記第2供給路に設けられ、前記ガス源から流出したガスとオイルとを混在させてオイルミストを生成するオイル貯留室と、を有する始動用潤滑装置と、を備え、
前記主潤滑装置は、前記圧縮機から抽気した前記圧縮空気の圧力により前記第1供給路を通じて前記オイルミストを前記複数の軸受に供給し、
前記始動用潤滑装置は、前記開装置がガスの供給を開始させたときに、前記ガス源から流出したガスの圧力により
、前記オイル貯留室により生成された前記オイルミストを、前記第2供給路と前記第1供給路における前記接続箇所より下流側部分とを通じて前記複数の軸受に供給する、ガスタービンエンジン。
【請求項2】
前記始動用潤滑装置は、前記第2供給路に対して着脱可能なカートリッジを有し、
前記カートリッジは、前記ガス源として、高圧ガスが充填されたガス充填室及びガス発生剤を収容するガス発生室の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のガスタービンエンジン。
【請求項3】
前記開装置は、
前記第1供給路における前記接続箇所より上流側部分と下流側部分との間を連通するとともに、前記ガス源と前記第1供給路における前記接続箇所より下流側部分との間を遮断する第1位置と、
前記第1供給路における前記接続箇所より上流側部分と下流側部分との間を遮断するとともに、前記ガス源と前記第1供給路における前記接続箇所より下流側部分との間を連通する第2位置と
の間で切り換わる三方弁である、請求項1又は2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項4】
前記主潤滑装置は、前記接続箇所から前記圧縮機に向かって流体が流れるのを阻止する第1逆流防止装置を更に有し、
前記始動用潤滑装置は、前記接続箇所から前記ガス源に向かって流体が流れるのを阻止する第2逆流防止装置を更に有し、
前記第2逆流防止装置は、前記開装置自体である、又は前記開装置とは異なる装置である、請求項1又は2に記載のガスタービンエンジン。
【請求項5】
前記開装置は、前記第2供給路、又は前記ガス源と前記第2供給路とをつなぐガス流路に設けられた開閉弁である、請求項4に記載のガスタービンエンジン。
【請求項6】
前記ガス源は、高圧ガスが充填されたガス充填室及びガス発生剤を収容するガス発生室の少なくとも一方を含み、
前記開装置は、前記ガス充填室又は前記ガス発生室のガス流出口を閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材を破壊する破壊装置とを含む、請求項4に記載のガスタービンエンジン。
【請求項7】
前記第2逆流防止装置は、前記第2供給路における前記オイル貯留室と前記接続箇所との間に設けられた逆止弁であり、
前記開装置は、前記第2供給路における前記オイル貯留室と前記ガス源との間、前記ガス源と前記第2供給路とをつなぐガス流路、又は前記ガス源に設けられている、請求項4~6のいずれか1項に記載のガスタービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体や航空機などに利用されるガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、飛翔体のガスタービンエンジンにおいて、軸受にオイルミストを供給する機構が開示されている。このオイルミスト供給機構では、飛翔体の飛翔時に、エンジンの圧縮機から圧縮空気がオイルミスト発生手段に導入される。オイルミスト発生手段では、導入された圧縮空気によりオイルがミスト化されオイルミストが生成され、生成されたオイルミストは、軸受へと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したオイルミスト供給機構では、オイルミストを軸受まで送り出すために圧縮機からの圧縮空気が必要となる。しかしながら、エンジンを始動する前やエンジンを始動した直後は、圧縮機の空気の圧力が低いため、軸受にオイルミストを供給することが不安定になる可能性がある。圧縮機の空気の圧力がある程度高くなるまでの間の軸受の潤滑性を確保する方法としては、エンジン始動前に軸受にグリースを充填することが考えられるが、この作業は大変手間がかかる。
【0005】
そこで、本発明は、圧縮機からの抽気でオイルミストを軸受に供給する潤滑装置を備えたガスタービンエンジンにおいて、エンジンを始動する際の軸受の潤滑を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るガスタービンエンジンは、圧縮機、燃焼器及びタービンが回転軸に沿って並んで配置されたガスタービンエンジンであって、前記圧縮機、前記燃焼器及び前記タービンが収容されるケーシングと、前記ケーシングの内部に配置された複数の軸受と、前記圧縮機から抽気した圧縮空気とオイルとを混在させてオイルミストを生成するオイルミスト生成器と、前記オイルミストを前記複数の軸受に導く第1供給路と、を有する主潤滑装置と、前記第1供給路の途中に接続し、ガス源から流出したガスを前記第1供給路との接続箇所に導く第2供給路と、前記第2供給路を通じて前記ガス源から前記接続箇所へガスの供給を開始させる開装置と、を有する始動用潤滑装置と、を備え、前記主潤滑装置は、前記圧縮機から抽気した前記圧縮空気の圧力により前記第1供給路を通じて前記オイルミストを前記複数の軸受に供給し、前記始動用潤滑装置は、前記開装置がガスの供給を開始させたときに、前記ガス源から供給されるガスの圧力によりオイルミストを、前記第2供給路と前記第1供給路における前記接続箇所より下流側部分とを通じて前記複数の軸受に供給する。
【0007】
エンジン始動前やエンジン始動直後などは、圧縮機の空気の圧力が低いために主潤滑装置から複数の軸受へのオイルミストの供給が不安定となる可能性がある。このような場合でも、前記構成によれば、開装置がガス源からのガスの供給を開始させたときに、ガス源から流出したガスの圧力によりオイルミストを複数の軸受に供給することができる。従って、エンジンを始動する際の軸受の潤滑を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮機からの抽気でオイルミストを軸受に供給する潤滑装置を備えたガスタービンエンジンにおいて、エンジンを始動する際の軸受の潤滑を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るガスタービンエンジンの概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るガスタービンエンジンのオイルミスト供給システムの概略構成図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係るガスタービンエンジンのオイルミスト供給システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係るガスタービンエンジンのオイルミスト供給システムの概略構成図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態の変形例に係るガスタービンエンジンのオイルミスト供給システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、「前方」はエンジン内で空気が流れる方向における上流側を意味し、「後方」は、エンジン内で空気が流れる方向における下流側を意味する。「径方向」は、エンジンの回転軸の回転軸線に直交する方向を意味する。「周方向」は、エンジンの回転軸の回転軸線周りの方向を意味する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るガスタービンエンジン1の断面図である。ガスタービンエンジン1は、航空機用のターボファンエンジンであり、回転軸2、ファン3、圧縮機4、燃焼器5、タービン6及びケーシング7を備える。回転軸2は、ガスタービンエンジン1の前後方向に延びる。ファン3は、回転軸2の前部に接続され、回転軸2と共に回転する。圧縮機4、燃焼器5及びタービン6は、この順に前方から後方に向けて回転軸2に沿って並んでいる。ケーシング7は、回転軸2の回転軸線と一致する軸線を有する筒状物であり、回転軸2、ファン3、圧縮機4、燃焼器5及びタービン6を収容している。
【0012】
具体的には、ガスタービンエンジン1は、二軸ガスタービンエンジンである。圧縮機4は、低圧圧縮機13と、低圧圧縮機13の後方に配置された高圧圧縮機14とを有する。例えば、低圧圧縮機13及び高圧圧縮機14は、いずれも軸流圧縮機である。但し、低圧圧縮機13及び高圧圧縮機14の種類はこれに限られない。例えば高圧圧縮機14は遠心圧縮機でもよい。タービン6は、低圧タービン15と、低圧タービン15の前方に配置された高圧タービン16とを有する。回転軸2は、低圧圧縮機13を低圧タービン15に連結する低圧軸11と、高圧圧縮機14を高圧タービン16に連結する高圧軸12とを有する。高圧軸12は、内部に中空空間を有する筒状軸である。低圧軸11は、高圧軸12の中空空間に挿通されている。低圧タービン15は、低圧軸11を介してファン3に連結されている。
【0013】
ケーシング7は、内殻17、外殻18及び複数のストラット19を有する。内殻17は、略円筒形状を有し、圧縮機4、燃焼器5及びタービン6を収容する。外殻18は、略円筒形状を有し、内殻17から径方向外側に離間した状態で内殻17と同心円状に配置されている。複数のストラット19は、周方向に間隔をあけて配置されている。各ストラット19は、内殻17を外殻18に連結する。本実施形態では、ストラット19は、外殻18から径方向内方に延び、内殻17を径方向に貫通して、圧縮機4で圧縮される空気の流路まで延びている。本実施形態では、ストラット19は、回転軸2の軸方向における低圧圧縮機13と高圧圧縮機14の間に対応する位置に配置されているが、ストラット19の位置はこれに限られない。ケーシング7は、ストラット19以外に他のストラットを有していてもよい。例えばケーシング7は、回転軸2の軸方向における低圧圧縮機13より前方や高圧圧縮機14より後方にストラットを有していてもよい。内殻17と外殻18との間には、円筒状のバイパス路Bが形成されている。ファン3により吸い込まれた空気は、その一部が低圧圧縮機13に送られ、残りがバイパス路Bを通流して後方に排出される。
【0014】
ケーシング7の外殻18の外周面は、第1領域18aと、第1領域18aの後方に設けられた第2領域18bと、第1領域18aと第2領域18bとをつなぐ第3領域18cとを有する。第1領域18aは、第2領域18bよりも小径である。第1領域18aは、前後方向(回転軸線方向)において、少なくとも低圧圧縮機13に対応する位置に設けられている。第2領域18bは、前後方向(回転軸線方向)において、少なくとも燃焼器5に対応する位置に設けられている。第3領域18cは、後方に向けて徐々に拡径する傾斜領域となっている。なお、第1領域18aには、後述するカートリッジ42が配置される。
【0015】
回転軸2は、複数の軸受8で支持されている。複数の軸受8は、ケーシング7の内部空間(より詳しくは、内殻17の径方向内方)において回転軸2に沿って配置されている。なお、
図1では、複数の軸受8のうち、低圧軸11を支持する軸受8a,8bのみ示し、高圧軸12を支持する軸受は省略する。ガスタービンエンジン1は、これら複数の軸受8にオイルミストを供給するオイルミスト供給システム20Aを備える。
【0016】
図2は、オイルミスト供給システム20Aの概略構成図である。オイルミスト供給システム20Aは、主潤滑装置21、始動用潤滑装置22及び制御装置23を有する。
【0017】
主潤滑装置21は、ガスタービンエンジン1の運転中に軸受8にオイルミストを供給する潤滑装置である。主潤滑装置21は、圧縮機4から抽気した圧縮空気の圧力によりオイルミストを複数の軸受8に供給する。主潤滑装置21は、第1供給路31、オイルミスト生成器32及び第1逆流防止装置33を有する。
【0018】
第1供給路31は、圧縮機4から抽気した圧縮空気を複数の軸受8に導く。なお、第1供給路31における圧縮機4側を「上流側」といい、第1供給路31における軸受8側を「下流側」と称する。第1供給路31は、例えば、パイプ、ケーシング、ハウジング等によって形成することができる。
【0019】
オイルミスト生成器32は、圧縮機4から抽気した圧縮空気とオイルとを混在させてオイルミストを生成する。オイルミスト生成器32は、生成したオイルミストを第1供給路31の途中に供給できるように、第1供給路31の途中に設けられている。例えば、オイルミスト生成器32は、潤滑オイルタンク(図示せず)から微量のオイルを第1供給路31の途中(オイル混在箇所31a)に吐出する電動潤滑オイルポンプを有する。電動潤滑オイルポンプは、例えば第1領域18aの外周面に設置されている。オイル混在箇所31aにて生成されたオイルミストは、圧縮機4から抽気した圧縮空気の圧力により第1供給路31を通じて複数の軸受8に供給される。なお、軸受8を冷却したオイルミストは、排出流路(図示せず)を通じてバイパス路B(
図1参照)に導かれ、バイパス路Bに排出される。例えば、排出流路がストラット19及び他の位置に配置されたストラット中に設けられてもよい。
【0020】
第1逆流防止装置33は、第1供給路31を下流側から上流側に向かって流体が流れるのを阻止する。第1逆流防止装置33は、例えば逆止弁である。第1逆流防止装置33は、第1供給路31における後述する第2供給路41との接続箇所31bより上流側部分に設けられている。本実施形態では、第1逆流防止装置33は、第1供給路31におけるオイルミスト生成器32(より詳しくはオイル混在箇所31a)よりも下流側部分に設けられている。なお、第1逆流防止装置33は、第1供給路31におけるオイルミスト生成器32(より詳しくはオイル混在箇所31a)よりも上流側部分に設けられていてもよい。
【0021】
始動用潤滑装置22は、ガスタービンエンジン1の始動前又は始動直後に軸受8にオイルミストを供給する潤滑装置である。始動用潤滑装置22は、第2供給路41、カートリッジ42、オイル貯留室43及び第2逆流防止装置44を有する。
【0022】
第2供給路41は、その端部が第1供給路31の途中に接続されている。より詳しくは、第2供給路41は、その端部が第1供給路31における第1逆流防止装置33より下流側部分に接続されている。なお、第1供給路31と第2供給路41とが互いに接続する箇所を、「接続箇所31b」と称する。第2供給路41における第1供給路31との接続箇所31bとは反対側の端部41aには、カートリッジ42が接続される。なお、第2供給路41におけるカートリッジ42側を「上流側」といい、接続箇所31b側を「下流側」と称する。第2供給路41は、例えば、パイプ、ケーシング、ハウジング等によって形成することができる。
【0023】
カートリッジ42は、第2供給路41の上流側端部41aに対して着脱可能となっている。カートリッジ42は、ガス源としてのガス充填室51と、開装置52とを有する。ガス充填室51には高圧ガスが充填されている。
【0024】
開装置52は、ガス源としてのガス充填室51から、第2供給路41を通じて接続箇所31bへガスの供給を開始させる装置である。開装置52は、カートリッジ42内に形成されたガス流路52aに設けられている。ガス流路52aは、ガス充填室51のガス流出口51aと第2供給路41の上流側端部41aとを接続する。本実施形態において、開装置52は、電気的に駆動する開閉弁である。開装置52は、ガス充填室51と第1供給路31との間を遮断した状態から連通した状態へ移行させたり、連通した状態から遮断した状態へ移行させたりする。具体的には、開装置52は、制御装置23からガス供給指令を受信することにより、ガス充填室51と第1供給路31との間を遮断した状態から連通した状態へ移行させる。これにより、第2供給路41を通じてガス充填室51から接続箇所31bへガスが導かれる。
【0025】
オイル貯留室43は、第2供給路41に設けられている。オイル貯留室43は、所定の量のオイルが貯留されている。開装置52によるガスの供給が開始すると、オイル貯留室43にはガス充填室51から高圧ガスが流入する。これにより、オイル貯留室43では、貯留したオイルと高圧ガスとが混在してオイルミストが生成される。生成されたオイルミストは、ガス充填室51から流出したガスの圧力により第2供給路41におけるオイル貯留室43より下流側部分と第1供給路31における接続箇所31bより下流側部分とを通じて、複数の軸受8に供給される。
【0026】
こうして、始動用潤滑装置22は、開装置52がガスの供給を開始させたときに、ガス源であるガス充填室51から流出したガスの圧力によりオイルミストを、複数の軸受8に供給する。なお、オイル貯留室43は、貯留したオイルと、第2供給路41を上流側から流入したガスとが混在するように形成されていればよく、例えばパイプの一部であってもよい。
【0027】
第2逆流防止装置44は、第2供給路41を下流側から上流側に向かって流体が流れるのを阻止する。第2逆流防止装置44は、例えば逆止弁である。第2逆流防止装置44は、第2供給路41におけるオイル貯留室43より下流側部分に設けられている。
【0028】
制御装置23は、主潤滑装置21及び始動用潤滑装置22の各々からの軸受8へのオイルミストの供給を制御する。制御装置23は、いわゆるコンピュータであって、CPU等の演算処理部と、ROM、RAM等の記憶部を有している。制御装置23は、オイルミスト生成器32及び開装置52とそれぞれ電気的に接続されている。
【0029】
ガスタービンエンジン1を始動させる前に、制御装置23は、始動用潤滑装置22によるオイルミスト供給を行う。具体的には、制御装置23は、開装置52にガス供給指令を送る。これにより、開装置52としての開閉弁が開き、ガス充填室51からオイル貯留室43に高圧ガスが流入して、オイル貯留室43ではオイルミストが生成される。生成されたオイルミストは、ガス充填室51から流出したガスの圧力により第2供給路41におけるオイル貯留室43より下流側部分と第1供給路31における接続箇所31bより下流側部分とを通じて、複数の軸受8に供給される。なお、第2供給路41から第1供給路31に流入したガス及びオイルミストは、第1逆流防止装置33により圧縮機4側に流れるのを阻止される。
【0030】
始動用潤滑装置22は、主潤滑装置21によるオイルミスト供給を安定的に実行できるようになるまでの短い期間において、軸受8の潤滑性を確保できればよい。言い換えれば、ガス充填室51に充填されるガス量(即ち、ガス圧)及びオイル貯留室43に貯留されるオイル量は、この期間における軸受8の潤滑性を確保できるよう適宜調整される。
【0031】
始動用潤滑装置22によるオイルミスト供給が実行された後に、ガスタービンエンジン1は始動される。但し、ガスタービンエンジン1は、始動用潤滑装置22によるオイルミスト供給が実行される前または同時に始動されてもよい。例えばガスタービンエンジン1を始動した直後に、始動用潤滑装置22によるオイルミスト供給を行ってもよい。
【0032】
ガスタービンエンジン1の始動により圧縮機4の圧力が十分に高くなった後、制御装置23は、主潤滑装置21によるオイルミスト供給を行う。具体的には、制御装置23は、オイルミスト生成器32(の電動潤滑オイルポンプ)にオイルミスト生成指令を送る。これにより、オイルミスト生成器32は、圧縮機4から抽気した圧縮空気とオイルとを混在させてオイルミストを生成する。生成されたオイルミストは、圧縮機4から抽気した圧縮空気の圧力により第1供給路31を通じて複数の軸受8に供給される。なお、第1供給路31から第2供給路41に流入したガス及びオイルミストは、第2逆流防止装置44によりカートリッジ42側に流れるのを阻止される。
【0033】
以上に説明した構成によれば、ガスタービンエンジン1の始動前や始動直後など、圧縮機4の空気の圧力が低いときであっても、始動用潤滑装置22を用いて、ガス充填室51から流出したガスの圧力によりオイルミストを複数の軸受8に供給することができる。従って、ガスタービンエンジン1を始動する際の軸受8の潤滑を容易に行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では、カートリッジ42にガス源であるガス充填室51を含むため、カートリッジ42の交換により、使用済みとなったカートリッジ42を、ガス源として利用可能な新たなカートリッジ42に容易に取り換えることができる。このため、始動用潤滑装置22を容易に使用可能な状態にすることができる。
【0035】
また、本実施形態では、第1逆流防止装置33により、オイルミスト生成器32及び圧縮機4への高圧流体の逆流を防ぐことができる。また、第2逆流防止装置44により、オイル貯留室43への高圧流体の逆流を防ぐことができる。さらに、第1逆流防止装置33及び第2逆流防止装置44は、逆止弁であるため、機械的構成な構成で高圧流体の逆流を防ぐことができる。
【0036】
また、本実施形態では、開装置52が開閉弁であるため、ガス充填室51と第1供給路31との間を連通した状態から遮断した状態へ切換可能である。また、使用済みカートリッジ42のガス充填室51に再度高圧ガスを充填することが可能であり、カートリッジ42を繰り返し使用することができる。
【0037】
ところで、例えば始動用潤滑装置22が、オイルと高圧ガスとを同じ空間に収容した構成である場合、開装置52がガスの供給を開始したときに、当該空間にオイルを残したまま高圧ガスのみが軸受8に導かれる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、ガス源であるガス充填室51から流出したガスが軸受8に向かうまでの間にオイル貯留室43を配置しているため、ガス源から流出したガスとオイルとを確実に混在させ、オイルミストを確実に軸受8に送ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るガスタービンエンジン1を、
図3を参照して説明する。なお、本実施形態ならびに後述する第3実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0039】
図3は、第2実施形態に係るガスタービンエンジン1のオイルミスト供給システム20Bの概略構成図である。第2実施形態では、始動用潤滑装置22におけるガス源及び開装置の構成が異なる。
【0040】
具体的には、カートリッジ42は、第1実施形態のガス充填室51と開装置52の代わりに、ガス発生室61と開装置62とを有する。ガス発生室61には、公知のガス発生剤61aが収容されている。ガス発生剤61aは、着火されることにより燃焼ガスを発生させる火薬である。
【0041】
開装置62は、ガス源としてのガス発生室61から、第2供給路41を通じて接続箇所31bへガスの供給を開始させる。本実施形態において、開装置62は、ガス発生室61のガス流出口61bを閉塞する閉塞部材63と、閉塞部材63を破壊する破壊装置64とを含む。
【0042】
閉塞部材63は、例えばステンレスなどの金属板である。破壊装置64は、例えばガス発生剤61aに点火する点火装置である。すなわち、制御装置23からの点火指令により破壊装置64としての点火装置がガス発生剤61aを点火し、これにより燃焼ガスを発生させる。燃焼ガス発生により生じた衝撃波又は燃焼ガス発生により上昇したガス発生室61内のガス圧によって、閉塞部材63は破壊される。こうして、開装置62は、ガス発生室61と第1供給路31との間を遮断した状態から連通した状態へ移行させる。但し、破壊装置64は、化学反応を用いずに、ピンなどで機械的に閉塞部材63を破壊する構成であってもよい。
【0043】
こうして、開装置62によりガス供給が開始されると、オイル貯留室43にはガス発生室61から高圧ガスが流入する。これにより、オイル貯留室43では、貯留したオイルと高圧ガスとが混在してオイルミストが生成される。生成されたオイルミストは、ガス発生室61から流出したガスの圧力により第2供給路41におけるオイル貯留室43より下流側部分と第1供給路31における接続箇所31bより下流側部分とを通じて、複数の軸受8に供給される。
【0044】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、開装置62が、ガス発生室61のガス流出口61bを閉塞する閉塞部材63と、閉塞部材63を破壊する破壊装置64とを含む構成であるため、開装置62が電気駆動弁である場合に比べて、開装置62の構成をコンパクトにすることができる。その結果、カートリッジ42をコンパクトにすることができる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るガスタービンエンジン1を、
図4を参照して説明する。
図4は、第3実施形態に係るガスタービンエンジン1のオイルミスト供給システム20Cの概略構成図である。
【0046】
本実施形態では、第1供給路31及び第2供給路41にそれぞれ第1逆流防止装置33及び第2逆流防止装置44が設けられる代わりに、第1供給路31における第2供給路41との接続箇所31bに三方弁71が設けられている。即ち、三方弁71は、本発明の「第1逆流防止装置」及び「第2逆流防止装置」として機能する。
【0047】
三方弁71は、第1位置と第2位置との間で切り換わる。三方弁71が第1位置にあるとき、第1供給路31における接続箇所31bより上流側部分と下流側部分との間を連通するとともに、第2供給路41と第1供給路31における接続箇所31bより下流側部分との間を遮断する。三方弁71が第2位置にあるとき、第1供給路31における接続箇所31bより上流側部分と下流側部分との間を遮断するとともに、第2供給路41と第1供給路31における接続箇所31bより下流側部分との間を連通する。
【0048】
三方弁71は電気駆動弁であり、制御装置23と電気的に接続されている。制御装置23が三方弁71に制御信号を送ることにより、三方弁71が第1位置から第2位置に切り換わると、始動用潤滑装置22によるオイルミスト供給が開始される。エンジン1の運転中に、制御装置23が三方弁71に別の制御信号を送ることにより、三方弁71が第2位置から第1位置に切り換わると、主潤滑装置21によるオイルミスト供給が開始される。
【0049】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、1つの装置で、オイルミスト生成器32及び圧縮機4への高圧流体の逆流と、オイル貯留室43への高圧流体の逆流を防ぐことができる。
【0050】
(変形例)
次に、第3実施形態の変形例に係るガスタービンエンジン1を、
図5を参照して説明する。
図5は、第3実施形態の変形例に係るガスタービンエンジン1のオイルミスト供給システム20Dの概略構成図である。
【0051】
本変形例では、ガス源としてのガス充填室72に、高圧な状態でオイルミストが収容されている。言い換えれば、ガス充填室72には、所定の量のオイルと高圧ガスとが混在した状態で収容されている。カートリッジ42が第2供給路41の上流側端部41aに対して着脱した状態にあるときに、ガス充填室72のガス流出口72aがガス充填室72の下部(例えばガス充填室72の下面)に位置する構成となっている。このため、ガス充填室72内の空間の下部、第2供給路41、及び、ガス流出口72aと第2供給路41の上流側端部41aとを接続するガス流路72bの少なくとも1つに、ガス充填室72内に収容したオイル(例えばオイルミストの一部が凝縮したものを含む)が溜まり得る。
【0052】
本変形例では、三方弁71は、本発明の「第1逆流防止装置」及び「第2逆流防止装置」として機能するだけでなく、本発明の「開装置」としても機能する。三方弁71を第1位置から第2位置に切り換えることで、即ち、第2供給路41と第1供給路31における接続箇所31bより下流側部分との間を連通することで、始動用潤滑装置22による軸受8へのオイルミストの供給が開始される。また、始動用潤滑装置22によるオイルミスト供給の後に、三方弁71を第2位置から第1位置に切り換えることで、主潤滑装置21によるオイルミストの供給が可能となる。
【0053】
本変形例でも、第3実施形態と同様の効果が得られる。また、ガス充填室72のガス流出口72aがガス充填室72の下部に位置するため、第2供給路41と第1供給路31とが連通したときに、高圧ガスだけが軸受8に送られることを抑制できる。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0055】
例えば上記の第1、第2及び第3実施形態、並びに第3実施形態の変形例の構成は、適宜組み合わせが可能である。例えば上記の第1実施形態において、開装置52を、開閉弁に代えて、ガス充填室51のガス流出口を閉塞する閉塞部材と、当該閉塞部材を破壊する破壊装置とを含む構成としてもよい。また、例えば、第3実施形態とその変形例において、ガス源を、ガス充填室51,72に代えて、ガス発生剤を収容するガス発生室としてもよい。
【0056】
また、ガス源は、ガス発生室とガス充填室との組み合わせであってもよい。例えば、第2実施形態において、ガス発生室61は、閉塞部材63とは別の閉塞部材によって、高圧ガスを充填したガス充填室と区画されていてもよい。そして、ガス発生室61でのガスの発生により、ガス発生室とガス充填室との間の閉塞部材を破壊した後に、ガス圧により閉塞部材63が破壊されてもよい。
【0057】
また、上記の第1及び第2実施形態において、第1逆流防止装置33及び第2逆流防止装置44は、逆止弁でなくてもよい。例えば、第1逆流防止装置33及び第2逆流防止装置44は、それぞれ、第1供給路31及び第2供給路41を下流側から上流側への流体の流れだけでなく、上流側から下流側への流体の流れも同時に阻止する開閉弁であってもよい。第1逆流防止装置33及び第2逆流防止装置44は、例えば電気的に駆動する開閉弁であってもよい。この場合、第2供給路41におけるオイル貯留室43より下流側部分に設けられた開閉弁は、開装置52,62の代わりに又は加えて、本発明の開装置として機能してもよい。
【0058】
また、上記の第1及び第2実施形態において、カートリッジ42は、ガス源だけでなく、オイル貯留室43も備えてもよい。これにより、オイル貯留室43へのオイルの充填を容易に行うことができる。また、カートリッジ42は、開装置52,62を備えなくてもよく、この場合、開装置52,62は、第2供給路41におけるオイル貯留室43とガス源との間に設けられてもよい。
【0059】
また、カートリッジ42は、第1領域18aに配置されていなくてもよいが、第2供給路41を短くするために、第1供給路31の近傍、例えばオイルミスト生成器32の近傍に配置するのが好ましい。
【0060】
また、始動用潤滑装置22は、第2供給路41に対して着脱可能なカートリッジ42を備えなくてもよい。この場合、本発明におけるガス源は、ガス充填室及びガス発生室のいずれとも異なる構成であってもよく、軸受8までオイルミストを送り込むことが可能な構成であればよい。但し、ガス源は、エンジン始動によってガスを供給する圧縮機4とは異なる。ガス源は、エンジン停止状態でもガスを供給し得るものである。
【0061】
また、本発明のガスタービンエンジンは、二軸ガスタービンエンジンに限定されず、一軸ガスタービンエンジンであってもよい。本発明のガスタービンエンジンは、航空機用でなくてもよく、飛翔体にも適用可能である。本発明のガスタービンエンジンは、ターボファンエンジンでなくてもよく、ターボジェットエンジンでもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :ガスタービンエンジン
2 :回転軸
4 :圧縮機
5 :燃焼器
6 :タービン
7 :ケーシング
8 :軸受
21 :主潤滑装置
22 :始動用潤滑装置
31 :第1供給路
31a :オイル混在箇所
31b :接続箇所
32 :オイルミスト生成器
33 :第1逆流防止装置
41 :第2供給路
42 :カートリッジ
43 :オイル貯留室
44 :第2逆流防止装置
51 :ガス充填室(ガス源)
52 :開装置
61 :ガス発生室(ガス源)
61a :ガス発生剤
62 :開装置
63 :閉塞部材
64 :破壊装置
71 :三方弁
72 :ガス充填室(ガス源)