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特許73369273次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019167412
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043153
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠之
(72)【発明者】
【氏名】吉野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】西 義弘
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 基広
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124496(JP,A)
【文献】特開2008-082707(JP,A)
【文献】特開2019-074668(JP,A)
【文献】特開2016-191630(JP,A)
【文献】特開2019-113507(JP,A)
【文献】特表2017-536554(JP,A)
【文献】特開2019-066289(JP,A)
【文献】特開2004-037162(JP,A)
【文献】特開2003-269963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置であって、
望遠鏡部の視準により前記測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、
前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、
前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、
前記望遠鏡部による視準範囲の画像を表示する表示部と、
を備え、
前記スキャナユニットは、前記第2反射測距光による明暗を受光信号に変換する受光素子を有し、
前記制御演算部は、前記受光素子から送信された前記受光信号に基づいて前記第2反射測距光の強度を演算し、前記第2反射測距光の強度を示す画像を前記望遠鏡部による前記視準範囲の画像に重合させて前記表示部に表示させる制御を実行するとともに、前記スキャナユニットが前記点群データを取得したときに前記測定対象物のうちに前記3次元データが取得されていないデータ不足部が前記表示部において存在すると、前記視準測距ユニットにより取得された前記データ不足部に関する前記3次元データを前記点群データに補充する制御を実行することを特徴とする3次元測量装置。
【請求項2】
前記視準測距ユニットは、前記望遠鏡部の前記視準により測定箇所に設定された前記データ不足部に関する前記3次元データを直接的に取得することを特徴とする請求項1に記載の3次元測量装置。
【請求項3】
前記視準測距ユニットは、前記データ不足部に設置された計測用ターゲットであって前記望遠鏡部の前記視準により測定箇所に設定された計測用ターゲットに関する前記3次元データを取得することで前記データ不足部に関する前記3次元データを間接的に取得することを特徴とする請求項1に記載の3次元測量装置。
【請求項4】
前記視準測距ユニットは、前記データ不足部として設定された領域において自動的なスキャンを実行することにより前記データ不足部に関する前記3次元データを取得することを特徴とする請求項1に記載の3次元測量装置。
【請求項5】
前記制御演算部は、前記データ不足部を認識し、前記視準測距ユニットにより前記スキャンを行う前記領域を自動的に設定することを特徴とする請求項4に記載の3次元測量装置。
【請求項6】
前記制御演算部は、前記視準測距ユニットの前記スキャンを実行する際に測定箇所毎に前記望遠鏡部の絞りを調整する制御を実行することを特徴とする請求項4または5に記載の3次元測量装置。
【請求項7】
望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、
前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、
前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、
前記望遠鏡部による視準範囲の画像を表示する表示部と、
を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置が実行する3次元測量方法であって、
前記スキャナユニットの受光素子から送信された受光信号に基づいて前記第2反射測距光の強度を演算し、前記第2反射測距光の強度を示す画像を前記望遠鏡部による前記視準範囲の画像に重合させて前記表示部に表示させるステップと、
前記スキャナユニットが前記点群データを取得したときに前記測定対象物のうちに前記3次元データが取得されていないデータ不足部が前記表示部において存在すると、前記視準測距ユニットにより取得された前記データ不足部に関する前記3次元データを前記点群データに補充するステップと、
を備えたことを特徴とする3次元測量方法。
【請求項8】
望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、
前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、
前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、
前記望遠鏡部による視準範囲の画像を表示する表示部と、
を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置のコンピュータによって実行される3次元測量プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記スキャナユニットの受光素子から送信された受光信号に基づいて前記第2反射測距光の強度を演算し、前記第2反射測距光の強度を示す画像を前記望遠鏡部による前記視準範囲の画像に重合させて前記表示部に表示させるステップと、
前記スキャナユニットが前記点群データを取得したときに前記測定対象物のうちに前記3次元データが取得されていないデータ不足部が前記表示部において存在すると、前記視準測距ユニットにより取得された前記データ不足部に関する前記3次元データを前記点群データに補充するステップと、
を実行させることを特徴とする3次元測量プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トータルステーションと、レーザスキャナユニットと、を備えた測量システムが開示されている。トータルステーションは、測定点の3次元座標(3次元データ)を高精度に測定する測量装置である。レーザスキャナユニットは、測距光としてパルスレーザ光を回転照射し、パルスレーザ光毎に測距を行い、点群データを取得する。より具体的には、レーザスキャナユニットは、測距光としてパルスレーザ光を測定対象物に照射し、測定対象物で反射したパルスレーザ光毎の反射光を受光して、測定対象物までの距離を測定するとともに測距光の照射方向(水平角および鉛直角)を検出することにより、測定対象物の多数点の3次元データ(3次元点群データ)を取得する。
【0003】
トータルステーションの測定精度は、工業計測を含めて非常に高い。例えば、トータルステーションは、測量の分野で使用される場合において、距離精度で1mm以下の測定精度を確保することができ、また、角度精度も一級経緯儀等で要求される充分な精度を確保することができる。レーザスキャナユニットは、1秒間に数十万点の点群測定を実行可能であり、非常に高速で高効率な測量を実現することができる。
【0004】
ここで、測定対象物の反射特性や測定対象物までの距離によっては、測定対象物の所定部分で反射した反射光の強度が強すぎたり、弱すぎたりすることがある。例えば測定対象物の反射特性として測定対象物の材料などによっては、測定対象物の所定部分で反射した反射光の強度が強すぎたり、弱すぎたりすることがある。そうすると、レーザスキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに、測定対象物のうちに3次元データが取得されない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在することがある。この点において、レーザスキャナユニットを備えた3次元測量装置には改善の余地がある。
【0005】
あるいは、トータルステーションは、レーザスキャナユニットと比較して、高い測定精度および遠い測定可能距離(到達距離)を有する一方で、長い測定時間を要する。これに対して、レーザスキャナユニットは、トータルステーションと比較して、短時間で高効率な測量を行うことができる一方で、測定精度および測定可能距離(到達距離)において劣っている。例えば、トータルステーションの測定可能距離は、約500m以上、数km以下程度である。一方で、レーザスキャナユニットの測定可能距離は、約100m未満程度である。そのため、測定対象物のうちにレーザスキャナユニットの測定可能距離よりも遠い部分が存在すると、レーザスキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに、測定対象物のうちに3次元データが取得されない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在することがある。この点において、レーザスキャナユニットを備えた3次元測量装置には改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-223540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、データ不足部が生ずることを抑えることができる3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置であって、望遠鏡部の視準により前記測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、を備え、前記制御演算部は、前記スキャナユニットが前記点群データを取得したときに前記測定対象物のうちに前記3次元データが取得されていないデータ不足部が存在すると、前記視準測距ユニットにより取得された前記データ不足部に関する前記3次元データを前記点群データに補充する制御を実行することを特徴とする本発明に係る3次元測量装置により解決される。
【0009】
本発明に係る3次元測量装置によれば、スキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに、測定対象物のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在すると、制御演算部は、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データに補充する制御を実行する。これにより、スキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに測定対象物のうちにデータ不足部が存在する場合であっても、制御演算部は、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データに補充し、3次元データのいわゆる「抜け部」の「穴埋め」を実行してデータ不足部が生ずることを抑えることができる。
【0010】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記視準測距ユニットは、前記望遠鏡部の前記視準により測定箇所に設定された前記データ不足部に関する前記3次元データを直接的に取得することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る3次元測量装置によれば、視準測距ユニットは、視準測距ユニットの望遠鏡部の視準により測定箇所に設定されたデータ不足部の測量(測距および測角)を行い、データ不足部に関する3次元データを直接的に取得する。これにより、制御演算部は、視準測距ユニットにより直接的に取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データにより確実に補充し、データ不足部が生ずることをより確実に抑えることができる。
【0012】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記視準測距ユニットは、前記データ不足部に設置された計測用ターゲットであって前記望遠鏡部の前記視準により測定箇所に設定された計測用ターゲットに関する前記3次元データを取得することで前記データ不足部に関する前記3次元データを間接的に取得することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る3次元測量装置によれば、視準測距ユニットは、望遠鏡部の視準により測定箇所に設定された計測用ターゲットの測量(測距および測角)を行い、計測用ターゲットに関する3次元データを取得する。計測用ターゲットは、測定対象物のうちのデータ不足部に設置されている。これにより、データ不足部に関する3次元データは、視準測距ユニットにより取得された計測用ターゲットに関する3次元データに基づいて間接的に取得される。これにより、制御演算部は、視準測距ユニットにより計測用ターゲットを介して間接的に取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データにより確実に補充し、データ不足部が生ずることをより確実に抑えることができる。
【0014】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記視準測距ユニットは、前記データ不足部として設定された領域において自動的なスキャンを実行することにより前記データ不足部に関する前記3次元データを取得することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る3次元測量装置によれば、視準測距ユニットが、データ不足部として測定箇所に設定された領域において自動的なスキャンを実行し、データ不足部の測量(測距および測角)を行い、データ不足部に関する3次元データを取得する。これにより、例えば作業者等が望遠鏡部の視準によりデータ不足部毎に測定箇所を設定しなくともデータ不足部として所定領域を設定することにより、視準測距ユニットが自動的にスキャンを実行し、データ不足部に関する3次元データを取得する。そのため、視準測距ユニットは、データ不足部に関する3次元データを効率的に取得することができる。これにより、制御演算部は、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データに効率的に補充し、データ不足部が生ずることを抑えることができる。
【0016】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記制御演算部は、前記データ不足部を認識し、前記視準測距ユニットにより前記スキャンを行う前記領域を自動的に設定することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る3次元測量装置によれば、作業者等が視準測距ユニットにより自動的なスキャンを行う領域を例えば操作表示部などにおいて設定しなくとも、制御演算部は、データ不足部を認識し、視準測距ユニットにより自動的なスキャンを行う領域を自動的に設定する。これにより、制御演算部は、データ不足部に関する3次元データを視準測距ユニットにより効率的に取得し、スキャナユニットにより取得された点群データに効率的に補充することができる。
【0018】
本発明に係る3次元測量装置において、好ましくは、前記制御演算部は、前記視準測距ユニットの前記スキャンを実行する際に測定箇所毎に前記望遠鏡部の絞りを調整する制御を実行することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る3次元測量装置によれば、制御演算部が測定箇所毎に望遠鏡部の絞りを調整することにより、視準測距ユニットは、自動的なスキャンを実行する際に、測定対象物の所定部分で反射した反射光の強度が比較的強い場合であってもデータ不足部に関する3次元データをより確実に取得することができる。これにより、制御演算部は、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データにより確実に補充し、データ不足部が生ずることをより確実に抑えることができる。
【0020】
前記課題は、望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置が実行する3次元測量方法であって、前記スキャナユニットが前記点群データを取得したときに前記測定対象物のうちに前記3次元データが取得されていないデータ不足部が存在すると、前記視準測距ユニットにより取得された前記データ不足部に関する前記3次元データを前記点群データに補充するステップを備えたことを特徴とする本発明に係る3次元測量方法により解決される。
【0021】
本発明に係る3次元測量方法によれば、スキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに、測定対象物のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在すると、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データに補充するステップが実行される。これにより、スキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに測定対象物のうちにデータ不足部が存在する場合であっても、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データがスキャナユニットにより取得された点群データに補充され、3次元データのいわゆる「抜け部」の「穴埋め」が実行されてデータ不足部が生ずることを抑えることができる。
【0022】
前記課題は、望遠鏡部の視準により測定対象物に第1測距光を照射し、前記第1測距光が前記測定対象物で反射した第1反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記視準の方向を検出する視準測距ユニットと、前記視準測距ユニットと一体で設けられ、第2測距光を回転照射し、前記第2測距光が前記測定対象物で反射した第2反射測距光に基づいて、前記測定対象物までの距離を測定するとともに前記第2測距光の照射方向を検出することにより前記測定対象物に関する点群データを取得するスキャナユニットと、前記視準測距ユニットおよび前記スキャナユニットの少なくともいずれかに設けられた制御演算部と、を備え、前記測定対象物の3次元データを取得する3次元測量装置のコンピュータによって実行される3次元測量プログラムであって、前記コンピュータに、前記スキャナユニットが前記点群データを取得したときに前記測定対象物のうちに前記3次元データが取得されていないデータ不足部が存在すると、前記視準測距ユニットにより取得された前記データ不足部に関する前記3次元データを前記点群データに補充するステップを実行させることを特徴とする本発明に係る3次元測量プログラムにより解決される。
【0023】
本発明に係る3次元測量プログラムによれば、スキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに、測定対象物のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在すると、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニットにより取得された点群データに補充するステップが実行される。これにより、スキャナユニットが測定対象物の点群データを取得したときに測定対象物のうちにデータ不足部が存在する場合であっても、視準測距ユニットにより取得されたデータ不足部に関する3次元データがスキャナユニットにより取得された点群データに補充され、3次元データのいわゆる「抜け部」の「穴埋め」が実行されてデータ不足部が生ずることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、データ不足部が生ずることを抑えることができる3次元測量装置、3次元測量方法および3次元測量プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る3次元測量装置の構造系を主として表すブロック図である。
図2】本実施形態に係る3次元測量装置の制御系を主として表すブロック図である。
図3】本実施形態に係る3次元測量装置の動作の概略を表すフローチャートである。
図4】本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第1具体例を表すフローチャートである。
図5】本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第2具体例を表すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第3具体例を表すフローチャートである。
図7】本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第4具体例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係る3次元測量装置の構造系を主として表すブロック図である。
図2は、本実施形態に係る3次元測量装置の制御系を主として表すブロック図である。
【0028】
本実施形態に係る3次元測量装置2は、視準測距ユニット4と、スキャナユニット5と、を備え、例えば建築物などの測定対象物7の3次元データを取得する。視準測距ユニット4は、例えばトータルステーションなどと呼ばれ、望遠鏡部45の視準により、測定対象物7に第1測距光455(図2参照)を照射し、第1測距光455が測定対象物7で反射した第1反射測距光456(図2参照)と第1内部参照光(図示せず)とに基づいて測定対象物7までの距離を測定するとともに、第1測距光455の照射方向すなわち望遠鏡部45の視準の方向を検出する。つまり、視準測距ユニット4は、測距および測角を行う機器である。視準測距ユニット4の詳細については、後述する。
【0029】
視準測距ユニット4が測距および測角を行う測定対象物には、例えばプリズムなどの計測用ターゲット6が含まれる。つまり、視準測距ユニット4は、測定対象物として例えばプリズムなどの計測用ターゲット6に関する測距および測角を行うことができる。計測用ターゲット6として用いられるプリズムは、特には限定されず、例えば全周プリズムや球状プリズムや面状プリズムなどである。
【0030】
スキャナユニット5は、視準測距ユニット4と一体で設けられている。本実施形態に係る3次元測量装置2では、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4の上部に固定されている。なお、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4に対して回転自在に設けられていてもよい。スキャナユニット5は、測定対象物7に第2測距光565(図2参照)を照射し、第2測距光565が測定対象物7で反射した第2反射測距光566(図2参照)と第2内部参照光(図示せず)とに基づいて測定対象物7までの距離を測定するとともに、第2測距光565の照射方向を検出する。スキャナユニット5は、視準測距ユニット4と同様に、測距および測角を行う機器である。
【0031】
より具体的には、スキャナユニット5は、第2測距光565を回転照射し、測定対象物7までの距離を測定するとともに第2測距光565の照射方向を検出することにより、測定対象物7に関する多数の測定点の3次元座標(3次元データ)を取得する。すなわち、スキャナユニット5は、測定対象物7における多数の測定点の3次元データ(点群データ)を取得する。スキャナユニット5の詳細については、後述する。
【0032】
本実施形態の視準測距ユニット4は、整準部41と、第1托架部42と、第1水平回転部43と、第1鉛直回転部44と、望遠鏡部45と、制御演算部46と、操作表示部47と、基盤部48と、傾斜計49と、を有する。なお、視準測距ユニット4は、傾斜計49を必ずしも有していなくともよい。視準測距ユニット4は、測定対象物としての計測用ターゲット6を自動的に探す自動追尾機能を有していてもよい。
【0033】
制御演算部46は、演算部461と、第1距離測定部462と、第1水平回転駆動部463と、第1鉛直回転駆動部464と、第2距離測定部465と、第2鉛直回転駆動部467と、記憶部468と、画像処理部469と、を有する。演算部461は、例えばCPU(Central Processing Unit)などであり、操作表示部47の操作入力部472から送信された信号(指令)に基づいて、プログラムの起動や、信号の制御処理や、演算や、操作表示部47の表示部471などの駆動制御などを実行する。すなわち、演算部461は、3次元測量装置2の全体の制御を行うとともに、測量条件や、測定結果(測距結果および測角結果)や、画像処理された結果(2D受光光量の画像)などを表示部471に表示させる。
【0034】
なお、制御演算部46は、スキャナユニット5に設けられていてもよく、視準測距ユニット4およびスキャナユニット5の両方に設けられていてもよい。すなわち、制御演算部46は、視準測距ユニット4およびスキャナユニット5の少なくともいずれかに設けられる。
【0035】
第1距離測定部462、第1水平回転駆動部463、第1鉛直回転駆動部464、第2距離測定部465、第2鉛直回転駆動部467、および画像処理部469は、記憶部468に格納(記憶)されているプログラムを演算部461が実行することにより実現される。なお、第1距離測定部462、第1水平回転駆動部463、第1鉛直回転駆動部464、第2距離測定部465、第2鉛直回転駆動部467、および画像処理部469は、ハードウェアによって実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0036】
記憶部468には、例えば、測定のためのシーケンスプログラムや、画像処理のための画像処理プログラムや、演算プログラムなどが格納されている。記憶部468としては、例えば、3次元測量装置2に内蔵された半導体メモリなどが挙げられる。あるいは、記憶部468としては、3次元測量装置2に接続可能なCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、RAM(Random access memory)、ROM(Read only memory)、ハードディスク、メモリカードなどの種々の記憶媒体が挙げられる。
【0037】
制御演算部46を含むコンピュータによって実行されるプログラムは、本発明の「3次元測量プログラム」に相当する。ここでいう「コンピュータ」とは、パソコンには限定されず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって本発明の機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0038】
整準部41は、三脚(図示せず)に取付けられる部分であり、例えば3つの調整螺子411を有する。整準部41の整準は、測量位置において、第1托架部42に設けられた傾斜センサ(図示せず)が水平を検出するように調整螺子411が調整されることにより行われる。すなわち、第1托架部42は、測量位置において、調整螺子411による整準が行われることで水平に維持される。
【0039】
第1水平回転部43は、第1水平回転軸431と、軸受432と、第1水平駆動モータ433と、第1水平角検出器(例えばエンコーダ)434と、を有する。第1水平回転軸431は、鉛直に延びた第1鉛直軸心436を有し、軸受432を介して基盤部48に回転自在に支持されている。第1托架部42は、第1水平回転軸431に支持され、第1水平駆動モータ433から伝達された駆動力により第1鉛直軸心436を中心として水平方向に第1水平回転軸431と一体的に回転する。
【0040】
基盤部48に対する第1水平回転軸431の回転角(すなわち第1托架部42の回転角)は、第1水平角検出器434によって検出される。第1水平角検出器434の検出結果は、演算部461に入力される。第1水平駆動モータ433の駆動は、第1水平角検出器434の検出結果に基づいて第1水平回転駆動部463により制御される。
【0041】
第1鉛直回転部44は、第1鉛直回転軸441と、軸受442と、第1鉛直駆動モータ443と、第1鉛直角検出器(例えばエンコーダ)444と、を有する。第1鉛直回転軸441は、水平に延びた第1水平軸心446を有し、軸受442を介して第1托架部42に回転自在に支持されている。第1鉛直回転軸441の一方の端部は、第1托架部42の間隙部421に突出している。望遠鏡部45は、第1托架部42の間隙部421に突出した第1鉛直回転軸441の一方の端部に支持され、第1鉛直駆動モータ443から伝達された駆動力により第1水平軸心446を中心として鉛直方向に第1鉛直回転軸441と一体的に回転する。
【0042】
第1鉛直角検出器444は、第1鉛直回転軸441の他方の端部に設けられている。第1托架部42に対する第1鉛直回転軸441の回転角(すなわち望遠鏡部45の回転角)は、第1鉛直角検出器444により検出される。第1鉛直角検出器444の検出結果は、演算部461に入力される。第1鉛直駆動モータ443の駆動は、第1鉛直角検出器444の検出結果に基づいて第1鉛直回転駆動部464により制御される。
【0043】
望遠鏡部45は、前述したように、第1鉛直回転軸441に支持され、第1鉛直駆動モータ443から伝達された駆動力により第1水平軸心446を中心として鉛直方向に回転する。望遠鏡部45は、視準望遠鏡458を有し、計測用ターゲット6を含む測定対象物7に視準され第1測距光455を照射する。第1測距光455は、望遠鏡部45の測距光軸上に射出される。望遠鏡部45の測距光軸は、第1鉛直軸心436と交差するとともに、第1水平軸心446と直交する。望遠鏡部45の測距光軸と、第1鉛直軸心436と、の交差点は、視準測距ユニット4の機械基準点に設定されてもよい。本実施形態の説明では、視準測距ユニット4の機械基準点が、望遠鏡部45の測距光軸と、第1鉛直軸心436と、の交差点である場合を例に挙げる。
【0044】
望遠鏡部45は、第1測距発光部451と、第1測距受光部452と、視準受光部453と、を有する。
【0045】
第1測距発光部451は、第1距離測定部462により駆動制御される。第1測距発光部451は、望遠鏡部45の内部に設けられ、例えばレーザ光などの第1測距光455を第1水平軸心446に直交する方向に射出する。第1測距発光部451から射出された第1測距光455は、測定対象物7に照射される。なお、前述したように、視準測距ユニット4が測距および測角を行う測定対象物は、建築物などの測定対象物7に限定されるわけではなくプリズムなどの計測用ターゲット6であってもよい。測定対象物7で反射した第1反射測距光456は、望遠鏡部45の内部に設けられた第1測距受光部452において受光される。第1測距受光部452は、受光した第1反射測距光456による明暗(受光結果)を電子信号(受光信号)に変換し、受光信号を第1距離測定部462に送信する。また、第1測距受光部452は、参照光光学部(図示せず)から導かれた内部参照光(図示せず)を受光し電気信号に変換して、第1距離測定部462に送信する。
【0046】
第1距離測定部462は、第1測距受光部452から送信された受光信号に基づいて測定対象物7までの距離を演算する。すなわち、第1反射測距光456および内部参照光は、第1反射測距光電気信号および内部参照光電気信号のそれぞれに変換され、第1距離測定部462に送られる。測定対象物7までの距離は、第1反射測距光電気信号と内部参照光電気信号との間の時間的間隔の差に基づいて測定される。第1距離測定部462の演算結果は、演算部(CPU)461に入力される。
【0047】
演算部461は、測定した測定対象物7までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、測定対象物7の座標を算出する。あるいは、演算部461は、測定した測定対象物7までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、所定位置を基準とした視準測距ユニット4の機械基準点の座標を算出してもよい。
【0048】
視準受光部453は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサであり、第1反射測距光456の波長域とは異なる波長域の反射視準光457を受光する。反射視準光457は、第1反射測距光456の波長域とは異なる波長域を有する光であって、測定対象物7で反射した光である。すなわち、視準受光部453は、測定対象物7で反射した反射視準光457を受光し、測定対象物7の画像を受光する。反射視準光457としては、例えば自然光や赤外光などが挙げられる。但し、反射視準光457は、これだけには限定されない。反射視準光457は、望遠鏡部45の内部に設けられた視準受光部453において受光される。視準受光部453は、反射視準光457による明暗(受光結果)を電子信号(画像信号)に変換し、画像信号を画像処理部469に送信する。
【0049】
画像処理部469は、視準受光部453から送信された画像信号の画像処理を実行し、画像データ信号として演算部461に送信する。演算部461は、画像処理部469から送信された画像データ信号に基づいて演算を実行し、望遠鏡部45による視準範囲の画像を操作表示部47の表示部471に表示させる制御を実行する。
【0050】
傾斜計49は、重力に対する視準測距ユニット4の傾き(傾斜角)を計測する。傾斜計49の計測結果は、演算部461に入力される。
【0051】
本実施形態のスキャナユニット5は、第2托架部52と、第2鉛直回転部54と、走査鏡55と、第2測距発光部56と、第2測距受光部57と、を有し、視準測距ユニット4の上部に固定されている。なお、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4の第1水平回転部43と同様の水平回転部を有していてもよい。この場合には、スキャナユニット5は、視準測距ユニット4に対して水平方向に回転自在に設けられる。
【0052】
第2鉛直回転部54は、第2鉛直回転軸541と、軸受542と、第2鉛直駆動モータ543と、第2鉛直角検出器(例えばエンコーダ)544と、を有する。第2鉛直回転軸541は、水平に延びた第2水平軸心546を有し、軸受542を介して第2托架部52に回転自在に支持されている。第2鉛直回転軸541の一方の端部は、第2托架部52の凹部521に突出している。走査鏡55は、第2托架部52の凹部521に突出した第2鉛直回転軸541の一方の端部に支持され、第2鉛直駆動モータ543から伝達された駆動力により第2水平軸心546を中心として鉛直方向に第2鉛直回転軸541と一体的に回転する。
【0053】
第2鉛直角検出器544は、第2鉛直回転軸541の他方の端部に設けられている。第2托架部52に対する第2鉛直回転軸541の回転角(すなわち走査鏡55の回転角)は、第2鉛直角検出器544により検出される。第2鉛直角検出器544の検出結果は、演算部461に入力される。第2鉛直駆動モータ543の駆動は、第2鉛直角検出器544の検出結果に基づいて第2鉛直回転駆動部467により制御される。
【0054】
第2水平軸心546は、第1水平軸心446と平行である。第1水平軸心446と第2水平軸心546との間の距離は、既知である。すなわち、第1水平軸心446に対する第2水平軸心546の位置は、既知である。
【0055】
走査鏡55は、偏向光学部材であり、水平方向から入射した第2測距光565を直角に反射する。すなわち、走査鏡55は、水平方向から入射した第2測距光565を第2水平軸心546に直交する方向に反射する。走査鏡55は、前述したように、第2鉛直回転軸541に支持され、第2鉛直駆動モータ543から伝達された駆動力により第2水平軸心546を中心として鉛直方向に回転する。これにより、走査鏡55は、第2測距光565を第2水平軸心546に交差(具体的には直交)する面内で回転照射させる。また、走査鏡55は、測定対象物7で反射され走査鏡55に入射した第2反射測距光566を第2測距受光部57に向かって反射する。すなわち、走査鏡55は、測定対象物7で反射され走査鏡55に入射した第2反射測距光566を第2水平軸心546に平行な方向に反射する。
【0056】
第2水平軸心546と、走査鏡55と、の交差点は、スキャナユニット5の機械基準点に設定されている。例えば、視準測距ユニット4の機械基準点と、スキャナユニット5の機械基準点と、は、同一直線としての第1鉛直軸心436の上に存在する。つまり、スキャナユニット5の機械基準点を通過する鉛直線は、第1鉛直軸心436に合致する。視準測距ユニット4の機械基準点と、スキャナユニット5の機械基準点と、の間の距離は、既知である。
【0057】
図2に表したように、第2測距発光部56は、発光素子561と、対物レンズ等を含む投光光学部562と、を有し、第2距離測定部465により駆動制御される。発光素子561は、例えば半導体レーザ等であり、投光光学部562を介して第2測距光565を第2水平軸心546に合致する光軸上に射出する。第2測距光565は、不可視光としての赤外光のパルスレーザ光線である。発光素子561は、第2距離測定部465に制御され、所要の光強度や所要のパルス間隔などを含む所要の状態でパルス光を発光する。
【0058】
図2に表したように、第2測距受光部57は、受光素子571と、集光レンズなどを含む受光光学部572と、を有する。受光素子571は、第2測距光565が測定対象物7で反射した第2反射測距光566であって、走査鏡55で反射し受光光学部572を透過した第2反射測距光566を受光する。受光素子571は、受光した第2反射測距光566による明暗(受光結果)を電子信号(受光信号)に変換し、受光信号を第2距離測定部465および演算部461に送信する。また、受光素子571は、参照光光学部(図示せず)から導かれた内部参照光(図示せず)を受光し電気信号に変換して、第2距離測定部465に送信する。
【0059】
第2距離測定部465は、第2測距受光部57(具体的には受光素子571)から送信された受光信号に基づいて測定対象物7までの距離を演算する。すなわち、第2反射測距光566および内部参照光は、第2反射測距光電気信号および内部参照光電気信号のそれぞれに変換され、第2距離測定部465に送られる。測定対象物7までの距離は、第2反射測距光電気信号と内部参照光電気信号との間の時間的間隔の差に基づいて測定される。第2距離測定部465の演算結果は、演算部461に入力される。
【0060】
演算部461は、測定した測定対象物7までの距離と、第2鉛直角検出器544により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、測定対象物7の座標を算出する。また、演算部461は、パルス光毎の測定対象物7の座標を記録することで、測定範囲全域に関する点群データ、あるいは測定対象物7に関する点群データを得ることができる。
【0061】
さらに、演算部461は、第2測距受光部57の受光素子571から送信された受光信号に基づいて第2反射測距光566の強度(反射強度)を演算し、第2反射測距光566の強度を示す画像を望遠鏡部45による視準範囲の画像に重合させて操作表示部47の表示部471に表示させる制御を実行する。これにより、作業者等は、測定対象物7のうちで、3次元データが取得された測定箇所(点や領域)と、3次元データが取得されなかった測定箇所(点や領域)と、を表示部471において確認することができる。すなわち、作業者等は、スキャナユニット5が点群データを取得したときに、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在するか否かを表示部471において確認することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の概略を、図面を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の概略を表すフローチャートである。
なお、図3は、すなわち、本実施形態に係る3次元測量方法により実行されるステップと、本実施形態に係る3次元測量プログラムが3次元測量装置2のコンピュータに実行させるステップと、の概略を表すフローチャートである。
【0063】
まず、ステップS11において、3次元測量装置2の制御演算部46は、例えば後方交会法などにより測量位置における視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、を決定し記憶部468に記憶する。すなわち、制御演算部46は、視準測距ユニット4から例えばプリズムなどの計測用ターゲット6までの距離と、第1鉛直角検出器444により検出された鉛直角と、第1水平角検出器434により検出された水平角と、に基づいて、視準測距ユニット4の機械基準点の座標と、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の基準視準の方向と、を算出し記憶部468に記憶する。
【0064】
続いて、ステップS12において、制御演算部46は、スキャナユニット5を制御することにより、測定対象物7における多数の測定点の3次元データ(点群データ)を取得し記憶する。続いて、ステップS13において、制御演算部46は、受光素子571から送信された受光信号に基づいて第2反射測距光566の強度を演算し、第2反射測距光566の強度を示す画像を望遠鏡部45による視準範囲の画像に重合させて表示部471に表示させる制御を実行する。
【0065】
ここで、測定対象物7の反射特性や測定対象物7までの距離によっては、測定対象物7の所定部分で反射した第2反射測距光566の強度が強すぎたり、弱すぎたりすることがある。そうすると、スキャナユニット5が測定対象物7の点群データを取得したときに、測定対象物7のうちに3次元データが取得されない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在することがある。
【0066】
これに対して、本実施形態に係る3次元測量装置2では、ステップS14において、ステップS12の処理においてスキャナユニット5により取得された点群データに基づいて、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在するか否かが判断される。
【0067】
本実施形態に係る3次元測量装置2では、制御演算部46が第2反射測距光566の強度を示す画像を望遠鏡部45による視準範囲の画像に重合させて表示部471に表示させるため、作業者等は、測定対象物7のうちで、3次元データが取得された測定箇所と、3次元データが取得されなかった測定箇所と、を表示部471において確認することができる。すなわち、作業者等は、スキャナユニット5が点群データを取得したときに、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在するか否かを表示部471において確認することができる。
【0068】
あるいは、制御演算部46は、測定対象物7のうちで、3次元データが取得された測定箇所と、3次元データが取得されなかった測定箇所と、を判別することができるとともに、スキャナユニット5が点群データを取得したときに、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在するか否かを判断することができる。
【0069】
ステップS14において、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在しない場合には(ステップS14:NO)、制御演算部46は、3次元測量装置2による3次元測量を終了する。
【0070】
一方で、ステップS14において、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在する場合には(ステップS14:YES)、制御演算部46は、ステップS15において、視準測距ユニット4により取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データに補充する制御を実行する。続いて、制御演算部46は、3次元測量装置2による3次元測量を終了する。
【0071】
本実施形態に係る3次元測量装置2によれば、スキャナユニット5が測定対象物7の点群データを取得したときに測定対象物7のうちにデータ不足部が存在する場合であっても、制御演算部46は、視準測距ユニット4により取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データに補充し、3次元データのいわゆる「抜け部」の「穴埋め」を実行してデータ不足部が生ずることを抑えることができる。
【0072】
次に、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の具体例を、図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第1具体例を表すフローチャートである。
なお、図4ならびに後述する図5および図6は、すなわち、本実施形態に係る3次元測量方法により実行されるステップと、本実施形態に係る3次元測量プログラムが3次元測量装置2のコンピュータに実行させるステップと、の具体例を表すフローチャートである。
【0073】
まず、ステップS21~S24の処理は、図3に関して前述したステップS11~S14の処理と同じである。ステップS24において、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在する場合には(ステップS24:YES)、視準測距ユニット4は、ステップS25において、望遠鏡部45の視準により測定箇所に設定されたデータ不足部に関する3次元データを直接的に取得する。例えば、作業者等は、ステップS23の処理により表示部471に表示された第2反射測距光566の強度を示す画像によりデータ不足部を確認し、視準測距ユニット4により測距を行う測定箇所を望遠鏡部45の視準により設定する。これにより、視準測距ユニット4は、視準測距ユニット4の望遠鏡部45の視準により測定箇所に設定されたデータ不足部の測量(測距および測角)を行い、データ不足部に関する3次元データを直接的に取得する。
【0074】
続いて、ステップS26において、制御演算部46は、視準測距ユニット4により取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データに補充する制御を実行する。点群データに補充される3次元データは、ステップS25において視準測距ユニット4により直接的に取得された3次元データであって望遠鏡部45の視準により測定箇所に設定されたデータ不足部に関する3次元データである。続いて、制御演算部46は、3次元測量装置2による3次元測量を終了する。
【0075】
第1具体例によれば、制御演算部46は、視準測距ユニット4により直接的に取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データにより確実に補充し、データ不足部が生ずることをより確実に抑えることができる。
【0076】
図5は、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第2具体例を表すフローチャートである。
まず、ステップS31~S34の処理は、図3に関して前述したステップS11~S14の処理と同じである。
【0077】
ステップS34において、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在する場合には(ステップS34:YES)、視準測距ユニット4は、ステップS35において、望遠鏡部45の視準により測定箇所に設定された計測用ターゲット6に関する3次元データを取得する。計測用ターゲット6は、測定対象物7のうちのデータ不足部に設置されている。そして、視準測距ユニット4は、計測用ターゲット6に関する3次元データに基づいてデータ不足部に関する3次元データを間接的に取得する。
【0078】
例えば、作業者等は、ステップS33の処理により表示部471に表示された第2反射測距光566の強度を示す画像によりデータ不足部を確認し、データ不足部に計測用ターゲット6を設置する。このとき、操作表示部47は、視準測距ユニット4に対して着脱可能とされ、有線あるいは無線など所定の手段を介して視準測距ユニット4と通信可能に接続されていてもよい。このような操作表示部47は、例えばスマートフォンやタブレットコンピュータなどの携帯型の端末装置であってもよい。この場合において、作業者等は、操作表示部47を視準測距ユニット4から外して把持し、視準測距ユニット4を遠隔操作することができる。そのため、例えば、作業者等は、一人であっても、視準測距ユニット4から外した操作表示部47の表示部471において第2反射測距光566の強度を示す画像によりデータ不足部を確認し、データ不足部に計測用ターゲット6を設置し、視準測距ユニット4を遠隔操作して望遠鏡部45の視準を行うことで、視準測距ユニット4により測距を行う測定箇所を計測用ターゲット6に設定することができる。
【0079】
データ不足部に設置された計測用ターゲット6が望遠鏡部45の視準により測定箇所に設定されると、視準測距ユニット4は、計測用ターゲット6の測量(測距および測角)を行い、計測用ターゲット6に関する3次元データを取得する。
【0080】
例えば、計測用ターゲット6は、例えば再帰反射層などが設けられた反射部と、3次元データを取得する測定箇所(測定点)に接触される接触部と、を有する。接触部は、例えば、計測用ターゲット6が有するポールの先端部などである。反射部と接触部との間の距離は、既知である。すなわち、3次元測量装置2は、反射部と接触部との間の距離を既知として認識している。そのため、制御演算部46は、望遠鏡部45の視準により測定箇所に設定された計測用ターゲット6の反射部に関する3次元データを取得することにより、測定箇所(測定点)に関する3次元データを演算し、測定箇所(測定点)に関する3次元データを間接的に取得することができる。これにより、データ不足部に関する3次元データは、視準測距ユニット4により取得された計測用ターゲット6に関する3次元データに基づいて間接的に取得される。
【0081】
続いて、ステップS36において、制御演算部46は、視準測距ユニット4により取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データに補充する制御を実行する。点群データに補充される3次元データは、ステップS35において視準測距ユニット4により計測用ターゲット6を介して間接的に取得されたデータ不足部に関する3次元データである。続いて、制御演算部46は、3次元測量装置2による3次元測量を終了する。
【0082】
第2具体例によれば、制御演算部46は、視準測距ユニット4により計測用ターゲット6を介して間接的に取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データにより確実に補充し、データ不足部が生ずることをより確実に抑えることができる。
【0083】
図6は、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第3具体例を表すフローチャートである。
まず、ステップS41~S44の処理は、図3に関して前述したステップS11~S14の処理と同じである。
【0084】
ステップS44において、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在する場合には(ステップS44:YES)、視準測距ユニット4は、ステップS45において、測定箇所に設定された領域において自動的なスキャンを実行する。「測定箇所に設定された領域」については、例えば、作業者等が、ステップS43の処理により表示部471に表示された第2反射測距光566の強度を示す画像によりデータ不足部を確認し、視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う測定箇所を操作入力部472により設定する。
【0085】
このように、ステップS45において、視準測距ユニット4は、データ不足部として測定箇所に設定された領域において自動的なスキャンを実行し、データ不足部の測量(測距および測角)を行い、データ不足部に関する3次元データを取得する。例えば、ステップS45において、制御演算部46は、データ不足部として設定された領域において自動的なスキャンを視準測距ユニット4に実行させることによりデータ不足部に関する3次元データを取得する制御を実行する。
【0086】
ここで、制御演算部46は、視準測距ユニット4が測定箇所に設定された領域において自動的なスキャンを実行する際に、測定箇所(測定点)毎に望遠鏡部45の絞りを調整する。そのため、ステップS45において、視準測距ユニット4は、測定箇所に設定された領域において自動的なスキャンを実行する際に、測定対象物7の所定部分で反射した第2反射測距光566の強度が比較的強い場合であってもデータ不足部に関する3次元データをより確実に取得することができる。
【0087】
続いて、ステップS46において、制御演算部46は、視準測距ユニット4により取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データに補充する制御を実行する。点群データに補充される3次元データは、ステップS45において視準測距ユニット4の自動的なスキャンにより取得されたデータ不足部に関する3次元データである。続いて、制御演算部46は、3次元測量装置2による3次元測量を終了する。
【0088】
第3具体例によれば、例えば作業者等が望遠鏡部45の視準によりデータ不足部毎に測定箇所を設定しなくともデータ不足部として所定領域を設定することにより、視準測距ユニット4が自動的にスキャンを実行し、データ不足部に関する3次元データを取得する。そのため、視準測距ユニット4は、データ不足部に関する3次元データを効率的に取得することができる。これにより、制御演算部46は、視準測距ユニット4により取得されたデータ不足部に関する3次元データをスキャナユニット5により取得された点群データに効率的に補充し、データ不足部が生ずることを抑えることができる。
【0089】
図7は、本実施形態に係る3次元測量装置の動作の第4具体例を表すフローチャートである。
まず、ステップS51~S54の処理は、図3に関して前述したステップS11~S14の処理と同じである。
【0090】
ステップS54において、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていないデータ不足部が存在する場合には(ステップS54:YES)、制御演算部46は、ステップS55において、3次元データが取得された測定箇所と、3次元データが取得されなかった測定箇所と、を判別してデータ不足部を認識し、視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う領域を自動的に設定する。つまり、制御演算部46は、データ不足部(3次元データが取得されなかった測定箇所)を、視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う領域として自動的に設定する。
【0091】
例えば、視準測距ユニット4は、カメラなどの撮像部を内蔵していてもよい。この場合には、撮像部で撮像された画像に関する信号が制御演算部46に送信される。制御演算部46は、撮像部から送信された画像信号に基づいて画像処理を実行し、測定対象物7のうちで、3次元データが取得された測定箇所と、3次元データが取得されなかった測定箇所と、を認識することができる。すなわち、制御演算部46は、撮像部から送信された画像信号に基づいて画像処理を実行し、スキャナユニット5が点群データを取得したときに、測定対象物7のうちに3次元データが取得されていない「抜け部」などと呼ばれるデータ不足部が存在するか否かを認識することができる。そして、制御演算部46は、撮像部から送信された画像信号に基づいて画像処理を実行し、視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う領域を自動的に設定してもよい。続いて、ステップS56~S57の処理は、図6に関して前述したステップS45~S46の処理と同じである。
【0092】
第4具体例によれば、制御演算部46が視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う領域を自動的に設定するため、作業者等が視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う領域を例えば操作表示部47などにおいて設定しなくとも、制御演算部46は、データ不足部を認識し、視準測距ユニット4により自動的なスキャンを行う領域を自動的に設定する。これにより、制御演算部46は、データ不足部に関する3次元データを視準測距ユニット4により効率的に取得し、スキャナユニット5により取得された点群データに効率的に補充することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0094】
2:3次元測量装置、 4:視準測距ユニット、 5:スキャナユニット、 6:計測用ターゲット、 7:測定対象物、 41:整準部、 42:第1托架部、 43:第1水平回転部、 44:第1鉛直回転部、 45:望遠鏡部、 46:制御演算部、 47:操作表示部、 48:基盤部、 49:傾斜計、 52:第2托架部、 54:第2鉛直回転部、 55:走査鏡、 56:第2測距発光部、 57:第2測距受光部、 411:調整螺子、 421:間隙部、 431:第1水平回転軸、 432:軸受、 433:第1水平駆動モータ、 434:第1水平角検出器、 436:第1鉛直軸心、 441:第1鉛直回転軸、 442:軸受、 443:第1鉛直駆動モータ、 444:第1鉛直角検出器、 446:第1水平軸心、 451:第1測距発光部、 452:第1測距受光部、 453:視準受光部、 455:第1測距光、 456:第1反射測距光、 457:反射視準光、 458:視準望遠鏡、 461:演算部、 462:第1距離測定部、 463:第1水平回転駆動部、 464:第1鉛直回転駆動部、 465:第2距離測定部、 466:第2水平回転駆動部、 467:第2鉛直回転駆動部、 468:記憶部、 469:画像処理部、 471:表示部、 472:操作入力部、 521:凹部、 541:第2鉛直回転軸、 542:軸受、 543:第2鉛直駆動モータ、 544:第2鉛直角検出器、 546:第2水平軸心、 561:発光素子、 562:投光光学部、 565:第2測距光、 566:第2反射測距光、 571:受光素子、 572:受光光学部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7