IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー トラック エージーの特許一覧

特許7336935車両の制御システム、及び、車両の制御方法
<>
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図1
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図2
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図3
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図4
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図5
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図6
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図7
  • 特許-車両の制御システム、及び、車両の制御方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】車両の制御システム、及び、車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20230825BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20230825BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230825BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230825BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20230825BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20230825BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W40/02
G05D1/02 H
G08G1/09 V
B65F3/00 L
B60P3/00 Q
A01B69/00 303Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019175194
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049910
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】アマラシンフ スーウイン インヅューラ
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501267(JP,A)
【文献】特開2013-177128(JP,A)
【文献】特開2018-201342(JP,A)
【文献】特開2010-061316(JP,A)
【文献】特開2017-047709(JP,A)
【文献】特開2019-148909(JP,A)
【文献】特開2006-134221(JP,A)
【文献】特開2018-067183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0071429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 40/13
G05D 1/00 ~ 1/02
G08G 1/00 ~ 1/16
B65F 3/00
B60P 3/00
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが作業を行う作業部を有すると共に自動運転が可能な車両の制御システムであって、
前記車両の外部で前記オペレータによる所定の停止操作があったか否かを判定する判定部と、
前記判定部で前記停止操作があったと判定された場合に、前記作業部が前記オペレータと並ぶ停止位置まで前記車両を移動させて停止させる制御部と、を備えた
ことを特徴とする、車両の制御システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記車両の外部で前記オペレータによる所定の追尾操作があったか否かを判定し、
前記制御部は、前記判定部で前記追尾操作があったと判定された場合に、前記車両に前記オペレータを追尾させる
ことを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御システム。
【請求項3】
前記オペレータの現在位置を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部で検出された前記現在位置に基づいて前記車両を自動運転させ、前記検出部で前記現在位置が検出されなくなった場合に、前記検出部で最後に検出された前記現在位置と前記作業部とが並ぶ待機位置まで前記車両を移動させる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両の制御システム。
【請求項4】
前記停止位置は、前記作業部と前記オペレータとが前記車両の左右方向に並ぶ位置である
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【請求項5】
前記車両は、前記作業部としての塵芥投入口を有する塵芥車である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【請求項6】
オペレータが作業を行う作業部を有すると共に自動運転が可能な車両の制御方法であって、
前記車両の外部で前記オペレータによる所定の停止操作があったか否かを判定する停止判定工程と、
前記停止判定工程で前記停止操作があったと判定された場合に、前記作業部が前記オペレータと並ぶ停止位置まで前記車両を移動させて停止させる停止工程と、を備えた
ことを特徴とする、車両の制御方法。
【請求項7】
前記車両の外部で前記オペレータによる所定の追尾操作があったか否かを判定する追尾判定工程と、
前記追尾判定工程で前記追尾操作があったと判定された場合に、前記車両に前記オペレータを追尾させる追尾工程と、を備えた
ことを特徴とする、請求項6に記載の車両の制御方法。
【請求項8】
前記オペレータの現在位置を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記現在位置に基づいて前記車両を自動運転させ、前記検出工程で前記現在位置が検出されなくなった場合に、前記検出工程で最後に検出された前記現在位置と前記作業部とが並ぶ待機位置まで前記車両を移動させる移動工程と、を備えたことを特徴とする、請求項6又は7に記載の車両の制御方法。
【請求項9】
前記停止位置は、前記作業部と前記オペレータとが前記車両の左右方向に並ぶ位置である
ことを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載の車両の制御方法。
【請求項10】
前記車両は、前記作業部としての塵芥投入口を有する塵芥車である
ことを特徴とする、請求項6~9のいずれか一項に記載の車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、オペレータが作業を行う作業部を有すると共に自動運転が可能な車両の制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オペレータが作業を行う作業部を装備した特装車両の一つとして、作業部としての塵芥投入口を装備した塵芥車(ゴミ収集車)が知られている。塵芥車では、オペレータが塵芥投入口に塵芥を投入する作業が行われる。これに対し、特許文献1には、塵芥投入口の近傍に人物(オペレータ)がいないことを条件として、収容箱に塵芥を押し込む可動装置の作動速度を高めることで、安全性を確保しつつ作業効率を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-193205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上記のような作業部を有する車両を自動運転により無人で走行させることが検討,試験されている。このような無人走行が実現されれば、オペレータが車両の運転と作業部に対する作業とのために乗降を繰り返す必要がなくなるため、作業効率が向上すると期待されている。ただし、作業部に対するオペレータの作業効率を高めるという観点では、オペレータの位置に応じて車両の停止位置を適正化することが望ましい。
【0005】
本件は、上記のような課題に鑑み創案されたものであり、自動運転が可能な車両の作業部に対するオペレータの作業効率を高めることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
(1)本適用例に係る車両の制御システムは、オペレータが作業を行う作業部を有すると共に自動運転が可能な車両の制御システムであって、前記車両の外部で前記オペレータによる所定の停止操作があったか否かを判定する判定部と、前記判定部で前記停止操作があったと判定された場合に、前記作業部が前記オペレータと並ぶ停止位置まで前記車両を移動させて停止させる制御部と、を備えている。
これにより、停止操作があった場合に、作業部がオペレータと並ぶ停止位置で車両が停止するため、オペレータが作業部に対して作業を行いやすくなる。よって、作業部に対するオペレータの作業効率が高まる。
【0007】
(2)本適用例に係る車両の制御システムにおいて、前記判定部は、前記車両の外部で前記オペレータによる所定の追尾操作があったか否かを判定し、前記制御部は、前記判定部で前記追尾操作があったと判定された場合に、前記車両に前記オペレータを追尾させてもよい。
このように追尾操作に応じて車両にオペレータを追尾させれば、車両がオペレータから離れにくくなるため、停止操作があった場合に、車両が停止位置までより早く到達する。よって、オペレータが作業部に対する作業をより早く開始しやすくなる。
【0008】
(3)本適用例に係る車両の制御システムは、前記オペレータの現在位置を検出する検出部を備えてもよく、前記制御部は、前記検出部で検出された前記現在位置に基づいて前記車両を自動運転させ、前記検出部で前記現在位置が検出されなくなった場合に、前記検出部で最後に検出された前記現在位置と前記作業部とが並ぶ待機位置まで前記車両を移動させてもよい。
このように、オペレータの現在位置が検出されなくなった場合に、車両をその場で停止させるのではなく、最後に検出されたオペレータの現在位置と作業部とが並ぶ待機位置まで車両を移動させることで、車両がオペレータのより近くまで移動する。よって、オペレータの現在位置が再び検出されやすくなると共に、オペレータが作業部に対する作業をより早く開始しやすくなる。
【0009】
(4)本適用例に係る車両の制御システムにおいて、前記停止位置は、前記作業部と前記オペレータとが前記車両の左右方向に並ぶ位置であってもよい。
このような構成であれば、停止操作に応じて車両が停止位置で停止した状態では、作業部の左方または右方にオペレータが位置する。このため、車両の前進及び後退に対してオペレータが障害となりにくくなる。よって、車両の自動運転が円滑化される。
【0010】
(5)本適用例に係る車両の制御システムにおいて、前記車両は、前記作業部としての塵芥投入口を有する塵芥車であってもよい。
このように車両が塵芥車であって作業部が塵芥投入口であれば、オペレータが塵芥投入口へ塵芥を投入する作業を行いやすくなる。このため、塵芥収集の作業効率が向上する。
【0011】
(6)本適用例に係る車両の制御方法は、オペレータが作業を行う作業部を有すると共に自動運転が可能な車両の制御方法であって、前記車両の外部で前記オペレータによる所定の停止操作があったか否かを判定する停止判定工程と、前記停止判定工程で前記停止操作があったと判定された場合に、前記作業部が前記オペレータと並ぶ停止位置まで前記車両を移動させて停止させる停止工程と、を備えている。
【0012】
(7)本適用例に係る車両の制御方法は、前記車両の外部で前記オペレータによる所定の追尾操作があったか否かを判定する追尾判定工程と、前記追尾判定工程で前記追尾操作があったと判定された場合に、前記車両に前記オペレータを追尾させる追尾工程と、を備えてもよい。
(8)本適用例に係る車両の制御方法は、前記オペレータの現在位置を検出する検出工程と、前記検出工程で検出された前記現在位置に基づいて前記車両を自動運転させ、前記検出工程で前記現在位置が検出されなくなった場合に、前記検出工程で最後に検出された前記現在位置と前記作業部とが並ぶ待機位置まで前記車両を移動させる移動工程と、を備えてもよい。
【0013】
(9)本適用例に係る車両の制御方法において、前記停止位置は、前記作業部と前記オペレータとが前記車両の左右方向に並ぶ位置であってもよい。
(10)本適用例に係る車両の制御方法において、前記車両は、前記作業部としての塵芥投入口を有する塵芥車であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本件によれば、オペレータの作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態としての車両の制御システムが適用された車両の側面図である。
図2図1の制御システムの構成を例示したブロック図である。
図3図1の制御システムと通信する携帯端末を例示した平面図である。
図4】(a),(b)はいずれも、図1の車両の停止位置を説明する模式図である。
図5図1の車両の待機位置を説明する模式図である。
図6図1の制御システムで実施される制御の内容を例示したフローチャートである。
図7図6のサブフローチャート(追尾制御の内容)である。
図8図6のサブフローチャート(停止制御の内容)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態としての車両の制御システム及び車両の制御方法について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
[1.装置構成]
図1に示すように、本実施形態に係る制御システム(車両の制御システム)1は、オペレータが作業を行う作業部21を有する車両2に適用されている。ここでは、車両2が作業部21としての塵芥投入口を有する塵芥車である例を示す。
以下、車両2の前進方向を前方(Front)とし、この反対方向を後方(Rear)とする。また、車両2の前方を向いた状態を基準にして左右を定める。なお、左右方向は前後方向と直交する。
【0018】
車両2は、自動運転が可能に構成されている。具体的には、車両2は、加速と制動と操舵とがオペレータ(ドライバ)の手動運転操作によらず自動で実施可能である。このため、車両2は、オペレータが乗っていなくても(無人の状態でも)、自動で走行及び停止することが可能である。また、車両2にはGNSS等の位置情報を高精細に把握するための装置が搭載され、地図情報と合わせて自動走行が可能に構成されている。
本実施形態では、作業部21が車両2の後端部に装備されている例を示す。オペレータは、車両2に乗るのではなく、例えば道路を歩きながら、道路に投棄された塵芥(ごみ袋など)を収集し、収集した塵芥を車両2の作業部21に投入する作業を行う。
【0019】
車両2には、車両2の周囲の情報を取得するセンサ4が搭載されている。センサ4は、具体的には、ミリ波レーダやカメラやレーザレーダなどである。本実施形態のセンサ4は、車両2の四つの角部に搭載されている。詳細には、センサ4は、車両2の前面と左右の側面との各角部、及び、車両2の後面と左右の側面との各角部の四か所に設置されている。
図2に示すように、センサ4で取得された情報は、制御システム1としてのECU7に伝達される。本実施形態のセンサ4で取得された情報は、オペレータの現在位置OPや車両2の周囲の障害物等を検出するために用いられる。
【0020】
車両2には、上記のセンサ4及びECU7に加えて、車両2の外部の機器と無線で通信する通信装置5と、車両2を作動(加速,制動,操舵)させる作動ユニット6とが設けられている。
本実施形態の通信装置5の通信対象には、オペレータの所持する携帯端末3が含まれている。通信装置5は、携帯端末3から受信した情報をECU7に伝達するとともに、ECU7から伝達された情報を携帯端末3に送信する。なお、通信装置5が携帯端末3から受信する情報には、オペレータによる携帯端末3への操作情報(後述の追尾操作及び停止操作の有無の情報)が含まれる。
【0021】
作動ユニット6は、具体的には、駆動装置61と制動装置62と操舵装置63とで構成される。駆動装置61は、車両2の駆動源(エンジンや電動モータ)やトランスミッション機構などであり、制動装置62は、車両2に制動力を与えるブレーキ装置や回生ブレーキシステムなどである。また、操舵装置63は、車両2の操舵ホイールを操作するパワーステアリング装置などである。
本実施形態の作動ユニット6は、ECU7だけでなく、手動でも操作可能に構成される。よって、車両2は、ECU7による自動運転だけでなく、オペレータによる手動運転操作も可能とされている。
【0022】
ECU7は、車両2に搭載された各種装置を統合制御する電子制御装置であって、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。本実施形態のECU7は、センサ4及び通信装置5から伝達される情報に基づいて、作動ユニット6を制御する。
【0023】
図3に示すように、携帯端末3は、オペレータに携帯される小型の端末装置である。ここでは、携帯端末3としてスマートフォンを例示する。
携帯端末3は、その表面に設けられたディスプレイ31と、ディスプレイ31に対する入力操作(タッチ,ピンチ,スワイプなど)を検出するタッチパネル32とを有する。本実施形態のディスプレイ31は、車両2にオペレータを追尾させるための追尾ボタン33と、車両2を所定の停止位置SPまで移動させた後に停止(停車)させるための停止ボタン34とを表示する。
【0024】
以下、オペレータによる追尾ボタン33への入力操作(オン操作)を「追尾操作」ともいい、オペレータによる停止ボタン34への入力操作(オン操作)を「停止操作」ともいう。本実施形態のタッチパネル32は、これらの追尾操作及び停止操作を検出する。なお、追尾操作が行われる場面としては、オペレータが塵芥を収集するために車両2の外部を歩き始める場面が挙げられる。また、停止操作が行われる場面としては、オペレータが収集した塵芥を作業部21に投入しようとする場面が挙げられる。
【0025】
携帯端末3には、外部の機器と無線で通信する通信装置と、この通信装置に接続された電子制御装置(コンピュータ)とが内蔵されている(いずれも図示略)。本実施形態の携帯端末3は、タッチパネル32で追尾操作または停止操作が検出された場合に、上記の電子制御装置の動作により、上記の通信装置から所定の信号(後述の追尾信号または停止信号)をECU7へ送信する。
【0026】
[2.制御構成]
本実施形態では、ECU7で実施される追尾制御及び停止制御について詳述する。
追尾制御とは、車両2を自動運転させることで、車両2にオペレータを追尾させる制御である。したがって、追尾制御の実施中は、車両2の外部を歩くオペレータに追従するように、車両2が自動で走行する。
【0027】
一方、停止制御とは、車両2を自動運転させることで、車両2の作業部21がオペレータと並ぶ停止位置SPまで車両2を移動させて停止させる制御である。したがって、停止制御が実施された場合は、車両2が上記の停止位置SPまで自動で走行した後、この停止位置SPにおいて自動で停止する。
なお、追尾制御と停止制御とのいずれにおいても、車両2の自動運転では、車両2が障害物等と接触しないように、センサ4で取得された情報に基づいて作動ユニット6が制御される。
【0028】
本実施形態の追尾制御及び停止制御は、携帯端末3から送信される信号に応じて実施される。
詳細には、追尾制御は、オペレータが携帯端末3の追尾ボタン33に入力操作を行い、タッチパネル32でこの追尾操作が検出され、これに応じて携帯端末3から追尾信号が送信された場合に開始される。よって、この場合には、車両2がオペレータの追尾を開始する。そして、追尾制御は、オペレータが携帯端末3の停止ボタン34に入力操作を行い、タッチパネル32でこの停止操作が検出され、これに応じて携帯端末3から停止信号が送信された場合に終了する。
【0029】
停止制御は、追尾制御の終了と同時に開始される。すなわち、停止制御は、上記のようにオペレータが携帯端末3の停止ボタン34に入力操作を行い、タッチパネル32でこの停止操作が検出され、携帯端末3から停止信号が送信された場合に開始される。よって、この場合には、車両2が停止位置SPへの移動を開始する。そして、追尾制御は、車両2の作業部21がオペレータと並ぶ停止位置SPで車両2が停止した場合に終了する。
このように、本実施形態の追尾制御及び停止制御は、携帯端末3に対する追尾操作及び停止操作に応じて実施される。
【0030】
ECU7は、上記の追尾制御及び停止制御を実施するための要素として、判定部11と検出部12と制御部13とを備えている。ここでは、これらの要素11~13がいずれもソフトウェアで実現されるものとする。ただし、これらの要素11~13は、ハードウェア(電子回路)で実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが併用されて実現されてもよい。
【0031】
判定部11は、上記の追尾操作及び停止操作の有無を判定する。上述のように、本実施形態の追尾操作及び停止操作は携帯端末3に対して行われることから、判定部11は、通信装置5から伝達される情報に基づいて、追尾操作の有無と停止操作の有無とをそれぞれ判定する。
具体的には、判定部11は、通信装置5で追尾信号が受信された場合に、車両2の外部で追尾操作があったと判定し、通信装置5で追尾信号が受信されない場合に、追尾操作がないと判定する。同様に、判定部11は、通信装置5で停止信号が受信された場合に、車両2の外部で停止操作があったと判定し、通信装置5で停止信号が受信されない場合に、停止操作がないと判定する。
【0032】
検出部12は、オペレータの現在位置OP(以下、「オペレータ位置OP」という)を検出する。本実施形態の検出部12は、センサ4から伝達された情報に基づいて、まず車両2の周囲にオペレータがいるか否かを判定し、ここでオペレータがいると判定した場合に、オペレータ位置OP(例えば、車両2に対する相対位置)を検出(演算)する。検出部12による検出結果は、追尾制御及び停止制御の双方で用いられる。
【0033】
本実施形態では、検出部12においてオペレータを他の歩行者と識別するために、追尾制御及び停止制御の実施に先立って、オペレータの登録が行われる。この登録は、例えば、車両2の電源がオンされることで実施されてもよく、車両2の電源がオンされてから通信装置5で初めて所定の信号が送信或いは受信された場合に実施されてもよい。
オペレータの登録は、車両2の前方或いは後方の所定領域内にオブジェクトが認識された場合、そのオブジェクトをオペレータとして登録することで行われる。オブジェクトがオペレータとして登録されると、携帯端末3にその旨が表示され、オペレータは自身が登録されたことを携帯端末3で確認できる。
【0034】
このような情報の登録は、オペレータがセンサ4のセンシング範囲内に確実に入る状態で実施されることが好ましく、例えば、オペレータが車両2の前方の所定領域内で車両2に向かい合って静止した状態で実施される。
本実施形態の検出部12は、上記の登録が完了した後は、このオペレータを監視し続けることで、オペレータ位置OPを随時検出する。
【0035】
制御部13は、判定部11における判定結果と検出部12における検出結果とに基づいて作動ユニット6を制御し、車両2を自動運転させる。
制御部13は、判定部11で追尾操作があったと判定された場合に追尾制御を開始する。追尾制御において、制御部13は、車両2とオペレータとの距離が所定距離に保持されるように作動ユニット6を制御する。これにより、制御部13は、車両2にオペレータを追尾させる。
【0036】
また、制御部13は、判定部11で停止操作があったと判定された場合に停止制御を開始する。制御部13は、このように停止制御を開始するのと同時に追尾制御を終了させる。
停止制御において、制御部13は、検出部12で検出されたオペレータ位置OPに基づき、車両2が上記の停止位置SPまで移動した後に停止するように作動ユニット6を制御する。これにより、制御部13は、車両2の作業部21をオペレータと並ばせた状態で車両2を停止させる。
【0037】
図4(a),(b)に示すように、本実施形態の停止位置SPは、作業部21とオペレータとが車両2の左右方向に並ぶ位置として設定されている。したがって、停止制御により車両2が停止位置SPで停止した状態では、作業部21の左方または右方(真横)にオペレータが位置する。なお、本実施形態では作業部21が車両2の後端部に設けられているため、制御部13は、停止制御において、車両2の後端部がオペレータと左右方向に並ぶ停止位置SPまで車両2を移動させて停止させる。
【0038】
例えば図4(a)に示すように、オペレータが車両2の前方で停止操作をした場合には、制御部13は、車両2を前進させ、車両2の前端部がオペレータ位置OPを越えた後、車両2の後端部がオペレータ位置OPと左右方向に並ぶ上記の停止位置SPで車両2を停止させる。一方、図4(b)に示すように、オペレータが車両2の後方で停止操作をした場合には、制御部13は、車両2を後退させ、車両2の前端部がオペレータ位置OPを越えないまま、車両2の後端部がオペレータ位置OPと左右方向に並ぶ上記の停止位置SPで車両2を停止させる。このように、停止制御における車両2の移動方向は、オペレータが停止操作をした時点における車両2とオペレータとの位置関係に応じて適宜変更される。
【0039】
本実施形態の制御部13は、予め設定された所定のエリア内で車両2を自動運転させる。所定のエリアは、例えば塵芥収集のために車両2が走行しうる車道R1として設定され、歩道R2は除外される。よって、制御部13は、追尾制御の実施中、仮にオペレータが歩道R2を歩いていたとしても、車両2を車道R1内で走行させ、車両2を歩道R2には進入させない。同様に、制御部13は、仮にオペレータが歩道R2で停止操作をしたとしても、車両2を車道R1内の停止位置SPで停止させ、車両2を歩道R2には進入させない。
【0040】
上記のように、本実施形態の制御部13は、追尾制御及び停止制御のいずれにおいても、検出部12で検出されたオペレータ位置OPを参照する。ただし、図5に示すように、例えばオペレータが障害物9の陰に隠れた場合には、オペレータがセンサ4のセンシング範囲から外れるため、検出部12でオペレータ位置OPを検出できなくなる。
本実施形態の制御部13は、このように検出部12でオペレータ位置OPが検出されなくなった場合に、検出部12で最後に検出されたオペレータ位置OP(以下、「最終位置FP」という)と作業部21とが並ぶ待機位置WPまで車両2を移動させる。ここでは待機位置WPが、上記の停止位置SPと同様に、最終位置FPと作業部21とが車両2の左右方向に並ぶ位置として設定されている例を示す。
【0041】
したがって、図5に例示するように、車両2は、検出部12でオペレータ位置OPが検出されなくなった場合に、その場(図5中に破線で示す車両2の位置)で停止するのではなく、待機位置WPまで移動した後に停止する。この後、車両2は、オペレータ位置OPが再び検出されるまで、待機位置WPで待機する。なお、待機位置WPへの移動中にオペレータ位置OPが検出部12で再検出された場合には、制御部13は、検出部12で検出された最新のオペレータ位置OPに基づいて車両2を自動運転させる。
【0042】
[3.フローチャート]
図6図8は、制御システム1で実施される制御の内容(車両の制御方法)を示すフローチャートである。図6のフローは、車両2の電源がオン状態である場合に、ECU7で繰り返し実施される。また、図7及び図8は、図6のサブフローチャートであって、追尾制御の内容と、停止制御の内容とをそれぞれ示している。
【0043】
なお、図6のフロー中のフラグFは、追尾制御を実施中であるか否かを表す変数であり、追尾制御を実施中である場合は1に設定され、追尾制御を実施中でない場合は0に設定される。フラグFは、図6のフローの開始時点では0であるものとする。また、ECU7では、フローの実施中にセンサ4及び通信装置5からの各情報が随時取得されるものとする。
【0044】
図6に示すように、ECU7では、まず追尾制御を実施中(F=1)であるか否かが判定され(ステップS1)、追尾制御の実施中でなければ、通信装置5により携帯端末3から受信される情報に基づき、追尾操作の有無が判定される(ステップS2,追尾判定工程)。ここで追尾操作がないと判定された場合は、このままフローをリターンし、追尾操作があるまでステップS2の判定処理が繰り返される。
【0045】
ステップS2で追尾操作があったと判定された場合は、フラグFが1に設定され(ステップS3)、オペレータが登録済みであるか否かが確認される(ステップS4)。オペレータが未登録であれば、オペレータの登録が行われ(ステップS5)、追尾制御が実施(開始)される(ステップS6)。また、ステップS4においてオペレータが登録済みであれば、オペレータの登録処理(ステップS5)をスキップして追尾制御が実施される(ステップS6)。そして、フローをリターンする。
【0046】
次の演算周期では追尾制御を実施中(F=1)であるため、ステップS1からステップS7に進み、通信装置5により携帯端末3から受信される情報に基づき、停止操作の有無が判定される(停止判定工程)。ここで停止操作がないと判定された場合は、追尾制御が継続され(ステップS6)、フローをリターンする。一方、ステップS7で停止操作があったと判定された場合は、フラグFが0に設定され(ステップS8)、停止制御が実施され(ステップS9)、フローをリターンする。
【0047】
図7に示すように、追尾制御では、センサ4で取得された情報に基づき、オペレータが車両2の周囲にいる(オペレータを認識できた)か否かが判定される(ステップA1)。オペレータが車両2の周囲にいると判定された場合は、検出部12でオペレータ位置OPが検出され(ステップA2,検出工程)、車両2がオペレータを追尾するように作動ユニット6が制御される(ステップA3,追尾工程)。
一方、追尾制御の実施中にステップA1でオペレータが認識されなくなった(オペレータ位置OPが検出されなくなった)場合には、車両2が待機位置WPまで移動して停止するように作動ユニット6が制御される(ステップA4,移動工程)。
【0048】
図8に示すように、停止制御では、センサ4で取得された情報に基づき、オペレータが車両2の周囲にいる(オペレータを認識できた)か否かが判定される(ステップB1)。オペレータが車両2の周囲にいると判定された場合は、検出部12でオペレータ位置OPが検出され(ステップB2,検出工程)、車両2が停止位置SPまで移動して停止するように作動ユニット6が制御される(ステップB3,停止工程)。
一方、停止制御の実施中にステップB1でオペレータが認識されなくなった(オペレータ位置OPが検出されなくなった)場合には、車両2が待機位置WPまで移動して停止するように作動ユニット6が制御される(ステップB4,移動工程)。
【0049】
[4.作用及び効果]
上記の車両2の制御システム1及び制御方法によれば、以下の作用及び効果を得ることができる。
(1)車両2の外部でオペレータによる所定の停止操作があった場合に、作業部21がオペレータと並ぶ停止位置SPまで車両2を移動させてから停止させるため、作業部21に対する作業をオペレータが行いやすくなる。このように、オペレータによる停止操作に応じて車両2を自動運転で停止させる場合に、作業部21の位置をオペレータに合わせて適正化することで、作業部21に対するオペレータの作業効率を高めることができる。よって、自動運転による作業効率の向上に加えて、オペレータが作業部21に対して行う作業(本実施形態では、塵芥の投入作業)の効率化も図ることができる。したがって、作業時間の短縮や作業コストの低減に寄与する。
【0050】
(2)車両2の外部でオペレータによる所定の追尾操作があった場合に、車両2にオペレータを追尾させるため、作業部21への作業が行われない間も、車両2をオペレータから離れにくくできる。これにより、上記の停止操作があった場合には、車両2を逸早く停止位置SPに到達させることができる。このため、オペレータが作業部21への作業をより早く開始できる。よって、オペレータの作業効率をより高めることができる。
【0051】
(3)オペレータ位置OPが検出されなくなった場合に、最後に検出されたオペレータ位置OP(上記の最終位置FP)と作業部21とが並ぶ待機位置WPまで車両2を移動させるため、オペレータ位置OPを検出できない場合であっても、車両2をオペレータのより近くまで移動させておくことができる。これにより、オペレータ位置OPを再検出しやすくなると共に、オペレータが作業部21への作業をより早く開始しやすくなる。よって、オペレータの作業効率を更に高めることができる。
【0052】
(4)停止位置SPが、作業部21とオペレータとが車両2の左右方向に並ぶ位置であるため、停止操作に応じて車両2が停止位置SPで停止した状態では、作業部21の左方又は右方にオペレータが位置することになる。したがって、車両2の前方または後方にオペレータが位置することを回避できる。これにより、車両2の前進時及び後退時にオペレータが障害となりにくくなるため、車両2の自動運転を円滑化できる。
(5)車両2が作業部21としての塵芥投入口を有する塵芥車であるため、オペレータが車両2を用いて塵芥を収集する場合に、収集した塵芥を塵芥投入口に投入する作業が容易となる。よって、車両2を用いた塵芥収集の作業効率を高めることができる。
【0053】
(6)上記の停止制御は携帯端末3への停止操作に応じて実施されるため、オペレータは、所持した携帯端末3を操作するだけで容易に停止制御を実施できる。また、オペレータによる停止操作に応じて携帯端末3からECU7に停止信号を送信することで、停止操作の有無をECU7において精度よく判定できる。このため、オペレータの要求に応じて停止制御をより適切に実施できる。
【0054】
(7)同様に、上記の追尾制御は携帯端末3への追尾操作に応じて開始されるため、オペレータは、所持した携帯端末3を操作するだけで容易に追尾制御を実施できる。
(8)追尾制御及び停止制御の実施に先立ってオペレータの登録が行われるため、検出部12でオペレータ位置OPを検出する際に、オペレータを他の歩行者から識別できる。よって、オペレータ位置OPの検出精度を高めることができる。これにより、追尾制御及び停止制御をより適切に実施できる。
【0055】
[5.変形例]
上記の停止位置SP及び待機位置WPはいずれも一例である。停止位置SPは、車両2の作業部21がオペレータと並ぶ位置であればよく、例えば、オペレータが作業部21の後方に並ぶ位置であってもよい。このように、車両2の後端部に設けられた作業部21の後方にオペレータが位置する状態で車両2を停止させる構成とすれば、作業部21への作業がより容易となる。また、待機位置WPも同様に、車両2の作業部21が最終位置FPと並ぶ位置であればよく、上記の実施形態で例示したものに限定されない。
【0056】
車両2における作業部21の位置は特に限定されない。作業部21は、例えば、車両2の側面や前端部に設けられてもよい。作業部21が車両2のいずれの部位に設けられる場合であっても、上記のように作業部21をオペレータと並ぶ停止位置まで車両2を移動させて停止させることで、作業部21に対するオペレータの作業効率を高めることができる。
また、上記の制御システム1が適用される車両2は、塵芥車に限定されない。車両2としては、例えば、ゴルフカートや物品販売車や介護用車両などの種々の車両を適用しうる。
【0057】
上記の停止操作及び追尾操作も一例である。停止操作及び追尾操作としては、上記の携帯端末3を用いるものに代えて(あるいは加えて)、オペレータによるジェスチャー操作(例えば手振り)や音声操作が適用されてもよい。この場合には、オペレータのジェスチャーや音声を検出するセンサ等を車両2に設けて、このセンサによる検出結果に基づいて、判定部1Bにおける判定処理(停止判定工程及び追尾判定工程)を実施すればよい。
【0058】
上記の携帯端末3のディスプレイ31に表示される内容も一例である。ディスプレイ31には、上記の追尾ボタン33及び停止ボタン34を併合した切替ボタンが設けられてもよい。このような切替ボタンを適用すれば、単一の切替ボタンへのオンオフ操作に応じて上記の追尾制御及び停止制御を実施可能である。具体的には、切替ボタンのオン操作(オフからオンに切り替える操作)を上記の「追尾操作」とし、切替ボタンのオフ操作(オンからオフに切り替える操作)を上記の「停止操作」として、上記の追尾制御及び停止制御を実施してもよい。
【0059】
なお、ディスプレイ31には、上記の追尾ボタン33及び停止ボタン34に加えて、車両2の現在位置や、検出部1Bで検出されたオペレータ位置OPなどの各種情報が表示されてもよい。また、オペレータ位置OPが検出されなくなった場合には、ディスプレイ31にその旨を表示してもよい。
制御システム1は、オペレータ位置OPが検出されなくなった場合に、車両2をその場で(待機位置WPまで移動させずに)停止させてもよい。このような構成であれば、車両2の走行によるエネルギ消費を抑えることができる。
【0060】
また、制御システム1は、少なくとも停止制御を実施すればよく、上記の追尾制御(追尾工程)は省略されてもよい。追尾制御が省略された場合であっても、車両2の制御システム1及び制御方法によれば、オペレータによる停止操作に応じて車両2を停止位置SPまで移動させて停止させるため、上記のようにオペレータの作業効率を高めることができる。
なお、制御システム1は、上記のECU7以外の機能として設けられてもよい。また、制御システム1が設けられる位置は特に限定されず、制御システム1の一部または全部が車両2の外部(上記の携帯端末3やクラウド上)に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 制御システム(車両の制御システム)
2 車両
3 携帯端末
4 センサ
5 通信装置
6 作動ユニット
7 ECU
9 障害物
11 判定部
12 検出部
13 制御部
21 作業部
31 ディスプレイ
32 タッチパネル
33 追尾ボタン
34 停止ボタン
61 駆動装置
62 制動装置
63 操舵装置
FP 最終位置
OP オペレータ位置
R1 車道
R2 歩道
SP 停止位置
WP 待機位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8