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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-24
(45)【発行日】2023-09-01
(54)【発明の名称】羽根駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/06 20210101AFI20230825BHJP
   G03B 9/26 20210101ALI20230825BHJP
【FI】
G03B9/06
G03B9/26
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019179616
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056397
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 善之
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206768(JP,A)
【文献】特開2017-207561(JP,A)
【文献】特開2012-108380(JP,A)
【文献】特開2001-174861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00 - 9/07
G03B 9/08 - 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する開口の大きさを調節する羽根駆動装置であって、
光が通過する開口部を形成する開口形成部材と、
光軸方向における前記開口形成部材の一方側で前記開口部の周囲を回動する回動部材と、
前記回動部材の動力が伝達されて前記開口部に出入りして絞り開口を形成する複数の羽根部材とを備え、
前記羽根部材は、前記開口形成部材に設けられたカム溝に挿通されるカムピンを有し、
前記絞り開口における中間絞りから小絞りを形成する過程において、前記回動部材に駆動される前記羽根部材の駆動ピンよりも前記開口形成部材の外径側で前記羽根部材の前記カムピンは、前記開口部に近づく方向に駆動され、
前記絞り開口における小絞りを形成する過程において、前記羽根部材に隣接する他の羽根部材のカムピンが挿通され、かつ前記カム溝と同一形状を有する他のカム溝と前記羽根部材が前記光軸方向で重なる領域において、前記羽根部材における前記他のカム溝を横切る部分の先端部が、前記他の羽根部材と前記光軸方向で重なりながら移動する、
ことを特徴とする羽根駆動装置。
【請求項2】
前記羽根部材は、前記回動部材に設けられた係合穴と係合する係合軸を有し、
前記先端部は、前記係合軸の周囲に設けられ、前記絞り開口を形成する過程において最初に前記カム溝の内壁に到達する部分である頂点部分である、
ことを特徴とする請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記羽根部材と前記回動部材との間に配置された仕切り部材を有し、
前記羽根部材は、前記開口形成部材と仕切り部材によって挟持され、前記絞り開口の開放位置において、前記カムピンは、前記光軸方向において前記仕切り部材と重なり、前記回動部材とは重ならないように前記回動部材の外周部よりも外側の位置に対応する前記羽根部材の位置に設けられる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記羽根部材は、光量を遮光する遮光部分と、前記係合軸および前記カムピンとが別部材で設けられている、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の羽根駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、絞り装置などの羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、羽根を駆動するための羽根駆動装置としては、光路用の開口部を有する地板と、この地板に支持されて開口部を開閉するように動作する羽根と、地板に対して回動する駆動リングとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような特許文献1のような羽根駆動装置では、回動する駆動リングに羽根を連動させ、光路用の開口部を開閉するように羽根を動作させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-180921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カメラ等に備えられた光量調節装置においては、レンズ口径が大きくなり明るいレンズであってもより小絞りまで絞れる構成のカメラの需要が高まってきている。
【0006】
より小絞りまで絞れる構成にした場合、羽根の回動量が増え、隣接する羽根の絞り動作をガイドするためのカム溝に、羽根の一部が引っ掛かり、羽根の絞り動作を妨げてしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記を鑑み、本発明に係る羽根駆動装置は、
光が通過する開口の大きさを調節する羽根駆動装置であって、
光が通過する開口部を形成する開口形成部材と、
光軸方向における前記開口形成部材の一方側で前記開口部の周囲を回動する回動部材と、
前記回動部材の動力が伝達されて前記開口部に出入りして絞り開口を形成する複数の羽根部材とを備え、
前記羽根部材は、前記開口形成部材に設けられたカム溝に挿通されるカムピンを有し、
前記絞り開口における中間絞りから小絞りを形成する過程において、前記回動部材に駆動される前記羽根部材の駆動ピンよりも前記開口形成部材の外径側で前記羽根部材の前記カムピンは、前記開口部に近づく方向に駆動され、
前記絞り開口における小絞りを形成する過程において、前記羽根部材に隣接する他の羽根部材のカムピンが挿通され、かつ前記カム溝と同一形状を有する他のカム溝と前記羽根部材が前記光軸方向で重なる領域において、前記羽根部材における前記他のカム溝を横切る部分の先端部が、前記他の羽根部材と前記光軸方向で重なりながら移動する、
ことを特徴とする羽根駆動装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作動引っ掛かりを起こさずに小絞りまで羽根を絞ることが可能な羽根駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る絞り装置の分解斜視図。
図2】本発明の実施例に係る羽根駆動装置に用いられる保持基板の斜視図。
図3】本発明の実施例に係る羽根駆動装置に用いられる駆動リングの斜視図。
図4】本発明の実施例に係る羽根駆動装置に用いられる仕切り部材の斜視図。
図5】本発明の実施例に係る羽根駆動装置に用いられる絞り羽根の斜視図。
図6】本発明の実施例に係る羽根駆動装置に用いられる開口形成部材の斜視図。
図7】本発明の実施例に係る羽根駆動装置の中間絞り形状の説明図。
図8】本発明の実施例羽根駆動装置の小絞り形状の説明図。
図9図8の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1には、本発明の実施例に係る羽根駆動装置の一例である光量調節装置としての絞り装置100の分解斜視図を示す。本発明の羽根駆動装置は、カメラなどの撮像装置に搭載され、撮像素子に到達する光量を調整する光量調節装置として用いられる。
【0012】
図1に示すように、本実施例に係る絞り装置100は中央に開口部が形成された開口形成部材である保持基板102を有している。保持基板102は樹脂成形にて作成されているが、これに限られない。保持基板102には、駆動部101が取り付けられる。駆動部101は、例えば、ステッピングモータ、ガルバノモータなどを使用する。駆動部101の回転軸101aに、ピニオン104が取り付けられる。図2は、保持基板102の斜視図である。
【0013】
また、絞り装置100は、保持基板102の一方面上で開口部の周囲を回動する回動部材である駆動リング103を有している。図3は、駆動リング103の斜視図である。駆動リング103は、樹脂成形にて作成されているが、これに限られない。ピニオン104から駆動リング103に駆動力が伝わる。この駆動リング103には係合穴が設けられ、羽根部材である絞り羽根106の係合軸である駆動ピン106aが係合する。すなわち、駆動リング103は、駆動リング103の回動に伴って絞り羽根106が光通過経路に対して出入りするように連動するよう構成されていることから、絞り羽根106を駆動するための部材(動力伝達部材)となる。
【0014】
また、駆動リング103の基部103aは、片面あるいは両面に表面処理がなされていることが好ましい。表面処理の一例としては、例えば、摺動塗装、帯電防止処理、反射防止処理などがある。摺動塗装することで、駆動リング103と摺動する部品である保持基板102、後述する仕切り部材105との摩擦を低減することができ、省電力での作動が可能になる。また、反射防止処理をすることで、本光量調節装置内に進入した光の反射を抑え、レンズ鏡筒内に光量調節装置が組み込まれた際の、ゴースト、フレア等の発生を防止することができる。
【0015】
また、駆動リング103には遮光部103dが設けられている。フォトインタラプタ108のスリット内を遮光部103dが出入りすることで、駆動リング103の回動位置を検出するセンサの役割を果たす。光量調節装置の初期位置等の位置検出に使用する。
【0016】
図4は仕切り部材105の斜視図である。仕切り部材105は、中央に開口部を有する。仕切り部材105は、保持基板102の係合部102aに仕切り部材105の係合穴105aが係合することによって保持基板102に対するラジアル方向の規定がされ、後述する開口形成部材107の複数の突起部107a及び保持基板102の複数の突起部102bによって挟持されることによって、光軸方向に規定される。図2においては、突起部102bの一部に符号を付して図示している。仕切り部材105は羽根106のカムピン106bが設けられた位置をカムピン106bの反対側から押さえることができるため、後述する開口形成部材107のカム溝107bに挿通されたカムピン106bがカム溝107bから脱落することを防ぐことができる。
【0017】
また、仕切り部材105及び保持基板102のレール部102cによって駆動リング103は挟持されるため、駆動リング103は挟持可能な最低限の外形があればよい。そのため、駆動リング103を小型化できるため回転時のイナーシャが低減し、高速駆動化に有効である。仕切り部材105は、樹脂成形にて作成されているが、例えば、樹脂フィルム(PETシート材等)をプレス加工して作成されても良い。
【0018】
図5は、絞り羽根106の斜視図である。駆動ピン106aとカムピン106bが羽根部106hに設けられている。絞り羽根106は、樹脂成形にて羽根部106hと駆動ピン106aとカムピン106bを一体で作られているが、例えば、PETシート材等をプレス加工して羽根部106hを作成し、駆動ピン106a、カムピン106bを樹脂成形等で作成して取り付けてもよい。
【0019】
また、本実施例では、9枚の絞り羽根で構成しているが、絞り羽根の枚数は、2枚以上であれば何枚の構成でもよい。なお、本実施例では、絞り羽根106を例示して説明するが、その他のシャッタ羽根、あるいは光学フィルタを有する羽根など各種適用した羽根駆動装置としてもよい。なお、光が通過する部分の最大開口は、開口形成部材107又は保持基板102の開口部で規定してもよいし、複数の絞り羽根106の端部によって規定してもよい。
【0020】
また、PETシート材等をプレス加工し、遮光処理などの表面処理がされたシート部材により羽根部106hを作成し、駆動ピン106aとカムピン106bは、樹脂成形で作成し、羽根部106hに接着、溶着、アウトサート成形などで一体化させてもよい。また、駆動ピン106aとカムピン106bを金属ピンで形成し、羽根部106hに接着、溶着、カシメ等で一体化させてもよい。
【0021】
図6は、開口形成部材107である。開口形成部材107は、仕切り部材105を支持する複数の支持部となる突起部107aと、複数のカム溝107bを有している。図6においては、それらの一部のみに符号を付して図示している。光軸方向において、保持基板102と仕切り部材105で挟まれて形成された空間の中を、駆動リング103が駆動し、仕切り部材105と開口形成部材107で挟まれて形成された空間の中を、絞り羽根106が駆動する。
【0022】
絞り羽根106の駆動ピン106aは、駆動リング103の駆動穴103bに係合する。ピニオン104が回転し、駆動リング103の被駆動部103cに駆動力が伝達されると、駆動リング103が回転する。駆動リング103が回転すると、駆動リング103の駆動穴103bから絞り羽根106の駆動ピン106aに駆動力が与えられ、絞り羽根106が駆動する。絞り羽根106のカムピン106bは、開口形成部材107に形成されたカム溝107bに係合している。カム溝107bによってガイドされることで、絞り羽根106は、保持基板102の開口内外を出入りする。複数の絞り羽根106により、絞り形状が調整され、光が通過する量を調整することが可能になる。
【0023】
次に、駆動リング103について、絞り羽根106の支持について説明する。図7にその一部を示すように、複数の絞り羽根106は、周方向に均一に配置されている。本実施例では、図7に示すように、駆動リング103の回動によって複数の絞り羽根106が連動して、光通過開口の大きさを可変できるようになっている。
【0024】
次に、本実施例の特徴である羽根の重なりに関して説明する。なお、本実施例の絞り装置100は、図1に示すように9枚の絞り羽根106によって構成されているが、絞り開口の中心を対称としてすべての絞り羽根106が対称構造となっているため、以下の説明においてはいくつかの絞り羽根106についてのみ説明しているが、それ以外の絞り羽根106についても同様である。図7は本実施例の絞り装置100において絞り羽根106を4枚だけ開口形成部材107上に配置した状態を示す。絞り羽根106の回転中心軸となる駆動ピン106aの周囲に設けられた外周部106cが開口形成部材107のカム溝107bと光軸方向においてほぼ同等の位置まで掛かっている。図8はさらに絞り込み方向(小絞り方向)に回転した状態を示す。この時、絞り羽根106の回転中心軸となる駆動ピン106aの周囲の外周部106cがカム溝107bを横切っている(横断している)のが分かる。
【0025】
しかし、絞り羽根106の外周部106cは隣りの羽根に乗っかっている(光軸方向で重なっている)ため、絞り羽根106はカム溝107bと干渉することはない。図9を用いて詳細に説明する。図9図8を拡大した図を示す。図9における左側に示す絞り羽根1061の外周部106c1の頂点部分106d1がカム溝107b1の直上(カム溝107bと光軸方向で重なる位置)を超えて、横断している状態を示している。この状態において、図9における右側に示す絞り羽根1062によれば、外周部106c2の頂点部分106d2の下に絞り羽根1061が入り込んでいる。なお、頂点部分とは、絞り羽根106が小絞り方向へ回動して絞り開口を形成する過程において、カム溝107bを横切り、最初にカム溝107bの内周側の壁107c(内壁)もしくは外周側の壁107d(外壁)に到達する部分のことを意味するものとして説明している。
【0026】
図9は、絞り羽根106の外周部106cの頂点部分106dがカム溝107bを横断した状態を示しているが、この状態よりも大きい絞り開口を形成する状態においては、カム溝107bの直上に頂点部分106dが位置する状態になる。本実施例においては、少なくともこのようなカム溝107bの直上に頂点部分106dが位置する状態(カム溝107bに頂点部分106dが重なる領域)で、絞り羽根106の外周部106cとカム溝107bの間に隣の羽根が位置する状態で絞り羽根106が移動するように外周部106cや頂点部分106dが形成されている。そうすることでカム溝107bの外周側の壁107dに絞り羽根の先端部(頂点部分106d)が当接(衝突)する事を避けられ、カム溝107bを越えて(跨いで)羽根を動かすことができて、従来よりも小絞りまで絞る事が可能となっている。
【0027】
すなわち、本実施例は、絞り開口を小絞り状態に向けて絞っていく動作において、少なくとも絞り羽根106の外周部106cがカム溝107bの外周側の壁107dの直上に位置する状態において、絞り羽根106の外周部106cとカム溝107bの間に隣の羽根が位置するようになっていれば良い。
【0028】
また、本実施例では絞り羽根106の外周部106cは遮光部分である羽根部106hと一体につながっている形状だが、遮光部分と別部材で形成された駆動ピン106aとカムピン106bなどと一体で設けられても良いし、それらとも別部材で設けられていても良い。
【0029】
また、本実施例では開口形成部材107の複数の突起部107a及び保持基板102の複数の突起部102bによって挟持される位置に仕切り部材105を設けたが、駆動リング103を外形側に広げて設けることができれば、仕切り部材105は無くても良い。
【0030】
また、本実施例では、上述した通り光が通過する部分の最大開口は、開口形成部材107又は保持基板102の開口部で規定してもよいし、複数の絞り羽根106の端部によって規定してもよい。それ以外にも、駆動リング103や仕切り部材105によって形成してもよく、それ以外の部材を用いてもよい。すなわち、開口形成部材107を含め、いずれの部材も光が通過する開口部を形成すればよく、絞り開口の最大開口を形成するものに限られない。
【符号の説明】
【0031】
101 駆動部
102 保持基板
103 駆動リング
104 ピニオン
105 仕切り部材
106 絞り羽根
107 開口形成部材
108 フォトインタラプタ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9